説明

掘削機の拡大ヘッド開閉装置

【課題】杭先端に拡大根固め球根を築造するための拡大ヘッド拡大掘削刃の拡縮開閉装置において、回転シャフトの回転を利用して拡大掘削刃を確実に開閉でき、出力の大きい開閉駆動源を不要とし、比較的簡単な開閉機構で開閉を可能とし、任意の径の拡大も可能とし、目視で開閉の確認ができるようにする。
【解決手段】回転シャフト4の上部に雄ねじシャフト部分30と雌ねじリング31とベースリング32からなる開閉操作治具20を設け、回転シャフト4に沿って上下移動可能・回転シャフトと共に回転可能な操作ロッド21を設け、正逆回転する回転シャフト4に対して雌ねじリング31の回転を回転停止手段35で停止させ、雄ねじシャフト部分30のねじ回転で雌ねじリング31を昇降させ、この雌ねじリング31の昇降で操作ロッド21を上下移動させて拡大掘削刃を拡縮開閉させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既製杭や場所打ち杭などの杭の先端部に拡径した根固め球根を築造するために用いられる拡大ヘッドの拡大掘削刃を拡縮する開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中杭の造成においては、掘削機に例えばアースオーガを用い、リーダマストに沿って移動自在に支持された駆動部により回転駆動される掘削ロッドの下端部に通常の掘削刃と拡大掘削刃を設け、先ず拡大掘削刃を縮閉した状態で支持層まで縦孔を掘削し、次いで拡大掘削刃を拡開して拡大掘削すると共にセメントミルクやモルタル等を注入して、根固め球根を築造し、杭の支持力を増大させる工法が広く知られている。
【0003】
従来の拡大掘削刃は、掘削ロッドの正逆回転による土砂の抵抗を利用して開閉させるのが一般的である。掘削ロッドの例えば正回転では拡大掘削刃が土砂により押し付けられて縮閉し、掘削ロッドが逆回転すると、拡大掘削刃の先端部分に土砂が入り込み、拡大掘削刃が外方に向かって起立して拡開する構造とされている。
【0004】
しかし、この土砂の抵抗を利用する構造の場合、礫分の多い土質においては簡単な構造で高い信頼性が得られるものの、礫分の少ない土質においては掘削ロッドが全体として凹凸のない一本の土柱状態となり、逆転させても拡大掘削刃の先端部分に土砂が入り込まず、拡開しないという問題が生じる。また、任意の径の拡大ができない、目視で開閉の確認ができないなどの問題もある。
【0005】
このような問題を解決するものとして作動機構を用いて確実に開閉させる種々の開閉装置が開発されており、例えば特許文献1〜3に示されるような開閉装置が提案されている。
【0006】
特許文献1の発明は、掘削ロッドの下端に設けられる掘削用拡大ヘッドであり、掘削ロッド内を貫通する操作ロッドの先端部を左右一対の拡大掘削刃の基部上面に当てて縮閉状態とし、掘削ロッド上部の駆動部に設けたセンターホールジャッキによって操作ロッドを引き上げることにより左右一対の拡大掘削刃を拡開するように構成されている。
【0007】
特許文献2の発明は、杭穴の奥部を拡大掘削する掘削装置であり、掘削ロッドの下端に掘削ロッドの外周面と略同一の外径寸法を有し、掘削ロッドの逆転時に空転する先端ヘッドを設け、この先端ヘッドに拡大掘削刃を設け、掘削ロッドの逆転時に噛み合うギア凹凸などにより拡大掘削刃を起立させて拡開させるように構成されている。
【0008】
特許文献3の発明は、杭の地中下端に球根を造成するための拡大掘り方法及び拡大掘削ヘッドであり、掘削ロッドの下端に接続される拡大ヘッドのヘッドロッド内部に拡大掘削刃拡縮用油圧シリンダを内装し、この油圧シリンダの伸縮駆動によりリンクを介して拡大掘削刃を拡縮揺動できるように構成されている。油圧シリンダの圧油給排管は掘削ロッド内に縦通させて上方へ導き、駆動部において回転継手を介して油圧回路に接続されている。油圧シリンダに給排される油量を検出して拡大掘削刃の拡開径を検知し、バルブにより油量を調節して拡開径を増減する。
【0009】
また、特許文献4には、既製杭の埋設において、既製杭の中空部内に挿通される掘削ロッドの下端に上部腕と下部腕により径が拡大縮小する拡開練付ユニットを設け、閉状態の拡開練付ユニットの側面の練付部と下端の開閉ユニットを既製杭の下面から突出させ、開閉ユニットの下面の掘削刃を地盤に当接させ、そのまま掘削ロッドを押し下げて、例えば掘削ロッド下端の連結板を開閉ユニットの上面に嵌合させることにより拡開練付ユニットを拡開し、掘削ロッドを引き上げるだけで拡開練付ユニットを縮径させる開閉機構が記載されている。
【0010】
また、特許文献5には、既製杭の埋設において、掘削ロッドの下端に装着された掘削ヘッドの固定掘削刃の上に、先端に掘削刃を有する掘削アームを揺動自在に左右一対で設け、正回転時(軸部掘削時)に掘削アームの揺動を制限するストッパーと、逆回転時(拡大掘削時)に掘削アームの揺動を制限するストッパーを用いて開状態と閉状態を保持する開閉機構が記載されている。
【0011】
また、特許文献6には、既製杭をその外周にモルタル拡径部を形成して地中に建て込む工法において、下端に掘削ヘッドを有する中空ロッドの外周面に、軸方向に間隔をおいて複数の拡大掘削刃を拡縮自在に設け、中空ロッドのほぼ上端部から中空ロッドに沿って伝達ロッド等の駆動力伝達部材を上下動自在に配設し、駆動力伝達部材にリンク等を介して各拡大掘削刃を連継して、駆動力伝達部材の上下動により拡縮作動させうるようにし、動力伝達部材の上端部に、各拡大掘削刃の拡開作動を最大拡開位置まで段階的に作動させうる上下駆動力を有する出力する油圧シリンダ等の駆動手段を連結して構成される開閉機構が記載されている。
【0012】
【特許文献1】特許第3662647号公報
【特許文献2】特開2002−155691号公報
【特許文献3】特開2002−322890号公報
【特許文献4】特開2003−64679号公報
【特許文献5】特開2003−213679号公報
【特許文献6】特開2004−324381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
土砂の抵抗を利用して拡大掘削刃を開閉する構造の場合、前述したように、礫分の少ない土質において確実に拡開できないという問題や、任意の径の拡大ができない、目視で開閉の確認ができないなどの問題がある。
【0014】
また、特許文献1〜6に記載されている、作動機構を用いて確実に開閉させるようにした開閉装置の場合、開閉駆動源に出力の大きい油圧シリンダやジャッキ等を必要とし、あるいは開閉機構が複雑な構造となるなどの課題がある。
【0015】
本発明は、前述のような問題点を解消すべくなされたものであり、杭の先端部に拡径した根固め球根を築造するために用いられる拡大ヘッドの拡大掘削刃を拡縮する開閉装置において、回転シャフトの回転駆動力を利用して拡大掘削刃を確実に開閉させることができ、出力の大きい開閉駆動源を用いることなく、また比較的簡単な開閉機構により、開閉を行うことができると共に任意の径の拡大も行うことができ、さらに目視で開閉の確認ができる掘削機の拡大ヘッド開閉装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の請求項1に係る発明は、掘削機のリーダマストに沿って移動自在の駆動部により回転駆動される回転シャフト(掘削ロッド)の先端部に設けられた拡大ヘッドの拡大掘削刃を拡縮開閉させる拡大ヘッド開閉装置であり、回転シャフトの上部に設けられる開閉操作治具と、回転シャフトに沿って上下移動可能かつ回転シャフトと共に回転可能に設けられ、開閉操作治具と拡大掘削刃とを連結する操作ロッドを備え、開閉操作治具は、回転シャフトの上部に設けられた雄ねじシャフト部分に螺合する雌ねじが内面に設けられた雌ねじリングと、この雌ねじリングに対して回転可能かつ雄ねじシャフト部分に対して上下移動可能に雌ねじリングの下部に取り付けられたベースリングを有し、このベースリングには操作ロッドが連結されており、正逆回転する回転シャフトに対して雌ねじリングの回転を停止させ、雌ねじリングに対して雄ねじシャフト部分をねじ回転させることにより、雌ねじリングを雄ねじシャフト部分に沿って昇降させ、この雌ねじリングの昇降により操作ロッドを上下移動させて拡大掘削刃を拡縮開閉させるように構成されていることを特徴とする掘削機の拡大ヘッド開閉装置である。
【0017】
これは、例えば図1〜図3に示すように、拡大掘削刃の開閉操作治具を回転シャフトの上部に設けた上部操作方式である。先ず拡大掘削刃を縮閉した状態で支持層まで縦孔を掘削し、支持層に達すると、回転停止手段により雌ねじリングの回転を止めると、例えば、回転停止手段により回転を止めた雌ねじリングに対して雄ねじシャフト部分がねじ回転することにより、雌ねじリングが雄ねじシャフト部分に沿って上昇し、雌ねじリングの上昇によりベースリングが回転シャフトと共に回転しながら上昇し、ベースリングの上昇により操作ロッドが上昇し、拡大掘削刃が拡開する。雌ねじリングの回転停止の回転数または時間を調整することにより、拡大掘削刃の拡大径を任意に変えることができる。回転停止手段により雌ねじリングの回転を止めた状態で、上記とは逆に回転シャフトを逆回転させれば、雌ねじリングが下降し、拡大掘削刃が閉じる。
【0018】
ベースリングは、雄ねじシャフト部分に沿って昇降するため、回転シャフトに直接取り付けることができないため、その下方に複数本の連結ロッドを介してロッドジョイントリングを配置し、このロッドジョイントリングを回転シャフトに取り付けると共に、このロッドジョイントリングに一対の操作ロッドの上端部を接続する。雄ねじシャフト部分の下方には、ねじのないストレートなシャフト部分を設け、このシャフト部分に上下方向の回り止め滑りキー等を介してロッドジョイントリングを取り付け、回転シャフトと共に回転可能かつ回転シャフトに沿って上下移動可能とする。
【0019】
回転シャフトの回転駆動力を利用して、回転シャフト上部の雄ねじシャフト部分と雌ねじリングによるねじ方式と操作ロッドにより拡大掘削刃を確実に開閉させることができ、出力の大きい開閉駆動源を用いることなく、また雄ねじシャフト部分と雌ねじリングとベースリングと操作ロッドによる比較的簡単な開閉機構により、開閉を行うことができると共に拡大掘削刃を任意の径に拡大させることができる。さらに、雌ねじリング等の上下移動により拡大掘削刃の開閉状態を目視で簡単に確認することができる。
【0020】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の拡大ヘッド開閉装置において、雌ねじリングの回転停止手段が、雌ねじリングの外面に側方に突出するように設けられ、かつ、水平軸に回転自在に設けられたローラーと、拡大掘削刃の開閉時にリーダマストと雄ねじシャフト部分の間に上下方向に沿って位置して前記ローラーが当接して上下方向に転動し得る反力板から構成されていることを特徴とする掘削機の拡大ヘッド開閉装置である。
【0021】
これは、例えば図2(b)に示すように、リーダマストの前面ガイドレールに上下スライド可能に設けた上下動ガイド板の前面に上下方向に長い反力板を取り付け、拡大掘削刃の開閉時に反力板が雄ねじシャフト部分に対向配置されるように移動させ、回転シャフトと共に正逆回転する雌ねじリングのローラーを反力板に当てて雌ねじリングの回転を止める場合である。雌ねじリングの昇降に伴いローラーは反力板上を転動する。このような回転停止手段の他に、雌ねじリング外周にブレーキシューを油圧シリンダ等で押し付けて摩擦抵抗で回転を止めるドラムブレーキ方式、あるいはカムクラッチ方式などを用いることもできる。
【0022】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項2に記載の拡大ヘッド開閉装置において、雌ねじリングの上部外周にトルクガードリングが回転自在に設けられ、このトルクガードリングの外面にローラーが取り付けられ、このトルクガードリングがシャーピンにより雌ねじリングに固定されていることを特徴とする掘削機の拡大ヘッド開閉装置である。
【0023】
これは、例えば図2(a)に示すように、拡大掘削刃の開閉操作時に駆動部のオーガー機器や開閉操作治具などに過負荷がかからないように、回転停止手段にトルクガードリングとシャーピンによる過負荷防止手段を設ける場合である。ローラーに過大な力が加わると、雌ねじリングに対してトルクガードリングが回転移動することで、シャーピンがせん断され、トルクガードリングがフリーとなることにより過負荷が防止される。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
(1)回転シャフトの回転駆動力を利用し、回転シャフト上部の雄ねじシャフト部分と雌ねじリングによるねじ方式と操作ロッドを用いているため、拡大掘削刃を確実に開閉させることができる。
(2)回転シャフトの回転駆動力を利用するため、出力の大きい開閉駆動源が不要であり、またねじ方式を用いることで開閉機構も比較的簡単な構造とすることができ、装置コストや施工コストの低減が図られる。
(3)ねじ方式による比較的簡単な開閉機構により拡大掘削刃を任意の径に拡大させることができる。
(4)雌ねじリング等の上下移動により拡大掘削刃の開閉状態を目視で簡単に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、既製杭や場所打ち杭などの先端根固め工法に適用した例である。図1は、本発明に係る拡大ヘッドを装備した掘削機の一例を示す全体図である。図2は、本発明の拡大ヘッド開閉装置の一実施形態を示す断面図と平面図である。図3は、拡大ヘッドの一例を示す部分断面図である。
【0026】
図1において、掘削機はアースオーガであり、ベースマシン1にリーダマスト2がステーを介して垂直に支持され、リーダマスト2の前面のガイドレールに駆動部(モータ・減速機)3が上下スライド自在に設けられ、この駆動部3にはベースマシン1上のウインチからのワイヤロープが接続され、ウインチの巻上げ巻戻しにより駆動部3がリーダマスト2に沿って昇降する。この駆動部3の出力軸に回転シャフト(掘削ロッド)4の上端が接続され、回転シャフト4が回転駆動される。リーダマスト2の下部前面には、回転シャフト4の振れ止め5が設けられている。
【0027】
回転シャフト4は、中間部の外周に螺旋翼6が設けられ、先端部に拡大ヘッド7が設けられている。拡大ヘッド7の回転シャフト4には、下端に通常の掘削刃8が設けられ、その上に拡縮開閉する左右一対の拡大掘削刃9、9が設けられている。なお、回転シャフト4は単位長さのシャフトをジョイント10により接続して構成される。
【0028】
このような拡大ヘッドを備えた掘削機において、本発明では、図1に示すように、駆動部3の下部における回転シャフト4の上部の外周に開閉操作治具20を設け、回転シャフト4の左右両側に操作ロッド21を回転シャフト4に沿って配設し、回転シャフト4を挟んで左右一対の操作ロッド21、21を介して開閉操作治具20と拡大掘削刃9とを連結する。一対の操作ロッド21、21は、螺旋翼6を貫通し、上下移動自在に回転シャフト4に取り付けられ、回転シャフト4と共に回転しながら、開閉操作治具20の操作により上下移動し、一対の拡大掘削刃9、9を拡縮開閉する。
【0029】
開閉操作治具20は、図2に示すように、回転シャフト4の回転駆動力を利用してねじ方式で操作ロッド21を上下移動させる構成であり、主として、回転シャフト4の最上部に設けられた雄ねじシャフト部分30と、ピストン状の雌ねじリング31と、底付き円筒リング状のベースリング32と、複数本の連結ロッド33と、ロッドジョイントリング34とから構成され、回転シャフト4と共に回転する雌ねじリング31の回転を回転停止手段35で停止させ、雌ねじリング31に対して雄ねじシャフト部分30をねじ回転させることにより、雌ねじリング31を雄ねじシャフト部分30に対して昇降させ、この雌ねじリング31の昇降によりベースリング32及びロッドジョイントリング34を昇降させて、操作ロッド21を上下移動させ、この操作ロッド21の上下移動により拡大掘削刃9を拡縮開閉させるものである。
【0030】
雄ねじシャフト部分30の外面には雄ねじ30aが切られており、拡大掘削刃9の所望の拡縮ストロークが得られるような上下方向長さ(例えば900mm)を有している。雌ねじリング31は、雄ねじ30aに螺合する雌ねじ31aが内面に切られており、雄ねじシャフト部分30のねじ回転により回転を停止した雌ねじリング31が昇降する。雌ねじリング31の上下方向の長さは、拡大掘削刃9の拡縮ストロークに対応した昇降ストロークが得られるようにされている。
【0031】
ベースリング32は、基板リング部32aとその外周部分から一体的に立ち上がる外リング部32bからなる。基板リング部32aはその中央に雄ねじシャフト部分30が挿通可能な挿通孔が形成され、外リング部32bは雌ねじリング31の下部外周に配置され、ベアリング40を介して雌ねじリング31に取り付けられている。従って、拡大掘削刃9の開閉時には、回転を止めた雌ねじリング31に対してベースリング32は回転シャフト4と共に回転しつつ雌ねじリング31と共に昇降する。なお、ベースリング32は、後述するように、連結ロッド33・ロッドジョイントリング34により回転シャフト4と一体回転可能かつ雄ねじシャフト部30に対して上下移動可能とされており、ベースリング32とその下位に位置する構成部品については、常に回転シャフト4と同じ回転動作となる。
【0032】
ベースリング32は、雄ねじシャフト部分4に沿って昇降するため、回転シャフト4に直接取り付けることができないため、その下方に連結ロッド33を介してロッドジョイントリング34を配置し、このロッドジョイントリング34を回転シャフト4と一体回転可能かつ回転シャフト4に対して上下移動可能に回転シャフト4に取り付け、またこのロッドジョイントリング34に一対の操作ロッド21、21を取り付ける。
【0033】
連結ロッド33は、上端部がベースリング32の基部リング32aにねじ込まれ、ナットで締結され、下端部がロッドジョイントリング34に挿通され、上下のナットで締結される。この連結ロッド33は、リングの円周方向に等間隔をおいて例えば4本配置されており、ベースリング32とロッドジョイントリング34とが強固に連結される。
【0034】
ロッドジョイントリング34は、雄ねじシャフト部分30の下部のねじのないストレートなシャフト部分36に装着されており、シャフト部分36の全体わたって設けられた回り止め滑りキー(図示省略)により回転シャフト4と共に一体回転可能、かつ、シャフト部分36に沿って上下スライド可能とされている。このシャフト部分36の長さは例えば1100mmとされている。
【0035】
このロッドジョイントリング34に、回転シャフト4を挟んで一対の操作ロッド21、21の上端部が挿通され、上下のナットで締結される。ベースリング32が雄ねじシャフト部分30に沿って昇降すると、連結ロッド33を介してロッドジョイントリング34がシャフト部分36に沿ってスライド昇降し、一対の操作ロッド21、21が所定のストロークで上下移動する。
【0036】
この開閉操作治具20は分割された単位長さの回転シャフト4に設けられており、この回転シャフト4の上端が駆動部3の出力軸3a(図1)にジョイントで接続され、下端に下部の回転シャフト4がジョイントで接続される。なお、回転シャフト4の中心にはセメントミルク等の供給孔41が設けられている。操作ロッド21も回転シャフト4と同様に分割され、カプラー(図示省略)により接続される。また、回転シャフト4には操作ロッド21が挿通されるロッドガイド(図示省略)が溶接で取り付けられており、操作ロッド21が回転シャフト4と一体回転可能、かつ、回転シャフト4に対して上下移動可能に支持される。
【0037】
なお、雌ねじリング31から突出する雄ねじシャフト部分30は防塵用の蛇腹42に覆われ、ベースリング32から下の部分も蛇腹43で覆われている。
【0038】
拡大ヘッド7の構造は、例えば図3に示すような構造であり、拡大ヘッド7における回転シャフト4には、先端シャフト50が回り止め滑りキー等により、一体回転可能かつ上下スライド可能に挿入されており、拡大掘削刃9が回転シャフト4の下部側面に軸51により上下方向に回転自在に取り付けられている。拡大掘削刃9の下部における先端シャフト50の外周には固定リング52が固定されており、この固定リング52と拡大掘削刃9の中間部とがリンクプレート53を介して連結されている。固定リング52の上部には操作ロッド21が接続されており、操作ロッド21を下降させると、先端シャフト50が下に向かってスライドして突出し、拡大掘削刃9が下に向かって縮閉し、操作ロッド21を上昇させると、先端シャフト50が上に向かってスライドして引き込まれ、拡大掘削刃9が上に向かって拡開する。なお、この拡大掘削刃9の構造は、これに限らず、拡大掘削刃9とリンク53の配置を逆にして、上に向かって閉じる構造とすることもできる。
【0039】
雌ねじリング31の回転を停止させる回転停止手段35は、例えば図2に示すように、雌ねじリング31の外面に側方に突出するように設けられるローラー60と、このローラー60が当接して上下方向に転動する上下方向に長い反力板61と、この反力板61をリーダマスト2の前面に上下移動可能に設ける上下動ガイド板62から構成することができる。
【0040】
雌ねじリング31の外面に水平軸63が設けられ、この水平軸63にローラー60が回転自在に取り付けられている。反力板61は、回転シャフト4の正逆回転に対して雌ねじリング31の回転を停止できるように、2枚の板を平面視でV字となるように組み合わせ、先端が雌ねじリング31に向かって突出するように上下ガイド板62の前面に取り付けられている。この反力板61は、雌ねじリング31のどの昇降位置でも回転を停止できるように上下方向に所定の長さ(例えば1m)を有している。上下ガイド板62は、断面が縦長C字状の上下方向に長い板材であり、リーダマスト2の前面ガイドレール(図示省略)に嵌合して上下スライド可能とされている。通常時は下降させるなどして退避させておき、拡大掘削刃の開閉時に反力板61が雄ねじシャフト部分30に対向配置されるように移動させる。
【0041】
回転シャフト4を駆動部3により回転駆動させて掘進し、拡径位置に達すると、反力板61を回転停止位置へ移動させ、ローラー60を反力板61に当てて雌ねじリング31の回転を止め、後に詳述するように回転シャフト4の回転で雌ねじリング31を上昇させて拡大掘削刃9を拡開する。雌ねじリング31の上昇時にはローラーが反力板61に沿って転動する。閉じる場合も、逆方向に回転する雌ねじリング31の回転を同様に止め、回転シャフト4の逆方向の回転で雌ねじリング31を下降させて拡大掘削刃9を縮閉する。
【0042】
ここで、雌ねじリング31の回転を止め、オーガーの出力トルクで開閉機構を作動させるため、駆動部3のオーガー機器や開閉操作治具20などに過負荷がかからないように、回転停止手段35には過負荷防止手段70を設けるのが好ましい。この過負荷防止手段70には、例えばトルクガードリング71とシャーピン72による方法を用いることができる。トルクガードリング71を雌ねじリング31の上部外周の上下のリング状の固定板73とリング状の支持板74の間に配置して回転自在とし、固定板73とトルクガードリング71にシャーピン72を挿通取付けして固定する。トルクガードリング71の外面にローラー60の水平軸63を取り付ける。
【0043】
過負荷の要因としては、雄ねじシャフト部分30と雌ねじリング31の焼き付き現象のほか、ねじ部の破損、ゴミなどが考えられ、拡大掘削刃の開閉操作中に回転シャフト4の回転によりローラー60に過大な力が作用すると、トルクガードリング71が回転移動することでシャーピン72がせん断し、駆動部3のオーガー機器や開閉操作治具20などへの過負荷が防止される。また、過負荷状態になると、電流値が上がり、ブレーカーが作動(遮断)して、オーガーの回転を停止させ、しばらくして、ブレーカーを入れると、オーガーを再起動することができる。
【0044】
また、雌ねじリング31の回転を停止させる回転停止手段35は、上記のローラーと反力板による方式に限らず、例えば雌ねじリング31の外周にブレーキシューを配設し、このブレーキシューを油圧シリンダ等で押し付け、その摩擦抵抗で回転を止めるドラムブレーキ方式を用いることもできる。さらに、カムクラッチ方式などを用いることもできる。
【0045】
以上のような構成の拡大ヘッド開閉装置を用い、例えば、削孔しながら既製杭を沈設するインサイドボーリング工法あるいは削孔した後に既製杭を打設するプレボーリング工法などにより、次のような手順で先端根固め工法を実施する。
【0046】
(1)先ず拡大掘削刃9を縮閉した状態で支持層まで縦孔を掘削する。図2(a)に示すように、雌ねじリング31は最下端位置にあり、これにベースリング32・連結ロッド33・ロッドジョイントリング34を介して連結されている操作ロッド21は下降しており、拡大掘削刃9は図3の右側に示すように閉じている。また、雌ねじリング31・ベースリング32・連結ロッド33・ロッドジョイントリング34・操作ロッド21は回転シャフト4と共に一体回転し、拡大掘削刃9の閉じ状態が保持される。
【0047】
(2) 支持層に達すると、拡大掘削刃9を拡開して拡大掘削すると共にセメントミルクやモルタル等を注入して、根固め球根を築造する。回転停止手段35により雌ねじリング31の回転を止めると、雌ねじリング31に対して雄ねじシャフト部分30がねじ回転することにより、雌ねじリング31が雄ねじシャフト部分30に沿って上昇する。雌ねじリング31の上昇により、ベースリング32・連結ロッド33・ロッドジョイントリング34・操作ロッド21が回転シャフト4と共に回転しつつ上昇し、操作ロッド21の上昇により、拡大掘削刃9は図3の左側に示すように拡開する。回転停止手段35による雌ねじリング31の回転停止を解除すれば、雌ねじリング31は、回転シャフト4とねじで一体化しており、回転シャフト4と共に回転するため、上昇することはなく、拡大掘削刃9の拡開状態が保持される。雌ねじリング31の回転停止の回転数または時間を調整することにより、拡大掘削刃9の拡大径を任意に変えることができる。
【0048】
(3) 先端根固め工が終了して回転シャフト4を引き上げる場合には、回転停止手段35により雌ねじリング31の回転を止め、上記とは逆に回転シャフト4を逆回転させれば、雌ねじリング31が下降し、拡大掘削刃9が閉じる。拡大掘削刃9の拡縮状態は雌ねじリング31等の位置により簡単に確認することができる。
【0049】
なお、本発明は既製杭に限らず、場所打ち杭などの先端根固め工法にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る拡大ヘッドを装備した掘削機の一例を示す全体図である。
【図2】本発明の拡大ヘッド開閉装置の一実施形態であり、 (a)は断面図、(b)は平面図である。
【図3】拡大ヘッドの一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…ベースマシン
2…リーダマスト
3…駆動部(モータ・減速機)
4…回転シャフト(掘削ロッド)
5…振れ止め
6…螺旋翼
7…拡大ヘッド
8…掘削刃
9…拡大掘削刃
10…ジョイント
20…開閉操作治具
21…操作ロッド
30…雄ねじシャフト部分
31…雌ねじリング
32…ベースリング
32a…基板リング部
32b…外リング部
33…連結ロッド
34…ロッドジョイントリング
35…回転停止手段
36…シャフト部分
40…ベアリング
41…供給孔
42、43…蛇腹
50…先端シャフト
51…軸
52…固定リング
53…リンクプレート
60…ローラー
61…反力板
62…上下動ガイド板
63…水平軸
70…過負荷防止手段
71…トルクガードリング
72…シャーピン
73…固定板
74…支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機のリーダマストに沿って移動自在の駆動部により回転駆動される回転シャフトの先端部に設けられた拡大ヘッドの拡大掘削刃を拡縮開閉させる拡大ヘッド開閉装置であり、
回転シャフトの上部に設けられる開閉操作治具と、回転シャフトに沿って上下移動可能かつ回転シャフトと共に回転可能に設けられ、開閉操作治具と拡大掘削刃とを連結する操作ロッドを備え、開閉操作治具は、回転シャフトの上部に設けられた雄ねじシャフト部分に螺合する雌ねじが内面に設けられた雌ねじリングと、この雌ねじリングに対して回転可能かつ雄ねじシャフト部分に対して上下移動可能に雌ねじリングの下部に取り付けられたベースリングを有し、このベースリングには操作ロッドが連結されており、正逆回転する回転シャフトに対して雌ねじリングの回転を停止させ、雌ねじリングに対して雄ねじシャフト部分をねじ回転させることにより、雌ねじリングを雄ねじシャフト部分に沿って昇降させ、この雌ねじリングの昇降により操作ロッドを上下移動させて拡大掘削刃を拡縮開閉させるように構成されていることを特徴とする掘削機の拡大ヘッド開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の拡大ヘッド開閉装置において、雌ねじリングの回転停止手段が、雌ねじリングの外面に側方に突出するように設けられ、かつ、水平軸に回転自在に設けられたローラーと、拡大掘削刃の開閉時にリーダマストと雄ねじシャフト部分の間に上下方向に沿って位置して前記ローラーが当接して上下方向に転動し得る反力板から構成されていることを特徴とする掘削機の拡大ヘッド開閉装置。
【請求項3】
請求項2に記載の拡大ヘッド開閉装置において、雌ねじリングの上部外周にトルクガードリングが回転自在に設けられ、このトルクガードリングの外面にローラーが取り付けられ、このトルクガードリングがシャーピンにより雌ねじリングに固定されていることを特徴とする掘削機の拡大ヘッド開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−284995(P2007−284995A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113324(P2006−113324)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(505408686)ジャパンパイル株式会社 (67)
【Fターム(参考)】