説明

接眼レンズ

【課題】アイレリーフが長く、広視野にわたり良好な特性を持ち、尚且つ入射瞳径が大きい小型軽量な暗視装置に好適な接眼レンズを提供する。
【解決手段】接眼レンズ1を、瞳側から順に第1レンズ11、第2レンズ12および第3レンズ13を配置して3群3枚構成とし、第1レンズ11を、ガラス製の凸レンズであり、且つ全系の焦点距離をf、第1レンズ11の焦点距離をf、第1レンズ11のガラスの屈折率をnとしたとき、0.3<f/f<1を満足する屈折力を有し、n>1.75を満足するものとし、第1〜第3レンズ11〜13の第1〜第6面21〜26のうち少なくとも3つ以上の面を非球面とするとするとともに、第2および第3レンズ12、13の第3〜第6面23〜26のうち少なくとも1つの面を回折光学面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗視装置の液晶表示などの画像を拡大するための表示画像観察装置に好適な接眼レンズに係り、特に、暗視光学装置において対物レンズで集光した微弱な光をイメージ増倍管で増倍し、その表示面に形成された像を拡大観察するための光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
広視野で長いアイレリーフを有する接眼レンズとして、ガラス接合レンズを含む5枚レンズ構成により、視野角:51.2°、アイレリーフ:1.18f(fは焦点距離)という広視野で長いアイレリーフを可能にした発明が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、瞳が入射瞳位置からずれても広い画角にわたって虚像が見えるようにした接眼レンズとして、2群4枚レンズ構成で非球面の樹脂レンズ面を効果的に使用した発明が提案されている(特許文献2)。この発明では、視野角:40.8°、アイレリーフ:40mmを達成している。
【0004】
暗視光学装置の表示を観察するための接眼レンズとしては、4群6枚もしくは5群6枚レンズ構成などにより、アイレリーフ:25mm(f=20mmの場合、18.5mm)、入射瞳径:φ15mm(f=20mmの場合、入射瞳径:φ11.1mm)を達成する発明が提案されている(特許文献3)。同じく、暗視光学装置の表示を観察するための接眼レンズとして、DOE(Diffractive Optical Element:回折光学素子)面を活用することで、4枚レンズ構成としてコンパクト化を図った発明も提案されている(特許文献4)。
【0005】
さらに、色収差を補正し、小型化および軽量化を図った双接眼レンズシステムとして、3群3枚レンズ構成とし、そのうち1面をDOE面とした発明なども提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4054370号明細書
【特許文献2】特開平11−133316号公報
【特許文献3】特開2000−105344号公報
【特許文献4】特開2001−66522号公報
【特許文献5】特開平5−210054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の発明では、F値がf/5.3であるため、f=20mmの場合には入射瞳径がφ3.8mmとなり、暗所での用途には小さ過ぎて明るい像を観察できない。また、ガラス重量が60g程度になり、装置が重量化する。また、特許文献2の発明では、アイレリーフは40mmと長いが、f=70mmとなり、装置が大型化する。f=20mmとした場合には、アイレリーフは11.4mmと短くなり、入射瞳径も最大でφ2mm(f/10)と小さい。さらに、樹脂レンズにより非球面を効果的に使用しているが、接合レンズを用いているためにレンズ厚が大きく、レンズの総厚(最も瞳に近いレンズ面から最も物体(像)に近いレンズ面までの距離)が長くなる。一方、特許文献3の発明では、視野角が38°と狭く、レンズの構成枚数も多い。特許文献4の発明においても、視野角は38°と狭い。さらに、特許文献5の発明では、双眼で観察するタイプであるため、レンズ径が大きくなる。また、焦点距離fが大きくなるため、観察倍率が小さくなり、視野角に制限が生じる。加えて、光学系の全長(最も瞳側に配置されたレンズの瞳側の面から物体(像)側の結像面までの距離)が1.85〜2f程度と大きい。
【0008】
一般に、接眼レンズに対して広い視野角と十分長いアイレリーフとの両立を図ろうとすると、両要素間でトレードオフになる傾向があるために困難を伴う。これは、入射瞳から接眼レンズ前面(最も瞳に近いレンズ面の頂点)までの距離すなわちアイレリーフを長くとるほど、軸外光束の入射高が増大し、接眼レンズの径を拡大する必要が生じるためである。そして、レンズ径は視野角に比例して大きくなる。また、アイレリーフを長くとると、軸外収差の増大を招き、視野周辺の画質の低下を招きかねない。特に、暗視装置などで使用する接眼レンズの場合、暗所では人間の瞳孔がφ7〜8mmと大きく開くため、大口径入射瞳(すなわちF値の小さい光学系)に設計する必要があり、性能の確保が一層困難になる。さらに、頭部装着用では、目の位置がずれたときにも周辺まで観察できるようにマージンを加えてより大きな入射瞳径に設定する必要があり、ロングアイレリーフであることも相まって一層設計を困難なものにしている。
【0009】
一方、観察者が両眼で観測することを目的にした双接眼レンズ光学システムにおいては、長いアイリリーフと大口径入射瞳径を確保するためにレンズの構成枚数が増加することなどにより、必然的にレンズ構成が複雑になり、光学系の全長(第1レンズの第1面から結像面)が1.85〜2.0f程度と大きくなるだけでなく、両眼の眼幅に合わせるために焦点距離が長くなることで、接眼レンズの倍率も低下してしまう。
【0010】
本発明は、このような問題点を解消するべく案出されたものであり、頭部に装着する小型軽量な接眼レンズに必要とされる単眼式接眼レンズもしくは同一の接眼レンズを2式配置した両眼式接眼レンズに適し、アイレリーフが長く、広視野にわたり良好な特性を持ち、尚且つ入射瞳径が大きい小型軽量な接眼レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一側面によれば、瞳側から順に第1、第2および第3レンズ(11、12および13)を配置してなる3群3枚構成の接眼レンズ(1)であって、前記第1レンズ(11)は、ガラスを素材とする凸レンズであり、且つ全系の焦点距離をf、前記第1レンズの焦点距離をfとしたとき、0.3<f/f<1を満足する屈折力を有するとともに、前記第1レンズのガラスの屈折率をnとしたとき、n>1.75を満足し、前記第1〜第3レンズの面(21〜26)のうち少なくとも3つ以上の面が非球面であり、前記第2および第3レンズの面(23〜26)のうち少なくとも1つの面が回折光学面である構成とする。
【0012】
この構成によれば、0.3<f/f<1を満足する多大な屈折力を第1レンズに持たせるとともに、接眼レンズを3群3枚構成としたことにより、入射瞳から出射される広視野の軸外光束を効果的に偏向させ、結像面へと導き入れることができるため、長いアイレリーフと広視野とを実現できるとともに、構成の簡素化およびレンズの総厚の短縮を実現できる。一方、第1レンズの大きな屈折力を与えたことにより大きな収差の発生が予想されるが、第1レンズのガラスの屈折率をn>1.75としたことにより、第1レンズによる収差を最小に抑えることができる。また、薄型且つ少ない構成枚数で性能を確保するためには、球面レンズのみの構成では収差の補正が困難である。そこで、上記構成のように第1〜第3レンズに非球面を効果的(3面以上の複数面)に採用したことにより、収差、特に軸外の像面湾曲、コマ収差などを良好に補正できる。他方、色収差を補正するためには、異なる分散のガラス材料のレンズを接合した接合が効果的であるが、接合レンズを使用するとレンズの総厚および重量の増加を招くことになる。そこで、上記のように第2または第3レンズの少なくとも1つの面を回折光学面とすることにより、接合レンズを採用せずに単レンズのみの構成で色収差を良好に補正したうえで接眼レンズの軽量化を図り、尚且つ各レンズの中心厚が薄くなることでレンズの総厚を短くできる。
【0013】
また、本発明の一側面によれば、前記第2レンズ(12)は、瞳側に向けた凸面(23)を有するメニスカス凸レンズまたはメニスカス凹レンズである構成とすることができる。
【0014】
この構成によれば、第2レンズの瞳側に位置する面を凸面とすることで、軸外の光束に対して像面湾曲とコマ収差の発生を最小限に抑えることができる。また、接眼レンズの主点が前方(瞳側)に移動するため、光学系の全長を短縮することができる。
【0015】
また、本発明の一側面によれば、入射瞳径をφ、アイレリーフをRとしたとき、0.5<φ×R/f<0.8を満足する構成とすることができる。
【0016】
φ×R/fの値が大きいほど、入射瞳径が大きくアイレリーフが長く、尚且つ広視野な接眼レンズであることを意味する。従って、この値が下限値を下回ると、入射瞳径が確保できないかもしくはアイレリーフの長さが不十分な接眼レンズであるということである。一方、上限値を超えると、入射瞳径およびアイレリーフ長さは確保しやすいが、広視野な接眼レンズを得るためにレンズ外径が大きくなる。このように、0.5<φ×R/f<0.8を満足する構成とすることにより、入射瞳径が大きくアイレリーフが長く、尚且つ小型の広視野接眼レンズを提供できる。
【0017】
また、本発明の一側面によれば、前記第1〜第3レンズの総厚をΣd、アイレリーフをRとしたとき、0.8<Σd/R<1を満足する構成とすることによりレンズの小型化を図ることができる。
【0018】
長いアイレリーフを確保しつつ小型の接眼レンズを実現するためには、構成レンズ枚数を極力少なくし、尚且つ各レンズの中心厚およびレンズ間の間隔を短縮することが必要である。下限値を下回ると、長いアイレリーフを確保するのには有利な面があるが、レンズ総厚を短縮することになり、3枚の構成が実質的に困難となる。一方、レンズ総厚が大きくなると、レンズ全長TL(第1レンズの第1面から結像面)が増大し大型化するとともに、作動距離が短くなりアイレリーフの空間を侵食することになり、その結果長いアイレリーフの確保が困難になる。
【0019】
上記の条件を満足するように設定することにより、前記第1レンズにおける瞳側に位置する第1面(21)から物体側の結像面(2)までの距離をTLとしたとき、1.4<TL/f<1.8を満足する小型の構成とすることができる。これにより、長いアイレリーフを確保しつつ小型の接眼レンズを実現することができる。
【0020】
また、本発明の一側面によれば、前記回折光学面は、キノフォーム形状を呈する同心円状の輪帯を複数有し、前記輪帯の最小ピッチをpとしたとき、2×10−3<p<30×10−3を満足する構成とすることができる。
【0021】
回折光学面が同心円状に配置されたキノフォーム状の輪帯で構成されると、最小ピッチが小さくなるほど色消し効果は強くなるが、製造の困難度は増加する。逆に、最小ピッチが大きくなるほど製造は容易になるが、色消しの効果は弱くなる。この構成によれば、最小ピッチが3μm程度で済むため、精密機械加工などにより製造が容易であり、且つ色消しを効果的に行うことができる。なお、接眼レンズとしては可視色消しとなっていることが望ましいが、P20など、暗視装置の蛍光面の発光特性によっては、可視域全域の色消しが必要でないこともある。その場合には、最小ピッチが比較的大きくても色消し効果があり、製造がより容易になる。
【0022】
また、本発明の一側面によれば、前記第2および第3レンズが樹脂を素材とする構成とすることができる。
【0023】
この構成によれば、機械加工により精密金型を製作しておき、これらを使用して第2および第3レンズを成形加工することで、生産性を向上できるとともに、接眼レンズの軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
このように本発明によれば、アイレリーフが長く、広視野にわたり良好な特性を持ち、尚且つ入射瞳径が大きい小型軽量な暗視装置に好適な接眼レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1に係る接眼レンズの構成図
【図2】実施例2に係る接眼レンズの構成図
【図3】実施例3に係る接眼レンズの構成図
【図4】実施例4に係る接眼レンズの構成図
【図5】実施例5に係る接眼レンズの構成図
【図6】実施例1に係る接眼レンズの諸収差図
【図7】実施例2に係る接眼レンズの諸収差図
【図8】実施例3に係る接眼レンズの諸収差図
【図9】実施例4に係る接眼レンズの諸収差図
【図10】実施例5に係る接眼レンズの諸収差図
【図11】実施形態に係る接眼レンズと従来例との比較表
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1に示すように、本発明に係る接眼レンズ1は、画像表示面2(物体側の結像面)に形成された像を拡大観察するために暗視光学装置に装着されるものであり、瞳(入射瞳位置)側から順に第1レンズ11、第2レンズ12および第3レンズ13が配置されてなる3群3枚構成の接眼光学系である。画像表示面2には、暗視光学装置の対物レンズで集光された微弱な光がイメージ増倍管で増倍されて表示される。以下、第1〜第3レンズ11〜13の6つの面を、瞳側から順に第1面21〜第6面26と称するものとする。
【0028】
第1レンズ11は、ガラスを素材とする凸レンズであり、瞳側に向く第1面21が凸面となっている。接眼レンズ1の全系の焦点距離をf、第1レンズ11の焦点距離をf、第1レンズ11のガラスの屈折率をnとしたとき、第1レンズ11は、0.3<f/f<1を満足する屈折力を有するとともに、n>1.75を満足する構成となっている。第2レンズ12は、樹脂を素材とし、瞳側に向けた第3面23が凸面をなすとともに、画像表示面2に向けた第4面24が凹面をなすメニスカスレンズである。第3レンズ13は樹脂を素材とする凸レンズである。第1〜第3レンズ11〜13の6つの面(第1面21〜第6面26)のうち少なくとも3つ以上の面が非球面とされている。
【0029】
非球面形状を表す式は、下式(1)と表される。
【数1】

ただし、
c:球面の頂点の曲率(曲率半径rの逆数) c=1/r
y:光軸からの高さ
k:円錐定数
A、B、C、D:4次、6次、8次、10次の非球面係数
である。
【0030】
また、第2および第3レンズ12、13の4つの面(第3面23〜第6面26)のうち少なくとも1つの面が、キノフォーム形状を呈する輪帯を同心円上に複数配置した回折光学面とされている。
【0031】
回折光学面の位相関数は、下式(2)と表される。
φ(y)=P+P+P+・・ (2)
ただし、
y:光軸からの高さ
、P、P, ……:2次、4次、6次、……の非球面係数
である。
【0032】
接眼レンズ1の入射瞳径をφ、アイレリーフをR、第1〜第3レンズ11〜13の総厚をΣdとしたとき、接眼レンズ1は、0.5<φ×R/f<0.8を満足し、0.8<Σd/R<1を満足する。また、光学系の全長、すなわち第1レンズ11における瞳側に位置する第1面21から画像表示面2までの距離をTLとしたとき、接眼レンズ1は、1.4<TL/f<1.8を満足する。さらに、回折光学面は、輪帯の最小ピッチをpとしたとき、2×10−3<p<30×10−3を満足する。
【0033】
以下、図1に示す構成を実施例1とし、他の実施例2〜5を加えた5つの実施例について、図2〜図5の構成図および図11の比較表を参照しながら順次説明する。
【実施例1】
【0034】
実施例1のレンズデータを表1〜表3に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【0035】
本実施例では、図1および表1〜3に示すように、第1レンズ11は凸レンズであり、その両面(第1面21および第2面22)が非球面とされている。第2レンズ12はメニスカス凹レンズであり、その両面(第3面23および第4面24)が非球面とされている。第3レンズ13は、その両面(第5面25および第6面26)が非球面とされるとともに、瞳側に位置する第5面25が回折光学面とされている。
【0036】
図11に示すように、本実施例に係る接眼レンズ1は、全系の焦点距離fが19.93mmであり、第1レンズ11の焦点距離fが25.938mmである。したがって、f/f=0.768となり、0.3<f/f<1を満足する。第1レンズ11のガラスの屈折率nは、1.85060であり、接眼レンズ1はn>1.75を満足する。また、接眼レンズ1の入射瞳径φは10mm(f/1.99)となり、アイレリーフRは25mm(1.254f)となる。したがって、φ×R/f=0.629となり、接眼レンズ1は0.5<φ×R/f<0.8を満足する。第1〜第3レンズ11〜13の総厚Σdは22.167であり、Σd/R=0.887となり、接眼レンズ1は0.8<Σd/R<1を満足する。また、TL/f=1.538であり、接眼レンズ1は1.4<TL/f<1.8を満足する。第3レンズ13(第5面25)に形成された回折光学面の輪帯の最小ピッチpは0.005867mmである。したがって、接眼レンズ1は2×10−3<p<30×10−3を満足する。また、接眼レンズ1の視野角2ωは51°であり、F値は1.99である。諸収差は図6に示す通りである。
【実施例2】
【0037】
実施例2のレンズデータを表4〜表6に示す。
【表4】

【表5】

【表6】

【0038】
本実施例では、図2および表4〜6に示すように、第1レンズ11はメニスカス凸レンズである。第2レンズ12はメニスカス凸レンズであり、その両面(第3面23および第4面24)が非球面とされている。第3レンズ13は、その両面(第5面25および第6面26)が非球面とされた凸レンズであり、瞳側の第5面25が回折光学面とされている。
【0039】
図11に示すように、本実施例に係る接眼レンズ1は、全系の焦点距離fが19.87mmであり、第1レンズ11の焦点距離fが39.899mmである。したがって、f/f=0.498となり、0.3<f/f<1を満足する。第1レンズ11のガラスの屈折率nは、2.003300であり、接眼レンズ1はn>1.75を満足する。また、接眼レンズ1の入射瞳径φは12mm(f/1.66)となり、アイレリーフRは25mm(1.258f)となる。したがって、φ×R/f=0.760となり、接眼レンズ1は0.5<φ×R/f<0.8を満足する。第1〜第3レンズ11〜13の総厚Σdは23.596であり、Σd/R=0.944となり、接眼レンズ1は0.8<Σd/R<1を満足する。また、TL/f=1.514であり、接眼レンズ1は1.4<TL/f<1.8を満足する。第3レンズ13(第5面25)に形成された回折光学面の輪帯の最小ピッチpは0.003599mmである。したがって、接眼レンズ1は2×10−3<p<30×10−3を満足する。また、接眼レンズ1の視野角2ωは52°であり、F値は1.66である。諸収差は図7に示す通りである。
【実施例3】
【0040】
実施例3のレンズデータを表7〜表9に示す。
【表7】

【表8】

【表9】

【0041】
本実施例では、図3および表7〜9に示すように、第1レンズ11はメニスカス凸レンズである。第2レンズ12はその両面(第3面23および第4面24)が非球面とされたメニスカス凸レンズであり、画像表示面2側の第4面24が回折光学面とされている。第3レンズ13は、その両面(第5面25および第6面26)が非球面とされている。
【0042】
図11に示すように、本実施例に係る接眼レンズ1は、全系の焦点距離fが20.8mmであり、第1レンズ11の焦点距離fが42.85mmである。したがって、f/f=0.485となり、0.3<f/f<1を満足する。第1レンズ11のガラスの屈折率nは、1.88300であり、接眼レンズ1はn>1.75を満足する。また、接眼レンズ1の入射瞳径φは10mm(f/2.08)となり、アイレリーフRは25mm(1.202f)となる。したがって、φ×R/f=0.578となり、接眼レンズ1は0.5<φ×R/f<0.8を満足する。第1〜第3レンズ11〜13の総厚Σdは22.300であり、Σd/R=0.892となり、接眼レンズ1は0.8<Σd/R<1を満足する。また、TL/f=1.435であり、接眼レンズ1は1.4<TL/f<1.8を満足する。第2レンズ12(第4面24)に形成された回折光学面の輪帯の最小ピッチpは0.007732mmである。したがって、接眼レンズ1は2×10−3<p<30×10−3を満足する。また、接眼レンズ1の視野角2ωは51°であり、F値は2.08である。諸収差は図8に示す通りである。
【実施例4】
【0043】
実施例4のレンズデータを表10〜表12に示す。
【表10】

【表11】

【表12】

【0044】
本実施例では、図4および表10〜12に示すように、第1レンズ11はメニスカス凸レンズである。第2レンズ12はメニスカス凸レンズであり、その両面(第3面23および第4面24)が非球面とされている。第3レンズ13は、その両面(第5面25および第6面26)が非球面とされた凸レンズであり、画像表示面2側の第6面26が回折光学面とされている。
【0045】
図11に示すように、本実施例に係る接眼レンズ1は、全系の焦点距離fが19.8mmであり、第1レンズ11の焦点距離fが39.899mmである。したがって、f/f=0.496となり、0.3<f/f<1を満足する。第1レンズ11のガラスの屈折率nは、2.00330であり、接眼レンズ1はn>1.75を満足する。また、接眼レンズ1の入射瞳径φは10mm(f/1.98)となり、アイレリーフRは26.5mm(1.338f)となる。したがって、φ×R/f=0.676となり、接眼レンズ1は0.5<φ×R/f<0.8を満足する。第1〜第3レンズ11〜13の総厚Σdは23.914であり、Σd/R=0.902となり、接眼レンズ1は0.8<Σd/R<1を満足する。また、TL/f=1.524であり、接眼レンズ1は1.4<TL/f<1.8を満足する。第3レンズ13(第6面26)に形成された回折光学面の輪帯の最小ピッチpは0.003634mmである。したがって、接眼レンズ1は2×10−3<p<30×10−3を満足する。また、接眼レンズ1の視野角2ωは50°であり、F値は1.98である。諸収差は図9に示す通りである。
【実施例5】
【0046】
実施例5のレンズデータを表13〜表15に示す。
【表13】

【表14】

【表15】

【0047】
本実施例では、図5および表13〜15に示すように、第1レンズ11はその両面(第1面21および第2面22)が非球面とされた凸レンズである。第2レンズ12はメニスカス凹レンズであり、その両面(第3面23および第4面24)が非球面とされている。第3レンズ13は、その両面(第5面25および第6面26)が非球面とされるとともに、瞳側の第5面25が回折光学面とされている。
【0048】
図11に示すように、本実施例に係る接眼レンズ1は、全系の焦点距離fが19.88mmであり、第1レンズ11の焦点距離fが22.449mmである。したがって、f/f=0.886となり、0.3<f/f<1を満足する。第1レンズ11のガラスの屈折率nは、1.81482であり、接眼レンズ1はn>1.75を満足する。また、接眼レンズ1の入射瞳径φは10mm(f/1.99)となり、アイレリーフRは25mm(1.258f)となる。したがって、φ×R/f=0.633となり、接眼レンズ1は0.5<φ×R/f<0.8を満足する。第1〜第3レンズ11〜13の総厚Σdは21.048であり、Σd/R=0.842となり、接眼レンズ1は0.8<Σd/R<1を満足する。また、TL/f=1.488であり、接眼レンズ1は1.4<TL/f<1.8を満足する。第3レンズ13(第5面25)に形成された回折光学面の輪帯の最小ピッチpは0.006422mmである。したがって、接眼レンズ1は2×10−3<p<30×10−3を満足する。また、接眼レンズ1の視野角2ωは51°であり、F値は1.99である。諸収差は図10に示す通りである。
【0049】
このようにいずれの実施例においても、0.3<f/f<1を満足する多大な屈折力を第1レンズ11に持たせるとともに、接眼レンズ1を3群3枚構成としたことにより、入射瞳から出射される広視野の軸外光束を効果的に偏向させ、画像表示面2へと導き入れることができるため、長いアイレリーフRと広視野とを実現できるとともに、構成の簡素化およびレンズの総厚Σdの短縮を実現できる。一方、第1レンズ11に大きな屈折力を与えると大きな収差の発生が予想されるが、第1レンズ11のガラスの屈折率nをn>1.75としたことにより、第1レンズ11による収差を最小に抑えることができる。また、薄型且つ少ない構成枚数で性能を確保するためには、球面レンズのみの構成では収差の補正が困難になるが、第1〜第3レンズ11〜13に非球面を効果的(3面以上)に採用したことにより、収差、特に軸外の像面湾曲、コマ収差などを良好に補正できる。他方、色収差を補正するために、第2または第3レンズ12、13の少なくとも1つの面を回折光学面としたことにより、接合レンズを採用せずに単レンズのみの構成で色収差を良好に補正したうえで接眼レンズ1の軽量化を図り、尚且つ各レンズの中心厚が薄くなることでレンズの総厚Σdを短くできる。
【0050】
また、第2レンズ12の瞳側に位置する第3面23が凸面とされたことにより、軸外の光束に対して像面湾曲とコマ収差の発生が最小限に抑えられる。また、接眼レンズ1の主点が前方(瞳側)に移動するため、光学系の全長(TL)の短縮が可能となる。なお、本願発明者は、第2レンズ12の向きのみを逆にして各レンズを配置した場合について確認したところ、第1〜第5実施例においてTLの値がそれぞれ2.13mm、2.85mm、2.81mm、2.46mmおよび1.69mm大きくなった。つまり、第2レンズ12の向きが光学系の全長の短縮に寄与することが確認された。
【0051】
また、0.5<φ×R/f<0.8を満足することで、入射瞳径φが大きくアイレリーフRが長く、尚且つ小型で広視野な接眼レンズ1を提供できる。また、接眼レンズ1が0.8<Σd/R<1或いは1.4<TL/f<1.8を満足することにより、各レンズの中心厚およびレンズ間の間隔が短縮され、レンズの総厚Σdの短縮が可能となる。また、接眼レンズ1が2×10−3<p<30×10−3を満足することにより、輪帯の最小ピッチpは精密機械加工などにより製造が容易であり、且つ色消しを効果的に行うことができる。また、第2および第3レンズ12、13が樹脂を素材とすることにより、機械加工により精密金型を製作しておき、これらを使用して第2および第3レンズ12、13を成形加工できるため、生産性を向上できるとともに、接眼レンズ1の軽量化が可能である。
【0052】
一方、図11に比較例として示す従来技術では、特許文献1(米国特許第4054370号明細書)の構成の場合、視野角2ωは51.2°と広角であるが、F値が5.3と大きく、入射瞳径φが5mmとなり、大口径入射瞳径を実現できない。また、φ×R/fが0.214と極端に小さく、TL/fも1.369であり、1.4未満とならない。また、特許文献2(特開平11−133316号公報)の構成では、視野角2ωが40.8°と狭いうえ、φ×R/fも0.032と小さ過ぎる。特許文献3(特開2000−105344号公報)および特許文献4の構成でも、視野角2ωがそれぞれ41.8°および38.8°と小さく、レンズ重量も大きくなる。特許文献5(特開平5−210054号公報)の構成では、具体的なデータが開示されていないため、シミュレーションができず正確な数値を算出することはできないが、推定値での比較では、やはり視野角2ωが40°と狭く、TL/fも1.850と大きい。なお、特許文献5の推定値は、同明細書中の「先行技術では焦点距離の約2倍を有するのに対して、全長を15%短縮できた」との記載より、TL/fを1.850とし、両眼で観察する双接眼レンズであることから、平均的な眼幅60〜70mmを指標として、図より各長さ(アイレリーフR、Σd、入射瞳径φ)を推定し、視野角2ωついては図の光路をもとに推定した。
【0053】
特許文献5の技術には、3群3枚構成の双接眼レンズが開示されており、一見すると本発明の構成に近いように見えるが、この発明は、F値<1となるような大口径レンズを達成するために全長が大きくなり、球面収差や色収差の補正には有利な構成となっているが、像面湾曲やコマ収差の補正には不利な構成であり、本発明のような50°を超える程度の広視野を達成することもできない。つまり、特許文献5の構成は、単眼式接眼レンズや両眼式接眼レンズと比較して、同じ映像を両眼で観察できるメリットがある反面、小型化や広視野化に不利となっている。
【0054】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、本発明に係る接眼レンズ1を暗視光学装置に適用しているが、他の装置に適用することも可能である。また、接眼レンズ1を構成する各部材の具体的形状や配置などは、上記実施例に限ることなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 接眼レンズ
2 画像表示面(物体側の結像面)
11 第1レンズ
12 第2レンズ
13 第3レンズ
21 第1面(第1レンズ11の瞳側の面)
23 第3面(第2レンズ12の瞳側の面)
24 第4面(第2レンズ12の画像表示面12側の面)
25 第5面(第3レンズ13の瞳側の面)
26 第6面(第3レンズ13の画像表示面12側の面)
R アイレリーフ
f 焦点距離
第1レンズ11の焦点距離
第1レンズ11の屈折率
p 輪帯の最小ピッチ
Σd レンズの総厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
瞳側から順に、第1、第2および第3レンズを配置してなる3群3枚構成の接眼レンズであって、
前記第1レンズは、ガラスを素材とする凸レンズであり、且つ全系の焦点距離をf、前記第1レンズの焦点距離をfとしたとき、0.3<f/f<1を満足する屈折力を有するとともに、前記第1レンズのガラスの屈折率をnとしたとき、n>1.75を満足し、
前記第1〜第3レンズの面のうち少なくとも3つ以上の面が非球面であり、
前記第2および第3レンズの面のうち少なくとも1つの面が回折光学面であることを特徴とする接眼レンズ。
【請求項2】
前記第2レンズは、瞳側に向けた凸面を有するメニスカス凸レンズまたはメニスカス凹レンズであることを特徴とする請求項1に記載の接眼レンズ。
【請求項3】
入射瞳径をφ、アイレリーフをRとしたとき、0.5<φ×R/f<0.8を満足することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の接眼レンズ。
【請求項4】
前記第1〜第3レンズの総厚をΣd、アイレリーフをRとしたとき、0.8<Σd/R<1を満足することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項5】
前記回折光学面は、キノフォーム形状を呈する同心円状の輪帯を複数有し、前記輪帯の最小ピッチをpとしたとき、2×10−3<p<30×10−3を満足することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項6】
前記第2および第3レンズが樹脂を素材とすることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の接眼レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−109050(P2013−109050A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252282(P2011−252282)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(592163734)昭和オプトロニクス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】