説明

排熱回収装置、排気ガス浄化システム及び排熱回収装置の製造方法

【課題】構造が単純で製造し易く、しかも確実に下流側の排気ガスの熱を上流側の排気ガスに熱伝達できる排熱回収装置と、この排熱回収装置を用いて、内燃機関等の排気ガス通路に配置された排気ガス処理装置で発生した熱を、上流側の排気ガスに確実に伝達できる排気ガス浄化システムを提供する。
【解決手段】高熱伝導率の平板又は波板の第1板状部材51と高熱伝導率の波板の第2板状部材52に排気ガス通過用の孔51a、52aを設けて、これらの板状部材51、52を重ね合わせて同芯状に巻き込んだコア構造の前部コア部11と後部コア部12と、この間に挟まれたガス遮断部材13とを筒状のケース14で収納し、該ケース14の軸方向の端部に第1ガス入口15と第1ガス出口16を設け、前記前部コア部11の外周側に第2ガス出口17を、前記後部コア部12の外周側に第2ガス入口18を設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃燃機関等の排気ガス通路に配置された触媒等の排気ガス処理装置で発生した熱を、この排気ガス処理装置から上流側に伝達する排熱回収装置と、この排熱回収装置を備えた排気ガス浄化システムと、排熱回収装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス浄化用触媒を排気管内に設置したエンジンでは、この触媒における発熱により、排気ガス温度が、触媒入口側よりも触媒出口側のほうが高くなることがある。一方、市街地走行時のディーゼルエンジンでは、排気ガス浄化用の触媒の温度は200℃程度と比較的低いため、触媒をより高い温度にすることで触媒活性が上がり、排気ガスの浄化効率が向上することが知られているが、従来の排気ガス浄化システムの構成では、触媒における発熱で排気ガスの温度が上昇しても、この熱を利用することなく、大気中に排出していた。
【0003】
これに関連して、触媒の昇温や保温を効率的に行うために、PMフィルタの排気上流側の排気管と排気下流側の排気管との間に、排気下流側の熱を回収して蓄熱し、蓄えた熱をその排気上流側の排気ガスに伝達する熱交換器を介設した内燃機関の排気浄化装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この熱交換器は回転型蓄熱式熱交換器であり、蓄熱時間と放熱時間が交互に存在するため、熱伝達が間歇となり、しかも、PMフィルタの前後配管を熱交換器に接続するために広いスペースを必要とし、また、配管が曲がる部分が多くなり配管抵抗も大きくなる。その上、回転型蓄熱式熱交換器は、製造が難しく、コスト高となり、また、装置が回転駆動するため、装置の信頼性が低下するという問題がある。
【特許文献1】特開2002−38935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、構造が単純で製造し易く、しかも確実に下流側の排気ガスの熱を上流側の排気ガスに熱伝達できる排熱回収装置と、この排熱回収装置を用いて、内燃機関等の排気ガス通路に配置された触媒等の排気ガス処理装置で発生した熱を、上流側の排気ガスに確実に伝達できる排気ガス浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような目的を達成するための排熱回収装置は、少なくとも一つの排気ガス処理中に発熱する排気ガス処理装置で発生する熱を回収して、この回収した熱を前記排気ガス処理装置の上流側で排気ガスに伝達する排熱回収装置において、高熱伝導率の平板又は波板で構成される第1板状部材と高熱伝導率の波板で形成される第2板状部材のそれぞれに排気ガス通過用の孔を設けて、この第1板状部材と第2板状部材を重ね合わせて同芯状に巻き込んで形成されたコア構造の前部コア部と後部コア部と、この両者の間に挟まれたガス遮断部材とを筒状のケースで収納して構成され、該ケースの軸方向の端部に第1ガス入口と第1ガス出口を設けると共に、該ケースの前記前部コア部の外周側に、軸方向と交差する方向に排気ガスが流れる第2ガス出口を設け、該ケースの前記後部コア部の外周側に、該ケースの軸方向と交差する方向に排気ガスが流れる第2ガス入口を設けて構成する。
【0007】
この高熱伝導率とは金属と同等な熱伝導率のことを言い、20℃で、15〜450W/m・K(12.9〜387kcal/mh℃)の熱伝導率とすることが好ましい。また、外筒となるケースは、両端と、2分割したコア構造に対応して設けられた側面の2ヶ所の、合わせて4箇所の開口部を有する構造であり、このケースの中に同芯状コア構造の前部コア部と後部コア部を挿入して配置して排熱回収装置とする。
【0008】
この構成によれば、高熱伝導率の第1板状部材と第2板状部材とにより、発熱する排気ガス処理装置の下流側の排気ガスが通過する後部コア部から、発熱する排気ガス処理装置の上流側の排気ガスが通過する前部コア部に熱伝達を確実に行うことができる。その上に、排熱回収装置の構造が単純で製造が容易となり、また、駆動部分が無いので故障が少なく、装置としての信頼性が高い。
【0009】
上記の排熱回収装置において、前記前部コア部又は前記後部コア部の少なくとも一方に触媒を担持させて形成する。これにより、前部コア部又は後部コア部の少なくとも一方を排気ガス処理用の触媒装置として使用できるようになる。例えば、酸化触媒(DOC)として使用する場合には、貴金属触媒をコーティングする。
【0010】
上記の排熱回収装置において、前記ガス遮蔽部材が、平板で形成された前記第1板状部材の前記孔を避けた位置で、前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に前記第2板状部材を前部と後部に分割して配置されて、前記第1板状部材と前記第2板状部材と共に同芯状に巻き込まれた、前記第2部材の波板と同じ高さの芯部材で形成される。
【0011】
この構成は、ステンレス箔等の平板と波板を重ねて、同芯状に巻き込んだコア構造の応用であり、孔の開いた平板と、同じく孔の開いた波板で前後に2分割したものを用い、この2つの波板の間に波板と同じ高さを持つ芯線や平棒や針金等の芯部材を配置して、同芯状に巻き込んだコア構造とするものである。この芯部材と第1板状部材と第2板状部材との接合は蝋付けや溶接、溶着等で行うことができる。
【0012】
この構成によれば、第1板状部材は連通し、第2板状部材がガス遮蔽部材である芯線で2分割された前部コア部と後部コア部となるので、連通した第1板状部材により確実且つ効率よく熱伝達できる。また、ガス遮蔽部材の芯線も金属等の高熱伝導率の材料で形成すると、第2板状部材とガス遮蔽部材経由でも効率よく熱伝導することができる。
【0013】
あるいは、上記の排熱回収装置において、前記ガス遮蔽部材を、円盤状の板状部材で形成し、前記前部コア部と前記後部コア部の間に設けて構成する。この構成によれば、製造が著しく容易となる。このガス遮蔽部材と前部コア部と後部コア部との接合は蝋付けや溶接、溶着等で行うことができる。
【0014】
上記の目的を達成するための排気ガス浄化システムは、少なくとも一つの排気ガス処理中に発熱する排気ガス処理装置で発生する熱を回収して、この回収した熱を前記排気ガス処理装置の上流側で排気ガスに伝達する排気ガス浄化システムにおいて、上記の排熱回収装置を備えて構成される。
【0015】
この構成によれば、比較的簡単な構成で、発熱する排気ガス処理装置の下流側の排気ガスが通過する後部コア部から、発熱する排気ガス処理装置の上流側の排気ガスが通過する前部コア部に熱伝達を確実に行うことができる。
【0016】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、発熱する前記排気ガス処理装置を、前記排熱回収装置の前記第2ガス出口と前記第2ガス入口の間に配設して、排気ガスが、前記排熱回収装置の前記第1ガス入口、前記前部コア部、前記第2ガス出口を経由して、前記排気ガス処理装置に流入し、更に、前記排熱回収装置の前記第2ガス入口、前記後部コア部、前記第1ガス出口を経由して流れるように構成する。
【0017】
この構成によれば、発熱する排気ガス処理装置の下流側の排気ガスが通過する後部コア部から、発熱する排気ガス処理装置の上流側の排気ガスが通過する前部コア部に熱伝達を確実に行うことができる。
【0018】
あるいは、上気の排気ガス浄化システムにおいて、発熱する前記排気ガス処理装置を、前記排熱回収装置の前記後部コア部で形成する。これは後部コア部に触媒を担持させたり、PMを捕集できるような材料を詰めたりすることで形成することができる。この構成によれば、排気ガス処理装置と排熱回収装置とが兼用となるので、排気ガス浄化システムを単純化することができる。
【0019】
上記の排熱回収装置及び排気ガス浄化システムにおける排気ガス処理装置としては、酸化触媒装置(DOC)、選択的還元触媒装置(SCR)、NOx吸蔵還元型触媒装置(LNT)、触媒付きフィルタ装置(CSF)、触媒を担持しないフィルタ装置(DPF)、炭化水素吸蔵触媒装置(HCトラップ)の一つ又は幾つかの組合せで形成することができる。
【0020】
また、本発明の排熱回収装置の製造方法は、メタル製の孔開き平板である第1板状部材とメタル製の孔開き波板である第2板状部材を積層したものを同芯状に巻き込む際に、前記第2板状部材を巻き込む際の軸方向に関して2分割し、この2つの第2板状部材の間に、この第2板状部材と同じ高さを持つ芯部材を配置し、前記第1板状部材と前記第2板状部材と前記芯部材同芯状に巻き込んで円筒形状のコア構造を形成し、前記芯部材と前記第1板状部材と前記第2板状部材52とを接合し、接合後に、前記芯部材と前記第1板状部材と前記第2板状部材52を外筒となるケースに収納し、前後端の2ヶ所と外筒側面の軸方向の2ヶ所との合わせて4ヶ所に開口部を設け、このケースに前記コア構造を挿入して固定することを特徴とする。この製造方法によれば、比較的単純な工程で容易に排熱回収装置を製造できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る排熱回収装置及び排気ガス浄化システムによれば、高熱伝導率の第1板状部材と第2板状部材とにより、発熱する排気ガス処理装置の下流側の排気ガスが通過する後部コア部から、発熱する排気ガス処理装置の上流側の排気ガスが通過する前部コア部に熱伝達を確実に行うことができる。その上、排熱回収装置の構造が単純で製造が容易となり、また、駆動部分が無いので故障が少なく、装置としての信頼性が高いものとなる。
【0022】
また、本発明に係る排熱回収装置の製造方法によれば、比較的単純な工程で容易に排熱回収装置を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施の形態の排熱回収装置、排気ガス浄化システム及び排熱回収装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、排熱回収装置10は、排気ガス処理中に発熱する排気ガス処理装置で発生する熱を回収して、この回収した熱を排気ガス処理装置の上流側で排気ガスGに伝達する装置である。この排熱回収装置10は、コア構造の前部コア部11と同じくコア構造の後部コア部12と、この両者の間に挟まれたガス遮断部材13とを筒状のケース14に収納して構成される。
【0025】
このケース14の軸方向(コア構造の芯が延びている方向)の端部に前部入口(第1ガス入口)15と後部出口(第1ガス出口)16を設けると共に、ケース14の前部コア部11の外周側に、ケース14の軸方向と交差する方向に排気ガスGが流れる前部出口(第2ガス出口)17を設け、このケース14の後部コア部12の外周側に、ケース14の軸方向と交差する方向に排気ガスGが流れる後部入口(第2ガス入口)18を設けて構成する。
【0026】
つまり、外筒となるケース14は、両端の2ヶ所と、2分割したコア部11、12に対応して設けられた側面の2ヶ所との合わせて4ヶ所の開口部15、16、17、18を有する構造であり、このケースの14中に同芯状コア構造の前部コア部11と後部コア部12をガス遮蔽部材13を挟んだ状態で配置した構造となる。
【0027】
次に、排熱回収装置10の製造方法について説明する。この前部コア部11と後部コア部12のコア構造は、図2に示すように、メタル製の孔開き平板である第1板状部材51とメタル製の孔開き波板である第2板状部材52を積層して、チャンネル53間を流通可能にした構造を用いることができる。この第2板状部材52の波のピッチは例えば1mm程度に整形される。また、孔51a、52aの径としては、1mmより小さいものから、10mmに近いものまで種々の大きさを用いることができる。
【0028】
この板状部材51、52としては、排気ガスの高熱に耐えられるように、例えば、厚さ30μm〜50μmのステンレス薄板を用いる。このステンレス薄板は、メタル担体触媒に一般的に使用されており、熱伝導率は16W/mK〜21W/mK(14kcal/mh℃〜18kcal/mh℃)である。なお、板状部材51、52としては、高い熱伝導率を持つ材料が好ましく加工が容易な金属材料が好ましいが、その他の材料であっても高い熱伝導率を持つ材料で使用することができる。
【0029】
この平板の第1板状部材51と波板の第2板状部材52を積層したものを同芯状に巻き込んで円筒状に構成するが、図3の展開図に示すように、波板である第2板状部材52を巻き込む際の軸方向に関して2分割した上で、この2つの波板52、52の間に、波板52と同じ高さを持つ芯部材である芯線13aを配置する。この芯線13aと第1板状部材51や第2板状部材52との接合を蝋付けや溶接、溶着等で行う。図4に平板の第1板状部材51と波板の第2板状部材52の積層状態を示し、図5に芯線13aの配置状態を示す。なお、芯線の替わりに平棒又は針金を用いてもよい。
【0030】
この状態で、第1板状部材51、第2板状部材52及び芯線13aを同芯状に巻き込んで、図6に示すようなコア構造を形成する。この時に、巻き上がり時のコア長さL、平板の幅をLf、波板の幅をLw1、Lw2、芯線の幅をBとすると、L=Lf=Lw1+B+Lw2となる。巻き上げた後に、芯線13aの周囲で平板の第1板状部材51と波板の第2板状部材52を合わせて蝋付けにより固定する。
【0031】
この円筒状の前部コア部11と後部コア部12をスチール製の外筒であるケース14に挿入、蝋付けして構成する。このケース14には、図1に示すように、一般的な触媒構造での開口部と同じケース14の前後端の2ヶ所と、今回特有の外筒側面の軸方向の2ヶ所との合わせて4ヶ所の開口部15、16、17、18を設けて形成する。この側面開口部である前部出口17と後部入口18は各々が2分割して巻き込まれた波板の第2板状部材15で形成された前部コア部11と後部コア部12のそれぞれのケース11の軸方向での中央付近に当たる部分に形成する。これにより、排熱回収装置10が完成する。
【0032】
この製造方法で製造されたコア構造によれば、第1板状部材51は連通し、第2板状部材52がガス遮蔽部材13である芯線13aで2分割された前部コア部11と後部コア部12となるので、連通した第1板状部材51により確実且つ効率よく熱伝達できる。また、ガス遮蔽部材13の芯線13aを金属等の高熱伝導率の材料で形成すると、第2板状部材52とガス遮蔽部材13経由でも効率よく熱伝導することができる。
【0033】
また、図6に示すようなコア構造の別の製造方法としては、ガス遮蔽部材13を、円盤状の板状部材で形成し、それぞれ別体として形成したコア構造の前部コア部11と後部コア部12の間に設けて、構成する。この構成によれば、製造が著しく容易となる。このガス遮蔽部材13と前部コア部11と後部コア部12との接合は蝋付けや溶接、溶着等で行う。この構成によっても、接合を熱伝導が良い状態になるように行えば、下流側の高温の排気ガスが通過する後部コア部12から、上流側の低温の排気ガスが通過する前部コア部11に熱伝達を確実に行うことができる。
【0034】
なお、前部コア部11又は後部コア部12の少なくとも一方において、触媒をコーティングして形成する。例えば、酸化触媒(DOC)として使用する場合には、貴金属触媒をコーティングする。これにより、この部分を排気ガス処理用の触媒装置として使用できるようになる。
【0035】
上記の構成の排熱回収装置10では、図1に示すように、前部入口15に流入した排気ガスGは前部コア部11と後部コア部12との境においてガス遮蔽部材13により、後部出口16方向への流れが遮断されるので、平板の第1板状部材51及び波板の第2板状部材52に設けた孔51a、52aを通過して前部出口17に流出する。同様に、後部入口18より流入する排気ガスは、後部出口15より排出する。なお、逆方向の流れも同様となる。
【0036】
次に、上記の排熱回収装置10を用いた排気ガス浄化システムについて説明する。図7及び図8に示すように、この排気ガス浄化システム1は、エンジン(内燃機関)の排気ガスGが前部入口15に流入するように、排気管(図示しない)が接続される。また、前部出口17と後部入口18との間に適宜、排気ガス処理に際して発熱する排気ガス浄化処理装置19、20(図7及び図8では2個)を設けて、それぞれをU字形状の配管21を用いて接続する。また、後部出口16に必要に応じて排気消音管(図示しない)を設けた排気管(図示しない)を接続し、浄化された排気ガスGcが大気中に放出されるように構成する。
【0037】
つまり、発熱する排気ガス処理装置19、20を、排熱回収装置10の前部出口17と後部入口18の間に配設して、排気ガスGが、排熱回収装置10の前部入口15、前部コア部11、前部出口17を経由して、排気ガス処理装置19、20に流入し、更に、排熱回収装置10の後部入口18、後部コア部12、後部出口15を経由して流れるように構成する。
【0038】
また、排熱回収装置10の後部コア部12に触媒を担持させたり、PMを捕集できるような材料を詰めたりして後部コア部12で発熱する排気ガス処理装置を形成した場合には、排気ガス処理装置と排熱回収装置10とが兼用となるので、排気ガス浄化システムを単純化することができる。
【0039】
また、発熱する排気ガス処理装置19、20としては、酸化触媒装置(DOC)、選択的還元触媒装置(SCR)、NOx吸蔵還元型触媒装置(LNT)、触媒付きフィルタ装置(CSF)、触媒を担持しないフィルタ装置(DPF)、炭化水素吸蔵触媒装置(HCトラップ)の一つ又は幾つかの組合せが考えられる。
【0040】
上記の構成の排気ガス浄化装置10によれば、高熱伝導率の第1板状部材51と第2板状部材52とにより、発熱する排気ガス処理装置19、20の下流側の排気ガスGが通過する後部コア部12から、発熱する排気ガス処理装置19、20の上流側の排気ガスGが通過する前部コア部11に熱伝達を確実に行うことができる。その上に、排熱回収装置10の構造が単純で製造が容易となり、また、駆動部分が無いので故障が少なく、装置としての信頼性が高くなる。
【0041】
また、上記の構成の排気ガス浄化システム1によれば、排熱回収装置10及び排気ガス処理装置19、20に流入する排気ガスG中に、炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)のような触媒反応で発熱する成分があると、流入する排気ガスGの温度よりも、排気ガス処理装置19、20から流出する排気ガスGの温度の方が高くなる。
【0042】
従って、この排熱回収装置10において、後部入口18より後部出口16に至る部分の後部コア部12の方が、前部入口15より前部出口17に至る部分の前部コア部11よりもより高い温度の排気ガスに晒されることになる。排熱回収装置10の前部コア部11と後部コア部12は、金属製の一枚の平板等の第1板状部材で熱伝導による熱伝達が高いように構成されており、熱伝達が極めてよいので、より高い温度の排気ガスに晒されている後部コア部12より、低い温度の排気ガスに晒されている前部コア部11に向かうに黒矢印Hの熱の流れができる。
【0043】
この結果として、前部コア部11は流入する排気ガスGよりも温度が高くなるので、流入する排気ガスGの温度を上げることができる。即ち、排気ガス処理装置19、20で発熱により上昇した、排気ガス処理装置19、20から竜する排気ガスGの熱(排熱)を回収して、排気ガス処理装置19、20に流入する排気ガスに与えることができる。
【0044】
従って、比較的簡単な構成で、発熱する排気ガス処理装置19、20の下流側の排気ガスGが通過する後部コア部12から、発熱する排気ガス処理装置19、20の上流側の排気ガスGが通過する前部コア部11に熱伝達を確実に行うことができる。
【0045】
また、本発明に係る排熱回収装置の製造方法によれば、比較的単純な工程で容易に排熱回収装置を製造できる。
【0046】
なお、本発明に係る排気ガス浄化システムによれば、状況にもよるが、流入排気ガス温度の上昇分として、150℃〜300℃程度の温度上昇も見込めると考えられる。一方、市外地走行におけるディーゼルエンジン車の排気温度は200℃程度であり、また、多くの触媒の活性が発揮され始める温度は、この温度領域である。そのため、少なくとも50℃〜100℃程度の温度上昇があれば、触媒の活性のよい温度帯で触媒を使用することができるため、本発明の排気ガス浄化システムを採用することで、触媒をより高い温度に維持することが可能となり、触媒における浄化率を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】孔開き平板と孔あき波板の重なり構造を模式的に示す図である。
【図3】コア構造を展開した様子を模式的に示す図である。
【図4】図3のA部分の拡大図である。
【図5】図3のB部分の拡大図である。
【図6】前部コア部と後部コア部とガス遮蔽部材の構成を模式的に示す図である。
【図7】本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムの構成を模式的に示す斜視図である。
【図8】本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システムの構成を模式的に示す側断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 排気ガス浄化システム
10 排熱回収装置
11 前部コア部
12 後部コア部
13 ガス遮断部材
13a 芯線(芯部材)
14 ケース
15 前部入口(第1ガス入口)
16 後部出口(第1ガス出口)
17 前部出口(第2ガス出口)
18 後部入口(第2ガス入口)
19、20 排気ガス浄化処理装置
21 U字形状の配管
51 第1板状部材
51a、52a 孔
52 第2板状部材
53 チャンネル
G 排気ガス
Gc 浄化された排気ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの排気ガス処理中に発熱する排気ガス処理装置で発生する熱を回収して、この回収した熱を前記排気ガス処理装置の上流側で排気ガスに伝達する排熱回収装置において、
高熱伝導率の平板又は波板で構成される第1板状部材と高熱伝導率の波板で形成される第2板状部材のそれぞれに排気ガス通過用の孔を設けて、この第1板状部材と第2板状部材を重ね合わせて同芯状に巻き込んで形成されたコア構造の前部コア部と後部コア部と、この両者の間に挟まれたガス遮断部材とを筒状のケースで収納して構成され、
該ケースの軸方向の端部に第1ガス入口と第1ガス出口を設けると共に、該ケースの前記前部コア部の外周側に、軸方向と交差する方向に排気ガスが流れる第2ガス出口を設け、該ケースの前記後部コア部の外周側に、該ケースの軸方向と交差する方向に排気ガスが流れる第2ガス入口を設けたことを特徴とする排熱回収装置。
【請求項2】
前記前部コア部又は前記後部コア部の少なくとも一方に触媒を担持させて形成することを特徴とする請求項1記載の排熱回収装置。
【請求項3】
前記ガス遮蔽部材が、平板で形成された前記第1板状部材の前記孔を避けた位置で、前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に前記第2板状部材を前部と後部に分割して配置されて、前記第1板状部材と前記第2板状部材と共に同芯状に巻き込まれた、前記第2部材の波板と同じ高さの芯部材で形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の排熱回収装置。
【請求項4】
前記ガス遮蔽部材を、円盤状の板状部材で形成し、前記前部コア部と前記後部コア部の間に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の排熱回収装置。
【請求項5】
少なくとも一つの排気ガス処理中に発熱する排気ガス処理装置で発生する熱を回収して、この回収した熱を前記排気ガス処理装置の上流側で排気ガスに伝達する排気ガス浄化システムにおいて、請求項1、2、3又は4記載の排熱回収装置を備えたことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項6】
発熱する前記排気ガス処理装置を、前記排熱回収装置の前記第2ガス出口と前記第2ガス入口の間に配設して、排気ガスが、前記排熱回収装置の前記第1ガス入口、前記前部コア部、前記第2ガス出口を経由して、前記排気ガス処理装置に流入し、更に、前記排熱回収装置の前記第2ガス入口、前記後部コア部、前記第1ガス出口を経由して流れるように構成したことを特徴とする請求項5記載の排気ガス浄化システム。
【請求項7】
発熱する前記排気ガス処理装置を、前記排熱回収装置の前記後部コア部で形成したことを特徴とする請求項5記載の排気ガス浄化システム。
【請求項8】
排熱回収装置の製造方法であって、メタル製の孔開き平板である第1板状部材とメタル製の孔開き波板である第2板状部材を積層したものを同芯状に巻き込む際に、前記第2板状部材を巻き込む際の軸方向に関して2分割し、この2つの第2板状部材の間に、この第2板状部材と同じ高さを持つ芯部材を配置し、前記第1板状部材と前記第2板状部材と前記芯部材同芯状に巻き込んで円筒形状のコア構造を形成し、前記芯部材と前記第1板状部材と前記第2板状部材52とを接合し、接合後に、前記芯部材と前記第1板状部材と前記第2板状部材52を外筒となるケースに収納し、前後端の2ヶ所と外筒側面の軸方向の2ヶ所との合わせて4ヶ所に開口部を設け、このケースに前記コア構造を挿入して固定することを特徴とする排熱回収装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−293439(P2009−293439A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145959(P2008−145959)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】