説明

接続対象物の接続方法および電子装置の製造方法

【課題】例えば、電極などの接続対象物を互いに接続する場合に用いられる接続信頼性の高い接続方法および該接続方法を用いた電子装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1金属と、第1金属よりも融点が高く、第1金属と反応して310℃以上の融点を示す金属間化合物を生成する第2金属とからなる金属成分とを含む導電性材料を接続対象物の間に配置し、第1金属の融点以上の温度で導電性材料を加熱し、第1金属と第2金属とを反応させて両者の金属間化合物を生じさせるとともに、溶融した第1金属中で、金属間化合物を剥離、分散させながら反応を繰り返して行わせる。
第1金属として、SnまたはSnを70%以上含む合金を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電極などの接続対象物を互いに接続する場合に用いられる接続方法および該接続方法を用いた電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の実装の際に用いる導電性材料としては、はんだが広く用いられている。
ところで、従来から広く用いられてきたSn−Pb系はんだにおいては、高温系はんだとして、例えばPbリッチのPb−5Sn(融点:314〜310℃)、Pb−10Sn(融点:302〜275℃)などを用いて330〜350℃の温度ではんだ付けし、その後、例えば、低温系はんだのSn−37Pb共晶(183℃)などを用いて、上記の高温系はんだの融点以下の温度ではんだ付けすることにより、先のはんだ付けに用いた高温系はんだを溶融させることなく、はんだ付けによる接続を行う温度階層接続の方法が広く適用されている。
【0003】
このような温度階層接続は、例えば、チップをダイボンドするタイプの半導体装置や、フリップチップ接続などの半導体装置などで適用されており、半導体装置の内部ではんだ付けによる接続を行った後、さらに、該半導体装置自体をはんだ付けにより基板に接続するような場合に用いられる重要な技術である。
【0004】
この用途に用いられる導電性材料として、例えば、(a)Cu、Al、Au、Agなどの第2金属またはそれらを含む高融点合金からなる第2金属(または合金)ボールと、(b)SnまたはInからなる第1金属ボール、の混合体を含むはんだペーストが提案されている(特許文献1参照)。
また、この特許文献1には、はんだペーストを用いた接続方法や、電子機器の製造方法が開示されている。
【0005】
この特許文献1のはんだペーストを用いてはんだ付けを行った場合、図4(a)に模式的に示すように、低融点金属(例えばSn)ボール51と、高融点金属(例えばCu)ボール52と、フラックス53とを含むはんだペーストが、加熱されて反応し、はんだ付け後に、図4(b)に示すように、複数個の高融点金属ボール52が、低融点金属ボールに由来する低融点金属と、高融点金属ボールに由来する高融点金属との間に形成される金属間化合物54を介して連結され、この連結体により接続対象物が接続・連結される(はんだ付けされる)ことになる。
【0006】
しかしながら、この特許文献1のはんだペーストの場合、はんだ付け工程ではんだペーストを加熱することにより、高融点金属(例えばCu)と低融点金属(例えばSn)との金属間化合物を生成させるようにしているが、Cu(高融点金属)とSn(低融点金属)との組み合わせでは、その拡散速度が遅いため,低融点金属であるSnが残留する。Snが残留したはんだペーストの場合、高温下での接合強度が大幅に低下して、接続すべき製品の種類によっては使用することができなくなる場合がある。また、はんだ付けの工程で残留したSnは、その後のはんだ付け工程で溶融して流れ出すおそれがあり、温度階層接続に用いられる高温はんだとしては信頼性が低いという問題点がある。
【0007】
すなわち、例えば半導体装置の製造工程において、はんだ付けを行う工程を経て半導体装置を製造した後、その半導体装置を、リフローはんだ付けの方法で基板に実装しようとした場合、半導体装置の製造工程におけるはんだ付けの工程で残留したSnが、リフローはんだ付けの工程で溶融して流れ出してしまうおそれがある。
【0008】
また、Snが残留しないように、低融点金属を完全に金属間化合物にするためには、はんだ付け工程において、高温かつ長時間の加熱が必要となるが生産性との兼ね合いもあり、実用上不可能であるのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−254194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、例えば、電極などの接続対象物を互いに接続する場合に用いられる接続信頼性の高い接続方法および該接続方法を用いた電子装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の接続対象物の接続方法は、
(a)第1金属と、前記第1金属よりも融点が高く、前記第1金属と反応して310℃以上の融点を示す金属間化合物を生成する第2金属とからなる金属成分を含む導電性材料を、互いに接続すべき接続対象物の間に配置する工程と、
(b)前記第1金属の融点以上の温度で前記導電性材料を加熱する工程と
を備えるとともに、
前記導電性材料を加熱する工程において、前記第1金属と前記第2金属とを反応させて両者の金属間化合物を生じさせるとともに、溶融した前記第1金属中で、前記金属間化合物を剥離、分散させながら反応を繰り返して行わせること
を特徴としている。
【0012】
また、本発明の接続対象物の接続方法においては、前記第1金属はSnまたはSnを70%以上含む合金であることが好ましい。
第1金属として、SnまたはSnを70%以上含む合金を用いることにより、接続対象物間の接続をより確実なものにすることができる。
【0013】
また、前記第2金属は前記第2金属の周囲に最初に生成する金属間化合物の格子定数と前記第2金属成分の格子定数との差である格子定数差が50%以上の金属または合金であることが好ましい。
上記構成を備えることにより、第1金属と第2金属を確実に反応させて接合対象物間の接合を確実なものにすることができる。
【0014】
また、本発明の接続対象物の接続方法においては、前記導電性材料を加熱する工程において、前記第1金属のすべてを前記第2金属との金属間化合物とすることが好ましい。第1金属のすべてを第2金属との金属間化合物とすることにより、より耐熱強度の大きい接続構造を実現することができる。
【0015】
また、本発明の電子装置の製造方法は、本発明の接続対象物の接続方法を用いて接続対象物を接続する工程を備えていることを特徴としている。
【0016】
なお、本発明において用いられる導電性材料は、フラックス成分を含むことが好ましい。
【0017】
また、前記金属成分中に占める前記第2金属の割合は、30体積%以上であることが望ましい。
【0018】
また、前記第1金属は、Sn単体、または、Cu、Ni、Ag、Au、Sb、Zn、Bi、In、Ge、Al、Co、Mn、Fe、Cr、Mg、Mn、Pd、Si、Sr、Te、Pからなる群より選ばれる少なくとも1種とSnとを含む合金であることが望ましい。
【0019】
前記第2金属は、前記第2金属に占めるMnの割合が10〜15重量%であるCu−Mn合金、または、前記第2金属に占めるNiの割合が10〜15重量%であるCu−Ni合金であることが望ましい。
【0020】
また、前記第2金属は、比表面積が0.05m2・g-1以上のものであることが望ましい。
【0021】
また、前記第1金属のうち少なくとも一部が、前記第2金属の周りにコートされていることが望ましい。
【0022】
また、本発明の接続方法により形成される接続構造においては、前記金属間化合物が、前記導電性材料に由来する前記第2金属であるCu−Mn合金、または、Cu−Ni合金と、前記導電性材料に由来する前記第1金属である、Sn単体、または、Cu、Ni、Ag、Au、Sb、Zn、Bi、In、Ge、Al、Co、Mn、Fe、Cr、Mg、Mn、Pd、Si、Sr、Te、Pからなる群より選ばれる少なくとも1種とSnとを含む合金との間に形成された金属間化合物であることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の接続対象物の接続方法は、第1金属と、第1金属よりも融点が高く、前記第1金属と反応して310℃以上の融点を示す金属間化合物を生成する第2金属とからなる金属成分とを含む導電性材料を、互いに接続すべき接続対象物の間に配置し、第1金属の融点以上の温度で導電性材料を加熱するようにしているので、第1金属と第2金属とを反応させて両者の金属間化合物を生じさせるとともに、溶融した第1金属中で金属間化合物を剥離、分散させながら反応を繰り返して行わせることが可能になる。その結果、接続対象物間の接続を、耐熱強度の大きい信頼性の高い接続とすることができる。
【0024】
また、本発明の電子装置の製造方法は、上述の本発明の接続方法を用いて接続対象物を接続するようにしているので、電極などの接続対象物間を確実に接続することができる。すなわち、例えば、半導体装置を製造するにあたって、本発明の接続方法を用いて接続(はんだ付け)を行う工程を経て半導体装置を製造した後、製造された後の半導体装置を、リフローはんだ付けの方法で基板に実装するような場合にも、先のはんだ付けの工程におけるはんだ付け部分は、耐熱強度に優れているため、リフローはんだ付けの工程で再溶融してしまうことがなく、高い信頼性を確保することができる。
【0025】
なお、本発明の接続対象物の接続方法において使用する導電性材料を構成する第2金属として用いられる、Cu−Mn合金またはCu−Ni合金は、その周囲に最初に生成する金属間化合物との格子定数差が50%以上となるような合金である。
特に、第1金属をSnまたはSnを85重量%以上含む合金とすることにより、上記効果をより確実に奏させることが可能になる。
【0026】
すなわち、上述のような導電性材料を用いることにより、例えば、半導体装置の製造工程において、はんだ付けを行う工程を経て半導体装置を製造した後、その半導体装置を、リフローはんだ付けの方法で基板に実装するような場合にも、先のはんだ付けの工程におけるはんだ付け部分は、耐熱強度に優れているため、リフローはんだ付けの工程で再溶融してしまうことがなく、信頼性の高い実装を行うことが可能になる。
【0027】
なお、上記の「格子定数差」とは、金属間化合物の格子定数から第2金属成分の格子定数を差し引いた値を、第2金属成分の格子定数で除した数値の絶対値を100倍した数値(%)と定義される。
すなわち、この格子定数差は、第2金属との界面に新たに生成する金属間化合物の格子定数が、第2金属の格子定数に対してどれだけ差があるかを示すものであり、いずれの格子定数が大きいかを問わないものである。
なお、計算式で表すと以下のようになる。
格子定数差(%)={(金属間化合物の格子定数−第2金属の格子定数)/第2金属の格子定数}×100
【0028】
図1は、本発明の接続方法を用いて接続を行う場合の挙動を模式的に示す図である。
【0029】
図1に示すように、本発明の接続方法を用いて一対の電極11a,11bを接続する場合、図1(a)に示すように、まず、一対の電極11a,11b間に導電性材料10を位置させる。
【0030】
次に、この状態で接続部を加熱し、図1(b)に示すように、導電性材料10の温度が第1金属(SnまたはSnを70重量%以上含む合金)1の融点以上に達すると、導電性材料10中の第1金属1が溶融する。
【0031】
その後さらに加熱が続くと、第1金属1が、第2金属2との金属間化合物3(図1(c))を生成する。そして、本発明の接続方法において用いられる導電性材料10では、第1金属1と第2金属2との界面に生成する金属間化合物3と、第2金属2間の格子定数差が大きくなるように構成されている(すなわち、第2金属2と金属間化合物3との格子定数差が50%以上とされている)ため、溶融した第1金属中で金属間化合物が剥離,分散しながら反応を繰り返し、金属間化合物の生成が飛躍的に進行して短時間のうちに第1金属1(図1(a),(b))の含有量を十分に低減させることができる。さらに、第1金属1と第2金属2との組成比を最適化することにより、図1(c)に示すように、第1金属1をすべて金属間化合物とすることができる(図1(c)参照)。
その結果、耐熱強度の大きいはんだ付けを行うことが可能になる。
【0032】
また、第1金属と第2金属とからなる金属成分中に占める第2金属の割合を30体積%以上とすることにより、はんだ付け工程における、Snの残留割合をさらに低減させて、耐熱性をより高めることができる。
【0033】
また、第1金属として、Sn単体、または、Cu、Ni、Ag、Au、Sb、Zn、Bi、In、Ge、Al、Co、Mn、Fe、Cr、Mg、Mn、Pd、Si、Sr、Te、Pからなる群より選ばれる少なくとも1種とSnとを含む合金を用いることにより、他の金属(第2金属)との間で金属間化合物を形成しやすくすることが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0034】
また、第2金属として、Cu−Mn合金またはCu−Ni合金を用いることにより、さらには、Mnの割合が10〜15重量%であるCu−Mn合金、または、Niの割合が10〜15重量%であるCu−Ni合金を用いることにより、より低温、短時間で第1金属との間で金属間化合物を形成しやすくすることが可能になり、その後のリフロー工程でも溶融しないようにすることが可能になる。
第2金属には、第1金属との反応を阻害しない程度で、例えば、1重量%以下の割合で不純物が含まれていてもよい。不純物としては、Zn、Ge、Ti、Sn、Al、Be、Sb、In、Ga、Si、Ag、Mg、La、P、Pr、Th、Zr、B、Pd、Pt、Ni、Auなどが挙げられる。
また、接続性や反応性を考慮すると、第1および第2金属中の酸素濃度は2000ppm以下であることが好ましく、特に10〜1000ppmが好ましい。
【0035】
また、前記第2金属として、比表面積が0.05m2・g-1以上のものを用いることにより、第1金属との接触確率が高くなり、第1金属との間で、さらに金属間化合物を形成しやすくなるため、一般的なリフロープロファイルで高融点化を完了させることが可能になる。
【0036】
また、第1金属のうち少なくとも一部を、第2金属の周りにコートすることにより、第1金属と第2金属の間で、さらに金属間化合物を形成しやすくすることが可能になり、本願発明をより実効あらしめることができる。
【0037】
また、本発明の接続方法に用いられる導電性材料においては、フラックスを含ませることも可能である。
フラックスは、接続対象物や金属の表面の酸化被膜を除去する機能を果たす。フラックスとしては、例えば、ビヒクル、溶剤、チキソ剤、活性剤などからなる、公知の種々のものを用いることが可能である。
前記ビヒクルの具体的な例としては、ロジンおよびそれを変性した変性ロジンなどの誘導体からなるロジン系樹脂、合成樹脂、またはこれらの混合体などが挙げられる。
また、前記ロジンおよびそれを変性した変性ロジンなどの誘導体からなるロジン系樹脂の具体的な例としては、ガムロジン、トールロジン、ウッドロジン、重合ロジン、水素添加ロジン、ホルミル化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、その他各種ロジン誘導体などが挙げられる。
また、ロジンおよびそれを変性した変性ロジンなどの誘導体からなる合成樹脂の具体的な例としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂などが挙げられる。
【0038】
また、前記溶剤としては、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、芳香族系、炭化水素類などが知られており、具体的な例としては、ベンジルアルコール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸ブチル、アジピン酸ジエチル、ドデカン、テトラデセン、α−ターピネオール、テルピネオール、2−メチル2,4−ペンタンジオール、2−エチルヘキサンジオール、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジイソブチルアジペート、へキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2−ターピニルオキシエタノール、2−ジヒドロターピニルオキシエタノール、それらを混合したものなどが挙げられる。
【0039】
また、前記チキソ剤の具体的な例としては、硬化ヒマシ油、カルナバワックス、アミド類、ヒドロキシ脂肪酸類、ジベンジリデンソルビトール、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール類、蜜蝋、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミドなどが挙げられる。また、これらに必要に応じてカプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸のような脂肪酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸のようなヒドロキシ脂肪酸、酸化防止剤、界面活性剤、アミン類などを添加したものも前記チキソ剤として用いることができる。
【0040】
また、前記活性剤としては、アミンのハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物、有機酸、有機アミン、多価アルコールなどがあり、前記アミンのハロゲン化水素酸塩の具体的なものとして、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、ジフェニルグアニジン塩酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、エチルアミン塩酸塩、エチルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアニリン臭化水素酸塩、ジエチルアニリン塩酸塩、トリエタノールアミン臭化水素酸塩、モノエタノールアミン臭化水素酸塩などが例示される。
【0041】
なお、前記有機ハロゲン化合物の具体的な例として、塩化パラフィン、テトラブロモエタン、ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
また、前記有機酸の具体的な例として、マロン酸、フマル酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フェニルコハク酸、マレイン酸、サルチル酸、アントラニル酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、セバシン酸、ステアリン酸、アビエチン酸、安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ドデカン酸などがあり、さらに有機アミンの具体的なものとして、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン、アニリン、ジエチルアニリンなどが挙げられる。
また、前記多価アルコールとしてはエリスリトール、ピロガロール、リビトールなどが例示される。
【0042】
また、フラックスとして、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂またはその変性樹脂、アクリル樹脂からなる熱硬化性樹脂群より選ばれる少なくとも1種、あるいは、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂からなる熱可塑性樹脂群から選ばれる少なくとも1種を含むものを用いた場合にも、上述の本発明の作用効果をさらに確実に奏させることが可能になる。
上述のように、フラックスは、接続対象物や金属の表面の酸化被膜を除去する機能を果たすことから、本発明の接続方法に用いられる導電性材料においては、フラックスを含むことが好ましい。なお、フラックスは、導電性材料全体に対して7〜15重量%の割合で含むことが好ましい。
【0043】
ただし、本発明の接続方法に用いられる導電性材料は、必ずしもフラックスを含むことを要するものではなく、フラックスを必要としない接続工法にも適用することが可能であり、例えば、加圧しながら加熱する方法や、強還元雰囲気で加熱する方法などによっても、接続対象物や金属の表面の酸化被膜を除去して、信頼性の高い接続を可能にすることができる。
【0044】
また、本発明の接続方法は、上述のような導電性材料を用い、加熱して導電性材料を構成する低融点金属を、導電性材料を構成する第2金属との金属間化合物にして、接続対象物を接続するようにしているので、接続対象物を接続する工程(導電性材料をソルダペーストとして用いた場合にははんだ付け工程)における、第1金属と第2金属の拡散が飛躍的に進行し,より高融点の金属間化合物への変化が促進され、第1金属成分の金属成分全体に対する割合を例えば30体積%以下にして、耐熱強度の大きいはんだ付けを行うことが可能になる。
さらに導電性材料中の金属配合比などを最適化することにより、完全に第1金属成分が残留しない設計を行うことができる。
すなわち、上述のような導電性材料を用いることにより、例えば、半導体装置の製造工程において、はんだ付けを行う工程を経て半導体装置を製造した後、その半導体装置を、リフローはんだ付けの方法で基板に実装するような場合にも、先のはんだ付けの工程におけるはんだ付け部分は、耐熱強度に優れているため、リフローはんだ付けの工程で再溶融してしまうことがなく、信頼性の高い実装を行うことが可能になる。
【0045】
また、本発明の接続方法により形成される接続構造は、接続対象物を接続させている接続部が、導電性材料に由来する第2金属と、該第2金属とSnとを含む金属間化合物とを主たる成分としており、導電性材料に由来する第1金属の金属成分全体に対する割合が30体積%以下であることから、耐熱強度の大きい接続構造を提供することが可能になる。
【0046】
また、金属間化合物が、導電性材料に由来する第2金属であるCu−Mn合金、または、Cu−Ni合金と、導電性材料に由来する第1金属である、Sn単体、または、Cu、Ni、Ag、Au、Sb、Zn、Bi、In、Ge、Al、Co、Mn、Fe、Cr、Mg、Mn、Pd、Si、Sr、Te、Pからなる群より選ばれる少なくとも1種とSnとを含む合金との間に形成された金属間化合物である場合、より確実に、第1金属成分がほとんど残留せず、耐熱強度の大きい接続構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の接続方法を用いて接続を行う場合の挙動を模式的に示す図であり、(a)は加熱前の状態を示す図、(b)は加熱が開始され、第1金属が溶融した状態を示す図、(c)はさらに加熱が継続され、第1金属のすべてが、第2金属との金属間化合物を形成した状態を示す図である。
【図2】本発明の接続方法を用いて、無酸素Cu板上に、黄銅端子をマウントする際のリフロープロファイルを示す図である。
【図3】(a),(b)は、本発明の接続方法で用いることが可能なフォームはんだの構成を模式的に示す図である。
【図4】従来のはんだペーストを用いてはんだ付けを行う場合の、はんだの挙動を示す図であり、(a)は加熱前の状態を示す図、(b)ははんだ付け工程終了後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に本発明の実施例を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0049】
この実施例1では、導電性材料として、粉末状の第1金属(第1金属粉末)と、粉末状の第2金属(第2金属粉末)と、フラックスとを混合することにより導電性材料を作製した。
【0050】
第1金属粉末と第2金属粉末の配合比は第1金属粉末/第2金属粉末の体積比が60/40(すなわち、第2金属が40体積%)となるように調整した。
【0051】
第1金属粉末としては、表1に示すように、Sn−3Ag−0.5Cu、Sn、Sn−3.5Ag、Sn−0.75Cu、Sn−0.7Cu−0.05Ni、Sn−5Sb、Sn−2Ag−0.5Cu−2Bi、Sn−3.5Ag−0.5Bi−8In、Sn−9Zn、Sn−8Zn−3Bi、Sn−10Bi、Sn−15Bi、Sn−20Bi、Sn−30Bi、Sn−40Bi(比較例)、Sn−58Bi(比較例)を使用した。第1金属粉末の平均粒径は25μmとした。
なお、上記の各第1金属のうち、Sn−40BiおよびSn−58Biは、「Snを70重量%以上含む合金」という本発明の要件を満たさない、比較例のものである。
また、第1金属のSn−3Ag−0.5Cuは、実施例としてのみではなく、比較例としても用いられているが、比較例の場合には、これにCuあるいはCu−10Znが組み合わされており、格子定数差が50%未満になるため、好ましくないものである。
なお、上記の各材料の表記において、例えば、「Sn−3.5Ag」の数字3.5は当該成分(この場合はAg)の重量%の値を示しており、上記の他の材料および、以下の記載の場合も同様である。
【0052】
また、第2金属粉末としては、表1に示すように、Cu−10Ni、Cu−10Mn、Cu−12Mn−4Ni、Cu−10Mn−1P、Cu−10NiとCu−10Mnの同量混合粉末、Cu、Cu−10Znを使用した。第2金属粉末の平均粒径は15μmとした。
【0053】
なお、フラックスとしては、ロジン:74重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル:22重量%、トリエタノールアミン:2重量%、および水素添加ヒマシ油2重量%の配合比率のものを用いた。
また、フラックスの配合割合は、導電性材料全体に占めるフラックスの割合が10重量%となるような割合とした。
【0054】
作製した導電性材料を、メタルマスクを用いて、サイズが10mm×10mm、厚さが0.2mmの無酸素Cu板に印刷した。メタルマスクの開口径は1.5mm×1.5mm、厚さは100μmとした。
印刷した導電性材料上に、NiめっきおよびAuめっきを施した黄銅端子(サイズ1.2mm×1.0mm×1.0mm)をマウントした後、リフロー装置を用いて、図2に示すリフロープロファイルで無酸素Cu板と黄銅端子を接合させて、両者を電気的、機械的に接続した。
なお、この実施例1においては、導電性材料は実質的にソルダペーストとして用いられている。
【0055】
[特性の評価]
上述のようにして作製した試料について、以下の方法で接合強度および導電材料(はんだ)の流れ出し不良率を測定し、特性を評価した。
【0056】
≪接合強度≫
得られた接合体のシアー強度を、ボンディングテスタを用いて測定し、評価した。
シアー強度の測定は、横押し速度:0.1mm・s-1,室温および260℃の条件下で行った。
そして、シアー強度が20Nmm-2以上のものを◎(優)、2Nmm-2以下のものを×(不可)と評価した。
表1に、第1金属および第2金属の組成、第2金属の格子定数、第1金属および第2金属の配合割合、第2金属粉末の表面に最初に生成した金属間化合物の種類とその格子定数、第2金属(Cu合金)と金属間化合物の格子定数差、各接合体の接合強度(室温、260℃)を示す。なお、格子定数はa軸を基に評価している。
【0057】
≪残留成分評価≫
得られた反応生成物を約7mg切り取り、測定温度30℃〜300℃、昇温速度5℃/min、N2雰囲気、リファレンスAl23の条件で示差走査熱量測定(DSC測定)を行った。得られたDSCチャートの第1金属成分の溶融温度における溶融吸熱ピークの吸熱量から、残留した第1金属成分量を定量化した。これから金属成分全体に対する第1金属成分の割合を残留第1金属成分率として評価した。残留第1金属成分率が0〜3体積%の場合を◎(優)、3体積%を超え、30体積%以下の場合を○(可)、30体積%より大きい場合を×(不可)と評価した。
表1に、残留第1金属成分率と判定結果を併せて示す。
【0058】
≪導電性材料の流れ出し不良率の測定および評価≫
プリント基板のCuランド(Cuランド寸法:0.7mm×0.4mm)に前記導電性材料を塗布し(厚さ100μm)、得られた塗布部に、長さ1mm、幅0.5mm、厚さ0.5mmサイズのチップ型セラミックコンデンサをマウントした。
ピーク温度250℃でリフローして、Cuランドとセラミックコンデンサを接合させた後(はんだ付けした後)、プリント基板をエポキシ樹脂で封止して相対湿度85%の環境に放置し、ピーク温度260℃のリフロー条件で加熱して導電性材料(はんだ)が流れ出す割合を調べ、流れ出し不良率として評価した。
導電性材料の流れ出し不良率が0〜10%の場合を◎(優)、10%を超え、50%以下は○(可)、50%より大きい場合を×(不可)と評価した。
表1に、導電性材料の流れ出し不良率と判定結果を併せて示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示すように、室温における接合強度については、実施例,比較例ともに20Nmm-2以上を示し、実用強度を備えていることが確認された。
一方、260℃における接合強度についてみると、比較例では2Nmm-2以下と接合強度が不十分であったのに対して、実施例は10Nmm-2以上を保持し、実用強度を備えていることが確認された。
【0061】
また、残留第1金属成分率については、比較例が30体積%より大きかったのに対して実施例は全て30体積%以下であり、導電性材料の流れ出し不良率については、比較例が70%以上であったのに対して実施例は全て50%以下であり、高い耐熱性を有することが確認された。
また、実施例の試料においては、第1金属がSnを70重量%以上含む合金であれば、第1金属の種類に関係なく同様の高耐熱性を備えていることが確認された。特に、第1金属がSnまたはSnを85重量%以上含む合金であると、残留第1金属成分率を0体積%にすることができ、導電性材料の流れ出し不良率が0%となって、特に高い耐熱性を有することが確認された。
さらに、実施例の試料においては、第2金属がCu−Mnをベースとする金属(Cu−12Mn−4NiやCu−10Mn−1Pなど)である場合や、第2金属粉末が2種類以上(Cu−Mn、Cu-Ni混合粉末)である場合にも、同様に高耐熱性を備えていることが確認された。
【0062】
このように実施例の試料が高耐熱性を備えているのは、第2金属として、Cu−MnおよびCu−Ni系合金を使用した実施例の場合には、金属間化合物がそれぞれ、Cu2MnSnおよびCu2NiSnであり、各金属間化合物と第2金属(Cu合金)間の格子定数差が50%以上であることによるものと考えられる。すなわち、生成した金属間化合物層と、ベース金属である第2金属間の格子定数差が大きいと,溶融した第1金属中で金属間化合物が剥離、分散しながら反応を繰り返すため金属間化合物化が飛躍的に進行することによるものと考えられる。
【0063】
一方、比較例のように、第2金属としてCuまたはCu−Zn合金を使用した場合、接合界面の金属間化合物がCu3Snであり、金属間化合物と第2金属(Cu合金)間の格子定数差が20%と小さく、金属間化合物化が効率よく進行しないため、高い耐熱性が得られないものと考えられる。
【0064】
さらに、比較例のように、Sn−40BiまたはSn−58BiとCu−10MnNiの組み合わせで,高い耐熱性が得られなかったのは、第1金属中のSnの配合比が70重量%未満の組成では、最初に界面に生成した金属間化合物層がCu3Snとなり、金属間化合物と第2金属間(Cu合金)の格子定数差が50%以上にならないためと考えられる。このことから、第1金属となる合金中のSnの含有率は、70重量%以上であることが必要である。
【実施例2】
【0065】
第1金属粉末としてSn−3Ag−0.5Cuの粉末を用意した。なお、第1金属粉末の平均粒径は25μmとした。
また、第2金属粉末として、Cu−10Mn、Cu−10Ni、およびCu(比較例)の粉末を用意した。なお、第2金属粉末の平均粒径は15μmとした。
フラックスとして、ロジン:74重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル:22重量%、トリエタノールアミン:2重量%、および水素添加ヒマシ油2重量%の配合比率のものを用意した。
【0066】
そして、上記第1金属粉末と、第2金属粉末と、フラックスとを混合することにより、導電性材料を作製した。
なお、配合比は、第1金属粉末/第2金属粉末の体積比が87/13〜57/43(すなわち、第2金属粉末が13〜43体積%)となるように調整した。
また、フラックスの配合割合は、導電性材料全体に占めるフラックスの割合が10重量%となるような割合とした。
【0067】
このようにして作製した導電性材料について、実施例1の場合と同様にして、接合強度および導電性材料の流れ出し不良率を測定し、特性を評価した。
なお、接合強度の評価にあたっては、シアー強度が20Nmm-2以上のものを◎(優)、2Nmm-2以上で20Nmm-2未満のものを○(良)、2Nmm-2以下のものを×(不可)と評価した。
【0068】
残留第1金属成分率については、0〜3体積%の場合を◎(優)、3体積%を超え、30体積%以下の場合を○(可)、30体積%より大きい場合を×(不可)と評価した。
【0069】
また、導電性材料の流れ出し不良率については、0〜10%の場合を◎(優)、10%を超え、50%以下は○(可)、50%より大きい場合を×(不可)と評価した。
【0070】
表2に、各接合体の接合強度(室温、260℃)、残留第1金属成分率、導電性材料の流れ出し不良率、およびそれらの評価結果を示す。
【0071】
【表2】

【0072】
表2に示すように、室温における接合強度については、実施例、比較例ともに20Nmm-2以上を示し、実用強度を備えていることがわかった。
一方、260℃における接合強度についてみると、比較例では0.1Nmm-2と、2Nmm-2を大きく下回っており、接合強度が不十分であったのに対して、実施例では7〜29Nmm-2と、2Nmm-2以上を保持し、実用強度を備えていることが確認された。特に、第2金属がCu−10Mnである場合、その割合が30体積%以上では、23Nmm-2以上の接合強度を示し、高い耐熱強度を備えていることが確認された。また、第2金属がCu−10Niである場合、その割合が30体積%以上では、27Nmm-2以上の接合強度を示し、高い耐熱強度を備えていることが確認された。
【0073】
また、残留第1金属成分率については、比較例が30体積%より大きかったのに対して実施例は全て30体積%以下であり、さらに第2金属であるCu−10MnまたはCu−10Niの割合が30体積%以上の場合に残留第1金属成分率が0体積%となった。また、導電性材料の流れ出し不良率については、比較例が70%以上であったのに対して実施例では全て50%以下であり、さらに第2金属であるCu−10MnまたはCu−10Niの割合が30体積%以上の場合に導電性材料の流れ出し不良率が0%となり、高い耐熱性が得られることが確認された。
【実施例3】
【0074】
第1金属粉末としてSn−3Ag−0.5Cuの粉末を用意した。なお、第1金属粉末の平均粒径は25μmとした。
また、第2金属粉末として、Mnの割合が5〜30重量%のCu−Mn合金の粉末、および、Niの割合が5〜20重量%のCu−Ni合金の粉末を用意するとともに、比較例としてCu粉末を用意した。第2金属粉末の平均粒径は15μmとした。
フラックスとして、ロジン:74重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル:22重量%、トリエタノールアミン:2重量%、および水素添加ヒマシ油2重量%の配合比率のものを用意した。
【0075】
そして、上記第1金属粉末と、第2金属粉末と、フラックスとを混合することにより、導電性材料を作製した。
また、フラックスの配合割合は、導電性材料全体に占めるフラックスの割合が10重量%となるような割合とした。
第1金属粉末と第2金属粉末の配合比は第1金属粉末/第2金属粉末の体積比が60/40(すなわち、第2金属粉末が40体積%)となるように調整した。
【0076】
このようにして作製した導電性材料について、実施例1の場合と同様にして、接合強度、残留第1金属成分率および導電性材料の流れ出し不良率を測定し、特性を評価した。
なお、接合強度の評価および、残留第1金属成分率、導電性材料の流れ出し不良率の評価にあたっては、実施例2の場合と同様の基準で評価した。
表3に、各接合体の接合強度(室温、260℃)、残留第1金属成分率、導電性材料の流れ出し不良率、およびそれらの評価結果を示す。
【0077】
【表3】

【0078】
表3に示すように、室温における接合強度については、実施例,比較例ともに20Nmm-2以上を示し、実用強度を備えていることがわかった。
一方、260℃における接合強度についてみると、比較例では0.1Nmm-2と、2Nmm-2を大きく下回っており、接合強度が不十分であったのに対して、実施例では5〜26Nmm-2と、2Nmm-2以上を保持し、実用強度を備えていることが確認された。特に、第2金属がCu−10〜15Mnである場合、および、Cu−10〜15Niである場合、24〜26Nmm-2と高い接合強度を示し、耐熱強度に優れていることが確認された。
【0079】
また、残留第1金属成分率については、比較例が30体積%より大きかったのに対して実施例は全て30体積%以下であり、さらに第2金属であるCu−10〜15Mnの場合、および、Cu−10〜15Niの場合に残留第1金属成分率が0体積%となった。また導電性材料の流れ出し不良率については、比較例が70%以上であったのに対して実施例では全て50%以下であり、さらに第2金属であるCu−10〜15Mnの場合、および、Cu−10〜15Niの場合に導電性材料の流れ出し不良率が0%となり、高い耐熱性が得られることが確認された。
【実施例4】
【0080】
第1金属粉末としてSn−3Ag−0.5Cuの粉末を用意した。なお、第1金属粉末の平均粒径は25μmとした。
また、第2金属粉末として、Cu−10Mn合金の粉末およびCu(比較例)を用意した。第2金属粉末の平均粒径は15μmとした。第2金属粉末は、その粒径を変化させて、比表面積が0.03〜0.06m2・g-1となるようにした。
また、フラックスとして、ロジン:74重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル:22重量%、トリエタノールアミン:2重量%、および水素添加ヒマシ油2重量%の配合比率のものを用意した。
【0081】
そして、上記第1金属粉末と、第2金属粉末と、フラックスとを混合することにより、導電性材料を作製した。
また、フラックスの配合割合は、導電性材料全体に占めるフラックスの割合が10重量%となるような割合とした。
第1金属粉末と第2金属粉末の配合比は、第1金属粉末/第2金属粉末の体積比が60/40(すなわち、第2金属粉末が40体積%)となるように調整した。
【0082】
このようにして作製した導電性材料について、実施例1の場合と同様にして、接合強度および残留第1金属成分率、導電性材料の流れ出し不良率を測定し、特性を評価した。
なお、接合強度の評価および、残留第1金属成分率、導電性材料の流れ出し不良率の評価にあたっては、上述の実施例2の場合と同様の基準で評価した。
表4に、各接合体の接合強度(室温、260℃)、残留第1金属成分率、導電性材料の流れ出し不良率、およびそれらの評価結果を示す。
【0083】
【表4】

【0084】
表4に示すように、室温における接合強度については、実施例,比較例ともに20Nmm-2以上を示し、実用強度を備えていることがわかった。
一方、260℃における接合強度についてみると、比較例では0.1Nmm-2と、2Nmm-2を大きく下回っており、接合強度が不十分であったのに対して、実施例では14〜24Nmm-2と、2Nmm-2以上を保持し、実用強度を備えていることが確認された。さらに第二金属であるCu−10Mnの比表面積が0.05m2・g-1以上の場合に21Nmm-2以上を示し、特に高い耐熱強度を有した。
【0085】
また、残留第1金属成分率については、比較例が30体積%より大きかったのに対して実施例は全て30体積%以下であり、さらに第2金属であるCu−10Mnの比表面積が0.05m2・g-1以上の場合に残留第1金属成分率が0体積%となった。また導電性材料の流れ出し不良率については、比較例が70%以上であったのに対して実施例では全て50%以下であり、さらに第二金属であるCu−10Mnの比表面積が0.05m2・g-1以上の場合に導電性材料の流れ出し不良率が0%となり、高い耐熱性が得られることが確認された。
【実施例5】
【0086】
(a)SnめっきしたCu−10Mn合金とSn粉の混合体、
(b)SnめっきしたCu−10Mn合金とSn粉とCu−10Mn合金の混合体、および
(c)SnめっきしたCu−10Mn合金単体、
からなる金属粉とフラックスを混合することにより導電性材料を作製した。
また、比較用に、
(d)SnめっきしたCu粉とSn粉の混合体、
(e)SnめっきしたCu粉とSn粉とCu粉末の混合体、および
(f)SnめっきしたCu粉末
からなる金属粉とフラックスを混合することにより導電性材料を作製した。
【0087】
SnめっきしたCu−10Mn合金単体を用いた場合、および、SnめっきしたCu粉末を用いた場合(比較例)を除き、第1金属粉末と第2金属粉末の配合比は、第1金属粉末/第2金属粉末の体積比が60/40(すなわち、第2金属粉末が40体積%)となるように調整した。
ただし、SnめっきしたCu−10Mn合金単体の場合は、Cu−Mn合金(第2金属)の合計比率を80%とした。また、SnめっきしたCu粉末を用いた場合(比較例)も、Cu(第2金属)の合計比率を80%とした。
【0088】
なお、フラックスとして、ロジン:74重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル:22重量%、トリエタノールアミン:2重量%、および水素添加ヒマシ油2重量%の配合比率のものを用いた。
また、フラックスの配合割合は、導電性材料全体に占めるフラックスの割合が10重量%となるような割合とした。
【0089】
このようにして作製した導電性材料について、実施例1の場合と同様にして、接合強度、残留第1金属成分率および導電性材料の流れ出し不良率を測定し、特性を評価した。
なお、接合強度の評価、残留第1金属成分率、および導電性材料の流れ出し不良率の評価にあたっては、上述の実施例2の場合と同様の基準で評価した。
表5に、各接合体の接合強度(室温、260℃)、残留第1金属成分率、導電性材料の流れ出し不良率、およびそれらの評価結果を示す。
【0090】
【表5】

【0091】
表5に示すように、室温における接合強度については、実施例,比較例ともに20Nmm-2以上を示し、実用強度を備えていることがわかった。
一方、260℃における接合強度についてみると、比較例では0.1Nmm-2と、2Nmm-2を大きく下回っており、接合強度が不十分であったのに対して、実施例では24〜26Nmm-2と、2Nmm-2以上を保持し、実用強度を備えていることが確認された。このことから、第1金属が第2金属の表面にめっき(コート)されている場合にも、上記の各実施例の場合と同様に、高い耐熱強度が得られることが確認された。
【0092】
また、残留第1金属成分率については、比較例が30体積%より大きかったのに対して実施例は全て0体積%であった。また導電性材料の流れ出し不良率については、比較例が70%以上であったのに対して実施例では全て0%であり、第1金属が第2金属の表面にめっき(コート)されている場合にも、高い耐熱性が得られることが確認された。
【実施例6】
【0093】
第1金属粉末としてSn−3Ag−0.5Cuの粉末を用意した。なお、第1金属粉末の平均粒径は25μmとした。
また、第2金属粉末として、Cu−10Mn合金の粉末を用意した。第2金属粉末の平均粒径は15μmとした。また、比較のため、第2金属粉末として、Cu粉末を用意した。
フラックスとして、樹脂を添加したものと、樹脂を添加しなかったものを用意した。
【0094】
樹脂を添加していないフラックスとしては、ロジン:74重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル:22重量%、トリエタノールアミン:2重量%、および水素添加ヒマシ油2重量%の配合比率の一般的なフラックスAを用意した。
【0095】
また、樹脂を添加したものとしては、上記一般的なフラックスAに、熱硬化性樹脂と硬化剤とを添加した熱硬化性樹脂配合フラックスBと、上記一般的なフラックスAに、熱可塑性樹脂を添加した熱可塑性樹脂配合フラックスCを用意した。
【0096】
なお、熱硬化性樹脂配合フラックスBは、上記フラックスA、熱硬化性樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、および、硬化剤を、以下の割合で含有するものである。
フラックスA :30重量%
熱硬化性樹脂 :40重量%
硬化剤 :30重量%
【0097】
また、熱可塑性樹脂配合フラックスCは、上記フラックスA、熱可塑性樹脂(ポリアミド樹脂)を以下の割合で含有するものである。
フラックスA :30重量%、
熱可塑性樹脂(ポリアミド樹脂) :70重量%
【0098】
そして、
(1)樹脂を添加していない上記フラックスAを導電性材料全体に占めるフラックスの割合が10重量%となるような割合で配合した導電性材料(表6の実施例No.3)と、
(2)熱硬化性樹脂配合フラックスBを導電性材料全体に占めるフラックスの割合が25重量%となるような割合で配合した導電性材料(表6の実施例No.1)と、
(3)熱可塑性樹脂配合フラックスCを導電性材料全体に占めるフラックスの割合が25重量%となるような割合で配合した導電性材料(表6の実施例No.2)と
を作製した。
また、比較例の導電性材料として、上述のCu粉末を第2金属として用いた導電性材料を作製した。なお、この比較例の導電性材料においても、樹脂を添加していない上記フラックスAを導電性材料全体に占めるフラックスの割合が10重量%となるような割合で配合した。
【0099】
それから、これらの導電性材料について、実施例1の場合と同様にして、接合強度、残留第1金属成分率および導電性材料の流れ出し不良率を測定し、特性を評価した。
表6に、各接合体の接合強度(室温、260℃)、残留第1金属成分率、導電性材料の流れ出し不良率、およびそれらの評価結果を示す。
【0100】
【表6】

【0101】
表6に示すように、室温における接合強度については、実施例,比較例ともに20Nmm-2以上を示し、実用強度を備えていることがわかった。
一方、260℃における接合強度についてみると、比較例では0.1Nmm-2と、2Nmm-2を大きく下回っており、接合強度が不十分であったのに対して、実施例では24〜33Nmm-2と、2Nmm-2以上を保持し、実用強度を備えていることが確認された。
【0102】
また、残留第1金属成分率については、比較例が30体積%より大きかったのに対して実施例は全て0体積%であった。また導電性材料の流れ出し不良率については、比較例が70%以上であったのに対して、実施例では全て0%であり、樹脂を添加した場合も高い耐熱性が得られることが確認された。
【0103】
なお、上記実施例では、第2金属の格子定数よりも、金属間化合物の格子定数の方が大きい場合を例にとって説明したが、本発明は、理論上は、第2金属の格子定数が、金属間化合物の格子定数よりも大きくなるように構成することも可能である。その場合も、格子定数差が50%以上になるようにすることにより、第1金属と第2金属の拡散が飛躍的に進行し,より高融点の金属間化合物への変化が促進され、第1金属成分がほとんど残留しなくなるため、耐熱強度の大きい接続を行うことが可能になる。
【0104】
[変形例]
本発明において用いられる導電性材料は、例えば、図3(a),(b)に模式的に示すようなフォームはんだとして構成することも可能である。
図3(a)のフォームはんだは、板状の第1金属1中に、粉末状の第2金属2を分散させたフォームはんだである。
また、図3(b)のフォームはんだは、板状の第1金属1中に、板状の第2金属2を内包させたフォームはんだである。
【0105】
図3(a),(b)に示すようなフォームはんだを導電性材料として用いた場合にも、上記実施例で示した第1金属と、第2金属と、フラックスとを混合してなる、いわゆるソルダペーストとして用いる場合と同様の効果を奏する。
なお、第1金属中に第2金属を分散あるいは内包させる態様は、図3(a),(b)の態様に限定されるものではなく、他の態様とすることも可能である。
【0106】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、使用する導電性材料を構成する第1金属および第2金属の種類や組成、第1金属と第2金属の配合割合、フラックスの成分やフラックスの配合割合などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0107】
また、本発明を適用して接続すべき接続対象物の種類や、接続工程における条件などに関しても、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0108】
本発明はさらにその他の点においても、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 第1金属
2 第2金属
3 金属間化合物
4 接続部
11a,11b 一対の電極(接続対象物)
10 導電性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1金属と、前記第1金属よりも融点が高く、前記第1金属と反応して310℃以上の融点を示す金属間化合物を生成する第2金属とからなる金属成分を含む導電性材料を、互いに接続すべき接続対象物の間に配置する工程と、
(b)前記第1金属の融点以上の温度で前記導電性材料を加熱する工程と
を備えるとともに、
前記導電性材料を加熱する工程において、前記第1金属と前記第2金属とを反応させて両者の金属間化合物を生じさせるとともに、溶融した前記第1金属中で、前記金属間化合物を剥離、分散させながら反応を繰り返して行わせること
を特徴とする接続対象物の接続方法。
【請求項2】
前記第1金属はSnまたはSnを70%以上含む合金であることを特徴とする請求項1記載の接続対象物の接続方法。
【請求項3】
前記第2金属は前記第2金属の周囲に最初に生成する金属間化合物の格子定数と前記第2金属成分の格子定数との差である格子定数差が50%以上の金属または合金であることを特徴とする請求項1または2記載の接続対象物の接続方法。
【請求項4】
前記導電性材料を加熱する工程において、前記第1金属のすべてを前記第2金属との金属間化合物とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接続対象物の接続方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の接続対象物の接続方法を用いて接続対象物を接続する工程を備えていることを特徴とする電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−216855(P2012−216855A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132518(P2012−132518)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【分割の表示】特願2011−44142(P2011−44142)の分割
【原出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】