説明

排熱回収装置

【課題】簡易な構成で作動流体の放出音を低減すること。
【解決手段】この排熱回収装置10は、内燃機関1の排気Exの熱を回収して駆動される。排熱回収装置10は、作動流体である空気を圧縮する圧縮機20と、圧縮機20で圧縮された空気を内燃機関1の排熱で加熱する熱交換器12と、熱交換器12から送られる空気を断熱膨張させることによって仕事をさせる膨張機30とを含む。そして、膨張機で断熱膨張し、仕事をした後の空気は、内燃機関1の排気通路4に備えられる消音器3へ放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱機関の排熱を回収して、機械エネルギに変換する排熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関や外燃機関等の熱機関は、燃料が空気中の酸素と反応して、すなわち燃料が燃焼して発生した熱エネルギを動力に変換するものである。一般に熱機関は、燃料が燃焼したときに発生する熱エネルギをすべて動力に変換することはできず、動力に変換されなかった熱エネルギの一部は、排熱として熱機関の外部へ放出される。この排熱が有する熱エネルギを回収して有効に利用する排熱回収装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸気した作動ガスを圧縮して供給する第1のシリンダと、前記第1のシリンダから供給された高圧の作動ガスを加熱する加熱室と、前記加熱室により加熱された高温高圧の作動ガスを膨張させて力を得るとともに、膨張終了後に排気する第2のシリンダとを備えるエンジンが開示されている。このエンジンは、加熱室に熱機関の排熱を与えることにより、排熱回収装置として機能させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開平6−557462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されたエンジンにおいて、第2のシリンダで膨張させた後の作動ガスをそのまま大気に放出すると、放出音が発生する。特許文献1には、第2のシリンダで膨張させた後の作動ガスの処理については何ら言及されておらず、この点について改善の余地がある。
【0006】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであり、熱機関の排熱を回収して動力に変換する排熱回収装置において、膨張仕事を終了した後における作動流体を処理するにあたり、簡易な構成で作動流体の放出音を低減できる排熱回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明に係る排熱回収装置は、作動流体を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された作動流体を、熱機関の排熱で加熱する熱交換器と、前記熱交換器から送られる作動流体を膨張させることによって仕事をさせ、膨張後の作動流体は、前記熱交換器と前記熱機関が備える消音器との間に放出する膨張機と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この排熱回収装置は、排熱回収装置の膨張機で膨張仕事をした作動流体を、熱交換器と、排熱回収対象の熱機関が備える消音器との間へ放出する。これによって、膨張機からの作動流体の放出音を低減できる。
【0009】
次の本発明に係る排熱回収装置は、前記排熱回収装置において、空気を前記作動流体とし、また、前記熱機関は、燃料が空気中の酸素と反応して発生した熱エネルギを動力に変換するものであるときには、前記膨張機から放出された作動流体を、前記熱機関と前記熱機関の排気を浄化する触媒との間、又は前記熱交換器と前記熱機関が備える消音器との間に放出することを特徴とする。
【0010】
次の本発明に係る排熱回収装置は、前記排熱回収装置において、空気を前記作動流体とし、また、前記熱機関は、燃料が空気中の酸素と反応して発生した熱エネルギを動力に変換するものであるときには、前記圧縮機から放出された作動流体を、前記熱交換器、又は前記熱機関と前記熱機関の排気を浄化する触媒との間に放出することを特徴とする。
【0011】
次の本発明に係る排熱回収装置は、前記排熱回収装置において、前記熱機関の空燃比が理論空燃比よりもリッチである場合には、前記作動流体を、前記熱機関と前記熱機関の排気を浄化する触媒との間に供給することを特徴とする。
【0012】
次の本発明に係る排熱回収装置は、前記排熱回収装置において、前記熱機関が始動してから所定の期間が経過するまで、前記作動流体を前記熱機関と前記熱機関の排気を浄化する触媒との間に供給することを特徴とする。
【0013】
次の本発明に係る排熱回収装置は、前記排熱回収装置において、前記圧縮機から放出される作動流体、又は前記膨張機から放出される作動流体のいずれか一方を、前記熱機関の吸気通路内へ放出することを特徴とする。
【0014】
次の本発明に係る排熱回収装置は、前記排熱回収装置において、前記排熱回収装置が外部動力を必要とせずに駆動できるときには、前記膨張機から放出される作動流体を、前記熱機関の吸気通路内へ放出することを特徴とする。
【0015】
次の本発明に係る排熱回収装置は、前記排熱回収装置において、空気を前記作動流体とするときには、前記排熱回収装置が搭載される車両の室内へ、前記圧縮機又は膨張気から前記作動流体を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る排熱回収装置は、熱機関の排熱を回収して動力に変換する排熱回収装置において、膨張仕事を終了した後における作動流体を処理するにあたり、簡易な構成で作動流体の放出音を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記発明を実施するための最良の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0018】
実施例1に係る排熱回収装置は、圧縮機と、この圧縮機で圧縮された作動流体に、熱機関からの排熱を与える熱交換器と、前記熱交換器で排熱を受け取った作動流体が膨張する膨張機とを備えている。そして、前記膨張機で膨張仕事をした作動流体を、前記熱交換器と前記熱機関の消音器との間へ放出する点に特徴がある。なお、以下においては、排熱回収対象である熱機関の一例として、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関を取り上げる。なお、本発明の排熱回収対象である熱機関は、これにかぎられるものではないが、本発明は、燃料が空気中の酸素と反応して発生した熱エネルギを動力に変換する熱機関から排熱を回収する場合に、特に好適である。また、本発明に係る排熱回収装置の作動流体は気体であり、その一例として空気を取り上げる。
【0019】
図1は、実施例1に係る排熱回収装置を示す全体構成図である。この排熱回収装置10は、排熱回収対象である熱機関からの排熱を利用して、作動流体を断熱圧縮→等圧受熱→断熱膨張→等圧放熱させて駆動力を得る、ブレイトンサイクル機関である。これを実現するため、図1に示すように、この排熱回収装置10は、作動流体を圧縮する圧縮機20と、圧縮機20で圧縮された作動流体に、排熱回収対象の熱機関である内燃機関1からの排熱を与える熱交換器12と、熱交換器12で排熱を受け取った作動流体が膨張する膨張機30とを備えている。なお、この実施例において、内燃機関1は、ガソリンを燃料とする火花点火式の内燃機関(ガソリンエンジン)である。
【0020】
まず、圧縮機20について説明する。圧縮機20は、容積Vcのシリンダ21と、このシリンダ21内を往復運動するピストン22とを備えている。ピストン22は、コネクティングロッド23を介してクランク軸11と連結されている。クランク軸11の回転運動は、ピストン22の往復運動へ変換され、シリンダ21内に導入された作動流体を圧縮する。
【0021】
この圧縮機20は、シリンダ21内へ作動流体を導入するための圧縮機側吸気弁24iと、シリンダ21内で断熱圧縮された作動流体を熱交換器12へ送る圧縮機側排気弁24eとを備える。なお、圧縮機側吸気弁24iには、作動流体をシリンダ21内に導く圧縮機側吸気通路40が接続されている。また、圧縮機側排気弁24eには、シリンダ21内で断熱圧縮された作動流体を熱交換器12へ送る圧縮機側排気通路41が接続されている。
【0022】
この実施例において、圧縮機側吸気弁24iには、逆止弁が用いられており、ピストン22が下死点に向かって移動すると、圧縮機側吸気弁24iが開いてシリンダ21内へ作動流体が導入される。そして、ピストン22が上死点へ向かって移動すると、圧縮機側吸気弁24iが閉じて、作動流体が圧縮機側吸気弁24iを通って逆流することを防止する。
【0023】
この実施例において、圧縮機側排気弁24eには、チェック弁が用いられており、ピストン22が下死点に向かって移動するときには、圧縮機側排気弁24eが閉じて、熱交換器12から作動流体がシリンダ21内へ逆流することを防止する。ピストン22が上死点へ向かって移動するときには、圧縮機側吸気弁24iからシリンダ21内へ導入された作動流体が圧縮される。そして、シリンダ21内の作動流体が、圧縮機側排気弁24eの開弁圧力を超えると、圧縮機側排気弁24eが開いて、シリンダ21内でピストン22により断熱圧縮された作動流体が、熱交換器12へ送られる。
【0024】
次に、熱交換器12について説明する。熱交換器12は、圧縮機で断熱圧縮された作動流体が流れる第1流路121と、内燃機関1の排気Exが流れる第2流路122とを備える。この実施例において、排熱回収装置10は、内燃機関1の排気Exから、内燃機関1の排熱を回収する。このため、熱交換器12の第2流路122は、内燃機関1の排気通路4と接続されている。ここで、第1流路121と第2流路122とは、作動流体の吸熱効率(熱交換器効率)を向上させるために、排気Exの流れ方向と、作動流体の流れ方向とが対向するように配置することが好ましい。
【0025】
次に、膨張機30について説明する。膨張機30は、容積Veのシリンダ31と、このシリンダ31内を往復運動するピストン32とを備えている。膨張機30は、圧縮機20で断熱圧縮され、熱交換器12で等圧受熱した作動流体を断熱膨張させて、作動流体に仕事をさせる。膨張機30が備えるシリンダ31の容積Veは、圧縮機20が備えるシリンダ21の容積Vcよりも大きい(Ve>Vc)。ピストン32は、コネクティングロッド33を介してクランク軸11と連結されている。作動流体が仕事をすることによりピストン32が運動する。この運動はクランク軸11の回転運動へ変換され、排熱回収装置10の出力として取り出される。
【0026】
膨張機30は、シリンダ31内へ作動流体を導入するための膨張機側吸気弁34iと、シリンダ31内で断熱膨張した作動流体を放出する膨張機側排気弁34eとを備える。なお、膨張機側吸気弁34iには、作動流体をシリンダ31内に導く膨張機側吸気通路42が接続されている。また、膨張機側排気弁34eには、シリンダ31内で断熱膨張した作動流体を放出する膨張機側排気通路43が接続されている。
【0027】
膨張機側吸気弁34i及び膨張機側排気弁34eは、膨張機30が備えるピストン32の往復運動と所定のタイミングで同期して開閉する。例えば、膨張機30が備えるピストン32が上死点近傍にきたときに膨張機側吸気弁34iを開いて、熱交換器12から等圧受熱した作動流体をシリンダ31内へ導入して断熱膨張させる。このとき膨張機側排気弁34eは閉じておく。そして、膨張機30が備えるピストン32が下死点近傍にきたときに膨張機側吸気弁34iを閉じ、膨張機側排気弁34eを開く。これによって、断熱膨張した気体をシリンダ31の外部へ放出して、等圧放熱させる。
【0028】
例えば、膨張機側吸気弁34i及び膨張機側排気弁34eは、クランク軸11の回転と連動させて開閉することができる。また、例えば、膨張機側吸気弁34i及び膨張機側排気弁34eを電磁弁として、クランク軸11からピストン32の位置を検出し、この検出信号に基づいて膨張機側吸気弁34i及び膨張機側排気弁34eを開閉してもよい。
【0029】
膨張機30のシリンダ31内で作動流体がした仕事は、排熱回収装置10の出力としてクランク軸11から取り出される。この実施例において、クランク軸11には電動機及び発電機として機能する電動機/発電機(以下M/G)5が接続されている。排熱回収装置10がM/G5を駆動すれば、M/G5が発電機として機能する。一方、M/G5を電動機として機能させて排熱回収装置10を駆動すれば、排熱回収装置10をポンプとして機能させることができる。
【0030】
排熱回収装置10がM/G5を駆動すれば、M/G5は電力を発生する。M/G5が発電した電力は、インバータ6を介してバッテリー7へ蓄えられる。このように、この実施例において、排熱回収装置10の出力は、電力として回収される。なお、クラッチ等を介してクランク軸11と内燃機関1の出力軸とを連結して、排熱回収装置10の出力を直接内燃機関1へ戻してもよい。
【0031】
次に、排熱回収装置10の膨張機30で仕事をした後の作動流体の処理について説明する。内燃機関1が備える排気通路4には、内燃機関1側から順に触媒(三元触媒)2、排熱回収装置10が備える熱交換器12、及び消音器3が備えられる。内燃機関1から排出される排気Exは、触媒2で浄化された後、熱交換器12の第2流路122を通って、第1流路121内を流れる作動流体と熱交換する。その後、消音器3へ導かれて消音された後、大気中へ放出される。
【0032】
この実施例に係る排熱回収装置10の膨張機30から作動流体が放出されるとき、作動流体にはまだ圧力が残っているため、騒音が発生する。このため、この実施例においては、内燃機関1の消音器3に、膨張機30から放出される作動流体を導く。これによって、排熱回収装置用の消音器を別個に用意する必要はないので、装置構成を簡素化できる。膨張機30から放出される作動流体を消音器3へ導くにあたっては、熱交換器12と消音器3との間に作動流体を放出する。ここで、「熱交換器12と消音器3との間に放出」には、膨張機30から放出される作動流体を消音器3へ直接放出することも含む。
【0033】
この実施例において、作動流体は空気であるため、触媒2の入口側、すなわち内燃機関1と触媒2との間に膨張機30から放出される作動流体を導入すると、触媒2へ導入される内燃機関1の排気Exがリーン(酸素過多)となり、触媒2での排気Exの浄化が不十分になるおそれがある。また、触媒2が高温になっている場合に膨張機30から放出される作動流体が触媒2へ導入されると、触媒2が劣化するおそれもある。
【0034】
一方、熱交換器12の入口側、すなわち、触媒2と熱交換器12との間に膨張機30から放出される作動流体を導入すると、熱交換器12へ導入される内燃機関1の排気温度が低下する。このため、排熱回収装置10の圧縮機20から送られる作動流体を十分に加熱することができず、排熱回収装置10の熱効率を低下させてしまう。このため、膨張機30から放出される作動流体を消音器3へ導くにあたっては、熱交換器12と消音器3との間に作動流体を放出する。これによって、排気Exの浄化不足や触媒2の劣化を抑制できる。また、排熱回収装置10の熱効率低下も抑制できる。
【0035】
以上、実施例1では、排熱回収装置の膨張機で膨張仕事をした作動流体を、熱交換器と、熱機関である内燃機関が備える消音器との間へ放出する。これによって、膨張機からの作動流体の放出音を低減できるとともに、内燃機関の排気の浄化不足や内燃機関の排気を浄化する触媒の劣化を抑制できる。また、排熱回収装置の熱効率低下も抑制できる。さらに、排熱回収対象の熱機関が備える消音器を利用するので、専用の昇温器を別個に備える必要がなく、装置構成を簡単にできる。なお、実施例1で開示した構成は、以下の実施例においても必要に応じて適用できる。また、実施例1で開示した構成と同様の構成を備えるものは、実施例1と同様の作用、効果を奏する。
【実施例2】
【0036】
実施例2に係る排熱回収装置は、実施例1に係る排熱回収装置と略同様の構成であるが、膨張機が備える排気通路に排気切替手段を設け、膨張機から放出される作動流体を、熱交換器と熱機関の消音器との間、又は熱機関と前記熱機関の排気を浄化する触媒との間に放出する。そして、熱機関の冷間始動時には、熱機関と触媒との間に膨張機からの作動流体を放出し、触媒に供給して、触媒による熱機関の排気の浄化を促進させる点が異なる。他の構成は実施例1と同様なのでその説明を省略する。
【0037】
図2は、実施例2に係る排熱回収装置を示す全体構成図である。図3−1、図3−2は、実施例2に係る排熱回収装置が備える排気切替手段の一例を示す説明図である。実施例2に係る排熱回収装置10aは、膨張機30が備えるシリンダ31内で断熱膨張した作動流体を放出する膨張機側排気通路43に、膨張機側排気切替手段である膨張機側切替弁13が取り付けられている。
【0038】
膨張機30から放出された作動流体は、膨張機側排気通路43を通って膨張機側切替弁13へ送られる。膨張機側切替弁13の出口には、第2膨張機側排気通路43aと、第1作動流体排気通路44とが接続される。そして、第2膨張機側排気通路43aは消音器3に、第1作動流体排気通路44は内燃機関1と触媒2との間に接続される。
【0039】
ここで、第1作動流体排気通路44には、図2に示すように、リード弁19が設けられている。このリード弁19は、膨張機30から放出される作動流体の圧力(作動流体膨張機圧力)Pbeが、内燃機関1の排気圧力(排圧)Peよりも大きくなった場合(Pbe>Pe)に開弁するように設定される。これによって、排圧Peが作動流体膨張機圧力Pbeよりも大きくなった場合に、排気Exが排熱回収装置10の膨張機30へ逆流することを防止できる。なお、リード弁19は、排圧Peと作動流体膨張機圧力Pbeとの関係によっては、必ずしも設ける必要はない。
【0040】
膨張機側切替弁13は、前記作動流体の放出先を、熱交換器12と熱機関である内燃機関1の消音器3との間、又は内燃機関1と触媒2との間へ切り替える。そして、内燃機関1の冷間始動時には、内燃機関1と触媒2との間に膨張機30からの作動流体を放出し、触媒2へ供給して、触媒2による内燃機関1の排気の浄化を促進させる。特に、冷間始動時や、加速時等のように、空燃比が理論空燃比よりもリッチ(燃料過多)になる場合に、排熱回収装置10aの作動流体を触媒2へ供給すれば、内燃機関1の排気の浄化を促進でき、好ましい。また、膨張機30で作動流体が膨張する際には熱エネルギを失うが、作動流体の持つ熱エネルギが完全に運動エネルギに変換されるわけではない。このため、ある程度温度の高い作動流体が触媒2へ供給されるので、特に内燃機関1の冷間始動時においては、触媒の暖機が迅速に完了する。なお、膨張機側切替弁13の開度を調整することによって、熱交換器12と内燃機関1の消音器3との間、又は内燃機関1と触媒2との間の両方へ作動流体を放出させることもできる。
【0041】
膨張機側切替弁13は、ECU50によって制御される。膨張機側切替弁は、例えば、図3−1に示す膨張機側切替弁13aのように、バタフライ弁13vbによって作動流体の放出先を第2膨張機側排気通路43a、又は第1作動流体排気通路44に切り替えるものであってもよい。また、図3−2に示す膨張機側切替弁13bのように、ロータリー弁13vrによって作動流体の放出先を第2膨張機側排気通路43a、又は第1作動流体排気通路44に切り替えるものであってもよい。
【0042】
図4は、実施例2に係る排熱回収装置の他の例を示す全体構成図である。この排熱回収装置10bは、圧縮機20に接続される圧縮機側排気通路41に圧縮機側排気切替手段である圧縮機側切替弁14が備えられている。そして、圧縮機20から送り出される作動流体の放出先を、熱交換器12、又は内燃機関1と触媒2との間へ切り替える。ここで、圧縮機側切替弁14は、ECU50によって制御される。なお、圧縮機側切替弁14には、図3−1に示したようなバタフライ弁や、図3−2に示したようなロータリー弁を使用することができる。
【0043】
圧縮機20から放出された作動流体は、圧縮機側排気通路41を通って圧縮機側切替弁14へ送られる。圧縮機側切替弁14の出口は、一方が熱交換器12へ接続され、もう一方は、第2作動流体排気通路45が接続される。そして、第2作動流体排気通路45は、内燃機関1と触媒2との間に接続される。ここで、第2作動流体排気通路45には、上述したように、リード弁を設けてもよい。このリード弁19は、圧縮機20から放出される作動流体の圧力(作動流体圧縮機圧力)Pbcが、内燃機関1の排気圧力(排圧)Peよりも大きくなった場合(Pbc>Pe)に開弁するように設定される。このようにすれば、排圧Peが作動流体圧縮機圧力Pbcよりも大きくなった場合に、排気Exが排熱回収装置10の圧縮機20へ逆流することを防止できる。
【0044】
圧縮機側切替弁14は、前記作動流体の放出先を、熱交換器12、又は内燃機関1と触媒2との間へ切り替える。そして、内燃機関1の冷間始動時には、内燃機関1と触媒2との間に圧縮機20からの作動流体を放出し、触媒2へ供給して、触媒2による内燃機関1の排気Exの浄化を促進させる。なお、圧縮機側切替弁14の開度を調整することによって、熱交換器12、又は内燃機関1と触媒2との間の両方へ作動流体を放出させることもできる。
【0045】
膨張機30で断熱膨張した後の作動流体ではなく、圧縮機20で圧縮された作動流体を触媒2へ供給することにより、内燃機関1の排気圧力に勝る圧力を得やすくなる。これによって、より確実に触媒2へ作動流体を供給できるので、触媒の浄化促進や暖機に対する応答性が向上する。また、圧縮機20から作動流体を触媒2へ供給することにより高温の作動流体を触媒2へ供給できる。これによって、内燃機関1の冷間始動時においては、触媒2の暖機がさらに迅速に完了する。また、熱交換器12と膨張機30との間に圧縮機側切替弁14を設け、圧縮機20で圧縮され、熱交換器12で受熱した作動流体を触媒2へ供給してもよい。このようにすれば、さらに高い温度の作動流体を触媒2へ供給できるので、内燃機関1の冷間始動時における触媒2の暖機がさらに迅速に完了する。
【0046】
圧縮機側切替弁14は、例えば、図3−1に示すように、バタフライ弁13vbによって作動流体の放出先を第2膨張機側排気通路43a、又は第1作動流体排気通路44に切り替えるものであってもよい。また、図3−2に示すように、ロータリー弁13vrによって作動流体の放出先を第2膨張機側排気通路43a、又は第1作動流体排気通路44に切り替えるものであってもよい。
【0047】
次に、実施例2に係る熱機関の冷間始動時における排熱回収装置の制御について説明する。図5は、実施例2に係る排熱回収装置の制御装置を示す説明図である。実施例2に係る熱機関の冷間始動時における排熱回収装置の制御は、この排熱回収装置の制御装置70によって実現できる。図5に示すように、排熱回収装置の制御装置70は、ECU50に組み込まれて構成されている。ECU50は、CPU50pと、記憶部50mと、入力及び出力ポート55、56と、入力及び出力インターフェイス57、58とから構成される。
【0048】
なお、ECU50とは別個に、実施例2に係る排熱回収装置の制御装置70を用意し、これをECU50に接続してもよい。そして、実施例2に係る排熱回収装置の制御を実現するにあたっては、ECU50が備える内燃機関1の制御機能を、前記排熱回収装置の制御装置70が利用できるように構成してもよい。
【0049】
排熱回収装置の制御装置70は、制御条件判定部71と、供給空気量制御部72とを含んで構成される。これらが、実施例2に係る排熱回収装置の制御を実行する部分となる。実施例2において、排熱回収装置の制御装置70は、ECU50を構成するCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)50pの一部として構成される。この他に、CPU50pには、内燃機関1の運転を制御する制御部53が含まれる。
【0050】
CPU50pと、記憶部50mとは、バス541〜543、入力ポート55及び出力ポート56に接続される。これにより、排熱回収装置の制御装置70を構成する制御条件判定部71と供給空気量制御部72とは、相互に制御データをやり取りしたり、一方に命令を発したりできるように構成される。また、排熱回収装置の制御装置70は、ECU50が有する内燃機関1の水温、負荷、アクセル開度あるいは機関回転数その他の制御データを取得したり、排熱回収装置の制御装置70の制御をECU50の内燃機関の運転制御ルーチンに割り込ませたりすることができる。
【0051】
入力ポート55には、入力インターフェイス57が接続されている。入力インターフェイス57には、冷却水温センサ60、エアフローメータ61、クランク角センサ62、アクセル開度センサ63その他の、排熱回収装置10の制御に必要な情報を取得するセンサ類が接続されている。これらのセンサ類から出力される信号は、入力インターフェイス57内のA/Dコンバータ57aやディジタル入力バッファ57dにより、CPU50pが利用できる信号に変換されて入力ポート55へ送られる。これにより、CPU50pは、運転制御や内燃機関1の運転制御に必要な情報を取得することができる。
【0052】
出力ポート56には、出力インターフェイス58が接続されている。出力インターフェイス58には、膨張機側切替弁13、圧縮機側切替弁14、作動流体供給源切替弁16等の、排熱回収装置10の制御に必要な制御対象が接続されている。出力インターフェイス58は、制御回路581、582等を備えており、CPU50pで演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。このような構成により、ECU50のCPU50pは、前記センサ類からの出力信号に基づいて、排熱回収装置10の運転を制御する。
【0053】
記憶部50mには、実施例2に係る排熱回収装置の制御に用いるコンピュータプログラムや制御マップ、あるいは排熱回収装置の制御に用いる燃料噴射量のデータマップ等が格納されている。ここで、記憶部50mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
【0054】
上記コンピュータプログラムは、CPU50pへすでに記録されているコンピュータプログラムと組み合わせることによって、実施例2に係る排熱回収装置の制御の処理手順を実現できるものであってもよい。また、この排熱回収装置の制御装置70は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、制御条件判定部71、供給空気量制御部72の機能を実現するものであってもよい。次に、実施例2に係る排熱回収装置の制御について説明する。この説明においては、適宜図2、図4、図5を参照されたい。
【0055】
図6は、実施例2に係る排熱回収装置の制御を示すフローチャートである。実施例2に係る排熱回収装置の制御を実行するにあたり、排熱回収装置の制御装置70が備える制御条件判定部71は、内燃機関1のイグニッションIGがONになっているか否かを判定する(ステップS101)。IGがOFFである場合(ステップS101;No)、供給空気量制御部72は、膨張機側切替弁13又は14(図2又は図4)を全閉として、内燃機関1と触媒2との間、すなわち触媒2への作動流体導入を中止する(ステップS111)。なお、全閉とは、触媒2への作動流体の供給を完全に停止することをいう。
【0056】
IGがONである場合(ステップS101;Yes)、制御条件判定部71は、内燃機関1は始動したものと判定する。制御条件判定部71は、内燃機関1の冷却水温センサ60から、内燃機関1の冷却水温Twを取得する(ステップS102)。そして、制御条件判定部71は、取得した冷却水温Twに基づき、そのときの冷却水温Twにおいて、内燃機関1が要求するA/F(要求A/F)を算出する(ステップS103)。例えば、内燃機関1の冷間始動時においては燃焼が悪化するため、冷間始動してから冷却水温がある温度に上昇するまでの所定期間は、燃料を増量して燃焼の悪化を抑制する。このとき、A/Fは、ストイキ(理論空燃比)よりもリッチ(燃料過多)となる。処理部50pの制御部53は、制御条件判定部71が算出した要求A/Fに基づき、内燃機関1へ燃料を噴射する(ステップS104)。
【0057】
次に、制御条件判定部71は、内燃機関1の空燃比A/Fが、ストイキよりも小さいか否かを判定する(ステップS105)。A/F≧ストイキである場合(ステップS105;No)、空燃比A/Fはリーン(酸素過多)の状態である。この場合に作動流体(空気)を触媒2へ供給すると、触媒2による排気Exの浄化性能の低下や、触媒の劣化を招いてしまう。このため、供給空気量制御部72は、膨張機側切替弁13又は14(図2又は図4)を全閉として、内燃機関1と触媒2との間、すなわち触媒2への作動流体導入を中止する(ステップS111)。
【0058】
A/F<ストイキである場合(ステップS105;Yes)、空燃比A/Fはリッチの状態である。この場合には、作動流体(空気)を触媒2へ供給して、触媒2による内燃機関1の排気Exの浄化を促進させる。このため、制御条件判定部71は、触媒2へ供給する作動流体(触媒導入空気)の量を算出する(ステップS106)。そして、供給空気量制御部72は、制御条件判定部71が算出した触媒前導入空気の量に基づき、膨張機側切替弁13又は14の開度を決定する(ステップS107)。
【0059】
次に、制御条件判定部71は、排熱回収装置10a又は10bが(図2、図4)、外部駆動を必要とするか否かを判定する(ステップS108)。内燃機関1が冷間始動した直後等は、内燃機関1の排気Exの温度が十分でなく、排熱回収装置10a、10bによって、内燃機関1の排熱を回収できない場合があるからである。排熱回収装置10a、又は10bが外部駆動を必要としない場合(ステップS108;No)、供給空気量制御部72は、ステップS107で決定した切替弁の開度に膨張機側切替弁13、又は14を開き、触媒2へ作動流体を供給する(ステップS110)。
【0060】
排熱回収装置10a又は10bが外部駆動を必要とする場合(ステップS108;Yes)、制御部53は、M/G5によって排熱回収装置10a又は10bを駆動する。すなわち、M/G5によって排熱回収装置10a又は10bを外部駆動する(ステップS109)。これによって、排熱回収装置10aの膨張機30、又は排熱回収装置10bの圧縮機20から、作動流体を放出させる。次に、供給空気量制御部72は、ステップS107で決定した切替弁の開度に膨張機側切替弁13、又は圧縮機側切替弁14を開き、触媒2へ作動流体を供給する(ステップS110)。
【0061】
なお、内燃機関1が始動してから、触媒2へ作動流体を供給する所定の期間は、例えば、次のように定めることができる。内燃機関1における燃焼を改善するため、理論空燃比よりもリッチ(燃料過多)になるように、内燃機関1へ供給する燃料を増量する場合がある。前記所定の期間は、例えば、内燃機関1の始動から、この燃料の増量が必要なくなるまでの期間とすることができる。例えば、内燃機関1を冷間始動する場合、始動から、いわゆる冷間増量が必要なくなるまでの期間である。
【0062】
以上、実施例2では、排熱回収装置の作動流体の放出先を、排熱回収装置の熱交換器と、熱機関の消音器との間、又は熱機関とこの熱機関が備える触媒との間へ切り替える。これによって、熱機関の冷間始動時には、熱機関と触媒との間に廃熱回収装置からの作動流体を放出し、触媒へ供給して、触媒による熱機関の排気の浄化を促進させることができる。なお、実施例2で開示した構成は、以下の実施例においても必要に応じて適用できる。また、実施例2で開示した構成と同様の構成を備えるものは、実施例2と同様の作用、効果を奏する。
【実施例3】
【0063】
実施例3に係る排熱回収装置は、実施例1に係る排熱回収装置と略同様の構成であるが、熱機関が高出力を要求するときには、熱機関の吸気通路へ圧縮機、又は膨張機のいずれか一方から作動流体を供給して、過給によって熱機関からより多くの出力を取り出す点が異なる。他の構成は実施例1と同様なのでその説明を省略する。
【0064】
図7は、実施例3に係る排熱回収装置を示す全体構成図である。実施例3に係る排熱回収装置10cは、圧縮機20が備えるシリンダ21内で断熱圧縮した作動流体を放出する圧縮機側排気通路41に、排気切替手段である圧縮機側切替弁14が取り付けられている。圧縮機20から放出された作動流体は、圧縮機側排気通路41を通って圧縮機側切替弁14へ送られる。圧縮機側切替弁14の出口には、熱交換器12と、第3作動流体排気通路46とが接続される。
【0065】
ここで、第3作動流体排気通路46には、図7に示すように、リード弁15が設けられている。このリード弁15は、圧縮機20から放出される作動流体の圧力(作動流体圧縮機圧力)Pbcが、内燃機関1の吸気圧力Piよりも大きくなった場合(Pbc>Pi)に開弁するように設定される。このようにすれば、吸気圧力Piが作動流体圧縮機圧力Pbcよりも大きくなった場合に、内燃機関1の吸気が排熱回収装置10の圧縮機20へ逆流することを防止できる。なお、第3作動流体排気通路46には、必要に応じて冷却器を設けて、内燃機関1の吸気通路1iへ供給される作動流体を冷却してもよい。
【0066】
圧縮機側切替弁14は、前記作動流体の放出先を、熱交換器12又は熱機関である内燃機関1の吸気通路1iに切り替える。そして、内燃機関1が高出力を要求しているときには、内燃機関1の吸気通路1iへ圧縮機20からの作動流体を供給して、過給する。これによって、内燃機関1から高出力を得ることができる。また、圧縮機20から供給される作動流体は、圧縮により昇温しているので、火炎伝播速度を向上させることができ、燃焼性を改善できる。特に、寒冷地における運転時のように、吸気温度が低い場合には有効である。また、寒冷地でなくとも、いわゆるリーンバーン運転をする際には空気が過多となって燃焼が悪化するが、圧縮機20から作動流体を供給すれば、吸気温度上昇によって燃焼を改善できるため、安定した運転のために有効である。ここで、吸気温度を上昇させる目的であれば、圧縮機20で圧縮し、熱交換器12で受熱した作動流体を内燃機関1の吸気通路1iへ供給してもよい。
【0067】
なお、圧縮機側切替弁14の開度を調整することによって、内燃機関1へ過給する作動流体の量を調整することができる。ここで、圧縮機側切替弁14は、ECU50によって制御される。圧縮機側切替弁14は、例えば、図3−1に示したバタフライ弁式のものや、図3−2に示したロータリー弁式のものを使用することができる。次に、実施例3に係る排熱回収装置の制御について説明する。実施例3に係る排熱回収装置の制御は、実施例2に係る排熱回収装置の制御装置(図5)によって実現できる。この説明においては、適宜図5、図7を参照されたい。
【0068】
図8は、実施例3に係る排熱回収装置の制御を示すフローチャートである。実施例3に係る排熱回収装置の制御を実行するにあたり、排熱回収装置の制御装置70が備える制御条件判定部71は、内燃機関1が過給を要求しているか否かを判定する。具体的には、制御条件判定部71がアクセル開度センサ63から要求されているアクセル開度eaccpを検出する。そして、制御条件判定部71は、アクセル開度eaccpが、過給要求判定アクセル開度eaccp_bよりも大きいか否かを判定する(ステップS201)。
【0069】
eacc≦eaccp_bである場合(ステップS201;No)、供給空気量制御部72は、圧縮機側切替弁14(図7)を全閉として(ステップS207)、内燃機関1への過給を中止する。処理部50pの制御部53は、内燃機関1に対する燃料噴射量及び点火時期を、過給しないときのものに設定し(ステップS208)、これに基づいて内燃機関1へ燃料を噴射し、点火する(ステップS209)。なお、全閉とは、吸気通路1iへの作動流体の供給を完全に停止する状態をいう。
【0070】
eacc>eaccp_bである場合(ステップS201;Yes)、制御条件判定部71は、アクセル開度センサ63から要求されているアクセル開度eaccpを検出し、これに基づいて、過給時における要求空気量を算出する(ステップS202)。そして、供給空気量制御部72は、制御条件判定部71が算出した触媒前導入空気の量に基づき、圧縮機側切替弁14の開度を決定し(ステップS203)、決定した切替弁の開度に圧縮機側切替弁14を開き、内燃機関1の吸気通路1iへ作動流体を供給する(ステップS204)。そして、処理部50pの制御部53は、内燃機関1に対する燃料噴射量及び点火時期を、過給するときのものに設定し(ステップS205)、これに基づいて内燃機関1へ燃料を噴射し、点火する(ステップS206)。
【0071】
なお、圧縮機20から内燃機関1へ作動流体を供給するときには、供給量にもよるが、排熱回収装置10cは、外部動力によらなければ駆動できない。したがって、この実施例においては、M/G5によって排熱回収装置10cを駆動して、圧縮機20から内燃機関1の吸気通路1iへ作動流体を供給することになる。ただし、内燃機関1へ供給する作動流体の量によっては、これを失ったとしても外部動力によらず排熱回収装置10cを駆動できる場合がある。このような場合には、圧縮機20で圧縮した作動流体の一部を内燃機関1の吸気通路1iへ供給すればよい。
【0072】
(変形例)
実施例3の変形例に係る排熱回収装置は、実施例3に係る排熱回収装置と略同様の構成であるが、さらに、膨張機が備える膨張機側排気通路にも排気切替手段と、圧縮機から放出される作動流体、又は膨張機から放出される作動流体を切り替えて熱機関の吸気通路に放出する排気切替手段とを備える。そして、熱機関が高出力を要求するときには、熱機関の吸気通路へ圧縮機又は膨張機から作動流体を供給して、過給によって熱機関からより多くの出力を取り出す点が異なる。他の構成は実施例3と同様なのでその説明を省略する。
【0073】
図9は、実施例3の変形例に係る排熱回収装置を示す全体構成図である。実施例3の変形例に係る排熱回収装置10c'は、圧縮機20が備えるシリンダ21内で断熱圧縮した作動流体を放出する圧縮機側排気通路41に、排気切替手段である圧縮機側切替弁14が取り付けられている。圧縮機20から放出された作動流体は、圧縮機側排気通路41を通って圧縮機側切替弁14へ送られる。圧縮機側切替弁14は、圧縮機20から放出された作動流体を、熱交換器12又は作動流体供給源切替弁16へ放出する。
【0074】
膨張機30が備えるシリンダ31内で断熱膨張した作動流体を放出する膨張機側排気通路43には、排気切替手段である膨張機側切替弁13が取り付けられている。膨張機30から放出された作動流体は、膨張機側排気通路43を通って膨張機側切替弁13へ送られる。膨張機側切替弁13は、膨張機30から放出された作動流体を、内燃機関1の消音器3又は作動流体供給源切替弁16へ放出する。
【0075】
作動流体供給源切替弁16には、膨張機側排気分岐通路43m、圧縮機側排気分岐通路41m、及び第3作動流体排気通路46が接続されており、圧縮機20又は膨張機30から送られる作動流体のうちいずれか一方を選択して、内燃機関1へ送ることができる。また、圧縮機側切替弁14の開度を調整することによって、内燃機関1へ送る作動流体の量を調整することができる。作動流体供給源切替弁16は、内燃機関1が高出力を要求しているときには、内燃機関1の吸気通路1iへ圧縮機20又は膨張機30からの作動流体を放出、供給して、過給する。ここで、作動流体供給源切替弁16は、ECU50によって制御される。作動流体供給源切替弁16は、例えば、図3−1に示したバタフライ弁式のものや、図3−2に示したロータリー弁式のものを使用することができる。ここで、第3作動流体排気通路46には、図9に示すように、リード弁15を設けられている。この点は実施例3に係る排熱回収装置10cと同様である。次に、実施例3の変形例に係る排熱回収装置の制御について説明する。実施例3の変形例に係る排熱回収装置の制御は、実施例2に係る排熱回収装置の制御装置(図5)によって実現できる。この説明においては、適宜図5、図9を参照されたい。
【0076】
図10は、実施例3の変形例に係る排熱回収装置の制御を示すフローチャートである。実施例3の変形例に係る排熱回収装置の制御において、ステップS301、ステップS302は、実施例3に係る排熱回収装置の制御におけるステップS201、ステップS202と同様である。また、実施例3の変形例に係る排熱回収装置の制御におけるステップS306〜ステップS311は、実施例3に係る排熱回収装置の制御におけるステップS203〜ステップS209と同様であるので、同様である手順については説明を省略する。
【0077】
制御条件判定部71が、過給時における要求空気量を算出したら(ステップS302)、制御条件判定部71は、排熱回収装置10c'が、外部駆動を要するか否かを判定する(ステップS303)。内燃機関1から排出される排気Exの温度が十分に高ければ、これによって排熱回収装置10c'を駆動できるので、膨張機30で断熱膨張した作動流体(空気)を内燃機関1の吸気通路1iへ放出し、内燃機関1へ供給する。
【0078】
一方、内燃機関1が冷間始動した直後等は、内燃機関1の排気Exの温度が十分でなく、排熱回収装置10c'によって、内燃機関1の排熱を回収できない場合がある。この場合には、外部動力によって排熱回収装置10c'を駆動し、圧縮機20又は膨張機30からの作動流体を内燃機関1の吸気通路1iへ放出し、内燃機関1へ供給する。
【0079】
排熱回収装置10c'が外部駆動を必要とする場合(ステップS303;Yes)、制御部53は、M/G5によって排熱回収装置10c'を駆動する。すなわち、M/G5によって排熱回収装置10c'を外部駆動して、圧縮機20又は膨張機30から内燃機関1の吸気通路1iへ作動流体を放出し、内燃機関1へ供給する(ステップS304)。圧縮機20又は膨張機30のいずれかから作動流体を供給するかは、圧縮機で断熱圧縮した作動流体の圧力や量、又は膨張機30で断熱膨張した作動流体の圧力や量と、内燃機関1の要求する吸気量や過給圧力等とを比較して判定する。
【0080】
排熱回収装置10c'が外部駆動を必要としない場合(ステップS303;No)、制御条件判定部71は、膨張機30から作動流体を内燃機関1の吸気通路1iへ供給可能か否かを判定する(ステップS305)。これは、膨張機30で断熱膨張した作動流体の圧力や量と、内燃機関1の要求する吸気量や過給圧力等とを比較して判定する。膨張機30から作動流体を内燃機関1の吸気通路1iへ供給できない場合(ステップS305;No)、外部動力によって排熱回収装置10c'を駆動して、圧縮機20又は膨張機30から内燃機関1の吸気通路1iへ作動流体を放出し、内燃機関1へ供給する(ステップS304)。
【0081】
上記ステップS303〜S305によって外部駆動の有無、作動流体の供給源を決定したら、供給空気量制御部72は、制御条件判定部71が算出した触媒前導入空気の量に基づき、膨張機側切替弁13、14、15の開度を決定し(ステップS306)、決定した切替弁の開度に切替弁を開き、内燃機関1の吸気通路1iへ作動流体を供給する(ステップS307)。そして、処理部50pの制御部53は、内燃機関1に対する燃料噴射量及び点火時期を、過給するときのものに設定し(ステップS308)、これに基づいて内燃機関1へ燃料を噴射し、点火する(ステップS309)。
【0082】
以上、実施例3及びその変形例では、圧縮機、又は膨張機のいずれか一方から作動流体を熱機関の吸気通路へ放出し、供給できるようにしてある。これによって、熱機関が高出力を要求するときには、圧縮機等から熱機関へ作動流体(空気)を過給できるので、熱機関からより多くの出力を取り出すことができる。なお、実施例3やその変形例で開示した構成は、以下の実施例においても必要に応じて適用できる。また、実施例3やその変形例とで開示した構成と同様の構成を備えるものは、実施例3やその変形例と同様の作用、効果を奏する。
【実施例4】
【0083】
実施例4に係る排熱回収装置は、実施例2に係る排熱回収装置と略同様の構成であるが、膨張機が備える排気通路に排気切替手段を設け、膨張機から放出される作動流体を、この排熱回収装置が搭載される車両の室内へ供給する点が異なる。他の構成は実施例2と同様なのでその説明を省略する。
【0084】
図11は、実施例4に係る排熱回収装置を示す全体構成図である。実施例4に係る排熱回収装置10dは、膨張機30が備えるシリンダ31内で断熱膨張した作動流体を放出する膨張機側排気通路43に、排気切替手段である膨張機側切替弁13が取り付けられている。膨張機30から放出された作動流体は、膨張機側排気通路43を通って膨張機側切替弁13へ送られる。膨張機側切替弁13の出口には、第2膨張機側排気通路43aと、第4作動流体排気通路47とが接続される。そして、第2膨張機側排気通路43aは消音器3に、第4作動流体排気通路47は排熱回収装置10d及び内燃機関1が搭載される車両の室内(車室内)へ接続される。
【0085】
膨張機側切替弁13は、前記作動流体の放出先を、内燃機関1の消音器3との間、又は車室内へ切り替える。そして、排熱回収装置10dの膨張機30から放出される作動流体を、内燃機関1の冷却水温がある程度の温度に上昇するまで、暖房用として車室内へ供給する。なお、膨張機側切替弁13の開度を調整することによって、車室内へ供給する作動流体の量を変化させることができる。なお、膨張機側切替弁13は、ECU50によって制御される。
【0086】
図12は、実施例4に係る排熱回収装置の他の例を示す全体構成図である。この排熱回収装置10eは、上記排熱回収装置10dと略同様の構成であるが、膨張機30から放出される作動流体を、一旦ヒータ用熱交換器17に導き、ここで、車室内の空気と熱交換させる。このように、ヒータ用熱交換器17を介して、間接的に車室内の空気を温める点が、上記排熱回収装置10dと異なる。
【0087】
膨張機側切替弁13に接続される第5作動流体排気通路48は、ヒータ用熱交換器17を経由して、第2膨張機側排気通路43aに接続される。これによって、膨張機側切替弁13から送り出される膨張機30からの作動流体をヒータ用熱交換器17に導き、同じくヒータ用熱交換器17に接続される暖房用通路49内を流れる車室内の空気と熱交換させる。熱交換が終了した作動流体は、第2膨張機側排気通路43aを通って消音器3へ放出される。次に、実施例4係る排熱回収装置の制御について説明する。実施例4に係る排熱回収装置の制御は、実施例2で説明した排熱回収装置の制御装置70によって実現できる。次の説明においては、適宜図5、図11、図12を参照されたい。
【0088】
図13は、実施例4に係る排熱回収装置の制御を示すフローチャートである。実施例4に係る排熱回収装置の制御を実行するにあたり、排熱回収装置の制御装置70が備える制御条件判定部71は、排熱回収装置10d又は10eが搭載されている車両のヒータ要求フラグex_hがONであるか否かを判定する(ステップS401)。ヒータ要求フラグex_hがOFFである場合(ステップS401;No)、処理部50pの制御部53は、ヒータの動作を停止する(ステップS410)。
【0089】
ヒータ要求フラグex_hがONである場合(ステップS401;Yes)、制御条件判定部71は、内燃機関1の水温Teが、ヒータ動作可能水温Tswよりも低いか否かを判定する(ステップS402)。Te<Tswである場合、内燃機関1の冷却水を利用してヒータを動作させることはできないので、かかる場合には、排熱回収装置10d又は10eを用いてヒータを動作させるためである。
【0090】
Te≧Tswである場合(ステップS402;No)、内燃機関1の冷却水を利用してヒータを動作させることができる。この場合、供給空気量制御部72は、膨張機側切替弁13(図11、図12)を全閉とする(ステップS408)。処理部50pの制御部53は、通常のヒータ制御、すなわち、内燃機関1の冷却水を利用した場合のヒータ制御を実行する(ステップS409)。なお、全閉とは、車室内あるいはヒータ用熱交換器17への作動流体の供給を完全に停止する状態をいう。
【0091】
Te<Tswである場合(ステップS402;Yes)、供給空気量制御部72は、車室内の温度や外気温度等から、ヒータに要求される温度(ヒータ要求温度)及びエネルギを算出する(ステップS403)。次に、制御条件判定部71は、排熱回収装置10d、あるいは10eの膨張機30から排出される作動流体の温度Tex_rと、ヒータ要求温度とを比較する(ステップS404)。Tex_r≦ヒータ要求温度である場合(ステップS404;No)、膨張機30から排出される作動流体によっては、ヒータが要求する温度を発生させることができないので、ヒータの動作を停止する(ステップS410)。
【0092】
Tex_r>ヒータ要求温度である場合(ステップS404;Yes)、膨張機30から排出される作動流体によって、ヒータが要求する温度を発生させることができる。この場合、供給空気量制御部72は、前記ヒータ要求温度や膨張機30から放出される作動流体の温度等から、膨張機30の排気エネルギ(流量)を算出する(ステップS405)。次に、供給空気量制御部72は、ステップS405で求めたエネルギ(流量)を満足させるように、膨張機側切替弁13の開度を設定し(ステップS406)、設定した切替弁開度に前記膨張機側切替弁13の開度を調整する(ステップS407)。
【0093】
なお、膨張機30から車室内へ作動流体を供給するときには、内燃機関1の始動時(特に冷間始動時)なので、十分な温度の排気を熱交換器12へ供給できない場合が多く、排熱回収装置10d、10eは、外部動力によらなければ駆動できない。したがって、この実施例においては、M/G5によって排熱回収装置10d、10eを駆動して、膨張機30から車室内やヒータ用熱交換器17へ作動流体を供給することになる。ただし、車室内やヒータ用熱交換器17へ供給する作動流体の量によっては、これを失ったとしても外部動力によらず排熱回収装置10cを駆動できる場合がある。このような場合には、膨張機30から放出される作動流体を車室内やヒータ用熱交換器17へ供給すればよい。
【0094】
以上、実施例4では、熱機関である内燃機関の冷却水温が十分に上昇していない場合でも、速やかに車室内の暖房を用いることができる。また、排熱回収装置の作動流体に空気を用いる場合、直接車室内へ作動流体を供給できる。そして、作動流体に空気を使用すれば、ヒータ用熱交換器を介して間接的に車室内を暖める場合においては、漏洩対策も容易である。これによって、簡素な構成で、車室内を暖房することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明に係る排熱回収装置は、熱機関の排熱を動力として回収することに有用であり、特に、圧縮機と、熱交換器と、膨張機とを備えるブレイトンサイクル機関に適している。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施例1に係る排熱回収装置を示す全体構成図である。
【図2】実施例2に係る排熱回収装置を示す全体構成図である。
【図3−1】実施例2に係る排熱回収装置が備える排気切替手段の一例を示す説明図である。
【図3−2】実施例2に係る排熱回収装置が備える排気切替手段の一例を示す説明図である。
【図4】実施例2に係る排熱回収装置の他の例を示す全体構成図である。
【図5】実施例2に係る排熱回収装置の制御装置を示す説明図である。
【図6】実施例2に係る排熱回収装置の制御を示すフローチャートである。
【図7】実施例3に係る排熱回収装置を示す全体構成図である。
【図8】実施例3に係る排熱回収装置の制御を示すフローチャートである。
【図9】実施例3の変形例に係る排熱回収装置を示す全体構成図である。
【図10】実施例3の変形例に係る排熱回収装置の制御を示すフローチャートである。
【図11】実施例4に係る排熱回収装置を示す全体構成図である。
【図12】実施例4に係る排熱回収装置の他の例を示す全体構成図である。
【図13】実施例4に係る排熱回収装置の制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0097】
1 内燃機関
1i 吸気通路
2 触媒
3 消音器
4 排気通路
10、10a、10b、10c、10c'、10d、10e 排熱回収装置
12 熱交換器
13 膨張機側切替弁
14 圧縮機側切替弁
15 リード弁
16 作動流体供給源切替弁
17 ヒータ用熱交換器
20 圧縮機
21 シリンダ
22 ピストン
30 膨張機
31 シリンダ
32 ピストン
70 排熱回収装置の制御装置
71 制御条件判定部
72 供給空気量制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された作動流体を、熱機関の排熱で加熱する熱交換器と、
前記熱交換器から送られる作動流体を膨張させることによって仕事をさせ、膨張後の作動流体は、前記熱交換器と前記熱機関が備える消音器との間に放出する膨張機と、
を含むことを特徴とする排熱回収装置。
【請求項2】
空気を前記作動流体とし、また、前記熱機関は、燃料が空気中の酸素と反応して発生した熱エネルギを動力に変換するものであるときには、
前記膨張機から放出された作動流体を、前記熱機関と前記熱機関の排気を浄化する触媒との間、又は前記熱交換器と前記熱機関が備える消音器との間に放出することを特徴とする請求項1に記載の排熱回収装置。
【請求項3】
空気を前記作動流体とし、また、前記熱機関は、燃料が空気中の酸素と反応して発生した熱エネルギを動力に変換するものであるときには、
前記圧縮機から放出された作動流体を、前記熱交換器、又は前記熱機関と前記熱機関の排気を浄化する触媒との間に放出することを特徴とする請求項1に記載の排熱回収装置。
【請求項4】
前記熱機関の空燃比が理論空燃比よりも燃料過多である場合には、
前記作動流体を、前記熱機関と前記熱機関の排気を浄化する触媒との間に供給することを特徴とする請求項2又は3に記載の排熱回収装置。
【請求項5】
前記熱機関が始動してから所定の期間が経過するまで、前記作動流体を前記熱機関と前記熱機関の排気を浄化する触媒との間に供給することを特徴とする請求項4に記載の排熱回収装置。
【請求項6】
前記圧縮機から放出される作動流体、又は前記膨張機から放出される作動流体のいずれか一方を、前記熱機関の吸気通路内へ放出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排熱回収装置。
【請求項7】
前記排熱回収装置が外部動力を必要とせずに駆動できるときには、前記膨張機から放出される作動流体を、前記熱機関の吸気通路内へ放出することを特徴とする請求項6に記載の排熱回収装置。
【請求項8】
空気を前記作動流体とするときには、
前記排熱回収装置が搭載される車両の室内へ、前記圧縮機又は膨張気から前記作動流体を供給することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の排熱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−188957(P2006−188957A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381687(P2004−381687)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】