説明

接着促進剤としてのポリペプチド使用方法

【課題】高い接着力を生じる新しい接着促進剤を提供する。
【解決手段】多層複合材料またはコーティングされた基材であって、複合材料の隣接する少なくとも2層間の、またはコーティングおよび基材間の接着促進剤として、少なくとも40質量%がペプチド結合により連結したα−アミノ酸(ポリペプチドと略称する)から構成される化合物を含む物を使用することで解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層複合材料またはコーティングされた基材であって、複合材料の隣接する少なくとも2層間の、またはコーティングおよび基材間の接着促進剤として、少なくとも40質量%がペプチド結合により連結したα−アミノ酸(以下、ポリペプチドと略称する)から構成される化合物を含む物に関する。さらに具体的には、本発明は接着促進剤としてのハイドロフォビン使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロフォビンは約100〜150残基のアミノ酸の小さいタンパク質であり、例えばスエヒロタケ(Schizophyllum commune)などの糸状菌の特徴的なものである。それらは8個のシステイン単位を有するのが一般的である。
【0003】
ハイドロフォビンは界面に顕著な親和性を有し、そのため、表面のコーティングに有用である。例えば、テフロン(登録商標)をハイドロフォビンとコーティングすると親水性表面を得ることができる。
【0004】
ハイドロフォビンは天然資源から単離することができる。我々の先願であるDE 102005007480.4にはハイドロフォビンの生産方法が開示されている。
【0005】
先行技術において種々の用途についてハイドロフォビンの使用方法が提案されている。
【0006】
WO 96/41882は疎水性表面へ親水性特性を付与し、親水性物質の水耐性を改良し、水中油型乳剤または油中水型乳剤を作成して、ハイドロフォビンを乳化剤、増粘剤または界面活性剤として使用する方法を提案する。軟膏類またはクリーム類の製造の様な薬剤への応用、および肌保護、ヘアーシャンプーまたはヘアーリンスの生産のような化粧品への応用も提案されている。
【0007】
EP−A 1 252 516には窓、コンタクトレンズ、バイオセンサー、医療機器、分析用または貯蔵用のコンテナ、船体、固形粒子、または乗用車のフレームまたは車体についてハイドロフォビンを含有する溶液で30〜80℃コーティングすることが開示されている。
【0008】
WO 03/53383には化粧品への応用として角質物質を処理するためのハイドロフォビンの使用方法が開示されている。
【0009】
WO 03/10331には、ハイドロフォビンをコーティングしたセンサー(例えば、計測用電極)であって、例えば電気活性な物質、抗体または酵素などの物質がさらに非共有結合したセンサーが開示されている。
【0010】
以前から、全く異なる接着促進剤が接着の改善に、例えば多種多様な基材のコーティングに使用されている。Rompp Chemie Lexikon(1990年版)によると、例えばチタン酸塩類、シラン類、不飽和カルボン酸類のクロム錯体などが適切である。特に注目される、接着のための接着促進剤はエチレン/アシルアミド共重合体、イソシアナート重合体または反応性有機ケイ素化合物である。
【0011】
ポリウレタン類およびポリエチレンイミン類も接着促進剤として知られている。
【0012】
【特許文献1】DE 102005007480.4
【特許文献2】WO 96/41882
【特許文献3】EP−A 1 252 516
【特許文献4】WO 03/53383
【特許文献5】WO 03/10331
【特許文献6】WO 96/41882
【特許文献7】DE 102005007480.4
【非特許文献1】Rompp Chemie Lexikon(1990年版)
【非特許文献2】Wessels et al.,Ann.Rev.Phytopathol.,1994年、32巻、413〜437頁
【非特許文献3】Wosten et al.,Eur. J Cell bio.63巻、122−129頁(1994年)
【非特許文献4】Goeddel, gene Expression Technologykoron Methods in Enzymology 185巻、Academic Press, San Diego, CA(1990年)
【非特許文献5】Cloning Vectors(Eds. Pouwels P. H. et al. Elsevier, Amsterdam−New Youk−Oxford, 1985年、ISBN 0 444 904018)
【非特許文献6】T.Maniatis,E.F.Fritsh and J.Sambrook, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY(1989年)
【非特許文献7】T.J.Sihavy, M.L.Berman and L.W.Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor,NY(1984年)
【非特許文献8】Ausubel,F.M.et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience(1987年)
【非特許文献9】Current Protocols in Molecular Biology, F.Ausubel et al.,Eds.,Willey Interscience, New Tork 1997年
【非特許文献10】Thomas,K.R.およびCapecchi,M.R.(1987年)Cell 51巻、503頁
【非特許文献11】Cooper,F.G.,Biochemishe Arbeitsmethoden,Verlag Walter de Gruyter, Berlin,New York
【非特許文献12】Scopes,R.,Protein Purification, Springer Verlag, New York, Heidelberg,Berlin
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は非常に高い適用性を有し、特に、多層複合材料または基材へのコーティングの個々の層の高い接着力を生じる新しい接着促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
結果的に、本目的は最初に定義した多層複合材料またはコーティングされた基材により達成されることが見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
接着促進剤
硬質表面またはコーティングされた基材は接着促進剤として最初に定義したポリペプチドを含む。
【0016】
ポリペプチドは少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも70質量%、さらに好ましくは少なくとも90質量%、さらに特に好ましくは少なくとも95または99質量%のペプチド結合により連結したα−アミノ酸から成る。
【0017】
特別な実施形態においては、ポリペプチドは完全にペプチド結合により連結したα−アミノ酸のみから成る。
【0018】
特に適切なα−アミノ酸はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、セリン、スレオニン、システイン、シスチン、メチオニン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、及びヒスチジンである。
【0019】
ポリペプチドは混合物中にα−アミノ酸、システインを他のα−アミノ酸と共に含むことが好ましい。
【0020】
特にポリペプチドは好ましくは少なくとも0.1質量%、さらに好ましくは少なくとも0.5質量%、さらに特に好ましくは少なくとも1質量%のシステインを含む。一般的に、ポリペプチド中のシステイン含有量は15質量%、特に10質量%を超えず、特に好ましくは7質量%を超えない。
【0021】
特別な実施形態においては、ポリペプチドはハイドロフォビンである。
【0022】
本発明による「ハイドロフォビン」の用語は以下に示す、一般構造式(I)
【0023】
【化1】

【0024】
[上記式中、Xは20種の天然アミノ酸(Phe、Leu、Ser、Tyr、Cys、Trp、Pro、His、Gln、Arg、Ile、Met、Thr、Asn、Lys、Val、Ala、Asp、Glu、Gly)を表し、各々のXは同一または異なっても良く、Xの隣の指数はそれぞれの場合のアミノ酸残基数を示しており、Cはシステイン、アラニン、セリン、グリシン、メチオニンまたはスレオニンを表し、ただし、Cで表されるアミノ酸の少なくとも4個はシステインであり、指数nおよびmは相互に独立して、0〜500の範囲、好ましくは15〜300の範囲の自然数である。]
のポリペプチドのことを言う。
【0025】
さらに、式(I)のポリペプチドは、(ガラス面をコーテインクした後の)特性として、室温で水滴の接触角を、コーティングしていないガラス面で同サイズの水滴により形成される接触角と比較し、少なくとも20°、好ましくは25°、さらに好ましくは30°まで増加させることにより特徴づけられる。
【0026】
1〜C8で示されるアミノ酸は、好ましくはシステインであるが、それらは同様な容積の他のアミノ酸、好ましくはアラニン、セリン、スレオニン、メチオニンまたはグリシンと置換されても良い。しかしながら、C1〜C8の位置の少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、さらに好ましくは少なくとも6個および特に好ましくは7個がシステインで構成されている方が良い。システインは還元型を示しても、または互いにジスルフィド架橋を形成しても良い。特に、少なくとも1個、好ましくは2個、さらに好ましくは3個および最も好ましくは4個の分子間ジスルフィド架橋を伴う、分子間のC−C架橋の形成が特に好ましい。上記のシステインが他の同様な容積のアミノ酸に置換する場合、そのC−位置が互いに分子間ジスルフィド架橋を形成できるように対交換を伴うことが有利である。
【0027】
システイン、セリン、アラニン、グリシン、メチオニンまたはスレオニンがXで指定された位置に用いられる場合、一般式における個々のC−位置の番号は適宜変化する。
【0028】
好ましくは、一般式(II)
【0029】
【化2】

【0030】
[本発明を行うため、上記式中、X、CおよびXの隣の指数はそれぞれ上記と同様であるが、指数nおよびmは0〜300の範囲の数値を示し、さらに、そのタンパク質は上記の接触角の変化により識別される。]
のハイドロフォビンを使用する。
【0031】
さらに好ましくは、一般式(III)
【0032】
【化3】

【0033】
[上記式中、X、CおよびXの隣の指数はそれぞれ上記と同様であり、指数nおよびmは0〜200の範囲の数値を示し、さらに、そのタンパク質は上記の接触角の変化により識別され、さらに、Cで表されるアミノ酸の少なくとも6個がシステインであり、特に好ましくはCで表される全てのアミノ酸がシステインである。]
のハイドロフォビンを使用する。
【0034】
nおよびXm残基はハイドロフォビンへ天然に結合するペプチド配列でも良い。しかしながら、XnおよびXmのどちらか一方または両方ともがハイドロフォビンに天然には結合しないペプチド配列でも良い。これはXnおよび/またはXm残基について、ハイドロフォビン中に天然に生じるペプチド配列が天然に生じないペプチド配列により延長されている場合も含まれる。
【0035】
nおよび/またはXmがハイドロフォビンにおいて天然に生じないペプチド配列である場合、その配列の長さは一般的に少なくとも20残基のアミノ酸、好ましくは少なくとも35残基のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも50残基のアミノ酸および最も好ましくは少なくとも100残基のアミノ酸である。ハイドロフォビンに天然に結合しないこの種の残基は後述のように、融合パートナー(fusion partner)とも言う。これはそのタンパク質が少なくとも1種のハイドロフォビン部分、および天然にはこの形態で共に生じない融合パートナーとから成る事実を明確にすることを目的としている。
【0036】
融合パートナーは多数のタンパク質から選択される。複数の融合パートナーを1種のハイドロフォビン部分、例えば、ハイドロフォビン部分のアミノ末端(Xn)およびカルボキシ末端(Xm)に結合させることもできる。しかしながら、例えば、本発明により使用されるタンパク質の1位置(XnまたはXm)に2個の融合パートナー部分を結合させることもできる。
【0037】
特に安定な融合パートナー部分は微生物、特にE.coliまたはBacillus subtilisにおいて天然に生じるポリペプチドである。このような融合パートナー部分の例としては、yaad配列(SEQ ID NO:15および16)、yaae配列(SEQ ID NO:17および18)およびチオレドキシンが挙げられる。また、上記配列の断片または誘導体で、その配列の一部分のみ、好ましくは70〜99%およびさらに好ましくは80〜98%を含む、または上記の配列と比較して特定のアミノ酸またはヌクレオチドが改変されたものは非常に適している(%はそれぞれの場合、アミノ酸数に関する%を表す)。
【0038】
さらに、本発明により使用されるタンパク質をそれらのペプチド配列において、例えばグリコシル化、アセチル化または他の例えばグルタルアルデヒドなどの化学的架橋結合により修飾してもよい。
【0039】
本発明により使用されるタンパク質の一特性は、表面がそのタンパク質でコーティングされると、表面特性が変化することである。表面特性における変化はタンパク質による表面のコーティング前後における水滴の接触角を測定し、両測定値間の差異を測定することにより実験的に測定できる。
【0040】
接触角の測定する方法の原理は当業者に知られている。その測定は室温で、5μlの水滴を基準として行われる。接触角の測定についての正確な実験条件は実施例の実験部分に示す。その条件において、本発明により使用されるタンパク質はコーティングしていないガラス面で同サイズの水滴の接触角と比較して、ガラス表面の水滴の接触角を少なくとも20°、好ましくは少なくとも25°およびさらに好ましくは30°まで増加させる特性を有する。
【0041】
今まで知られているハイドロフォビン類のハイドロフォビン部分において極性および非極性アミノ酸残基の位置は保存されており、結果として疎水性の性質が生じている。今まで知られているハイドロフォビン類は生物物理学的性質および疎水性における違いにより、IおよびIIの2種のクラスに分類される(Wessels et al.,Ann.Rev.Phytopathol.,1994年、32巻、413〜437頁)。
【0042】
作製されたクラスIのハイドロフォビン類の膜は不溶性が高く(温度を高めた1質量%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液でも不溶である)、高濃度のトリフルオロ酢酸(TFA)またはギ酸によってのみ再び解離することができる。一方、作成されたクラスIIのハイドロフォビン類の構造はより不安定である。それらは60質量%エタノールまたは1質量%SDS(室温で)によって再び解離することができる。
【0043】
アミノ酸配列の比較によると、システインC3及びシステインC4間の領域がクラスIのハイドロフォビン類の場合よりクラスIIのハイドロフォビン類の場合がはっきりと短いことが明らかである。さらにクラスIIのハイドロフォビンはクラスIの場合よりアミノ酸の電荷が高い。
【0044】
特に好ましい本発明の実施形態のハイドロフォビン類はタイプdewA,rodA、hypA、hypB,sc3,basf1、basf2、のものであり、構造的に以下にリストする配列に特徴づけられる。また、それらは、その部分のみであっても、またはそのタイプの誘導体であっても良い。複数種のハイドロフォビンを、好ましくは2または3種で、互いに同一または異なる構造で、ハイドロフォビンと天然には結合しない適切なポリペプチド配列に相当するように連結させることもできる。
【0045】
さらに、本発明を実施するために特に適切なのは、SEQ ID NO:20、22、24およびそれをコードする核酸配列で示されるポリペプチド配列、特にSEQ ID NO:19、21、23の配列を有する融合タンパク質である。さらに、特に好ましい実施形態はSEQ ID NO:20、22または24で示されるポリペプチド配列から開始し、少なくとも1個〜10個以下、好ましくは5個、さらに好ましくは全てのアミノ酸残基の5%の置換、挿入または削除が生じ、開始タンパク質の生物学的特性の少なくとも50%をまだ有しているタンパク質を含む。ここで、本発明により使用されるタンパク質の生物学的特性は上記の接触角における少なくとも20°の増加を意味する。
【0046】
本発明により使用されるポリペプチドは、例えばメリフィールドに従う固相合成法などによるペプチド合成の良く知られた技術により化学的に作製できる。
【0047】
天然に生じるハイドロフォビンは天然資源から適切な方法を用いて単離することができる。例として、Wosten et al.,Eur. J Cell bio.63巻、122−129頁(1994年)またはWO 96/41882が挙げられる。
【0048】
好ましくは、融合タンパク質は遺伝子工学的手法、即ち、融合パートナーをコードする1個の核酸配列、特にDNA配列およびハイドロフォビン部分をコードする1個の核酸配列、特にDNA配列を結合することで、結合した核酸配列の遺伝子発現により、宿主生物中に目的とするタンパク質を生じさせる手法で作製する。このような方法は我々の先行出願であるDE 102005007480.4で開示している。
【0049】
上記の作製方法における適切な宿主生物(生産生物)には、原核生物(古細菌を含む)または真核生物、特に好塩菌を含む細菌、カビ、昆虫細胞、植物細胞、哺乳類細胞、さらに好ましくはEscherichia coli、Bacillus subtilis、Bacillus megaterium、Aspergillus oryzea、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Pichia pastoris、Pseudmonas spec.、Lactobacilli、Hansenula polymorpha、Trichoderma reesei、SF9(または関連細胞)などが含まれる。
【0050】
さらに、本発明は制御核酸配列の遺伝子制御に基づいて、本発明により使用されるポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現コンストラクト(構築物(constructs))の使用方法、およびこれらの発現コンストラクトの少なくとも1種を含むベクターに関する。
【0051】
好ましくは、使用されるコンストラクトは目的のタンパク質をコードする配列の5‘上流にプロモーターおよびそのコードする配列の3’下流にターミネーター配列が含まれ、必要に応じて、さらに、そのコードする配列に有効に連結される慣例の調節因子も含まれる。
【0052】
「有効な連結(operative linkage)」はプロモーター、目的とするタンパク質をコードする配列、ターミネーター、および必要に応じて、そのコードする配列の発現に要求される機能果たすことができるような、さらなる調節因子の配列の配置を意味する。
【0053】
有効に連結した配列の例としては、標的とする配列およびエンハンサー、ポリアデニル化信号などがある。さらに、調節因子には選択マーカー、増幅シグナル、複製起点などが含まれる。適切な制御配列は、例えば、Goeddel, gene Expression Technologykoron Methods in Enzymology 185巻、Academic Press, San Diego, CA(1990年)に記載されている。
【0054】
これらの制御配列に加えて、これらの配列の天然の制御因子が実際の構造遺伝子の上流にまだ存在していても良く、必要に応じて、その天然の制御因子のスイッチを切り、遺伝子の発現を強めるように遺伝子修飾をしても良い。
【0055】
好ましい核酸コンストラクトにおいては、プロモーターと機能的に連結し、核酸配列の発現を高めることができる1種以上の上記のエンハンサー配列を含むことが有利である。さらなる制御因子またはターミネーターの様なさらに有利な配列をDNA配列の3‘末端に導入しても良い。
【0056】
核酸はコンストラクトに1個以上の複製として含まれても良い。さらにコンストラクトには、必要に応じてそのコンストラクトを選択する目的で、抗生物質耐性または補完的栄養要求性遺伝子の様なマーカーを追加して含ませても良い。
【0057】
本発明の方法に有利な制御配列は、プロモーターでは例えば、cos、tac、 trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、laclq-T7、T5、T3、gal、trc、ara、rhaP(rhaPBAD)SP6、lambda-PRまたはlambda-Pプロモーターであり、これらのプロモーターはグラム陰性細菌に有利である。さらに、有利な制御配列は、例えばグラム陽性細菌のプロモーターamyおよびSP02、酵母またはカビのプロモーターADC1、MFalpha、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADHがある。
【0058】
制御には人工的なプロモーターを使用することもできる。
【0059】
宿主生物における核酸コンストラクトを発現するため、その宿主において遺伝子を最適に発現させるベクター、例えばプラスミドまたはファージに挿入するのが有利である。さらに、ベクターにはプラスミドおよびファージと同様に、それ自体知られている他のすべてのベクター、即ち、例えばSV40、CMV、バクロウイルス、アデノウイルスなどのウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、コスミドおよび直鎖または環状DNA、およびアグロバクテリウム法が含まれる。
【0060】
これらのベクターはその宿主生物または染色体において独立して複製されても良い。これらのベクターは本発明のさらなる実施形態を構成する。適切なプラスミドの例としては、E.coliにおける、pLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223-3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-lll”3-B1、tgt11またはpBdCl、Streptomycesにおける、pIJ101、pIJ364、pIJ702またはpIJ361、BacillusにおけるpUB110、pC194またはpBD214、CorynebacteriumにおけるpSA77またはpAJ667、カビにおけるpALS1、pIL2またはpBB116、酵母における2alpha、pAG-1、YEp6、YEp13またはpEMBLYe23または植物におけるpLGV23、pGHlac+、pBIN19、pAK2004またはDH51が挙げられる。上記プラスミドは使用可能なプラスミドの一部を選択したものである。他のプラスミドは当業者に良く知られており、例えば書籍Cloning Vectors(Eds. Pouwels P. H. et al. Elsevier, Amsterdam−New York−Oxford, 1985年、ISBN 0 444 904018)において認められる。
【0061】
他の遺伝子を発現するため、核酸コンストラクトは宿主生物および遺伝子または遺伝子群により最適な発現と成るように選択された、発現を強める3'−および/または5’−末端の制御配列を含むことが有利である。
【0062】
これらの制御配列はその遺伝子およびタンパク質の発現を特異的にさせることを目的としている。宿主生物によっては、これは例えば、遺伝子が誘導後のみに発現するか、または、過剰発現し、および/または直ちに発現するか、または過剰発現することを意味する。
【0063】
これに関しては、制御配列または因子は確実に影響を与え、結果として誘導された遺伝子の発現をより強めることが好ましい。従って、制御因子はプロモーターおよび/またはエンハンサーの様な強力な転写シグナルを使用することにより、転写レベルを有利に強めても良い。しかしながら、この他に、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)の安定性を改良することにより、翻訳を強めることも可能である。
【0064】
ベクターのさらなる実施形態において、核酸コンストラクトまたは核酸を含むベクターが直鎖DNAの形態で微生物へ有利に導入され、異種または相同的な遺伝子組み換えにより宿主生物のゲノムに組み込まれても良い。この直鎖DNAはプラスミドの様な直鎖化した(linearized)ベクターまたは単に核酸コンストラクトまたは核酸で構成されていても良い。
【0065】
宿主生物中の異種の遺伝子の最適な発現のためには、その生物に利用される特異的なコドン使用頻度に従って核酸配列を組み換えることが有利である。コドン使用頻度は問題となる生物の他の既知遺伝子のコンピューター解析により容易に測定できる。
【0066】
発現カセットは適切なプロモーターを目的のタンパク質をコードする適切なヌクレオチド配列およびターミネーターまたはポリアデニル化信号と融合することにより作成する。例えば、T.Maniatis,E.F.Fritsh and J.Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY(1989年)およびT.J.Sihavy, M.L.Berman and L.W.Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor,NY(1984年)およびAusubel,F.M.et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience(1987年)に記載されているような、一般的な遺伝子組み換えおよびクローニング技術は本目的のために使用される。
【0067】
適切な宿主生物において発現させるため、組み換え核酸コンストラクトまたは遺伝子コンストラクトを宿主において遺伝子の最適な発現を提供する宿主特異的ベクターへ挿入する。ベクターはそれ自体知られており、例えば「Cloning Vectors」(Pouwels P.H.et al.,Eds, Elsevier, Amsterdam−New York−Oxford,1985年)から選択しても良い。
【0068】
ベクターによって、例えば少なくとも1個のベクターが変換され、本発明により使用されるポリペプチドの生産に使用される、組み換え微生物を作製することができる。上記の組み換えコンストラクトは適切な宿主系への導入および発現において有利である。これに関して、当業者に知られた、通常のクローニングおよびトランスフェクション法、例えば共沈、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルスによるトランスフェクションなどを、特に発現系において上記核酸を発現させるために使用することが好ましい。適切な発現系は例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F.Ausubel et al.,Eds.,Willey Interscience, New Tork 1997年、またはSambrook et al. Molecular Cloning:A Laboratry Manual.2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Apring Harbor,NY,1989年に記載されている。
【0069】
相同的に遺伝子組み換えされた微生物も作成することができる。この目的のため、本発明により使用される遺伝子または目的のタンパク質をコードする配列であって、必要に応じて、少なくとも1個のアミノ酸の削除、アミノ酸の付加またはアミノ酸の置換が、例えば機能的崩壊した配列(ノックアウトベクター)を修飾するために導入された配列の少なくとも1部分を含むベクターが作製される。導入された配列は、例えば、関連微生物からの相同体(homolog)であっても良く、または哺乳類、酵母または昆虫資源から得られるものでも良い。その代わりに、相同的遺伝子組み換えに使用されるベクターは、内在性遺伝子が相同的遺伝子組み換えの場合に変異されるか、または改変され、それでもその遺伝子が機能的蛋白質をコードするような方法で設計されても良い(例えば、上流の制御領域が内在性タンパク質の発現がそれにより変化されるような方法で改変されても良い)。本発明により使用される遺伝子の改変される部分は相同的遺伝子組み換えベクター中にある。相同的遺伝子組み換えに適切なベクターの構築は、例えば、Thomas,K.R.およびCapecchi,M.R.(1987年)Cell 51巻、503頁に記載されている。
【0070】
本発明により使用される核酸または核酸コンストラクトに適切な組み換え宿主生物は原則として全ての原核または真核生物が使用できる。細菌、カビ、または酵母のような微生物を宿主生物として使用することが有利である。グラム陽性またはグラム陰性細菌、好ましくはエンテロバクテリア科、シュードモナス科、リゾビウム科、ストレプトマイセス科またはノカルジア科であり、特に好ましくは、細菌の属として、Esherichia属、Pseudomonas属、Streptomyces属、Nocardia属、Burkholderia属、Salmonera属、Agrobacterium属またはRhodococcus属を使用することが有利である。
【0071】
融合タンパク質の製造方法に使用される生物は宿主生物に応じて、当業者に知られた方法で生育または培養される。微生物の場合は、通常は糖類の形態の炭素源、通常は酵母エキスのような有機窒素源または硫酸アンモニウムのような塩の形態の窒素源、鉄塩、マンガン塩およびマグネシウム塩のような微量元素、および必要に応じてビタミン類を含む液体培地にて0℃〜100℃、好ましくは10℃〜60℃の温度で、酸素を供給しながら培養するのが通常である。これに関連して、栄養培地のpHは一定の値に保たれても良い、即ち、培養中制御しても、しなくても良い。培養をバッチ法、セミバッチ法または連続的に行っても良い。栄養培地を発酵の開始時に最初に導入するか、またはその後に半連続または連続法で供給しても良い。酵素を実施例に記載される方法により生物から単離しても、または粗抽出液として反応に使用しても良い。
【0072】
本発明により使用されるタンパク質またはその機能的な生理活性のある断片は遺伝子組み換え操作により作製しても良い。タンパク質を生産する微生物の培養、必要に応じて導入されるタンパク質の発現および培養物からのタンパク質の単離によることが適切である。タンパク質はまた必要であればこの方法により工業的スケールで生産しても良い。組み換え微生物既知の方法で培養または発酵しても良い。例えば、細菌はTB培地またはLB培地により、20℃〜40℃の温度、pH6から9で増殖させても良い。適切な培養条件は、例えばT.Manistis、E.F.FritschおよびJ.Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Harbor、NY(1988年)に詳細に記載されている。
【0073】
タンパク質が培養培地へ分泌されない場合、それから細胞を破壊し、既知のタンパク質の単離方法により溶解物から生産物を得る。その細胞は必要に応じて高周波数の超音波処理法、フレンチプレッシャーなどの高圧処理法、浸透圧による溶菌(osmolysis)法、洗剤、溶菌酵素または有機溶剤の作用、ホモジナイザー法または2種以上の上記方法の組合せにより、破壊することができる。
【0074】
タンパク質は分子篩クロマトグラフィ(ゲルろ過)や、Q−Sepharoseクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィおよび疎水性クロマトグラフィの様な既知のクロマトグラフィ法を使用して、および限外ろ過法、結晶化法、塩析法、透析法およびネイティブゲル電気泳動法などのその他の慣例的な方法を使用して精製することができる。適切な方法は例えば、Cooper,F.G.,Biochemishe Arbeitsmethoden,Verlag Walter de Gruyter, Berlin,New York、またはScopes,R.,Protein Purification, Springer Verlag, New York, Heidelberg,Berlinに記載されている。
【0075】
組み換えタンパク質を単離するためには、相補的DNA(cDNA)を特定のヌクレオチド配列により伸長し、それにより例えば精製を簡略化するように目的の改変ポリペプチドまたは融合タンパクをコードするベクター系またはオリゴヌクレオチドを使用することが有利である。この種の適切な修飾の例としては、例えばヘキサ−ヒスチジンアンカー、または抗体により抗原として認識できるエピトープとして知られる修飾法などのアンカーとして作用する「タグ(tags)」がある(例えば、Harlow,EおよびLane,D.,1988年,Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor(N.Y.)Pressに記載されている)。その他の適切な「タグ」には、例えばHA、カルモジュリン−BD、GST、MBD、キチン−BD、ストレプトアビジン−BD−アビ−タグ、フラッグ−タグ、T7などが挙げられる。これらのアンカーはタンパク質を付着するために、高分子充填材であって、例えばクロマトグラフィカラムに重点されたものなどの固体支持体に使用しても良く、またはマイクロタイタープレートまたはその他の支持体に使用しても良い。相当する精製手順は業務用アフィニティタグ供給業者から入手することができる。
【0076】
上記のように精製されたタンパク質は直接、融合タンパク質としてでも、または融合パートナーを開裂および除去した後に、純粋なハイドロフォビンとしてでも使用することができる。
【0077】
融合パートナー部分の除去をする場合は、融合タンパク質においてハイドロフォビン部分および融合パートナー部分の間に潜在的な開裂部位(プロテアーゼの特異的な認識部位)を組み込むことが望ましい。適切な開裂部位には、特に、すでに生命情報工学的な手法により測定された、ハイドロフォビン部分にも、または融合パートナー部分のどちらにも存在しないペプチド配列である。特に、例えばメチオニンのシアン化臭素による開裂または、Xa因子、エンテロキナーゼ開裂、トロンビン、TEV(タバコエッチウイルスプロテアーゼ)開裂を伴うプロテアーゼ媒介による開裂が適切である。
【0078】
配列リストのDNAおよびポリペプチド配列の配列名の指定
【0079】
【表1】

【0080】
多層複合材料
多層複合材料は全く異なる目的、例えば梱包手段(特に合成フィルム)または粘着性製品(self-adhesive articles)(少なくとも支持体および接着層の多層複合材料)に用いられる。
【0081】
多層複合材料は少なくとも2種、好ましくは2〜5種の層を含み、個々の層は、例えば0.01〜0.5mmの厚さを有することができる。個々の層は天然または合成ポリマーあるいは金属で構成されていても良い。具体的には、その層はポリマーフィルム、紙、金属ホイル、金属化ポリマーフィルムなどである。
【0082】
上記ポリペプチドは多層複合材料の隣接する少なくとも2層間の接着促進剤として使用される。好ましくは、少なくとも1層の隣接層は天然または合成ポリマーの層である。適切なポリマーは具体的にはポリエステル類の様な重縮合体、ポリウレタン類の様な付加重合体、ポリアミド類、ポリカーボネート類またはポリフェニレンエーテル類またはポリフェニレン硫化物またはエチレン様の不飽和化合物の遊離ラジカルまたはイオン重合により得られる重合体(遊離ラジカルポリマーと略称する)である。そのような遊離ラジカルポリマーは、好ましくは少なくとも60質量%、さらに好ましくは少なくとも80質量%の、C1〜C20アルキル(メタ)アクリレート類、20個以下の炭素原子を含むカルボン酸のビニルエステル類、炭素原子20個以下のビニル芳香族化合物、エチレン様の不飽和ニトリル類、ハロゲン化ビニル、1〜10個の炭素原子から成るアルコールのビニルエーテル、2〜8個の炭素原子および1個または2個の二重結合を有する脂肪族炭化水素、特にエチレンおよびプロピレンから選択される「メインモノマー(main monomers)」から構成される。
【0083】
本発明のポリペプチドは特に非極性ポリマーの接着促進剤として適切であり、従って、少なくとも1層の隣接層は非極性ポリマーで構成されるのが好ましい。
【0084】
ポリマーの極性は空気中(21℃)での表面張力により測定する。表面張力が低いほど、ポリマーはより非極性である。
【0085】
従って、少なくとも1層の隣接層は50mN/m(ミリニュートン/メートル)未満、特に40mN/m未満の表面張力を有する非極性ポリマーで構成されるのが好ましい。この種の非極性ポリマーの例として、ポリアミド66(42.5mN/m)、ポリスチレン(43.5mN/m)、PVC(38.4mN/m)、ポリエチレン(36.1mN/m)、ポリプロピレン(29mN/m)またはポリテトラフルオロエタン(22・5mN/m)が挙げられる。
【0086】
特に好ましくは、両方の隣接層がそのような非極性ポリマーで構成されることである。
【0087】
接着促進剤のために必要とされるポリペプチドの量は通常は0.01〜1000mg/m2(ミリグラム/平方メーター)、特に0.01〜100mg/m2およびさらに好ましくは0.1〜10mg/m2である。
【0088】
ポリペプチドは2層の隣接層のどちらか一方に塗布しても良く、およびその代りに、両方の層が既に作られている場合、両方の層に塗布しても良い。
【0089】
ポリペプチドは水溶液の形態が好ましく、溶液のポリペプチド含有量は好ましくは水100質量部に対し0.01〜5質量部である。本発明による使用するため、その溶液は、好ましくは1〜10000μg/ml水、特に10〜1000μg/ml水の濃度に希釈される。
【0090】
従って、塗布工程に続いて、その水分を除去するために、まず乾燥工程が行われる。
【0091】
続いて、2層の隣接層を慣例の方法、例えばラミネート加工により接着する。
【0092】
ポリペプチドは特に1層の隣接層(第1層)に塗布することができ、それから、他方の隣接層(第2層)は接着促進剤が施された第1層へポリマー分散液、ポリマー溶液または無溶媒のポリマーを塗布し、続くフィルム形成および/または熱または光化学硬化することで作製することができる。この目的のために、そのポリマーは、具体的には水分散液または溶液、特に好ましくは、乳剤(emulsion)ポリマー、好ましくは上記の遊離ラジカルポリマーのいずれかの水分散液の形態である。ポリマーが塗布された後、必要に応じて、乾燥工程が行われる。
【0093】
コーティングされた基材
基材は全く別の目的でコーティングされる。具体的には装飾的コーティングまたは保護コーティング(総称:コーティング)または他の粘着性コーティング(粘着性を与えるためにそのような基材自体に塗布することができ、または、例えば粘着性製品(ラベルまたは粘着テープ)の形態でその基材に接着することができる)がされることを言う。
【0094】
基材または基材の表面はどのような物質で構成されていても良い。同様に、コーティングまたはコーティングの基材に面した表面もどのような物質で構成されていても良い。
【0095】
好ましくは、基材表面またはコーティングまたはコーティングの基材に面した表面は天然または合成ポリマーから構成される。
【0096】
適切なポリマーは、具体的にはポリエステル類の様な重縮合体、ポリウレタン類の様な付加重合体、ポリアミド類、ポリカーボネート類または
適切なポリマーは具体的にはポリエステル類の様な重縮合体、ポリウレタン類の様な付加重合体、ポリアミド類、ポリカーボネート類またはポリフェニレンエーテル類またはポリフェニレン硫化物またはエチレン様の不飽和化合物の遊離ラジカルまたはイオン重合により得られる重合体(遊離ラジカルポリマーと略称する)である。
【0097】
遊離ラジカルポリマーの構造およびそれらのメインモノマーの含有量に関しては上記の説明が適用される。
【0098】
本発明のポリペプチドは特に非極性ポリマー用の接着促進剤に適しており、従って、少なくとも基材表面またはコーティングの基材に面した表面は非極性ポリマーで構成される。
【0099】
極性の指標としての接触角に関しては、上記の説明が同様に適用される。
【0100】
基材表面またはコーティングの基材に面した表面の両方がそのような非極性ポリマーで構成されるのが特に好ましい。
【0101】
接触促進剤に必要なポリペプチドの量は上記に示した量に相当する。
【0102】
ポリペプチドは基材表面、コーティングの基材に面した表面、またはその両方へ塗布しても良い。コーティングの基材に面した表面へ塗布は、そのコーティングが前もって作成されている場合、即ち単層フィルムまたは多層複合材料(上記参照)の場合はその基材に塗布することができる。
【0103】
好ましくは、ポリペプチドは水溶液の形態であり、その溶液のポリペプチド含有量は上記に示した通りである。
【0104】
従って、塗布工程の後、その水分を除去するため、まず乾燥工程を行うことができる。
【0105】
コーティングは慣例の方法、例えばフィルムまたは多層複合材料をラミネート加工するなどの方法で基材に施しても良い。
【0106】
特に、コーティングはポリマー分散液、ポリマー溶液または無溶媒のポリマーを接着促進剤が施された基材に面した表面に塗布し、続くフィルム形成および/または熱または光化学硬化することで作製することができる。この目的のために、そのポリマーは、具体的には水分散液または溶液、特に好ましくは、乳剤ポリマー、好ましくは上記の遊離ラジカルポリマーのいずれかの水分散液の形態である。ポリマーが塗布された後、必要に応じて、乾燥工程が行われる。
【0107】
本発明の多層複合材料およびコーティングされた基材は強度が顕著に増加している。接着促進剤としてポリペプチドを使用することにより、基材に対するコーティングの接着性はより強力になり、多層複合材料の個々の層のもう一方に対する接着性は優秀である。
【0108】
本発明のさらに好ましい実施形態において、基材は金属である。原則として、いずれの金属でも良い。例えば、鉄、鋼鉄、亜鉛、錫、アルミニウム、銅およびそれらの金属およびその他の金属との合金が含まれる。それらは、具体的には鋼鉄、亜鉛メッキ鋼鉄、亜鉛合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金でも良い。特に好ましくは、亜鉛または亜鉛合金またはそれを伴う基材、例えば、亜鉛メッキ鋼鉄(galvanized steel)のような基材である。
【0109】
亜鉛またはアルミニウム合金は当業者に知られている。当業者はその型および合金構成材の含有量を所望の適用目的に応じて選択する。代表的な亜鉛合金の構成材には、特にアルミニウム、鉛、ケイ素、マグネシウム、錫、銅またはカドミウムが含まれる。代表的なアルミニウム合金の構成材には、特にマグネシウム、マンガン、ケイ素、亜鉛、クロム、ジルコニウム、銅またはチタンが含まれる。その合金はまた、概ね同量のアルミニウムおよび亜鉛を含むアルミニウム/亜鉛合金でも良い。このような合金でコーティングされた鋼鉄は市販されている。
【0110】
金属はどのような形状でも良いが、金属ホイル、金属ストリップ(strips)または金属シートの形状が好ましい。金属はまた、金属様の表面を有する複合材料でも良い。例えば、ポリマーフィルムおよび金属の複合材料でも良い。
【0111】
金属様の表面は、接着促進剤として本発明により使用されるポリペプチド、好ましくはハイドロフォビンでコーティングされる。これはそのポリペプチドの水溶液を使用して行っても良い。コーティング工程の詳細は既に上記に示している。
【0112】
代表的な金属表面のコーティング用の塗料には、少なくとも1種の結合剤(dinder)および架橋性 (crosslinkable) 成分が含まれる。架橋性成分は結合剤に加えて使用される架橋剤でも良く、または結合剤に連結する架橋性の基でも良い。結合剤もまた、架橋性の基でも良く、架橋剤が追加的に使用されても良い。この場合、種々の組合せを考えることができる。例えば、結合剤および架橋剤をそれぞれ別々に使用しても良い。この場合、結合剤には、架橋剤の反応性官能基と相補的に反応する反応性官能基が含まれる。別の方法としては、「それら自身の」その種の官能基、または同一のポリマーにおける相補的な反応性官能基との架橋反応を起こすことができる反応性官能基を含む自己架橋結合剤がある。架橋剤が専ら、それら自身と反応する可能性もある。
【0113】
適切な結合剤には(メタ)アクリレート(コ)ポリマー類、特に、部分的に加水分解されたポリビニルエステル類、ポリエステル類、アルキド樹脂類、ポリラクトン類、ポリカーボネート類、ポリエーテル類、エポキシド樹脂アミン付加物、ポリ尿素類、ポリアミド類、ポリイミド類またはポリウレタン類が含まれる。当然、種々のポリマーの混合物であって、望ましくない影響を生じない混合物も使用することができる。
【0114】
架橋性成分は熱架橋性官能基または光化学架橋性官能基を有することができる。適切な熱架橋剤の例としては、エポキシド、メラミンまたはブロック化イソシアナートに基づいた架橋剤がある。光化学架橋性の適切な架橋剤としては、特に、多数のエチレン様の不飽和官能基を有する化合物がある。
【0115】
本発明によるポリペプチド、好ましくはハイドロフォビンの使用方法は、基材の塗装の接着を有利に改善する。また、耐食性試験において変形(creep)に対する塗装層の抵抗性が改善される。
【0116】
本発明を以下の実施例によって、より詳細に説明する。
【0117】
パートA
ハイドロフォビンの作製
【実施例1】
【0118】
yaad−His6/yaaE−His6のクローニングの予備実験
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をオリゴヌクレオチドHal570およびHal571(Hal572/Hal573)を用いて行った。鋳型DNAはBacillus subtilis細菌のゲノムのDNAを使用した。得られたPCR断片はBacillus subtilisのyaaD/yaaE遺伝子およびそれらの末端でいずれの場合も、それぞれNcolおよびBglll制限酵素の開裂部位のコード配列を含んでいた。PCR断片を精製し、制限エンドヌクレアーゼNcolおよびBglllで切断した。このDNA断片を挿入物として使用し、予め制限エンドヌクレアーゼで直鎖化した、ベクターpQE60(Qiagen社)にクローニングした。上記により得られたベクター、pQE60YAAD#2/pQE60YaaE#5はそれぞれ、YAAD::HIS6およびYAAE::HIS6から成るタンパク質の発現に使用される。
【0119】
【表2】

【実施例2】
【0120】
yaadハイドロフォビンDewA−His6のクローニング
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をオリゴヌクレオチドKaM416およびKaM417を用いて行った。鋳型DNAはAspergillus nidulansカビのゲノムDNAを使用した。得られたPCR断片はハイドロフォビン遺伝子dewAおよびN末端のXa因子プロテアイナーゼ開裂部位のコード配列を含んでいた。PCR断片を精製し、制限エンドヌクレアーゼBamHlで切断した。このDNA断片を挿入物として使用し、あらかじめ制限エンドヌクレアーゼBglllで直鎖化した、ベクターpQE60YAAD#2にクローニングした。
【0121】
上記により得られたベクター#508はYAAD::Xa::dewA::HIS6から成るタンパク質の発現に使用される。
【0122】
【表3】

【実施例3】
【0123】
yaadハイドロフォビンRodA−His6のクローニング
プラスミド#513をプラスミド#508と同様に、オリゴヌクレオチドKaM434およびKaM435を使用してクローニングした。
【0124】
【表4】

【実施例4】
【0125】
yaadハイドロフォビンBASF1−His6のクローニング
プラスミド#507をプラスミド#508と同様に、オリゴヌクレオチドKaM417およびKaM418を使用してクローニングした。鋳型DNAには人工的に合成したDNA配列であるハイドロフォビンBASF1(別表参照)を用いた。
【0126】
【表5】

【実施例5】
【0127】
yaadハイドロフォビンBASF2−His6のクローニング
プラスミド#506をプラスミド#508と同様に、オリゴヌクレオチドKaM417およびKaM418を使用してクローニングした。鋳型DNAは人工的に合成したDNA配列であるハイドロフォビンBASF2(別表参照)を用いた。
【0128】
【表6】

【実施例6】
【0129】
yaadハイドロフォビンSC3−His6のクローニング
プラスミド#526をプラスミド#508と同様に、オリゴヌクレオチドKaM464およびKaM465を使用してクローニングした。
【0130】
鋳型DNAはスエヒロタケ(Schyzophyllum commune)の相補的DNA(別表参照)を用いた。
【0131】
【表7】

【実施例7】
【0132】
組み換えE.coli:yaadハイドロフォビンDewA−His6株の培養
yaadハイドロフォビンDewA−His6を発現するE.coli株を15mlグライナー試験管中の3mlLB液体培地に接種した。37℃、200rpmで8時間振とう培養した。それぞれの場合に2本のバッフル付き1Lエルレンマイヤーフラスコ中の250mlLB培地(+100μg/mlアンピシリン)に前培養の培養液1mlを接種し、37℃、180rpmで9時間振とう培養した。20Lファーメンター中の13.5LのLB培地(+100μg/mlアンピシリン)に前培養(水に対して測定したOD600nm1:10)の0.5Lを接種した。140mlの100mMIPTGをOD600nmが〜3.5の時点で添加した。3時間後、ファーメンターを10℃に冷却し、培養液を遠心分離により除去した。細胞沈殿物を次の精製工程で使用する。
【実施例8】
【0133】
組み換えハイドロフォビン融合タンパク質の精製
(C−末端His6タグをプロセッシングするハイドロフォビン融合タンパク質の精製)
100gの細胞沈殿物(100〜500mgのハイドロフォビン含有)を50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)にて総容量で200mlになるようにして、再懸濁した。懸濁液はUltraturrax typeT25(Janke and Kunkel;IKA−Labortechnik社製)で10分間処理し、次いで核酸を分解する目的で、500単位のベンゾナーゼ(Merck,Darmstadt社;オーダーNo.1.01697.0001)で室温にて1時間反応した。細胞の破壊に先立ち、ガラスカ−トリッジ(P1)を使用してろ過を行った。細胞の破壊および残存したゲノムのDNAをせん断する目的で、1500barで高圧ホモジナイザー(Microfluidizer M−110EH;Microfluidizer社)で2回処理した。ホモジネートを遠心分離(Sovall RC−5B,GSAローター,250ml遠心ビーカー、4℃、60分、12000rpm、23000g)し、上清を氷冷し、沈殿物は100mlリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)に再懸濁した。遠心分離および再懸濁を3回繰り返し、3回目では1%SDSを含むリン酸緩衝液を用いた。再懸濁後、溶液を1時間攪拌し、続いて最後の遠心分離(Sovall RC−5B,GSAローター,250ml遠心ビーカー、4℃、60分、12000rpm、23000g)をした。SDS−PAGE分析によると、ハイドロフォビンは最後の遠心分離後の上清に存在している(図1)。本実験はハイドロフォビンがE.coliの細胞内におそらく封入体(inclision bodies)の形態で存在していることを示している。50mlのハイドロフォビンを含有する上清を50mMTris−Cl緩衝液(pH8.0)で平衡化した50mlのnickel−Sepharose High Performance17−5268−02カラム(Amersham社)に掛けた。カラムを50mMTris−Cl緩衝液(pH8.0)で洗浄し、続いて200mMイミダゾールを含む50mMTris−Cl緩衝液で溶出した。イミダゾールを除く目的で、溶液を50mMTris−Cl緩衝液(pH8.0)で透析した。
【0134】
図1は作製されたハイドロフォビンの精製を示す。
【0135】
レーン1: nickel−Sepharoseカラムに掛けた溶液(1:10希釈)
レーン2:透過液=洗浄工程の溶出液
レーン3〜5:溶出画分のOD280nm検出ピーク
図1のハイドロフォビンは分子量約53kDを有する。何本かのより小さい分子量のバンドはハイドロフォビンの分解産物を示す。
【実施例9】
【0136】
性能試験;ガラス状の水滴の接触角を変化することによるハイドロフォビンの特性解析
基材:
ガラス(窓ガラス,Suddeutshe Glas,Mannheim,Germany):
ハイドロフォビン濃縮物:100μg/ml、
50mM酢酸ナトリウム(pH4.0)+0.1質量%Tween20中でガラススライドを1晩(温度80℃)インキュベートし、
続いて、ハイドロフォビンコーティングされたガラススライドを蒸留水中で洗浄し、
続いて1質量%SDS水溶液中で80℃、10分間インキュベートし、
蒸留水で洗浄した。
【0137】
そのサンプルを室温で空気乾燥し、室温で5μlの水滴の接触角(度数)を測定する。
【0138】
接触角の測定はDataphysics Contact Angle System OCA 15+、Software SCA20.2.0(2002年11月)により測定した。測定はメーカー使用説明書に従って行った。
【0139】
未処理のガラスは接触角が30±5°であり、実施例8の機能的なハイドロフォビン(yaad−dewA−His6)によりコーティングしたものは接触角が75±5°であった。
【0140】
パートB) 接着促進剤としてのポリペプチドの使用
【実施例10】
【0141】
ポリエチレン基材
使用材料:
使用溶液:
実施例8により作製された融合タンパク質、yaad−Xa−dewA−his(SEQ ID NO:19)の水溶液を性能試験に使用した。ハイドロフォビン溶液の濃度は100μg/ml(0.01質量%)であった。
【0142】
基材:ポリエチレンの成型品(小プレート)。
【0143】
コーティング:
ポリエステルフィルムをAcronal A 240(市販、感圧接着剤用の水性ポリアクリル酸分散液(BASF社))でコーティングし、乾燥し、2.5cm幅のストリップに切断した。得られた接着用ストリップをポリエチレンプレートのコーティングに使用した。
【0144】
手順:
ポリペプチド溶液をポリエチレンプレートに塗布し、乾燥した(前処理ポリエチレンプレート)。
【0145】
続いて、接着用ストリップを前処理、および比較として未処理のポリエチレンプレートに接着し、接着用ストリップを剥がすために必要な力を測定した(剥離強度N)。
【0146】
接着促進剤としてポリペプチドを用いた場合の剥離強度:4.7N
接着促進剤としてポリペプチドを用いない場合の剥離強度:2.6N
【実施例11】
【0147】
金属基材
実施例8により作製された融合タンパク質、yaad−Xa−dewA−his(SEQ ID NO:19)の水溶液を性能試験に使用した。ハイドロフォビン溶液の濃度は100μg/ml(0.01質量%)であった。pHの情報は不明であるが、溶液のpHはさらなる緩衝液を加えなければ、8〜8.5であろう。
【0148】
以下の試験シートを金属基材として使用した。
【0149】
【表8】

【0150】
使用された塗料はアルキド・メラミンに基づく焼きつけ上塗り塗料であった。(これは十分に塗料の特性を示すか。)
実験の説明
アルミニウムシートをアルカリ性洗浄浸漬槽(60g/リットル NaOH、60℃、1分間)に漬け、蒸留水ですすいだ。次いで、シートを酸性スケール除去槽(硝酸/水(1:1)、室温、15秒間)でスケール除去し、蒸留水ですすぎ、加圧空気で乾かした。
【0151】
亜鉛メッキ鋼鉄および鋼鉄のシートは熱水ですすぎ、続いて蒸留水ですすぎ、加圧空気で乾かした。
【0152】
シートを上記の溶液に、それぞれ室温で浸すことにより、ハイドロフォビンでコーティングした。アルミニウムシートの場合は16時間浸し、亜鉛メッキ鋼鉄および鋼鉄の場合は4時間浸した。続いて、そのシートを留水ですすぎ、加圧空気で乾かした。
【0153】
接着促進剤としてハイドロフォビンコーティングをした後、シートをプラスチックボール中のアルキド・メラミンに基づく焼きつけ上塗り塗料に15秒間浸し、空気中で約1時間前乾燥した。続いて、これを190℃、30分間乾燥器で乾燥し、塗料を硬化させた。
【0154】
比較のため、それぞれの場合で、接着促進剤としてハイドロフォビンを使用しない試料を同様に塗装処理した。
【0155】
性能試験
シートの性能はEN ISO 2409(クロスカット試験)、EN ISO 4628−8(クリープ試験)およびDIN 53156(エリクセンカッピング試験)により評価した。
【0156】
クロスカット試験では表面にクロスカットを入れた後、所定の標準法に基づいて塗装面の外観を評価する。これはクロスカットを入れたために塗装が表面から剥がれることの広がりを評価することを伴う。その評価は0〜5等級として、0が最高で5が最低の点数である、既知の方法で行われる。
【0157】
塗装層のクリープ試験はシートの標準腐食試験(塩水噴霧室における暴露(SSDIN 50021))により測定される。アルミニウムシートのクリープは298時間後に評価し、鋼鉄シートは50時間後、および亜鉛メッキ鋼鉄シートは190時間後に評価し、それぞれ、所定の標準に基づいて、0〜5等級として、0が最高で5が最低の点数とした。
【0158】
エリクセンカッピング試験は試料の背面にボールを押し付けること、および窪みを作ることから構成される。その跡における塗装の外観を所定の標準に基づいて評価し、この場合は5が最高で0が最低の点数とする。
【0159】
性能試験の結果を以下にまとめる。
【0160】
実施例11−1:鋼鉄基材
【0161】
【表9】

【0162】
接着促進剤としてハイドロフォビンを使用することによって、クリープ試験についてはハイドロフォビンを使用していない試料と比較して変化はない(5等級)。クロスカット試験(より低い値)およびエリクセンカッピング試験(より高い値)についてはどちらの場合も、より良好な結果を示す。
【0163】
実施例11−2:亜鉛メッキ鋼鉄基材
【0164】
【表10】

【0165】
亜鉛メッキ鋼鉄に接着促進剤としてハイドロフォビンを使用することによって、3試験の全ての場合において、接着促進剤を使用しない場合よりも良好な結果(クロスカット試験およびクリープ試験ではより低い値、エリクセンカッピング試験ではより高い値)を示す。最も明確な改善は腐食防止の高い効果(接着促進剤を使用しない場合で4等級に対して、接着促進剤を使用した場合では1等級)において認められる。
【0166】
実施例11−3:アルミニウム基材
【0167】
【表11】

【0168】
アルミニウム基材の場合、クロスカット試験およびクリープ試験は接着促進剤を使用しない場合でさえも良好な結果である。エリクセンカッピング試験ではわずかながら改善が認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層複合材料またはコーティングされた基材であって、複合材料の隣接する少なくとも2層間の、またはコーティングおよび基材間の接着促進剤として、少なくとも40質量%がペプチド結合により連結したα−アミノ酸(以下、ポリペプチドと略称する)から成る化合物を含むことを特徴とする多層複合材料またはコーティングされた基材。
【請求項2】
ポリペプチドの少なくとも80質量%がα−アミノ酸から成る請求項1に記載の多層複合材料またはコーティングされた基材。
【請求項3】
ポリペプチドが構成成分としてシステインを含む請求項1または2に記載の多層複合材料またはコーティングされた基材。
【請求項4】
ポリペプチドが少なくとも0.5質量%のシステインから成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層複合材料またはコーティングされた基材。
【請求項5】
ポリペプチドが式、
【化1】

[上記式中、Xは20種の天然アミノ酸(Phe、Leu、Ser、Tyr、Cys、Trp、Pro、His、Gln、Arg、Ile、Met、Thr、Asn、Lys、Val、Ala、Asp、Glu、Gly)を表し、各々のXは同一または異なっても良く、Xの隣の指数はそれぞれの場合のアミノ酸残基数を示しており、Cはシステイン、アラニン、セリン、グリシン、メチオニンまたはスレオニンを表し、ただし、Cで表されるアミノ酸の少なくとも4個はシステインであり、指数nおよびmは相互に独立して、0〜500の範囲、好ましくは15〜300の範囲の自然数である。]
のハイドロフォビンである請求項1または2に記載の多層複合材料またはコーティングされた基材。
【請求項6】
隣接層の少なくとも1層が天然または合成ポリマーから成る請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層複合材料。
【請求項7】
隣接層の少なくとも1層が50mN/m未満の表面張力を有する(非極性の)合成ポリマーから成る請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層複合材料。
【請求項8】
隣接層の両方の層が天然または合成ポリマーから成る請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層複合材料。
【請求項9】
1層が金属または合金から成る請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層複合材料またはコーティングされた基材。
【請求項10】
隣接層が塗料層である請求項9に記載の多層複合材料。
【請求項11】
金属が鋼鉄、亜鉛メッキ鋼鉄、亜鉛合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成る群から選択されるか、あるいはアルミニウムまたはアルミニウム合金である請求項9または10に記載の多層複合材料。
【請求項12】
多層複合材料を製造する方法であって、
ポリペプチドを隣接層の1層に塗布し、
ポリペプチドを水溶液の形態で塗布する場合に、必要に応じて乾燥工程を行い、
続いて、その上にもう一方の隣接層をラミネート加工するか、あるいはもう一方の隣接層を天然または合成ポリマーのフィルムを形成することにより設けることを特徴とする方法。
【請求項13】
もう一方の隣接層の天然または合成ポリマーが水溶液または分散液の形態であり、フィルム形成された後に乾燥工程を行う請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基材表面またはコーティングの基材に面した表面が天然または合成ポリマーから成る請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティングされた基材。
【請求項15】
基材表面またはコーティングの基材に面した表面が50mN/m未満の表面張力を有する(非極性の)合成ポリマーから成る請求項1〜5および14のいずれか1項に記載のコーティングされた基材。
【請求項16】
基材表面またはコーティングの基材に面した表面が天然または合成ポリマーから成る請求項1〜5、14および15のいずれか1項に記載のコーティングされた基材。
【請求項17】
請求項1〜5および14〜16のいずれか1項に記載のコーティングされた基材を製造する方法であって、
ポリペプチドを基材表面またはコーティングの基材に面した表面に塗布し、
ポリペプチドを水溶液の形態で塗布する場合に、必要に応じて乾燥工程を行い、
続いて、コーティングを基材に施すことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載のコーティングされた基材を製造する方法であって、
ポリペプチドを基材表面に塗布し、
ポリペプチドを水溶液の形態で塗布する場合に、必要に応じて乾燥工程を行い、
続いてコーティングを基材表面に天然または合成ポリマーのフィルムを形成することにより設けることを特徴とする方法。
【請求項19】
天然または合成ポリマーが水溶液または分散液の形態であり、フィルム形成された後に乾燥工程を行う請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水溶液または分散液が乳剤ポリマーの水性分散液である請求項13または19に記載の方法。
【請求項21】
多層複合材料の隣接する少なくとも2層間の、またはコーティングされた基材のコーティングおよび基材間の接着促進剤として、少なくとも40質量%がペプチド結合により連結したα−アミノ酸(ポリペプチドと略称する)から成る化合物を使用する方法。

【公表番号】特表2008−537701(P2008−537701A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503496(P2008−503496)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061085
【国際公開番号】WO2006/103225
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】