説明

排水枡の成形方法

【課題】底部の耐衝撃性を向上させることができ、射出成形あるいは押出成形で発生するスクラップや廃材を再生利用できる三層構造の排水枡の成形方法を提供する。
【解決手段】内金型と外金型とを型締めして桝本体の成形キャビティを形成し、該成形キャビティにおける桝本体のインバート部下面に相当する部位に形成したゲートから成形キャビティ内に未使用の樹脂原料を所定量射出し、次に樹脂スクラップや廃材を粉砕して得た再生原料を含有する樹脂原料を成形キャビティ内に所定量射出し、続けて改質剤を含有する樹脂原料を成形キャビティ内に射出することにより、桝本体の底部に改質剤を含有する樹脂原料からなる中間層を、底部を除く枡本体の全体に前記再生原料を含有する樹脂原料からなる中間層をそれぞれ形成して両中間層の内外面を改質剤及び再生原料を含有しない未使用の樹脂原料からなる内層と外層とで覆った状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水枡の成形方法に関し、詳しくは、耐衝撃性、特に底部の耐衝撃性を向上させるとともに、樹脂スクラップや使用済みとなった廃材の有効活用を図れる排水枡の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排水枡として合成樹脂、例えばポリ塩化ビニル製の排水枡が用いられているが、排水枡の底部(インバート部)は、上方から落下する排水や、施工時に落下した工具、開蓋時に落下した石等によって破損する危険性がある。このため、排水枡の底部のみを耐衝撃性を有する別部材で形成して嵌め合わせることも行われているが、成形加工に手間が掛かってコストアップとなる。また、排水枡全体を耐衝撃性を有する材料、例えば改質剤を添加した樹脂原料で形成することもできるが、樹脂原料コストが大幅にアップしてしまう。
【0003】
一方、樹脂原料からなる家電製品の筐体や、管継手等の建材製品を射出成形するとき、ゲート等の不要部材やスクラップが発生したり、合成樹脂管を連続して押出成形するとき、成形条件が安定するまでの初期段階に大量のスクラップが発生することがある。また、耐用年数が経過して老朽化した合成樹脂管を更新するとき、使用済みとなった廃材が大量に発生することがある。近年は、このような樹脂スクラップや使用済みとなった廃材の処分が大きな問題となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、樹脂スクラップや使用済みとなった廃材は、焼却や埋立等により廃棄処分されていたが、樹脂スクラップ等を焼却処分する場合にはダイオキシン等が発生して環境を汚染するという問題が起きている。また、樹脂スクラップや廃材を地中に埋める場合には、埋める場所が問題となるのは勿論のこと、合成樹脂が長期間に亘って分解・腐食されないため、環境破壊の問題が提起されるに至っている。そこで、樹脂スクラップや使用済みとなった廃材を粉砕し、これを再生原料として利用することが提案されるに至っているが(例えば、特許文献1参照)、その対応は十分とは言い難いものであった。
【特許文献1】特開2001−41362号公報
【0005】
そこで本発明は、排水枡底部の耐衝撃性を効果的に向上させることができるとともに、樹脂成形品を射出成形あるいは押出成形したときに発生したスクラップや使用済みとなった廃材を有効活用することができる三層構造の樹脂成形品を利用した排水枡の成形方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の排水枡の第1の成形方法は、円筒状をなす桝本体の上方が開口し、桝本体の下部にインバート部を有するとともに、該インバート部に連通して桝本体の側壁に排水管の接続部が形成された排水桝の成形方法において、内金型と外金型とを型締めして桝本体の成形キャビティを形成し、該成形キャビティにおける桝本体のインバート部下面に相当する部位に形成したゲートから成形キャビティ内に未使用の樹脂原料を所定量射出し、次に樹脂スクラップや廃材を粉砕して得た再生原料を含有する樹脂原料を成形キャビティ内に所定量射出し、続けて改質剤を含有する樹脂原料を成形キャビティ内に射出することにより、桝本体の底部に改質剤を含有する樹脂原料からなる中間層を、底部を除く枡本体の全体に前記再生原料を含有する樹脂原料からなる中間層をそれぞれ形成して両中間層の内外面を改質剤及び再生原料を含有しない未使用の樹脂原料からなる内層と外層とで覆った状態にすることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の排水枡の第2の成形方法は、円筒状をなす桝本体の上方が開口し、桝本体の下部にインバート部を有するとともに、該インバート部に連通して桝本体の側壁に排水管の接続部が形成された排水桝の成形方法において、内金型と外金型とを型締めして桝本体の成形キャビティを形成し、該成形キャビティにおける桝本体のインバート部下面に相当する部位に形成したゲートから成形キャビティ内に未使用の樹脂原料を所定量射出し、次に樹脂スクラップや廃材を粉砕して得た再生原料を含有する樹脂原料を成形キャビティ内に所定量射出し、続けて改質剤及び再生原料を含有する樹脂原料を成形キャビティ内に射出することにより、桝本体の底部に改質剤を含有する樹脂原料からなる中間層を、底部を除く枡本体の全体に前記再生原料を含有する樹脂原料からなる中間層をそれぞれ形成して両中間層の内外面を改質剤及び再生原料を含有しない未使用の樹脂原料からなる内層と外層とで覆った状態にすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、三層構造の中間層に改質剤を含有する樹脂原料を使用して排水枡底部(インバート部)の耐衝撃性を向上させるようにしたので、排水枡全体の樹脂に改質剤を添加したものに比べて低コストで所要の耐衝撃性を得ることができる。さらに、中間層に再生原料を含有させることにより、樹脂成形品を射出成形あるいは押出成形したときに発生したスクラップや、老朽化して使用済みとなった廃材を有効活用することができる。また、改質剤や再生原料を含有する中間層の樹脂原料を内層や外層からはみ出させることなく、外観良好な三層構造の蓋が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の一形態例を示す排水桝の断面図、図2は図1に示した排水桝の製造工程を示す断面図である。この排水桝は、円筒状をなす桝本体11の上方が開口し、桝本体11の下部にインバート部12を有するとともに、該インバート部12に連通して桝本体11の側壁に排水管の接続部13a,13bが形成されたものであって、樹脂成形品のスクラップや廃材を粉砕して得た再生原料及び改質剤を含有する樹脂原料で桝本体11の中間層Aを形成するとともに、該中間層Aの内外面を再生原料及び改質剤を含有しない未使用の樹脂原料からなる内層Bと外層Cとで覆ったものである。
【0010】
前記中間層Aに用いられる耐衝撃性改質剤は、樹脂の種類に応じて適当なものを使用することができ、混合量も樹脂の種類や改質の程度に応じて適当に設定することができる。改質剤としては、ゴム系物質、例えばMBS樹脂等を使用することができ、その他の添加剤として、スズ安定剤、熱安定剤、滑剤、加工助剤、顔料、可塑剤、充填剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等の各種の添加剤を添加することができる。
【0011】
好適な配合例としては、ポリ塩化ビニル100重量部に対し、改質剤8〜15重量部、安定剤0.5〜3重量部、滑剤0.1〜1.0重量部、加工助剤0.1〜1.0重量部、顔料0.1〜1.0重量部を挙げることができる。
【0012】
また、樹脂スクラップや廃材を粉砕して得た再生原料は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる樹脂成形品、例えばペットボトル、家電製品の筐体や管継手等の建材製品の廃材、射出成形の際に発生したゲート等の不要部材やスクラップを粉砕して得たものである。中間層Aを構成する樹脂原料の主成分としては、再生原料のみ、あるいはこの再生原料に未使用の樹脂原料を混合したものを使用することができ、また、内層B及び外層Cを構成する樹脂原料としては、前記中間層Aと相溶性のある樹脂原料であって、再生原料や改質剤を含有しないポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の未使用の樹脂原料が使用できる。
【0013】
このように中間層Aと、該中間層Aの内外面を覆う内層B及び外層Cとして各種の樹脂原料が使用できるが、塩化ビニル樹脂からなる使用済みの廃材やスクラップが大量に発生している現状や、排水枡に接続する排水管として硬質塩化ビニル樹脂からなるパイプが多用されていることを勘案すると、中間層Aには硬質塩化ビニル樹脂からなる再生原料が好適に使用でき、この中間層Aの内外面を覆う内層B及び外層Cには、再生原料を含有しない未使用の硬質塩化ビニル樹脂が好適に使用できる。
【0014】
また、排水枡を構成する樹脂原料全体に占める前記再生原料の割合は、10〜80重量%とするのが好ましい。この再生原料の割合が10重量%未満では、廃材やスクラップを有効活用するという点では十分な効果が期待できず、逆にこの割合が80重量%を超えると再生原料を含有しない樹脂原料からなる内層B及び外層Cが肉薄となるため、内層B及び外層Cから中間層Aを構成する再生原料が部分的にはみ出して外観を損ねるという事態が発生することになる。因みに、サイズ150〜350の排水枡における側壁部分の肉厚は5〜20mm程度となる。
【0015】
前記排水枡は、射出成形によって製造されるものであって、次にこの製造工程を説明する。図2における符号51,52,53は内金型、61,62は外金型であって、前記内金型と外金型とを型締めすることによって枡本体11の成形キャビティが形成される。この成形キャビティ内に樹脂原料を射出するゲート62Gは外金型62に設けられており、枡本体11のインバート部下面に相当する部位に設けられている。このように円筒状をなす枡本体11の対称かつ中心部近傍位置となるインバート部下面にゲート62Gを設けると、成形キャビティ内に射出した樹脂原料を末端部まで満遍なく行き渡らせることができとともに、ゲート62Gの跡(ゲート口部62M(図1参照))がインバート部下面に現われても人目に触れないという外観上の利点がある。
【0016】
前記ゲート62Gには射出成形機のノズル71が当接できるようになっており、ノズル71内に設けられた第一樹脂流路72から再生原料や改質剤を含有しない未使用の樹脂原料が射出され、第二樹脂流路73から再生原料及び改質剤を含有する樹脂原料が射出されるようになっている。射出成形操作は、内金型と外金型とを型締めして成形キャビティを形成した後、まず最初に、第一樹脂流路72から再生原料や改質剤を含有しない未使用の樹脂原料を所定量射出する。次いで、樹脂スクラップや廃材を粉砕して得た再生原料及び耐衝撃性を向上させるための改質剤を含有する樹脂原料を第二樹脂流路73から成形キャビティ内に射出し、該キャビティ内を樹脂原料でほぼ充満させる。
【0017】
このとき、先に成形キャビティ内に射出された未使用の樹脂原料中に後から射出された再生原料及び改質剤を含有する樹脂原料が潜り込み、双方の樹脂原料がキャビティの末端部まで満遍なく行き渡る。すなわち、中間層Aとなる再生原料及び改質剤を含有する樹脂原料の表面がスキン層(内層B及び外層C)で覆われた状態でキャビティの末端部まで満遍なく行き渡るため、内層B及び外層Cから中間層Aがはみ出すこともない。なお、最初に射出する再生原料及び改質剤を含有しない未使用の樹脂原料と、その後で射出する再生原料及び改質剤を含有する樹脂原料の割合は、中間層Aと内層B及び外層Cの肉厚や、樹脂原料の種類等を考慮して適宜設定することができる。
【0018】
最後に、第一樹脂流路72から再生原料及び改質剤を含有しない未使用の樹脂原料を少量成形キャビティ内に射出する。これにより、ゲート62Gに対応するゲート口部62Mを再生原料及び改質剤を含有しない樹脂原料で覆うことができるとともに、次のショットのためにノズル71の先端部の滞留樹脂を再生原料及び改質剤を含有しない未使用の樹脂原料に置換することができる。以上の成形工程を経て、内金型及び外金型を型開きすると、図1に示したように外観良好な排水桝が得られる。
【0019】
なお、上記説明では、樹脂製排水枡の中間層として、改質剤及び再生原料の双方を含有した樹脂原料を全体に使用したが、再生原料を使用せずに改質剤のみを含有させることによって排水枡全体の耐衝撃性を向上させることができ、また、改質剤を使用せずに再生原料のみを含有させることによってスクラップや廃材の有効活用が図れる。そして、改質剤及び再生原料の双方を含有させることにより、耐衝撃性の向上とスクラップや廃材の有効活用が図れることになる。
【0020】
さらに、前記製造工程において、第一樹脂流路72から再生原料を含有しない未使用の樹脂原料を射出した後、第二樹脂流路73から成形キャビティ内に射出する樹脂原料を、最初に改質剤を含有せずに再生原料を含有する樹脂原料を射出し、続けて改質剤を含有する樹脂原料あるいは改質剤及び再生原料の双方を含有した樹脂原料を射出することにより、桝本体11の底部、即ちインバート部12の部分の中間層Aを改質剤を含有した樹脂原料からなる耐衝撃性に優れたものとし、排水枡の他の部分は、改質剤を含有せずに再生原料を含有した樹脂原料からなる中間層Aとすることができる。
【0021】
このとき、第二樹脂流路73から最初に射出する再生原料を含有した樹脂原料の射出量を、該樹脂原料の射出によってキャビティの7〜8割が満たされる量とし、次に射出する改質剤を含有した樹脂原料でキャビティを満たすように設定することにより、通常の排水枡におけるインバート部12の中間層Aを改質剤によって耐衝撃性を向上させたものにすることができる。これにより、改質剤の使用量を最小限に抑えて必要部分の耐衝撃性を向上させながら、再生原料の有効利用も図れることになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の成形方法で成形された排水桝の一形態例を示す断面図である。
【図2】排水桝の製造工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
11…桝本体、12…インバート部、13a,13b…接続部、51,52,53…内金型、61,62…外金型、62G…ゲート、62M…ゲート口部、71…ノズル、72…第一樹脂流路、73…第二樹脂流路、A…中間層、B…内層、C…外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなす桝本体の上方が開口し、桝本体の下部にインバート部を有するとともに、該インバート部に連通して桝本体の側壁に排水管の接続部が形成された排水桝の成形方法において、内金型と外金型とを型締めして桝本体の成形キャビティを形成し、該成形キャビティにおける桝本体のインバート部下面に相当する部位に形成したゲートから成形キャビティ内に未使用の樹脂原料を所定量射出し、次に樹脂スクラップや廃材を粉砕して得た再生原料を含有する樹脂原料を成形キャビティ内に所定量射出し、続けて改質剤を含有する樹脂原料を成形キャビティ内に射出することにより、桝本体の底部に改質剤を含有する樹脂原料からなる中間層を、底部を除く枡本体の全体に前記再生原料を含有する樹脂原料からなる中間層をそれぞれ形成して両中間層の内外面を改質剤及び再生原料を含有しない未使用の樹脂原料からなる内層と外層とで覆った状態にすることを特徴とする排水桝の成形方法。
【請求項2】
円筒状をなす桝本体の上方が開口し、桝本体の下部にインバート部を有するとともに、該インバート部に連通して桝本体の側壁に排水管の接続部が形成された排水桝の成形方法において、内金型と外金型とを型締めして桝本体の成形キャビティを形成し、該成形キャビティにおける桝本体のインバート部下面に相当する部位に形成したゲートから成形キャビティ内に未使用の樹脂原料を所定量射出し、次に樹脂スクラップや廃材を粉砕して得た再生原料を含有する樹脂原料を成形キャビティ内に所定量射出し、続けて改質剤及び再生原料を含有する樹脂原料を成形キャビティ内に射出することにより、桝本体の底部に改質剤を含有する樹脂原料からなる中間層を、底部を除く枡本体の全体に前記再生原料を含有する樹脂原料からなる中間層をそれぞれ形成して両中間層の内外面を改質剤及び再生原料を含有しない未使用の樹脂原料からなる内層と外層とで覆った状態にすることを特徴とする排水桝の成形方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−160942(P2007−160942A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−565(P2007−565)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【分割の表示】特願2002−215727(P2002−215727)の分割
【原出願日】平成14年7月24日(2002.7.24)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】