説明

接着剤接合されたエンジンおよびトランスミッションの部品

一実施形態においては、本発明は部品をエンジンまたはトランスミッションに接合するシステムおよび方法であって、エンジンまたはトランスミッションの部品取り付け部分または部位に、硬化剤と反応できる2つ以上の反応基を有するポリチオールエーテルと該ポリチオールエーテル用の硬化剤と含む接着剤を接触させ、その後に上記部品をエンジンまたはトランスミッションに接触させて両者間に接着剤を配置させ、そして接着剤を硬化させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよびトランスミッションに接合された部品に関する。望ましい実施形態においては、本発明はバルブカバーが接着剤でシリンダヘッドに接合されている内燃機関用のバルブカバーアセンブリに関する。本発明は、バルブカバーを内燃機関のシリンダヘッドに接合する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車およびトラックのエンジンとトランスミッションのシステムは多数の部品を組み立て成る。内包する流体が汚染されるとエンジンにダメージを与えるようなシステム間の接続部分が多いので、部品同士の組み付けにより部品間の接合部をシールすることが重要である。典型的には部品同士を機械的な固定手段で組み付けてガスケットでシールし、そのうちの幾つかは固定して組み立てられている。代表的なシステムはバルブ列コンポーネントシステムである。典型的には、自動車およびトラックのエンジンのバルブ列コンポーネントはカバーに覆われていて、このカバーは、バルブと内部のコンポーネントとを様々な外来汚染物質から保護し、エンジン内部にエンジンオイルおよび燃焼ガスを収容して適切に廃棄可能とするように設計されている。このカバーは、バルブカバー、ロッカーカバー、カムカバー等と呼ばれている。従来から、これらのバルブカバーは鋼、マグネシウム、アルミニウムなどの金属材料で作製されていた。ところが近年、コストと重量を低減するために、高いアンダーフード温度環境に耐える熱硬化性プラスチック材料または熱可塑性プラスチック材料で作製されてきている(例えばアメリカ合衆国特許第5,492,086号、同第5,375,569号、同第5,746,168号、同第5,363,759号があり、ここで引用したことにより本明細書中に取り込む)。典型的には、エンジンへのバルブカバーの取り付けは、バルブカバーをシリンダヘッドにボルト留めすることにより行なわれる。内部のエンジンコンポーネントを外部環境に対してシールし、エンジンオイルと燃焼ガスを収容するために、バルブカバーとシリンダヘッドとの間にガスケットを介在させている。
【0003】
周知のように、プラスチック材料のなかには高温・高圧に曝されるとクリープ現象を生ずるものがある。そのためバルブカバーとして熱可塑性プラスチック材料を用いることが特に着目され、熱可塑性プラスチックを用いたバルブカバーを所定位置にボルト留めしている。典型的には、機械的なボルト締めを用いるとバルブカバーが圧縮され、ガスケットがクリープの一因となり得る。アメリカ合衆国特許第5,365,901号(ここで引用したことにより本明細書中に取り込む)には、低クリープ材料をフランジとして用い、これをシリンダヘッドにボルト留めし、バルブカバーを機械的または化学的にフランジに固定することが開示されている。
【0004】
従来のバルブカバーの問題点は、バルブカバーをエンジンに取り付けるのは人手で行い、ボルトとネジ付きボルト穴のようなコストのかかる機械的な固定装置を必要とすることである。ネジ付きボルト穴を用いると、機械加工が必要でありコストも嵩む。更に、従来の組み付け手段は、バルブカバーとシリンダヘッドとの間をシールするガスケットが必要である。これにも多大の労力を要する。その上、ガスケットは時間経過に伴いクリープや割れを生じ、そのため漏出が起きてエンジン性能を劣化させ、補修コストがかかる。
【0005】
Jones et al.のアメリカ合衆国特許出願2002−0112684(ここで引用したことにより本明細書中に取り込む)に開示されたバルブカバーは、接着剤でエンジンヘッドに接合されていて、この接着剤は通常の運転条件ではバルブカバーを所定位置に保持するのに十分な強度を持っている(段落0007参照)。望ましいとして開示された接着剤は、高温用エポキシ樹脂、ポリイミド、ハイブリッド・ポリイミド/エポキシ樹脂接着剤、シリコーン、フルオロシリコーン、アルキルボラン由来のアクリル接着剤システム、エポキシノボラック/ニトリル・ゴム接着剤がある(段落0026参照)。
【0006】
バルブカバーをエンジンヘッドに接合する際の問題は、車両の運転条件下で用いるために必要な厳しい要求に適合する接着剤の選定である。長期間の車両寿命に亘って150℃以上の高温で炭化水素に曝されながらバルブカバーを所定位置に保持するのに十分な強度を維持できる接着剤でなくてはならない。加えて、北方地域で冬季の低温下でシール作用を維持するために十分な延性を備えている接着剤でなくてはならない。組み付け後に、エンジンに低圧試験を行なって適切なシールを確認する。シールの必要な部位の1つはバルブカバーとエンジンヘッドとの接続部である。そのため、接着剤に必要とされることは、低圧試験時に漏出を起こさないようにエンジンアセンブリに十分なシールを形成すること、そして試験中にバルブカバーを所定位置に保持することである。
【0007】
必要なのは、自動車のエンジンおよびトランスミッションのシステム内で生じる温度、圧力および多様な化学物質に対処できるように、部品をエンジンまたはトランスミッションに接合するシステムである。必要なのは、高温強度特性と高温での炭化水素耐性とに優れ、広い温度範囲に亘ってバルブカバーとエンジンヘッドとの間の接続部をシールするのに必要な延性に優れた接着剤で、エンジンヘッドに接合されたバルブカバーである。加えて、車両の想定寿命中に所定の性質を維持する接着剤が必要であり、エンジンおよびトランスミッションの部品を所定位置に保持し且つ部品とエンジンまたはトランスミッションとの接続をシールするのに十分な強度および延性を備えた接着剤が必要である。バルブカバーをエンジンヘッドに組み付けた後短時間は低圧試験中にシールを確保するのに十分な強度を備えた接着剤が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、部品をエンジンまたはトランスミッションに接合するシステムおよび方法であって、部品に、または部品の取り付け相手であるエンジンまたはトランスミッションの部位に、硬化剤と反応できる2つ以上の反応基を有するポリチオールエーテルと該ポリチオールエーテル用の硬化剤とを含んで成る接着剤を接触させた後に、該部品を該エンジンまたはトランスミッションと接触させて該接着剤を両者間に配置し、そして該接着剤を硬化させるシステムおよび方法である。本発明の別の実施形態は、バルブカバーアセンブリであって、バルブカバーには内燃機関のシリンダヘッドに取り付け可能な合わせ面があり、この合わせ面の周縁部には接着剤の連続ビードが配置されており、該接着剤は硬化剤と反応できる2つ以上の反応基を有するポリチオールエーテルと該ポリチオールエーテル用の硬化剤とを含んで成る。望ましくは、バルブカバーには、バルブカバーを所定位置に保持することを主機能とするボルト穴が無い。
【0009】
本発明の別の実施形態は、エンジンアセンブリであって、1つ以上のバルブカバーを備えており、望ましくは該バルブカバーには該バルブカバーを保持するためのボルト穴が無く、個々のバルブカバーには合わせ面があって、1つ以上のシリンダヘッドには個々に該バルブカバーの合わせ面に合わせることが可能な合わせ面があり、個々のバルブカバーは上記の合わせ面でシリンダヘッドに接着剤により接合されており、該接着剤は硬化剤と反応できる2つ以上の反応基を有するポリチオールエーテルと該ポリチオールエーテル用の硬化剤とを含んで成る。個々のバルブカバーの合わせ面と接合相手であるシリンダヘッドの合わせ面との間に接着剤の連続層が配置されている。この接着剤の連続層は個々のバルブカバーの合わせ面とシリンダヘッドの合わせ面との間のシールを形成している。
【0010】
本発明の更に別の実施形態は、バルブカバーをシリンダヘッドに接合する方法であって、
a)上記バルブカバーは上記シリンダヘッドの合わせ面と合わせることができる合わせ面を備えており、該バルブカバーまたは該シリンダヘッドの合わせ面の全面に連続した接着剤のビードまたは膜を適用する工程、
b)上記バルブカバーの合わせ面と上記シリンダヘッドの合わせ面とを接触させることにより、上記連続した接着剤のビードまたは膜が該バルブカバーと該シリンダヘッドの合わせ面同士の間に配置されるようにする工程、
c)上記接着剤を硬化させて上記バルブカバーと上記シリンダヘッドの合わせ面同士を永久接合し且つ該接着剤により該バルブカバーと該シリンダヘッドとの間のシールを形成させる工程を含み、
上記接着剤は、硬化剤と反応可能な2つ以上の反応基を有するポリチオールエーテルと、該ポリチオールエーテル用の硬化剤とを含み、かつ、上記適用後に1つ以上の上記バルブカバーを所定位置に保持するのに十分な強度を備えている。
【0011】
本発明は、高価な機械的取り付け手段を必要とせずに、ガスケットを必要とせずに、バルブカバーのような部品の合わせ面もシリンダヘッドのようなエンジンまたはトランスミッションの合わせ面も特別に準備することを必要とせずに、バルブカバーのような部品をエンジンまたはトランスミッションに組み付ける手段を提供する。本発明によれば、エンジン組み立てに要する労力を大幅に低減してエンジンまたはトランスミッションの組み立てが可能となる。また、シールまたは部品を所定位置に保持するためにこれらに圧縮力を負荷することを必要とせずにエンジンまたはトランスミッションの組み立てが可能になる。本発明の接着剤は多様な極限条件下でシールを形成し且つ部品を所定位置に保持する。本発明の接着剤組成物は、低圧試験中にバルブカバーを所定位置に保持し且つアセンブリを耐漏出性にするのに十分なシール作用を発揮するのに十分な適用時グリーン強度(適用時未硬化強度)を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
部品をエンジンまたはトランスミッションに接合するのに有用な接着剤組成物はポリチオールエーテルと該ポリチオールエーテル用の硬化剤とを含む。ポリチオールエーテルは、ポリマーの主鎖として1種以上のチオールエーテルを有し、2つ以上の反応基を含む。この反応基は、架橋剤としてこのポリマーを硬化できる別の化合物と反応できる部分である。チオールエーテルは2つの炭化水素基の間に硫黄原子が配置されている。望ましくは、上記炭化水素基は、アルキレン、シクロアルキレン、またはこれらの混合物である。ポリチオールエーテル系ポリマーは、本発明におけるその機能を損なわない他の官能基を含有しても良い。望ましい上記反応基は、ヒドロキシル基、第1または第2アミノ基、メルカプト基、アクリレート基、イソシアネート基、ビニル基またはこれらの組合せである。より望ましい上記反応基は、ヒドロキシル基、第1または第2アミノ基、メルカプト基またはこれらの組合せである。更に望ましい上記反応基は、メルカプト基である。望ましい一実施形態においては、ポリチオールエーテルは下記式I〜IVのうちの1種に対応する。
【0013】
-[-R-S-CH(CH)-S-)-R-R
B-(-S-(-R-S-CH(CH)-S-]-R-R) II
A-(-[R]-R) III
B-(A-(-[R]-R) IV
Aは、式-R-[-S-(CH)-O-[-R-O-]-(CH)-S-R-]-の構造である。Bは、多官能化剤のz価の残基である。Rは、出現部位毎に独立に、チオール基、ヒドロキシル基、非置換アミン基、1価のラジカルであって少なくとも1つのヒドロキシル基、非置換アミン基で置換したラジカル、または酸触媒の存在下で非反応性の官能基である。Rは2価の部分である。Rは、出現部位毎に独立に、y=0の場合は単結合であり、y=1の場合は‐S-(CH)-[-0-R]-O-である。Rは、y=0の場合は-SHまたは-S-(CH)-O-Rであり、y=1の場合は-CH=CHまたは-(CH-)-S-Rである。Rは、出現部位毎に独立に、2価のC2−6のn-アルキル、C2−6の分岐アルキル、C6−8のシクロアルキルまたはC6−10のアルキルシクロアルキル基または-[(CH)-X]-(CH)-である。RはC1−6のn-アルキルであって非置換のものまたは少なくとも1つの-OH基または-NHR基で置換したものである。Rは、出現部位毎に独立に、HまたはC1−6のn-アルキル基である。Xは、出現部位毎に独立に、O、S、-NR-である。Rは、出現部位毎に独立に、HまたはC1−6のアルキル基である。mは、出現部位毎に独立に、約0〜約10の有理数である。nは、出現部位毎に独立に、約1〜約60の整数である。pは、出現部位毎に独立に、約2〜約6の整数である。qは、出現部位毎に独立に、約1〜約5の整数である。rは、出現部位毎に独立に、約2〜約10の整数である。yは、出現部位毎に独立に、0または1である。zは、出現部位毎に独立に、約3〜約6の整数である。以上の式で既述されたポリマーは、DeMoss et al.のアメリカ合衆国特許第5,959,071号およびZook et al.のアメリカ合衆国特許第6,232,401号に開示されており、ここで引用したことにより本明細書中に取り込む。
【0014】
望ましくは、Rは2価のラジカルであって、C2−6のn-アルキレン基、C3−6の分岐アルキレン基、C6−8のシクロアルキレン基、C6−10のアルキルシクロアルキレン基、-[(CH)-X]-(CH)-基、少なくとも1つのメチレン単位をメチル基で置換した-[(CH)-X]-(CH)-基から成る群から選択される。より望ましくは、Rは-[(CH)-X]-(CH)-基である。望ましくは、RはSHである。望ましくは、Rは水素またはメチル基である。Xは、望ましくはOまたはSであり、最も望ましくはSである。望ましくはpおよびqは等しく、より望ましくは2である。望ましくはy=0である。望ましくはz=3である。
【0015】
望ましくは、ポリチオールエーテルは、硬化により高分子エラストマーを形成するのに十分な当量を有する。この当量は、望ましくは約330以上、より望ましくは約800以上、最も望ましくは約1500以上である。この当量は、望ましくは約10000以下、より望ましくは約5000以下、最も望ましくは約2000以下である。当量は滴定法により求める。
【0016】
望ましくは、ポリチオールエーテルは架橋を促進する公称(理論)官能価を有する。架橋を促進する官能価は、接着剤硬化後に、硬化され架橋されたネットワークの形成を可能とする官能価である。硬化剤の選定によって、ポリチオールエーテルに必要な官能価が大幅に異なる。一般に、硬化剤の官能価が2より大きい場合には、ポリチオールエーテルの官能価は約2以上であってよい。架橋剤の官能価が約2である場合には、ポリチオールエーテルの官能価は2より大であるべきである。望ましくは、ポリチオールエーテルの官能価は約2以上である。ポリチオールエーテルの官能価は、望ましくは約2〜約6であり、より望ましくは約2〜約3、最も望ましくは約2である。接着剤組成物中のポリチオールエーテルの含有量は、本明細書中で規定する望ましい性質を満たす接着剤となるのに十分な量とする。本発明の接着剤組成物は2成分型組成物である。第1成分はポリチオールエーテルであり、第2成分は硬化剤である。望ましくは、接着剤組成物のポリチオールエーテル成分中のポリチオールエーテルの含有量は約60wt%以上であり、より望ましくは約71wt%以上であり、最も望ましくは約75wt%以上である。望ましくは、接着剤組成物のポリチオールエーテル成分中のポリチオールエーテルの含有量は約95wt%以下であり、より望ましくは約85wt%以下であり、最も望ましくは約76wt%以下である。
【0017】
望ましいチオールエーテルは、PRC-Desoto of Glendale California社から商品名PERMAPOL、記号3.1e, RW-3810-70, 5645, 5534等として市販されている。
【0018】
本発明に有用な硬化剤は、ポリチオールエーテル上の反応基と反応する反応部分を有し且つポリチオールエーテルと架橋ポリマーシステムを形成するのに十分な官能価を有する硬化剤を包含する。特に有用な硬化剤は、ヒドロキシル基、メルカプト基、第1アミノ基、第2アミノ基、エポキシ(グリシジルエーテル)基、イソシアネート基、アクリル基、ビニル基のうちの2つ以上の官能基を有する化合物である。望ましい硬化剤は、エポキシ(グリシジルエーテル)基、イソシアネート基、アクリル基、ビニル基のうちの2つ以上の官能基を有する化合物である。より望ましい硬化剤は2つ以上のエポキシ基またはイソシアネート基を有する化合物であり、エポキシ基を有する化合物が最も望ましい。望ましくは、硬化剤の官能価は2より大、より望ましくは2より大で約4以下、最も望ましくは約3〜約4である。望ましいエポキシド化合物はノボラック樹脂(フェノールとホルムアルデヒドのエポキシ化縮合生成物)として知られているポリエポキシドであり、例えば、DEN(登録商標)(Dow Epoxy Novolac)438エポキシ樹脂(DENはThe Dow Chemical Company, Midland Michiganの登録商標である)、DEN(登録商標)439エポキシ樹脂、ARALDITE(登録商標)**ECNエポキシ樹脂およびARALDITE(登録商標)EPNエポキシ樹脂〔例えばARALDITE(登録商標)ECN1273エポキシ樹脂およびARALDITE(登録商標)EPN1180エポキシ樹脂(ARALDITEはVantico Inc.の登録商標である)〕などがある。その他の望ましいエポキシドとして、DER(登録商標)732エポキシ樹脂、DER(登録商標)331エポキシ樹脂およびPERMAPOL(登録商標)***エポキシ樹脂、記号5542、5534がある(***PERMAPOLはPRC-Desoto Inc.の登録商標である)。硬化剤は、本明細書中に記載した望ましい性質を達成するのに十分な量を用いる。接着剤組成物の硬化剤成分中の硬化剤の含有量は、望ましくは約65wt%以上であり、より望ましくは約75wt%以上であり、最も望ましくは約80wt%以上である。望ましくは、接着剤組成物の硬化剤成分中の硬化剤の含有量は約95wt%以下であり、より望ましくは約90wt%以下であり、最も望ましくは約85wt%以下である。
【0019】
一般に、ポリチオールエーテルと硬化剤とは、接着剤の完全硬化を可能とする当量比で接触させる。硬化剤に対するポリチオールエーテルの当量比は、望ましくは1.1:1〜約1:1.1であり、より望ましくは約1.05:1.0〜約1.0:1.05、最も望ましくは約1:1である。
【0020】
望ましくは、接着剤組成物に、接着剤の強度を向上させ且つ未硬化接着剤に望みのレオロジー特性を付与する充填剤を含有させる。未硬化状態の接着剤組成物は、流動性を確保すると共に硬化完了までバルブカバーを所定位置に保持できるように十分な粘度を発揮することが望ましい。より望ましくは、未硬化接着剤がバルブカバーなどのエンジン部品またはトランスミッション部品を所定位置に保持可能であると共にエンジン始動前の低圧試験時にシールを確保できるように、十分高い粘度であることが望ましい。望ましくは、最終的な接着剤の粘度は45ポアズ(4.5N-S/m)以上であり、より望ましくは約80ポアズ(8.0N-S/m)以上、最も望ましくは約10,000ポアズ(1000N-S/m)以上である。望ましくは、最終的な接着剤の粘度は1,000,000ポアズ(100,000N-S/m)以下、より望ましくは500,000ポアズ(50,000N-S/m)以下、最も望ましくは100,000ポアズ(10,000N-S/m)以下である。以上の要件を満たす充填剤であれば用いることができる。特に望ましい充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、タルク(滑石)、マイカ(雲母)、クレー(粘土)、ナノフィラー、ファイバー、ウォラストナイト(珪灰石)、金属粉末、その他の鉱物系充填剤がある。最も望ましい充填剤はカーボンブラックである。望ましいカーボンブラックは不規則な表面構造を持つ。大表面積の充填剤が望ましい。カーボンブラックは、ヨウ素価が約75mg/g以上であることが望ましく、約82mg/g以上であることがより望ましい。望ましくは、ヨウ素価は約95mg/g以下であり、より望ましくは約90mg/g以下である。望ましくは、カーボンブラックは吸油価が約100〜約120g/ccである。望みの目的物を得るのに必要な充填剤の量は、充填剤、ポリチオールエーテル、および硬化剤の選定によって異なる。当業者は個々の選定に応じて相対量を調整できる。充填剤は組成物の一部として存在しても良い。充填剤を用いて接着剤組成物の2成分の片方または両方のレオロジー特性を調整することができる。接着剤組成物のポリチオールエーテル成分中の充填剤の含有量は、望ましくは約5wt%以上、より望ましくは約15wt%以上、最も望ましくは約20wt%以上である。接着剤組成物のポリチオールエーテル成分中の充填剤の含有量は、望ましくは約35wt%以下、より望ましくは約30wt%以下、最も望ましくは約25wt%以下である。接着剤組成物の硬化剤成分中の充填剤の含有量は、望ましくは約5wt%以上、より望ましくは約15wt%以上、最も望ましくは約20wt%以上である。接着剤組成物の硬化剤成分中の充填剤の含有量は、望ましくは約35wt%以下、より望ましくは約30wt%以下、最も望ましくは約25wt%以下である。
【0021】
硬化剤がノボラック樹脂のような高官能価の樹脂である実施形態においては、この高官能価樹脂は固体であるか、非常に高い粘度を有し得る。接着剤組成物のエポキシ樹脂含有成分のような硬化剤中での充填剤の使用を容易にするために、希釈剤または流動化剤を用いて、取り扱い易い粘度にすることができる。望ましくは希釈剤は反応性希釈剤である。反応性希釈剤は、反応して接着剤中に入り込み、影響のある形では接着剤の表面に移動することがない。非反応性希釈剤には、エンジンアセンブリが高温になると移動するものもある。硬化処理条件下で接着剤の成分と反応し得る希釈剤であれば用いることができる。望ましい希釈剤は、2官能価または1官能価のエポキシ樹脂またはその混合物である。低粘度の1官能価または2官能価のエポキシ樹脂はいずれも用いることができる。望ましい一実施形態においては、反応性希釈剤は、エポキシ化ポリオキシアルキレンエーテルのような線形脂肪族エポキシ樹脂であり、例えばThe Dow Chemical Company から市販されているDER(登録商標)732エポキシ樹脂がある。別の実施形態においては、反応性希釈剤は液体ビスフェノール系エポキシ樹脂と1官能価エポキシ樹脂との混合物であり、例えばDER(登録商標)331エポキシ樹脂系ビスフェノールA樹脂とTACTIX(登録商標)123エポキシ樹脂との混合物、ARALDITE(登録商標)GY50エポキシ樹脂とARALDITE(登録商標)LY564との混合物である。望ましい線形2官能価エポキシ樹脂としては、DER(登録商標)732ポリオキシプロピレンエポキシ樹脂、DER(登録商標)736ポリオキシプロピレンエポキシ樹脂、ARALDITE(登録商標)DY3601エポキシ樹脂がある。望ましい1官能価エポキシ樹脂としては、フェニルグリシジルエーテル、クレゾールグリシジルエーテルおよび脂肪族グリシジルエーテルがあり、例えばARALDITE(登録商標)DY023およびARALDITE(登録商標)DY025グリシジルエーテルがある。
【0022】
本発明の2成分型接着剤(2液式接着剤)を取り扱い易くするために、個々の成分はここに規定した粘度要件を満たさなくてはならない。望ましくは、接着剤の各成分の粘度は約1000ポアズ(100N-s/m)以上、望ましくは3000ポアズ(300N-s/m)以上、最も望ましくは約4000ポアズ(400N-s/m)以上である。接着剤の各成分の粘度は、望ましくは約7000ポアズ(700N-s/m)以下、より望ましくは約6000ポアズ(600N-s/m)以下、最も望ましくは約5000ポアズ(500N-s/m)以下である。
【0023】
接着剤は更に、硬化剤によるポリチオールエーテルの硬化のための促進剤を含んでよい。促進剤は、ポリチオールエーテル上の特定の反応基と硬化剤との反応のための促進剤として周知のものであってよい。望ましい一実施形態においては、硬化剤はポリエポキシドであり、促進剤はポリエポキシド含有組成物の室温硬化用として周知の促進剤である。望ましい促進剤は、第1、第2、第3脂肪族アミンおよび芳香族アミンである。より望ましい促進剤は、第1、第2、第3脂肪族アミンである。1つの特に有用な促進剤はDABCO(登録商標)33LV触媒、すなわち33%トリエチレンジアミン・ジプロピレングリコール溶液である。促進剤の使用量は、周囲条件下で接着剤組成物が望みの程度に硬化するのを促進するのに十分な量とする。周囲条件とは、接着剤をバルブカバーに塗布する際の周囲の条件を意味する。接着剤組成物の硬化剤成分中の促進剤の含有量は、望ましくは約0.5wt%以上、より望ましくは約1.0wt%以上、最も望ましくは約1.5wt%以上である。接着剤組成物の硬化剤成分中の促進剤の含有量は、望ましくは約5wt%以下、より望ましくは約4wt%以下、最も望ましくは約2.5wt%以下である。
【0024】
本発明の接着剤は、接着剤組成物として有用な従来の成分、例えば流動化剤、定着剤、UV安定化剤、熱安定化剤、チキソトロープ、インヒビタ等の成分を含有してよい。
【0025】
本明細書中で完全硬化とは、接着剤のラップ剪断強度や伸び等の性質が実質的に変化しなくなった状態を意味する。本発明の接着剤は、完全強化後に150℃の高温エンジンオイル(5W30)中に1000時間保持した後のラップ剪断強度が、ASTM1002規格に準じて150psi(1.03mPa)以上であることが望ましく、約250psi(1.72mPa)以上であることが最も望ましい。接着剤は硬化後の状態で弾性(エラストマー性)を発揮することが望ましい。すなわちASTM D638規格に準ずる大きな破断伸びを示すことである。本発明の接着剤は完全硬化状態での破断伸びが、望ましくは約20%以上、より望ましくは約40%以上、最も望ましくは約50%以上である。本発明の接着剤は、望ましくは約280°F(138℃)まで、より望ましくは約290°F(143℃)まで、最も望ましくは約300°F(150℃)まで、分解も剥離もしない。更に本発明の接着剤は、上記の温度で、内燃機関の内部で到達し得る圧力下において、炭化水素材料、エンジンオイル、塩化カルシウム、ブレーキ液、グリコール冷媒、ウィンド・シールド・ウォッシャ溶媒などに対して耐性を有することが必要である。本発明の接着剤は、バルブカバーやシリンダヘッドの材料として用いられている鋳鉄、アルミニウム、マグネシウムといった材料を接合できなくてはならない。本発明に用いる接着剤は構造用接着剤であり、通常の運転条件下においてバルブカバーを所定位置に保持するのに十分な強度を持つ接着剤である。
【0026】
本発明の接着剤組成物を用いて、エンジン部品同士を接合し、または、他の部品をエンジンその他の動力伝達装置に接合することができる。エンジンに接合する部品を例示すると、オイルパンカバー、タイミングチェーンカバー、バルブカバーなどがある。接着剤を用いて、車両の動力伝達系の流体収容部品、例えばトランスミッション系、トランスアクセル系の部品をシールすることもできる。
【0027】
本明細書中において用語「バルブカバー」には、バルブカバー、カムカバー、ロッカーカバー、シリンダヘッドカバーが含まれる。バルブカバーとは、バルブおよび内燃機関部品を外部による損傷から保護すると共にエンジンオイルおよび排気ガスをエンジン内に収容するためにシリンダヘッド上に配置されるカバーである。本発明に有用なバルブカバーは、所要機能を果たしさえすれば形状も寸法も問わない。バルブカバーの材料は、従来からバルブカバー用として用いられている材料、例えば金属、プラスチック、プラスチック基複合材料のいずれであってもよい。望ましい材料としては、鋼、アルミニウム、マグネシウムがある。プラスチック系材料としては、熱硬化性プラスチックおよび熱可塑性プラスチックがある。プラスチック系材料は、グラフファイバー等の従来の強化材で強化できる。特に有用な熱硬化性プラスチックとしては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などがある。特に望ましい熱可塑性プラスチックとしては、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフタルイミド樹脂、ナイロン6,6およびナイロン6ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、およびこれらの混合物がある。望ましい熱硬化性プラスチックは、ナイロン6,6またはナイロン6とシンジオタクチックポリスチレンの混合物である。例えば本件と同一出願人によるアメリカ合衆国特許出願第60/263954号(出願2001年1月24日、名称「特性向上した強靭化ポリマー混合物」、公開WO02/059197)に開示されており、ここで引用したことにより本明細書中に取り込む。グラスファイバー、鉱物、耐衝撃性改良剤などの従来の添加剤を上記樹脂に含有させても良い。特性とコストとのバランスの観点から望ましい熱硬化性プラスチックは、ナイロン6,6およびナイロン6ポリアミド樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂およびこれらの混合物である。バルブカバー作製用として有用な材料としては、プラスチック材料は一般に金属よりも軽量であると共に金属よりも設計上のフレキシビリティが大きいので、望ましい材料である。
【0028】
バルブカバーはその機能を発揮するのに適していればどのように設計しても良い。本発明に有用なバルブカバーは、シリンダヘッドの合わせ面と合わせることができる合わせ面を持っていて、接着剤によって両合わせ面間に密着性のシールが形成できるようになっている。合わせ面はこれに適していればどのように設計しても良い。例えば、両方の合わせ面の全面が平坦であってもよく、両合わせ面でラップジョイント、スカーフジョイント、タングジョイントなどを形成しても良い。
【0029】
本発明の一実施形態においては、合わせ面上に連続した接着剤のビードまたは膜を配置する。本明細書において連続したビードまたは膜とは、合わせ面の周縁部に沿って配置された接着剤のビードまたは膜であって、この接着剤のビードまたは膜は始端と終端が接続している。この連続接着剤ビードまたは連続接着剤膜は、硬化によりバルブカバーとシリンダヘッドとの間に気密かつ液密の密着性シールを形成することができる。この機能があるため、バルブカバーとシリンダヘッドとの間のシール手段としてガスケットの代わりに接着剤のビードまたは膜を用いることができる。接着剤を塗布するバルブカバー部位は、シリンダヘッドと接触させる位置の直近部位でもよいし、該接触位置から離れた部位でもよい。ここで「離れた」は、部位と時刻の一方または両方であってよい。
【0030】
一実施形態において、バルブカバーに一体式機械的締結手段を設けて、接着剤が硬化するまでバルブカバーをシリンダヘッドの所定位置に保持できるようにしてもよい。ここで一体式機械的締結手段とは、接着剤が硬化する比較的短時間の間、バルブカバーとシリンダヘッドを一緒に保持する単純な手段を意味する。この手段は、エンジンの運転中に上記両者を保持するようには設計されていない。一体式とは、締結手段がバルブカバーおよびシリンダヘッドの一方または両方の一部分を構成することを意味する。このような締結手段を例示すると、一体式のスプリングクリップ、スナップ式機構、ネジ、ボルトなどである。この締結手段は、バルブカバーとシリンダヘッドとの界面に沿って特定の位置のみに配置しても良いし、バルブカバー/シリンダヘッド界面全体に配置しても良い。望ましい実施形態においては、機械的締結手段はスナップ式手段である。望ましくは機械的締結手段はバルブカバーおよびシリンダヘッドの内側部分に配置する。ここで内側部分とはエンジンおよびバルブカバーの内側である。その利点は、締結手段がエンジンの外側から見えないことである。別の実施形態においては、バルブカバーは、合わせ面から突起した脚または突起を備えていて、この脚または突起がバルブカバーを合わせ面に沿ってシリンダヘッドとの適正な関係に案内かつ保持する。シリンダヘッドに合わせ窪みまたは合わせ溝を設け、これと上記の脚または突起との協働によりバルブカバーとシリンダヘッドとを適正に位置合わせするようにしてもよい。別の実施形態においては、1個または複数個のボルトとボルト穴をバルブカバーに設けて、取り付け以外の目的、例えば位置合わせのためや他の部品をバルブカバーに取り付けるために用いるようにしてもよい。このボルトまたはネジには、シリンダヘッド内に合わせ雌ネジ付き容器があっても良い。上記のボルトまたはネジの主機能は周辺部品をバルブカバーに取り付けることである。
【0031】
別の実施形態において本発明は、バルブカバーとシリンダヘッドとの間に配置した接着剤で上記のバルブカバーをシリンダヘッドに接合して成るエンジンアセンブリである。接着剤は連続したビード状または膜状であってバルブカバーとシリンダヘッドとの接続部全体に亘ってシールを形成する。このエンジンアセンブリは、接着剤接合とプラスチック製バルブカバーとを用いたことにより、他の部品および機能をこのバルブカバーおよびエンジンアセンブリに取り込むなどの多機能様式でバルブカバーを用いることができる。
【0032】
エンジンアセンブリの作製に当っては、通常の仕方で接着剤を合わせ面に接触させて連続ビードまたは連続膜を形成することによりバルブカバーまたはシリンダヘッドに接着剤を適用する。接着剤を表面に適用する方法は、塗布、押出、刷毛塗りなどでよい。望ましくは接着剤をバルブカバーの合わせ面に適用する。望ましい一実施形態においては、接着剤はバルブカバーの合わせ面に沿って連続したビードまたは膜として適用する。接着剤の適用は、バルブカバーとシリンダヘッドとを接触させる直前に行ってもよいし、バルブカバーとシリンダヘッドとの接合部位と離れた部位に行なってもよいし、接合作業より早期に行なってもよい。バルブカバーとシリンダヘッドとを接触させる直前に接着剤を適用する場合には、前述の性能基準に合致すればどのような接着剤を用いてもよい。接着剤の適用を離れた場所または離れた時刻に行なう場合には、適宜に必要時硬化型(cure-on-demand)の接着剤を用いることができる。必要時硬化型の接着剤は、条件を付与されると硬化してバルブカバーとシリンダヘッドとを接合し且つ両者間をシールする。上記の条件付与は、シリンダヘッドとバルブカバーとを接触させる前でもよいし後でもよい。上記のうちどの操作を何時行うかの決定は、当業者の平均的なレベルの範囲内である。一実施形態においては、上記の操作は、自動車の組み立てに必要な一操作、または自動車の運転に必要な一操作であり得る。
【0033】
2成分型接着剤を用いる場合には、バルブカバーまたはエンジンヘッドに適用する前に2成分同士を接触させる。この接触は、押出装置の混合ヘッドで行なうことが望ましい。この接触は一般的には下地表面への押出前に行なう。貯留タンクを2つと混合室とを備えたコーキングガンなどの手動器具を用いて押出および適用を行なうことができる。あるいは、自動供給・押出機能を備えた押出装置を用いて接着剤を適用することもできる。この種の装置は当分野では周知である。2成分型(2液式)接着剤を用いる場合には、2段階の硬化工程を行なうことが望ましい。第1段階では接着剤は室温で混合されたBステージの状態である。普通このBステージは短時間維持されるので、その間に接着剤を操作できる。これはよく貼り合せ時間とも呼ばれる。貼り合せ時間は、作業者が接着剤の適用と下地材同士の接触とを行なえないほど短時間であってはならないが、硬化進行中に下地材同士を所定位置に固定するために別の操作を要するほど長時間であってはならない。貼り合せ時間は、望ましくは約20秒以上であり、より望ましくは約2分以上である。貼り合せ時間は、望ましくは10分以下であり、より望ましくは5分以下である。第2段階の硬化工程は、接着剤組成物に最終的な高強度、炭化水素耐性、高温安定性を付与する工程であり、高温処理を必要とする。エンジンアセンブリの加熱は、周知の外部加熱式の従来装置を用いて行なえる。エンジンで発生した熱によって接着剤の第2段階硬化工程を十分に行なえることが望ましい。硬化処理のための加熱は、望ましくは約120℃以上、最も望ましくは約130℃である。硬化処理のための加熱温度は約150℃以下であることが望ましい。前述した所望の性質が得られるように上記の温度で十分な時間、アセンブリの接着剤が配置された部位を加熱する。硬化処理のための接着剤の加熱時間は、望ましくは約60以下、より望ましくは約45分以下、最も望ましくは約15分以下である。
【0034】
下地材に接着剤を接触させる前に、下地材にプライマーを適用することが望ましい。プライマーは下地表面の密着性を高める。用いるプライマーは、被膜形成樹脂(例えばVITEL(登録商標)2300BUポリエステル樹脂)、この被膜形成樹脂用の架橋剤(例えばDESMODUR(登録商標)N−100またはRFEイソシアネート)、および1種以上のシラン結合剤(メルカプトシラン結合剤、アミノシラン結合剤、エポキシシラン結合剤など。例えば、SILQUEST(登録商標)A−189シラン、SILQUEST(登録商標)A−187シラン、SILQUEST(登録商標)A1100シラン)を構成成分とする。
【0035】
他の実施形態においては、バルブカバー等のエンジン部品は、内燃機関の運転に不可避の騒音がエンジンルームから放出されないように設計された一体化音響制御システムを含んでいてもよい。一実施形態においては、バルブカバーは2部分から成り、そのうち1部分はアウターシェルであり、他の1部分はインナーシェルであり、アウターシェルの内部にインナーシェルが配置され両シェル間には間隙が空いている。間隙は単純に空気層であってよく、音波の一部を減衰させ、エンジン外部で聞こえる騒音を低減する。あるいは、間隙に、織布パッド、不織マット、エラストマー材料、発泡材料などの消音材を充填することもできる。別の実施形態においては、バルブカバーの内表面にエラストマーまたは発泡材のような音響減衰材料を固定してもよい。
【0036】
別の実施形態においては、本発明に用いるバルブカバーなどの部品は、外表面または内表面に炭化水素に対するバリア機能を高めるコーティングまたはフィルムを設けてもよい。このコーティングまたはフィルムは、自動車からの炭化水素排ガスの漏出を低減する。エンジン部分からの炭化水素の伝達を防止するコーティングまたはフィルムを用いることができる。望ましいコーティングは炭素−シリカ系プラズマ蒸着コーティングであり、アメリカ合衆国特許第5,298,587号、同第5,320,875号、同第5,433,786号、同第5,494,712号に記載されており、ここで引用したことにより本明細書中に取り込む。
【0037】
以下に添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。各図面は本発明の理解を補助するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。図1に、バルブカバーとシリンダヘッドとのアセンブリの分解図を示す。同図において、シリンダヘッド20およびバルブカバー21の間に接着剤の連続ビード22が配置されている。バルブカバー21に一体に設けたスナップ式クリップ23により、接着剤ビード22の硬化中にバルブカバー21をシリンダヘッド20上の所定位置にほじするようになっている。シリンダヘッド20にある合わせ窪み24が、スナップ式クリップ23と合わせられクリップ23を受け入れてバルブカバー21を所定位置に保持する。図示したシリンダヘッドの合わせ面25はバルブカバーの合わせ面(図示せず)と合わせられことができる。
【0038】
図2に、バルブカバー21とシリンダヘッド20とのアセンブリを分解した状態の断面図を示す。同図はシリンダヘッド20とバルブカバー21と両者間の接着剤ビード22とを示す。接着剤ビード22は、シリンダヘッドの合わせ面25とバルブカバーの合わせ面26との間に位置している。シリンダヘッド20には、バルブカバー21のスナップ式クリップ23と合わせられる窪み24が設けられている。
【0039】
図3に、バルブカバー21とシリンダヘッド20とのアセンブリを分解しない状態の断面図を示す。シリンダヘッドの合わせ面25とバルブカバーの合わせ面26とに沿う接着剤の連続ビード22によって、シリンダヘッド20とバルブカバー21とが接着剤接合されている。バルブカバー21と一体であるスナップ式クリップ23がシリンダヘッド20の窪み24に係合して、スナップ式クリップ23が所定位置に保持されている。スナップ式クリップ23はバルブカバー21とシリンダヘッド20とのアセンブリの内側に位置している。これは外観上望ましい。
【実施例】
【0040】
以下の実施例は説明のみを目的としており、本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。特に断りの無い限り、「部」および「%」は全て質量基準である。
【0041】
〔配合成分〕
以下の実施例においては下記の成分を用いた。
【0042】
PERMAPOL(登録商標)3.1チオール(メルカプタン)を末端基とするポリチオエーテル(分子量3260(1630当量)、PRC-Desoto, Gledale, Californiaの製品。
【0043】
CABOT(登録商標)652Aカーボンブラック、Cabot Corporation, Boston, Massachusettsの製品。
【0044】
DABCO(登録商標)33LV 33%トリエチレンジアミン・ジプロピレングリコール溶液、Air Productsの製品。
【0045】
DEN(登録商標)438ノボラックエポキシ樹脂、179当量、The Dow Chemical Company, Midland Michiganの製品。
【0046】
DER(登録商標)732ポリオキシプロピレンジエポキシド、320当量、The Dow Chemical Company, Midland Michiganの製品。
【0047】
〔接着剤作製手順〕
第1成分を作成するために、PERMAPOL(登録商標)3.1チオール(メルカプタン)を官能基とするポリチオールエーテルとDABCO(登録商標)33LV触媒とをHauschild高速ミキサーに装入して、17秒間混合した。カーボンブラックの半量を添加し、引き続き17秒間の混合を2回行なった。カーボンブラックの残部を添加し、引き続き17秒間の混合を2回行なった。粘度は8,000ポアズ(800N−S/m)であった。高速ミキサーからチューブ状の樹脂を取り出した。第2成分を作成するために、DER(登録商標)732ポリオキシプロピレンジエポキシドとDEN(登録商標)438ノボラックエポキシ樹脂とを30:70の質量比で、カーボンブラックと共に高速ミキサーに装入し、引き続き17秒間の混合を2回行なった。高速ミキサーからチューブ状の樹脂を取り出した。粘度は4000ポアズ(400N−S/m)であった。
【0048】
得られた組成物の各成分を下記の表1にまとめて示す。
【0049】
【表1】

【0050】
上記の接着剤組成物を下記の方法で試験した。全てのサンプルを1インチの重なりでアルミニウムにナイロン接合した。各サンプルを150℃のオイル(5W30エンジンオイル)中に後述する時間保持した。各サンプルをASTM1002に従って試験した。ラップ剪断試験片に用いた基材はQUESTRA(登録商標)シンジオタクチックポリスチレン/ナイロン混合物とアルミニウムストリップであった。アルミニウムストリップの1インチ重なり部分をベンチサンダーで研磨し、エタノールで拭き、アセトンで洗浄し、エタノールで拭いた。ラップ剪断試験片の表面を、前述の組成物を用いてプライマー処理した。試験片を60分間放置してプライマー中の溶媒を揮発させて除去した。30mil(0.076cm)のガラスビードをスペーサーとして用い、前記サンプルの接着剤をラップ剪断試験片の表面に適用した。アルミニウムストリップをナイロンストリップに接合し、これをバタフライクリップを用いて所定位置に保持した。接合直後のサンプルを炉に装入し、300°F(149℃)で1時間ベーキングした。サンプルを炉から取り出し、24時間放冷した後、試験に供した。サンプルをオイル容器内に入れて150℃の炉内に装入した。種々の経過時間でサンプルを取り出した。取り出し直後のサンプルおよび取り出し後24時間放冷後のサンプルを試験した。サンプルをInstrom(7インチ(17.8cm)間隔)のクロスヘッドに装着し、5インチ/分(12.7cm/分)の速度で引っ張って破断させた。結果を表2にまとめて示す。
【0051】
個々の条件で3個のサンプルを試験した。結果は3個のサンプルの平均値で示した。表中の時間は個々のサンプルを150℃のオイル中に保持した時間である。
【0052】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明のバルブカバーシリンダヘッドアセンブリの分解図である。
【図2】図2は、バルブカバーとシリンダヘッドのアセンブリを分解し切断した図である。
【図3】図3は、バルブカバーシリンダヘッドアセンブリを分解せずに切断した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダヘッドに取り付け可能な合わせ面を備え、該合わせ面の周縁には連続した接着剤のビードまたは層が配置されているバルブカバーを含んで成るバルブカバーアセンブリであって、
上記接着剤が、架橋剤と反応可能な2つ以上の反応基を有するポリチオールエーテルと、架橋剤とを含むバルブカバーアセンブリ。
【請求項2】
上記バルブカバーには、該バルブカバーを上記シリンダヘッドに支持することを主機能とするボルト穴が無い請求項1に記載のバルブカバーアセンブリ。
【請求項3】
上記接着剤が、2つ以上の反応基を有するポリチオールエーテルを含む1つの成分と、該ポリチオールエーテル用の硬化剤および硬化促進剤を含むもう1つの成分とを含む2成分型接着剤である請求項1に記載のバルブカバーアセンブリ。
【請求項4】
上記反応基が、ヒドロキシル基、第1または第2アミノ基、メルカプト基のうちの1種以上である請求項3に記載のバルブカバーアセンブリ。
【請求項5】
上記硬化剤が、ポリエポキシド、イソシアネート、アクリレート、またはビニル基含有化合物のうちの1種以上である請求項3に記載のバルブカバーアセンブリ。
【請求項6】
上記接着剤の組成物が、充填剤を更に含む請求項4に記載のバルブカバーアセンブリ。
【請求項7】
1つ以上のシリンダヘッドにバルブカバーの合わせ面に合わせることができる合わせ面がある請求項1〜6のいずれか1項に記載のバルブカバーを1つ以上備えたエンジンアセンブリであって、
個々のバルブカバーはシリンダヘッドに接着剤で接合され、個々のバルブカバーの上記合わせ面と接合相手である上記シリンダヘッドの上記合わせ面との間に接着剤の連続層が配置され、上記連続した接着剤のビードまたは層が、ペアを成す個々のバルブカバーとシリンダヘッドとの間でシールを形成していることにより、合わせ面同士が接触している部位における該ペアをなす個々のバルブカバーとシリンダヘッドとの間を通るガスまたは液体の浸透が実質的に減少または防止されるエンジンアセンブリ。
【請求項8】
上記接着剤の組成物が、アセンブリ後の20分経過した時点でのラップ剪断強度が約200psi以上である請求項7に記載のエンジンアセンブリ。
【請求項9】
バルブカバーをシリンダヘッドに接合する方法であって、
a)上記バルブカバーは上記シリンダヘッドの合わせ面と合わせることができる合わせ面を備えており、該バルブカバーまたは該シリンダヘッドの合わせ面の全面に連続した接着剤のビードまたは膜を適用する工程、
b)上記バルブカバーの合わせ面と上記シリンダヘッドの合わせ面とを接触させることにより、上記連続した接着剤のビードまたは膜が該バルブカバーと該シリンダヘッドの合わせ面同士の間に配置されるようにする工程、
c)上記接着剤を硬化させて上記バルブカバーと上記シリンダヘッドの合わせ面同士を永久接合し且つ該接着剤により該バルブカバーと該シリンダヘッドとの間のシールを形成させる工程を含む方法において、
上記接着剤は、架橋剤と反応可能な2つ以上の反応基を有するポリチオールエーテルと、架橋剤とを含み、かつ、上記適用後に1つ以上の上記バルブカバーを所定位置に保持するのに十分な強度を備えている方法。
【請求項10】
下記:
A)第1成分として、
i)2つ以上の反応基を有し、当量が約600〜約5000であるポリチオールエーテル、
ii)上記ポリチオールエーテルと硬化剤との反応のための室温硬化促進剤、
B)第2成分として、
iii)上記ポリチオールエーテル用の硬化剤、
iv)上記ポリチオールエーテルまたは上記硬化剤と反応可能な反応性希釈剤、
v)ヨウ素価が約82〜約92mg/gであり吸油価が約100〜約110g/ccであるカーボンブラック、
を含んで成る組成物。
【請求項11】
自動車のエンジンまたはトランスミッションに部品を接合する方法において、
2つ以上の反応基を有するポリチオールエーテルと該ポリチオールエーテル用の硬化剤とを含む接着剤を、上記部品および上記自動車のエンジンまたはトランスミッションの一方または両方に接触させる工程、上記部品および上記エンジンまたはトランスミッションを上記部品同士の間に配置された上記接着剤に接触させる工程、および該接着剤を硬化させることにより、該部品と該エンジンまたはトランスミッションとの間の接合部をシールすることを含んで成る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−505977(P2007−505977A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527058(P2006−527058)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/030502
【国際公開番号】WO2005/028542
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】