接触水素化方法及びそのための新規触媒
【課題】L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して光学的反対物及びジアステレオマー不純物を実質的に含まない光学活性なL−ノルエフェドリンを得るための新規な触媒,これを用いた光学活性なL−ノルエフェドリンの製造方法の提供。
【解決手段】 活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する細かく分割されたニッケル金属を含んでなる水素化触媒,及び,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを,アルカリ性溶液中で該水素化触媒の存在下に水素化することを含むものである,L−ノルエフェドリンの製造方法。
【解決手段】 活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する細かく分割されたニッケル金属を含んでなる水素化触媒,及び,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを,アルカリ性溶液中で該水素化触媒の存在下に水素化することを含むものである,L−ノルエフェドリンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,水素化方法のための新規触媒,該触媒の製造方法,及び,接触水素化方法によるL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕の効率的製造方法に関する。
【0002】
より具体的には,本発明は,水素化工程のための活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する,細かく分割されたニッケル金属を含んでなる新規な水素化触媒に関する。
【0003】
本発明は更に,上記水素化触媒の製造方法にも関する。
【0004】
より具体的には,本発明は,上記の新規触媒を用いた接触水素化方法による,光学的反対物とジアステレオマー不純物とを実質的に含まない,光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕の製造のための効率的な方法に関する
【背景技術】
【0005】
L−ノルエフェドリンは,アレルギー反応や呼吸器感染を軽減させるために多くの製剤に用いられている副腎系薬物の1つである。L−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕は,L−フェニルアセチルカルビノールオキシム(L−PAC)の還元/水素化により製造される。
【0006】
よく知られている高活性な水素化触媒は,プラチナ族の金属,特にプラチナ,パラジウム,ロジウム及びルテニウムである。高活性触媒は,より低温で及びより低いH2圧下で働く。卑金属触媒,特にニッケルに基づく触媒(例えば,ラネーニッケル及び漆原ニッケル)もまた,経済的な代替物として開発されている。
【0007】
WO 2005/100299(特許文献1)は,光学的反対物とジアステレオマー不純物とを実質的に含まないL−エリスロ−2−アミノ−1−フェニ−1−プロパノールの製造のための新規な効率的方法を記載している。その方法は,ヒドロキシルアミン塩でL−フェニルアセチルカルビノールを処理することによるそのオキシム誘導体への変換,及び,こうして得られたオキシムの,ニッケル及びアルミニウム金属を含んでなる触媒による還元を伴っている(スキーム1)。
【0008】
【化1】
【0009】
WO 2005/100299(特許文献1)は,この主題に関する文献の包括的要約を提供している。L−フェニルアセチルカルビノールオキシムの還元について述べている文献は,以下に挙げるもののみである。
【0010】
D. H. Hey, J. Chem. Soc. 1232 (1930)(非特許文献1)は,dl−マンデルアミドと臭化メチルマグネシウムとの反応によるdl−PACオキシムの製造,及び,dl−PACオキシムのナトリウムアマルガムによる還元を記述している。
【0011】
W. H. Hartung and J. C. Munch, J. Am. Chem. Soc., 51, 2262-2266(1929)(非特許文献2)は,dl−PACオキシムの製造及びナトリウムアマルガムによる還元を記述している。
【0012】
GB365535(特許文献2)は,L−PACオキシムの製造方法及び貴金属触媒上でのその水素化による還元を開示している。
【0013】
DE587586(特許文献3)は,L−PACオキシムの製造及び貴金属触媒上でのその水素化による還元を開示している。
【0014】
DE1014553(特許文献4)は,L−PACオキシムの製造及びアマルガム化したアルミニウムによるその還元を開示している。
【0015】
特開平05−004948(特許文献5)は,キラル置換したフェロセニルホスフィンリガンドのロジウム錯体を水素化触媒として用いたL−PACの還元を開示している。
【0016】
このように,光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を,液体と気体とを問わず有害であり得る廃棄物を生じさせず,また使用した触媒をろ過してリサイクルできる仕方で与える,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムの接触水素化に対する需要がある。
【特許文献1】WO2005/100299
【特許文献2】GB365535
【特許文献3】DE587586
【特許文献4】DE1014553
【特許文献5】特開平05−004948
【非特許文献1】D. H. Hey, J. Chem. Soc. 1232 (1930)
【非特許文献2】W. H. Hartung and J. C. Munch, J. Am. Chem. Soc., 51, 2262-2266(1929)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って,本発明の一目的は,新規な水素化触媒を提供することである。
本発明の更なる一目的は,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得るための新規な触媒を提供することである。
本発明の尚も別の一目的は,上記の新規触媒の製造方法を提供することである。
本発明の尚も別の一目的は,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化プロセスにより還元して光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得るための方法を提供することである。
本発明の尚も更なる一目的は,光学的反対物及びジアステレオマー不純物を実質的に含まない,光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕の製造方法を提供することである。
本発明の尚も別の一目的は,液体と気体とを問わず廃棄物を生じさせずに,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して,光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得る方法を提供することである。
本発明の尚も別の一目的は,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して,光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得る方法であって,操作の安全な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は,活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する,細かく分割されたニッケル金属を含んでなる新規な水素化触媒を提供する。より具体的には,本発明は以下を提供するものである。
(1)活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する細かく分割されたニッケル金属を含んでなる水素化触媒。
(2)周期表のIIIA族の金属が2〜15重量%の量で含まれているものである,上記1の触媒。
(3)周期表のVIB族又はVIII族の金属が1〜5重量%の量で含まれているものである,上記1又は2の触媒。
(4)周期表のIIIA族の金属がアルミニウムである,上記1ないし3の何れかの触媒。
(5)周期表のVIII族の金属が鉄である,上記1ないし4の何れかの触媒。
(6)周期表のVIII族の金属がコバルトである,上記1ないし4の何れかの触媒。
(7)周期表のVIB族の金属がモリブデンである,上記1ないし6の何れかの触媒。
(8)周期表のVIB族の金属がクロムである,上記1ないし6の何れかの触媒。
(9)上記1ないし8の何れかの水素化触媒の製造方法であって,
(i) ニッケル,活性化物質としての周期表のIIIA族の金属,及び促進物質としての周期表のVIB族又はVIII族の金属を含んでなるものである最初の金属混合物と,
(ii) アルカリ金属水酸化物の溶液とを,
該最初の金属混合物に加えられた該活性化物質の含量が2〜15重量%となり,且つ触媒1gあたり少なくとも80mL/分の水素吸収という活性レベルが達成されるまで混合することを含んでなるものである,方法。
(10)該最初の金属混合物がニッケル金属を30〜60重量%含むものである,上記9の方法。
(11)L−フェニルアセチルカルビノールオキシムからL−ノルエフェドリンを製造する方法であって,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを,アルカリ性溶液中で上記1ないし8の何れかの水素化触媒の存在下に水素化することを含むものである,方法。
(12)L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを溶解させるために用いられる溶媒が,水のみ,又は水とC1〜C3低級アルコールとの混合物であって,該C1〜C3低級アルコールが該溶媒混合物中に10〜100v/v%含まれるものである,上記11の方法。
(13)C1〜C3低級アルコールが該溶媒混合物中に50〜90v/v%含まれるものである,上記12の方法。
(14)水素化混合物中のL−フェニルアセチルカルビノールオキシムの濃度が1〜25w/v%である,上記11ないし13の何れかの方法。
(15)水素化混合物中のL−フェニルアセチルカルビノールオキシムの濃度が10〜16w/v%である,上記14の方法。
(16)反応混合物が,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水酸化ナトリウム,酢酸ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,酢酸カリウム,及び水酸化バリウムよりなる群より選ばれる塩基,好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの使用によりアルカリ性にされるものである,上記11ないし15の何れかの方法。
(17)該塩基が反応混合物中に5〜25w/v%含まれるものである,上記11ないし16の何れかの方法。
(18)該水素化触媒が,水素化反応混合物中に0.5〜5w/v%含まれるものである,上記11ないし16の何れかの方法。
(19)水素圧が1kg/cm2〜15kg/cm2に維持されるものである,上記11ないし18の何れかの方法。
(20)水素圧が3kg/cm2〜10kg/cm2に維持されるものである,上記19の方法。
(21)水素化反応の温度が室温〜100℃に維持されるものである,上記11ないし20の何れかの方法。
(22)該方法で使用される触媒が,先行する水素化のバッチから回収された触媒であって,操作に伴う損失に見合うよう新鮮な触媒の適当量が追加されたものである,上記11ないし21の何れかの方法。
(23)粗製のL−ノルエフェドリンを,溶媒の存在下に有機酸又は無機酸で処理し,そして形成された塩を塩基で分解することにより純粋なL−ノルエフェドリンを得るものである,上記11ないし22の何れかの方法。
(24)有機酸が,酢酸,プロピオン酸,酪酸,イソ酪酸,シュウ酸,マロン酸,コハク酸,シクロヘキサンカルボン酸,マレイン酸,安息香酸,p−トルイル酸,メタンスルホン酸,ベンゼンスルホン酸,又はp−トルエンスルホン酸よりなる群より選ばれるものである,上記23の方法。
(25)該方法に使用される溶媒が,水であるか,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,n−ブタノール,2−ブタノール,及びtert−ブタノールよりなる群より選ばれるものであってよい低級脂肪族アルコール,又は水とこれらのアルコールの何れかとの混合物,又はこれらのアルコールの2種以上の混合物である,上記24の方法。
(26)粗製のL−ノルエフェドリンと有機酸との反応の温度が0℃〜大気圧での溶媒の沸点である,上記23ないし25の何れかの方法。
(27)純粋なL−ノルエフェドリンと有機酸との塩の分解に用いられる塩基が,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水酸化ナトリウム,酢酸ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,酢酸カリウム,及び水酸化バリウムよりなる群より選ばれるものであり,好ましくは水酸化ナトリウム又は炭酸カリウム又は炭酸水素ナトリウムである,上記23ないし26の何れかの方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して光学活性なL−ノルエフェドリンを生成させる新規触媒を提供でき,また該触媒を用いることによる,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化プロセスにより還元して光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得るための方法を提供でき,更に該方法であって,光学的反対物やジアステレオマー不純物の実質的生成を伴うことがなく,操作上安全で,液体と気体とを問わず廃棄物を生じさせずに行うことのできる方法を,提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明によれば,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得るための,活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する,細かく分割されたニッケル金属を含んでなる触媒を含んでなる,新規な触媒組成物が提供される。
【0021】
本発明の好ましい一具体例においては,L−フェニルアセチルカルビノールオキシム(これは例えば,WO 2005/100299に記載された方法に従って得ることができる)は,水のみを含んでなる,又は水とC1〜C3低級アルコールとの混合物を含んでな,アルカリ性のpHを有する溶媒混合物に,溶解される。
【0022】
該L−フェニルアセチルカルビノールオキシムの溶液は,新規の水素化触媒の存在下に高圧オートクレーブ中で水素化される。
【0023】
該L−フェニルアセチルカルビノールオキシム溶液の濃度は,最初の溶液において,1〜25w/v%であってよく,より好ましくは10〜16w/v%である。
【0024】
該溶液のpHは,アルカリ金属水酸化物,好ましくはNaOHの添加によりアルカリ性にされる。
【0025】
水素化は,水素圧1kg/cm2〜15kg/cm2,より好ましくは3kg/cm2〜10kg/cm2において行われる。
【0026】
水素化反応の温度は,室温〜100℃に維持される。
【0027】
使用される触媒の量は,反応混合物の0.5重量%〜5重量%である。水素ガスの吸収が止んだ後(圧の下降の速度により示される),反応混合物が濾過されて触媒が除去される。
【0028】
濾過された触媒は活性を保持しており,操作に伴う触媒の損失に見合うように新鮮な触媒の適当な追加量を補充して,次の水素化バッチ中で再利用することができる。
【0029】
濾液は,溶媒(使用されていた場合)を回収するために所望により減圧で濃縮され,生成物である粗製のL−ノルエフェドリンを回収するために更に処理される。
【0030】
該粗生成物は,主としてL−ノルエフェドリンの1−エリスロ型異性体よりなり,ジアステレオマー不純物である1−トレオ型異性体,L−ノルシュードエフェドリンを幾らか含む。こうして,上記の新規水素化触媒を用いたこの水素化方法は,液体又は気体の廃棄物を生じず,触媒はリサイクル可能であり,水素化の後に廃棄物が残らない。
【0031】
該反応に用いる触媒は,金属の新規な組み合わせであり,活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する,細かく分割されたニッケル金属を含んでなる。
【0032】
該活性化物質は,2〜15重量%まで存在してよく,促進物質は,1〜5重量%まで存在してよい。該触媒は,合金の形態の最初の金属混合物から,最初の混合物から促進金属を除去すること無しに実質的部分の活性化金属を浸出させて除去することによって調製してよい。
【0033】
触媒の調製:
最初の金属混合物を上記の触媒組成物に変換する方法は,次のステップを含んでなる:
(i) 該最初の金属混合物を,細かく粉砕された状態でアルキル金属水酸化物の溶液と接触させ,該接触を,所望レベルの金属浸出及び所望レベルの触媒活性が達成されるまで維持する。
(ii) 該溶液中にアルカリ金属水酸化物を10〜40重量%含有させる。
(iii) 最初の金属混合物にニッケル金属を30〜60重量%含有させる。
(iv) 最初の金属混合物に活性化物質としての金属を40〜70重量%存在させる。
(v) 最初の金属混合物に促進物質としての金属を1〜5重量%存在させる。
(vi) アルカリ金属水酸化物の溶液の液量を,最初の金属混合物の重量の2〜20倍に維持する。
(vii) 接触工程の温度を50〜110℃に維持する。
(viii) 上記接触温度にて,得られる触媒の活性をモニタリングしつつ,接触工程を続ける。
(ix) 最初の金属混合物に加えられた活性化物質の含量が,2〜15重量%となり且つ触媒1gあたり少なくとも80mL/分の水素吸収という活性レベルが達成されるまで接触工程を続ける。
(x) ニトロベンゼンの水素化が標準的試験条件下に行われるときの水素吸収の速度を測定することにより,触媒活性を測定する。
(xi) 触媒スラリーを水で,デカンテーションによりアルカリ不含となるまで洗浄する。
(xii) 上記工程により,金属混合物が合金形態でのニッケル金属とアルミニウム金属の1:1混合物であるときには本質的に慣用のラネーニッケルであるところの材料を製造する。
【0034】
しかしながら,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムの水素化の上記方法に触媒としてラネーニッケルを用いると,得られるL−ノルエフェドリンのジアステレオマー純度及びエナンチオマー純度は,悪影響を受ける。それに加え,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムのノルエフェドリン塩基への変換も,非常に乏しいものとなる。しかしながら全く驚くべきことに,本発明者らは,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムの水素化のための上記のようにして製造される新規な触媒は,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムのL−ノルエフェドリンへの卓越した変換,及び得られるL−ノルエフェドリンについての卓越したジアステレオマー純度,エナンチオマー純度をもたらすことを見出した。
【0035】
この粗生成物から,水性媒質,又は低級脂肪族アルコール,又は水とそれらのアルコールの何れかとの混合物,又はそれらのアルコールの2種の混合物中における有機酸での,0℃〜大気圧での溶媒の沸点での処理により,純粋なL−ノルエフェドリンが得られる。目的とする異性体であるL−ノルエフェドリン(これは,溶解性の低い塩を形成する。)が,濾取される。目的とする異性体を含有する塩は,塩基での処理により分解され,目的とする異性体が塩基の形で有機溶媒を用いて抽出される。次いで,溶媒の減圧留去により,純粋なL−ノルエフェドリンが単離される。
【0036】
こうして単離された塩基の形の純粋なl−ノルエフェドリンは,適当な有機酸又は無機酸での処理により,有機酸又は無機酸との塩へと変換してよい。
【0037】
エリスロ型異性体及びトレオ型異性体の分離のために用いられる有機酸は,好ましくは,酢酸,プロピオン酸,酪酸,イソ酪酸,シュウ酸,マロン酸,コハク酸,シクロヘキサンカルボン酸,マレイン酸,安息香酸,p−トルイル酸,メタンスルホン酸,ベンゼンスルホン酸,又はp−トルエンスルホン酸よりなる群より選ばれる。
【0038】
この分離反応に用いられる溶媒は,水又は低級脂肪族アルコール,好ましくは,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,n−ブタノール,2−ブタノール,及びtert−ブタノール,又は水とこれらのアルコールの何れかとの混合物,又はこれらのアルコールの2種の混合物よりなる群より選ばれる。
【0039】
L−ノルエフェドリンの有機酸塩の分解に用いられる塩基は,好ましくは,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水酸化ナトリウム,酢酸ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,酢酸カリウム,及び水酸化バリウムよりなる群より選ばれ,特に好ましくは,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム又は炭酸水素ナトリウムである。
【0040】
純粋なL−ノルエフェドリン塩基を抽出するために用いられる溶媒は,トルエン,ベンゼン,1,2−ジクロロエタン,ジ−n−ブチルエーテル,ジエチルエーテル,メチルtert−ブチルエーテル,モノクロロベンゼン,n−ブタノール,クロロホルム及びジクロロメタンよりなる群より選ばれる。
【0041】
本発明の詳細,その目的及び利点は,非限定的な例示を参照して,以下に更に詳細に説明されている。実施例は単に説明的なものであり,本発明の教示を限定するものでなく,本発明の範囲から逸脱することなしに,方法の各ステップに種々の修正又は変更を加えることは当業者に自明であり,従って,本発明のアプローチ及び範囲の境界及び精神内に包含されるものである。
【0042】
〔実施例1〕
新規水素化触媒の製造:
70mLの水に溶解させた20gの水酸化ナトリウムの溶液を50〜60℃に加熱する。激しく撹拌しつつ,これに30%のニッケル,65%のアルミニウム及び5%の鉄を含有する5gの金属混合物を少量ずつ加えた。添加が終了した後,混合物を沸点にて30分間加熱する。少量の部分をデカンテーションにより洗浄し,その水素化活性を,標準の水素化装置を用いてニトロベンゼンの水素化によって確認した。活性は,触媒1gあたり85mL/分であった。スラリーを冷却し,水でデカンテーションして中性になるまで洗浄した。
【0043】
〔実施例2〕
新規水素化触媒によるL−フェニルアセチルカルビノールオキシムの水素化:
200Lの水−メタノール混液(30:70)中の11kgのL−フェニルアセチルカルビノールオキシム溶液を,6kgの水酸化ナトリウムと混合した。加熱ジャケット及び撹拌装置を備えた高圧オートクレーブに溶液を仕込んだ。水でスラリーとした5.5kgの新規水素化触媒(例えば実施例1のようにして製造)を,当該オートクレーブに仕込んだ。オートクレーブの蓋を確りと閉めた。オートクレーブを排気し,窒素で真空を解除した。この排気及び真空解除を,3回反復した。次いで同じ順序で排気及び水素による真空解除の手順を2回反復した。最後に,オートクレーブを水素で7kg/cm2の圧まで加圧した。必要に応じてオートクレーブジャケットへの蒸気/冷却水の適用により,温度を室温〜65℃に維持した。圧は,下降がもはや見られなくなるまで,6.0kg/cm2〜7.0kg/cm2に維持した。撹拌を止め,反応混合物を放置して沈殿させ,デカンテーションして触媒からフィルターを通して回収した。触媒をメタノールでデカンテーションして洗浄し,洗浄液を濾過した。濾液と洗浄液を合わせ,500L容量のSS容器に入れ,メタノールを減圧にて,液温が90〜100℃に上がるまで留去した。濃縮物を冷却しトルエンで抽出した。トルエン抽出物を減圧留去した。
【0044】
これにより,10kgのL−ノルエフェドリン塩基が得られた。これを100Lの無水エーテルに溶解させ,エタノール性HClで処理し,塩酸L−ノルエフェドリンを得が得られた。
融点171〜172℃,[α]D25:−32.5°(水中5%)
ジアステレオマー純度(HPLC):L−ノルエフェドリン:97.5%,L−ノルシュードエフェドリン:2.5%
【0045】
〔比較例2〕
市販のラネーニッケル触媒によるL−フェニルアセチルカルビノールオキシムの水素化:
200Lの水−メタノール混液(30:70)中の11kgのL−フェニルアセチルカルビノールオキシム溶液を,6kgの水酸化ナトリウムと混合した。加熱ジャケット及び撹拌装置を備えた高圧オートクレーブに溶液を仕込んだ。水でスラリーとした5.5kgの市販のラネーニッケル触媒を,当該オートクレーブに仕込んだ。オートクレーブの蓋を確りと閉めた。オートクレーブを排気し,窒素で真空を解除した。この排気及び真空解除を,3回反復した。次いで同じ順序で排気及び水素による真空解除の手順を2回反復した。最後に,オートクレーブを水素で7kg/cm2の圧まで加圧した。必要に応じてオートクレーブジャケットへの蒸気/冷却水の適用により,温度を室温〜65℃に維持した。圧は,下降がもはや見られなくなるまで,6.0kg/cm2〜7.0kg/cm2に維持した。撹拌を止め,反応混合物を放置して沈殿させ,デカンテーションして触媒からフィルターを通して回収した。触媒をメタノールでデカンテーションして洗浄し,洗浄液を濾過した。濾液と洗浄液を合わせ,500L容量のSS容器に入れ,メタノールを減圧にて,液温が90〜100℃に上がるまで留去した。濃縮物を冷却しトルエンで抽出した。トルエン抽出物を減圧留去した。
【0046】
これにより,10kgの粗製L−ノルエフェドリン塩基が得られた。これを100Lの無水エーテルに溶解させ,エタノール性HClで処理した。反応混合物は,結晶性塩酸L−ノルエフェドリンを与えなかった。この粗製L−ノルエフェドリン塩基のHPLC分析は,それがL−ノルエフェドリン塩基とL−ノルシュードエフェドリン塩基とを比率55:45で含有すること,数個の他のピークをも含むことを明らかにした。更には,0.1N過塩素酸による非水滴定は,分子量151.20(L−ノルエフェドリン/L−ノルシュードエフェドリンの分子量)の塩基性成分が約65%しか含まれていないことを示した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して光学活性なL−ノルエフェドリンを生成させる新規触媒を提供でき,また該触媒を用いることによる,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化プロセスにより還元して光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得るための方法,及び該方法であって,光学的反対物やジアステレオマー不純物の実質的生成を伴うことなく,操作上安全で,液体であれ気体であれ廃棄物を生じさせずに行うことのできる方法を,提供することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は,水素化方法のための新規触媒,該触媒の製造方法,及び,接触水素化方法によるL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕の効率的製造方法に関する。
【0002】
より具体的には,本発明は,水素化工程のための活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する,細かく分割されたニッケル金属を含んでなる新規な水素化触媒に関する。
【0003】
本発明は更に,上記水素化触媒の製造方法にも関する。
【0004】
より具体的には,本発明は,上記の新規触媒を用いた接触水素化方法による,光学的反対物とジアステレオマー不純物とを実質的に含まない,光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕の製造のための効率的な方法に関する
【背景技術】
【0005】
L−ノルエフェドリンは,アレルギー反応や呼吸器感染を軽減させるために多くの製剤に用いられている副腎系薬物の1つである。L−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕は,L−フェニルアセチルカルビノールオキシム(L−PAC)の還元/水素化により製造される。
【0006】
よく知られている高活性な水素化触媒は,プラチナ族の金属,特にプラチナ,パラジウム,ロジウム及びルテニウムである。高活性触媒は,より低温で及びより低いH2圧下で働く。卑金属触媒,特にニッケルに基づく触媒(例えば,ラネーニッケル及び漆原ニッケル)もまた,経済的な代替物として開発されている。
【0007】
WO 2005/100299(特許文献1)は,光学的反対物とジアステレオマー不純物とを実質的に含まないL−エリスロ−2−アミノ−1−フェニ−1−プロパノールの製造のための新規な効率的方法を記載している。その方法は,ヒドロキシルアミン塩でL−フェニルアセチルカルビノールを処理することによるそのオキシム誘導体への変換,及び,こうして得られたオキシムの,ニッケル及びアルミニウム金属を含んでなる触媒による還元を伴っている(スキーム1)。
【0008】
【化1】
【0009】
WO 2005/100299(特許文献1)は,この主題に関する文献の包括的要約を提供している。L−フェニルアセチルカルビノールオキシムの還元について述べている文献は,以下に挙げるもののみである。
【0010】
D. H. Hey, J. Chem. Soc. 1232 (1930)(非特許文献1)は,dl−マンデルアミドと臭化メチルマグネシウムとの反応によるdl−PACオキシムの製造,及び,dl−PACオキシムのナトリウムアマルガムによる還元を記述している。
【0011】
W. H. Hartung and J. C. Munch, J. Am. Chem. Soc., 51, 2262-2266(1929)(非特許文献2)は,dl−PACオキシムの製造及びナトリウムアマルガムによる還元を記述している。
【0012】
GB365535(特許文献2)は,L−PACオキシムの製造方法及び貴金属触媒上でのその水素化による還元を開示している。
【0013】
DE587586(特許文献3)は,L−PACオキシムの製造及び貴金属触媒上でのその水素化による還元を開示している。
【0014】
DE1014553(特許文献4)は,L−PACオキシムの製造及びアマルガム化したアルミニウムによるその還元を開示している。
【0015】
特開平05−004948(特許文献5)は,キラル置換したフェロセニルホスフィンリガンドのロジウム錯体を水素化触媒として用いたL−PACの還元を開示している。
【0016】
このように,光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を,液体と気体とを問わず有害であり得る廃棄物を生じさせず,また使用した触媒をろ過してリサイクルできる仕方で与える,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムの接触水素化に対する需要がある。
【特許文献1】WO2005/100299
【特許文献2】GB365535
【特許文献3】DE587586
【特許文献4】DE1014553
【特許文献5】特開平05−004948
【非特許文献1】D. H. Hey, J. Chem. Soc. 1232 (1930)
【非特許文献2】W. H. Hartung and J. C. Munch, J. Am. Chem. Soc., 51, 2262-2266(1929)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って,本発明の一目的は,新規な水素化触媒を提供することである。
本発明の更なる一目的は,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得るための新規な触媒を提供することである。
本発明の尚も別の一目的は,上記の新規触媒の製造方法を提供することである。
本発明の尚も別の一目的は,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化プロセスにより還元して光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得るための方法を提供することである。
本発明の尚も更なる一目的は,光学的反対物及びジアステレオマー不純物を実質的に含まない,光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕の製造方法を提供することである。
本発明の尚も別の一目的は,液体と気体とを問わず廃棄物を生じさせずに,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して,光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得る方法を提供することである。
本発明の尚も別の一目的は,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して,光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得る方法であって,操作の安全な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は,活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する,細かく分割されたニッケル金属を含んでなる新規な水素化触媒を提供する。より具体的には,本発明は以下を提供するものである。
(1)活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する細かく分割されたニッケル金属を含んでなる水素化触媒。
(2)周期表のIIIA族の金属が2〜15重量%の量で含まれているものである,上記1の触媒。
(3)周期表のVIB族又はVIII族の金属が1〜5重量%の量で含まれているものである,上記1又は2の触媒。
(4)周期表のIIIA族の金属がアルミニウムである,上記1ないし3の何れかの触媒。
(5)周期表のVIII族の金属が鉄である,上記1ないし4の何れかの触媒。
(6)周期表のVIII族の金属がコバルトである,上記1ないし4の何れかの触媒。
(7)周期表のVIB族の金属がモリブデンである,上記1ないし6の何れかの触媒。
(8)周期表のVIB族の金属がクロムである,上記1ないし6の何れかの触媒。
(9)上記1ないし8の何れかの水素化触媒の製造方法であって,
(i) ニッケル,活性化物質としての周期表のIIIA族の金属,及び促進物質としての周期表のVIB族又はVIII族の金属を含んでなるものである最初の金属混合物と,
(ii) アルカリ金属水酸化物の溶液とを,
該最初の金属混合物に加えられた該活性化物質の含量が2〜15重量%となり,且つ触媒1gあたり少なくとも80mL/分の水素吸収という活性レベルが達成されるまで混合することを含んでなるものである,方法。
(10)該最初の金属混合物がニッケル金属を30〜60重量%含むものである,上記9の方法。
(11)L−フェニルアセチルカルビノールオキシムからL−ノルエフェドリンを製造する方法であって,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを,アルカリ性溶液中で上記1ないし8の何れかの水素化触媒の存在下に水素化することを含むものである,方法。
(12)L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを溶解させるために用いられる溶媒が,水のみ,又は水とC1〜C3低級アルコールとの混合物であって,該C1〜C3低級アルコールが該溶媒混合物中に10〜100v/v%含まれるものである,上記11の方法。
(13)C1〜C3低級アルコールが該溶媒混合物中に50〜90v/v%含まれるものである,上記12の方法。
(14)水素化混合物中のL−フェニルアセチルカルビノールオキシムの濃度が1〜25w/v%である,上記11ないし13の何れかの方法。
(15)水素化混合物中のL−フェニルアセチルカルビノールオキシムの濃度が10〜16w/v%である,上記14の方法。
(16)反応混合物が,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水酸化ナトリウム,酢酸ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,酢酸カリウム,及び水酸化バリウムよりなる群より選ばれる塩基,好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの使用によりアルカリ性にされるものである,上記11ないし15の何れかの方法。
(17)該塩基が反応混合物中に5〜25w/v%含まれるものである,上記11ないし16の何れかの方法。
(18)該水素化触媒が,水素化反応混合物中に0.5〜5w/v%含まれるものである,上記11ないし16の何れかの方法。
(19)水素圧が1kg/cm2〜15kg/cm2に維持されるものである,上記11ないし18の何れかの方法。
(20)水素圧が3kg/cm2〜10kg/cm2に維持されるものである,上記19の方法。
(21)水素化反応の温度が室温〜100℃に維持されるものである,上記11ないし20の何れかの方法。
(22)該方法で使用される触媒が,先行する水素化のバッチから回収された触媒であって,操作に伴う損失に見合うよう新鮮な触媒の適当量が追加されたものである,上記11ないし21の何れかの方法。
(23)粗製のL−ノルエフェドリンを,溶媒の存在下に有機酸又は無機酸で処理し,そして形成された塩を塩基で分解することにより純粋なL−ノルエフェドリンを得るものである,上記11ないし22の何れかの方法。
(24)有機酸が,酢酸,プロピオン酸,酪酸,イソ酪酸,シュウ酸,マロン酸,コハク酸,シクロヘキサンカルボン酸,マレイン酸,安息香酸,p−トルイル酸,メタンスルホン酸,ベンゼンスルホン酸,又はp−トルエンスルホン酸よりなる群より選ばれるものである,上記23の方法。
(25)該方法に使用される溶媒が,水であるか,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,n−ブタノール,2−ブタノール,及びtert−ブタノールよりなる群より選ばれるものであってよい低級脂肪族アルコール,又は水とこれらのアルコールの何れかとの混合物,又はこれらのアルコールの2種以上の混合物である,上記24の方法。
(26)粗製のL−ノルエフェドリンと有機酸との反応の温度が0℃〜大気圧での溶媒の沸点である,上記23ないし25の何れかの方法。
(27)純粋なL−ノルエフェドリンと有機酸との塩の分解に用いられる塩基が,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水酸化ナトリウム,酢酸ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,酢酸カリウム,及び水酸化バリウムよりなる群より選ばれるものであり,好ましくは水酸化ナトリウム又は炭酸カリウム又は炭酸水素ナトリウムである,上記23ないし26の何れかの方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して光学活性なL−ノルエフェドリンを生成させる新規触媒を提供でき,また該触媒を用いることによる,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化プロセスにより還元して光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得るための方法を提供でき,更に該方法であって,光学的反対物やジアステレオマー不純物の実質的生成を伴うことがなく,操作上安全で,液体と気体とを問わず廃棄物を生じさせずに行うことのできる方法を,提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明によれば,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得るための,活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する,細かく分割されたニッケル金属を含んでなる触媒を含んでなる,新規な触媒組成物が提供される。
【0021】
本発明の好ましい一具体例においては,L−フェニルアセチルカルビノールオキシム(これは例えば,WO 2005/100299に記載された方法に従って得ることができる)は,水のみを含んでなる,又は水とC1〜C3低級アルコールとの混合物を含んでな,アルカリ性のpHを有する溶媒混合物に,溶解される。
【0022】
該L−フェニルアセチルカルビノールオキシムの溶液は,新規の水素化触媒の存在下に高圧オートクレーブ中で水素化される。
【0023】
該L−フェニルアセチルカルビノールオキシム溶液の濃度は,最初の溶液において,1〜25w/v%であってよく,より好ましくは10〜16w/v%である。
【0024】
該溶液のpHは,アルカリ金属水酸化物,好ましくはNaOHの添加によりアルカリ性にされる。
【0025】
水素化は,水素圧1kg/cm2〜15kg/cm2,より好ましくは3kg/cm2〜10kg/cm2において行われる。
【0026】
水素化反応の温度は,室温〜100℃に維持される。
【0027】
使用される触媒の量は,反応混合物の0.5重量%〜5重量%である。水素ガスの吸収が止んだ後(圧の下降の速度により示される),反応混合物が濾過されて触媒が除去される。
【0028】
濾過された触媒は活性を保持しており,操作に伴う触媒の損失に見合うように新鮮な触媒の適当な追加量を補充して,次の水素化バッチ中で再利用することができる。
【0029】
濾液は,溶媒(使用されていた場合)を回収するために所望により減圧で濃縮され,生成物である粗製のL−ノルエフェドリンを回収するために更に処理される。
【0030】
該粗生成物は,主としてL−ノルエフェドリンの1−エリスロ型異性体よりなり,ジアステレオマー不純物である1−トレオ型異性体,L−ノルシュードエフェドリンを幾らか含む。こうして,上記の新規水素化触媒を用いたこの水素化方法は,液体又は気体の廃棄物を生じず,触媒はリサイクル可能であり,水素化の後に廃棄物が残らない。
【0031】
該反応に用いる触媒は,金属の新規な組み合わせであり,活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する,細かく分割されたニッケル金属を含んでなる。
【0032】
該活性化物質は,2〜15重量%まで存在してよく,促進物質は,1〜5重量%まで存在してよい。該触媒は,合金の形態の最初の金属混合物から,最初の混合物から促進金属を除去すること無しに実質的部分の活性化金属を浸出させて除去することによって調製してよい。
【0033】
触媒の調製:
最初の金属混合物を上記の触媒組成物に変換する方法は,次のステップを含んでなる:
(i) 該最初の金属混合物を,細かく粉砕された状態でアルキル金属水酸化物の溶液と接触させ,該接触を,所望レベルの金属浸出及び所望レベルの触媒活性が達成されるまで維持する。
(ii) 該溶液中にアルカリ金属水酸化物を10〜40重量%含有させる。
(iii) 最初の金属混合物にニッケル金属を30〜60重量%含有させる。
(iv) 最初の金属混合物に活性化物質としての金属を40〜70重量%存在させる。
(v) 最初の金属混合物に促進物質としての金属を1〜5重量%存在させる。
(vi) アルカリ金属水酸化物の溶液の液量を,最初の金属混合物の重量の2〜20倍に維持する。
(vii) 接触工程の温度を50〜110℃に維持する。
(viii) 上記接触温度にて,得られる触媒の活性をモニタリングしつつ,接触工程を続ける。
(ix) 最初の金属混合物に加えられた活性化物質の含量が,2〜15重量%となり且つ触媒1gあたり少なくとも80mL/分の水素吸収という活性レベルが達成されるまで接触工程を続ける。
(x) ニトロベンゼンの水素化が標準的試験条件下に行われるときの水素吸収の速度を測定することにより,触媒活性を測定する。
(xi) 触媒スラリーを水で,デカンテーションによりアルカリ不含となるまで洗浄する。
(xii) 上記工程により,金属混合物が合金形態でのニッケル金属とアルミニウム金属の1:1混合物であるときには本質的に慣用のラネーニッケルであるところの材料を製造する。
【0034】
しかしながら,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムの水素化の上記方法に触媒としてラネーニッケルを用いると,得られるL−ノルエフェドリンのジアステレオマー純度及びエナンチオマー純度は,悪影響を受ける。それに加え,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムのノルエフェドリン塩基への変換も,非常に乏しいものとなる。しかしながら全く驚くべきことに,本発明者らは,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムの水素化のための上記のようにして製造される新規な触媒は,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムのL−ノルエフェドリンへの卓越した変換,及び得られるL−ノルエフェドリンについての卓越したジアステレオマー純度,エナンチオマー純度をもたらすことを見出した。
【0035】
この粗生成物から,水性媒質,又は低級脂肪族アルコール,又は水とそれらのアルコールの何れかとの混合物,又はそれらのアルコールの2種の混合物中における有機酸での,0℃〜大気圧での溶媒の沸点での処理により,純粋なL−ノルエフェドリンが得られる。目的とする異性体であるL−ノルエフェドリン(これは,溶解性の低い塩を形成する。)が,濾取される。目的とする異性体を含有する塩は,塩基での処理により分解され,目的とする異性体が塩基の形で有機溶媒を用いて抽出される。次いで,溶媒の減圧留去により,純粋なL−ノルエフェドリンが単離される。
【0036】
こうして単離された塩基の形の純粋なl−ノルエフェドリンは,適当な有機酸又は無機酸での処理により,有機酸又は無機酸との塩へと変換してよい。
【0037】
エリスロ型異性体及びトレオ型異性体の分離のために用いられる有機酸は,好ましくは,酢酸,プロピオン酸,酪酸,イソ酪酸,シュウ酸,マロン酸,コハク酸,シクロヘキサンカルボン酸,マレイン酸,安息香酸,p−トルイル酸,メタンスルホン酸,ベンゼンスルホン酸,又はp−トルエンスルホン酸よりなる群より選ばれる。
【0038】
この分離反応に用いられる溶媒は,水又は低級脂肪族アルコール,好ましくは,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,n−ブタノール,2−ブタノール,及びtert−ブタノール,又は水とこれらのアルコールの何れかとの混合物,又はこれらのアルコールの2種の混合物よりなる群より選ばれる。
【0039】
L−ノルエフェドリンの有機酸塩の分解に用いられる塩基は,好ましくは,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水酸化ナトリウム,酢酸ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,酢酸カリウム,及び水酸化バリウムよりなる群より選ばれ,特に好ましくは,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム又は炭酸水素ナトリウムである。
【0040】
純粋なL−ノルエフェドリン塩基を抽出するために用いられる溶媒は,トルエン,ベンゼン,1,2−ジクロロエタン,ジ−n−ブチルエーテル,ジエチルエーテル,メチルtert−ブチルエーテル,モノクロロベンゼン,n−ブタノール,クロロホルム及びジクロロメタンよりなる群より選ばれる。
【0041】
本発明の詳細,その目的及び利点は,非限定的な例示を参照して,以下に更に詳細に説明されている。実施例は単に説明的なものであり,本発明の教示を限定するものでなく,本発明の範囲から逸脱することなしに,方法の各ステップに種々の修正又は変更を加えることは当業者に自明であり,従って,本発明のアプローチ及び範囲の境界及び精神内に包含されるものである。
【0042】
〔実施例1〕
新規水素化触媒の製造:
70mLの水に溶解させた20gの水酸化ナトリウムの溶液を50〜60℃に加熱する。激しく撹拌しつつ,これに30%のニッケル,65%のアルミニウム及び5%の鉄を含有する5gの金属混合物を少量ずつ加えた。添加が終了した後,混合物を沸点にて30分間加熱する。少量の部分をデカンテーションにより洗浄し,その水素化活性を,標準の水素化装置を用いてニトロベンゼンの水素化によって確認した。活性は,触媒1gあたり85mL/分であった。スラリーを冷却し,水でデカンテーションして中性になるまで洗浄した。
【0043】
〔実施例2〕
新規水素化触媒によるL−フェニルアセチルカルビノールオキシムの水素化:
200Lの水−メタノール混液(30:70)中の11kgのL−フェニルアセチルカルビノールオキシム溶液を,6kgの水酸化ナトリウムと混合した。加熱ジャケット及び撹拌装置を備えた高圧オートクレーブに溶液を仕込んだ。水でスラリーとした5.5kgの新規水素化触媒(例えば実施例1のようにして製造)を,当該オートクレーブに仕込んだ。オートクレーブの蓋を確りと閉めた。オートクレーブを排気し,窒素で真空を解除した。この排気及び真空解除を,3回反復した。次いで同じ順序で排気及び水素による真空解除の手順を2回反復した。最後に,オートクレーブを水素で7kg/cm2の圧まで加圧した。必要に応じてオートクレーブジャケットへの蒸気/冷却水の適用により,温度を室温〜65℃に維持した。圧は,下降がもはや見られなくなるまで,6.0kg/cm2〜7.0kg/cm2に維持した。撹拌を止め,反応混合物を放置して沈殿させ,デカンテーションして触媒からフィルターを通して回収した。触媒をメタノールでデカンテーションして洗浄し,洗浄液を濾過した。濾液と洗浄液を合わせ,500L容量のSS容器に入れ,メタノールを減圧にて,液温が90〜100℃に上がるまで留去した。濃縮物を冷却しトルエンで抽出した。トルエン抽出物を減圧留去した。
【0044】
これにより,10kgのL−ノルエフェドリン塩基が得られた。これを100Lの無水エーテルに溶解させ,エタノール性HClで処理し,塩酸L−ノルエフェドリンを得が得られた。
融点171〜172℃,[α]D25:−32.5°(水中5%)
ジアステレオマー純度(HPLC):L−ノルエフェドリン:97.5%,L−ノルシュードエフェドリン:2.5%
【0045】
〔比較例2〕
市販のラネーニッケル触媒によるL−フェニルアセチルカルビノールオキシムの水素化:
200Lの水−メタノール混液(30:70)中の11kgのL−フェニルアセチルカルビノールオキシム溶液を,6kgの水酸化ナトリウムと混合した。加熱ジャケット及び撹拌装置を備えた高圧オートクレーブに溶液を仕込んだ。水でスラリーとした5.5kgの市販のラネーニッケル触媒を,当該オートクレーブに仕込んだ。オートクレーブの蓋を確りと閉めた。オートクレーブを排気し,窒素で真空を解除した。この排気及び真空解除を,3回反復した。次いで同じ順序で排気及び水素による真空解除の手順を2回反復した。最後に,オートクレーブを水素で7kg/cm2の圧まで加圧した。必要に応じてオートクレーブジャケットへの蒸気/冷却水の適用により,温度を室温〜65℃に維持した。圧は,下降がもはや見られなくなるまで,6.0kg/cm2〜7.0kg/cm2に維持した。撹拌を止め,反応混合物を放置して沈殿させ,デカンテーションして触媒からフィルターを通して回収した。触媒をメタノールでデカンテーションして洗浄し,洗浄液を濾過した。濾液と洗浄液を合わせ,500L容量のSS容器に入れ,メタノールを減圧にて,液温が90〜100℃に上がるまで留去した。濃縮物を冷却しトルエンで抽出した。トルエン抽出物を減圧留去した。
【0046】
これにより,10kgの粗製L−ノルエフェドリン塩基が得られた。これを100Lの無水エーテルに溶解させ,エタノール性HClで処理した。反応混合物は,結晶性塩酸L−ノルエフェドリンを与えなかった。この粗製L−ノルエフェドリン塩基のHPLC分析は,それがL−ノルエフェドリン塩基とL−ノルシュードエフェドリン塩基とを比率55:45で含有すること,数個の他のピークをも含むことを明らかにした。更には,0.1N過塩素酸による非水滴定は,分子量151.20(L−ノルエフェドリン/L−ノルシュードエフェドリンの分子量)の塩基性成分が約65%しか含まれていないことを示した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化して光学活性なL−ノルエフェドリンを生成させる新規触媒を提供でき,また該触媒を用いることによる,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを接触水素化プロセスにより還元して光学活性なL−ノルエフェドリン〔(1R,2S)−2−アミノ−1−フェニル−1−プロパノール〕を得るための方法,及び該方法であって,光学的反対物やジアステレオマー不純物の実質的生成を伴うことなく,操作上安全で,液体であれ気体であれ廃棄物を生じさせずに行うことのできる方法を,提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する細かく分割されたニッケル金属を含んでなる水素化触媒。
【請求項2】
周期表のIIIA族の金属が2〜15重量%の量で含まれているものである,請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
周期表のVIB族又はVIII族の金属が1〜5重量%の量で含まれているものである,請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
周期表のIIIA族の金属がアルミニウムである,請求項1ないし3の何れかに記載の触媒。
【請求項5】
周期表のVIII族の金属が鉄である,請求項1ないし4の何れかに記載の触媒。
【請求項6】
周期表のVIII族の金属がコバルトである,請求項1ないし4の何れかに記載の触媒。
【請求項7】
周期表のVIB族の金属がモリブデンである,請求項1ないし6の何れかに記載の触媒。
【請求項8】
周期表のVIB族の金属がクロムである,請求項1ないし6の何れかに記載の触媒。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れかに記載の水素化触媒の製造方法であって,
(i) ニッケル,活性化物質としての周期表のIIIA族の金属,及び促進物質としての周期表のVIB族又はVIII族の金属を含んでなるものである最初の金属混合物と,
(ii) アルカリ金属水酸化物の溶液とを,
該最初の金属混合物に加えられた該活性化物質の含量が2〜15重量%となり,且つ触媒1gあたり少なくとも80mL/分の水素吸収という活性レベルが達成されるまで混合することを含んでなるものである,方法。
【請求項10】
該最初の金属混合物がニッケル金属を30〜60重量%含むものである,請求項9に記載の方法。
【請求項11】
L−フェニルアセチルカルビノールオキシムからL−ノルエフェドリンを製造する方法であって,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを,アルカリ性溶液中で請求項1ないし8の何れかに記載の水素化触媒の存在下に水素化することを含むものである,方法。
【請求項12】
L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを溶解させるために用いられる溶媒が,水のみ,又は水とC1〜C3低級アルコールとの混合物であって,該C1〜C3低級アルコールが該溶媒混合物中に10〜100v/v%含まれるものである,請求項11に記載の方法。
【請求項13】
C1〜C3低級アルコールが該溶媒混合物中に50〜90v/v%含まれるものである,請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水素化混合物中のL−フェニルアセチルカルビノールオキシムの濃度が1〜25w/v%である,請求項11ないし13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
水素化混合物中のL−フェニルアセチルカルビノールオキシムの濃度が10〜16w/v%である,請求項14に記載の方法。
【請求項16】
反応混合物が,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水酸化ナトリウム,酢酸ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,酢酸カリウム,及び水酸化バリウムよりなる群より選ばれる塩基の使用によりアルカリ性にされるものである,請求項11ないし15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
該塩基が反応混合物中に5〜25w/v%含まれるものである,請求項11ないし16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
該水素化触媒が,水素化反応混合物中に0.5〜5w/v%含まれるものである,請求項11ないし16の何れかに記載の方法。
【請求項19】
水素圧が1kg/cm2〜15kg/cm2に維持されるものである,請求項11ないし18の何れかに記載の方法。
【請求項20】
水素圧が3kg/cm2〜10kg/cm2に維持されるものである,請求項19に記載の方法。
【請求項21】
水素化反応の温度が室温〜100℃に維持されるものである,請求項11ないし20の何れかに記載の方法。
【請求項22】
該方法で使用される触媒が,先行する水素化のバッチから回収された触媒であって,操作に伴う損失に見合うよう新鮮な触媒の適当量が追加されたものである,請求項11ないし21の何れかに記載の方法。
【請求項23】
粗製のL−ノルエフェドリンを,溶媒の存在下に有機酸又は無機酸で処理し,そして形成された塩を塩基で分解することにより純粋なL−ノルエフェドリンを得るものである,請求項11ないし22の何れかに記載の方法。
【請求項24】
有機酸が,酢酸,プロピオン酸,酪酸,イソ酪酸,シュウ酸,マロン酸,コハク酸,シクロヘキサンカルボン酸,マレイン酸,安息香酸,p−トルイル酸,メタンスルホン酸,ベンゼンスルホン酸,及びp−トルエンスルホン酸よりなる群より選ばれるものである,請求項23に記載の方法。
【請求項25】
該方法に使用される溶媒が,水であるか,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,n−ブタノール,2−ブタノール,及びtert−ブタノールよりなる群より選ばれるものであってよい低級脂肪族アルコール,又は水とこれらのアルコールの何れかとの混合物,又はこれらのアルコールの2種以上の混合物である,請求項24に記載の方法。
【請求項26】
粗製のL−ノルエフェドリンと有機酸との反応の温度が0℃〜大気圧での溶媒の沸点である,請求項23ないし25の何れかに記載の方法。
【請求項27】
純粋なL−ノルエフェドリンと有機酸との塩の分解に用いられる塩基が,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水酸化ナトリウム,酢酸ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,酢酸カリウム,及び水酸化バリウムよりなる群より選ばれるものである,請求項23ないし26の何れかに記載の方法。
【請求項1】
活性化物質としての周期表のIIIA族の金属及び促進物質としてのVIB族又はVIII族の金属を含有する細かく分割されたニッケル金属を含んでなる水素化触媒。
【請求項2】
周期表のIIIA族の金属が2〜15重量%の量で含まれているものである,請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
周期表のVIB族又はVIII族の金属が1〜5重量%の量で含まれているものである,請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
周期表のIIIA族の金属がアルミニウムである,請求項1ないし3の何れかに記載の触媒。
【請求項5】
周期表のVIII族の金属が鉄である,請求項1ないし4の何れかに記載の触媒。
【請求項6】
周期表のVIII族の金属がコバルトである,請求項1ないし4の何れかに記載の触媒。
【請求項7】
周期表のVIB族の金属がモリブデンである,請求項1ないし6の何れかに記載の触媒。
【請求項8】
周期表のVIB族の金属がクロムである,請求項1ないし6の何れかに記載の触媒。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れかに記載の水素化触媒の製造方法であって,
(i) ニッケル,活性化物質としての周期表のIIIA族の金属,及び促進物質としての周期表のVIB族又はVIII族の金属を含んでなるものである最初の金属混合物と,
(ii) アルカリ金属水酸化物の溶液とを,
該最初の金属混合物に加えられた該活性化物質の含量が2〜15重量%となり,且つ触媒1gあたり少なくとも80mL/分の水素吸収という活性レベルが達成されるまで混合することを含んでなるものである,方法。
【請求項10】
該最初の金属混合物がニッケル金属を30〜60重量%含むものである,請求項9に記載の方法。
【請求項11】
L−フェニルアセチルカルビノールオキシムからL−ノルエフェドリンを製造する方法であって,L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを,アルカリ性溶液中で請求項1ないし8の何れかに記載の水素化触媒の存在下に水素化することを含むものである,方法。
【請求項12】
L−フェニルアセチルカルビノールオキシムを溶解させるために用いられる溶媒が,水のみ,又は水とC1〜C3低級アルコールとの混合物であって,該C1〜C3低級アルコールが該溶媒混合物中に10〜100v/v%含まれるものである,請求項11に記載の方法。
【請求項13】
C1〜C3低級アルコールが該溶媒混合物中に50〜90v/v%含まれるものである,請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水素化混合物中のL−フェニルアセチルカルビノールオキシムの濃度が1〜25w/v%である,請求項11ないし13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
水素化混合物中のL−フェニルアセチルカルビノールオキシムの濃度が10〜16w/v%である,請求項14に記載の方法。
【請求項16】
反応混合物が,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水酸化ナトリウム,酢酸ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,酢酸カリウム,及び水酸化バリウムよりなる群より選ばれる塩基の使用によりアルカリ性にされるものである,請求項11ないし15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
該塩基が反応混合物中に5〜25w/v%含まれるものである,請求項11ないし16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
該水素化触媒が,水素化反応混合物中に0.5〜5w/v%含まれるものである,請求項11ないし16の何れかに記載の方法。
【請求項19】
水素圧が1kg/cm2〜15kg/cm2に維持されるものである,請求項11ないし18の何れかに記載の方法。
【請求項20】
水素圧が3kg/cm2〜10kg/cm2に維持されるものである,請求項19に記載の方法。
【請求項21】
水素化反応の温度が室温〜100℃に維持されるものである,請求項11ないし20の何れかに記載の方法。
【請求項22】
該方法で使用される触媒が,先行する水素化のバッチから回収された触媒であって,操作に伴う損失に見合うよう新鮮な触媒の適当量が追加されたものである,請求項11ないし21の何れかに記載の方法。
【請求項23】
粗製のL−ノルエフェドリンを,溶媒の存在下に有機酸又は無機酸で処理し,そして形成された塩を塩基で分解することにより純粋なL−ノルエフェドリンを得るものである,請求項11ないし22の何れかに記載の方法。
【請求項24】
有機酸が,酢酸,プロピオン酸,酪酸,イソ酪酸,シュウ酸,マロン酸,コハク酸,シクロヘキサンカルボン酸,マレイン酸,安息香酸,p−トルイル酸,メタンスルホン酸,ベンゼンスルホン酸,及びp−トルエンスルホン酸よりなる群より選ばれるものである,請求項23に記載の方法。
【請求項25】
該方法に使用される溶媒が,水であるか,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,n−ブタノール,2−ブタノール,及びtert−ブタノールよりなる群より選ばれるものであってよい低級脂肪族アルコール,又は水とこれらのアルコールの何れかとの混合物,又はこれらのアルコールの2種以上の混合物である,請求項24に記載の方法。
【請求項26】
粗製のL−ノルエフェドリンと有機酸との反応の温度が0℃〜大気圧での溶媒の沸点である,請求項23ないし25の何れかに記載の方法。
【請求項27】
純粋なL−ノルエフェドリンと有機酸との塩の分解に用いられる塩基が,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水酸化ナトリウム,酢酸ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カリウム,酢酸カリウム,及び水酸化バリウムよりなる群より選ばれるものである,請求項23ないし26の何れかに記載の方法。
【公開番号】特開2009−106923(P2009−106923A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3728(P2008−3728)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(508010891)エメレン バイオテック ファーマシューテイカルス リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】EMMELLEN BIOTECH PHARMACEUTICALS LID.
【住所又は居所原語表記】501, Sentinel, Hiranandani Gardens, Powai, Mumbai 400 076, India
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(508010891)エメレン バイオテック ファーマシューテイカルス リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】EMMELLEN BIOTECH PHARMACEUTICALS LID.
【住所又は居所原語表記】501, Sentinel, Hiranandani Gardens, Powai, Mumbai 400 076, India
【Fターム(参考)】
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