説明

排気部品の支持装置

【課題】 車体に排気部品を支持する支持装置に使われるマウントラバーを、遮熱カバーにより高熱から遮熱して、マウントラバーの熱劣化による防振特性の変化を防止する。
【解決手段】 マウントラバーRの長手方向に第1および第2の貫通孔1,2を形成し、第1の貫通孔1側の長手方向の一端から、その第1の貫通孔1を通り、第2の貫通孔2に至る手前までを、ラバー製遮熱カバーCにより被覆し、車体側の上部支持ロッド45を遮熱カバーCのカバー孔20と第1の貫通孔1の双方に挿入し、排気部品側の下部支持ロッド46を第2の貫通孔2にのみ挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用などのエンジンの排気系における、排気管や消音器などの排気部品を車体に支持する、排気部品の支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排気部品を車体に支持する支持装置は、たとえば、後記特許文献1に開示されている。この特許文献1のものは、EPDM製のマウントラバーに、第1貫通孔(10、50)と第2貫通孔(20、60)を形成し、第1貫通孔(10、50)に、車体側の支持部を、第2貫通孔(20、60)に排気部品側の支持部をそれぞれ挿入し、自動車のエンジンの作動によって排気部品側から伝達される振動や車体側から伝達される振動を吸収するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2585805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車のエンジンに接続される排気系の、排気管や消音器などの排気部品は、排気系を流れる排気ガスからの排気熱を受けて高温になるため、上記特許文献1に示されるような排気部品の支持装置にも耐熱性が求められる。
【0005】
特に、EPDMなどのゴム材料で形成されるマウントラバーは、高熱環境下で長時間使用すると、熱劣化してその防振特性が変化することがある為、そうした高熱から遮熱されることが望まれる。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたもので、従来のマウントラバーをそのまま使用でき、簡単な構造でマウントラバーを高熱から遮熱できるようにした、新規な排気部品の支持装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、長手方向に第1の貫通孔と第2の貫通孔を有するマウントラバーと、第1の貫通孔に挿入される上方の車体側支持部と、第2の貫通孔に挿入される下方の排気部品側支持部と、を備える排気部品の支持装置であって、
マウントラバーは、第1の貫通孔側の長手方向の一端から該第1の貫通孔を通り、第2の貫通孔に至る手前までを、マウントラバーとは別体のラバー製遮熱カバーにより被覆され、その遮熱カバーは、第1の貫通孔に対応する位置にカバー孔が形成され、車体側支持部は、カバー孔と第1の貫通孔の双方に挿入され、また排気部品側支持部は、第2の貫通孔にのみ挿入されるようにしたことを特徴としている。
【0008】
前記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1のものにおいて、前記ラバー製遮熱カバーと前記マウントラバーとの間に空間を形成したことを特徴としている。
【0009】
前記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1、または2のものにおいて、前記ラバー製遮熱カバーは帽子状に形成されていて、前記第1の貫通孔側の長手方向の一端から該第1の貫通孔を通り、前記第2の貫通孔に至る手前までの前記マウントラバーの全域を被覆しており、その開口側の端面に、排気部品側支持部との接触を回避するための迂回凹部を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項各項記載の発明によれば、周囲環境がより高温になるマウントラバーの上方部分が、遮熱カバーによってその高温から遮熱される為、マウントラバーの熱劣化による防振特性の変化を防止できる。また、ラバー製の遮熱カバーは、マウントラバーとは別体に形成されて、マウントラバー全体を被覆するのではなく、第1の貫通孔側の長手方向の一端から該第1の貫通孔を通り、第2の貫通孔に至る手前までを被覆するので、マウントラバーへの装着が容易であり、また、従来のマウントラバーをそのまま使用できる。さらに、車体側支持部が遮熱カバーに挿入され、排気部品側支持部は遮熱カバーに挿入されないので、排気部品側からの振動が遮熱カバーに直接伝達されず、遮熱カバーの強度、耐久性に影響を及ぼさない。
【0011】
特に、請求項2記載の発明によれば、遮熱カバーとマウントラバーとの間に空間を設けたので、遮熱カバーとマウントラバーとの密着部分が少なくなり、遮熱カバーからマウントラバーへの熱伝導が小さくなる。これにより、遮熱カバーによる遮熱効果が一層向上する。また、密着部分が少ないので、遮熱カバーがマウントラバーの防振特性に影響を及ぼすこともない。
【0012】
特に、請求項3記載の発明によれば、遮熱カバーは、帽子状に形成されていて、第1の貫通孔側の長手方向の一端から該第1の貫通孔を通り、第2の貫通孔に至る手前までのマウントラバーの全域を被覆しているので、マウントラバーの高熱からの遮熱効果を一層高めることができ、また、遮熱カバーのマウントラバーへの装着が一層容易になり、さらに、遮熱カバーの開口側の端面に、排気部品側支持部との接触を回避するための迂回凹部を形成したので、排気部品側支持部からの振動が遮熱カバーに伝達するのをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の排気部品の支持装置を備えた自動車の排気系を示す図
【図2】図1の2−2線に沿う部分拡大図
【図3】図2の3−3線に沿う拡大図
【図4】図3の4−4線に沿う断面図
【図5】図4の5−5線に沿う拡大断面図
【図6】図4の6−6線に沿う拡大断面図
【図7】図4の7−7線に沿う拡大断面図
【図8】マウントラバーと遮熱カバーの組立前の状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて具体的に説明する。
【0015】
以下の説明において、前後、左右および上下は、排気系Exが搭載される自動車の前進方向を基準にしていう。
【0016】
図1において、自動車用エンジンEの排気系Exにおける排気管Peには、その上流側から下流側に順に、触媒CA、一次消音器M1および二次消音器M2が接続されており、自動車の車体に搭載されるエンジンEから排出される排気ガスは、触媒CAを通ってHC、CO、NOxなどの有害成分が浄化されたのち、一次消音器M1に入り、ここで排気音が、一次的に消音されたのち二次消音器M2に至り、ここで二次的に消音されて、外気に放出される。
【0017】
つぎに、図2〜8を参照して、排気部品としての一次消音器M1の車体Bへの支持装置Sの構成について詳述する。
【0018】
一次消音器M1は、その前後の複数箇所が、本発明に係る支持装置Sにより車体Bに支持され、その支持装置Sは、車体Bに固定される車体側支持部45と、一次消音器M1に固定される排気部品側支持部46と、それら両支持部45,46間に組み付けられるマウントラバーRとより構成される。
【0019】
マウントラバーRは、EPDM(エチレンプロピレンゴム)により形成され、全体形状がほぼ楕円板状であり、その縦方向(長手方向、長径方向)が、自動車の上下方向に、その横方向(短径方向)が自動車の前後方向に、その厚さ方向が自動車の左右方向に向くように配置される。
【0020】
楕円板状のマウントラバーRの縦方向(長手方向)の中央上部には、その平坦な厚さ方向の両面3,4を貫通する第1の貫通孔1が形成され、また、その縦方向(長手方向)の中央下部には、その平坦な厚さ方向の両面3,4を貫通する第2の貫通孔2が形成され、第1の貫通孔1の軸線1Lと第2の貫通孔2の軸線2Lは、相互に平行(図4、5参照)でマウントラバーRの厚さ方向に略水平に延びている。マウントラバーRの横方向(前後方向)の両側面5,6の、上下方向の中間部には、外方に向けて膨出する、一対の膨出部9,10が対称的に形成されており、それらの膨出部9,10は、後述するように、マウントラバーRに装着される遮熱カバーCとの間に空間を形成するためのものである。
【0021】
また、マウントラバーRの上、下面7,8は、第1、第2の貫通孔1,2の周方向に沿う円弧面に形成され、また中央部には、H字状の通孔11が厚さ方向に形成されている。
【0022】
遮熱カバーCは、マウントラバーRと同じくEPDM(エチレンプロピレンゴム)により形成され、マウントラバーRに、その上方から装着できるように、帽子形状に構成される。遮熱カバーCの長手方向(上下方向)の断面形状は逆U字状で、その横断面が横方向(前後方向)に長い長方形状に形成され、マウントラバーRよりも長手方向(上下方向)の長さが短く形成されており、具体的には、図4,5に示すように、マウントラバーRの第1の貫通孔1側の長手方向(上下方向)の一端(上端)から、第1の貫通孔1を通り、第2の貫通孔2に至る手前までを被覆できる、長手方向(上下方向)の長さを有しており、遮熱カバーCの表裏両面(マウントラバーRの厚さ方向の面3,4に対面する面)の上部には、マウントラバーRの第1の貫通孔1に対応する位置に、それぞれカバー孔20が形成され、これらのカバー孔20の中心20cは、その遮熱カバーCをマウントラバーRに装着したとき、第1の貫通孔1の軸線1Lと一致するようにされる。また、遮熱カバーCの上面23は、カバー孔20の周方向に沿う円弧面に形成され、また、その開口側の端面24は平坦に形成されて、その表裏両面の中央部に、前記第2の貫通孔2を回避するように円弧状の迂回凹部25(図8参照)がそれぞれ形成されている。
【0023】
図4〜8に示すように、遮熱カバーCの表裏両面21,22には、カバー孔20を囲むようにU字状の凹入部28,29がそれぞれ形成されると共にその両側に上下方向に直状に延びる凸条30,31;32,33がそれぞれ形成され、さらに、円弧状上面23の内面左右には、一対の凸部34,35がそれぞれ一体に形成され、さらにまた、遮熱カバーCの左右側面の内面には、前記マウントラバーRの膨出部9,10に対応する位置に凹部36,37が形成されており、遮熱カバーCをマウントラバーRに装着したとき、前記凹入部28,29、凸条30,31;32,33および凸部34,35はマウントラバーRの外面に着座し、さらに前記凹部36,37は、マウントラバーRの膨出部9,10に係合して、マウントラバーRと、遮熱カバーCとの間に空間(中空層)が安定して形成される。
【0024】
図8に示すように、遮熱カバーCは、マウントラバーRに、その長手方向(上下方向)から装着される。そして、その装着状態では、図4、5に示すように、遮熱カバーCは、マウントラバーRの長手方向(上下方向)の一端(上端)から、第1の貫通孔1を通り、第2の貫通孔2に至る手前までの全域を被覆する。そして、遮熱カバーCの開口側の端面24は、第2の貫通孔2の手前のところまで達し、その端面24に形成した迂回凹部25は、第2の貫通孔2に挿入される排気部品側支持部46との接触を回避する。
【0025】
図5,7に示すように、互いに一致した第1の貫通孔1とカバー孔20には、それらに跨がってEPDM製のブッシュ40が挿嵌され、そのブッシュ40の両端に形成されるフランジ部40fは、遮熱カバーCに形成したカバー孔20周りの環状凹部20gに収められ、遮熱カバーCを挟んでマウントラバーRに密着される。
【0026】
図2,3に示すように、前記マウントラバーRは、自動車の車体Bに固定される、車体側支持部である上部支持ロッド45と、一次消音器M1に固定される、排気部品側支持部である下部支持ロッド46との間に組み付けられ、上部支持ロッド45、マウントラバーRおよび下部支持ロッド46とで、本発明にかかる、前記支持装置Sが構成される。
【0027】
上部支持ロッド45の略水平な、ポペット状の自由端部45eは、遮熱カバーCの一側より、遮熱カバーCのカバー孔20と第1の貫通孔1の双方にブッシュ40を介して挿入され、また、遮熱カバーCの他側より、排気部品側支持ロッド46の略水平なポペット状の自由端部46eが、第2の貫通孔2にのみ挿入される。
【0028】
排気部品である一次消音器M1は、排気ガスからの排気熱を受けて高温になるが、遮熱カバーCにより、その高熱を有効に遮熱することができ、マウントラバーRにその熱が伝達するのを抑制して、マウントラバーRの熱劣化による防振特性の変化を防止すること可能になる。
【0029】
特に、一次消音器M1からの熱は、上方へ移動するので、マウントラバーRは、上方部程雰囲気温度が高くなるが、遮熱カバーCは、帽子形状に形成されてマウントラバーRの上方側、すなわち、マウントラバーRの上下方向の一端から第1の貫通孔1を通り第2の貫通孔2に至る手前までを被覆しているので、そのマウントラバーRへの装着を容易にし、しかも簡単な構造でマウントラバーRの上方部の全域を確実に遮熱して、マウントラバーRの熱劣化による防振特性の変化を有効に防止することができる。
【0030】
また、車体側支持部である上部支持ロッド45のみが遮熱カバーCに挿入され、排気部品側支持部である下部支持ロッド46は遮熱カバーCに挿入されないので、排気部品である一次消音器M1からの振動が遮熱カバーCに直接伝達されることがなく、遮熱カバーCの強度、耐久性に影響を及ぼすことがない。
【0031】
さらに、遮熱カバーCとマウントラバーRとの間には、空間(中空層)を積極的に設けたので、遮熱カバーCとマウントラバーRとの密着部分が少なくなり、遮熱カバーCからマウントラバーRへの熱伝導は小さくなり、遮熱カバーCによる遮熱効果が一層向上し、また、遮熱カバーCがマウントラバーRの防振特性に影響を及ぼすこともない。
【0032】
さらにまた、遮熱カバーの開口側の端面に、排気部品側支持部との接触を回避するための迂回凹部25を形成したので、排気部品側支持部からの振動が遮熱カバーに伝達するのをより確実に防止することができる。
【0033】
なお、前記実施例において、マウントラバーR、ブッシュ40および遮熱カバーCは、全てEPDM(エチレンプロピレンゴム)により形成されているが、ブッシュ40および遮熱カバーCについては、マウントラバーRを形成するEPDMよりも若干硬度が高いEPDMで形成されている。
【0034】
EPDM(エチレンプロピレンゴム)をマウントラバーRの材料として用いる場合、マウントラバーRの温度が130°程度まで上昇すると、熱劣化によりマウントラバーRの防振特性に変化を生じるので、マウントラバーRを130°以上に上昇させないようにすることが望まれるが、EPDM自体は130°以上に上昇しても、燃えたり、煙を出したりしないので、EPDMを遮熱カバーCの材料として用いる場合は、遮熱カバー(EPDM)Cの温度が130°以上に上昇しても問題はない。したがって、マウントラバーRと同じ材料(EPDM)をマウントラバーRよりもさらに高温になる遮熱カバーに使用している。
【0035】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0036】
たとえば、前記実施例では、本発明を一次消音器M1を車体に支持する場合について実施しているが、これを排気管、他の消音器などの排気部品の車体への支持に実施できることは勿論であり、また、遮熱カバーの材料はEPDMに限らず、EPDMと同等以上の耐熱性があれば、フッ素ゴムなどの他の耐熱性ゴムでもよい。
【符号の説明】
【0037】
1・・・・・・・・・第1の貫通孔
2・・・・・・・・・第2の貫通孔
20・・・・・・・・・カバー孔
24・・・・・・・・・開口側の端面
25・・・・・・・・・迂回凹部
45・・・・・・・・・車体側支持部(上部支持ロッド)
46・・・・・・・・・排気部品側支持部(下部支持ロッド)
C・・・・・・・・・遮熱カバー
R・・・・・・・・・マウントラバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に第1の貫通孔(1)と第2の貫通孔(2)を有するマウントラバー(R)と、
第1の貫通孔(1)に挿入される上方の車体側支持部(45)と、
第2の貫通孔(2)に挿入される下方の排気部品側支持部(46)と、
を備える排気部品の支持装置であって、
マウントラバー(R)は、第1の貫通孔(1)側の長手方向の一端から該第1の貫通孔(1)を通り、第2の貫通孔(2)に至る手前までを、マウントラバー(R)とは別体のラバー製遮熱カバー(C)により被覆され、その遮熱カバー(C)は、第1の貫通孔(1)に対応する位置にカバー孔(20)が形成され、
車体側支持部(45)は、カバー孔(20)と第1の貫通孔(1)の双方に挿入され、排気部品側支持部(46)は、第2の貫通孔(2)にのみ挿入されるようにしたことを特徴とする、排気部品の支持装置。
【請求項2】
前記ラバー製遮熱カバー(C)と前記マウントラバー(R)との間に空間を形成したことを特徴とする、前記請求項1記載の排気部品の支持装置。
【請求項3】
前記ラバー製遮熱カバー(C)は帽子状に形成されていて、前記第1の貫通孔(1)側の長手方向の一端から該第1の貫通孔(1)を通り、前記第2の貫通孔(2)に至る手前までの前記マウントラバー(R)の全域を被覆しており、その開口側の端面(24)に、前記排気部品側支持部(46)との接触を回避するための迂回凹部(25)を形成したことを特徴とする、前記請求項1、または2記載の排気部品の支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−47017(P2013−47017A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185372(P2011−185372)
【出願日】平成23年8月27日(2011.8.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】