説明

掘削機のビット交換装置

【課題】回動体の摺動隙間におけるシール性を向上させ、交換時に回動体をスムーズに回動させる。
【解決手段】主カッタスポーク21の前面に開口形成されたビット収容部34の後部に、バルブ収容部35を形成し、このバルブ収容部35に回動体である回動バルブ39を回動自在に配置し、カッタビット31を内装したビットケース41を、回動バルブ39に形成された着脱通路38からビット収容部34に突出移動してコッタ部材38により固定し掘削反力を支持させる。これにより、回動バルブ39の摺動隙間をビット収容部34とバルブ収容部35とに配置して、ビットケース41により覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機などの掘削機のカッタヘッドに設けられて岩盤や礫を破砕するローラビット(ディスクカッタともいう)を、カッタヘッドに設けられた作業空間から交換可能な掘削機のビット交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ローラビットをカッタヘッド内に形成された作業空間から交換する交換装置として、たとえば特許文献1および2がある。これら交換装置は、カッタスポークの前面に、開口部を有する回転体を配置し、この回転体の開口部にローラビットを配置している。そして、カッタの交換時には、前記回転体を90°または180°回転させて、回転体の開口部を側面側または背面側の交換用開口部に対面させ、ローラビットを開口部から交換用開口部を介して作業空間に抜き出し交換可能に構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3139749号
【特許文献2】特許第4163965号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来文献では、カッタヘッド(カッタスポーク)の前面に、回転体が配置されており、回転体とその支持部材の摺動隙間が前面に臨んで露出している。このため、掘削時の泥水圧が摺動隙間に直接負荷されるとともに、礫などの破片が隙間に入り込むおそれがあり、これにより摺動隙間に設けられたシール材が破損されやすく、また回転体の回動が阻害されるおそれがあった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決して、回動体の摺動隙間におけるシール性を向上させ、交換時に回動体をスムーズに回動させることができる掘削機のビット交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、
掘削機本体の前部に回転軸心周りに回転自在に支持されたカッタヘッドの前面に、岩盤や礫を破砕するローラビットを配置し、カッタヘッド内に設けられた作業空間から磨耗したローラビットを交換する掘削機のビット交換装置であって、
カッタヘッドに設置されたハウジングに、前面に開口するビット収容部と、当該ビット収容部の後部に形成されたバルブ収容部とを有するビット収容通路を、カッタヘッド前面に出退可能な方向の出退軸に沿って形成するとともに、前記出退軸に所定角度隔てた挿脱軸方向に形成されて前記バルブ収容部と前記作業空間とを連通する交換用開口部とを設け、
前記バルブ収容部内に、前記出退軸および挿脱軸に略直交する回動軸心周りに回動自在な回動バルブを設けるとともに、当該回動バルブに、前記ビット収容部に連通する着脱通路を形成し、
当該着脱通路内に、ローラビットを有するビットケースを挿脱自在に配置し、
回動バルブを所定角度回動させて前記着脱通路を前記交換用開口部に連通させることにより、ビットケースを前記着脱通路と前記作業空間の間で挿脱可能に構成し、
回動バルブに、前記ビットケースを前記着脱通路と前記ビット収容部との間で出退移動させるビット出退機構を設け、
前記ビットケースと前記バルブ収容部との隙間を止水する第1シール材を設けるとともに、回動バルブの外周面で着脱通路の開口部周囲と前記バルブ収容部の内面との隙間を止水する第2シール材を設けたものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、
回動バルブの着脱通路でビットケースの背面側に、ローラビットの掘削反力をハウジングに伝達して支持させる反力支持ブロックを設け、
バルブ収容部内の前記ビットケースと前記反力支持ブロックとの間に、掘削反力を伝達するコッタ部材を嵌脱自在に設けたものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成において、
ビット収容通路を、カッタヘッドを貫通して形成するとともに、着脱通路を、回動バルブを貫通して形成し、
反力支持ブロックを着脱通路に挿脱自在に配置し、
前記反力支持ブロックを、回動バルブの前記着脱通路の背面開口部から交換用開口部を介して作業空間に挿脱自在としたものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の構成において、
ビットケースに、ローラビットを収容するケース排土通路を形成するとともに、反力支持ブロックに、前記ケース排土通路に連通するブロック排土通路を形成し、
ローラビットにより掘削された掘削物を前記ケース排土通路からブロック排土通路を介してカッタヘッドの背面側に排出可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の構成によれば、カッタヘッドの前面に開口されたビット収容部より奥側に、回動バルブを収容するバルブ収容部を形成し、ローラビットを有するビットケースを、回動バルブの着脱通路からビット収容部に突出移動させて使用するので、回動バルブとバルブ収容部の摺動隙間が、ビットケースに覆われてカッタヘッドの前面に露出することがなく、またビット収容部とビットケースとの隙間が第1シール材により止水されるので、泥水圧が直接負荷されることがない。これにより、回動バルブとバルブ収容部の摺動隙間を良好にシールすることができて、回動バルブのスムーズな回動が可能となる。
【0011】
請求項2記載の構成によれば、着脱通路の背面側で、ビットケースからコッタ部材を介して伝達される掘削反力を、反力支持ブロックを介してハウジングに支持させることができ、大きい掘削反力を効果的に支持することができる。
【0012】
請求項3記載の構成によれば、最初に反力支持ブロックを着脱通路から抜き出し、次いでビットケースを着脱通路から抜き出すことにより、ローラビットを容易に交換することができる。また、回動バルブの回動方向の選択肢が広くすることができる。
【0013】
請求項4記載の構成によれば、ローラビットにより掘削された掘削物を、記ケース排土通路からブロック排土通路を介してカッタヘッドの背面側にスムーズに排出することができ、岩盤や礫を良好に破砕することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るビット交換ユニットの第1実施例を示す主カッタスポークの横断面図である。
【図2】ビット交換ユニットの中央横断面図である。
【図3】図1に示すA−A断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】ビット交換ユニットを示す主カッタスポークの一部切り欠き斜視図である。
【図6】ビット交換ユニットを示す正面図である。
【図7】図1に示すB−B断面図である。
【図8】回動バルブからビットケースと反力受けブロックを離脱させた分解縦断面図である。
【図9】ビットケースと反力受けブロックを示す分解斜視図である。
【図10】シール材を示す斜視図である。
【図11】ビット交換ユニットを有するシールド掘進機のカッタヘッドを示す正面図である。
【図12】ビット交換ユニットを有するシールド掘進機の中央縦断面図である。
【図13】ローラビットの交換作業で、ビットケースの後退位置を示すビット交換ユニットの中央横断面図である。
【図14】ローラビットの交換作業で、ビットケースの後退位置を示すビット交換ユニットの中央縦断面図である。
【図15】ローラビットの交換作業で、回動バルブの交換姿勢を示すビット交換ユニットの中央横断面図である。
【図16】ローラビットの交換作業で、ビットケースおよび反力支持ブロックの取り出し状態を示すビット交換ユニットの中央横断面図である。
【図17】第1実施例の変形例を示し、ローラビットの交換作業でビットケースの取り出し状態を示すビット交換ユニットの中央横断面図である。
【図18】本発明に係るビット交換ユニットの第2実施例を示し、ビット交換ユニットの配置を示す主カッタスポークの正面図である。
【図19】主カッタスポークの縦断面図である。
【図20】図18に示すC−C断面図である。
【図21】(a)〜(c)はビット交換ユニットの中央縦断面図で、(a)はローラビットの掘削位置を示し、(b)はビットケースの後退位置を示し、(c)はビットケースの取り出し状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る掘削機であるシールド掘進機の掘削用ローラビットの交換装置であるビット交換ユニットの実施例を説明する。
【第1実施例】
【0016】
第1実施例を図1〜図16に基づいて説明する。
[シールド掘進機]
図12に示すように、円筒形のシールド本体(掘削機本体)11の前部には、切羽崩壊土圧を保持する圧力隔壁12が設けられており、この圧力隔壁12に旋回軸受13を介して旋回リング体14がシールド軸心(掘削機軸心、カッタヘッドの回転軸心)O周りに回転自在に支持されている。そして、この旋回リング体14に複数の支持脚15が前方に突設され、これら支持脚15の前端部に円形のカッタヘッド16が支持されている。圧力隔壁12の後部で大気圧側には、カッタヘッド16を回転駆動するカッタ駆動装置17が設けられており、このカッタ駆動装置17は、旋回リング体14の背面に設けられたリングギヤ17aと、このリングギヤ17aに噛み合う複数の駆動ピニオン17bと、前記駆動ピニオン17bをそれぞれ回転駆動する複数の回転駆動装置(油圧式または電動式モータ)17cとで構成されている。さらに圧力隔壁12には、カッタヘッド16により掘削された土砂を、切羽崩壊土圧を保持しつつ後部の大気圧側に排出する排土用スクリュコンベヤ装置18が設けられている。
【0017】
カッタヘッド16は、図11に示すように、シールド軸心O上に配置された中心部材20から半径方向に沿って延びる複数の主スポーク部材21と、主スポーク部材21の間に配置された複数の扇形状の中間面板22と、シールド軸心Oを中心とする周方向に配設されて主スポーク部材21および中間面板22を連結する中間リング部材23および外周リング部材24とを具備し、これら部材21〜24間に土砂取り入れ口25が形成されている。
【0018】
そして主スポーク部材21に、本発明に係る複数のビット交換ユニット(ビット交換装置)30が配設され、各ビット交換ユニット30に、岩盤や礫を破砕するローラビット31がそれぞれ半径方向に沿う半径軸OR周りに回転自在に設けられている。これらすべてのローラビット31はシールド軸心Oを中心とする旋回半径が位置ずれして異なる部位を掘削破砕するように配置される。また中心部材20にもセンタローラビットが設けられるとともに、各主スポーク部材21の両側部に複数の固定ビット26がそれぞれ設けられている。
【0019】
図12に示すように、前記中心部材20の背面側に、作業員が出入り可能なマンホール27が設けられており、このマンホール27は圧力隔壁12を貫通して大気圧側から主スポーク部材21内の作業空間28に出入り可能に連通されている。
【0020】
[ビット交換ユニットの第1実施例]
図1〜図10、図13〜図16を参照して、ビット交換ユニットの第1実施例を説明する。
【0021】
図1に示すように、主スポーク部材21は、前面板21F、背面板21Bおよび左右の側面板21L,21Rにより中空状で、かつ左右の側面板21L,21Rの後部が内側に傾斜した後部面取り形の略台形状断面に形成されている。そして、ビット交換ユニット30は、主スポーク部材21の中心線から正面視で左右一方の側に所定距離位置ずれして配置され、左右他方の側に作業空間28が形成されている。
【0022】
図2〜図4に示すように、ビット交換ユニット30は、前面板21Fに形成された装着開口部21aと、背面板21Bに貫設された排土ダクト21Dとの間にハウジング32が設置され、このハウジング32に、排土ダクト21Dに連通するビット収容通路33がシールド軸心Oに平行な出退軸OP方向に貫通形成されている。このビット収容通路33は、前面に開口するビット収容部34と、ビット収容部34の後部で、半径軸(回動軸)OR回りに形成された円柱形のバルブ収容空間35と、バルブ収容空間35の背面側で反力支持プラグ32Eが嵌合固定されたプラグ収容部36とで構成されている。またこのハウジング32には、バルブ収容部35に連通して、出退軸OPおよびカッタヘッド16の半径方向に沿う半径軸ORに直交する接線軸(挿脱軸)OE方向に、作業空間28に連通する交換用開口部37が形成され、この交換用開口部37に交換用扉37aがヒンジを介して開閉自在に取り付けられている。
【0023】
なお、ここでシールド軸心Oに平行な出退軸OPとしているが、ローラビット31が設けられるカッタヘッドは、その面板(前面)が外周側ほど後方に湾曲または傾斜されたものもあり、ローラビットはその面板に対して略垂直(たとえば85°〜95°)に出退するように設けられるものと、その面板に対して所定の角度、たとえば45°〜85°程度傾斜して出退するように設けられるものがあり、このような場合には、出退軸OPは、カッタヘッドの面板に対して略垂直、あるいは所定角度傾斜して配置されることになる。
【0024】
また交換用開口部37を、出退軸OPおよび半径軸ORにそれぞれ直交する接線軸OE方向に形成したが、交換用開口部37は、後述するローラビット31および反力支持ブロック44が出し入れできればよく、主カッタスポーク21内の空間が許容できるのであれば、接線軸OEに対して所定角度(たとえば前方に15°〜後方に60°)隔てられていてもよい。
【0025】
前記バルブ収容部34内には、円筒状の回動バルブ39が半径軸OR周りに回動自在に配置されている。この回動バルブ39は、円筒状の外周板39aと、この外周板39aに径方向に貫設されて着脱通路38を形成する長円筒体39bとを具備し、この着脱通路38は、長径が接線軸OEに沿う長円形断面に形成され、前面開口部がビット収容部34合致して連通され、かつ反力支持プラグ32Eのプラグ排土通路49より大径に形成されている。そして、回動バルブ39を着脱通路38が使用姿勢から90°回動し、着脱通路38を接線軸OEに沿う交換姿勢として着脱通路38を交換用開口部37に連通させることができる。
【0026】
またここで、回動バルブ39の回動中心となる半径軸ORを、出退軸OPおよび接線軸OEに対して直交する方向としたが、シールド軸心Oおよび接線軸OEに対して略90°(たとえば85°〜95°)で交差するものも含むものとする。
【0027】
(ビットケースと反力支持ブロック)
前記着脱通路38には、図8に示すように、ローラビット31を収容したビットケース41と、このローラビット31からビットケース41を介して加わる掘削反力を反力支持プラグ32Eからハウジング32に支持させる反力支持ブロック44とがそれぞれ挿脱自在に配置される。
【0028】
図7、図9に示すように、前記ビットケース41は長円筒状に形成されるとともに、長円形断面のケース排土通路42が出退軸OPに沿って貫通されており、このケース排土通路42の前部に、ローラビット31が軸部31aを介して半径軸OR方向に平行な軸心周りに回転自在に支持されている。またビットケース41の後部で半径軸OR方向の対称位置に、一対のカムローラ43がそれぞれ突出して着脱可能に設けられている。
【0029】
前記反力支持ブロック44は、着脱通路38に嵌合される大径のブロック本体45と、このブロック本体45前面の反力受け面45aから前方に突設されてビットケース41のケース排土通路42にスライド自在に嵌合される小径のガイド筒46とを具備している。これらブロック本体45とガイド筒46は、それぞれ長円筒形に形成されるとともに、出退軸OP軸方向に沿って長円形断面のブロック排土通路47が貫通形成されている。またブロック本体45の後部端面は、回動バルブ39の外周面に沿う円弧状の反力伝達面45bに構成されている。
【0030】
したがって、着脱通路38がシールド軸心Oに平行な使用姿勢では、ハウジング32のビット収容部34と、ビットケース41と、反力支持ブロック44と、反力支持プラグ32Eとが直線状に並び、ケース排土通路42、ブロック排土通路47、プラグ排土通路49および排土ダクト21Dとが直線状に連通される。また回動バルブ39を半径軸OR周りに矢印方向に90°回動した交換姿勢では、着脱通路38と交換用開口部37とが連通されて、ビットケース41および反力支持ブロック44を作業空間28との間で挿入、離脱して交換することができる。
【0031】
48は、ビット収容部34に突出されたビットケース41と、ブロック本体45の反力受け面45aとの間に介在される左右一対のコッタ部材で、ビットケース41がビット収容部34内に突出移動された掘削位置で、ビットケース41の背面と反力開けブロック45の反力受け面45aの間に介在されてビットケース41を固定している。これらコッタ部材48は、長円筒体39bに半径軸OR方向に貫通されたコッタ挿入孔40から着脱通路38の短径方向に挿脱自在に嵌合されている。これらコッタ部材48により、ローラビット31の掘削反力を、ビットケース41から反力支持ブロック44に伝達し、さらに反力支持ブロック44の反力伝達面45bからハウジング32の反力受けプラグ32Eに伝達させる。
【0032】
(バルブ回動機構とビット出退機構)
このビット交換ユニット31には、ハウジング32に設けられて回動バルブ39を使用姿勢と交換姿勢との間で回動させるバルブ回動機構51と、また回動バルブ39に設けられて掘削位置と着脱通路38内の後退位置との間でビットケース41を出退駆動するビット出退機構55が設けられている。
【0033】
前記バルブ回動機構51は、回動バルブ39の外周板39aの内面に所定範囲で取り付けられた円弧状の内歯ラック52と、ハウジング32に支持部材を介して回転自在に支持されて内歯ラック52に噛み合うピニオン53と、このピニオン53をチェーンとスプロケットからなる巻掛け伝動機構54aを介して回転駆動するバルブ回動ハンドル54とで構成されている。
【0034】
前記ビット出退機構55は、ビットケース41に設けられたカムローラ43と、回動バルブ39の長円筒体39bに出退方向に形成されてカムローラ43の基部を案内するガイド孔56と、長円筒体39bの外面に配置されて出退軸OP周りに回転自在に支持されて外周面にカムローラ43の先端部がそれぞれ係合されるカム溝57aが形成された一対の出退用カム軸57と、これら出退用カム軸57をウォームギヤ装置58a、伝動軸58bおよび巻掛け伝動機構58cを介して回転させるビット出退ハンドル58とで構成されている。
【0035】
なお、このビット出退機構55を送りねじ式機構、油圧式シリンダまたは電動ジャッキなどの直線駆動装置により構成することもできる。
(シール構造)
このビット交換ユニット30は、図4および図10に示すように、複数のシール材により止水されて作業空間28への漏水が防止されている。
【0036】
すなわち、ビットケース41の前端部外周に第1シール材61が設けられており、掘削位置で、第1シール材61によりハウジング32のビット収容部34内面とビットケース41の外周面との隙間を止水している。
【0037】
また回動バルブ39に対して第2シール材62A,62Bおよび第3シール材63A,63Bがそれぞれ設けられている。第2シール材62A,62Bは、バルブ収容部35の内周面に、バルブ収容部35の開口面および背面開口部の開口面をそれぞれ囲むように設けられて、バルブ収容部35の内周面と回動バルブ39の外周板39aとの摺動隙間をシールしている。また第3シール材63A,63Bは、回動バルブ39の外周板39aで両端面近傍に全周にわたって設けられて、回動バルブ39の外周板39aとバルブ収容部35の内周面との摺動隙間をシールしている。さらに、図9に示すように、反力支持ブロック44には、ブロック本体45の外周面に第4シール材64を全周にわたって取り付けて、反力支持ブロック44と着脱通路38との隙間をシールするとともに、ガイド筒46の前端部外周に第5シール材65を全周にわたって取り付けて、ガイド筒46の反力支持ブロック44とケース排土通路42との隙間をシールしている。
【0038】
したがって、ビットケース41が掘削位置にある場合、回動バルブ39とバルブ収容部35の隙間に流入しようとする泥水や小径の礫は、第1シール材61によりビット収容部34内への流入が防止され、さらに第2シール材62A,62Bおよび第3シール材63A,63Bにより作業空間28への漏水が防止される。
【0039】
また、ビットケース41の後退位置では、第1シール材61により着脱通路38の内面とビットケース41との隙間がシールされる。そして第2シール材62A,62Bおよび第3シール材63A,63Bにより、回動バルブ39とバルブ収容部35の隙間から作業空間28への漏水が防止される。また回動バルブ39を使用姿勢から交換姿勢に90°回動させた時も、第2シール材62A,62B、第3シール材63A,63B第4シール材64および第5シール材65により、作業空間28への漏水が防止される。
【0040】
(ローラビットの交換)
上記構成におけるローラビット31の交換手順を説明する。
1)ビットケース41がビット収容部34に収容された掘削位置から、磨耗したローラビット31を交換する場合、カッタヘッド16を所定位置で停止し、作業員がマンホール27から主スポーク部材21内の作業空間28に入り、交換作業を行う。
【0041】
2)一対のコッタ部材48をコッタ挿入口40から抜き出した後、ビット出退ハンドル58を操作して出退用カム軸57を回転させ、カムローラ43を介してビットケース41を掘削位置から着脱通路38の後退位置まで後退させる。
【0042】
3)バルブ回動ハンドル54を操作して回動バルブ39を使用姿勢から交換姿勢に90°回動させ、着脱通路38の背面開口部を交換用開口部37と対面させる。
4)交換用扉37aを開け、ジャッキなどの作業具を使用して、反力支持ブロック44を着脱通路38から交換用開口部37を介して接線軸OE方向に引き出し作業空間28に取り出す。次いでビットケース41を背面開口部側に後退させ、カムローラ43をビットケース41から取り外して、ガイド孔56から離脱させた後、ビットケース41を着脱通路38から引き出して交換用開口部37から作業空間28に取り出す。
【0043】
5)新たなローラビット31を装着したビットケース41を、交換用開口部37から着脱通路38に挿入し、カムローラ43をビットケース41に装着して着脱通路38の奥に押し込み、カムローラ43をガイド孔56に嵌合させるとともに、出退用カム軸57のカム溝57aに嵌合させる。そして、反力支持ブロック44を作業空間28から交換用開口部37を介して着脱通路38に嵌め入れる。
【0044】
6)交換用扉37aを閉じた後、バルブ回動ハンドル54を操作して回動バルブ39を交換姿勢から使用姿勢に90°回動させ、着脱通路38の正面開口部をビット収容部34に一致させる。
【0045】
7)ビット出退ハンドル58を操作して出退用カム軸57を回転させ、カムローラ43を介してビットケース41を着脱通路38内の後退位置から出退軸OP方向にビット収容部34内に突出移動させ、掘削位置に停止させる。そして、コッタ部材48をそれぞれコッタ挿入口40から挿入して、ビットケース41の背面と反力支持ブロック44の反力受け面45aとの間に嵌入させ、ビットケース41を固定する。
【0046】
上記実施例1によれば、回動バルブ39の着脱通路38に収容されたビットケース41を、主カッタスポーク21の前面に開口するビット収容部34に突出移動して固定し掘削するように構成したので、バルブ収容部35における回動バルブ39の摺動隙間がビットケース41により閉鎖されて、主カッタスポーク21の前面に露出することがなく、掘削部の泥水圧に直接晒されることがない。またビットケース41周囲の第1シール材61と、バルブ収容部35の前面開口部周囲の第2シール材62Aにより摺動隙間がそれぞれ良好に止水される。したがって、泥水圧が回動バルブ39の摺動隙間に直接負荷されることがなく、破砕片が流入することもない。これにより、回動バルブ39とバルブ収容部35との摺動隙間を良好にシールすることができてシール性を向上させることができ、回動バルブ39のスムーズな回動が可能となる。
【0047】
また着脱通路38の背面側に、ビットケース41からコッタ部材48を介して伝達される掘削反力を、反力支持ブロック44を介してハウジング32の反力支持プラグ32Eに支持させることができ、カッタビット31に加わる大きい掘削反力を効果的に支持することができる。
【0048】
さらに、反力支持ブロック44を着脱通路38から抜き出し、次いでビットケース41を着脱通路38から抜き出すことにより、ローラビット31を容易に交換することができる。
【0049】
さらにまた、ローラビット31により掘削された掘削物を、ケース排土通路42からブロック排土通路47およびプラグ排土通路49を介して排土ダクト21Dにスムーズに排出することができ、岩盤や礫を良好に破砕することができる。
【0050】
[第1実施例の変形例]
図17は、回動バルブ39の回動方向を逆方向に90°回動させるように構成したもので、ビットケース41から先に、ビットケース41のみを取り出すことができる。なお、ビットケース41の交換時にカムローラ43が障害となるが、ビット出退機構55の出退用カム軸57を取り外した後に、カムローラ43を取り外すことにより、これを解消することができる。この変形例では、反力支持ブロック44を回動バルブ39に固定したり、反力支持ブロック44と回動バルブ39とを一体に成形することもできる。
【0051】
この第1実施例の変形例によれば、第1実施例の効果に加えて、ビットケース31の取り出しだけですみ、ローラビット31の交換作業をさらに容易に行うことができる。
[第2実施例]
ビット交換ユニットの第2実施例を、図18〜図20に基づいて説明する。なお、同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
このビット交換ユニット70は、主カッタスポーク21の左右両側に振り分けて配置されるとともに、ハウジング71に収容された回動バルブ75を、接線軸(回動軸)OE周りに回動させてローラビット31を上方または下方から交換するものである。
【0053】
図18に示すように、ビット交換ユニット70は、主カッタスポーク21に、掘削位置をずらすとともに内部の作業空間28のために、半径軸(挿脱軸)OR方向に間隔Lをあけて配置されるとともに、接線軸OE方向に間隔Wをあけて配置されており、前面視で左右のローラビット31が半径方向に位置ずれした千鳥位置に配置されている。
【0054】
図20、図21に示すように、ハウジング71に貫通形成されたビット収容通路33は、前面からビット収容部34とバルブ収容部35とが形成され、バルブ収容部35の背面側に、反力支持部72がハウジング71と一体に設けられている。この反力支持部72の軸心部に支持部排土通路73が形成されている。また回動バルブ75の着脱通路38の背面側に反力受け部76が一体に形成され、反力支持ブロック44を抜け止めするように構成されている。またこの反力受け部76の軸心部に連通排土通路77が形成されている。これにより、ローラビット31に加わる掘削反力を、ビットケース41から反力支持ブロック44、反力受け部76を介して回動バルブ75全体に支持させ、回動バルブ75から反力支持部72を介してハウジング71に支持させることができる。
【0055】
ハウジング71には、半径軸OR方向の一方(外径側の面)[または他方(シールド軸心O側の面)でも可]に開閉扉74aを有する交換用開口部74が形成されている。
このビット交換ユニット70には、図19に示すように、実施例1と同一の構成で、回動バルブ75を接線軸OE周りに回動させるバルブ回動機構51と、ローラビット31を掘削位置と後退位置との間で出退させるビット出退機構54とが設けられている。
【0056】
上記構成において、図21(a)〜(c)に示すように、ビット出退機構54により回動バルブ75を掘削位置のビット収容部34から後退位置の着脱通路38内に後退させ、さらにバルブ回動機構51により、回動バルブ75を接線軸OE周りに90°回動させて着脱通路38の前面を交換用開口部74に対面させる。これにより、第1実施例の変形例と同様に、ビットケース41を交換用開口部74から作業空間28に取り出すことができる。
【0057】
上記第2実施例によれば、第1実施例およびその変形例と同様の作用効果を奏することができる。また主カッタスポーク21に、多くのビット交換ユニット70を配置することができ、大型の掘削機に好適となる。
【符号の説明】
【0058】
O シールド軸心(掘削機軸心)
OP 出退軸
OR 半径軸(回動軸、挿脱軸)
OE 接線軸(挿脱軸、回動軸)
11 シールド本体(掘削機本体)
16 カッタヘッド
17 カッタ駆動装置
21 主スポーク部材
21D 排土ダクト
27 マンホール
28 作業空間
30 ビット交換ユニット(ビット交換装置)
31 ローラビット
32 ハウジング
32E 反力支持プラグ
33 ビット収容通路
34 ビット収容部
35 バルブ収容部
37 交換用開口部
37a 交換用扉
38 着脱通路
39 回動バルブ
40 コッタ挿入口
41 ビットケース
42 ケース排土通路
45 ブロック本体
46 ガイド筒
47 ブロック排土通路
48 コッタ部材
49 プラグ排土通路
51 バルブ回動機構
55 ビット出退機構
56 ガイド孔
61 第1シール材
62A,62B 第2シール材
63A,63B 第3シール材
64 第4シール材
70 ビット交換ユニット
71 ハウジング
72 反力支持部
73 支持部排土通路
74 交換用開口部
75 回動バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機本体の前部に回転軸心周りに回転自在に支持されたカッタヘッドの前面に、岩盤や礫を破砕するローラビットを配置し、カッタヘッド内に設けられた作業空間から磨耗したローラビットを交換する掘削機のビット交換装置であって、
カッタヘッドに設置されたハウジングに、前面に開口するビット収容部と、当該ビット収容部の後部に形成されたバルブ収容部とを有するビット収容通路を、カッタヘッド前面に出退可能な方向の出退軸に沿って形成するとともに、前記出退軸に所定角度隔てた挿脱軸方向に形成されて前記バルブ収容部と前記作業空間とを連通する交換用開口部とを設け、
前記バルブ収容部内に、前記出退軸および挿脱軸に略直交する回動軸心周りに回動自在な回動バルブを設けるとともに、当該回動バルブに、前記ビット収容部に連通する着脱通路を形成し、
当該着脱通路内に、ローラビットを有するビットケースを挿脱自在に配置し、
回動バルブを所定角度回動させて前記着脱通路を前記交換用開口部に連通させることにより、ビットケースを前記着脱通路と前記作業空間の間で挿脱可能に構成し、
回動バルブに、前記ビットケースを前記着脱通路と前記ビット収容部との間で出退移動させるビット出退機構を設け、
前記ビットケースと前記バルブ収容部との隙間を止水する第1シール材を設けるとともに、回動バルブの外周面で着脱通路の開口部周囲と前記バルブ収容部の内面との隙間を止水する第2シール材を設けた
ことを特徴とする掘削機のビット交換装置。
【請求項2】
回動バルブの着脱通路でビットケースの背面側に、ローラビットの掘削反力をハウジングに伝達して支持させる反力支持ブロックを設け、
バルブ収容部内の前記ビットケースと前記反力支持ブロックとの間に、掘削反力を伝達するコッタ部材を嵌脱自在に設けた
ことを特徴とする請求項1記載の掘削機のビット交換装置。
【請求項3】
ビット収容通路を、カッタヘッドを貫通して形成するとともに、着脱通路を、回動バルブを貫通して形成し、
反力支持ブロックを着脱通路に挿脱自在に配置し、
前記反力支持ブロックを、回動バルブの前記着脱通路の背面開口部から交換用開口部を介して作業空間に挿脱自在とした
ことを特徴とする請求項1または2記載の掘削機のビット交換装置。
【請求項4】
ビットケースに、ローラビットを収容するケース排土通路を形成するとともに、反力支持ブロックに、前記ケース排土通路に連通するブロック排土通路を形成し、
ローラビットにより掘削された掘削物を前記ケース排土通路からブロック排土通路を介してカッタヘッドの背面側に排出可能に構成した
ことを特徴とする請求項3記載の掘削機のビット交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−157683(P2011−157683A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17520(P2010−17520)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】