説明

接続端子およびこれを備えた電気ヒーター

【課題】 簡便で確実なリード線接続が可能なリード線接続用端子および接続端子部の破損が起こり難い電気ヒーターの提供。特に半導体製造装置用ヒーターのように高温の面状ヒーターに垂直にリード線を取り付けるためのリード線接続用端子および半導体製造装置用電気ヒーターの提供。
【解決手段】 一方の接続端部が電極接続用の平板面で、他方の接続端部が平板面の反対側から突出し、圧着端子状構造またはリード線接続用圧着スリーブへの接続可能な構造である電極へのリード線接続用端子、およびこのリード線接続用端子を備えた、特にこのリード線接続用端子を溶接により接続した面状電気ヒーターの提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接続端子およびこれを備えた電気ヒーターに関し、詳しくは電気ヒーター等への簡便で確実なリード線接続が可能な接続端子およびリード線接続部の信頼性の高い電気ヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
電気ヒーターをはじめとする多くの電気機械器具は、電源入力用や電気信号用などの電極を備えている。そして、この電極には通常リード線を接続して機器外部との電力等の入出力を行っている。最近は機器の小型化が進み、電極部も小さくなり特に薄膜状の電極が多くなっている。半導体ウェハーの熱処理工程でも面状の非常に厳しく温度分布の制御された電気ヒーターが使用されている。このようなヒーターでは電極部のリード線の接続状態やリード線の配線状態も管理せねばならない。さらに接続の信頼性、耐久性も厳しく要求されている。
【0003】
しかし、従来はリード線を直接電極に溶接したり、リード線の先端に接続端子を付けておき、これを電極部に溶接したりネジ止めしたりしていた。これではヒーターへのリード線の接続時の作業の信頼性や溶接技術のばらつき、接続後の破損など種々の課題があった。そこで特許文献1にはリード線接続部付近を特定の樹脂で覆って補強し、接続部を安定化する方法が提案されている。また、特許文献2にはリード線からの漏電によるヒーター性能のばらつきを防ぐためのリード線保護用の支持容器を持つホットプレートユニットが開示されている。
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3066145号公報
【特許文献2】特開2002−296532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電気ヒーター等の電極部にリード線を接続した接続部の脱落や破損を防止でき、簡便で信頼性のある接続が可能な耐久性のある接続端子の提供を目的としている。また、上記の接続端子を備えた信頼性の高い電気ヒーターの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する手段は、
(1)平面状の接続端部と、該平面の反対側から突出しリード線の接続端部を圧着接続可能な構造の接続端部とを有する接続端子である。
(2)平面状の接続端部と、該平面の反対側から突出し先端が圧着端子で圧着接続可能な構造の接続端部とを有する接続端子である。
(3)平面の反対側から突出した接続端部の付け根部分の強度が他の突出部より高い(1)または(2)に記載の接続端子である。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の接続端子を備えた電気ヒーターである。
(5)接続端子の平面状の接続端部を電極部に溶接して接続した(4)に記載の電気ヒーターである。
(6)面状ヒーターであり、電極部に接続端子を備えた(4)または(5)に記載の電気ヒーター。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接続端子は、一方は電気ヒーター等の電極面と接続端子の平面状の接続端部とを接続するものであり、他方の接続端部はリード線等と圧着によって接続する構造であるのでそれぞれ接続が確実で、接続部の強度、信頼性も高い接続ができる。通常、電気ヒーター等の電極面へはスポット溶接、ロウ付け溶接などで本発明の接続端子の平板面を接続するので、十分な強度で耐久性の高い接続ができる。また、電気ヒーター等の製造時に、工場で電気ヒーターに本発明の接続端子を接続または形成すれば、ヒーター等の組み立て現場で接続する場合に比べ信頼性の高い高品質の接続が可能である。この場合、現場での溶接作業の必要もなくなる。一方、本発明の接続端子とリード線の接続は圧着により行えるので、溶接やネジ止めといった現場作業が不要となる。一般に電気ヒーター等の電極とリード線の接続は電気ヒーター等の設置現場での作業となるので、作業が簡便で溶接のような熟練作業を必要としない圧着方式の接続は作業性、接続の信頼性の両面から好適である。さらに、突出部の付け根を他の突出部より強化した本発明の接続端子は、リード線の振動等による接続端子の突出部の付け根への応力集中による破損を回避する好適な対策である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第一の本発明の接続端子は、一方の接続端部が電気ヒーター等の平面状の電極部に接続し易いよう平面状となっておりスポット溶接やロウ付け溶接により容易に接続できる構造の電極へのリード線接続用金具である。また、この接続端子は、他方の接続端部は上記平面状接続端部の反対側から突出しており、その先端部はリード線接続用の圧着端子状構造となっている。圧着端子状構造部分はリード線を装着して圧着すればリード線との接続ができるようになっている。この接続端子は面状ヒーターのように平板状の電気ヒーター等の電源接続部、すなわち電極部からこの平板面と水平でない方向、特に実質的に垂直な方向にリード線を取り付ける際に好適な接続端子である。電気ヒーター等の電極部と本発明の接続端子とは電気ヒーター等の製作時に工場内で接続しておく、あるいは一体ものとして形成しておくことができるので、溶接工程等があっても工場内での十分な品質管理のもとに電気ヒーターと接続端子の接続ができる。それ故、接続端子の電気ヒーター等の電極部への信頼性の高い接続が可能である。電気ヒーター等とリード線の接続は通常電気ヒーター等の設置現場で行う必要がある。本発明の接続端子は、リード線との接続を圧着により行うことができるので現場作業が容易で、かつ熟練を要しなくとも確実に接続ができる。また、圧着端子構造でのリード線の接続は溶接による接続に比べ接続部の接続強度、接続強度のむら、振動等に対する耐久性にも優れている場合が多い。
【0009】
図1は、本発明の接続端子により電気ヒーターとリード線を接続した状態を表す。半導体製造工程等に用いられる電気ヒーターは通常平板状の面状ヒーターであり、ヒーター裏面に電源接続用の電極部があり、ここにほぼ垂直にリード線が接続されている。図10には従来の接続方法の説明図を示した。この場合、リード線6を直接電極部にロウ付け溶接しているがスポット溶接の場合もある。それに比べ、図1の電極部と接続端子の接続はスポット溶接であるが、製造工場で平板面の電極部10と接続端子1の平面状の接続部2とを密着させて溶接しているので強度、信頼性とも高いものが得られる。また、接続端子1とリード線6との接続部は、接続端子1の先端が中空のスリーブ状突起部3にリード線6を挿入し、圧着工具により突起部3の圧着部5を圧着してリード線6を接続端子1に確実に接続されている。リード線6は突起部3の最先端より奥の圧着部5で圧着されており、リード線6が電気ヒーター7に対し相対的に振動したりしてリード線接続部に繰返し応力が作用しても圧着部5すなわち接続部に応力集中が起こり難い構造となっている。
【0010】
本発明の圧着端子の代表的な構造例を図2〜図7に示す。図2は図1に示した圧着端子と同じものの斜視図である。突起部3の先端部分は中空となっており、リード線挿入部11があり、リード線を挿入できる構造となっている。リード線挿入後リード線6の圧着端子1への固定のための圧着位置は、上述の理由によりリード線挿入部11の軸方向のほぼ中央部分が好ましい。また、好ましい態様として、平板面2の反対側に突き出した突起部3の付け根部4は突起部3の先端部側よりも太くなっており、突起部3の曲げ応力に対し強度を強化してある。リード線接続後電気ヒーター7とリード線6の間に曲げ応力がかかった場合この付け根部4が最も応力集中を受け易く、繰り返し曲げ応力がかかると破損し易いので、これを防ぐためである。
【0011】
図3に示す圧着端子は突起部3の先端が付け根部4とネジ部12,13により着脱可能とした本発明の接続端子の例である。図4、図5に示す例も他の態様の本発明の圧着端子である。図5の例では突起部3のリード線への接続端部の圧着端子状構造がスリーブ状ではなく、突起部の先端の水平断面がコの字状に形成され、コの字状の内側にリード線を装着して2枚の並行板を圧着することによりリード線を包み込むように挟む構造となっている。また、突起部3の付け根部4は板幅が広くなっておりリード線の振動等による応力に対し強度を強化している。図6、図7に示す例も図3と同様突起部3の先端を着脱可能とした本発明の接続端子である。図6はボルト14またはねじで突起部3の先端と突起部3の付け根部4とを結合した図であり、図7は取り外した図である。この態様の接続端子は突起部3の先端を事前にリード線に圧着して結合しておけば、電気ヒーター設置現場での電気ヒーターとリード線の結線はボルト締めだけでよいことになる。なお、突起部3の先端側のまたは突起部3の付け根部4のボルト穴15にボルトに結合するねじ溝を付けておけばより簡単に結合ができる。
【0012】
第二の本発明の接続端子は、一方の接続端部は第一の本発明の接続端子と同様に電気ヒーター等の平板面の電極部に接続し易いよう平面状となっておりスポット溶接やロウ付け溶接により容易に接着できる構造となっている。しかし、他方の接続端部は上記平板面の接続端部の反対側から突出しているが、その先端部分はリード線接続用の通常の圧着端子へ圧着接続可能な構造となっている。この先端部分をリード線と接続されている圧着スリーブ等の通常の圧着端子に接続すれば、電気ヒーター等の電極部とリード線との接続ができる。通常の圧着端子としては、例えばJIS C2806に規定される圧着スリーブなどがある。なお、この圧着スリーブは突合せ型でも重ね合わせ型でも良い。図8には本発明の圧着端子1と合わせて対応する圧着スリーブ16を例示した。突起部3の先端は円柱状でありリード線のような構造となっておれば通常の圧着端子で圧着接続が容易である。図8では突起部3の先端は単芯のリード線状であるが、複数の撚り芯のリード線状でもよい。また、突起部3の付け根部4は、第一の本発明の接続端子同様、使用中の繰返し応力による破損を避けるため先端部より太くして強度を強化することが好ましい。この例のように円錐台状に付け根部4が広がっている構造は特に好ましい態様である。
【0013】
図9も図2に示した接続端子に類似した構造の本発明の接続端子1と対応する通常の圧着端子17の例である。この接続端子1の突起部3が通常の圧着端子17に装着されて圧着される構造になっているほかは図2に示した圧着端子1と同様の構造である。また、通常の圧着端子17は、突起部3の結合部18もリード線結合部19も図5に示した接続端子1の突起部3のコの字型の先端部と同様の構造をした圧着端子である。電気ヒーター等の電極部とリード線との接続方法は上述の図8の例と同様である。
【0014】
本発明の接続端子は、特別の材料を使用したり、特別の製造方法を用いることは必要ない金具である。通常の導電性材料、例えば銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、鉄などの良導電性金属、あるいはこれら金属の合金の中から使用温度、使用雰囲気、耐久性、接続する電極やリード線との相性等を勘案して適宜選択すればよい。製造方法についても特に制限はなく、鋳造、切削加工、鍛造、板金、打ち抜き加工、メッキ加工などによればよい。
【0015】
電気ヒーターの電極部に上述の本発明の接続端子の平面状の接続端部を接続した構造、特にスポット溶接やロウ付け溶接などの溶接により接着した構造の電気ヒーターは、リード線取り付けが簡単で、電極とリード線の接続部の強度が高く非常に優れたヒーターである。また、電気ヒーター設置現場での接続作業が圧着端子の圧着のみなので、作業が楽で熟練を必要とせず、作業の信頼性も高く、特に電極へのリード線の付け根部に繰返し応力のかかる電気ヒーターの場合非常に好適に使用できる。このような電気ヒーターは半導体ウェハー乾燥用などの面状ヒーターに好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の接続端子は、半導体製造装置用の電気ヒーターのように平面状の電極部に電極にほぼ垂直にリード線を接続する構造の接続に有効な接続端子を提供する。また、電気ヒーターとリード線が相対的に振動してリード線の電極への付け根付近に破壊応力のかかり易い構造の電気ヒーターに好適に利用できる。本発明の接続端子は大きさ、使用雰囲気に制限されず、非常に広範な用途がある。また、この接続端子を備えた電気ヒーターは耐久性、信頼性のある高性能なヒーターである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の接続端子により電気ヒーターとリード線を接続した状態を示す説明図である。
【図2】図2は第一の本発明の接続端子の例を示す斜視図である。
【図3】図3は第一の本発明の他の例の接続端子を分解した斜視図である。
【図4】図4は第一の本発明の接続端子の他の例を示す斜視図である。
【図5】図5は第一の本発明の接続端子の他の例を示す斜視図である。
【図6】図6は第一の本発明の接続端子の他の例を示す斜視図である。
【図7】図7は図6に示す本発明の接続端子を分解した例を示す斜視図である。
【図8】図8は第二の本発明の接続端子のおよび対応する通常の圧着端子の例を示す斜視図である。
【図9】図9は第二の本発明の接続端子のおよび対応する通常の圧着端子の他の例を示す斜視図である。
【図10】図10は従来の接続方法により電気ヒーターとリード線を接続した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1,本発明の接続端子
2,平面状の接続端部
3,突起部
4,突起部の付け根
5,圧着部
6,裸線のリード線
7,電気ヒーター
8,絶縁体
9,絶縁管または絶縁チューブ
10,電極部
11,中空部
12,ネジ部
13,ネジ部
14,ボルト
15,ボルト穴
16,圧着スリーブ
17,通常の圧着端子
18,突起部装着部
19,リード線装着部
20,リード線接着剤
21,リード線の付け根部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の接続端部と、該平面の反対側から突出しリード線の接続端部を圧着接続可能な構造の接続端部とを有する接続端子。
【請求項2】
平面状の接続端部と、該平面の反対側から突出し先端が圧着端子で圧着接続可能な構造の接続端部とを有する接続端子。
【請求項3】
平面の反対側から突出した接続端部の付け根部分の強度が他の突出部より高い請求項1または2に記載の接続端子。
【請求項4】
電極部に請求項1〜3のいずれかに記載の接続端子を備えた電気ヒーター。
【請求項5】
接続端子の平面状の接続端部を電極部に溶接して接続した請求項4に記載の電気ヒーター。
【請求項6】
面状ヒーターであり、電極部に接続端子を備えた請求項4または5に記載の電気ヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−236896(P2006−236896A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52940(P2005−52940)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(390031037)日本フエンオール株式会社 (33)
【Fターム(参考)】