説明

接着シート

【課題】 軟質塩化ビニル樹脂製物品へ貼付した際に優れた接着性を有し、かつオートクレーブ処理や低温保管時の後でも接着強度が低下せず、浮き剥れが生じず、さらに耐ブロッキング性に優れた接着シートを提供する。
【解決手段】 フィルム基材の裏面に感熱性接着剤層が設けられており、該感熱性接着剤層が結晶性ポリエステル樹脂を主成分として含む樹脂で構成され、該フィルム基材の破断強度が流れ方向、幅方向共に10〜220N/15mmであることを特徴とする軟質塩化ビニル樹脂製物品への貼付用接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シートに関し、詳しくは軟質塩化ビニル樹脂製物品、特に軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグ等に貼付できる接着性に優れた接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液を入れる血液バッグとしては、軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグが多く用いられている。血液バッグは、血液に関する情報が記載されたラベルが貼付されて使用される。
貼付されたラベルは、120℃で30分間程度のオートクレーブ処理やスチーム滅菌などを施した後に、軟質塩化ビニル樹脂に含まれる可塑剤が粘着剤層に移行することによりラベルの粘着性が低下することがあり、ラベルの浮き剥がれが生じる場合がある。血液バッグからラベルが剥がれると、血液に関する情報が不明になり重大な問題になる。また、その場合であっても、ラベルが単に剥がれただけならば、剥がれた血液バッグを廃棄処分すればよいが、何らかの理由により知らないうちに複数のラベルが剥がれ、入れ替わって再度貼付された場合は、間違った血液情報の血液バッグが使用されることになり、さらに致命的な問題になる。
【0003】
また、血液バッグ用のラベルとして商品名、容量、成分表示、製造者等を印字したものが使用されているが、バーコードによる管理システムが整備されており、バーコードを印字したものが必要とされている。従来、血液バッグ用のラベルとしては、紙を基材とするラベルが使用されていることが多い。しかしながら、このようなラベルを血液バッグに適用した場合、通常の血球成分、血漿成分等の成分に分離するための遠心分離装置での処理の際に、ラベル基材の強度不足のため、遠心力に耐えうることができずに破れてしまったり、ひび割れができたり、印刷面が壁面や血液バッグ面等との摩擦によってバーコードなどの情報が不鮮明となりバーコードリーダーで読み取ることができないといった問題があった。そこで、紙基材より湿気の影響を受けづらく、擦過及び強度が強いプラスチックフィルム基材への要望が強くなっている。しかし、プラスチックフィルム基材は、上記に記載した優位性を有する反面、オートクレーブ処理やスチーム滅菌処理、遠心分離処理時に、紙基材より浮き剥れが生じ易いという欠点がある。また、ヒートシールラベルは、一層品であるプラスチックフィルム基材にすると、紙基材よりブロッキングし易いという欠点があった。
【0004】
これらの問題点を解決するために、ラベルを付した領域を通じてガスが当該血液バッグに流入及び流出が可能な相互に連絡した孔空洞を囲むマトリックス構造の微孔性プラスチックフィルムを基材フィルムとする血液バッグ用ラベルが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、オートクレーブ処理時のラベルの浮き、剥れは抑制できるが、耐ブロッキング性に優れたものを得ることが困難であるという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特許第3404573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、軟質塩化ビニル樹脂製物品へ貼付した際に優れた接着性を有し、かつオートクレーブ処理や低温保管時の後でも強度が低下せず、浮き剥れが生じず、さらに耐ブロッキング性に優れた接着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、フィルム基材の裏面に、結晶性ポリエステル樹脂を主成分として含む樹脂からなる感熱性接着剤層が設けることにより、上記課題を解決することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、フィルム基材の裏面に感熱性接着剤層が設けられており、該感熱性接着剤層が結晶性ポリエステル樹脂を主成分として含む樹脂で構成され、該フィルム基材の破断強度が流れ方向、幅方向共に10〜220N/15mmであることを特徴とする軟質塩化ビニル樹脂製物品への貼付用接着シートを提供するものである。
また、本発明は、上記接着シートにおいて、感熱性接着剤層を構成する樹脂に含まれる前記結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が、50〜100質量%である接着シートを提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記接着シートにおいて、感熱性接着剤層に無機フィラーが含有されていない接着シートを提供するものである。
また、本発明は、上記接着シートにおいて、結晶性ポリエステル樹脂の融点が50〜200℃である接着シートを提供するものである。
また、本発明は、上記接着シートにおいて、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が10〜90℃である接着シートを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記接着シートにおいて、接着シートが中心線表面粗さRaが1.0μm以上の軟質塩化ビニル樹脂製物品への貼付用である接着シートを提供するものである。
さらに、本発明は、上記接着シートにおいて、軟質塩化ビニル樹脂製物品が軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグである接着シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接着シートは、オートクレーブ処理や低温保管時の後でも強度が低下せず、浮き剥れが生じない長期間優れた接着性を有し、耐ブロキッング性に優れており、実用性において極めて優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、フィルム基材としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂などのプラスチックのフイルム又はシートなどが挙げられる。これらの内、塩化ビニル樹脂及びポリエステル樹脂フィルム又はシートが好ましい。フィルム基材は、1層のみで構成されていてもよいし、2層以上の多層構造でもよい。また、フィルム基材は、未延伸でもよいし、縦または横などの一軸方向または二軸方向に延伸されていてもよい。
【0013】
フィルム基材の厚みは、特に制限ないが、通常10〜250μmであり、好ましくは25〜200μmである。
フィルム基材の破断強度は、流れ方向が10N/15mm〜220N/15mm、幅方向が10N/15mm〜220N/15mmが好ましい。フィルム基材の破断強度を上記範囲にすることにより、フィルム基材が破れ難くなり、また、感熱性接着剤層の軟質塩化ビニル樹脂製物品への接着強度よりも小さくなるので、無理に剥そうとするとフィルム基材が軟質塩化ビニル樹脂製物品から剥れる前にフィルム基材が破れ、故意に接着シートを軟質塩化ビニル樹脂製物品から貼り替えることができなくなる。なお、破断強度は、JIS K7127に準じて測定した値である。
【0014】
フィルム基材は、着色されていてもよいし、無色透明のものでもよい。また、フィルム基材の表面又は裏面には、印刷、印字などを施してもよい。そのために、フィルム基材には、感熱記録層、熱転写、インクジェット、レーザー印字などが可能な印字受像層、印刷性向上層、インキ易接着層等が設けられてもよい。
また、感熱性接着剤層を形成するフィルム基材の裏面には、感熱性接着剤層との密着力(キーイング力)を向上させるために、プライマー処理やコロナ処理等が施されていてもよい。
【0015】
本発明において、感熱性接着剤層は、結晶性ポリエステル樹脂を主成分として含む樹脂からなる。
結晶性ポリエステル樹脂は、示差走査型熱量計にて測定した場合に結晶融解熱が5〜50J/gであるものである。結晶性融解熱が低いと非晶性に近くなり、樹脂強度がなく接着力が低下し、また、ブロッキング性も悪くなる。逆に、結晶融解熱が高いと結晶化速度が速くなり、オープンタイムが短くなり、結晶収縮も大きくなるため、接着力が低下する。この結晶融解熱は、10〜45J/gが好ましく、15〜40J/gがより好ましい。
【0016】
結晶性ポリエステル樹脂は、融点が50〜200℃のものが好ましく、70〜150℃のものが特に好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が−30〜70℃が好ましく、−20〜50℃が特に好ましい。
感熱性接着剤層を構成する樹脂に含まれる結晶性ポリエステル樹脂の含有割合は、50〜100質量%であることが好ましく、60〜100質量%であることがより好ましく、70〜100質量%であることがさらに好ましく、80〜100質量%であることが特に好ましい。
【0017】
感熱性接着剤層を構成する樹脂には、結晶性ポリエステル樹脂以外の他の樹脂を含有させることができる。他の樹脂としては、種々の樹脂が挙げられるが、非晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂は、軟質塩化ビニル樹脂製物品に貼付する際に、物品の表面への濡れ性及び追従性が優れており、特に物品の表面が粗い場合に、物品の表面への濡れ性及び追従性が優れている。
非晶性ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が10〜90℃のものが好ましく、30〜80℃のものが特に好ましい。ガラス転移温度が10℃未満であると、ブロッキング性が低下しやすくなり、90℃を超えると、溶融するのに時間がかかり、ヒートシール性が悪化する恐れがある。
【0018】
感熱性接着剤層を構成する樹脂に含まれる非晶性ポリエステル樹脂の含有割合は、50〜0質量%であることが好ましく、40〜0質量%であることがより好ましく、30〜0質量%であることがさらに好ましく、20〜0質量%であることが特に好ましい。非晶性ポリエステル樹脂が含有する場合の含有量の下限値は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が特に好ましい。
【0019】
上記ポリエステル樹脂は、通常はポリオールと多価カルボン酸とを重合させることにより得られる。
上記ポリオールとしては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリン、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。なお、ポリオールは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
多価カルボン酸としては、マロン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、デカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、シクロペンタンジカルボン酸などが挙げられる。多価カルボン酸は、1種又は2種以上を用いることができる。
ポリオールと多価カルボン酸の組合せは、得られるポリエステル樹脂が結晶性又は非晶性となり、ガラス転移温度が上記範囲になる様に適宜選定すればよい。
ポリエステル樹脂は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
感熱性接着剤層は、架橋剤を添加して硬化させたものが好ましい。架橋剤を架橋させることにより、感熱性接着剤層は、接着強度が強く、凝集力が強くなり、さらに、耐ブロッキング性がより優れる。架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アルミニウムキレート化合物、エチレンイミン化合物などが挙げられ、ポリイソシアネート化合物が好ましく、耐候性の観点からは脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物が特に好ましい。ポリイソシアネート化合物としては、1分子当たりイソシアネート基2個以上を有するポリイソシアネート化合物が挙げられ、例えばジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、テトライソシアネート化合物、ペンタイソシアネート化合物、ヘキサイソシアネート化合物など種々のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0022】
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、メチレンビス(フェニルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
また、架橋剤を使用する場合は、架橋促進剤を添加することが好ましい。
架橋促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、テトラメチルブタンジアミンなどのアミノ化合物、塩化第一スズ、ジメチル二塩化スズ、トリメチルスズヒドロキシド、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズスルフィド、塩化第二鉄、鉄アセチルアセテート、ナフテン酸コバルト、硝酸ビスマス、オレイン酸鉛、三塩化アンチモンなどの金属化合物などを用いることができる。
【0024】
架橋剤を使用する場合は、用いるポリエステル樹脂の水酸基価は、1mgKOH/g以上が好ましい。ポリエステル樹脂の水酸基価の上限は、適宜選定すればよいが、50mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましい。ポリエステル樹脂の水酸基価の特に好ましい範囲は、2〜10mgKOH/gである。ポリエステル樹脂のうち、特に結晶性ポリエステル樹脂が上記範囲の水酸基価を有することが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、特に0.1〜5質量部が好ましい。
【0025】
また、感熱性接着剤層には、必要に応じて添加剤の1種以上を含有させることができる。添加剤としては、たとえば、フィラー、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。フィラーとしては、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルクなどの無機フィラー、及びでんぷんなどの有機フィラー等が挙げられる。酸化防止剤としては、アニリド系、フェノール系、ホスファイト系、チオエステル系酸化防止剤などが挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0026】
感熱性接着剤層は、上記各成分を混合し、必要に応じて希釈剤などを追加混合して適当な粘度に調整した混合物から成る感熱性接着剤をフィルム基材の裏面に塗布し、必要に応じて乾燥及び/又は架橋することにより、又は剥離基材の表面に塗布し、必要に応じて乾燥及び/又は架橋し、次いで塗布層の表面にフィルム基材の裏面を貼り合わせることにより、形成できる。
【0027】
なお、感熱性接着剤に含まれる希釈剤又は後から追加する希釈剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン等が挙げられる。希釈剤の配合量は、要求される粘度になるように適宜選定すればよい。
感熱性接着剤層の厚みは、特に制限ないが、通常5〜40μmであり、好ましくは10〜25μmである。
なお、本発明において、感熱性接着剤層の表面に印刷や印字を施してもよい。
【0028】
なお、感熱性接着剤層の表面は、剥離シートで覆うことができる。
剥離シートは、少なくとも片面が剥離性を有する支持基材からなり、支持基材の剥離性面は、剥離剤を塗工したものであってもよいし、剥離剤を塗工しないものでもよい。
剥離シートの支持基材としては、例えば紙、合成紙、プラスチックフィルムなどが挙げられる。紙としては、例えばグラシン紙、ポリエチレンラミネート紙などが挙げられ、プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂などのプラスチックのフイルムなどが挙げられる。また、剥離剤を塗工しない剥離シートの適当な具体例としては、ポリプロピレン樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルムなどのポリオレフィン樹脂フィルム、これらのポリオレフィン樹脂フィルムを紙や他のフィルムにラミネートしたフィルムが挙げられる。剥離シートの支持基材の厚みは、特に制限されないが、通常は15〜300μm程度であればよい。
【0029】
剥離シートに用いられる剥離処理剤としては、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル含有樹脂などが挙げられる。
フィルム基材、感熱性接着剤層及び剥離シートを積層した接着シートの厚みは、プリンター等に導入できる厚さが好ましく、通常は50〜300μm程度であればよい。
本発明の接着シートは、平面のシート状であってもよいし、ロール状に巻き取ったものであってもよい。
【0030】
本発明の接着シートは、感熱性接着剤層を貼着する種々の用途に使用できるが、被着体が軟質ポリ塩化ビニル樹脂製物品である場合に特に有効であり、軟質ポリ塩化ビニル樹脂製血液バッグに貼着後、滅菌処理しても浮き剥れを生じないことから、血液バッグの表示ラベル、管理ラベルとしての利用が特に有用である。本発明の接着シートは、軟質ポリ塩化ビニル樹脂性被着体の表面が粗い場合に特に有効に機能する。軟質ポリ塩化ビニル樹脂性被着体の表面粗さは、1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。軟質ポリ塩化ビニル樹脂性被着体の表面粗さの上限値は、特に制限ないが、通常20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0031】
血液バッグへの貼付用接着シートは、フィルム基材の表面に血液型、採血日時などの血液情報が印刷されている。接着シートの血液バッグへの貼付は、通常血液バッグへの血液の充填の前に行われる。
接着シートを被着体に貼付するには、通常感熱性接着剤層を被着体の表面に直接接して重ね合わせて、加熱押圧することにより行われる。加熱温度は、通常80〜160℃が好ましく、100〜150℃がより好ましく、120〜140℃が特に好ましい。押圧する圧力は、通常0.5〜10kg/cmである。押圧時間は、0.1〜5秒間が好ましく、0.5〜3秒間が特に好ましい。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。
実施例の接着力測定試験は、下記の方法に従って行なった。
【0033】
(1)接着力測定試験:接着シートの感熱性接着剤層面を軟質塩化ビニル樹脂製血液バッ(中心線表面粗さRa:6.3μm)の表面にヒートシール機(テスター産業(株)製、商品名「ヒートシールテスターTP−701」)を用いてヒートシール(加熱温度:130℃、圧力:3kg/cm、加圧時間:2秒間)して30分後(条件1)、及びヒートシールして30分後に高圧滅菌機(平山製作所製、商品名「オート高圧滅菌機HA−24型」)を使用して40分間オートクレーブ処理した後(条件2)に、180°引き剥がし法により引張り速度300mm/minで引き剥がし、そのときの剥離状態を観察し、下記の基準で評価した。
【0034】
◎:軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグ又は接着シートのフィルム基材が破れたもの。
○:軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグ又は接着シートのフィルム基材が一部破れたもの。
×:軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグ又は接着シートのフィルム基材が破れず、接着シートが剥がれたもの。
【0035】
(2)オートクレーブ特性:接着シートの感熱性接着剤面を軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグ(中心線表面粗さRa:6.3μm)の表面にヒートシール機(テスター産業(株)製、商品名「ヒートシールテスターTP−701」)を用いてヒートシール(加熱温度:130℃、圧力:3kg/cm、加圧時間:2秒間)して30分後、高圧滅菌機(平山製作所製、商品名「オート高圧滅菌機HA−24型」)を使用して40分間オートクレーブ処理した後の浮き剥れを目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:接着シートの浮き剥がれがないもの。
×:接着シートの浮き剥がれが発生したもの。
【0036】
(3)ブロッキングテスト:接着シートの感熱性接着剤層面を該接着シートの感熱性接着剤面の裏面側重ね合わせ、20g/cmの荷重をかけながら60℃の環境下に120時間放置後、ブロッキングの有無を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:抵抗なく剥離できる。
○:若干音を発しながら剥離する。
△:接着シートの感熱性接着剤面の裏面にヒートシール剤が残る、若しくはフィルム基材の一部が残る。
×:フィルム破壊が起こる。
【0037】
(実施例1)
ガラス転移温度が10℃、融点110℃の結晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターSP−180 S20TM」、示差走査型熱量計にて測定した結晶融解熱26.99J/g)を100質量部(固形分)と、希釈剤(トルエン)を100質量部とを混合して得られた溶液を、表面にインキ易接着層を有するポリエステルフィルムシート(東洋紡績(株)製、商品名「クリスパーK2311」、厚み50μm、破断強度:流れ方向94N/15mm、幅方向118N/15mm)からなるフィルム基材の裏面(未処理面)に、乾燥後の感熱性接着剤層の厚みが12μmになるように塗布乾燥し、感熱性接着剤層を形成し、さらに感熱性接着剤層の表面に片面にシリコーン樹脂層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック(株)製、商品名「SP−PET38CL」、厚み38μm)からなる剥離シートを積層して接着シートを作成した。
【0038】
この接着シートのフィルム基材の表面に、血液情報を印刷した。次いで、印刷された接着シートをラベルサイズにカットし、剥離シートを剥がし、軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグの表面(中心線表面粗さRa:6.3μm)に接着シートをヒートシール(加熱温度130℃、圧力3kg/cm、加圧時間2秒間)して、貼付した。接着シートの貼付時には、接着シートの剥がれやずれはなかった。この状態で3ヶ月間放置した後に、接着シートの接着状況を目視で観察したが、浮きや剥れは無かった。接着力測定試験、オートクレーブ適性、ブロッキングテストの評価を行い、その結果を表1に示す。
【0039】
(実施例2)
ガラス転移温度が10℃、融点110℃の結晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターSP−180 S20TM」)を100質量部(固形分)と、希釈剤(トルエン)を100質量部とを混合して得られた溶液を用いてフィルム基材の裏面に、塗布乾燥して感熱性接着剤層を形成した以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成し、軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグの表面(中心線表面粗さRa:2μm)に接着シートをヒートシール(加熱温度130℃、圧力3kg/cm、加圧時間2秒間)して、貼付した。接着シートの貼付時には、接着シートの剥がれやずれはなかった。この状態で3ヶ月間放置した後に、接着シートの接着状況を目視で観察したが、浮きや剥れは無かった。接着力測定試験、オートクレーブ適性、ブロッキングテストの評価を行い、その結果を表1に示す。
【0040】
(実施例3)
ガラス転移温度が10℃、融点110℃の結晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターSP−180 S20TM」)を90質量部(固形分)と、ガラス転移温度が65℃の非晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターTP−235 S20TM」)を10質量部(固形分)と、希釈剤(トルエン)を100質量部とを混合して得られた溶液を用いてフィルム基材の裏面に、塗布乾燥して感熱性接着剤層を形成した以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成し、軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグの表面(中心線表面粗さRa:2μm)に接着シートをヒートシール(加熱温度130℃、圧力3kg/cm、加圧時間2秒間)して、貼付した。接着シートの貼付時には、接着シートの剥がれやずれはなかった。この状態で3ヶ月間放置した後に、接着シートの接着状況を目視で観察したが、浮きや剥れは無かった。接着力測定試験、オートクレーブ適性、ブロッキングテストの評価を行い、その結果を表1に示す。
【0041】
(実施例4)
ガラス転移温度が10℃、融点110℃の結晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターSP−180 S20TM」)を60質量部(固形分)とガラス転移温度が65℃の非晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターTP−235 S20TM」)を40質量部(固形分)と、希釈剤(トルエン)を100質量部とを混合して得られた溶液を用いてフィルム基材の裏面に、塗布乾燥して感熱性接着剤層を形成した以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成し、軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグの表面(中心線表面粗さRa:2μm)に接着シートをヒートシール(加熱温度130℃、圧力3kg/cm、加圧時間2秒間)して、貼付した。接着シートの貼付時には、接着シートの剥がれやずれはなかった。この状態で3ヶ月間放置した後に、接着シートの接着状況を目視で観察したが、浮きや剥れは無かった。接着力測定試験、オートクレーブ適性、ブロッキングテストの評価を行い、その結果を表1に示す。
【0042】
(実施例5)
ガラス転移温度が10℃、融点110℃の結晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターSP−180 S20TM」)を90質量部(固形分)と、ガラス転移温度が40℃の非晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターTP−219 S30TO」)を10質量部(固形分)と、希釈剤(トルエン)を100質量部とを混合して得られた溶液を用いてフィルム基材の裏面に、塗布乾燥して感熱性接着剤層を形成した以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成し、軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグの表面(中心線表面粗さRa:2μm)に接着シートをヒートシール(加熱温度130℃、圧力3kg/cm、加圧時間2秒間)して、貼付した。接着シートの貼付時には、接着シートの剥がれやずれはなかった。この状態で3ヶ月間放置した後に、接着シートの接着状況を目視で観察したが、浮きや剥れは無かった。接着力測定試験、オートクレーブ適性、ブロッキングテストの評価を行い、その結果を表1に示す。
【0043】
(実施例6)
ガラス転移温度が10℃、融点110℃の結晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターSP−180 S20TM」、水酸基価8mgKOH/g)を100質量部(固形分)と、架橋剤(芳香族系ポリイソシアネート化合物、東洋インキ製造(株)製、商品名「BHS8515」)0.5質量部(固形分)と、希釈剤(トルエン)100質量部とを混合して得られた混合液を用いてフィルム基材の裏面に、塗布乾燥して感熱性接着剤層を形成した以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成し、軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグの表面(中心線表面粗さRa:2μm)に接着シートをヒートシール(加熱温度130℃、圧力3kg/cm、加圧時間2秒間)して、貼付した。接着シートの貼付時には、接着シートの剥がれやずれはなかった。この状態で3ヶ月間放置した後に、接着シートの接着状況を目視で観察したが、浮きや剥れは無かった。接着力測定試験、オートクレーブ適性、ブロッキングテストの評価を行い、その結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
実施例1において、ガラス転移温度が10℃、融点110℃の結晶性ポリエステル樹脂の代わりにエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(東洋モートン(株)製、商品名「AD−1790−15」)を用いた以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成し、軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグの表面(中心線表面粗さRa:6.3μm)に接着シートを貼付した。接着力測定試験、オートクレーブ適性、ブロッキングテストの評価を行い、その結果を表1に示す。
【0045】
(比較例2)
実施例1において、ガラス転移温度が10℃、融点110℃の結晶性ポリエステル樹脂の代わりにガラス転移温度が65℃の非晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターTP−235 S20TM」)を用いた以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成し、軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグの表面(中心線表面粗さRa:6.3μm)に接着シートを貼付した。接着力測定試験、オートクレーブ適性、ブロッキングテストの評価を行い、その結果を表1に示す。
【0046】
(比較例3)
実施例1において、ガラス転移温度が10℃、融点110℃の結晶性ポリエステル樹脂の代わりにガラス転移温度が65℃の非晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターTP−235 S20TM」)を用いた以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成し、軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグの表面(中心線表面粗さRa:2μm)に接着シートを貼付した。接着力測定試験、オートクレーブ適性、ブロッキングテストの評価を行い、その結果を表1に示す。
【0047】
(比較例4)
実施例1において、ガラス転移温度が10℃、融点110℃の結晶性ポリエステル樹脂の代わりにガラス転移温度が65℃の非晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターTP−235 S20TM」)を用いた以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成し、軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグの表面(中心線表面粗さRa:0.8μm)に接着シートを貼付した。接着力測定試験、オートクレーブ適性、ブロッキングテストの評価を行い、その結果を表1に示す。
【0048】
(比較例5)
ガラス転移温度が10℃、融点110℃の結晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターSP−180 S20TM」)を10質量部(固形分)と、ガラス転移温度が65℃の非晶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ポリエスターTP−235 S20TM」)を90質量部(固形分)と、希釈剤(トルエン)を100質量部とを混合して得られた溶液を用いてフィルム基材の裏面に、塗布乾燥して感熱性接着剤層を形成した以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成し、軟質塩化ビニル樹脂製血液バッグの表面(中心線表面粗さRa:6.3μm)に接着シートを貼付した。接着力測定試験、オートクレーブ適性、ブロッキングテストの評価を行い、その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材の裏面に感熱性接着剤層が設けられており、該感熱性接着剤層が結晶性ポリエステル樹脂を主成分として含む樹脂で構成され、該フィルム基材の破断強度が流れ方向、幅方向共に10〜220N/15mmであることを特徴とする軟質塩化ビニル樹脂製物品への貼付用接着シート。
【請求項2】
感熱性接着剤層を構成する樹脂に含まれる結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が、50〜100質量%である請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
感熱性接着剤層に無機フィラーが含有されていない請求項1又は2に記載の接着シート。
【請求項4】
結晶性ポリエステル樹脂の融点が50〜200℃である請求項1〜3のいずれかに記載の接着シート。
【請求項5】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が10〜90℃である請求項3又は4に記載の接着シート。
【請求項6】
接着シートが中心線表面粗さRaが1.0μm以上の軟質塩化ビニル樹脂製物品への貼付用である請求項1〜5のいずれかに記載の接着シート。
【請求項7】
軟質塩化ビニル樹脂製物品が軟質塩化ビニル樹脂製血液バックである請求項6に記載の接着シート。

【公開番号】特開2013−49862(P2013−49862A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235068(P2012−235068)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【分割の表示】特願2007−509359(P2007−509359)の分割
【原出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】