説明

接着剤用コータのノズル

【課題】連続的に走行するウエブの表面に接着剤の塗布ラインを形成するときの接着剤の塗布状態を一様にする。
【解決手段】機械方向MDへ連続的に走行するウエブ2の表面2aに機械方向MDへ延びる少なくとも一条の接着剤の塗布ラインを形成するための接着剤用コータ11におけるノズル12が、機械方向MDの上流から下流に向かって順に並ぶ下記の第1〜第3作用区域を有する;
(1)ウエブ2の幅方向の全体に接触可能な第1作用区域、
(2)機械方向MDに直交する交差方向に間欠的に並ぶ第1区画部どうしの間に接着剤の出口が形成されている第2作用区域、
(3)第1区画部の下流側にあって交差方向へ間欠的に並ぶ第2区画部と、第2区画部どうしの間にあってウエブ2の表面2aと対向する面が少なくとも0.1mmの段差を形成している段差部とを有する第3作用区域。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、不織布や織布、紙、プラスチックフィルム等のウエブにホットメルト接着剤等の接着剤を塗布するためのコータに使用するのに好適なノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
機械方向へ連続的に走行する不織布等のウエブにホットメルト接着剤等の接着剤をライン状に連続的に塗布するためのコータは、従来周知である。例えば、特開2004−229959号公報(特許文献1)にはそのようなコータに使用するノズルが開示されている。そのノズルは、機械方向における中央部分に液供給路を有し、液供給路の上流側および/または下流側に空気供給路を有する。接着剤の塗布工程ではノズルを下に向け、ノズルの下で機械方向へ走行するウエブをノズルの先端に接触させる。ノズルからは粘度が100〜2000cpsの接着剤がウエブの表面に連続的に供給され、それと同時に空気供給路からはウエブに向かって加圧空気が噴射される。この文献の説明によれば、加圧空気を噴射しないときには、ノズルの先端に接着剤の溜まりが生じ、その溜まりによって接着剤の塗布状態が乱されるということがあるのであるが、加圧空気はその溜まりが生じることを防ぎ、その結果として接着剤の塗布状態は、乱れのないものになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−229959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたノズルを使用して不織布や紙、プラスチックフィルム等のウエブにホットメルト接着剤を塗布するときに、ホットメルト接着剤によって幅の寸法が異なる複数条のラインを画かせようとすると、ノズルの下端に密着させたウエブはノズルの開口幅によって幅方向の緊張状態が変化し、ラインどうしの間で接着剤の塗布状態が、例えば塗布された接着剤の坪量や厚さの状態が一様にならないということがある。また、ホットメルト接着剤に画かせるラインの幅が同じ場合であっても、ウエブの厚さが幅方向において変化していて、ウエブには厚い部分と薄い部分とが存在する場合には、その両部分の間において、ホットメルトの塗布状態が一様にはなり難いということがある。
【0005】
そこで、この発明は、連続的に走行するウエブの表面に少なくとも一条の接着剤ラインを形成しようとするときに、そのラインおよび/またはラインどうしの間での接着剤の塗布状態を一様にすることが容易なノズルの提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、機械方向へ連続的に走行するウエブの表面に前記機械方向へ延びる少なくとも一条の接着剤塗布ラインを形成することのできる接着剤用コータのノズルである。
【0007】
かかるノズルにおいて、この発明が特徴とするところは、次のとおりである。すなわち、前記ウエブが前記機械方向に一致した長さ方向と前記機械方向に直交する交差方向に一致した幅方向とを有するものであって、前記ノズルにおいて前記ウエブの前記表面に対向する部位には、前記機械方向の上流から下流に向かって、次の(1)〜(3)に示された第1〜第3作用区域が順に形成されている;
(1)前記ウエブの前記幅方向の全体に接触することが可能な第1作用区域、
(2)前記交差方向に間欠的に並ぶ第1区画部どうしの間に接着剤の吐出口が画成されていて、前記接着剤の吐出口の前記交差方向における位置が前記接着剤塗布ラインに対応しており、前記第1区画部の前記表面と対向する端面が前記接触域と同一の平面上にあるように形成されている接着剤吐出用の第2作用区域、および
(3)前記第1区画部の下流側にあって前記交差方向へ間欠的に並びかつ前記表面に対向している端面が前記同一の平面上にある第2区画部と、前記接着剤の吐出口の下流側にありかつ隣り合う前記第2区画部どうしの間にあって前記表面に対向している面が前記同一平面に対して前記表面とは反対側で少なくとも0.1mmの段差を形成している段差部とを含み、前記第2区画部と前記段差部とが前記交差方向において交互に並んでいる第3作用区域。
【0008】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記第2区画部と前記段差部との下流側にあって、前記表面に向かって加圧空気を吹き付けるための吐出口を含んだ加圧空気吐出用の第4作用区域が前記第3作用区域の下流側に形成されている。
【0009】
この発明の実施形態の他の一つとして、次のものがある。すなわち、前記ノズルが前記機械方向の上流から下流に向かって互いに分離可能に密着して並ぶ第1プレートと第1シムと第2シムと第3シムと第2プレートとを含み、前記第1プレートには前記第1作用区域が形成されており、前記第1シムには前記第1シムを形成する金属プレートを切り欠くことによって、前記第1区画部と前記接着剤の流路とが形成されていて、前記第1シムとこれに密着する前記第1プレートと前記第2シムとによって前記接着剤の流路の端部に前記接着剤の吐出口が画成され、前記第3シムには前記第3シムを形成する金属プレートを切り欠くことによって前記加圧空気の流路が形成されていて、前記第3シムとこれに密着する前記第2シムと前記第2プレートとによって前記加圧空気の流路の端部に前記加圧空気の吐出口が画成されており、前記第1プレートにはさらに前記ノズルの外部から前記接着剤を前記接着剤の流路へ導くことのできる接着剤案内路が形成され、前記第2プレートには前記ノズルの外部から前記加圧空気を前記加圧空気の流路へ導くことのできる加圧空気案内路が形成されている。
【0010】
この発明の実施形態の他の一つとして、次のものがある。すなわち、前記ノズルが前記機械方向の上流から下流へ向かって互いに分離可能に密着して並ぶ第1プレートとシムと第2プレートとを含み、前記第1プレートには前記接触域と前記接着剤の流路とが形成され、前記シムには前記第3作用区域が形成され、前記第2プレートには前記加圧空気の流路が形成され、互いに密着する前記第1プレートと前記シムとによって前記接着剤の吐出口が画成され、互いに密着する前記第2プレートと前記シムとによって前記加圧空気の吐出口が画成されており、前記第1プレートにはさらに前記ノズルの外部から前記接着剤を前記接着剤の流路へ導くことのできる接着剤案内路が形成され、前記第2プレートには前記ノズルの外部から前記加圧空気を前記加圧空気の流路へ導くことのできる加圧空気案内路が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るノズルは、その上流側にウエブに対して接触可能な第1作用区域を有し、その第1作用区域では、機械方向へ走行するウエブをその幅方向の全体において密着させて、ウエブを機械方向と交差方向とにおいて緊張させることができる。接着剤の吐出口は、第1作用区域の下流側に位置しているから、吐出される接着剤は既に機械方向と交差方向とにおいて緊張状態にあるウエブに塗布される。そのように塗布された接着剤の状態は吐出口の幅の大きさに関係なく一様になり易い。また、ウエブの厚さが交差方向において多少変化しているような場合であっても、塗布された接着剤の状態は一様になり易い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ノズル部を含むコータの側面図。
【図2】ノズル部を含むコータの頂面図。
【図3】ノズル部の拡大図。
【図4】図3のIV−IV線矢視図。
【図5】図3のV−V線矢視図。
【図6】上流側プレートの一例の斜視図。
【図7】第2シムの一例の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照してこの発明に係るノズルの詳細を説明すると以下のとおりである。
【0014】
図1,2は、ホットメルト接着剤1を不織布の連続体であるウエブ2の表面2aに塗布するために使用されているコータ11の側面図と頂面図である。図示例のコータ11は、使い捨ておむつや使い捨てパンツ、生理用ナプキン、使い捨てガウン等の着用物品の製造ラインにおいて、例えば30〜1000mmの幅と、10〜100g/mの坪量とを有する不織布で形成されたウエブ2に対して使用するのに好適なもので、ノズル部12と、ノズル部12にホットメルト接着剤1を溶融状態で供給するためのパイプ13と、加圧空気を供給するためのパイプ14とを含んでいる。ただし、パイプ13,14は、図1,2に仮想線で示されている。図1,2はまた、ウエブ2が走行する方向である機械方向MDと、ウエブ2の幅方向であって機械方向MDに直交する交差方向CDと、これら両方向MD,CDに直交する上下方向HDとが矢印と双頭矢印とで示されている。コータ11に対してはまた、ノズル部12の上流側と下流側とにおいて支持ローラ16,17が使用されている。支持ローラ16,17は、ウエブ2の裏面2bの下側にあって、少なくとも一方が上下方向HDへ上昇下降可能なもので、上昇したときには、図1に例示の如くウエブ2を押し上げてウエブ2をノズル部12に圧接することができ、下降したときには、ウエブ2をノズル部12から所要寸法だけ離間させることができる。好ましい支持ローラ16,17は、交差方向CDにおいて、ウエブ2の両縁部を越えて延びている。図1,2におけるウエブ2は、機械方向MDの上流側からコータ11に供給され、コータ11によってホットメルト接着剤1が複数条のライン18を形成するように塗布されて機械方向MDの下流側に向かって走行している。そのウエブ2は、機械方向MDにおいて緊張状態にあるものであるが、支持ローラ16と支持ローラ17との間においては、ノズル部12の下端部20(図3,4参照)に圧接して、機械方向MDと交差方向CDとにおいて特に強い緊張状態にある。
【0015】
図3は、ノズル部12の拡大図であって、ウエブ2が仮想線で示されている。ノズル部12は、機械方向MDの上流側から下流側に向かって上流プレート30と、第1シム31と、第2シム32と、第3シム33と、下流プレート34とが順に並んで密着し、これらを貫通する固定用のボルトとそれに取り付けられるナット(いずれも図示せず)とを介して分離可能に一体化している。上流プレート30にはパイプ13を介してホットメルト接着剤1が溶融状態で供給される。その上流プレート30の下端部20は、走行するウエブ2を圧接させるときの接触部位60を形成している。接触部位60は、交差方向CDにおいてウエブ2の幅全体を圧接させることのできる寸法を有し、機械方向MDにおいて好ましくは1〜5mmの寸法を有する水平面である。図3において、第1、第2、第3シム31,32,33における下端部21,22,23は、上流プレート30の下端部20と同一の平面上にある。下流プレート34にはパイプ14を介して加圧空気が供給され、その加圧空気が矢印35で示されるように下流プレート34からウエブ2に向かって噴射される。
【0016】
図4は、図3におけるIV−IV線矢視図であるが、部材の一部分が破断された状態にある。第1シム31は、上流プレート30と第2シム32とによってサンドウィッチされているものであって、金属製のプレートを所要の形状に切り欠くことによって形成することができる。第1シム31は、交差方向CDにおいて所要の間隔をあけて並ぶ複数の接着剤の流路41を有し、隣り合う流路41どうしの間にはその所要の間隔を提供する第1区画部31bを有し、その第1区画部31bには下端部21が含まれている。第1シム31に仮想線で示された流路40は上流プレート30のうちで第1シム31に密着している面30a(図3参照)に形成されている溝であって、上流プレート30の内部を走る接着剤案内路(図示せず)を介してパイプ13につながる一方、図示の如く第1シム31の流路41と交差した状態にあって、パイプ13からのホットメルト接着剤1を流路41のそれぞれに案内することができる。流路41それぞれの端部43は、下方に向かって開口しており、第1シム31が上流プレート30と第2シム32とにサンドウイッチされた状態においては、接着剤1の吐出口となる。第1区画部31bにおける下端部21は平滑な水平面に形成されている。第1シム31では、これら第1区画部31bの下端部21と流路41の下端部43とによって接着剤吐出域61が形成されている。
【0017】
図4における第2シム32は、第1シム31とほぼ同じ大きさの矩形の板状体であって、第1シム31の第1区画部31bの下流側には、第1区画部31bの下端部21と同一の平面を成す下端部22を含む第2区画部32bを有し、流路41の下流側には段差部46を有する。段差部46は、第1シムにおいて吐出された接着剤1を機械方向MDに向かって通過させる部位であって、交差方向CDの寸法である幅および上下方向HDの寸法である高さが接着剤1によって形成されるライン18の幅および高さと等しくなるように形成される場合や、その幅および高さよりも大きくなるように形成される場合がある。また、段差部46の幅だけがライン18の幅と等しくなるように形成されたり、高さだけがライン18の高さと等しくなるように形成されたりする場合もある。なお、ここでいうライン18の高さは、ライン18の厚さと言い換えることもできる。一例としての段差部46は、その高さ、すなわち下端部22から頂面46aまでの上下方向HDの寸法が少なくとも0.1mm、より好ましくは少なくとも0.2mmであって、第2区画部32bと協働して溝47を形成している。その溝47は、上下方向HDの下方に向かって開口し、第2シム32の機械方向MDの寸法である厚さによって規定される長さを有している。第2シム32では、交差方向CDに交互に並ぶ第2区画部32bと段差部46とによって、ノズル12の機械方向MDにおける中間域62が形成されている。
【0018】
これら上流プレート30と第1シム31と第2シム32との間では、パイプ13を通って圧送されたホットメルト接着剤1が、流路40を通って流路41のそれぞれに入り、流路41の下端部43でウエブ2の緊張状態にある表面2aにライン状に塗布される(図2参照)。塗布された接着剤1は、溝47を通り抜けてウエブ2とともに下流側に向かうことができる。また、流路41の下端部から表面2aに向かって吐出される接着剤1は、下端部43における上流側に上流プレート30があるので、上流側へ流れることがない。
【0019】
図5は、図3のV−V線矢視図であるが、部材の一部分が破断された状態にある。図に現れている第3シム33と下流プレート34とのうちの第3シム33は、下流プレート34と第2シム32とでサンドウィッチされた状態にあるものである。第3シム33は金属プレートを所要の形状に切り欠くことによって形成することのできるものであって、交差方向CDにおいて対称に形成された空気室51,52を有する。空気室51,52は、その下端部にウエブ2に向かっての矢印35で示す加圧空気の吐出(図3参照)を可能にするための開口51a,52aを有する。空気室51の側方部分53と空気室52の側方部分54と空気室51と空気室52との間の部分55とにおける第3シム33の下端部23は、上流プレート30の下端部20と同一の平面上にある。図5にはまた、第3シム33と第2シム32とを密着させたときの第2シム32における下端部22と段差部46とが仮想線で示され、併せてウエブ2も仮想線で示されている。
【0020】
第3シム33に下流側から密着する下流プレート34の面34a(図3を併せて参照)には、加圧空気の流路61が彫られている。加圧空気の流路61は、そのうちの管状部61aが下流プレート34の内部に形成されている加圧空気案内路(図示せず)を介してパイプ14につながっていて、加圧空気を空気室51,52に供給することができる。その空気室51,52は、第3シム33が第2シム32と下流プレート34とによってサンドウイッチされることによってパイプ14からの加圧空気を交差方向CDへ拡散させながらウエブ2に向かって吐出することのできる加圧空気の流路となる。下流プレート34の下端部24は、図1,3において明らかなように、上流プレート30の下端部20と同一の平面上にある第2シム32の下端部22よりも上方に、好ましくは少なくとも2mm上方にある。第3シム33では、空気室51,52と部分53,54,55とによって加圧空気吐出域63が形成されている。
【0021】
このようなノズル部12において、上流プレート30、第1シム31、第2シム32、第3シム33および下流プレート34は、ボルトとナットとを使用して機械方向MDにおいて互いに密着するように組み立てられるものであるが、それらボルトやナット、それらのためのボルト穴等の図示は図1〜5において省略されている。また、ノズル部12につながるパイプ13は、ホットメルト接着剤を所要温度の溶融状態で圧送できるようにヒータとポンプとを有するものであるが、図1〜5において、それらヒータとポンプとの図示は省略されている。ノズル部12につながるパイプ14は、加圧空気を必要に応じて所要温度にまで加熱して供給することができるように、空気タンクにつながり、またヒータを組み付けることのできるものであるが、図1〜5において、それら空気タンクやヒータの図示は省略されている。ノズル部12は、それにヒータを組み付けて一部分または全体を温度調節することができるものであることが好ましい。
【0022】
図示例のコータ11によってウエブ2にホットメルト接着剤1を塗布するときのノズル部12とウエブ2とは、次のように操作する。ノズル部12には、それがウエブ2の表面2aと対向する部位に、表面2aに対しての第1作用区域となる接触部位60と、第2作用区域となる接着剤吐出域61と、第3作用区域となる中間域62と、第4作用区域となる加圧空気吐出域63とが形成されており、これら第1〜第4作用区域が機械方向MDの上流から下流に向かって順に並んでいる。そこで、まず、ウエブ2をノズル部12の下方において機械方向MDへ走行させながら、支持ローラ16および/または支持ローラ17を上昇させて、ウエブ2の表面2aを第1作用区域である接触部位60、すなわち上流プレート30における下端部20に圧接して、ローラ16とローラ17との間にあるウエブ2を幅の全体にわたって機械方向MDへ強く緊張させ、それと同時にウエブ2の幅方向、即ち交差方向CDへも強く緊張させる。そのように緊張させたウエブ2の表面2aに対して、第2作用区域である接着剤塗布域61における第1シム31の流路41のそれぞれから溶融状態にある接着剤1を加圧下に供給して、接着剤1をライン状に塗布する。このときに、流路41の下端部には上流側に上流プレート30があるので、接着剤1は上流へ向かうということがない。各ライン18における接着剤1の塗布量は、第1シム31の厚さに対応する流路41の寸法、パイプ13に組み込まれている圧力調整バルブ(図示せず)、接着剤1の吐出量等によって調整することができるが、接着剤1によって形成される各ライン18の幅と、交差方向CDにおける互いの離間距離とは、第1シム31の設計的事項であって、自由に設定することができる。接着剤1の各ライン18は、第3作用区域である中間域62の第2シム32における溝部47を通過した後、加圧空気吐出域63における第3シム33の空気室51または52の下を通過し、さらに下流プレート34の下を通って機械方向MDの下流側へ進む。ウエブ2と接着剤1とがこのように走行するときに、流路41から吐出される接着剤1および/またはライン18を形成している接着剤1は、第2シム32の下流側において段差部46の近傍に付着して塊状物となることがある。そのような塊状物は、溝部47の内側へ進出するほどまでに大きく成長すると、ライン18の接着剤1に接触するようになって、ライン18はその形状や坪量が一様なものにならないことがある。しかし、この発明におけるノズル部12では、加圧空気の吐出35によって、段差部46の近傍に付着しようとする接着剤1の動きを抑えて、接着剤1が段差部46の近傍に付着することを防ぐことができるので、各ライン18は幅や坪量が一様のものになり易い。
【0023】
また、ノズル部12では、接着剤1を塗布する直前の段階でウエブ2の幅全体を上流プレート30の下端部20に圧接して、ウエブ2を機械方向MDにも交差方向CDにも強く緊張させることができるので、ウエブ2に接着剤1を塗布するときにウエブ2の厚さが交差方向CDにおいて一定ではないような場合、例えば不織布で形成されたウエブ2の幅方向の中央部では、ウエブ2の裏面2b(図1参照)にもう一枚の不織布が重ねられているというような場合であっても、ウエブ2の表面2aに対してライン18の幅や坪量が一定したものを形成することが容易になり、またライン18どうしの間でも幅や坪量を一定に保つことが容易になる。また、ウエブ2を上流プレート30の下端部20に圧接することなく、第1シム31の下端部21に圧接すると、流路41の幅、すなわち交差方向CDにおける流路41の寸法が大きくなるに従って機械方向MDにおいて緊張状態にあるウエブ2の表面2aは流路41において上方に向かってたわみ、流路41の中へ進入することがある。その結果として、その幅の広い流路41で形成される接着剤1のライン18は幅や坪量が安定しないものになり易いとか、幅の広い流路41と幅の狭い流路41とでは接着剤1の坪量が一様にはなり難いというトラブルを生じることがあるが、この発明に係るノズル部12によれば、そのトラブルの発生を防ぐことができる。ただし、ノズル部12は、支持ローラ16および/または支持ローラ17の上下方向HDにおける位置の調整が可能であるから、ウエブ2をノズル部12の下端部20に圧接させる必要がないときには、ウエブ2をその下端部20から僅かに離間させた状態で使用することも可能である。また、ノズル部12は、第4作用区域における加圧空気の吐出が必要ない場合には、その吐出を止めた状態でノズル部12を使用することができる。例えば、接着剤1の単位時間当たりの供給量が少ないとか、ウエブ2の走行速度が遅いとかという場合である。
【0024】
図示例のノズル部12において、第1、第2、第3シム31,32,33は、上流プレート30や下流プレート34に比べると極めて薄い金属板によって作ることができる。例えば、上流プレート30と下流プレート34とを機械方向MDにおける厚さが20〜200mmの鉄のブロックで作る一方、第1、第2、第3シム31,32,33は、厚さが0.2〜3mmの鉄板を部分的に切り欠くことによって作ることができる。このような鉄板を使用するノズル部12では、接着剤1で形成するライン18の幅や間隔等をスピーディかつ低コストで変更することが可能である。
【0025】
図6は、この発明において使用可能な上流プレート30の一例の斜視図である。この発明では、ノズル部12における上流プレート30または第2シム32に流路41を彫り込むことによって第1シム31を省くことができる。例えば、図示の上流プレート30の面30a(図3を併せて参照)には、図4に仮想線で示されている流路40に対応する流路40と、図4の第1シム31に形成されている流路41に対応する流路41とが形成されている。ノズル部12では、このような上流プレート30を使用することによって第1シム31を省くことができる。図示例の上流プレート30もまた、流路41の上流側にウエブ2を接触させるための接触域60が形成されている。
【0026】
図7は、この発明において使用可能な第2シム32の斜視図である。第2シム32は、第1シム31に密着する上流側の面32eとそれの反対面である下流側の面32fとを有する。面32fは、それを部分的に切削することによって、図5における空気室51,52に対応する空気室51,52が形成されており、その空気室51,52は面32fに平行する壁面32cを有する。第2シム32の面32fを図3,5に示されている下流プレート34に密着させると、空気室51,52の下端部に開口51a,52aが形成されて、そこから加圧空気をウエブ2に向かって吐出することができる。このような第2シム32では、空気室51,52とこれらを画成している面32fとによって、図5の加圧空気吐出域63に対応する加圧空気吐出域63が形成されている。第2シム32はまた、上流側の面32eと壁面32cの間の部分が図4における第2シム32と同様に形成されていて、第2区画部32bと段差部46とを有し、これらによって溝47と中間域62とが形成されている。このような第2シム32を使用するノズル部12では、図3,5における第3シム33を省くことができる。
【0027】
この発明においてはまた、図示例で使用したホットメルト接着剤1を、溶剤型の接着剤やその他の接着剤に代えることが可能である。さらにはまた、ウエブ2として使用可能なものには、不織布の他に、織布や紙、プラスチックフィルム等のシート状のものがある。ウエブ2に形成する接着剤1のライン18は、図示例の如く複数条にするばかりでなく、一条にすることもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 接着剤
2 ウエブ
2a 表面
11 コータ
12 ノズル(ノズル部)
18 ライン
20 下端部
21 端面(端部)
22 端面(端部)
30 第1プレート(上流プレート)
31 第1シム
31b 第1区画部
32 第2シム
32b 第2区画部
33 第32シム
34 第2プレート(下流プレート)
41 流路
43 端部、吐出口
46 段差部
46a 面(頂面)
51 流路
52 流路
51a 端部、吐出口(開口)
52a 端部、吐出口(開口)
60 第1作用区域(接触域)
61 第2作用区域(接着剤吐出域)
62 第3作用区域(中間域)
63 第4作用区域(加圧空気吐出域)
CD 交差方向
MD 機械方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械方向へ連続的に走行するウエブの表面に前記機械方向へ延びる少なくとも一条の接着剤塗布ラインを形成することのできる接着剤用コータのノズルであって、
前記ウエブが前記機械方向に一致した長さ方向と前記機械方向に直交する交差方向に一致した幅方向とを有するものであって、前記ノズルにおいて前記ウエブの前記表面に対向する部位には、前記機械方向の上流から下流に向かって、次の(1)〜(3)に示された第1〜第3作用区域が順に形成されていることを特徴とする前記ノズル;
(1)前記ウエブの前記幅方向の全体に接触することが可能な第1作用区域、
(2)前記交差方向に間欠的に並ぶ第1区画部どうしの間に接着剤の吐出口が画成されていて、前記接着剤の吐出口の前記交差方向における位置が前記接着剤塗布ラインに対応しており、前記第1区画部の前記表面と対向する端面が前記第1作用区域と同一の平面上にあるように形成されている接着剤吐出用の第2作用区域、および
(3)前記第1区画部の下流側にあって前記交差方向へ間欠的に並びかつ前記表面に対向している端面が前記同一の平面上にある第2区画部と、前記接着剤の吐出口の下流側にありかつ隣り合う前記第2区画部どうしの間にあって前記表面に対向している面が前記同一平面に対して前記表面とは反対側で少なくとも0.1mmの段差を形成している段差部とを含み、前記第2区画部と前記段差部とが前記交差方向において交互に並んでいる第3作用区域。
【請求項2】
前記第2区画部と前記段差部との下流側にあって、前記表面に向かって加圧空気を吹き付けるための吐出口を含んだ加圧空気吐出用の第4作用区域が前記第3作用区域の下流側に形成されている請求項1記載のノズル。
【請求項3】
前記ノズルが前記機械方向の上流から下流に向かって互いに分離可能に密着して並ぶ第1プレートと第1シムと第2シムと第3シムと第2プレートとを含み、前記第1プレートには前記第1作用区域が形成されており、前記第1シムには前記第1シムを形成する金属プレートを切り欠くことによって、前記第1区画部と前記接着剤の流路とが形成されていて、前記第1シムとこれに密着する前記第1プレートと前記第2シムとによって前記接着剤の流路の端部に前記接着剤の吐出口が画成され、前記第3シムには前記第3シムを形成する金属プレートを切り欠くことによって前記加圧空気の流路が形成されていて、前記第3シムとこれに密着する前記第2シムと前記第2プレートとによって前記加圧空気の流路の端部に前記加圧空気の吐出口が画成されており、前記第1プレートにはさらに前記ノズルの外部から前記接着剤を前記接着剤の流路へ導くことのできる接着剤案内路が形成され、前記第2プレートには前記ノズルの外部から前記加圧空気を前記加圧空気の流路へ導くことのできる加圧空気案内路が形成されている請求項2記載のノズル。
【請求項4】
前記ノズルが前記機械方向の上流から下流へ向かって互いに分離可能に密着して並ぶ第1プレートとシムと第2プレートとを含み、前記第1プレートには前記第1作用区域と前記接着剤の流路とが形成され、前記シムには前記第3作用区域が形成され、前記第2プレートには前記加圧空気の流路が形成され、互いに密着する前記第1プレートと前記シムとによって前記接着剤の吐出口が画成され、互いに密着する前記第2プレートと前記シムとによって前記加圧空気の吐出口が画成されており、前記第1プレートにはさらに前記ノズルの外部から前記接着剤を前記接着剤の流路へ導くことのできる接着剤案内路が形成され、前記第2プレートには前記ノズルの外部から前記加圧空気を前記加圧空気の流路へ導くことのできる加圧空気案内路が形成されている請求項2記載のノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−279938(P2010−279938A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137664(P2009−137664)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】