説明

接合方法および装置

【課題】被接合物同士を圧接させて平行度調整を行う方法の利点をそのまま活かし、その後にアライメント、さらにはエネルギー波による接合面の洗浄を可能とし、高精度の接合を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】接合部を有する被接合物同士を接合するに際し、少なくとも一方の被接合物を他方の被接合物に押し付け倣わせた状態でその姿勢に一旦ロックし、両被接合物を離間させ、両被接合物間の相対位置をアライメントした後、または/および被接合物の接合面をエネルギー波により洗浄した後、再度両被接合物を接触させ、加熱、加圧、超音波印加のいずれか少なくとも一つの方法により被接合物同士を接合することを特徴とする接合方法、および接合装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チップやウエハー、各種回路基板等の、基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合する接合方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
接合部を有する被接合物同士を接合する方法として、特許文献1には、シリコンウエハーの接合面同士を接合するに際し、接合に先立って室温の真空中で不活性ガスイオンビームまたは不活性ガス高速原子ビームを照射してスパッタエッチングする、シリコンウエハーの接合法が開示されている。この接合法では、シリコンウエハーの接合面における酸化物や有機物等が上記のビームで飛ばされて活性化された原子で表面が形成され、その表面同士が、原子間の高い結合力によって接合される。したがって、この方法では、基本的に、接合のための加熱を不要化でき、活性化された表面同士を単に接触させるだけで、常温またはそれに近い低温での接合が可能になる。
【0003】
しかし、この接合法において常温またはそれに近い低温での接合を行うには、上記のようなエネルギー波によるエッチングにより表面活性化された接合面同士を接合するに際し、被接合物間に高い位置決め精度が求められるのは勿論のこと、極めて高精度の平行度の調整が要求され、接合面同士が密接に面接触した状態で接合される必要がある。平行度が微小に合っていないと、確実な接合が困難になる。また、平行度を一旦精密に合わせたとしても、被接合物毎のばらつきにより、平行度が微妙に狂う場合があり、量産する場合に目標とする接合が困難になるおそれがある。
【0004】
上記のようなエネルギー波による洗浄、表面活性化とは異なる技術であるが、被接合物間の平行度調整技術として、被接合物同士を圧接し、そのとき一方の被接合物の保持手段に円弧面を設け、被接合物同士が圧接される際に一方を他方に倣わせるようにした技術が知られている(たとえば、特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】
特許第2791429号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開2001−230277号公報(特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特許文献2に記載されたような平行度調整方法を、単に特許文献1に記載されたような、エネルギー波で接合面を洗浄した被接合物に適用すると、平行度調整のために被接合物同士を圧接させる際に被接合物同士が接合されてしまい、両者間の相対位置調整が実質的に不可能になってしまう。
【0007】
そこで本発明の課題は、被接合物同士を圧接させて平行度調整を行う方法の利点をそのまま活かし、その後にアライメント、さらにはエネルギー波による接合面の洗浄を可能とし、高精度の接合を容易に行うことができるとともに、エネルギー波洗浄を併用する場合にも高精度の接合を可能ならしめる接合方法および装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る接合方法は、基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合するに際し、少なくとも一方の被接合物を他方の被接合物に押し付け倣わせた状態でその姿勢に一旦ロックし、両被接合物を離間させ、両被接合物間の相対位置を所定の精度範囲内にアライメントした後再度両被接合物を接触させ、加熱、加圧、超音波印加のいずれか少なくとも一つの方法により被接合物同士を接合することを特徴とする方法からなる。
【0009】
この方法においては、上記倣い動作後、上記アライメント前または後に、少なくとも一方の被接合物の接合面をエネルギー波により洗浄することもできる。
【0010】
また、本発明に係る接合方法は、基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合するに際し、少なくとも一方の被接合物を他方の被接合物に押し付け倣わせた状態でその姿勢に一旦ロックし、両被接合物を離間させ、少なくとも一方の被接合物の接合面をエネルギー波により洗浄した後再度両被接合物を接触させ、加熱、加圧、超音波印加のいずれか少なくとも一つの方法により被接合物同士を接合することを特徴とする方法からなる。
【0011】
これら本発明に係る接合方法においては、上記倣い動作を仮アライメントした後に行うようにすることもできる。先に仮アライメントしておくことにより、倣い動作により両被接合物間の平行度を合わせる際の、相対位置関係のずれ量を小さく抑えることができる。上記各方法において、基材の表面の接合部は、金属からなることが、つまり金属接合部であることが好ましい。
【0012】
上記接合は、大気圧下で行うことも可能である。ただし、接合面をエネルギー波により洗浄した後接合する場合には、エネルギー波洗浄による表面活性化状態をできる限り維持した状態で接合するために、接合を減圧下で行うことが好ましい。また、不活性ガス雰囲気下で接合を行うこともできる。この場合にも、減圧することが好ましい。
【0013】
接合面洗浄用のエネルギー波としては、取り扱いやすさや強度制御の行いやすさの点から、プラズマを用いることが好ましい。プラズマとしては、大気圧プラズマ、RFプラズマも含まれる。また、とくに洗浄効果や洗浄後接合までに良好な表面活性化状態に維持するために、Arガス雰囲気中で発生させたArプラズマを用いることが好ましい。
【0014】
上記エネルギー波による洗浄では、接合部の接合される全表面で1nm以上の深さにエッチングすることが好ましい。このような深さ以上にエッチング可能なエネルギーのエネルギー波で洗浄することにより、接合部同士を常温接合する場合においても、接合に必要な表面性状を得ることが可能になる。
【0015】
本発明に係る接合方法は、とくに、表面が金、銅、Al、In、Snのいずれかにより構成されている金属接合部同士を接合する場合に好適である。たとえば、互いに接合される金属接合部の組み合わせとして、金、銅、Al、In、Snのいずれかの同種金属同士、あるいは任意の2つの異種金属同士、あるいは、一方を金とし他方を銅、Al、In、Snのいずれかとする組み合わせとすることができる。中でも、金同士の接合の場合、常温でも確実に接合できるようになる。ただし、金同士の接合以外の場合でも(たとえば、金/銅、金/アルミニウム等の接合等)、常温あるいはそれに近い低温での接合を可能とすることができる。また、少なくとも一方の金属接合部を特定の金属、たとえば金で構成する場合、金属接合部を形成する電極等の全体を金で構成することもできるが、表面だけを金で構成することもできる。表面を金で構成するための形態はとくに限定されず、金めっきの形態や金薄膜をスパッタリングや蒸着等により形成した形態を採用すればよい。
【0016】
上記接合部同士の接合に際し、表面同士が良好に密着できるように、少なくとも一方の接合部の表面硬度がビッカース硬度Hvで120以下、さらに好ましくはアニーリングにより硬度を100以下に下げたものがよい。たとえば、表面硬度Hvを30〜70の範囲内(たとえば、平均Hvを50)とすることが好ましい。このような低硬度としておくことで、接合面同士が接触された時、とくの接合荷重印加時に接合部の表面が適当に変形し、より密接な接合が可能となる。
【0017】
本発明に係る接合装置は、基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合する装置であって、少なくとも一方の被接合物を他方の被接合物に押し付け倣わせた状態でその姿勢に一旦ロックする倣い・ロック機構と、ロック状態で離間された両被接合物間の相対位置を所定の精度範囲内に調整するアライメント機構と、アライメント後の両被接合物を再度接触させ、加熱、加圧、超音波印加のいずれか少なくとも一つの手段を備えた接合手段とを有することを特徴とするものからなる。
【0018】
この接合装置においては、上記倣い・ロック機構による倣い動作後、上記アライメント機構によるアライメント前または後に、少なくとも一方の被接合物の接合面をエネルギー波により洗浄する手段を有することもできる。
【0019】
また、本発明に係る接合装置は、基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合する装置であって、少なくとも一方の被接合物を他方の被接合物に押し付け倣わせた状態でその姿勢に一旦ロックする倣い・ロック機構と、ロック状態で離間された両被接合物の少なくとも一方の被接合物の接合面をエネルギー波により洗浄する手段と、洗浄後再度両被接合物を接触させ、加熱、加圧、超音波印加のいずれか少なくとも一つの手段を備えた接合手段とを有することを特徴とするものからなる。
【0020】
これら本発明に係る接合装置においては、上記倣い動作前に仮アライメントを行う仮アライメント機構を有することもできる。また、上記各装置において、基材の表面の接合部は、金属からなることが、つまり金属接合部であることが好ましい。
【0021】
上記接合手段は減圧手段を備えたもの、不活性ガス供給手段(たとえば、Arガス供給手段)を備えてものに構成することもできる。
【0022】
また、エネルギー波洗浄手段としてはプラズマ照射手段(大気圧プラズマ、RFプラズマ照射手段を含む)に構成することができる。また、プラズマ照射手段としてArプラズマ照射手段に構成することもできる。
【0023】
また、前記エネルギー波により洗浄する手段としては、接合部の接合される全表面で1nm以上の深さのエッチングが可能なエネルギー以上のエネルギー波を発生させる手段からなることが好ましい。
【0024】
また、接合される両接合部の表面金属種の組み合わせは、前述したように、金、銅、Al、In、Snのいずれかの同種金属同士、あるいは任意の2つの異種金属同士、あるいは、一方を金とし他方を銅、Al、In、Snのいずれかとする組み合わせとすることができる。中でも、金同士の組み合わせとする場合、接合が最も容易になる。
【0025】
また、少なくとも一方の接合部の表面硬度がビッカース硬度Hvで120以下、好ましくは100以下とされていることが好ましい。
【0026】
上記のような本発明に係る接合方法および装置においては、両被接合物のアライメントまたは/およびエネルギー波による接合面洗浄前に、少なくとも一方の被接合物を他方の被接合物に押し付け倣わせ、両者の平行度がほぼ完全に合わせられ、その状態でその姿勢に一旦ロックし、両被接合物を離間させてから、両被接合物間の相対位置を所定の精度範囲内に納めるアライメント、または/およびエネルギー波による接合面洗浄が行われる。しかる後に、再度両被接合物が接触され、加熱、加圧、超音波印加のいずれか少なくとも一つの方法により被接合物同士が接合される。したがって、倣い動作を行うときには、接合面はエネルギー波による洗浄や加熱は行われておらず、接合面同士がひっつくことはない。倣い動作により平行度が合わされた状態にて、アライメントできるので、両被接合物間の相対位置が容易に高精度に調整され、その状態で接合に供される。また、倣い動作により両被接合物間の平行度がほぼ完全に合わされた状態にて、エネルギー波による接合面洗浄が行われるので、洗浄後に表面活性化された両接合面そのまま接触させることにより、極めて効率よくしかも良好な接合を行うことが可能になる。接合は、単に加圧だけでも可能であり、とくにエネルギー波により接合面洗浄を行う場合には、小さい接合荷重でよい。また、加熱や超音波印加を組み合わせれば、一層確実にかつ容易に接合することが可能になる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る接合装置1を示している。本実施態様においては、互いに接合される被接合物として、一方はチップ2で他方は基板3である場合を例示している。チップ2上には電極を構成する複数の金属接合部4(図1には2つ示してある)が設けられており、基板3には対応する電極を構成する金属接合部5が設けられている。チップ2は一方の被接合物保持手段としてのチップ保持手段6に保持されており、基板3は他方の被接合物保持手段としての基板保持手段7に保持されている。本実施態様では、チップ保持手段6はZ方向(上下方向)に位置調整できるようになっており、基板保持手段7はX、Y方向(水平方向)および/または回転方向(θ方向)に位置調整できるようになっている。
【0028】
上記のような基板保持手段7は、一般には、平行移動および/または回転可能に装着されるが、必要に応じて、それらと昇降(Z方向移動)とを組み合わせた態様に装着してもよい。また、チップ保持手段6側についても、昇降動作のみならず、平行移動および/または回転動作を行うことができる装置形態であってもよい。
【0029】
なお、上記において、チップ2とは、たとえば、ICチップ、半導体チップ、光素子、表面実装部品、ウエハーなど、種類や大きさに関係なく、基板3と接合させる側の全てのものをいう。また、基板3とは、たとえば、樹脂基板、ガラス基板、フィルム基板、チップ、ウエハーなど、種類や大きさに関係なく、チップ2と接合される側の全てのものをいう。
【0030】
本実施態様では、チップ保持手段6において直接チップ2を保持する部分、および、基板保持手段7において直接基板3を保持する部分は、電極ツール8、9に構成されており、それぞれプラズマ発生用電極として機能可能に構成されている。本実施態様では、これら電極ツール8、9の一方にRFプラズマ発生用電源(図示略)が接続されており選択切替が可能となっている。また、チャンバ壁15(可動壁)が接地されている。RFプラズマ発生用電源から、たとえば減圧条件下にて所定の高周波電圧が印加されることにより、電極ツール8、9間でチップ2の金属接合部4の表面および基板3の金属接合部5の表面に電極を切り替えることにより洗浄用のプラズマを照射することができるようになっている。
【0031】
プラズマ電極の構成は、上下どちらかの電極をアノード・アースとして切り替えることにより両面洗浄する方法と、チャンバ壁をアースとして上下どちらかの電極をアノードとして切り替えて両面洗浄する方法とがある。
【0032】
チップ保持手段6および基板保持手段7には、ヒーターが内蔵されて少なくとも一方の電極ツールを介して被接合物を加熱可能となっており、かつ、静電チャック手段を備え少なくとも一方の被接合物を静電気的に保持することができるようになっている。ヒーターおよび静電チャック手段については図示を省略してある。図1における10aは基板保持手段7側に内蔵された静電チャック用の電極端子、11aはプラズマ電極用の端子、12aはヒーター用の端子をそれぞれ示しており、電極コネクター13aを介して給電されるようになっている。パターンとしては、表層から静電チャック、プラズマ電極、ヒーターとなっていることが好ましい。同様に、10bはチップ保持手段6側に内蔵された静電チャック用の電極端子、11bはプラズマ電極用の端子、12bはヒーター用の端子、13bは給電用の電極コネクターを、それぞれ示している。
【0033】
本実施態様では、両被接合物2、3の周囲には、一方の被接合物保持手段(本実施態様では基板保持手段7)に当接するまで移動して内部に両被接合物2、3を閉じ込める局部的な密閉空間を持つローカルチャンバ構造(図1に2点鎖線にてローカルチャンバ14を示す。)を形成することが可能で、かつ、上記当接状態にて、前記被接合物保持手段(本実施態様ではチップ保持手段6)の移動に追従してローカルチャンバ14の容積を縮小する方向(本実施態様では下降方向への移動)に移動可能な可動壁15が設けられている。この可動壁15は、筒状の剛体壁構造に構成されており、可動壁上昇ポート16、可動壁下降ポート17および内部シール機構18を備えたシリンダ手段19により、図1の上下方向に移動可能となっている。可動壁15の先端部には、弾性変形可能なシール材20が設けられており、上記当接状態にて、ローカルチャンバ14内部を外部に対してより確実にシール、密閉することができるようになっている。
【0034】
基板保持手段7側には、上記のように形成されるローカルチャンバ14に対し、該ローカルチャンバ14内を減圧して所定の真空状態にする真空吸引手段としての真空ポンプ21が接続されている。ローカルチャンバ14内の空気あるいはガスは、吸引路22を通して真空ポンプ21により吸引される。また、この吸引路22とは別に、あるいはこの吸引路22と兼用させて、基板保持手段7側にはアルゴンガス(Arガス)などの特定の不活性ガスをローカルチャンバ14内に供給するガス供給路23が設けられている。
【0035】
基板保持手段7の下部側には、倣い・ロック機構24が設けられている。倣い・ロック機構24は、基板保持手段7の下面側に固定された、凸球面25を有する球面部材26と、該球面部材26を受ける凹球面27を有する受け部材28を備えている。球面部材26は、エアフローティング機構29を介して、その凸球面25が受け部材28の凹球面27に沿って自在に動くことができるようになっており、この動きによって、基板3とチップ2が当接された際に、両者間の平行度が自動的にほぼ完全に合うようになっている。
【0036】
また、倣い・ロック機構24におけるロック機構は次のように構成されている。すなわち、球面部材26と受け部材28とにわたって、シリンダ30とその中に収容されたピストン31が設けられており、このエアシリンダ機構のロックポート32にエアを供給することによりピストン31が下方に移動されて、ピストン31を介し受け部材28に対して球面部材26の位置、姿勢がロックされるようになっているとともに、フリーポート33にエアを供給することによりピストン31が上方に移動されて、ロックが解除され球面部材26が受け部材28に対して自由に倣わされるようになっている。
【0037】
なお、上記実施態様では、接合に関して、チップ保持手段6を下方に移動させて所定の接合荷重を加える機構、および、チップ保持手段6や基板保持手段7に内蔵された、図示されていないヒータにより加熱する機構について説明したが、これらに加えて、あるいはこれらに代えて、とくにヒータに代えて、超音波印加手段を設けることも可能である。
【0038】
このように構成された接合装置1を用いて、本発明に係る接合方法は次のように実施することができる。
まず、図2に示すように、倣い・ロック機構24におけるフリーポート33にエアを供給して球面部材26を受け部材28に対して自由状態とし、この状態にてチップ保持手段6を下降させてチップ2を基板3に、とくにチップ2の金属接合部4を基板3の金属接合部5に押し付け、倣い・ロック機構24により基板3がチップ2に倣うように、つまり、基板3とチップ2間の平行度がほぼ完全に合うように倣わせられる。このとき、事前にチップ2と基板3との相対位置を仮アライメントしておくと、チップ2の金属接合部4と基板3の金属接合部5とが所定の相対位置関係にて精度よく当接することができる。
【0039】
上記倣い動作後に、図4に示すように、ロックポート32にエアが供給され、上記平行度が調整された状態にて、球面部材26が受け部材28に対して一旦ロックされる。球面部材26は基板保持手段7を介して基板3と一定の位置関係に保持されているから、球面部材26のロックにより、チップ2と基板3間の平行度も調整された状態に維持されることになる。
【0040】
上記ロック後に、チップ保持手段6が上昇され、チップ2と基板3が、平行度が合った状態にて離間される。離間後に、図4に示すようなアライメント、または、図5に示すようなエネルギー波(プラズマ)による接合面の洗浄、あるいはこれら両方が行われる。これらの両方を行う場合、エネルギー波洗浄は、アライメント前後のいずれでも行うことが可能である。
【0041】
アライメントは、たとえば図4に示すように、離間されたチップ2と基板3の間に上下2視野を有する認識手段40(たとえば、2視野カメラ)を挿入し、たとえばチップ2と基板3のそれぞれに付されたアライメントマークを読み取り、その読み取り上方に基づいて両者間の相対位置を微調整することにより行われる。両者間の平行度は上述の倣い動作により既に合わされているので、基板3側をX、Y、θ方向に微調整すれば済む。上記2視野の認識手段40は、たとえば本接合装置全体を真空チャンバにて囲むような場合には、真空領域内で作動させることが困難になるので、そのような場合には、たとえば下方や上方から、赤外線等の透過可能な測定波によりチップ2と基板3のアライメントマークの両方を一方向から読み取り可能な認識手段(たとえば、赤外線カメラ)を用いればよい。
【0042】
エネルギー波(本実施態様ではプラズマ)による洗浄は、たとえば図5に示すように行われる。可動壁下降ポート17にエアを供給することにより可動壁15が下降されてその先端部のシール材20が基板保持手段7の上面に当接され、良好にシールされ実質的に密閉空間からなるローカルチャンバ14が形成される。本実施態様では、ガス供給路23を通してローカルチャンバ14内にArガスが供給され、吸引路22を通しての吸引により、ローカルチャンバ14内が所定の真空度に減圧される。そして、電極ツール8、9間でプラズマが発生され、チップ2の金属接合部4の表面および基板3の金属接合部5の表面、つまり各接合面がプラズマによって洗浄され、表面が接合に適した表面活性化状態とされる。
【0043】
なお、上記プラズマ洗浄においては、接合表面の表面異物層を除去し十分に表面活性化するために、金属接合部の接合される全表面で1nm以上エッチングできるようにプラズマ強度、時間を設定することが好ましい。
【0044】
このエネルギー波(プラズマ)による洗浄と図4に示したアライメントの両方を行う場合には、エネルギー波洗浄はアライメントの前または後のいずれで行ってもよい。
【0045】
アライメント後、またはエネルギー波洗浄後、あるいはアライメントとエネルギー波洗浄の両方を行った後、図6に示すように、チップ保持手段6を下降させてチップ2の金属接合部4と基板3の金属接合部5が互いに接合される。このとき、接合に必要な接合荷重が加えられる。ただし、エネルギー波洗浄を行っている場合には、極めて小さな接合荷重で良好な接合が可能となり、常温接合まで可能となる。また、接合の際にヒータにより加熱すれば、より接合が容易になる。さらに、ヒータ加熱に代えてあるいはそれとともに、超音波を印加えれば、一層容易に接合できる。
【0046】
この接合は、大気中で行うことも可能であり、大気圧下で行うことも可能である。また、上記ローカルチャンバ14の可動壁15は上下に可動できるので、接合時にも実質的に密閉空間からなるローカルチャンバ14形態を維持することが可能であるので、減圧下で接合を行うこともでき、さらには不活性ガス雰囲気下で接合を行うこともできる。減圧下や不活性ガス雰囲気下での接合を行うことにより、より不純物の少ない状態での接合が可能になる。
【0047】
このように、倣い動作により両被接合物間の平行度を合わせた後離間させ、アライメント、または/および、エネルギー波洗浄を行った後に接合することにより、平行度調整を問題を発生させることなく行うことができるとともに、良好に平行度が調整された状態で、接合工程へと至らしめることが可能になり、望ましい条件下での接合が可能になる。
【0048】
なお、本実施態様ではチップと基板を示したが、電極のないチップ同士やウエハー同士の接合にも本発明は適用でき、上下被接合物が金属以外の半導体やガラス、セラミック等の異種材料である場合もある。また、アライメントマークが無い場合には、外形でアライメントする場合もある。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る接合方法および装置によれば、倣い動作により両被接合物間の平行度を合わせた後一旦ロックし、両被接合物を離間させてアライメント、または/および、エネルギー波洗浄を行い、その後に接合するようにしたので、倣い動作による平行度調整の利点をそのまま活かしつつ、所定のアライメントやエネルギー波による接合面の洗浄を可能とでき、良好な接合を高精度でしかも容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る接合装置の概略構成図である。
【図2】図1の装置における倣い動作を示す部分概略構成図である。
【図3】図1の装置におけるロック動作を示す部分概略構成図である。
【図4】図1の装置におけるアライメント工程を示す部分概略構成図である。
【図5】図1の装置におけるエネルギー波洗浄工程を示す部分概略構成図である。
【図6】図1の装置における接合工程を示す部分概略構成図である。
【符号の説明】
1 接合装置
2 チップ
3 基板
4 チップの金属接合部
5 基板の金属接合部
6 チップ保持手段
7 基板保持手段
8、9 電極ツール
10a、10b 静電チャック用の電極端子
11a、11b プラズマ電極用の端子
12a、12b ヒーター用の端子
13a、13b 電極コネクター
14 ローカルチャンバ
15 可動壁
16 可動壁上昇ポート
17 可動壁下降ポート
18 内部シール機構
19 シリンダ手段
20 シール材
21 真空ポンプ
22 吸引路
23 ガス供給路
24 倣い・ロック機構
25 凸球面
26 球面部材
27 凹球面
28 受け部材
29 エアフローティング機構
30 シリンダ
31 ピストン
32 ロックポート
33 フリーポート
40 認識手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合するに際し、少なくとも一方の被接合物を他方の被接合物に押し付け倣わせた状態でその姿勢に一旦ロックし、両被接合物を離間させ、両被接合物間の相対位置を所定の精度範囲内にアライメントした後再度両被接合物を接触させ、加熱、加圧、超音波印加のいずれか少なくとも一つの方法により被接合物同士を接合することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記倣い動作後、前記アライメント前または後に、少なくとも一方の被接合物の接合面をエネルギー波により洗浄する、請求項1の接合方法。
【請求項3】
基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合するに際し、少なくとも一方の被接合物を他方の被接合物に押し付け倣わせた状態でその姿勢に一旦ロックし、両被接合物を離間させ、少なくとも一方の被接合物の接合面をエネルギー波により洗浄した後再度両被接合物を接触させ、加熱、加圧、超音波印加のいずれか少なくとも一つの方法により被接合物同士を接合することを特徴とする接合方法。
【請求項4】
前記倣い動作を仮アライメントした後に行う、請求項1〜3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
前記接合部が金属である、請求項1〜4のいずれかに記載の接合方法。
【請求項6】
前記接合を減圧下で行う、請求項1〜5のいずれかに記載の接合方法。
【請求項7】
前記接合を不活性ガス雰囲気下で行う、請求項1〜6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項8】
前記エネルギー波としてプラズマを用いる、請求項2〜7のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記エネルギー波としてArプラズマを用いる、請求項8の接合方法。
【請求項10】
前記エネルギー波による洗浄により、前記接合部の接合される全表面で1nm以上の深さにエッチングする、請求項2〜9のいずれかに記載の接合方法。
【請求項11】
接合面が金、銅、Al、In、Snのいずれかにより構成されている接合部同士を接合する、請求項1〜10のいずれかに記載の接合方法。
【請求項12】
少なくとも一方の接合部の表面硬度をビッカース硬度Hvで120以下にする、請求項1〜11のいずれかに記載の接合方法。
【請求項13】
基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合する装置であって、少なくとも一方の被接合物を他方の被接合物に押し付け倣わせた状態でその姿勢に一旦ロックする倣い・ロック機構と、ロック状態で離間された両被接合物間の相対位置を所定の精度範囲内に調整するアライメント機構と、アライメント後の両被接合物を再度接触させ、加熱、加圧、超音波印加のいずれか少なくとも一つの手段を備えた接合手段とを有することを特徴とする接合装置。
【請求項14】
前記倣い・ロック機構による倣い動作後、前記アライメント機構によるアライメント前または後に、少なくとも一方の被接合物の接合面をエネルギー波により洗浄する手段を有する、請求項13の接合装置。
【請求項15】
基材の表面に接合部を有する被接合物同士を接合する装置であって、少なくとも一方の被接合物を他方の被接合物に押し付け倣わせた状態でその姿勢に一旦ロックする倣い・ロック機構と、ロック状態で離間された両被接合物の少なくとも一方の被接合物の接合面をエネルギー波により洗浄する手段と、洗浄後再度両被接合物を接触させ、加熱、加圧、超音波印加のいずれか少なくとも一つの手段を備えた接合手段とを有することを特徴とする接合装置。
【請求項16】
前記倣い動作前に仮アライメントを行う仮アライメント機構を有する、請求項13〜15のいずれかに記載の接合装置。
【請求項17】
前記接合部が金属である、請求項13〜16のいずれかに記載の接合装置。
【請求項18】
前記接合手段が減圧手段を備えている、請求項13〜17のいずれかに記載の接合装置。
【請求項19】
前記接合手段が不活性ガス供給手段を備えている、請求項13〜18のいずれかに記載の接合装置。
【請求項20】
前記エネルギー波洗浄手段がプラズマ照射手段からなる、請求項14〜19のいずれかに記載の接合装置。
【請求項21】
前記プラズマ照射手段がArプラズマ照射手段からなる、請求項20の接合装置。
【請求項22】
前記エネルギー波洗浄手段が、前記接合部の接合される全表面で1nm以上の深さのエッチングが可能な手段からなる、請求項14〜21のいずれかに記載の接合装置。
【請求項23】
接合される接合部の接合面が金、銅、Al、In、Snのいずれかにより構成されている、請求項13〜22のいずれかに記載の接合装置。
【請求項24】
少なくとも一方の接合部の表面硬度をビッカース硬度Hvで120以下とされている、請求項13〜23のいずれかに記載の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−134899(P2006−134899A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−345306(P2002−345306)
【出願日】平成14年11月28日(2002.11.28)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】