説明

接近物検知装置および接近物検知方法

【課題】接近物であるか否かの判定を迅速に行うことができ、静止物が接近物であるとの誤判定を低減して、接近物警報システムに適用する際の静止物を対象とした誤警報の出力を低減することができる「接近物検知装置および接近物検知方法」を提供すること。
【解決手段】接近物候補検出手段4によって立体物の最新の検出結果が取得される毎に、最新の検出結果に示される立体物の重心を算出する重心算出手段5と、前記重心の算出結果に基づいて、前記重心の移動方向を算出する移動方向算出手段6とを備え、接近物判定手段7は、前記重心の移動方向が、移動体への接近を示す方向である場合には、接近物であると判定し、前記重心の移動方向が、移動体からの離間を示す方向である場合には、接近物でないと判定すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接近物検知装置および接近物検知方法に係り、特に、撮像手段の撮像画像に基づいて接近物を検知するのに好適な接近物検知装置および接近物検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に取り付けられた単眼(単一)カメラによる車両周辺の撮像画像(カメラからの入力画像)に基づいて、撮像画像中の路面上に存在する障害物を検出し、検出された障害物を対象とした警報を出力する路上障害物警報システムが知られていた。
【0003】
この種のシステムには、路面上の立体物(障害物)を検出するための種々の立体物検出方法が適用されており、例えば、特許文献1に示すように、自車両の移動量を把握して、単眼カメラによる過去の撮像画像と現在の撮像画像とを照らし合わせることによって、路面や遠景等の不要な領域を除去して路面上の立体物(動体)のみを抽出する方法(所謂、背景差分法)等が知られている。
【0004】
また、この種のシステムの中には、ユーザの死角から自車両に接近する立体物(例えば、歩行者や他車両等)のみを警報の対象とすべく、立体物が接近物であるか否かを判定するものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−222679号公報
【特許文献2】特開2007−172540号公報
【特許文献3】特開2010−128869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来は、自車両の後退時において、自車両の後方に存在する静止物(他車等)に対する誤警報が多発するといった問題が生じていた。
【0007】
ここで、図6および図7は、このような問題が生じる理由を示す概念図である。
【0008】
具体的には、図6(a)は、自車両のバックカメラによる自車両の後方の視野角内の撮像領域の撮像画像として、自車両とこれの後方の停車中の他車両(静止物)との距離が比較的大きい場合における当該他車両を含む撮像画像を示したものである。また、図6(b)は、このときの自車両と当該他車両との位置関係を模式的に示す平面図である。このような図6の状態において、当該他車両が背景差分法等によって検出された際には、図6(b)に示すように、当該他車両が、実際の位置(図中の塗り潰し円形マーク部)よりも自車両から遠い位置(図中の破線円形マーク部)に検出されることになる。これは、当該他車両の自車両からの距離が大きく、立体物としての当該他車両の検出に用いられる現在の撮像画像と過去の撮像画像との差分が小さく出ることによるものである。ただし、立体物の検出に用いられる撮像画像は、カメラレンズ(魚眼レンズ等)のディストーションを考慮した歪み補正後のものである場合がある。また、過去の撮像画像は、これの撮像時点からの現在までの自車両(カメラ)の移動量に応じた必要な変形(移動や回転等の座標変換)が施されたものである。
【0009】
一方、図7(a)は、自車両が図6の状態から後退によって他車両に近づいた場合におけるバックカメラの撮像画像を示したものである。また、図7(b)は、このときの自車両と当該他車両との位置関係を示す平面図である。このような図7の状態において、当該他車両が検出された際には、当該他車両の自車両からの距離が小さく、現在の撮像画像と過去の撮像画像(自車両の移動量を加味したもの)との差分が小さく出るため、図7(b)に示すように、当該他車両が実際の位置と近い位置(図中の実線円形マーク部)に検出されることになる。
【0010】
そして、このような他車両の検出位置の大きな変位が生じることによって、システム側では、他車両が停車中であるにもかかわらず、接近したように判断されてしまうことになる。
【0011】
なお、特許文献2には、連結ブロック内の画素の動きベクトル方向の平均値を算出し、算出した平均値を連結ブロックの移動方向として特定し、特定した移動方向と予め定められた接近方向との角度差を算出し、算出した角度差に応じて接近を判定することが記載されている。また、特許文献3には、オプティカルフロー方式を利用し、接近物体とカメラの視野との関係により、画面上の中央向きに発生するフロー領域を抽出して接近物体の領域として特定することが記載されている。しかしながら、これら各文献に記載の構成では、演算量が多く、迅速な接近物判定が困難であるといった問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、立体物が接近物であるか否かの判定を迅速に行うことができるとともに、静止物が接近物であるとの誤判定を低減して、接近物警報システムに適用する場合における静止物を対象とした誤警報の出力を低減することができる接近物検知装置および接近物検知方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、本発明に係る接近物検知装置は、移動体の所定の位置に配置され、前記移動体の周辺の所定の撮像領域を撮像する単一の撮像手段と、この撮像手段の撮像画像に基づいて、接近物候補としての前記撮像領域中の立体物を所定周期毎に検出する接近物候補検出手段と、この接近物候補検出手段によって検出された前記立体物が前記移動体に接近する接近物であるか否かを判定する接近物判定手段とを備えた接近物検知装置であって、前記接近物候補検出手段によって前記立体物の最新の検出結果が取得される毎に、前記最新の検出結果に示される前記立体物の重心を算出する重心算出手段と、この重心算出手段による前記重心の算出結果に基づいて、前記重心の移動方向を算出する移動方向算出手段とを備え、前記接近物判定手段は、前記移動方向算出手段によって算出された前記重心の移動方向が、前記移動体への接近を示す方向である場合には、前記接近物であるとの判定を行い、一方、前記重心の移動方向が、前記移動体からの離間を示す方向である場合には、前記接近物ではないとの判定を行うことを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る接近物検知方法は、移動体の所定の位置に、前記移動体の周辺の所定の撮像領域を撮像する単一の撮像手段を配置し、前記撮像手段の撮像画像に基づいて、接近物候補としての前記撮像領域中の立体物を所定周期毎に検出し、検出された前記立体物が前記移動体に接近する接近物であるか否かを判定する接近物検知方法であって、前記立体物の最新の検出結果が取得される毎に、前記最新の検出結果に示される前記立体物の重心を算出する第1のステップと、この第1のステップにおける前記重心の算出結果に基づいて、前記重心の移動方向を算出する第2のステップと、この第2のステップにおいて算出された前記重心の移動方向が、前記移動体への接近を示す方向である場合には、前記接近物であるとの判定を行い、一方、前記重心の移動方向が、前記移動体からの離間を示す方向である場合には、前記接近物ではないとの判定を行う第3のステップとを含むことを特徴としている。
【0015】
そして、このような本発明によれば、検出された立体物の重心の移動方向に基づいて、立体物が接近物であるか否かの判定を簡便、迅速かつ正確に行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明の接近物検知装置において、前記接近物であると判定された立体物については、これを対象とした警報の出力を行い、前記接近物ではないと判定された立体物については、これを対象とした前記警報の出力を行わない警報出力手段を備えてもよい。これにともなって、本発明の接近物検知方法において、前記第3のステップにおいて前記接近物であると判定された立体物については、これを対象とした警報の出力を行い、前記第3のステップにおいて前記接近物ではないと判定された立体物については、これを対象とした前記警報の出力を行わない第4のステップを含んでもよい。
【0017】
そして、このような場合には、静止物を対象とした誤警報の出力を確実に低減することが可能となる。
【0018】
さらに、本発明の接近物検知装置において、前記重心算出手段は、前記接近物候補検出手段によって検出された前記立体物の画素値を、前記重心の算出に用いてもよい。これにともなって、本発明の接近物検知方法において、前記第1のステップにおける重心の算出に、前記検出された立体物の画素値を用いてもよい。
【0019】
そして、このような場合には、立体物の画素値を用いることによって、重心の算出精度を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、立体物が接近物であるか否かの判定を迅速に行うことができるとともに、静止物が接近物であるとの誤判定を低減して、接近物警報システムに適用する場合における静止物を対象とした誤警報の出力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る接近物検知装置の実施形態を示すブロック図
【図2】本発明に係る接近物検知装置の実施形態において、撮像画像と立体物検出結果とを示す図
【図3】本発明に係る接近物検知装置の実施形態において、警報の出力状態を示す図
【図4】本発明に係る接近物検知装置および接近物検知方法の実施形態を示す第1の工程図
【図5】本発明に係る接近物検知装置および接近物検知方法の実施形態を示す第2の工程図
【図6】従来の問題点を説明するための第1の説明図
【図7】従来の問題点を説明するための第2の説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る接近物検知装置の実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る接近物検知装置の実施形態として、移動体としての自車両(車両)に搭載された接近物検知装置1を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態における接近物検知装置1は、単一の撮像手段としての車載カメラ2を有している。この車載カメラ2は、自車両の所定の位置に取り付けられており、撮像対象面としての路面を含む自車両の周辺の視野角内の撮像領域を、不図示の入力装置(操作ボタン等)を用いたユーザ操作や車両の所定の運転操作等を開始トリガとして所定のフレームレートで撮像するようになっている。なお、路面には、道路の路面だけでなく、駐車場の路面、地面、その他の車両の走行が想定される走行面が含まれる(以下、同様)。そして、接近物検知装置1は、このような車載カメラ2の撮像画像に基づいて、撮像領域中における路面上の立体物を検知するようになっている。なお、車載カメラ2は、魚眼レンズ等の広角のレンズを備えた広視野角のカメラであって、CCDやCMOS等の固体撮像素子(像面)を備えたデジタルカメラであってもよい。また、車載カメラ2は、自車両の後部(例えば、リアライセンスガーニッシュ部等)に自車両の後方の路面を斜め方向から見下ろすような姿勢で取り付けられた自車両の後方を中心とした所定の撮像領域を撮像するバックカメラであってもよい。これ以外にも、車載カメラ2は、自車両の前部(例えば、エンブレム部等)に自車両の前方の路面を斜め方向から見下ろすような姿勢で取り付けられた自車両の前方を中心とした所定の撮像領域を撮像するフロントカメラであってもよい。また、これら以外にも、車載カメラ2は、自車両の左側部(例えば、左ドアミラー等)に自車両の左側方の路面を斜め方向から見下ろすような姿勢で取り付けられた自車両の左側方を中心とした所定の撮像領域を撮像する左サイドカメラであってもよい。さらに、これら以外にも、車載カメラ2は、自車両の右側部(例えば、右ドアミラー等)に自車両の右側方の路面を斜め方向から見下ろすような姿勢で取り付けられた自車両の右側方を中心とした所定の撮像領域を撮像する右サイドカメラであってもよい。
【0025】
また、図1に示すように、接近物検知装置1は、カメラ画像取得部3を有しており、このカメラ画像取得部3には、車載カメラ2の撮像画像が、撮像の度毎に逐次入力されるようになっている。
【0026】
さらに、図1に示すように、接近物検知装置1は、接近物候補検出手段としての接近物候補検出部4を有している。この接近物候補検出部4は、カメラ画像取得部3によって取得された車載カメラ2の撮像画像をカメラ画像取得部3から逐次取得し、取得された撮像画像に基づいて、接近物候補としての路面上の立体物を所定の時間周期(以下、立体物検出周期と称する)毎に画像認識によって検出するようになっている。なお、立体物検出周期は、例えば、車載カメラ2による所定数フレーム分の撮像に要する時間であってもよいし、撮像周期と同時間であってもよい。また、立体物の検出は、撮像画像中のいずれの画素領域が立体物に該当するものであるかを検出できる方法によって行えばよく、前述した背景差分法その他の公知の立体物検出方法を適用することができる。そして、接近物候補検出部4は、このようにして立体物が検出された場合には、検出結果として、検出された立体物を示す検出画像を作成するようになっている。なお、接近物候補検出部4は、撮像画像に対して予め接近物検知装置1に記憶された車載カメラ2の内部パラメータ(画像中心座標、レンズ焦点距離、レンズ歪み係数等)を用いた歪み補正を行った歪み補正後の撮像画像に基づいて検出画像を作成してもよい。
【0027】
ここで、図2(a)は、立体物の検出に用いられる撮像画像の一例として、路面上の他車両を含む歪み補正後の撮像画像を示したものである。ただし、同図の撮像画像は、便宜上、図2(c)に略示する撮像画像全体のうちの一部分(破線枠部)についての歪み補正後のものを限定的に図示したものである。また、図2(b)は、図2(a)の撮像画像を用いて検出された立体物に該当する検出画像の一例を示したものである。図2(b)の検出画像は、図2(a)の歪み補正後の撮像画像を、立体物検出周期にしたがった最新の検出時点(時機)における歪み補正後の撮像画像(以下、最新の撮像画像と略称する)として作成されたものである。また、図2(b)の検出画像は、最新の検出時点よりも立体物検出周期遡った前回の検出時点における歪み補正後の撮像画像(以下、前回の撮像画像と略称する)に対して、前回の検出時点から最新の検出時点までの期間における自車両の移動量に応じた変形(移動、回転等の座標変換)を施したもの(以下、自車両の移動を加味した前回の撮像画像と称する)を用いて作成されたものである。具体的には、図2(b)に示すように、検出画像は、最新の撮像画像と自車両の移動を加味した前回の撮像画像との差分(以下、最新の差分と称する)を所定の画素値の画素(図中の白塗り部分)として含んだものである。また、図2(b)中の灰色部分に示すように、検出画像は、最新の差分と同様の要領によって求められた過去の差分(前回の差分、前々回の差分等)を、最新の差分と重ならない位置において、過去に遡るにしたがって画素値が低くなる画素として含んだものである。換言すれば、検出画像は、過去の差分に対して、最新の差分を、これとは位置(座標)が重ならない範囲の当該過去の差分を残しつつ上書きしたような画像となっている。より具体的には、同図中に示す過去の差分に該当する画素は、過去に遡る程(画素値が低くなる程)、黒色に近い灰色となっている。なお、このように検出画像中に過去の差分を含ませるのは、接近物候補検出部4の検出結果のばらつきを考慮して重心の算出精度を高めるためである。ただし、検出画像中に、どの程度まで過去に遡った差分を含ませるかについては、接近物候補検出部4の検出精度や処理速度等に応じて種々変更することができ、場合によっては、最新の差分のみを用いるようにすることも可能である。さらに、図2(b)に示すように、差分が出なかった領域、また、検出画像に含まれていたが時間経過とともに古くなった過去の差分に該当する領域については、実質的に画像が存在しない黒塗り部となっている。
【0028】
図1に戻って、接近物検知装置1は、重心算出手段としての重心算出部5を有している。この重心算出部5は、接近物候補検出部4によって最新の検出画像(検出結果)が作成(取得)される毎に、当該最新の検出画像の重心を算出するようになっている。
【0029】
ここで、重心は、次式によって算出してもよい。
【0030】
xg=Σ(i=1〜n)xi×wi/n (1)
yg=Σ(i=1〜n)yi×wi/n (2)
【0031】
ただし、(1)式におけるxgは、重心の画像座標系におけるx座標である。また、(1)式および(2)式におけるn(自然数)は、差分に該当する画素の個数(画素数)である。さらに、(1)式におけるxi(整数)は、差分に該当するn個の画素のうちの第i番目の画素についての画像座標系におけるx座標である。さらに、(1)式および(2)式におけるwi(実数)は、差分に該当するn個の画素のうちの第i番目の画素についての画素値に応じた(画素値が大きいほど値が大きくなる)重み係数(0〜1)である。この重み係数を用いた算出(重み付け)は、図2(b)に示したように、差分として最新の差分よりも画素値が低くなる過去の差分も用いる場合に実質的な意義があり、重み付けを行わない場合(すなわち、最新の差分のみを用いる場合)には、wi=1に統一すればよい。さらにまた、(2)式におけるygは、重心の画像座標系におけるy座標である。また、(2)式におけるyi(整数)は、差分に該当するn個の画素のうちの第i番目の画素についての画像座標系におけるy座標である。
【0032】
また、図1に示すように、接近物検知装置1は、移動方向算出手段としての移動方向算出部6を有している。この移動方向算出部6は、重心算出部5による連続する複数回分の重心の算出結果に基づいて、重心の移動方向を算出するようになっている。
【0033】
ここで、重心の移動方向は、次式を用いて算出してもよい。
【0034】
Δxg=xg(t)−xg(t−T) (3)
Δyg=yg(t)−yg(t−T) (4)
【0035】
ただし、(3)式におけるΔxgは、重心の算出周期に応じた重心のx座標の変位量である。また、(3)式におけるxg(t)は、ある算出時点(時刻)tにおいて算出された重心の画像座標系におけるx座標である。さらに、(3)式および(4)式におけるTは、重心の算出周期である。さらにまた、(3)式におけるxg(t−T)は、xg(t)の前回(算出周期T前)に算出された重心の画像座標系におけるx座標である。また、(4)式におけるΔygは、重心の算出周期に応じた重心のy座標の変位量である。さらに、(4)式におけるyg(t)は、ある算出時点tにおいて算出された重心の画像座標系におけるy座標である。さらにまた、(4)式におけるyg(t−T)は、yg(t)の前回に算出された重心の画像座標系におけるy座標である。
【0036】
そして、移動方向算出部6は、このようにして算出されたΔxg、Δygの符号によって、重心の移動方向を算出すればよい。
【0037】
また、移動方向の算出の安定性を向上させるために、一連の複数の算出時点における重心の平均値を、移動方向の算出に用いるようにしてもよい。例えば、(3)式においては、xg(t)の代わりに、xg(t)、xg(t−T)およびxg(t−2T)の平均値を用いるとともに、xg(t−T)の代わりに、xg(t−T)、xg(t−2T)およびxg(t−3T)の平均値を用いるようにしてもよい。同様に、(4)式においては、yg(t)の代わりに、yg(t)、yg(t−T)およびyg(t−2T)の平均値を用いるとともに、yg(t−T)の代わりに、yg(t−T)、yg(t−2T)およびyg(t−3T)の平均値を用いるようにしてもよい。
【0038】
さらに、図1に示すように、接近物検知装置1は、接近物判定手段としての接近物判定部7を有している。この接近物判定部7は、接近物候補検出部4によって検出された立体物が自車両に接近する接近物であるか否かを判定するようになっている。具体的には、接近物判定部7は、移動方向算出部6によって算出された重心の移動方向が、自車両への接近を示す方向である場合には、検出された立体物が接近物であるとの判定を行い、一方、重心の移動方向が、自車両からの離間を示す方向である場合には、検出された立体物が接近物ではないとの判定を行うようになっている。なお、接近物ではないとの判定は、静止物であるとの判定であってもよい。
【0039】
さらにまた、図1に示すように、接近物検知装置1は、警報出力手段としての警報出力部8を有している。この警報出力部8は、接近物判定部7によって接近物であると判定された立体物を対象とした警報を出力するようになっている。この警報の出力は、図3に示すように、撮像画像に基づいて作成されて表示部10に表示された車両周辺監視画像における接近物(他車両)上への警報枠fの表示や、音声出力部11を介した警報音の音声出力によって行うようにしてもよい。一方、警報出力部8は、接近物判定部7によって接近物ではないと判定された立体物については、警報の出力を行わないようになっている。
【0040】
なお、接近物検知装置1の前述した各構成部3〜8は、接近物検知装置1の機能に相当する処理を行うCPU、CPUの実行プログラムが記憶されたROMおよびCPUの処理結果の一時的な保存に用いられるRAM等によって実現してもよい。
【0041】
ここで、図4には、本実施形態の第1の動作例として、自車両のバックカメラの撮像画像に基づいて自車両の後方の他車両が検出された場合であって、当該他車両が停車車両(静止物)の場合における動作が示されている。
【0042】
すなわち、図4のステップ1(ST1)には、歪み補正後のバックカメラの撮像画像(同図左半部)と、この撮像画像を最新の撮像画像として接近物候補検出部4によって作成された他車両の検出画像(同図右半部、以下同様)とが示されている。また、この検出画像上には、重心算出部5によって算出された重心G1が示されている。
【0043】
次いで、図4のステップ2(ST2)には、ステップ1(ST1)に示した撮像画像の取得時点から立体物検出周期が経過した際に取得された歪み補正後のバックカメラの撮像画像と、この撮像画像を最新の撮像画像として接近物候補検出部4によって作成された他車両の検出画像とが示されている。また、この検出画像上には、重心算出部5によって算出された重心G2が示されている。ここで、ステップ2(ST2)においては、ステップ1(ST1)に比べて検出画像の面積が画面左方向に向かって大きくなっているため、重心G2がステップ1(ST1)の場合G1よりも左方向に変位している。
【0044】
次いで、図4のステップ3(ST3)には、ステップ2(ST2)に示した撮像画像の取得時点から立体物検出周期が経過した際に取得された歪み補正後のバックカメラの撮像画像と、この撮像画像を最新の撮像画像として接近物候補検出部4によって作成された他車両の検出画像とが示されている。また、この検出画像上には、重心算出部5によって算出された重心G3が示されている。ここで、ステップ3(ST3)においては、ステップ2(ST2)に比べて検出画像の面積が画面左方向に向かって大きくなっているため、重心G3がステップ2(ST2)の場合G2よりも左方向に変位している。
【0045】
次いで、図4のステップ4(ST4)には、ステップ1(ST1)からステップ3(ST3)において算出された一連の重心G1〜G3に基づいて移動方向算出部6によって算出された重心の移動方向が、移動ベクトルとして示されている。図4に示すように、ステップ4(ST4)の移動ベクトルは、画像座標系における自車両位置(カメラ位置)に相当する固定座標に対して遠ざかる方向のベクトルとなっている。
【0046】
このような場合には、次のステップ5(ST5)に示すように、接近物判定部7によって接近物ではないとの判定が行われ、最後に、ステップ6(ST6)に示すように、警報出力部8による当該他車両を対象とした警報の出力が禁止される。
【0047】
次に、図5には、本実施形態の第2の動作例として、自車両のバックカメラの撮像画像に基づいて自車両の後方の他車両が検出された場合であって、当該他車両が接近車両(接近物)の場合における動作が示されている。
【0048】
すなわち、図5のステップ11(ST11)には、歪み補正後のバックカメラの撮像画像と、この撮像画像を最新の撮像画像として接近物候補検出部4によって作成された他車両の検出画像とが示されている。また、この検出画像上には、重心算出部5によって算出された重心G11が示されている。
【0049】
次いで、図5のステップ12(ST12)には、ステップ11(ST11)に示した撮像画像の取得時点から立体物検出周期が経過した際に取得された歪み補正後のバックカメラの撮像画像と、この撮像画像を最新の撮像画像として接近物候補検出部4によって作成された他車両の検出画像とが示されている。また、この検出画像上には、重心算出部5によって算出された重心G12が示されている。ここで、ステップ12(ST12)においては、ステップ11(ST11)に比べて検出画像の面積が画面右方向に向かって大きくなっているため、重心G12がステップ11(ST11)の場合G11よりも右方向に変位している。
【0050】
次いで、図5のステップ13(ST13)には、ステップ12(ST12)に示した撮像画像の取得時点から立体物検出周期が経過した際に取得された歪み補正後のバックカメラの撮像画像と、この撮像画像を最新の撮像画像として接近物候補検出部4によって作成された他車両の検出画像とが示されている。また、この検出画像上には、重心算出部5によって算出された重心G13が示されている。ここで、ステップ13(ST13)においては、ステップ12(ST12)に比べて検出画像の面積が画面右向に向かって大きくなっているため、重心G13がステップ12(ST12)の場合G12よりも右方向に変位している。
【0051】
次いで、図5のステップ14(ST14)には、ステップ11(ST11)からステップ13(ST13)において算出された一連の重心G11〜G13に基づいて移動方向算出部6によって算出された重心の移動方向が、移動ベクトルとして示されている。図5に示すように、ステップ14(ST14)の移動ベクトルは、画像座標系における自車両位置(カメラ位置)に相当する固定座標に対して接近する方向のベクトルとなっている。
【0052】
このような場合には、次のステップ15(ST15)に示すように、接近物判定部7によって接近物であるとの判定が行われ、最後に、ステップ16(ST16)に示すように、警報出力部8による当該他車両を対象とした警報の出力が行われる。
【0053】
以上述べたように、本発明によれば、立体物が接近物であるか否かの判定を迅速に行うことができるとともに、接近物判定における静止物に対する誤判定を低減して、接近物警報システムに適用する場合における静止物を対象とした誤警報を未然に回避することができ、ひいては、無用な警報によるユーザの不快感を軽減することができる。
【0054】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 接近物検知装置
2 車載カメラ
4 接近物候補検出部
5 重心算出部
6 移動方向算出部
7 接近物判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の所定の位置に配置され、前記移動体の周辺の所定の撮像領域を撮像する単一の撮像手段と、
この撮像手段の撮像画像に基づいて、接近物候補としての前記撮像領域中の立体物を所定周期毎に検出する接近物候補検出手段と、
この接近物候補検出手段によって検出された前記立体物が前記移動体に接近する接近物であるか否かを判定する接近物判定手段と
を備えた接近物検知装置であって、
前記接近物候補検出手段によって前記立体物の最新の検出結果が取得される毎に、前記最新の検出結果に示される前記立体物の重心を算出する重心算出手段と、
この重心算出手段による前記重心の算出結果に基づいて、前記重心の移動方向を算出する移動方向算出手段と
を備え、
前記接近物判定手段は、
前記移動方向算出手段によって算出された前記重心の移動方向が、前記移動体への接近を示す方向である場合には、前記接近物であるとの判定を行い、一方、前記重心の移動方向が、前記移動体からの離間を示す方向である場合には、前記接近物ではないとの判定を行うこと
を特徴とする接近物検知装置。
【請求項2】
前記接近物であると判定された前記立体物については、これを対象とした警報の出力を行い、前記接近物ではないと判定された前記立体物については、これを対象とした前記警報の出力を行わない警報出力手段を備えたこと
を特徴とする請求項1に記載の接近物検知装置。
【請求項3】
前記重心算出手段は、前記接近物候補検出手段によって検出された前記立体物の画素値を、前記重心の算出に用いること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の接近物検知装置。
【請求項4】
移動体の所定の位置に、前記移動体の周辺の所定の撮像領域を撮像する単一の撮像手段を配置し、前記撮像手段の撮像画像に基づいて、接近物候補としての前記撮像領域中の立体物を所定周期毎に検出し、検出された前記立体物が前記移動体に接近する接近物であるか否かを判定する接近物検知方法であって、
前記立体物の最新の検出結果が取得される毎に、前記最新の検出結果に示される前記立体物の重心を算出する第1のステップと、
この第1のステップにおける前記重心の算出結果に基づいて、前記重心の移動方向を算出する第2のステップと、
この第2のステップにおいて算出された前記重心の移動方向が、前記移動体への接近を示す方向である場合には、前記接近物であるとの判定を行い、一方、前記重心の移動方向が、前記移動体からの離間を示す方向である場合には、前記接近物ではないとの判定を行う第3のステップと
を含むことを特徴とする接近物検知方法。
【請求項5】
前記第3のステップにおいて前記接近物であると判定された立体物については、これを対象とした警報の出力を行い、前記第3のステップにおいて前記接近物ではないと判定された立体物については、これを対象とした前記警報の出力を行わない第4のステップを含むこと
を特徴とする請求項4に記載の接近物検知方法。
【請求項6】
前記第1のステップにおける重心の算出に、前記検出された立体物の画素値を用いること
を特徴とする請求項4または請求項5に記載の接近物検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−256159(P2012−256159A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128207(P2011−128207)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】