説明

排気浄化触媒

【課題】100℃未満の低温域を含む温度範囲で高いCO酸化活性を示す排気浄化触媒を提供する。
【解決手段】触媒層が、下層としての担体基材21に貴金属を担持した貴金属コート層3と、上層としての担体基材31に貴金属を担持したHC(炭化水素)吸着材層4とからなり、上層のHC吸着材層の厚みが30〜80μmである排気浄化触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化触媒に関し、さらに詳しくは特定の2層構造を有することにより低温でのCO酸化活性を向上させた排気浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中に排出される排気の浄化は環境上の重要課題であり、大気汚染防止の観点から規制が強化されている。自動車等の内燃機関その他の燃焼機関から生じる排気中の有害成分を除去するために、排気浄化触媒を用いた処理が行われている。
例えば、エンジンから排出される排気は排気浄化触媒により浄化されて大気中に放出される。しかし、エンジン始動直後は低温のため、排気浄化触媒内の触媒が不活性状態であり、排気が十分浄化されない。
一方、一般に排気浄化に用いられる触媒には担体上にPtやPdなどの貴金属を担持したものが用いられており、これらの貴金属が高価であって資源的にも問題があることからその使用量を低減することが必要である。
このため、触媒の活性を向上させるために種々の検討がされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、触媒層を少なくとも2層設け、白金、パラジウム、ロジウム又はイリジウムである貴金属を貴金属毎に担持したアルミナ又はゼオライトとペロブスカイト型酸化物とを含有し、且つ白金がゼオライトに担持されていて、下層にペロブスカイト型酸化物を含み、上層に白金担持ゼオライトを含有する排気ガス浄化用触媒が記載されている。しかし、特許文献1では触媒活性を700℃で評価した例が示されており、触媒層の上層の厚みが触媒活性にどのような影響を及ぼすか、特に低温でのCO酸化活性にどのような影響を及ぼすかについては示されていない。
【0004】
また、特許文献2には、ハニカム状担体上に、下層、中間層および表層を順次積層して成り、下層が白金、パラジウム又はロジウムとアルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類元素を含有し、中間層がβゼオライトを含有し、表層が銅及び/又はコバルトを含むゼオライトを含有する排気ガス浄化触媒が記載されている。そして、具体例として、3層構造の排気ガス浄化触媒が、中間層を設けない2層構造の排気ガス浄化触媒に比べて100℃〜500℃の範囲で高いNO浄化率を示すことが示されている。しかし、特許文献2には3層構造および2層構造の排気ガス浄化触媒が100℃未満の低温域でどのようなCO酸化活性を示すかについては示されていない。
【0005】
また、特許文献3には、担体上に浄化触媒金属およびアルカリ又はアルカリ土類金属を含むNO吸蔵型触媒層を有し、その上にSOのNO吸蔵材への拡散を抑制するバリヤ層を備え、場合によりさらにバリヤ層の上層に貴金属が担持されたゼオライト層であるSO吸放出材層を備えた排気ガス浄化用触媒が記載されている。そして、具体例として、400℃でのS被毒低減効果が示されている。しかし、特許文献3には3層構造および2層構造の排気ガス浄化触媒が100℃未満の低温域でどのような排気ガス浄化特性、特にCO酸化活性を示すかについては示されていない。
【0006】
さらに、特許文献4には、担体上に、触媒金属とNO吸着材と高表面積耐熱性酸化物粒子とを含有する第一触媒層と、その上に形成されているゼオライトであるNH吸着材を含有する第二触媒層とからなり、いずれかの触媒層中に酸化鉄微細粒子が分散して含まれるNO浄化用の排気ガス浄化用触媒が記載されている。そして、具体例として、排気ガス浄化触媒が、170℃又は240℃で高いNO浄化率を示すことが示されている。しかし、特許文献4には排気ガス浄化触媒が100℃未満の低温域でどのようなCO酸化活性を示すかについては示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−289844号公報
【特許文献2】特開2007−327460号公報
【特許文献3】特開2007−289844号公報
【特許文献4】特開2007−289844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これら公知の排気浄化触媒によっても、100℃未満の低温域で高いCO酸化活性を示す排気浄化触媒を得ることは困難である。
しかるに、近年のCO排出量低減化の要求により排気温度が大幅に低温化し、この排気温度の低温化に伴って従来は大きな問題となっていなかった、排気浄化触媒の低温でのCO酸化活性が大幅に悪化するという問題が生じている。この排気浄化触媒のCO酸化活性の大幅な悪化はCO排出量の増大をもたらす。
従って、本発明の目的は、100℃未満の低温域を含む温度範囲で高いCO酸化活性を示す排気浄化触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記目的を達成することを目的として鋭意検討を行った結果、前記目的を達成するためには低温からCOを酸化し得て、共存ガスであるHC被毒の影響を抑制する必要があることを見出しさらに検討を行った結果、本発明を完成した。
本発明は、触媒層が、下層としての担体基材に貴金属を担持した貴金属コート層と、上層としての担体基材に貴金属を担持したHC(炭化水素)吸着材層とからなり、上層のHC吸着材層の厚みが30〜80μmであることを特徴とする排気浄化触媒に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の排気浄化触媒によれば、100℃未満の低温域を含む温度範囲で高いCO酸化活性を示す排気浄化触媒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の1実施態様を示す模式図である。
【図2】図2は、従来の1層構造の排気浄化触媒によるCO酸化活性を示すグラフである。
【図3】図3は、従来の1層構造の排気浄化触媒の担体基材を変えた場合のCO酸化活性を示すグラフである。
【図4】図4は、従来の1層構造の排気浄化触媒によるCO酸化活性を説明するための推定メカニズム示す模式図である。
【図5】図5は、従来の1層構造の排気浄化触媒と2層構造の排気浄化触媒とのCO酸化活性を比較して示すグラフである。
【図6】図6は、2層構造の排気浄化触媒の上層の厚さとCO浄化率との関係を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の実施態様の2層構造の排気浄化触媒の上層と下層との貴金属担持量の割合とCO浄化率との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の実施態様の2層構造の排気浄化触媒の上層と下層との貴金属担持量の割合とHCすり抜け量との関係を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の実施態様の2層構造の排気浄化触媒の上層と下層との貴金属担持量の割合とCO浄化率およびHCすり抜け量との関係をまとめて示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の実施態様の2層構造の排気浄化触媒と従来の1層構造の排気浄化触媒とのCO浄化率への効果を比較したグラフである。
【図11】図11は、本発明の実施態様の2層構造の排気浄化触媒の上層におけるPt/Pd比に対する下層におけるPt/Pd比との割合とPtのシンタリング抑制への影響とを比較したグラフである。
【図12】図12は、本発明の実施態様のPd有効活用を示すグラフである。
【図13】図13は、本発明の他の実施態様のPd/OSC材系の効果を説明する模式図である。
【図14】図14は、本発明の排気浄化触媒からなるHC酸化触媒を自動車のエンジン排気浄化に適用した1例の模式図である。
【図15】図15は、本発明の排気浄化触媒からなるHC酸化触媒を自動車のエンジン排気浄化に適用した他の1例の模式図である。
【図16】図16は、本発明の排気浄化触媒からなるHC酸化触媒を自動車のエンジン排気浄化に適用した他の1例の模式図である。
【図17】図17は、本発明の排気浄化触媒からなるHC酸化触媒を自動車のエンジン排気浄化に適用した他の1例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施態様において、排気浄化触媒は、触媒層が、下層としての担体基材に貴金属、好適にはPtおよび/又はPdを担持した貴金属コート層と、上層としての担体基材、好適にはゼオライトに貴金属、好適にはPtおよび/又はPdを担持したHC吸着材層とからなり、上層のHC吸着材層の厚みが30〜80μmである。
【0013】
本発明の好適な実施態様において、排気浄化触媒は、前記の要件に加えさらに、前記の上層の貴金属の担持量(M)と下層の貴金属の担持量(M)との割合(M/M、質量比)が0.1以上1.5未満である。
さらに本発明の好適な実施態様において、排気浄化触媒は、前記の要件に加えさらに、前記下層がCeを含み、上層のHC)吸着材層および下層の貴金属コート層がいずれも貴金属としてPtおよびPdが担当され、上層におけるPtとPdとの比率(Pt/Pd、質量比)が下層におけるPtとPdとの比率(Pt/Pd、質量比)よりも大である。
【0014】
以下、図面を用いて本発明を説明する。
本発明の実施態様において排気浄化触媒1は、図1に示すように、基材2に設けられた触媒層10が、下層としての担体基材21に貴金属22を担持した貴金属コート層3と、上層としての担体基材31に貴金属32を担持したHC(炭化水素)吸着材層4とからなり、上層のHC吸着材層4の厚みが30〜80μmである。
【0015】
前記の基材としては、セラミックス材料、例えばコージェライトなどやメタル基材、例えばステンレス鋼などが挙げられる。
前記基材の形状はストレートフロー型、フィルター型、その他の形状が挙げられ、形状に限定されることなく本発明の効果を発揮し得る。
【0016】
前記の担体基材としては、Al、SiO、TiO、ZrO、CeOのうち少なくとも1種が挙げられる。また、さらに2つ以上からなる複合酸化物を形成することが好適である。また、W、Pr、La、Y、Nd、Mg、Fe等の添加元素を加えることでさらなる活性向上を図り得る。
そして、上層の担体基材として、ゼオライトをHC吸着材として含有することが好適である。
また、下層の担体基材として、前記の担体基材に加えて、Pd担体基材としてCeを含む酸化物を追加するとが好適である。前記のCeを含む酸化物として、セリア(CeO)やセリア複合酸化物、すなわちセリア−ジルコニア(CeO−ZrO)複合酸化物(CZ)などのOSC材が挙げられる。
前記の貴金属としては、Pt、Pd、Rh、Au、Agからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、好適にはPtおよび/又はPdが挙げられる。特に、Ptを0.1g/L-触媒以上、その中でも0.1〜2g/L-触媒の量を担持したものが好適である。
【0017】
従来の1層構造の排気浄化触媒では、図2に示すように、HCが共存する通常の条件では低温CO酸化活性が低い。
また、従来の1層構造の排気浄化触媒では、図3に示すように、担体基材としてゼオライトの使用の有無に関らずCO酸化活性が低い。
この従来の1層構造の排気浄化触媒による低いCO酸化活性に関して、図4に示すように、1層のみでは担体基材(ゼオライト)に吸着したHCにより触媒貴金属が被毒されていることによると推定される。
【0018】
本発明の実施態様の排気浄化触媒によれば、図5に示すように、後述の実施例の欄に詳述する試験条件での試験の結果、従来の1層構造の浄化触媒に比べてT50(℃)/COが低下することが確認される。
また、2層構造の排気浄化触媒は、図6に示すように、上層担体基材の厚みが30〜80μmであると、後述の実施例の欄に詳述する試験条件での試験の結果、良好な低温CO酸化活性を示すことが確認される。
【0019】
2層構造の排気浄化触媒において、前記の上層であるHC吸着材層の厚みが前記下限より薄いとHC吸着能が低下し厚すぎるとガス拡散性が悪化しCO酸化活性が低下するが、前記の上層であるHC吸着材層の厚みが前記の範囲内であることによってHC吸着とCO酸化を両立し得て、低温でのCO酸化が可能となり得ると考えられる。
【0020】
また、本発明の実施態様の排気浄化触媒は、図7に示すように、上層の貴金属の担持量(M)と下層の貴金属の担持量(M)との割合(M/M、質量比)が1.5未満であると、後述の実施例の欄に詳述する試験条件での試験の結果、良好な低温CO酸化活性を示すことが確認される。
また、本発明の実施態様の排気浄化触媒は、図8に示すように、上層の貴金属の担持量(M)と下層の貴金属の担持量(M)との割合(M/M、質量比)が0.1以上であると、後述の実施例の欄に詳述する試験条件での高SV時の未燃焼ガス(HC)のすり抜け量が少ないことが確認される。
【0021】
以上の低温CO酸化活性とPM再生時のHCすり抜け量とを総合的に考慮すると、図9に示すように、上層の貴金属の担持量(M)と下層の貴金属の担持量(M)との割合(M/M、質量比)が0.1以上1.5以下であることが特に好適であることが理解される。
【0022】
本発明の実施態様の2層構造の排気浄化触媒と従来の1層構造の排気浄化触媒とのCO浄化率について比較すると、図10に示すように、本発明の実施態様の排気浄化触媒のCO浄化率が従来の1層構造の排気浄化触媒のCO浄化率に比べて向上していることが理解される。
【0023】
本発明の実施態様の2層構造の排気浄化触媒において、図11に示すように、Ptのシンタリング抑制に必要なPd量は、上下層に配置する総Pd/Ptが1/9以上(貴金属に対してPdが10%以上)で1/2未満、特にPd/Ptが1/5以上(貴金属に対してPdが17%以上)で1/2未満であることが好適であることが理解される。
また、Pdの有効活用の点から、図12に示すように、本発明の実施態様の下層としての担体基材に貴金属を担持した貴金属コート層と、上層としての担体基材に貴金属を担持したHC(炭化水素)吸着材層との2層構造の排気浄化触媒において、担体基材上の総Pd/Ptが1/9以上、特に1/5以上で1/2未満にして、排気浄化触媒における担体基材上の触媒層中のPd/Pt=1/2との差分のPdをOSC材上に担持して下層に配置することが特に好適であることが理解される。
このPd/OSC材系の効果は、図13に示すように、OSC材で被毒したHCを酸化除去することによると考えられる。
【0024】
本発明の排気浄化触媒は、図14に示すように、自動車のエンジン排気浄化にHC酸化触媒として適用し得る。
また、本発明の排気浄化触媒は、図15に示すように、自動車のエンジン排気浄化にHC酸化触媒としてDPFと組み合わせて適用し得る。
また、本発明の排気浄化触媒は、図16に示すように、自動車のエンジン排気浄化にHC酸化触媒としてDPFおよびNO触媒と組み合わせて適用し得る。
また、本発明の排気浄化触媒は、図17に示すように、自動車のエンジン排気浄化にHC酸化触媒としてDPFおよびNO触媒と配列を変えた組み合わせで適用し得る。
【0025】
前記のDPF(粒子フィルタ)としては、特に制限はなく例えば多孔質セラミックからなるハニカム構造体を備えたいわゆるウォールフロー型であり得て、ハニカム構造体は、コージェライト、シリカ、アルミナ等のセラミックス材料で形成される。ハニカム構造体にはセルとも称される通路、上流側に詰栓が施された通路と、下流側に詰栓が施された他の通路とが交互に区画形成され、ハニカム状をなしている。排気が上流から下流に向かって流れると、排気は多孔質セラミックの流路壁面を通過して通路に流入し、下流側に流れる。このとき、排気中のPMは多孔質のセラミックスによって捕集され、PMの大気への放出が防止される。このように排気が流路壁面を通過し、その際にPMを濾過捕集するフィルタ形式がウォールフロー型と称される。
【0026】
前記のNO触媒としては、特に制限はなく例えば吸蔵還元型NOx触媒(NSR:NOx Storage Reduction)又は選択還元型NOx触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)が挙げられる。
前記吸蔵還元型NO触媒としては、アルミナAl等の酸化物からなる基材表面に、触媒成分としての白金Ptのような貴金属と、NOx吸収成分とが担持されて構成されている。NOx吸収成分は、例えばカリウムK、ナトリウムNa,リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類が挙げられる。
【0027】
そしてNO触媒が吸蔵還元型NOx触媒の場合、これに流入される排気ガスの空燃比が所定値(典型的には理論空燃比)よりリーンのときにはNOxを吸収し、これに流入される排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOxを放出するという、NOxの吸放出作用を行う。ディーゼルエンジンが使用される場合、通常時の排気空燃比はリーンであり、NOx触媒は排気中のNOxの吸収を行う。また、NOx触媒の上流側にて還元剤が供給され、流入排気ガスの空燃比がリッチになると、NOx触媒は吸収したNOxの放出を行う。そしてこの放出されたNOxは還元剤と反応して還元浄化される。
【0028】
また、前記選択還元型NOx触媒としては、ゼオライトまたはアルミナ等の基材表面にPtなどの貴金属を担持したものや、その基材表面にCu等の遷移金属をイオン交換して担持させたもの、その基材表面にチタニア/バナジウム触媒(V/WO/TiO)を担持させたもの等が例示できる。
この選択還元型NOx触媒においては、流入排気ガスの空燃比がリーンという条件下で、排気ガス中のHC、NOが定常的に且つ同時に反応されてN,CO,HOといったように浄化される。ただしNOxの浄化にはHCの存在が必須である。空燃比がリーンであっても、排気ガス中には未燃HCが必ず含まれているので、これを利用してNOxの還元浄化が可能である。また、前記吸蔵還元型NOx触媒のようにリッチスパイクを実施して還元剤を供給してもよい。この場合、還元剤としては前記に例示したもののほか、アンモニアや尿素を使用することもできる。
【0029】
本発明の排気浄化装置は、上記の構成を有することによって100℃未満の低温域を含む温度範囲で高いCO酸化活性を達成することができる。しかし、前記効果を低減しない限り、内燃機関の排気浄化装置に適用し得る任意の他の手段を加えることも可能である。
本発明の排気浄化装置によれば、ディーゼルエンジンだけでなく100℃未満の低温でCOを発生し得る全ての内燃機関、例えば、直噴の火点火式内燃機関であるリーンバーンガソリンエンジンにも適用し得る。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の実験は、本発明の構成による作用・効果を確認するためのものである。
【0031】
以下の各例において、排気浄化触媒の活性を以下の試験条件で評価した。
試験条件1:CO酸化活性(T50=50%浄化温度)
モデルガスを用いて、下記の測定法により測定した。
モデルガス:CO=1500ppm、C=1000ppm、NO=200ppm、O=10%、HO=3%、N=バランス、流量=20L/min
T50算出:CO浄化率が50%となる温度として求めた。
試験条件2:CO酸化活性(T50)
実機の2.2Lディーゼルエンジンを用いて、80℃からの昇温試験を行った。
試験条件3:CO酸化活性(CO浄化率)
実機のNEDCモード中のUDC領域を模擬して、2.2Lディーゼルエンジンを用い行った。
CO浄化率算出法:(触媒出CO量/トータル触媒入りCO量)×100(%)
【0032】
HCすり抜け量の測定
HCすり抜け量算出法:触媒入りHC量を固定(燃料噴射量を固定)し、2000rpm/100Nmで昇温。温度が安定したところの触媒出のHC濃度を測定し、算出。
【0033】
比較例1
φ30mmxL50mmのテストピースサイズのコージェライト基材に、β−ゼオライト90g/LとPt/Pd/Al75g/Lおよびバインダを塗布し、Al担体上の貴金属のPt/Pd=2/1(g/L)である排気浄化触媒を調製した。
この排気浄化触媒を用いて、前記の条件でCO酸化活性を評価した。
【0034】
比較例2
触媒調製2
触媒担体としてゼオライトをAlに変えた他は比較例1と同様にして、排気浄化触媒を調製した。
この排気浄化触媒を用いて、前記の条件でCO酸化活性を評価した。
これらの結果をまとめて図2および図3、参考例1の結果とまとめて図5に示す。
【0035】
参考例1
担体基材として触媒調製1と同様のものを用い、上層としてβ−ゼオライト60g/LとPt0.67g/Pd0.33g/Al25g/Lおよびバインダを、下層としてβ−ゼオライト30g/LとPt1.33g/Pd0.33g/Lおよびバインダに塗布した他は触媒調製1と同様にして、2層構造の排気浄化触媒を調製した。
この排気浄化触媒を用いて、前記の条件でCO酸化活性を評価した。
結果を他の結果とまとめて図5に示す。
【0036】
実施例1および比較例3〜4
上層厚さを10〜100μmの間で変えた他は参考例1と同様にして、2層構造の排気浄化触媒を調製した。
この排気浄化触媒を用いて、前記の条件でCO酸化活性を評価した。
得られた結果を、他の結果とまとめて図6に示す。
【0037】
実施例2〜4
上層と下層との貴金属担持量の割合を0.1〜3の間で変え、但し担持密度は変えないで調製した他は実施例1と同様にして、2層構造の排気浄化触媒を調製した。
この排気浄化触媒を用いて、前記の条件でCO酸化活性およびHCすり抜け量を評価した。
得られた結果を、他の結果とまとめて図7、図8および図9に示す。
【0038】
以上の図2〜図9の結果から、従来の1層構造の排気浄化触媒では低温でのCO酸化活性が低く、2層構造の排気浄化触媒によりCO酸化活性が高くなり、特に上層担体基材の厚みが30〜80μmであると良好な低温CO酸化活性が達成され、上層の貴金属の担持量(M)と下層の貴金属の担持量(M)との割合(M/M、質量比)が1.5未満であると良好な低温CO酸化活性を示し、上層の貴金属の担持量(M)と下層の貴金属の担持量(M)との割合(M/M、質量比)が0.1以上であると、高SV時の未燃焼ガス(HC)のすり抜け量が少ないこと、
そして、上層の貴金属の担持量(M)と下層の貴金属の担持量(M)との割合(M/M、質量比)が0.1以上1.5未満であることが特に好適であるという結果が得られた。
【0039】
実施例5および比較例5
試験条件4
1)Freshサンプル
Al上にPtに対してPdを0〜33%と変えた比で含浸法で含浸後、120℃で一晩乾燥し、500℃で2時間焼成した。
2)Agedサンプル
Freshサンプルを750℃で5時間、電気炉にて耐久を行った。
算出法:CO吸着量からPt粒径を算出
【0040】
触媒1
Pt/Pd=2/1g/Lの割合で同一担体基材に担持した。基材として壁厚3mil、600cpsiの1.1Lコージェライト基材を使用した。上層にβ−ゼオライト60g/LとPt/Pd/Alが0.67/0.33g/25g/Lとバインダ、下層にβ−ゼオライト30g/LとPt/Pd/Alが1.33/0.33g/50g/Lとバインダを塗布し、担体上の貴金属のPt/Pd=2/1(g/L)である排気浄化触媒を調製した。
【0041】
触媒2
基材として壁厚3mil、600cpsiの1.1Lコージェライト基材を使用した。上層にβ−ゼオライト60g/LとPt/Pd/Alが0.67/0.134g/25g/Lとバインダ、下層にβ−ゼオライト30g/LとPt/Pd/Alが1.33/0.266g/35g/LとPd/Alが0.6/15g/Lとバインダを塗布し、排気浄化触媒を調製した。
【0042】
触媒3
下層のPd/AlIOをPd/CZ(CeO−ZrO複合酸化物)に変えた他は触媒2と同様にして、排気浄化触媒を調製した。
【0043】
上記の各排気浄化触媒を用いて、下記の条件で触媒性能を評価した。
Pt粒径測定
CO吸着量より、Pdへの吸着分を引き、Ptのみの粒径に換算して求めた。
CO酸化活性(CO浄化率)測定
NEDCモード中のUDC領域を模擬して、2.2Lディーゼルエンジンを使用して測定した。
【0044】
上記の排気浄化触媒および従来の触媒を用いて評価を行った。
得られた結果を他の触媒を用いて得られた結果とまとめて図10および図12にまとめて示す。
図10および図12から、本発明の実施態様の下層としての担体基材に貴金属を担持した貴金属コート層と、上層としての担体基材に貴金属を担持したHC(炭化水素)吸着材層との2層構造の排気浄化触媒において、担体基材上の総Pd/Pt=1/5として、従来の排気浄化触媒におけるPd/Pt=1/2との差分のPd(合計貴金属量は同量とする)をOSC材に担持した排気浄化触媒は、従来の排気浄化触媒に比べて排気浄化触媒のCO浄化率の向上に効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の排気浄化触媒は、100℃未満の低温域を含む温度範囲で高いCO酸化活性を示すので、自動車などの内燃機関の低CO化時の排気浄化触媒として、高い触媒性能を実現し得る。
【符号の説明】
【0046】
1 排気浄化触媒
2 基材
3 貴金属コート層
4 HC吸着層
10 触媒層
21 下層の担体基材
22 貴金属
31 上層の担体基材
32 貴金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒層が、下層としての担体基材に貴金属を担持した貴金属コート層と、上層としての担体基材に貴金属を担持したHC(炭化水素)吸着材層とからなり、上層のHC吸着材層の厚みが30〜80μmであることを特徴とする排気浄化触媒。
【請求項2】
前記HC吸着材層の担体基材が、ゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載の排気浄化触媒。
【請求項3】
前記の上層の貴金属の担持量(M)と下層の貴金属の担持量(M)との割合(M/M、質量比)が0.1以上1.5以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気浄化触媒。
【請求項4】
前記貴金属が、Ptおよび/又はPdであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気浄化触媒。
【請求項5】
Pd/Pdが1/9以上1/2未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載の排気浄化触媒。
【請求項6】
Pd/Pdが1/5以上1/2未満である請求項1〜5のいずれか1項に記載の排気浄化触媒。
【請求項7】
触媒層が、下層としての担体基材に貴金属を担持した貴金属コート層と、上層としての担体基材に貴金属を担持したHC(炭化水素)吸着材層とからなり、担体基材上の総Pd/Ptが1/9以上で1/2未満として、担体基材上の触媒層中の総Pd/Pt=1/2とした場合との差分のPdをOSC材上に担持して下層に配置してなる排気浄化触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−220123(P2011−220123A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87029(P2010−87029)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】