説明

接着性樹脂組成物並びにこれを用いた積層体及びフレキシブル印刷配線板

【課題】 難燃性に優れた非ハロゲン系接着性組成物で、しかも優れた剥離強度を得ることができる接着性組成物、およびこれを用いた積層体、フレキシブル印刷配線板を提供する。
【解決手段】 (A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂;(B)エポキシ供与モノマーユニット及びスチレン系モノマーユニットを含有するエポキシ含有スチレン系共重合体;(C)熱可塑性樹脂;(D)硬化剤を含む接着性樹脂組成物であって、該樹脂組成物に含まれる樹脂成分総量に対する(B)エポキシ含有スチレン系共重合体の含有率が3〜25質量%である。前記(B)成分は、重量平均分子量5000〜120000で、スチレン系モノマーユニットの含有率が35〜98質量%であることが好ましく、樹脂成分総量に対するスチレン系モノマーユニットの含有率が1〜20質量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル銅張り積層板等のフレキシブル印刷配線板に好適に用いられる接着性樹脂組成物、及びそれを用いたフレキシブル印刷配線板、並びに接着シート、カバーレイフィルム等の積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フレキシブル印刷配線板(フレキシブルプリント配線板)は、ポリイミドフィルム等の耐熱性フィルムからなる絶縁フィルムを基材とし、この絶縁フィルムの片面もしくは両面に、銅箔等を接着剤を用いて貼り合せた構造を基本とするものである。このような接着剤としては、従来より、エポキシ樹脂やフェノキシ樹脂等とアクリル、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂とのブレンド樹脂に難燃剤を配合した接着剤が用いられている。エポキシ樹脂やフェノキシ樹脂(以下、これらを特に区別しない場合は、「エポキシ/フェノキシ樹脂」と総称する場合がある)は、耐熱性、耐薬品性、機械的強度付与の役割を有し、熱可塑性樹脂は高接着性、柔軟性付与の役割を有している。
【0003】
難燃剤としては、UL−94規格においてVTM−0クラス、V−0クラスの高い難燃性が要求される。従来、ハロゲン系難燃剤が用いられていたが、近年、環境汚染の問題から、ハロゲン系難燃剤に代えて、リン酸エステル、リン酸エステルアミド類、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10オキシド及びその誘導体、ホスファゼン化合物等のリン系難燃剤が用いられるようになっている。
【0004】
しかしながら、これらのリン系難燃剤だけで、UL−94規格においてVTM−0クラス、V−0クラスの高い難燃性を満足するためには、ハロゲン系難燃剤を用いる場合よりも大量に配合させる必要がある。しかしながら、リン系難燃剤の配合量が増大するに従って、接着性や機械的強度が低下する。
【0005】
このような問題を解決するために、近年、リンの難燃効果を利用した樹脂を用いることで、リン系難燃剤の配合量を抑制することが提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1(特開2003−176470号公報)では、リン含有エポキシ樹脂を使用し、さらに熱可塑性樹脂の一部として、リン含有フェノキシ樹脂を使用して、組成物中のリン含有率を2重量%以上とした、非ハロゲン系接着性樹脂組成物が提案されている。
【0007】
また、特許文献2(特開2005−248134号公報)には、難燃性に優れる非ハロゲン系接着性樹脂組成物として、非ハロゲン系エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムなどの熱可塑性樹脂及び/又は合成ゴム、硬化剤、リン酸エステル化合物等のリン含有化合物を用いた接着剤樹脂組成物が提案されている。
【0008】
また、特許文献3(WO01/60938号公報)には、エポキシ樹脂、硬化剤、エポキシ樹脂と非相溶性である高分子化合物を含有してなる接着性樹脂組成物が提案されている。エポキシ樹脂と非相溶性の高分子化合物としては、エポキシ基等の官能基を含有する重量平均分子量10万以上のアクリル共重合体が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−176470号公報
【特許文献2】特開2005−248134号公報
【特許文献3】WO01/60938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、難燃性に優れたフレキシブル印刷配線板用の非ハロゲン系接着性樹脂組成物が種々提案されている。しかしながら、フレキシブル印刷配線板の自動車回り等への適用用途拡大や更なる軽量化、狭小スペースの収納対応等に応じるためには難燃性、耐熱性、耐薬品性、機械的強度を更に向上する必要がある。解決手段として、エポキシ/フェノキシ樹脂の増量、リン含有エポキシ/リン含有フェノキシ樹脂の配合、より高分子量であるエポキシ/フェノキシ樹脂の配合が考えられるが、この場合、接着性低下、相溶性不良という新たな課題を招来する。相溶性が悪いと、仮に強制混合により分散させても、塗工中に配合成分が分離したり、凝集・ゲル化が発生して塗工が不均一となるなどの理由で、所期の接着強度等の特性が得られなかったり、製品間でバラツキが大きくなる原因となる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、難燃性に優れた非ハロゲン系接着性樹脂組成物で、しかも優れた剥離強度を得ることができる接着性樹脂組成物、およびこれを用いた積層体、フレキシブル印刷配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、種々検討の結果、エポキシ含有スチレン系共重合体を特定量配合することにより、エポキシ/フェノキシ樹脂と熱可塑性樹脂及びエポキシ基含有スチレン系共重合体との相溶性を損なうことなく、接着性を大きく改善できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の接着性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂;(B)エポキシ供与モノマーユニット及びスチレン系モノマーユニットを含有するエポキシ含有スチレン系共重合体;(C)熱可塑性樹脂;(D)硬化剤を含む接着性樹脂組成物であって、該樹脂組成物中に含まれる樹脂成分総量の前記(B)エポキシ含有スチレン系共重合体の含有率が3〜25質量%である。
【0014】
前記(B)エポキシ含有スチレン系共重合体は、重量平均分子量5000〜120000で、前記(B)における前記スチレン系モノマーユニットの含有率は35〜98質量%であることが好ましく、樹脂成分総量対する前記スチレン系モノマーユニットの含有率は1〜20質量%であることが好ましい。
【0015】
また、前記(B)エポキシ含有スチレン系共重合体は、さらにアクリロニトリルモノマーユニットを含有していてもよい。そして、エポキシ当量は250g/eq以上、3500g/eq以下であることが好ましく、エポキシ供与モノマーとしては、(メタ)アクリルグリシジルエステルであることが好ましい。
【0016】
前記(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂は、リン含有エポキシ樹脂及び/又はリン含有フェノキシ樹脂であることが、難燃性付与の点から好ましい。また、リン系難燃剤をさらに含み、樹脂組成物の固形分に対するリン含有率が3.1〜4.5質量%とすることが好ましい。
【0017】
本発明の積層体は、基材フィルム上に、上記本発明の接着性樹脂組成物からなる接着層を有するもので、さらにこの積層体を含むフレキシブル印刷配線板も、本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接着性樹脂組成物は、配合される樹脂成分同士の相溶性に優れているので、塗工性、保存安定性に優れ、所期の接着強度、機械的特性、化学的特性を発揮できる一液性接着剤溶液を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、今回、開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
〔接着性樹脂組成物〕
本発明の接着性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂;(B)エポキシ供与モノマーユニット及びスチレン系モノマーユニットを有するスチレン系共重合体;(C)熱可塑性樹脂;及び(D)硬化剤を含む接着性樹脂組成物であって、樹脂成分中の前記(B)エポキシ含有スチレン系共重合体の含有率を所定範囲内としたものである。
以下、各成分について順に説明する。
【0021】
(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する樹脂であればよく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、好ましくは、これらのエポキシ樹脂に反応性リン化合物を用いてリン原子を結合させたリン含有エポキシ樹脂である。リン含有エポキシ樹脂は、リンによる難燃効果を発揮することにより、非ハロゲン系難燃剤の含有量を減らすことができ、その結果、難燃剤配合に伴う接着強度や機械強度の低下を防ぐことができるので好ましい。しかし、リン含有量の増加とともに、他の樹脂との相溶性は悪くなる傾向にあるので、リン含有エポキシ樹脂、リン含有フェノキシ樹脂の場合、リンが組み込まれるエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂の各質量に対するリン含有率は、2〜6質量%とすることが好ましい。
【0022】
リン含有エポキシ樹脂、リン含有フェノキシ樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、東都化成製のFX289、FX305、ERF001、大日本インキ化学工業株式会社製のエピクロンEXA9710などが挙げられる。
【0023】
フェノキシ樹脂に分類される分子量が高いエポキシ樹脂についても同様である。フェノキシ樹脂や分子量の高いエポキシ樹脂を用いた接着剤は、カバーレイや接着シートなどにおける半硬化時の硬化度の制御が容易、ライフが長い等のメリットや、短時間の加熱で、所望の接着性及び機械的特性が得られ、CCL製造やPPC製造において高生産性である、フロー特性に優れる等のメリットがあり、好ましい。
【0024】
エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は特に限定しないが、エポキシ樹脂においては高分子量になるほど、他の樹脂との相溶性は悪くなる傾向にあり、フェノキシ樹脂については更にその傾向が強いので、これらの樹脂の重量平均分子量は、使用する種類に応じて、相溶性との関係で適宜決めることが好ましい。
【0025】
上記のようなエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂は、1種類だけ用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。また、エポキシ樹脂とフェノキシ樹脂とを混合して用いてもよい。
【0026】
尚、本発明の接着性樹脂組成物における(A)成分の含有率は特に限定しないが、良好な耐熱性、耐薬品性、機械特性を得るためには、組成物に含まれる樹脂成分のうち、(A)成分の含有率を最も多くすることが好ましく、具体的には、樹脂組成物に含まれる樹脂成分質量((A)成分、(B)成分、(C)成分の総量、さらに他の樹脂が含まれる場合には、その樹脂も加えた量)に対して40〜70質量%とすることが好ましい。
【0027】
(B)エポキシ含有スチレン系共重合体
本発明で用いられるエポキシ含有スチレン系共重合体とは、エポキシ供与モノマー、スチレン系モノマー、さらに必要に応じてその他の共重合性不飽和モノマーを共重合してなる共重合体である。
【0028】
エポキシ供与モノマーとしては、共重合性の不飽和結合を有し、且つ側鎖にエポキシ基を有する化合物であればよいが、好ましくはグリシジル基含有不飽和モノマーが用いられる。具体的には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸モノグリシジルエステル等の不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル等のグリシジルエーテル類などが挙げられ、これらのうち、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好ましく用いられる。
【0029】
スチレン系モノマーとしては、スチレンの他、o,m,p−メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン等の核置換スチレン;α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、β−クロロスチレンなどのスチレン誘導体も含まれる。これらのうち、好ましくはスチレンである。
【0030】
その他の共重合性不飽和モノマーとしては、特に限定しないが、エチレン、プロピレン等のオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルベンゾエート等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等のα,β不飽和カルボン酸又はその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;アクリロニトリル等のニトリル類などが挙げられる。これらの共重合性不飽和モノマーは、必要に応じて、エポキシ供与モノマー、スチレン系モノマーとともに用いられる。
【0031】
特に、他の共重合性不飽和モノマーとしてアクリロニトリルを用いた場合、相溶性、接着強度が向上するので好適である。
一方、アミノ基、カルボキシル基を有するモノマーユニットを含有するエポキシ含有スチレン系共重合体は、保管時に徐々に硬化反応を進ませる原因となり、接着剤としてのポットライフを損ねる場合があるので、アミノ基、カルボキシル基含有モノマーユニットの含有量は少ない方が好ましい。また、ブタジエン等のいわゆるゴム成分となるジエン系モノマーは、耐候性、耐熱性低下の原因となるので、含有させないことが好ましい。
【0032】
本発明で用いられるエポキシ含有スチレン系共重合体は、上記モノマーを共重合してなるもので、エポキシ供与モノマーとスチレン系モノマーとのランダム共重合体であってもよいし、エポキシ供与モノマーが重合してなるセグメントと、スチレン系モノマーが重合してなるセグメントが結合してなるブロックコポリマー、グラフトコポリマーであってもよい。また、その他の共重合性不飽和モノマーユニットを有する場合、エポキシ供与モノマー、スチレン系モノマー、および他の共重合性不飽和モノマーをランダムに共重合した共重合体であっても、エポキシ供与モノマーが重合してなるセグメントと、スチレン系モノマーが重合してなるセグメントと、その他のビニル系モノマーを重合してなるセグメントとが適宜組み合わされたブロックコポリマーであってもよいし、エポキシ供与モノマーが重合してなるセグメントと、スチレン系モノマーとビニル系モノマーがランダム共重合してなるセグメントとのブロックコポリマーであってもよい。
【0033】
エポキシ含有スチレン系共重合体(B)の重量平均分子量は、特に限定しないが、5000〜120000程度が好ましく、より好ましくは6000〜90000、さらに好ましくは8000〜28000である。分子量が高くなりすぎると相溶性が悪化し、均一な接着剤溶液が得られにくい。
【0034】
エポキシ含有スチレン系共重合体(B)に代えて、相溶性の優れるモノマーの状態で配合し、加熱によりポリマー化することも一般に行われているが、反応に時間がかかることや反応不足モノマー及び残留する反応開始剤や反応促進剤が硬化物の特性に影響を与えたり、あるいは、保管時に徐々に反応が進んでゲル化するなど、保管安定性の問題があるため好ましくない。従って、ある程度反応が進んだ重量平均分子量5000以上のエポキシ含有スチレン系共重合体(B)を用いることが好ましい。
【0035】
エポキシ含有スチレン系共重合体(B)のエポキシ当量は、250g/eq以上で、3500g/eq以下であることが好ましく、より好ましくは3000g/eq以下、更に好ましくは2000g/eq以下である。3500g/eqを超えると、分子量にもよるが、相溶性が悪化し、結果として接着性樹脂組成物の均質性が低下し、ひいては接着性、難燃性が低下する傾向にある。従って、エポキシ含有スチレン系共重合体(B)におけるエポキシ供与モノマーの含有率は、エポキシ含有スチレン系共重合体の分子量にもよるが、エポキシ当量が上記範囲内となるようにすることが好ましい。
尚、エポキシ基以外の官能基を有するモノマーを共重合後にエポキシ基に置換することにより同様のエポキシ基含有ポリマーを得ても構わない。しかし、エポキシ当量が3500g/eq以下、好ましくは3000g/eq以下、より好ましくは2000g/eq以下というエポキシ基が高濃度に組み込まれたポリマーを合成するには、エポキシ基供与モノマーを重合する方が容易であるので、望ましい。
【0036】
エポキシ含有スチレン系共重合体(B)におけるスチレン系モノマーユニットの含有率は、35〜98質量%であることが好ましく、より好ましくは45〜96質量%である。スチレンモノマーユニットの含有率が低くなると、得られる接着性樹脂組成物の接着性が低下する傾向にある。一方、スチレン系モノマーユニットの含有率が高くなりすぎると、エポキシ供与モノマーユニットの含有率が相対的に小さくなるため、(A)成分であるエポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂との相溶性、(C)成分である熱可塑性樹脂との相溶性が低下し、均一な溶液タイプの接着剤を調製することが困難になり、ひいては接着性の低下をもたらす。
【0037】
エポキシ含有スチレン共重合体において、エポキシ供与モノマーユニット、スチレン系モノマーユニット以外の他の共重合性モノマーユニットが含まれる場合、他の共重合性不飽和モノマーユニットの含有率は40質量%未満である。また、他の共重合性不飽和モノマーとしてアクリロニトリルを含有させる場合、共重合系においてアクリロニトリルの量が多くなると、未反応のアクリロニトリルモノマーが残存しやすくなり、エポキシ含有スチレン共重合体中に含有されて悪影響を及ぼす場合があるので、エポキシ含有スチレン共重合体におけるアクリロニトリルの含有率は1〜20質量%とすることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。
【0038】
以上のような構成を有するエポキシ含有スチレン系共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、日本油化株式会社のマープルーフGシリーズなどが挙げられる。
【0039】
以上のような構成を有する(B)エポキシ含有スチレン系共重合体は、(A)成分たるエポキシ樹脂及び/またはフェノキシ樹脂、(C)成分である熱可塑性樹脂の双方に対して良好な相溶性を有し、均一性、保存安定性が良好な接着剤溶液を提供でき、さらに均一性の高い接着剤溶液であることに基づいて、高い接着性を発揮することができる。さらには、(B)エポキシ含有スチレン系共重合体中のエポキシ基により(A)成分と架橋構造を形成することができるので、優れた機械特性を付与することができる。
【0040】
接着性樹脂組成物における(B)エポキシ含有スチレン系共重合体の含有率は、樹脂組成物に含まれる樹脂成分((A)成分、(B)成分、(C)成分の総量、さらに他の樹脂を含む場合にはそれを加えた量)に対して3〜25質量%であり、好ましくは3〜20質量%であり、より好ましくは5〜16質量%である。3質量%未満では、エポキシ含有スチレン系共重合体の配合による接着性向上効果が得られない。一方、25質量%を超えると、(A)成分、(C)成分との相溶性が低下し、ひいては接着剤としての保存安定性、接着強度の低下の原因となるからである。
【0041】
また、(B)エポキシ含有スチレン系共重合体におけるスチレン系モノマーユニットの含有率は、樹脂組成物に含まれる樹脂成分量((A)成分、(B)成分、(C)成分の総量、さらに他の樹脂を含む場合にはそれを加えた量)に対して1〜20質量%とすることが好ましく、より好ましくは3〜15質量%、さらに好ましくは4〜12質量%である。
【0042】
(C)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂(C)としては、特に限定せず、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドスルホン等)、ポリスルホン樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等)、ポリエーテルイミド樹脂(ポリ−N−ホルミルエチレンイミン樹脂等)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂等)、ケトン樹脂(脂肪族ポリケトン樹脂、アセトンホルムアルデヒド樹脂、アセトンフルフラール樹脂、環状ケトン樹脂等)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0043】
これらの熱可塑性樹脂のうち、(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂、(B)エポキシ含有スチレン系共重合体の双方に対する相溶性及び接着性を考慮すると、ポリアミド樹脂が好ましく用いられる。
【0044】
リンを分子中に組み込んだ熱可塑性樹脂は、難燃性に優れるため、難燃剤の配合量を減らすことができ、難燃剤配合に伴う接着強度の低下を防ぐことができるので好ましい。市販のリン含有熱可塑性樹脂としては、例えば、東洋紡社製のバイロン237、337、537、637、UR3570などが挙げられる。
【0045】
ポリアミド樹脂はジカルボン酸、ジアミン、アミノカルボン酸、ラクタム等の反応により合成することができ、1種類のジカルボン酸とジアミンとの反応に限らず、複数のジカルボン酸と複数のジアミンを用いて合成してもよい。
ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,5−、2,5−、2,6−および2,7−体)酸、ビフェニルジカルボン酸(2,2′−、3,3′−および4,4′−体)、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸(2,5−および2,6−体)、フェニレンジアセティック酸(o−、m−およびp−体)、フェニレンジプロピオン酸(o−、m−およびp−体)、フェニルマロン酸、フェニルグルタル酸およびジフェニルコハク酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマール酸およびイタコン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−ジカルボキシメチルシクロヘキサン、1,4−ジカルボキシメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシル−4,4′−ジカルボン酸およびダイマー酸等があげられる。
また、上記ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、p−ジ−アミノメチルシクロヘキサン、ビス(p−アミンシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)シクロヘキサン、ピペラジン、イソホロンジアミン等があげられる。
上記アミノカルボン酸としては、例えば、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、4−アミノメチル安息香酸、4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、7−アミノエナント酸、9−アミノノナン酸等があげられる。
上記ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等があげられる。
これらのうち特にダイマー酸を構成成分に含むポリアミドは、常法のダイマー酸とジアミンの重縮合により得られるが、この際にダイマー酸以外のアジピン酸、アゼライン酸またはセバシン酸などのジカルボン酸を共重合成分として含有してもよい。
【0046】
以上のような熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が70℃以下のものが好ましく用いられる。ガラス転移温度が高すぎると、取り扱い性が低下するからである。また、ガラス転移温度が高すぎると、接着性が低下する傾向にある。
【0047】
(D)硬化剤
硬化剤は、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂の硬化剤として用いられるものであればよく、ポリアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、三フッ化ホウ素アミン錯塩、イミダゾール系硬化剤、芳香族ジアミン系硬化剤、カルボン酸系硬化剤、フェノール樹脂等が用いられる。
ポリアミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、テトラエチレンテトラミン等の脂肪族アミン系硬化剤;イソホロンジアミン等の脂環式アミン系硬化剤;ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン等の芳香族アミン系硬化剤;ジシアンジアミド等が挙げられる。酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、ピロメリト酸無水物、トリメリト酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂のエポキシ当量に応じて適宜決められる。
【0048】
(E)その他
本発明の接着性樹脂組成物は、(A)成分としてのエポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂、(B)成分としてのエポキシ含有スチレン系共重合体、(C)成分としての熱可塑性性樹脂、(D)成分たる硬化剤の他、さらに、他のエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、オキサジン樹脂等を添加してもよい。
【0049】
また、非ハロゲン系難燃剤、好ましくはリン系難燃剤を含有してもよい。
本発明で用いることができる非ハロゲン系難燃剤としては、リン酸エステル、リン酸エステルアミド、ホスファゼン、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシドなどのリン系化合物が挙げられる。これらのうち、ホスファゼンが、リン濃度及び溶剤との溶解性の観点から好ましく用いられる。ホスファゼンとは、リンと窒素を構成元素とする二重結合をもつ化合物群の慣用名で、分子中にホスファゼン構造をもつ化合物であれば特に限定しない。環状構造のシクロホスファゼン、それを開環重合して得られる鎖状ポリマー、オリゴマーであってもよい。
【0050】
非ハロゲン系難燃剤を含有させる場合、含有率が増大するにしたがって接着性が低下するので、最大でも樹脂分100質量部あたり30質量部以下とすることが好ましい。
【0051】
なお、非ハロゲン系難燃剤として、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物(無機フィラー)は接着性の低下の原因となるので、含有させないことが好ましい。
【0052】
〔接着性樹脂組成物の調製〕
本発明の接着性樹脂組成物は、以上のような(A)〜(D)成分、さらに必要に応じて、他の熱硬化性樹脂、非ハロゲン系難燃剤、その他の添加剤を配合して調製される。
接着性樹脂組成物中のリン含有率が3.1〜4.5質量%となるように調製することが好ましい。
【0053】
また、硬化促進剤、シランカップリング剤、レべリング剤、消泡剤などを適宜配合してもよいが、硬化促進剤を添加すると接着剤としてのポットライフが短くなり、接着性の低下がみられる傾向にあるので、配合しない方がよい。また、無機充填剤の添加は、接着性、マイグレーション特性を低下させる傾向にあるので、配合しない方がよい。
【0054】
本発明の接着性樹脂組成物は、通常、有機溶剤に溶解し、接着剤溶液として用いられる。有機溶剤としては、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジオキソラン、ヘキサン、トリエチルアミン、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、セロソルブ、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、キシレン、N−メチルピロリドンなどを用いることができる。
接着剤溶液における固形分濃度は、塗工方式にもよるが、10〜50質量%とすることが好ましい。
【0055】
以上のような構成を有する本発明の接着性樹脂組成物は、(B)成分であるエポキシ含有スチレン系共重合体の共存により、各樹脂成分が分離・凝集することなく均一に混ざりあった、高接着性の一液性接着剤を提供できる。
【0056】
〔用途〕
以上のような構成を有する本発明の接着性樹脂組成物は、非ハロゲン系で、UL−94規格のV−0クラス、VTM−0クラスの難燃性を充足し、優れた接着性を発揮できる溶液タイプの接着剤溶液を提供できるので、接着シート、カバーレイなどの積層体やフレキシブル印刷配線板などに用いる接着剤として有用である。
【0057】
特に、本発明の接着性樹脂組成物は、透明な溶液タイプの接着剤として保存性に優れるので、基材フィルム上に塗工して使用する溶液タイプの接着剤として、生産現場で好適に用いることができる。
【0058】
フレキシブル印刷配線板は、絶縁フィルムと金属箔とが、上記本発明の接着性樹脂組成物の硬化物により複数層に貼着されたものである。すなわち絶縁フィルム上に本発明の接着性樹脂組成物を塗布、乾燥(半硬化状態)し、さらに金属箔を積層した後、加熱硬化することにより作製したもの(所謂、三層基板);絶縁フィルム上に本発明の接着性樹脂組成物を塗布、乾燥(半硬化状態)し、接着層の露出面をセパレータと呼ばれる絶縁フィルムで覆ったもの(所謂、カバーレイ);セパレータ上もしくは基材フィルム上に本発明の接着性樹脂組成物を塗布、乾燥(半硬化状態)し、露出面をセパレータで覆ったもの(所謂、接着シート)等を積層し、加熱硬化することにより、フレキシブル印刷基板を形成することができる。なお、セパレータは積層時に除去される。
【0059】
ここで、半硬化状態とは、接着性を有する状態で、本発明の接着性樹脂組成物を、例えば100〜180℃で2分間加熱することにより形成される。加熱硬化状態とは、半硬化状態の接着層を、例えば140〜180℃で10分〜数時間加熱、さらに必要に応じて加圧することにより形成され、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)が硬化剤と加熱反応して硬化した状態をいう。好適な加熱時間は、その接着剤の構成成分、用途(例えば基板、カバーレイ、あるいはボンディングフィルムなど)によって異なる。
【0060】
本発明の三層基板は、絶縁フィルムの少なくとも片面に、金属箔が貼着されていればよく、絶縁性フィルム、接着層、金属箔層とからなる3層構造(所謂、三層片面基板)の他、金属箔、接着層、電機絶縁性フィルム、接着層、金属箔層からなる5層構造(所謂、三層両面基板)であってもよい。
【0061】
絶縁フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムなどが挙げられる。
金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられるが、銅箔が好適に用いられる。
【0062】
カバーレイフィルムとは、フレキシブル銅張り積層板の銅箔を加工して配線パターンを形成した後に、その配線を保護するために、その配線パターン形成面を被覆する材料として用いられる積層体で、絶縁フィルム上に本発明の接着性樹脂組成物からなる半硬化状態の接着層が積層されたものである。通常、接着層上には、離型性を有するセパレータが貼付されている。
【0063】
接着シートとは、セパレータと、場合によっては、基材フィルムと本発明の接着性樹脂組成物からなる半硬化状態の接着層を積層したものであり、基板の積層や、補強板の貼付に使われる。上記基材フィルムとしては、用途に応じて、ポリイミドフィルム等の耐熱性、絶縁性フィルムや、ガラス繊維強化樹脂シート、不織布などを基材としたプリプレグシートであってもよい。
【実施例】
【0064】
本発明を実施するための最良の形態を実施例により説明する。実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
〔接着性樹脂組成物の測定評価方法〕
(1)相溶性
調製した接着剤溶液を目視で観察し、透明溶液(但し、磨りガラス程度の不透明度は含む)が得られていた場合は「○」、白濁し1週間放置後には分離が認められた場合は「△」、強制的に攪拌混合しても2時間以内に分離層が発生する場合は「×」とした。
【0066】
(2)剥離強度
厚み25μmのポリイミドフィルム表面に、調製した接着剤溶液を、乾燥後20μmの厚みとなるように塗布し、150℃で2分間乾燥させて、半硬化状態の接着層を形成した。この半硬化状態の接着層上に、厚み18μmの圧延銅箔を積層した後、熱プレスにて3MPaの圧力下、160℃で40分間加熱を行い、フレキシブル印刷配線板を作成した。作製したフレキシブル印刷配線板について、JIS C 6481に準拠し、23℃において、銅箔側から引張り、ポリイミドフィルムから剥がすときの剥離強度(N/cm)を測定した。
なお、剥離強度が20N/cm超の場合には、銅箔が破断してしまい、測定できなかった。
【0067】
(3)難燃性
(2)で作製したポリイミドフィルムと半硬化状態の接着層との積層物を、銅箔を積層せず、圧力をかけずに160℃で40分加熱したものを用いて、UL−94に準拠して難燃性の評価試験を行った。そして、上記規格に合格(V−0クラス)のものを「OK」、不合格のものを「NG」とした。
【0068】
〔接着性樹脂組成物No.1〜13の調製及び評価〕
表1に示すような割合で、ポリアミド樹脂(C)、リン含有エポキシ/フェノキシ樹脂(A)、エポキシ含有スチレン系共重合体(B)を配合し、さらに難燃剤であるホスファゼン及び硬化剤を添加して、溶媒(メチルエチルケトン及びジメチルホルムアミド)に攪拌溶解し、固形分濃度30質量%の接着剤溶液No.1〜13を調製した。
【0069】
リン含有エポキシ/フェノキシ樹脂としては、東都化成のリン含有エポキシFX289とリン含有フェノキシERF001の1:1混合物を使用し、エポキシ含有スチレン系共重合体としては、No.1〜8については日本油脂株式会社の「マープルーフG0250S」(分子量20000、エポキシ当量310g/eq、エポキシ含有スチレン系共重合体におけるスチレンモノマーユニットの含有率54質量%)、No.9〜13については、「ブレンマーCP5SA」(分子量10000、エポキシ当量2500g/eq、エポキシ含有スチレン共重合体におけるスチレンモノマーユニットの含有率85質量%、アクリルニトリルモノマーユニットの含有率10質量%)を用いた。ホスファゼンとしては、大塚化学製のSPB100を用い、接着性樹脂組成物の固形分に対するリン含有率が3.5質量%となるように配合量を決定した。硬化剤としては、三菱化学社製のトリメリット酸を使用し、エポキシ当量から計算される適当量を配合した。
【0070】
調製した接着剤溶液No.1〜13について、上記評価方法に基づいて、相溶性及び剥離強度を測定した。測定結果を樹脂配合組成と併せて、表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1からわかるように、エポキシ含有スチレン系共重合体の含有量の増大に従い、相溶性が低下していった。接着性樹脂組成物中の樹脂成分((A)成分、(B)成分、(C)成分の総和量)に対するエポキシ含有スチレン系共重合体の含有率が20質量%の場合(No.6)では接着剤溶液の透明性が損なわれ、さらにエポキシ含有スチレン系共重合体の含有率が25質量%を超えると(No.7,8,13)、接着剤溶液が2層に分離してしまい、そのままで基材フィルムに塗工することはできなかった。
【0073】
尚、No.6と同じくエポキシ含有スチレン系共重合体の含有率が20質量%であるNo.12では、アクリロニトリルが他の共重合不飽和単量体として含まれることにより相溶性が改善され、透明性が維持されていた。一方、剥離強度については、エポキシ含有スチレン系共重合体の含有量増大にしたがって、向上する傾向が認められた。
従って、エポキシ含有スチレン系共重合体による剥離強度増大効果を有効に得るためには、樹脂成分量に対するエポキシ含有スチレン系共重合体の含有率を3〜25質量%、好ましくは3〜20質量%とすることが効果的であることがわかる。
【0074】
〔接着性樹脂組成物No.21〜30の調製及び評価〕
表2に示すような特性を有するエポキシ含有スチレン系共重合体を、表2に示す割合で含有させ、溶媒(メチルエチルケトン及びジメチルホルムアミド)に攪拌溶解し、固形分濃度30質量%の接着剤溶液No.21〜28(樹脂成分におけるエポキシ含有スチレン系共重合体の含有率は6.7質量%である)を調製した。
【0075】
なお、No.21〜25で用いたエポキシ含有スチレン系共重合体は、グリシジルメタクリレートとスチレンとのランダム共重合体であり、No.26、27で用いたエポキシ含有スチレン系共重合体は、グリシジルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリルの三元共重合体であり、No.28はNo.21で用いたエポキシ含有スチレン系共重合体とNo.23で用いたエポキシ含有スチレン系共重合体の1:1混合物である。
【0076】
なお、ポリアミド樹脂、リン含有エポキシ樹脂、および難燃剤については、接着性樹脂組成物No.1と同様のものを用いた。
また、比較のため、(B)成分であるエポキシ含有スチレン系共重合体を配合しない接着性樹脂組成物No.29,30を用いて、No.21と同様にして接着剤溶液を調製した。
調製した接着剤溶液について、上記評価方法に基づいて、相溶性、剥離強度、難燃性を測定評価した。測定結果を樹脂配合組成及びエポキシ含有スチレン系共重合体特性と併せて、表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
エポキシ含有スチレン系共重合体を配合しない樹脂組成物(No.29)では、剥離強度を充足できない。難燃剤の含有量を減らすことで剥離強度を増大させることはできるが、その改善の程度は不十分であり、もはやリン含有率が低くなりすぎて、難燃性を充足することができなかった(No.30)。
【0079】
一方、エポキシ含有スチレン系共重合体を配合した本発明実施例の樹脂組成物(No.21〜28)は、いずれも難燃性を満足し、高い接着強度を確保することができた。しかしながら、重量平均分子量が10万と高く、しかもスチレンモノマーユニットの含有率が高くなると、相溶性が劣る傾向にあった(No.24、25)。しかしながら、分子量が10万のエポキシ含有スチレン系共重合体を用いた場合であっても、アクリロニトリルを含有するエポキシ含有スチレン系共重合体を用いたNo.26,27は相溶性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の接着性樹脂組成物は、接着性、難燃性に優れ、しかも生産ラインにて、製品間の接着性ばらつきが問題となったり、使用開始の度に、攪拌したり、装置洗浄などを行わなければならないといったポットライフ、保存性の問題もなく、生産ラインなどでの連続的、間欠的使用に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂;(B)エポキシ供与モノマーユニット及びスチレン系モノマーユニットを含有するエポキシ含有スチレン系共重合体;(C)熱可塑性樹脂;(D)硬化剤を含む接着性樹脂組成物であって、
該接着性樹脂組成物に含まれる樹脂成分総量に対する前記(B)エポキシ含有スチレン系共重合体の含有率が3〜25質量%である接着性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)エポキシ含有スチレン系共重合体は、重量平均分子量5000〜120000で、前記スチレン系モノマーユニットの含有率が35〜98質量%である請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項3】
前記接着性樹脂組成物に含まれる樹脂成分総量に対する前記スチレン系モノマーユニットの含有率が1〜20質量%である請求項1または2に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)エポキシ含有スチレン系共重合体は、さらにアクリロニトリルモノマーユニットを含有している請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)エポキシ含有スチレン系共重合体のエポキシ当量が250g/eq以上、3500g/eq以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)エポキシ含有スチレン系共重合体におけるエポキシ供与モノマーは、(メタ)アクリルグリシジルエステルである請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂は、リン含有エポキシ樹脂及び/又はリン含有フェノキシ樹脂である請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項8】
さらにリン系難燃剤を含み、樹脂組成物の固形分に対するリン含有率が3.1〜4.5質量%である請求項1〜7のいずれかに1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項9】
基材フィルム上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物からなる接着層を有する積層体。
【請求項10】
請求項9に記載の積層体を含むフレキシブル印刷配線板。

【公開番号】特開2010−260924(P2010−260924A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111505(P2009−111505)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】