描画装置、描画装置用のデータ処理装置、および描画装置用の描画データ生成方法
【課題】簡易な処理にて基板の変形に応じた描画データの補正処理を行える直接描画装置を提供する。
【解決手段】ベクター形式のパターンデータから変換されたラスター形式の初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を、複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、複数のメッシュ領域の各々について、描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成しておく。描画時には、描画対象とされる基板を撮像することにより得られる撮像画像から特定される、基板に設けられたアライメントマークの位置に基づいて、複数のメッシュ領域を基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定し、複数のメッシュ領域を特定された配置位置に再配置させた状態で、分割描画データにおいて複数のメッシュ領域と関連づけられている描画内容を合成し、一の描画データを生成する。
【解決手段】ベクター形式のパターンデータから変換されたラスター形式の初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を、複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、複数のメッシュ領域の各々について、描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成しておく。描画時には、描画対象とされる基板を撮像することにより得られる撮像画像から特定される、基板に設けられたアライメントマークの位置に基づいて、複数のメッシュ領域を基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定し、複数のメッシュ領域を特定された配置位置に再配置させた状態で、分割描画データにおいて複数のメッシュ領域と関連づけられている描画内容を合成し、一の描画データを生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板、半導体基板、液晶基板などを描画対象とする直接描画装置に関し、特に、特に、描画時に描画データに対して行う補正処理に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光などの露光用光を走査しつつ照射することによってプリント基板、半導体基板、液晶基板などの描画対象(以下、単に基板とも称する)に局所的な露光を連続的に行うことにより、所望の回路パターンを描画する直接描画装置(直描装置)が、従来より公知である。
【0003】
直描装置による回路パターンの描画は、回路パターンの設計データから変換された、直描装置が処理可能な記述形式を有するデータである描画データに従って行われる。ただし、上述のような基板においては、そり、ゆがみや、前工程での処理に伴う歪などの変形が生じていることがあるものの、設計データは、通常、これらの変形を考慮せずに作成されているため、変換された描画データをそのまま用いて回路パターンを描画したとしても、十分な描画品質が得られず、歩留まりを向上させることができない。そのため、直描装置による描画は、あらかじめ描画対象たる基板の形状を測定しておき、得られた測定結果を制御因子に加えて露光用光の照射機構の動作を制御するか、該測定結果に基づいて描画データ自体を補正し、補正後の描画データを用いることによって行われる。
【0004】
前者の場合、例えば、露光用光の走査時に、走査方向前方における基板の形状が測定され、露光処理時の光源の移動動作や基板を保持するテーブルの移動動作が、斯かる測定結果に従って制御される。
【0005】
また、後者を実現する補正処理には種々のものが知られている。例えば、四角形の分割領域を単位として、該分割領域内の全ての画素の座標をFFD(Free Form Deformation)法やアフィン変換などによって変換することにより描画データを補正する処理が、すでに公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
あるいは、多面付けされる複数のパターンの位置決めを、それぞれのパターンについての位置決め座標に基づいて個別に行い、個々のパターンごとに描画データの補正を行う態様も公知である(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−37911号公報
【特許文献2】特開2005−300628号公報
【特許文献3】特開2000−122303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
基板の形状測定結果を制御因子として露光用光の照射機構の動作を制御する態様は、描画対象全体の一様な歪やそりに対しては有効ではある。しかしながら、基板に不規則な変形がある場合には、好適な動作制御が困難であることがあるほか、制御ができたとしても描画速度を落とす必要が生じるなどの問題がある。
【0009】
また、直描装置がデバイス製造工程などにおいてインラインで用いられ、複数の基板に対して連続的に描画が行われるような場合、直描装置が位置決め座標を取得してから描画動作を開始するまでの待ち時間をできるだけ短縮することが求められる。特に、形状測定結果に基づいて描画データ自体を補正する処理は、この待ち時間を増大させる処理であるので、斯かる補正処理は、できるだけ短時間で行えることが求められる。
【0010】
この点に関し、特許文献1に開示されている方法の場合、分割領域内の全ての画素の座標を対象に、複雑な演算処理を行うので、座標点の多い描画データ(例えば、描画サイズの大きい回路パターンを表現する画像データや、微小複雑な回路パターンを表現する描画データ)の場合、座標変換のための演算処理に時間を要してしまうという問題がある。
【0011】
また、特許文献2および特許文献3に開示されている方法の場合も、それぞれの位置決め座標に基づいて、対応するパターンの座標が補正される点は特許文献1の場合と同様であるので、やはり、演算処理に時間を要することになる。加えて、個々のパターンについて座標を補正した結果、それぞれのパターンの境界位置についての補正内容に矛盾が生じてしまい、好適な補正を行えないことがある。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な処理にて基板の変形に応じた描画データの補正処理を行える直接描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、光源から露光用光を照射することによって基板に画像を形成する描画装置であって、描画対象とされる基板を載置するためのステージと、前記ステージに載置された前記基板の被描画面を撮像する撮像手段と、ベクター形式で記述されたパターンデータを取得し、前記パターンデータをラスター形式の初期描画データに変換する変換手段と、前記初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、前記複数のメッシュ領域のそれぞれについて、前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成する分割手段と、前記撮像手段が前記基板を撮像することにより得られる撮像画像から特定される、前記基板に設けられたアライメントマークの位置に基づいて、前記複数のメッシュ領域を前記基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定する配置位置特定手段と、前記複数のメッシュ領域を前記位置特定手段によって特定された配置位置に再配置させた状態で、前記分割描画データにおいて前記複数のメッシュ領域と関連づけられている前記描画内容を合成し、一の描画データを生成する合成手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の描画装置であって、前記データ分割手段が、前記露光用光により画像を形成する際の露光分解能と、あらかじめ特定された、前記基板に対し画像を形成する際に許容される最大の変形度合いと、に基づいて定まる分割サイズに従って、前記描画領域を分割する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2に記載の描画装置であって、前記描画領域が矩形領域として定められ、前記基板に許容される最大の変形度合いが、前記矩形領域の辺について許容される最大の傾斜を示す情報により特定される、ことを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1に記載の描画装置であって、前記データ分割手段が、分割サイズが異なる複数の分割態様にて前記描画領域を前記複数のメッシュ領域に分割し、前記分割サイズと前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成し、前記配置位置特定手段は、前記基板に設けられたアライメントマークの位置から特定される、前記描画領域についての所定の部分領域ごとの変位レベルに応じて、前記部分領域において再配置に利用する前記分割態様を特定したうえで、前記部分領域ごとに前記複数のメッシュ領域を再配置する際の配置位置を特定する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の描画装置であって、前記データ分割手段は、前記複数のメッシュ領域のそれぞれが、隣接するメッシュ領域とオーバーラップするように、前記描画領域を前記複数のメッシュ領域に仮想的に分割する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、光源から露光用光を照射することによって基板に画像を形成する描画装置用のデータ処理装置であって、ベクター形式で記述されたパターンデータを取得し、前記パターンデータをラスター形式の初期描画データに変換する変換手段と、前記初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、前記複数のメッシュ領域のそれぞれについて、前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成する分割手段と、描画対象とされる基板を撮像することにより得られる撮像画像から特定される、前記基板に設けられたアライメントマークの位置に基づいて、前記複数のメッシュ領域を前記基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定する配置位置特定手段と、前記複数のメッシュ領域を前記位置特定手段によって特定された配置位置に再配置させた状態で、前記分割描画データにおいて前記複数のメッシュ領域と関連づけられている前記描画内容を合成し、一の描画データを生成する合成手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明は、光源から露光用光を照射することによって基板に画像を形成する描画装置用の描画データを生成する方法であって、ベクター形式で記述されたパターンデータを取得し、前記パターンデータをラスター形式の初期描画データに変換する変換工程と、前記初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、前記複数のメッシュ領域のそれぞれについて、前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成する分割工程と、描画対象とされる基板を撮像する撮像工程と、前記撮像工程において得られる撮像画像から、前記基板に設けられたアライメントマークの位置を特定するアライメントマーク位置特定工程と、前記アライメントマーク位置特定工程における特定結果に基づいて、前記複数のメッシュ領域を前記基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定する配置位置特定工程と、前記複数のメッシュ領域を前記位置特定工程において特定された配置位置に再配置させた状態で、前記分割描画データにおいて前記複数のメッシュ領域と関連づけられている前記描画内容を合成し、一の描画データを生成する合成工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1ないし請求項7の発明によれば、ベクター形式で記述されたパターンデータを、一度だけラスター形式のデータである初期描画データに変換しさえすれば、後はメッシュ領域を基板の変形に応じて再配置させるのみで、基板の変形を考慮した補正がなされた描画データが得られる。これにより、ベクター形式のデータからベクター形式のデータへの変換や、ベクター形式のデータからラスター形式のデータへの繰り返しの変換を行う必要がないので、基板に応じた描画データを生成するための所要時間が、従来よりも顕著に短縮される。
【0021】
特に、請求項2または請求項3の発明によれば、メッシュ領域の分割サイズを、露光分解能と基板に対し画像を形成する際に許容される最大の変形度合いとに基づいて定めることにより、想定される変形の範囲内で実質的に十分な描画精度で回路パターンが描画されるように、メッシュ領域が設定される。これにより、描画データ生成のための演算処理時間と描画精度とが好適にバランスされる態様にて描画データを生成することができる。
【0022】
特に、請求項4の発明によれば、局所的な変形の程度に応じて分割サイズの異なるメッシュ領域を使い分けるので、基板の変形に精度よく対応した描画データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態に係る描画装置1の概略構成を示す図である。
【図2】露光装置3における露光分解能と描画される図形との関係を説明するための図である。
【図3】データ処理装置2において行われる前処理の流れを示す図である。
【図4】データ分割手段22において行われる処理を説明するための図である。
【図5】メッシュ領域REの分割の様子を模式的に示す図である。
【図6】データ処理装置2において行われる後処理の流れを示す図である。
【図7】理想的な状態におけるアライメントマークMaの配置位置を示す図である。
【図8】基板SにおけるアライメントマークMaの位置を示す図である。
【図9】基準位置データDSの記述内容に従ってそれぞれのメッシュ領域REを配置した状態を示す図である。
【図10】データ合成手段24によって生成される描画データDDの描画領域RE2を例示する図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る描画装置101の概略構成を示す図である。
【図12】データ処理装置102において行われる前処理の流れを示す図である。
【図13】データ処理装置102において行われる後処理の流れを示す図である。
【図14】領域配置手段25により実現される処理を概念的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
<描画装置の概要>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る描画装置1の概略構成を示す図である。描画装置1は、露光用光であるレーザー光LBを走査しつつ照射することによってプリント基板、半導体基板、液晶基板などの描画対象たる基板Sに局所的な露光を連続的に行うことにより、基板S上に所望の回路パターンについての露光画像を描画する直接描画装置(直描装置)である。
【0025】
描画装置1は主として、描画データDDを生成するデータ処理装置2と、描画データDDに基づいて実際に描画(露光)を行う露光装置3とから構成される。なお、データ処理装置2と露光装置3とは一体に設けられる必要はなく、両者の間のデータの授受が可能とされている限りにおいて、物理的に離間していてもよい。
【0026】
データ処理装置2は、例えばCADなどのパターン設計装置4によって作成された回路パターンの設計データであるパターンデータDPに基づいて、露光装置3における処理データである描画データDDを生成する装置である。パターンデータDPは、通常、ポリゴンなどのベクターデータとして記述されてなる。一方、露光装置3は、ラスターデータとして記述されている描画データDDに基づいて露光を行うので、データ処理装置2は、少なくともパターンデータDPをラスターデータに変換する必要がある。なお、本実施の形態に係る描画装置1の場合、後述する態様にて補正処理を行ったうえで描画データDDを生成する。これにより、基板Sに変形が生じている場合であっても、所望された通りの回路パターンを基板Sに描画することができるようになっている。
【0027】
データ処理装置2は、データ変換手段21と、データ分割手段22と、基準位置特定手段23と、データ合成手段24とを主として備える。なお、データ処理装置2は、これらデータ変換手段21、データ分割手段22、基準位置特定手段23、およびデータ合成手段24を専用の回路素子として備えるものであってもよいし、あるいは、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部(図示せず)に所定のプログラムが読み込まれ、実行されることによって、それぞれの手段が仮想的な構成要素として実現されてなるコンピュータが、データ処理装置2として機能する態様であってもよい。
【0028】
データ変換手段21は、パターン設計装置4からパターンデータDPを取得し、これを露光装置3で処理可能なラスター形式のデータである初期描画データD1に変換する。斯かる変換処理には、公知の技術を利用可能である。
【0029】
データ分割手段22は、あらかじめ与えられた分割条件データDCに従って、初期描画データD1が表現する回路パターン(描画対象画像)を含む描画領域を仮想的に複数の矩形領域(メッシュ領域)RE(図5参照)に分割し、個々のメッシュ領域REについての描画領域における配置位置と描画内容とを関連づけた、分割描画データD2を生成する。
【0030】
基準位置特定手段23は、まず、基板Sの被描画面Saに設けられているアライメントマーク(位置決めマーク)Ma(図7参照)の位置を、後述する撮像手段34によって得られたその撮像画像であるマーク撮像データDMに基づいて特定する。そして、特定された該アライメントマークMaの位置に基づいて、描画を行う際の複数のメッシュ領域REのそれぞれの基準位置Ms(図5参照)を特定する。そして、それぞれのメッシュ領域と基準位置Msとを対応づけた基準位置データDSを生成する。
【0031】
データ合成手段24は、分割描画データD2と基準位置データDSとに基づき、複数のメッシュ領域REを基準位置データDSに記述された基準位置に従って配置させた状態で各メッシュ領域REの記述内容を合成し、描画データDDを生成する。
【0032】
データ処理装置2において、これらデータ変換手段21、データ分割手段22、基準位置特定手段23、データ合成手段24が行う処理の詳細については後述する。
【0033】
露光装置3は、データ処理装置2から与えられた描画データDDに従って、基板Sに対する描画を行う装置である。
【0034】
露光装置3は、各部の動作を制御する描画コントローラ31と、基板Sを載置するためのステージ32と、レーザー光LBを出射する光源33と、ステージ32に載置された基板Sの被描画面Saを撮像する撮像手段34とを主として備える。
【0035】
露光装置3においては、ステージ32と光源33との少なくとも一方が、互いに直交する水平二軸方向である主走査方向と副走査方向とに移動可能とされてなる。これにより、基板Sをステージ32に載置した状態で、ステージ32と光源33とを主走査方向に相対的に移動させつつ光源33からレーザー光LBを照射できるようになっている。あるいはさらに、ステージ32は水平面内で回転移動可能とされていてもよいし、光源33は垂直方向に移動可能とされていてもよい。
【0036】
使用するレーザー光LBの種類は、描画対象たる基板Sの種類などに応じて適宜に定められてよい。
【0037】
また、光源33には例えばDMD(デジタルミラーデバイス)などの変調手段33aが備わっており、変調手段33aによる変調を受けつつ光源33から出射されたレーザー光LBがステージ32上の基板Sに照射されるようになっている。より具体的には、描画に先立ち、まず、描画コントローラ31により、画素位置ごとの露光の有無が設定されてなる描画データDDの記述内容に従った、変調手段33aの変調単位ごとのレーザー光LBの照射のオン/オフ設定が行われる。光源33がステージ32に対して(その上に載置された基板Sに対して)主走査方向に相対的に移動している間に、斯かるオン/オフ設定に従って光源33からレーザー光LBが出射されることで、ステージ32上の基板Sに、描画データDDに基づく変調を受けたレーザー光LBが照射されることになる。
【0038】
ある位置について主走査方向にレーザー光LBが走査されて当該位置についての露光が終了すると、副走査方向に所定距離だけ光源33が相対移動し、再び当該位置について主走査方向にレーザー光LBが走査される。これを繰り返すことにより、基板S上に描画データDDに従った画像(露光画像)が形成される。
【0039】
撮像手段34は、主として、ステージ32に載置された基板Sの被受光面に形成された、アライメントマークMaを撮像するために備わる。斯かる位置決めマークの撮像画像は、マーク撮像データDMとして、上述のようにデータ処理装置2の基準位置特定手段23に供される。もちろん、撮像手段34が他の目的のために撮像を行える態様であってもよい。
【0040】
なお、基板Sにおけるアライメントマークの形成態様は、その位置を正確に特定できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、貫通孔など、機械的加工により形成されたアライメントマークを利用する態様であってもよいし、印刷プロセスやフォトリソグラフィープロセスなどによってパターニングされたアライメントマークを用いる態様であってもよい。
【0041】
<補正処理の基本概念>
以下、次に、描画データDDを生成する場合に行われる補正処理について、その基本概念を説明する。
【0042】
一般に、パターンデータDPは、変形がなく被描画面が平坦な理想的な形状の基板を想定して作成されているが、実際の基板には、そり、ゆがみや、前工程での処理に伴う歪などの変形が生じている。そのため、パターンデータDPで設定されている配置位置のままに基板Sに回路パターンを描画しても、所望された回路パターンを得ることができないことから、基板Sの形状に見合った回路パターンが形成されるように、回路パターンの形成位置座標を基板Sの形状に応じて変換する処理が必要となる。本実施の形態において描画データDDを生成する際に行う補正処理とは、端的に言えば、座標変換処理である。
【0043】
本実施の形態においては、斯かる補正処理を、露光装置3における露光分解能を考慮して行うことにより、その単純化を図っている点で特徴的である。
【0044】
図2は、露光装置3における露光分解能と描画される図形との関係を説明するための図である。なお、図2においては、X軸方向が主走査方向で、Y軸方向が副走査方向であるとする。
【0045】
露光装置3においては、上述のように、ステージ32と光源33とが主走査方向に相対移動することにより露光が進行する。従って、図2(a)に示す図形F1のような、X軸方向に対してある傾斜角α1にて傾斜している辺については、実際の描画データDDにおいては、図2(b)に示すように階段状図形F2に近似されて記述される。このとき、階段状図形F2の段差は、露光装置3における副走査方向の露光分解能に相当する。以下、斯かる露光分解能をδとする。そして、図2(b)において(1)〜(8)の矢印として示すように、主走査方向において段階的に描画される。
【0046】
このことは、図形F1を描画対象に含む描画データDDを生成するための補正処理においては、図形F1を忠実に表現する座標値を生成する必要はなく、直接に、階段状図形F2を表現する座標値が生成されればよいことを意味している。
【0047】
さらに、図2(c)には、図形F1の傾斜角α1よりも小さい傾斜角α2を有する図形F3を、図形F1と同様に露光分解能をδとして階段状図形F4で近似する様子を示している。階段状図形F2の段幅をw1とし、階段状図形F2の段幅をw2とすると、w2>w1となる。
【0048】
一方、図2(d)も、図2(c)と同様に、図形F3を同じ副走査方向の露光分解能δのもとで近似する様子を示している。ただし、図2(d)においては、図形F3を近似する階段状図形F5の段幅をw3するとき、w3=2w1となるようにしている。この場合、図1(c)に比べると近似の精度は劣るものの、δが十分に小さければ、実用上は十分な精度の近似が実現される。
【0049】
このことを利用すると、仮に、図形F1の傾斜が、本来は主走査方向に沿った回路パターンを実際に基板Sに描画する際に当該回路パターンについて許容される最大の傾斜(つまりは主走査方向に沿う線分の最大変形誤差)であるとすると、基板Sに描画される種々の回路パターン(図形F1よりも傾斜が小さい回路パターン)は必ず、δの整数倍の段差とw1の整数倍の段幅とを有する階段状図形で近似できることになる。また、同様の議論は、副走査方向についても成り立つ(ただし、この場合の露光分解能は変調手段33aの変調単位のサイズで規定される)。
【0050】
これは、基板Sの変形を考慮した補正処理(座標変換処理)を行った場合、変換後の回路パターンは、主走査方向については副走査方向の露光分解能に基づいて定まる幅を単位とし、副走査方向については主走査方向の露光分解能に基づいて定まる幅を単位として、描画されることを意味している。
【0051】
そこで、本実施の形態においてはあらかじめ、パターンデータDPから得られたラスターデータである初期描画データD1によって表現される回路パターン全体を、露光分解能と許容されるパターンの変形度合いとに応じてそれぞれの縦横の長さが定まる複数の矩形領域(メッシュ領域)に分割しておき、それぞれのメッシュ領域ごとに、座標変換を行うことで、描画データDDを得るようにしている。これら一連の処理が、本実施の形態における補正処理に相当する。
【0052】
<データ処理装置における処理>
次に、実際にデータ処理装置2において行われる処理について詳細に説明する。本実施の形態において、データ処理装置2において行われる処理は、前処理と後処理の2つに大別される。前処理は、複数の基板Sに同一の回路パターンを描画しようとする場合に、これに先立ち前もって一度だけ行われる処理である。その処理結果は、個々の基板Sに対する回路パターンの描画に共通に利用される。一方、後処理は、個々の基板Sに対し描画を行う際に、その都度行われる処理である。
【0053】
まず、前処理について説明する。図3は、データ処理装置2において行われる前処理の流れを示す図である。
【0054】
最初に、データ変換手段21が、パターン設計装置4から、ベクター形式にて記述された回路パターンデータであるパターンデータDPを取得し(ステップS1)、これをラスター形式のデータである初期描画データD1に変換する(ステップS2)。以下においては、パターンデータDPが表現する回路パターンは、基板Sの被描画面Saに設定される矩形の描画領域内に描画されるものとする。なお、初期描画データD1の記述形式は特に限定されない。
【0055】
初期描画データD1が得られると、データ分割手段22が、分割条件データDCの記述内容に従って、初期描画データD1から分割描画データD2を生成するためのメッシュ領域の基本サイズを求める(ステップS3)。なお、分割条件データDCは、補正処理の際に回路パターンに許容される最大の変形度合いを特定する情報と、回路パターンの描画に用いる露光装置3における主走査方向および副走査方向についての露光分解能とをデータ要素として含んでいる。
【0056】
図4は、データ分割手段22において行われる処理を説明するための図である。なお、図4においては、X軸方向が主走査方向であり、Y軸方向が副走査方向であるとする。また、図4において実線にて示した各頂点A、B、C、Dからなる矩形は、パターンデータDPあるいは初期描画データD1における回路パターンの描画領域ABCDを示している。いま、頂点Aの座標を(X1,Y1)、頂点Bの座標を(X2,Y1)、頂点Cの座標を(X2,Y2)、頂点Dの座標を(X1,Y2)とする。また、X2-X1=Lx、Y2-Y1=Lyとすると、Lx、Lyは主走査方向および副走査方向における描画領域ABCDのサイズを表すことになる。
【0057】
また、破線にて示された、斯かる描画領域ABCDのそれぞれの頂点A、B、C、およびDを中心に持つ4つの矩形(それぞれ、頂点A1〜A4、B1〜B4、C1〜C4、D1〜D4からなる矩形)は、補正処理の際に各頂点について許容される誤差の範囲を示している。斯かる誤差範囲は、回路パターンの構成単位に許容される最大の誤差範囲に相当する。ここでは議論の単純のため、いずれの矩形についてもX軸方向のサイズがpLx、Y軸方向のサイズがqLyであるとする(ただし0<p,q≪1)。
【0058】
斯かる場合、矩形A1A2A3A4内の任意の点と、矩形B1B2B3B4内の任意の点とを結ぶ線分が、基板Sの変形に対応して辺ABが取り得る変形後の状態を表現することになる。このとき、辺ABが線分A3B1(もしくは線分A2B4)になる変形が、辺ABに許容されている最大の傾斜を与える変形ということになる。このときの線分ABに対する辺A3B1の傾斜角αが、辺ABについて許容される最大の傾斜を表していることになる。なお、傾斜角αは次の式をみたす。
【0059】
tanα=qLy/(X2-X1-pLx)=qLy/(1-p)Lx≒qLy/Lx ・・・式(1)
【0060】
また、斯かる議論は辺ABに平行な辺CDについても同様になり立ち、辺CDについても同じ傾斜角αを有する線分C4D2または線分C1D3までの変形が許容されている。すなわち、主走査方向については、水平の状態から傾斜角αまでの変形が許容されていることになる。ちなみに、図4においては辺CDの変形の例として線分C3D1を示しているが、辺CDから線分C3D1への変形による傾斜角α’は、傾斜角αよりも小さいので、斯かる変形についてはメッシュ領域の基本サイズの算出には考慮されない。
【0061】
ここで、副走査方向の露光分解能がδyであるとすると、主走査方向についてのメッシュ領域の基本サイズwxは、次の式で求められる。
【0062】
wx=δy/tanα=δyLx/qLy ・・・式(2)
【0063】
同様に、副走査方向について、辺BCおよび辺DAの変形について許容される最大の傾斜角βは、
tanβ=pLx/(Y2-Y1-qLy)=pLx/(1-q)Ly≒pLx/Ly ・・・式(3)
をみたすことになり、主走査方向の露光分解能がδxであるとすると、副走査方向についてのメッシュ領域の基本サイズwyは、次の式で求められる。
【0064】
wy=δx/tanβ=δxLy/pLx ・・・式(4)
【0065】
露光装置3の露光分解能δx、δyおよび頂点A、B、C、およびDの誤差範囲は、分割条件データDCとしてあらかじめ与えられる。また、LxおよびLyは、初期描画データD1から特定される既知の値である。あるいは、分割条件データDCのデータ要素として与えられていてもよい。いずれにせよ、これらは全て既知の値である。データ分割手段22は、これらの値に基づいて、式(3)および式(4)に示す演算式に従って、メッシュ領域の基本サイズwx、wyを求める。
【0066】
例えば、描画領域のサイズがLx=Ly=500mm、露光分解能がδx=δy=1μm、描画領域の各頂点の許容誤差範囲がpLx=qLy=500μm(つまりは許容誤差範囲が描画領域のサイズの0.1%)とすると、wx、wyは約1μmとなる。
【0067】
なお、頂点A、B、C、およびDの誤差範囲がそれぞれ異なる場合も、同様の考え方で基本サイズwxおよびwyを求めることができる。頂点A、B、C、およびDのX軸方向とY軸方向の誤差範囲の組をそれぞれ(2axLx,2ayLy)、(2bxLx,2byLy)、(2cxLx,2cyLy)、(2dxLx,2dyLy)とすると、メッシュ領域REの基本サイズwx、wyは、それぞれ、以下のようになる。
【0068】
wx≒Min{δyLx/(ay+by)Ly,δyLx/(cy+dy)Ly}
wy≒Min{δxLy/(bx+cx)Lx,δxLy/(dx+ax)Lx}
【0069】
基本サイズwx、wyが求まると、データ分割手段22は、初期描画データD1が表現する回路パターンを含む描画領域を複数のメッシュ領域REに分割して分割描画データD2を生成する(ステップS4)。
【0070】
図5は、描画領域のメッシュ領域REへの分割の様子を模式的に示す図である。データ分割手段22が、分割描画データD2を生成するにあたっては、単に基本サイズwx、wyごとに描画領域を区画するのではなく(これにより区画される領域を基本領域RE0と称する)、基本領域RE0の周囲に、主走査方向および副走査方向の露光分解能δx、δyに相当する幅の付加領域RE1を加えたものを個々のメッシュ領域REとし、しかも、隣り合うメッシュ領域REとの間で、付加領域RE1がオーバーラップするようにメッシュ領域REを定めるようにする。図5においては、破線で区画された矩形が基本領域RE0であり、斜線にて例示した基本領域RE0の周囲に備わる領域が付加領域RE1であり、実線で区画された領域がメッシュ領域REである。このように付加領域RE1をオーバーラップさせる態様にて分割を行うのは、最終的に得られる描画データDDにおいて、本来であればパターンが存在するべきであるにも関わらず空白となる領域が生じるのを避けるためである。
【0071】
なお、個々のメッシュ領域REを特定するデータ要素としてデータ分割手段22が実際に分割描画データD2として記述するのは、それぞれのメッシュ領域REの基準位置Msの座標と、該メッシュ領域REにおける回路パターンの情報と、メッシュ領域REの主走査方向と副走査方向のサイズmx、myである。ただし、mx=wx+2δxであり、my=wy+2δyであるので、mx、myに代えて、wx、wy、δx、δyをデータ要素として記述する態様であってもよい。また、メッシュ領域REの基準位置Msは任意に設定可能であるが、本実施の形態においては、図5に示すようにメッシュ領域REの中心を基準位置Msとして取り扱うものとする。
【0072】
分割描画データD2が生成されると、前処理が終了する。
【0073】
次に、データ処理装置2において行われる後処理について説明する。後処理は、個々の基板Sに対し実際に描画を行う直前に、その都度行う処理である。
【0074】
図6は、データ処理装置2において行われる後処理の流れを示す図である。図7は、回路パターン設計時に想定されている理想的な状態におけるアライメントマークMaの配置位置を示す図である。なお、本実施の形態においては、図7に示すように複数のアライメントマークMaが水平二軸方向においてそれぞれ等間隔で設けられている場合を例として説明する。また、図7には、参考のため、メッシュ領域REの基準位置Msの配置についても併せて示している。アライメントマークMaが上述のように等間隔に配置されている場合は通常、メッシュ領域REの基準位置Msも等間隔に配置される。なお、図7に示す実線および破線は図の理解を助けるためのものであって、必ずしもこのような実線および破線が回路パターンとして記述され、基板Sにおいて観察されるわけではない。
【0075】
後処理においては、まず、基板Sを露光装置3のステージ32に載置(ステップS11)し、撮像手段34によって、基板Sの被描画面Saに設けられたアライメントマークMaの撮像を行う(ステップS12)。なお、アライメントマークMaの撮像の仕方は、これに続く処理においてアライメントマークMaの位置が特定できる態様でなされていれば、特に制限されない。例えば、基板S全体を一度に撮像する態様であってもよいし、基板Sのサイズに比してアライメントマークMaのサイズが小さいような場合は、撮像画像の分解能を確保するべく、一部のアライメントマークMaごとに複数回の撮像を行い、複数の撮像画像を得る用意してもよい。
【0076】
撮像手段34により得られた撮像画像であるマーク撮像データDMは、描画コントローラ31を通じて基準位置特定手段23に与えられる。
【0077】
基準位置特定手段23は、マーク撮像データDMを取得すると、これに基づいて基板Sに設けられたアライメントマークMaの位置座標を特定する(ステップS13)。斯かる位置座標の特定は、例えば、撮像画像に対し二値化処理などの公知の画像処理を施すことによって行うのが好適な一例である。
【0078】
撮像手段34が撮像した基板Sに変形がなければ、図7に示すように、アライメントマークMaは等間隔に位置しているが、通常、基板Sは変形しているので、アライメントマークMaの位置も理想的な位置からずれている。その変形の仕方は個々の基板Sによって様々であるため、露光装置3においてそれぞれの基板Sに対して所望のパターンを形成するには、基板Sの変形指標としてのアライメントマークMaの位置を、それぞれの基板Sについて実測により特定することが必要となる。図8は、実際の基板SにおけるアライメントマークMaの位置を示す図である。図8においては、図7に示した理想的な配置のアライメントマークMaを破線丸印で併記している。
【0079】
全てのアライメントマークMaについての位置座標が特定されると、続いて、基準位置特定手段23は、個々のメッシュ領域REの配置が基板Sの変形に対応したものとなるように、それぞれのメッシュ領域REの配置位置を特定する。具体的には、個々のメッシュ領域REの基準位置Msの位置座標が、周囲のアライメントマークMaの位置座標に基づいて特定される(ステップS14)。これはすなわち、理想的な状態では図5に示すように整然と配置されているメッシュ領域REを基板Sの形状に応じて再配置する際の、配置位置を特定する処理を行っていることになる。
【0080】
例えば、図8に示す基準位置Ms1、Ms2、Ms3、およびMs4の位置座標は、その周囲に位置するアライメントマークMa1、Ma2、Ma3およびMa4(あるいはその一部)の位置座標に基づいて特定される。図8においては、斯かる処理により位置座標が特定された基準位置Msが例示されている。なお、基準位置Msの位置座標の特定には公知の座標変換手法が利用可能である。一例としては、アライメントマークMa1、Ma2、Ma4からなる三角形を考えたときに、図7に示す理想的な配置の場合の当該三角形から図8に示す実際の配置に基づく三角形へのアフィン変換を表す行列を求め、この行列を用いて、基準位置Msの座標変換を行う態様などがある。
【0081】
基準位置特定手段23は、このような態様にて各メッシュ領域REについての基準位置Msの位置座標を求め、それぞれのメッシュ領域REの位置座標と分割描画データD2に記述されている当該メッシュ領域REにおける描画内容とを関連づける基準位置データDSを生成する。
【0082】
基準位置データDSが生成されると、データ合成手段24が、該基準位置データDSに基づいて描画データDDを生成する(ステップS15)。具体的には、各メッシュ領域REの配置位置を、分割描画データD2に記述されてなる理想的な位置から、基準位置データDSに記述されている基準位置Msの配置位置に対応させてシフトさせたうえで、個々のメッシュ領域REの描画内容を合成し、描画領域全体に対する描画内容を表現する一の描画データDDを生成する。なお、メッシュ領域REのシフトは、基準位置Msの座標移動(並進移動)に応じて各メッシュ領域REを構成する画素の座標を移動させることにより実現される。
【0083】
図9は、基準位置データDSの記述内容に従ってそれぞれのメッシュ領域REを配置した状態を示す図である。図9に示すように、隣り合うメッシュ領域REの間で描画内容がオーバーラップする箇所が生じるが、これは、両者の乗算をとるなど所定の論理演算を実行することにより調整される。
【0084】
図10は、図9に示したようにメッシュ領域REが配置される場合に、データ合成手段24によって生成される描画データDDが規定する描画領域RE2を例示する図である。図10には、参考のため、アライメントマークMaを併せて図示している。なお、図10においては図示を省略しているが、実際には、斯かる描画領域RE2内に、分割描画データD2に記述された内容に基づいて回路パターンが配置される。
【0085】
描画データDDの生成によって、データ処理装置2における後処理は終了する。生成された描画データDDは、露光装置3に与えられる。露光装置3においては、取得した描画データDDに基づいて、基板Sに対する描画処理が実行される。そして、斯かる描画処理が終了した後、新たな基板Sが同じ回路パターンについての描画対象とされる場合には、データ処理装置2は、再び後処理を繰り返すことになる。
【0086】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、基板への描画に先立つ前処理の時点で、あらかじめ露光装置3の露光分解能と回路パターンに許容される最大の変形度合い(具体的には辺の傾斜度合い)とに従って描画領域を複数のメッシュ領域REに分割しておく。そして、実際に個々の基板Sに対し描画を行うにあたっては、該基板Sに設けられてなるアライメントマークMaの配置から特定される該基板Sの変形に応じて、個々のメッシュ領域REの配置位置をシフトさせる(つまりはメッシュ領域REを基板Sの変形に応じて再配置する)ことによって、該基板Sの変形に対応した描画データDDが生成される。
【0087】
斯かる場合においては、ベクター形式で記述されたパターンデータDPは、前処理の際に一度だけラスター形式のデータである初期描画データD1に変換されるのみである。すなわち、個々の基板Sの変形に応じてベクター形式のデータからラスターデータへの変換が繰り返されることもない。また、ベクター形式のデータを異なるベクター形式のデータへと変換することはない。これらに代わり、本実施の形態においては、メッシュ領域の再配置によって補正が実現されている。よって、基板Sに応じた描画データDDを生成するための所要時間が、従来よりも顕著に短縮される。例えば、変化点の多い複雑なパターンデータや描画領域の大きなパターンデータについても、長い時間を要することなく効率的に描画データを生成することが実現できる。
【0088】
また、メッシュ領域を細かく設定するほど個々のメッシュ領域をシフトさせるための演算に時間を要するが、粗く設定すると描画データを基板Sの変形に十分対応させることが難しくなり、回路パターンの描画精度が悪くなる。本実施の形態においては、露光装置3の露光分解能と回路パターンに許容される最大の変形度合いとに基づいて定めることにより、想定される変形の範囲内で実質的に十分な描画精度で回路パターンが描画されるように、メッシュ領域を設定するので、演算処理時間と描画精度とが好適にバランスされる態様にて描画データを生成することができる。
【0089】
<第2の実施の形態>
描画処理時間の短縮を実現する態様は、第1の実施の形態に示したものに限られない。第1の実施の形態とは異なる態様にて描画時間の短縮を実現する態様について説明する。なお、本実施の形態において、第1の実施の形態において説明したものと同様の作用効果を奏する構成要素については、第1の実施の形態と同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0090】
<描画装置の概要>
図11は本発明の第2の実施の形態に係る描画装置101の概略構成を示す図である。描画装置101も、第1の実施の形態に係る描画装置1と同様に、露光用光であるレーザー光LBを走査しつつ照射することによって基板Sに局所的な露光を連続的に行うことにより、基板S上に所望の回路パターンについての露光画像を描画する直接描画装置である。
【0091】
描画装置101は主として、描画データDDを生成するデータ処理装置102と、描画データDDに基づいて実際に描画(露光)を行う露光装置3とから構成される。なお、データ処理装置102と露光装置3とは一体に設けられる必要はなく、両者の間のデータの授受が可能とされている限りにおいて、物理的に離間していてもよい。
【0092】
データ処理装置102は、第1の実施の形態に係る描画装置1が備えるデータ処理装置と同様に、例えばCADなどのパターン設計装置4によって作成された回路パターンの設計データであるパターンデータDPに基づいて、露光装置3における処理データである描画データDDを生成する装置である。
【0093】
データ処理装置102は、データ処理装置2と同様に、データ変換手段21と、データ分割手段22と、データ合成手段24とを備える。また、データ処理装置102は、基準位置特定手段23に代えて領域配置手段25を備える。なお、データ処理装置102は、これらデータ変換手段21、データ分割手段22、データ合成手段24、および領域配置手段25を専用の回路素子として備えるものであってもよいし、あるいは、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部(図示せず)に所定のプログラムが読み込まれ、実行されることによって、それぞれの手段が仮想的な構成要素として実現されてなるコンピュータが、データ処理装置102として機能する態様であってもよい。
【0094】
本実施の形態に係る描画装置101においては、描画領域を複数のメッシュ領域REに分割する際の基本サイズを変位レベル(後述)に応じて種々に違えた複数の分割描画データD2をあらかじめ用意しておき、基板Sへの描画に際しては、描画領域の所定の部分領域ごとに、当該部分領域における変位レベルに応じたサイズを有するメッシュ領域REを適用し、それらを第1の実施の形態と同様にシフトさせるようにする。そしてそのシフトした結果を合成することによって、描画データDDを生成する。換言すれば、本実施の形態においては、基板Sの変形に応じて再配置させるメッシュ領域REのサイズを、局所的な変形の程度に応じて違えるようにしている。これにより、本実施の形態においては、第1の実施の形態においてデータ分割手段22が行っていた、基本サイズを特定するための演算処理が不要である。それゆえ、本実施の形態の場合は、露光装置3の露光分解能を分割条件データDCとして保持しておく必要もない。
【0095】
上述の処理を実現するべく、本実施の形態においては、主走査方向および副走査方向のそれぞれにつき複数通りの基本サイズが変位レベルに応じてあらかじめ設定される。ここで、変位レベルとは、描画領域における変位の程度を段階的に表す任意の指標である。変位レベルとこれに対応する基本サイズとの関係は、あらかじめ定められ、分割条件データDCに記述される。そして、データ分割手段22は、これら複数の基本サイズに応じた複数種類の分割描画データD2を生成するようになっている。
【0096】
また、領域配置手段25は、描画領域についてあらかじめ定められた部分領域ごとに、適用するメッシュ領域REの種類(サイズ)を特定し、当該部分領域の変形に応じて各メッシュ領域REをシフトさせる。領域配置手段25は、斯かる結果を記述した領域配置データDAを生成する。
【0097】
データ合成手段24は、領域配置データDAの記述内容に従ってメッシュ領域REの描画内容を合成し、描画データDDを生成する。
【0098】
<データ処理装置における処理>
本実施の形態に係るデータ処理装置102にて行われる処理についても、前処理と後処理に大別される。まず、前処理について説明する。図12は、データ処理装置102において行われる前処理の流れを示す図である。
【0099】
本実施の形態においても、データ変換手段21によるパターンデータDPの取得と(ステップS21)、これをラスター形式のデータである初期描画データD1に変換する処理とは第1の実施の形態と同様に行われる(ステップS22)。
【0100】
初期描画データD1が得られると、データ分割手段22により、分割条件データDCに記述された基本サイズの設定値に従って、複数の分割描画データD2が生成される(ステップS23)。なお、用いる基本サイズの設定の仕方が異なるだけで、隣り合うメッシュ領域REがオーバーラップを有するようにする点は、第1の実施の形態と同様である。
【0101】
分割描画データD2が生成されると、前処理が終了する。
【0102】
次に、データ処理装置102において行われる後処理について説明する。図13は、データ処理装置102において行われる後処理の流れを示す図である。
【0103】
まず、基板Sをステージ32に載置し(ステップS31)、撮像手段34によってアライメントマークMaを撮像し(ステップS32)、得られたマーク撮像データDMに従ってアライメントマークMaの位置を特定する処理までは、第1の実施の形態と同様に行う。
【0104】
各アライメントマークMaについて、基板Sにおける実際の位置が特定されると、領域配置手段25は、露光装置3から第1の実施の形態と同様に得られるマーク撮像データDMに基づいて、実際の基板Sの各部分領域が該当する変位レベルを特定する。さらに、分割条件データDCにおいて該変位レベルと関連づけられているメッシュ領域REの種類を特定すると、当該部分領域ごとに、第1の実施の形態と同様に、各メッシュ領域REの基準位置Msの位置を基板Sの変形に応じてシフトさせ、その配置を特定する(ステップS34)。領域配置手段25は、斯かる結果を記述した領域配置データDAを生成する。
【0105】
図14は、領域配置手段25により実現される処理を概念的に説明するための図である。図14(a)に示すように、アライメントマークMaの位置を特定した結果、部分領域AR1と部分領域AR4とについては変位量が相対的に小さく、部分領域AR2と部分領域AR3については変位量が相対的に大きい場合、図14(b)に示すように、後者に対応する領域については基本サイズが相対的に小さいメッシュ領域REαが配置され、前者に対応する領域については基本サイズが相対的に大きいメッシュ領域REβが配置される。図14には簡単のため変位レベルが2水準の場合を例示しているが、より多水準の変位レベルが設定された場合についても、考え方は同様である。
【0106】
領域配置データDAが生成されると、データ合成手段24が、該領域配置データDAに基づいて描画データDDを生成する(ステップS35)。具体的には、各部分領域ごとに、第1の実施の形態と同様に、各メッシュ領域REの配置位置を、分割描画データD2に記述されてなる理想的な位置から、領域配置データDAに記述されている基準位置Msの配置位置に対応させてシフトさせたうえで、個々のメッシュ領域REの描画内容を合成し、描画領域全体に対する描画内容を表現する一の描画データDDを生成する。
【0107】
本実施の形態の場合も、第1の実施の形態と同様に、ベクター形式で記述されたパターンデータDPは、前処理の際に一度だけラスター形式のデータである初期描画データD1に変換されるのみである。よって、基板Sに応じた描画データDDを生成するための所要時間が、従来よりも顕著に短縮される。
【0108】
また、本実施の形態の場合は、局所的な変形の程度に応じてサイズの異なるメッシュ領域REを使い分けるので、第1の実施の形態よりもさらに基板の変形に精度よく対応した描画データを生成することができる。
【符号の説明】
【0109】
1、101 描画装置
2、102 データ処理装置
3 露光装置
32 ステージ
33 光源
33a 変調手段
34 撮像手段
Ma、Ma1、Ma2、Ma3、Ma4 アライメントマーク
Ms、Ms1、Ms2、Ms3、Ms4 (メッシュ領域の)基準位置
RE、REα、REβ メッシュ領域
RE0 基本領域
RE1 付加領域
RE2 描画領域
S 基板
Sa 被描画面
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板、半導体基板、液晶基板などを描画対象とする直接描画装置に関し、特に、特に、描画時に描画データに対して行う補正処理に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光などの露光用光を走査しつつ照射することによってプリント基板、半導体基板、液晶基板などの描画対象(以下、単に基板とも称する)に局所的な露光を連続的に行うことにより、所望の回路パターンを描画する直接描画装置(直描装置)が、従来より公知である。
【0003】
直描装置による回路パターンの描画は、回路パターンの設計データから変換された、直描装置が処理可能な記述形式を有するデータである描画データに従って行われる。ただし、上述のような基板においては、そり、ゆがみや、前工程での処理に伴う歪などの変形が生じていることがあるものの、設計データは、通常、これらの変形を考慮せずに作成されているため、変換された描画データをそのまま用いて回路パターンを描画したとしても、十分な描画品質が得られず、歩留まりを向上させることができない。そのため、直描装置による描画は、あらかじめ描画対象たる基板の形状を測定しておき、得られた測定結果を制御因子に加えて露光用光の照射機構の動作を制御するか、該測定結果に基づいて描画データ自体を補正し、補正後の描画データを用いることによって行われる。
【0004】
前者の場合、例えば、露光用光の走査時に、走査方向前方における基板の形状が測定され、露光処理時の光源の移動動作や基板を保持するテーブルの移動動作が、斯かる測定結果に従って制御される。
【0005】
また、後者を実現する補正処理には種々のものが知られている。例えば、四角形の分割領域を単位として、該分割領域内の全ての画素の座標をFFD(Free Form Deformation)法やアフィン変換などによって変換することにより描画データを補正する処理が、すでに公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
あるいは、多面付けされる複数のパターンの位置決めを、それぞれのパターンについての位置決め座標に基づいて個別に行い、個々のパターンごとに描画データの補正を行う態様も公知である(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−37911号公報
【特許文献2】特開2005−300628号公報
【特許文献3】特開2000−122303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
基板の形状測定結果を制御因子として露光用光の照射機構の動作を制御する態様は、描画対象全体の一様な歪やそりに対しては有効ではある。しかしながら、基板に不規則な変形がある場合には、好適な動作制御が困難であることがあるほか、制御ができたとしても描画速度を落とす必要が生じるなどの問題がある。
【0009】
また、直描装置がデバイス製造工程などにおいてインラインで用いられ、複数の基板に対して連続的に描画が行われるような場合、直描装置が位置決め座標を取得してから描画動作を開始するまでの待ち時間をできるだけ短縮することが求められる。特に、形状測定結果に基づいて描画データ自体を補正する処理は、この待ち時間を増大させる処理であるので、斯かる補正処理は、できるだけ短時間で行えることが求められる。
【0010】
この点に関し、特許文献1に開示されている方法の場合、分割領域内の全ての画素の座標を対象に、複雑な演算処理を行うので、座標点の多い描画データ(例えば、描画サイズの大きい回路パターンを表現する画像データや、微小複雑な回路パターンを表現する描画データ)の場合、座標変換のための演算処理に時間を要してしまうという問題がある。
【0011】
また、特許文献2および特許文献3に開示されている方法の場合も、それぞれの位置決め座標に基づいて、対応するパターンの座標が補正される点は特許文献1の場合と同様であるので、やはり、演算処理に時間を要することになる。加えて、個々のパターンについて座標を補正した結果、それぞれのパターンの境界位置についての補正内容に矛盾が生じてしまい、好適な補正を行えないことがある。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な処理にて基板の変形に応じた描画データの補正処理を行える直接描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、光源から露光用光を照射することによって基板に画像を形成する描画装置であって、描画対象とされる基板を載置するためのステージと、前記ステージに載置された前記基板の被描画面を撮像する撮像手段と、ベクター形式で記述されたパターンデータを取得し、前記パターンデータをラスター形式の初期描画データに変換する変換手段と、前記初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、前記複数のメッシュ領域のそれぞれについて、前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成する分割手段と、前記撮像手段が前記基板を撮像することにより得られる撮像画像から特定される、前記基板に設けられたアライメントマークの位置に基づいて、前記複数のメッシュ領域を前記基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定する配置位置特定手段と、前記複数のメッシュ領域を前記位置特定手段によって特定された配置位置に再配置させた状態で、前記分割描画データにおいて前記複数のメッシュ領域と関連づけられている前記描画内容を合成し、一の描画データを生成する合成手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の描画装置であって、前記データ分割手段が、前記露光用光により画像を形成する際の露光分解能と、あらかじめ特定された、前記基板に対し画像を形成する際に許容される最大の変形度合いと、に基づいて定まる分割サイズに従って、前記描画領域を分割する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2に記載の描画装置であって、前記描画領域が矩形領域として定められ、前記基板に許容される最大の変形度合いが、前記矩形領域の辺について許容される最大の傾斜を示す情報により特定される、ことを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1に記載の描画装置であって、前記データ分割手段が、分割サイズが異なる複数の分割態様にて前記描画領域を前記複数のメッシュ領域に分割し、前記分割サイズと前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成し、前記配置位置特定手段は、前記基板に設けられたアライメントマークの位置から特定される、前記描画領域についての所定の部分領域ごとの変位レベルに応じて、前記部分領域において再配置に利用する前記分割態様を特定したうえで、前記部分領域ごとに前記複数のメッシュ領域を再配置する際の配置位置を特定する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の描画装置であって、前記データ分割手段は、前記複数のメッシュ領域のそれぞれが、隣接するメッシュ領域とオーバーラップするように、前記描画領域を前記複数のメッシュ領域に仮想的に分割する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、光源から露光用光を照射することによって基板に画像を形成する描画装置用のデータ処理装置であって、ベクター形式で記述されたパターンデータを取得し、前記パターンデータをラスター形式の初期描画データに変換する変換手段と、前記初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、前記複数のメッシュ領域のそれぞれについて、前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成する分割手段と、描画対象とされる基板を撮像することにより得られる撮像画像から特定される、前記基板に設けられたアライメントマークの位置に基づいて、前記複数のメッシュ領域を前記基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定する配置位置特定手段と、前記複数のメッシュ領域を前記位置特定手段によって特定された配置位置に再配置させた状態で、前記分割描画データにおいて前記複数のメッシュ領域と関連づけられている前記描画内容を合成し、一の描画データを生成する合成手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明は、光源から露光用光を照射することによって基板に画像を形成する描画装置用の描画データを生成する方法であって、ベクター形式で記述されたパターンデータを取得し、前記パターンデータをラスター形式の初期描画データに変換する変換工程と、前記初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、前記複数のメッシュ領域のそれぞれについて、前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成する分割工程と、描画対象とされる基板を撮像する撮像工程と、前記撮像工程において得られる撮像画像から、前記基板に設けられたアライメントマークの位置を特定するアライメントマーク位置特定工程と、前記アライメントマーク位置特定工程における特定結果に基づいて、前記複数のメッシュ領域を前記基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定する配置位置特定工程と、前記複数のメッシュ領域を前記位置特定工程において特定された配置位置に再配置させた状態で、前記分割描画データにおいて前記複数のメッシュ領域と関連づけられている前記描画内容を合成し、一の描画データを生成する合成工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1ないし請求項7の発明によれば、ベクター形式で記述されたパターンデータを、一度だけラスター形式のデータである初期描画データに変換しさえすれば、後はメッシュ領域を基板の変形に応じて再配置させるのみで、基板の変形を考慮した補正がなされた描画データが得られる。これにより、ベクター形式のデータからベクター形式のデータへの変換や、ベクター形式のデータからラスター形式のデータへの繰り返しの変換を行う必要がないので、基板に応じた描画データを生成するための所要時間が、従来よりも顕著に短縮される。
【0021】
特に、請求項2または請求項3の発明によれば、メッシュ領域の分割サイズを、露光分解能と基板に対し画像を形成する際に許容される最大の変形度合いとに基づいて定めることにより、想定される変形の範囲内で実質的に十分な描画精度で回路パターンが描画されるように、メッシュ領域が設定される。これにより、描画データ生成のための演算処理時間と描画精度とが好適にバランスされる態様にて描画データを生成することができる。
【0022】
特に、請求項4の発明によれば、局所的な変形の程度に応じて分割サイズの異なるメッシュ領域を使い分けるので、基板の変形に精度よく対応した描画データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態に係る描画装置1の概略構成を示す図である。
【図2】露光装置3における露光分解能と描画される図形との関係を説明するための図である。
【図3】データ処理装置2において行われる前処理の流れを示す図である。
【図4】データ分割手段22において行われる処理を説明するための図である。
【図5】メッシュ領域REの分割の様子を模式的に示す図である。
【図6】データ処理装置2において行われる後処理の流れを示す図である。
【図7】理想的な状態におけるアライメントマークMaの配置位置を示す図である。
【図8】基板SにおけるアライメントマークMaの位置を示す図である。
【図9】基準位置データDSの記述内容に従ってそれぞれのメッシュ領域REを配置した状態を示す図である。
【図10】データ合成手段24によって生成される描画データDDの描画領域RE2を例示する図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る描画装置101の概略構成を示す図である。
【図12】データ処理装置102において行われる前処理の流れを示す図である。
【図13】データ処理装置102において行われる後処理の流れを示す図である。
【図14】領域配置手段25により実現される処理を概念的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
<描画装置の概要>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る描画装置1の概略構成を示す図である。描画装置1は、露光用光であるレーザー光LBを走査しつつ照射することによってプリント基板、半導体基板、液晶基板などの描画対象たる基板Sに局所的な露光を連続的に行うことにより、基板S上に所望の回路パターンについての露光画像を描画する直接描画装置(直描装置)である。
【0025】
描画装置1は主として、描画データDDを生成するデータ処理装置2と、描画データDDに基づいて実際に描画(露光)を行う露光装置3とから構成される。なお、データ処理装置2と露光装置3とは一体に設けられる必要はなく、両者の間のデータの授受が可能とされている限りにおいて、物理的に離間していてもよい。
【0026】
データ処理装置2は、例えばCADなどのパターン設計装置4によって作成された回路パターンの設計データであるパターンデータDPに基づいて、露光装置3における処理データである描画データDDを生成する装置である。パターンデータDPは、通常、ポリゴンなどのベクターデータとして記述されてなる。一方、露光装置3は、ラスターデータとして記述されている描画データDDに基づいて露光を行うので、データ処理装置2は、少なくともパターンデータDPをラスターデータに変換する必要がある。なお、本実施の形態に係る描画装置1の場合、後述する態様にて補正処理を行ったうえで描画データDDを生成する。これにより、基板Sに変形が生じている場合であっても、所望された通りの回路パターンを基板Sに描画することができるようになっている。
【0027】
データ処理装置2は、データ変換手段21と、データ分割手段22と、基準位置特定手段23と、データ合成手段24とを主として備える。なお、データ処理装置2は、これらデータ変換手段21、データ分割手段22、基準位置特定手段23、およびデータ合成手段24を専用の回路素子として備えるものであってもよいし、あるいは、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部(図示せず)に所定のプログラムが読み込まれ、実行されることによって、それぞれの手段が仮想的な構成要素として実現されてなるコンピュータが、データ処理装置2として機能する態様であってもよい。
【0028】
データ変換手段21は、パターン設計装置4からパターンデータDPを取得し、これを露光装置3で処理可能なラスター形式のデータである初期描画データD1に変換する。斯かる変換処理には、公知の技術を利用可能である。
【0029】
データ分割手段22は、あらかじめ与えられた分割条件データDCに従って、初期描画データD1が表現する回路パターン(描画対象画像)を含む描画領域を仮想的に複数の矩形領域(メッシュ領域)RE(図5参照)に分割し、個々のメッシュ領域REについての描画領域における配置位置と描画内容とを関連づけた、分割描画データD2を生成する。
【0030】
基準位置特定手段23は、まず、基板Sの被描画面Saに設けられているアライメントマーク(位置決めマーク)Ma(図7参照)の位置を、後述する撮像手段34によって得られたその撮像画像であるマーク撮像データDMに基づいて特定する。そして、特定された該アライメントマークMaの位置に基づいて、描画を行う際の複数のメッシュ領域REのそれぞれの基準位置Ms(図5参照)を特定する。そして、それぞれのメッシュ領域と基準位置Msとを対応づけた基準位置データDSを生成する。
【0031】
データ合成手段24は、分割描画データD2と基準位置データDSとに基づき、複数のメッシュ領域REを基準位置データDSに記述された基準位置に従って配置させた状態で各メッシュ領域REの記述内容を合成し、描画データDDを生成する。
【0032】
データ処理装置2において、これらデータ変換手段21、データ分割手段22、基準位置特定手段23、データ合成手段24が行う処理の詳細については後述する。
【0033】
露光装置3は、データ処理装置2から与えられた描画データDDに従って、基板Sに対する描画を行う装置である。
【0034】
露光装置3は、各部の動作を制御する描画コントローラ31と、基板Sを載置するためのステージ32と、レーザー光LBを出射する光源33と、ステージ32に載置された基板Sの被描画面Saを撮像する撮像手段34とを主として備える。
【0035】
露光装置3においては、ステージ32と光源33との少なくとも一方が、互いに直交する水平二軸方向である主走査方向と副走査方向とに移動可能とされてなる。これにより、基板Sをステージ32に載置した状態で、ステージ32と光源33とを主走査方向に相対的に移動させつつ光源33からレーザー光LBを照射できるようになっている。あるいはさらに、ステージ32は水平面内で回転移動可能とされていてもよいし、光源33は垂直方向に移動可能とされていてもよい。
【0036】
使用するレーザー光LBの種類は、描画対象たる基板Sの種類などに応じて適宜に定められてよい。
【0037】
また、光源33には例えばDMD(デジタルミラーデバイス)などの変調手段33aが備わっており、変調手段33aによる変調を受けつつ光源33から出射されたレーザー光LBがステージ32上の基板Sに照射されるようになっている。より具体的には、描画に先立ち、まず、描画コントローラ31により、画素位置ごとの露光の有無が設定されてなる描画データDDの記述内容に従った、変調手段33aの変調単位ごとのレーザー光LBの照射のオン/オフ設定が行われる。光源33がステージ32に対して(その上に載置された基板Sに対して)主走査方向に相対的に移動している間に、斯かるオン/オフ設定に従って光源33からレーザー光LBが出射されることで、ステージ32上の基板Sに、描画データDDに基づく変調を受けたレーザー光LBが照射されることになる。
【0038】
ある位置について主走査方向にレーザー光LBが走査されて当該位置についての露光が終了すると、副走査方向に所定距離だけ光源33が相対移動し、再び当該位置について主走査方向にレーザー光LBが走査される。これを繰り返すことにより、基板S上に描画データDDに従った画像(露光画像)が形成される。
【0039】
撮像手段34は、主として、ステージ32に載置された基板Sの被受光面に形成された、アライメントマークMaを撮像するために備わる。斯かる位置決めマークの撮像画像は、マーク撮像データDMとして、上述のようにデータ処理装置2の基準位置特定手段23に供される。もちろん、撮像手段34が他の目的のために撮像を行える態様であってもよい。
【0040】
なお、基板Sにおけるアライメントマークの形成態様は、その位置を正確に特定できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、貫通孔など、機械的加工により形成されたアライメントマークを利用する態様であってもよいし、印刷プロセスやフォトリソグラフィープロセスなどによってパターニングされたアライメントマークを用いる態様であってもよい。
【0041】
<補正処理の基本概念>
以下、次に、描画データDDを生成する場合に行われる補正処理について、その基本概念を説明する。
【0042】
一般に、パターンデータDPは、変形がなく被描画面が平坦な理想的な形状の基板を想定して作成されているが、実際の基板には、そり、ゆがみや、前工程での処理に伴う歪などの変形が生じている。そのため、パターンデータDPで設定されている配置位置のままに基板Sに回路パターンを描画しても、所望された回路パターンを得ることができないことから、基板Sの形状に見合った回路パターンが形成されるように、回路パターンの形成位置座標を基板Sの形状に応じて変換する処理が必要となる。本実施の形態において描画データDDを生成する際に行う補正処理とは、端的に言えば、座標変換処理である。
【0043】
本実施の形態においては、斯かる補正処理を、露光装置3における露光分解能を考慮して行うことにより、その単純化を図っている点で特徴的である。
【0044】
図2は、露光装置3における露光分解能と描画される図形との関係を説明するための図である。なお、図2においては、X軸方向が主走査方向で、Y軸方向が副走査方向であるとする。
【0045】
露光装置3においては、上述のように、ステージ32と光源33とが主走査方向に相対移動することにより露光が進行する。従って、図2(a)に示す図形F1のような、X軸方向に対してある傾斜角α1にて傾斜している辺については、実際の描画データDDにおいては、図2(b)に示すように階段状図形F2に近似されて記述される。このとき、階段状図形F2の段差は、露光装置3における副走査方向の露光分解能に相当する。以下、斯かる露光分解能をδとする。そして、図2(b)において(1)〜(8)の矢印として示すように、主走査方向において段階的に描画される。
【0046】
このことは、図形F1を描画対象に含む描画データDDを生成するための補正処理においては、図形F1を忠実に表現する座標値を生成する必要はなく、直接に、階段状図形F2を表現する座標値が生成されればよいことを意味している。
【0047】
さらに、図2(c)には、図形F1の傾斜角α1よりも小さい傾斜角α2を有する図形F3を、図形F1と同様に露光分解能をδとして階段状図形F4で近似する様子を示している。階段状図形F2の段幅をw1とし、階段状図形F2の段幅をw2とすると、w2>w1となる。
【0048】
一方、図2(d)も、図2(c)と同様に、図形F3を同じ副走査方向の露光分解能δのもとで近似する様子を示している。ただし、図2(d)においては、図形F3を近似する階段状図形F5の段幅をw3するとき、w3=2w1となるようにしている。この場合、図1(c)に比べると近似の精度は劣るものの、δが十分に小さければ、実用上は十分な精度の近似が実現される。
【0049】
このことを利用すると、仮に、図形F1の傾斜が、本来は主走査方向に沿った回路パターンを実際に基板Sに描画する際に当該回路パターンについて許容される最大の傾斜(つまりは主走査方向に沿う線分の最大変形誤差)であるとすると、基板Sに描画される種々の回路パターン(図形F1よりも傾斜が小さい回路パターン)は必ず、δの整数倍の段差とw1の整数倍の段幅とを有する階段状図形で近似できることになる。また、同様の議論は、副走査方向についても成り立つ(ただし、この場合の露光分解能は変調手段33aの変調単位のサイズで規定される)。
【0050】
これは、基板Sの変形を考慮した補正処理(座標変換処理)を行った場合、変換後の回路パターンは、主走査方向については副走査方向の露光分解能に基づいて定まる幅を単位とし、副走査方向については主走査方向の露光分解能に基づいて定まる幅を単位として、描画されることを意味している。
【0051】
そこで、本実施の形態においてはあらかじめ、パターンデータDPから得られたラスターデータである初期描画データD1によって表現される回路パターン全体を、露光分解能と許容されるパターンの変形度合いとに応じてそれぞれの縦横の長さが定まる複数の矩形領域(メッシュ領域)に分割しておき、それぞれのメッシュ領域ごとに、座標変換を行うことで、描画データDDを得るようにしている。これら一連の処理が、本実施の形態における補正処理に相当する。
【0052】
<データ処理装置における処理>
次に、実際にデータ処理装置2において行われる処理について詳細に説明する。本実施の形態において、データ処理装置2において行われる処理は、前処理と後処理の2つに大別される。前処理は、複数の基板Sに同一の回路パターンを描画しようとする場合に、これに先立ち前もって一度だけ行われる処理である。その処理結果は、個々の基板Sに対する回路パターンの描画に共通に利用される。一方、後処理は、個々の基板Sに対し描画を行う際に、その都度行われる処理である。
【0053】
まず、前処理について説明する。図3は、データ処理装置2において行われる前処理の流れを示す図である。
【0054】
最初に、データ変換手段21が、パターン設計装置4から、ベクター形式にて記述された回路パターンデータであるパターンデータDPを取得し(ステップS1)、これをラスター形式のデータである初期描画データD1に変換する(ステップS2)。以下においては、パターンデータDPが表現する回路パターンは、基板Sの被描画面Saに設定される矩形の描画領域内に描画されるものとする。なお、初期描画データD1の記述形式は特に限定されない。
【0055】
初期描画データD1が得られると、データ分割手段22が、分割条件データDCの記述内容に従って、初期描画データD1から分割描画データD2を生成するためのメッシュ領域の基本サイズを求める(ステップS3)。なお、分割条件データDCは、補正処理の際に回路パターンに許容される最大の変形度合いを特定する情報と、回路パターンの描画に用いる露光装置3における主走査方向および副走査方向についての露光分解能とをデータ要素として含んでいる。
【0056】
図4は、データ分割手段22において行われる処理を説明するための図である。なお、図4においては、X軸方向が主走査方向であり、Y軸方向が副走査方向であるとする。また、図4において実線にて示した各頂点A、B、C、Dからなる矩形は、パターンデータDPあるいは初期描画データD1における回路パターンの描画領域ABCDを示している。いま、頂点Aの座標を(X1,Y1)、頂点Bの座標を(X2,Y1)、頂点Cの座標を(X2,Y2)、頂点Dの座標を(X1,Y2)とする。また、X2-X1=Lx、Y2-Y1=Lyとすると、Lx、Lyは主走査方向および副走査方向における描画領域ABCDのサイズを表すことになる。
【0057】
また、破線にて示された、斯かる描画領域ABCDのそれぞれの頂点A、B、C、およびDを中心に持つ4つの矩形(それぞれ、頂点A1〜A4、B1〜B4、C1〜C4、D1〜D4からなる矩形)は、補正処理の際に各頂点について許容される誤差の範囲を示している。斯かる誤差範囲は、回路パターンの構成単位に許容される最大の誤差範囲に相当する。ここでは議論の単純のため、いずれの矩形についてもX軸方向のサイズがpLx、Y軸方向のサイズがqLyであるとする(ただし0<p,q≪1)。
【0058】
斯かる場合、矩形A1A2A3A4内の任意の点と、矩形B1B2B3B4内の任意の点とを結ぶ線分が、基板Sの変形に対応して辺ABが取り得る変形後の状態を表現することになる。このとき、辺ABが線分A3B1(もしくは線分A2B4)になる変形が、辺ABに許容されている最大の傾斜を与える変形ということになる。このときの線分ABに対する辺A3B1の傾斜角αが、辺ABについて許容される最大の傾斜を表していることになる。なお、傾斜角αは次の式をみたす。
【0059】
tanα=qLy/(X2-X1-pLx)=qLy/(1-p)Lx≒qLy/Lx ・・・式(1)
【0060】
また、斯かる議論は辺ABに平行な辺CDについても同様になり立ち、辺CDについても同じ傾斜角αを有する線分C4D2または線分C1D3までの変形が許容されている。すなわち、主走査方向については、水平の状態から傾斜角αまでの変形が許容されていることになる。ちなみに、図4においては辺CDの変形の例として線分C3D1を示しているが、辺CDから線分C3D1への変形による傾斜角α’は、傾斜角αよりも小さいので、斯かる変形についてはメッシュ領域の基本サイズの算出には考慮されない。
【0061】
ここで、副走査方向の露光分解能がδyであるとすると、主走査方向についてのメッシュ領域の基本サイズwxは、次の式で求められる。
【0062】
wx=δy/tanα=δyLx/qLy ・・・式(2)
【0063】
同様に、副走査方向について、辺BCおよび辺DAの変形について許容される最大の傾斜角βは、
tanβ=pLx/(Y2-Y1-qLy)=pLx/(1-q)Ly≒pLx/Ly ・・・式(3)
をみたすことになり、主走査方向の露光分解能がδxであるとすると、副走査方向についてのメッシュ領域の基本サイズwyは、次の式で求められる。
【0064】
wy=δx/tanβ=δxLy/pLx ・・・式(4)
【0065】
露光装置3の露光分解能δx、δyおよび頂点A、B、C、およびDの誤差範囲は、分割条件データDCとしてあらかじめ与えられる。また、LxおよびLyは、初期描画データD1から特定される既知の値である。あるいは、分割条件データDCのデータ要素として与えられていてもよい。いずれにせよ、これらは全て既知の値である。データ分割手段22は、これらの値に基づいて、式(3)および式(4)に示す演算式に従って、メッシュ領域の基本サイズwx、wyを求める。
【0066】
例えば、描画領域のサイズがLx=Ly=500mm、露光分解能がδx=δy=1μm、描画領域の各頂点の許容誤差範囲がpLx=qLy=500μm(つまりは許容誤差範囲が描画領域のサイズの0.1%)とすると、wx、wyは約1μmとなる。
【0067】
なお、頂点A、B、C、およびDの誤差範囲がそれぞれ異なる場合も、同様の考え方で基本サイズwxおよびwyを求めることができる。頂点A、B、C、およびDのX軸方向とY軸方向の誤差範囲の組をそれぞれ(2axLx,2ayLy)、(2bxLx,2byLy)、(2cxLx,2cyLy)、(2dxLx,2dyLy)とすると、メッシュ領域REの基本サイズwx、wyは、それぞれ、以下のようになる。
【0068】
wx≒Min{δyLx/(ay+by)Ly,δyLx/(cy+dy)Ly}
wy≒Min{δxLy/(bx+cx)Lx,δxLy/(dx+ax)Lx}
【0069】
基本サイズwx、wyが求まると、データ分割手段22は、初期描画データD1が表現する回路パターンを含む描画領域を複数のメッシュ領域REに分割して分割描画データD2を生成する(ステップS4)。
【0070】
図5は、描画領域のメッシュ領域REへの分割の様子を模式的に示す図である。データ分割手段22が、分割描画データD2を生成するにあたっては、単に基本サイズwx、wyごとに描画領域を区画するのではなく(これにより区画される領域を基本領域RE0と称する)、基本領域RE0の周囲に、主走査方向および副走査方向の露光分解能δx、δyに相当する幅の付加領域RE1を加えたものを個々のメッシュ領域REとし、しかも、隣り合うメッシュ領域REとの間で、付加領域RE1がオーバーラップするようにメッシュ領域REを定めるようにする。図5においては、破線で区画された矩形が基本領域RE0であり、斜線にて例示した基本領域RE0の周囲に備わる領域が付加領域RE1であり、実線で区画された領域がメッシュ領域REである。このように付加領域RE1をオーバーラップさせる態様にて分割を行うのは、最終的に得られる描画データDDにおいて、本来であればパターンが存在するべきであるにも関わらず空白となる領域が生じるのを避けるためである。
【0071】
なお、個々のメッシュ領域REを特定するデータ要素としてデータ分割手段22が実際に分割描画データD2として記述するのは、それぞれのメッシュ領域REの基準位置Msの座標と、該メッシュ領域REにおける回路パターンの情報と、メッシュ領域REの主走査方向と副走査方向のサイズmx、myである。ただし、mx=wx+2δxであり、my=wy+2δyであるので、mx、myに代えて、wx、wy、δx、δyをデータ要素として記述する態様であってもよい。また、メッシュ領域REの基準位置Msは任意に設定可能であるが、本実施の形態においては、図5に示すようにメッシュ領域REの中心を基準位置Msとして取り扱うものとする。
【0072】
分割描画データD2が生成されると、前処理が終了する。
【0073】
次に、データ処理装置2において行われる後処理について説明する。後処理は、個々の基板Sに対し実際に描画を行う直前に、その都度行う処理である。
【0074】
図6は、データ処理装置2において行われる後処理の流れを示す図である。図7は、回路パターン設計時に想定されている理想的な状態におけるアライメントマークMaの配置位置を示す図である。なお、本実施の形態においては、図7に示すように複数のアライメントマークMaが水平二軸方向においてそれぞれ等間隔で設けられている場合を例として説明する。また、図7には、参考のため、メッシュ領域REの基準位置Msの配置についても併せて示している。アライメントマークMaが上述のように等間隔に配置されている場合は通常、メッシュ領域REの基準位置Msも等間隔に配置される。なお、図7に示す実線および破線は図の理解を助けるためのものであって、必ずしもこのような実線および破線が回路パターンとして記述され、基板Sにおいて観察されるわけではない。
【0075】
後処理においては、まず、基板Sを露光装置3のステージ32に載置(ステップS11)し、撮像手段34によって、基板Sの被描画面Saに設けられたアライメントマークMaの撮像を行う(ステップS12)。なお、アライメントマークMaの撮像の仕方は、これに続く処理においてアライメントマークMaの位置が特定できる態様でなされていれば、特に制限されない。例えば、基板S全体を一度に撮像する態様であってもよいし、基板Sのサイズに比してアライメントマークMaのサイズが小さいような場合は、撮像画像の分解能を確保するべく、一部のアライメントマークMaごとに複数回の撮像を行い、複数の撮像画像を得る用意してもよい。
【0076】
撮像手段34により得られた撮像画像であるマーク撮像データDMは、描画コントローラ31を通じて基準位置特定手段23に与えられる。
【0077】
基準位置特定手段23は、マーク撮像データDMを取得すると、これに基づいて基板Sに設けられたアライメントマークMaの位置座標を特定する(ステップS13)。斯かる位置座標の特定は、例えば、撮像画像に対し二値化処理などの公知の画像処理を施すことによって行うのが好適な一例である。
【0078】
撮像手段34が撮像した基板Sに変形がなければ、図7に示すように、アライメントマークMaは等間隔に位置しているが、通常、基板Sは変形しているので、アライメントマークMaの位置も理想的な位置からずれている。その変形の仕方は個々の基板Sによって様々であるため、露光装置3においてそれぞれの基板Sに対して所望のパターンを形成するには、基板Sの変形指標としてのアライメントマークMaの位置を、それぞれの基板Sについて実測により特定することが必要となる。図8は、実際の基板SにおけるアライメントマークMaの位置を示す図である。図8においては、図7に示した理想的な配置のアライメントマークMaを破線丸印で併記している。
【0079】
全てのアライメントマークMaについての位置座標が特定されると、続いて、基準位置特定手段23は、個々のメッシュ領域REの配置が基板Sの変形に対応したものとなるように、それぞれのメッシュ領域REの配置位置を特定する。具体的には、個々のメッシュ領域REの基準位置Msの位置座標が、周囲のアライメントマークMaの位置座標に基づいて特定される(ステップS14)。これはすなわち、理想的な状態では図5に示すように整然と配置されているメッシュ領域REを基板Sの形状に応じて再配置する際の、配置位置を特定する処理を行っていることになる。
【0080】
例えば、図8に示す基準位置Ms1、Ms2、Ms3、およびMs4の位置座標は、その周囲に位置するアライメントマークMa1、Ma2、Ma3およびMa4(あるいはその一部)の位置座標に基づいて特定される。図8においては、斯かる処理により位置座標が特定された基準位置Msが例示されている。なお、基準位置Msの位置座標の特定には公知の座標変換手法が利用可能である。一例としては、アライメントマークMa1、Ma2、Ma4からなる三角形を考えたときに、図7に示す理想的な配置の場合の当該三角形から図8に示す実際の配置に基づく三角形へのアフィン変換を表す行列を求め、この行列を用いて、基準位置Msの座標変換を行う態様などがある。
【0081】
基準位置特定手段23は、このような態様にて各メッシュ領域REについての基準位置Msの位置座標を求め、それぞれのメッシュ領域REの位置座標と分割描画データD2に記述されている当該メッシュ領域REにおける描画内容とを関連づける基準位置データDSを生成する。
【0082】
基準位置データDSが生成されると、データ合成手段24が、該基準位置データDSに基づいて描画データDDを生成する(ステップS15)。具体的には、各メッシュ領域REの配置位置を、分割描画データD2に記述されてなる理想的な位置から、基準位置データDSに記述されている基準位置Msの配置位置に対応させてシフトさせたうえで、個々のメッシュ領域REの描画内容を合成し、描画領域全体に対する描画内容を表現する一の描画データDDを生成する。なお、メッシュ領域REのシフトは、基準位置Msの座標移動(並進移動)に応じて各メッシュ領域REを構成する画素の座標を移動させることにより実現される。
【0083】
図9は、基準位置データDSの記述内容に従ってそれぞれのメッシュ領域REを配置した状態を示す図である。図9に示すように、隣り合うメッシュ領域REの間で描画内容がオーバーラップする箇所が生じるが、これは、両者の乗算をとるなど所定の論理演算を実行することにより調整される。
【0084】
図10は、図9に示したようにメッシュ領域REが配置される場合に、データ合成手段24によって生成される描画データDDが規定する描画領域RE2を例示する図である。図10には、参考のため、アライメントマークMaを併せて図示している。なお、図10においては図示を省略しているが、実際には、斯かる描画領域RE2内に、分割描画データD2に記述された内容に基づいて回路パターンが配置される。
【0085】
描画データDDの生成によって、データ処理装置2における後処理は終了する。生成された描画データDDは、露光装置3に与えられる。露光装置3においては、取得した描画データDDに基づいて、基板Sに対する描画処理が実行される。そして、斯かる描画処理が終了した後、新たな基板Sが同じ回路パターンについての描画対象とされる場合には、データ処理装置2は、再び後処理を繰り返すことになる。
【0086】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、基板への描画に先立つ前処理の時点で、あらかじめ露光装置3の露光分解能と回路パターンに許容される最大の変形度合い(具体的には辺の傾斜度合い)とに従って描画領域を複数のメッシュ領域REに分割しておく。そして、実際に個々の基板Sに対し描画を行うにあたっては、該基板Sに設けられてなるアライメントマークMaの配置から特定される該基板Sの変形に応じて、個々のメッシュ領域REの配置位置をシフトさせる(つまりはメッシュ領域REを基板Sの変形に応じて再配置する)ことによって、該基板Sの変形に対応した描画データDDが生成される。
【0087】
斯かる場合においては、ベクター形式で記述されたパターンデータDPは、前処理の際に一度だけラスター形式のデータである初期描画データD1に変換されるのみである。すなわち、個々の基板Sの変形に応じてベクター形式のデータからラスターデータへの変換が繰り返されることもない。また、ベクター形式のデータを異なるベクター形式のデータへと変換することはない。これらに代わり、本実施の形態においては、メッシュ領域の再配置によって補正が実現されている。よって、基板Sに応じた描画データDDを生成するための所要時間が、従来よりも顕著に短縮される。例えば、変化点の多い複雑なパターンデータや描画領域の大きなパターンデータについても、長い時間を要することなく効率的に描画データを生成することが実現できる。
【0088】
また、メッシュ領域を細かく設定するほど個々のメッシュ領域をシフトさせるための演算に時間を要するが、粗く設定すると描画データを基板Sの変形に十分対応させることが難しくなり、回路パターンの描画精度が悪くなる。本実施の形態においては、露光装置3の露光分解能と回路パターンに許容される最大の変形度合いとに基づいて定めることにより、想定される変形の範囲内で実質的に十分な描画精度で回路パターンが描画されるように、メッシュ領域を設定するので、演算処理時間と描画精度とが好適にバランスされる態様にて描画データを生成することができる。
【0089】
<第2の実施の形態>
描画処理時間の短縮を実現する態様は、第1の実施の形態に示したものに限られない。第1の実施の形態とは異なる態様にて描画時間の短縮を実現する態様について説明する。なお、本実施の形態において、第1の実施の形態において説明したものと同様の作用効果を奏する構成要素については、第1の実施の形態と同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0090】
<描画装置の概要>
図11は本発明の第2の実施の形態に係る描画装置101の概略構成を示す図である。描画装置101も、第1の実施の形態に係る描画装置1と同様に、露光用光であるレーザー光LBを走査しつつ照射することによって基板Sに局所的な露光を連続的に行うことにより、基板S上に所望の回路パターンについての露光画像を描画する直接描画装置である。
【0091】
描画装置101は主として、描画データDDを生成するデータ処理装置102と、描画データDDに基づいて実際に描画(露光)を行う露光装置3とから構成される。なお、データ処理装置102と露光装置3とは一体に設けられる必要はなく、両者の間のデータの授受が可能とされている限りにおいて、物理的に離間していてもよい。
【0092】
データ処理装置102は、第1の実施の形態に係る描画装置1が備えるデータ処理装置と同様に、例えばCADなどのパターン設計装置4によって作成された回路パターンの設計データであるパターンデータDPに基づいて、露光装置3における処理データである描画データDDを生成する装置である。
【0093】
データ処理装置102は、データ処理装置2と同様に、データ変換手段21と、データ分割手段22と、データ合成手段24とを備える。また、データ処理装置102は、基準位置特定手段23に代えて領域配置手段25を備える。なお、データ処理装置102は、これらデータ変換手段21、データ分割手段22、データ合成手段24、および領域配置手段25を専用の回路素子として備えるものであってもよいし、あるいは、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部(図示せず)に所定のプログラムが読み込まれ、実行されることによって、それぞれの手段が仮想的な構成要素として実現されてなるコンピュータが、データ処理装置102として機能する態様であってもよい。
【0094】
本実施の形態に係る描画装置101においては、描画領域を複数のメッシュ領域REに分割する際の基本サイズを変位レベル(後述)に応じて種々に違えた複数の分割描画データD2をあらかじめ用意しておき、基板Sへの描画に際しては、描画領域の所定の部分領域ごとに、当該部分領域における変位レベルに応じたサイズを有するメッシュ領域REを適用し、それらを第1の実施の形態と同様にシフトさせるようにする。そしてそのシフトした結果を合成することによって、描画データDDを生成する。換言すれば、本実施の形態においては、基板Sの変形に応じて再配置させるメッシュ領域REのサイズを、局所的な変形の程度に応じて違えるようにしている。これにより、本実施の形態においては、第1の実施の形態においてデータ分割手段22が行っていた、基本サイズを特定するための演算処理が不要である。それゆえ、本実施の形態の場合は、露光装置3の露光分解能を分割条件データDCとして保持しておく必要もない。
【0095】
上述の処理を実現するべく、本実施の形態においては、主走査方向および副走査方向のそれぞれにつき複数通りの基本サイズが変位レベルに応じてあらかじめ設定される。ここで、変位レベルとは、描画領域における変位の程度を段階的に表す任意の指標である。変位レベルとこれに対応する基本サイズとの関係は、あらかじめ定められ、分割条件データDCに記述される。そして、データ分割手段22は、これら複数の基本サイズに応じた複数種類の分割描画データD2を生成するようになっている。
【0096】
また、領域配置手段25は、描画領域についてあらかじめ定められた部分領域ごとに、適用するメッシュ領域REの種類(サイズ)を特定し、当該部分領域の変形に応じて各メッシュ領域REをシフトさせる。領域配置手段25は、斯かる結果を記述した領域配置データDAを生成する。
【0097】
データ合成手段24は、領域配置データDAの記述内容に従ってメッシュ領域REの描画内容を合成し、描画データDDを生成する。
【0098】
<データ処理装置における処理>
本実施の形態に係るデータ処理装置102にて行われる処理についても、前処理と後処理に大別される。まず、前処理について説明する。図12は、データ処理装置102において行われる前処理の流れを示す図である。
【0099】
本実施の形態においても、データ変換手段21によるパターンデータDPの取得と(ステップS21)、これをラスター形式のデータである初期描画データD1に変換する処理とは第1の実施の形態と同様に行われる(ステップS22)。
【0100】
初期描画データD1が得られると、データ分割手段22により、分割条件データDCに記述された基本サイズの設定値に従って、複数の分割描画データD2が生成される(ステップS23)。なお、用いる基本サイズの設定の仕方が異なるだけで、隣り合うメッシュ領域REがオーバーラップを有するようにする点は、第1の実施の形態と同様である。
【0101】
分割描画データD2が生成されると、前処理が終了する。
【0102】
次に、データ処理装置102において行われる後処理について説明する。図13は、データ処理装置102において行われる後処理の流れを示す図である。
【0103】
まず、基板Sをステージ32に載置し(ステップS31)、撮像手段34によってアライメントマークMaを撮像し(ステップS32)、得られたマーク撮像データDMに従ってアライメントマークMaの位置を特定する処理までは、第1の実施の形態と同様に行う。
【0104】
各アライメントマークMaについて、基板Sにおける実際の位置が特定されると、領域配置手段25は、露光装置3から第1の実施の形態と同様に得られるマーク撮像データDMに基づいて、実際の基板Sの各部分領域が該当する変位レベルを特定する。さらに、分割条件データDCにおいて該変位レベルと関連づけられているメッシュ領域REの種類を特定すると、当該部分領域ごとに、第1の実施の形態と同様に、各メッシュ領域REの基準位置Msの位置を基板Sの変形に応じてシフトさせ、その配置を特定する(ステップS34)。領域配置手段25は、斯かる結果を記述した領域配置データDAを生成する。
【0105】
図14は、領域配置手段25により実現される処理を概念的に説明するための図である。図14(a)に示すように、アライメントマークMaの位置を特定した結果、部分領域AR1と部分領域AR4とについては変位量が相対的に小さく、部分領域AR2と部分領域AR3については変位量が相対的に大きい場合、図14(b)に示すように、後者に対応する領域については基本サイズが相対的に小さいメッシュ領域REαが配置され、前者に対応する領域については基本サイズが相対的に大きいメッシュ領域REβが配置される。図14には簡単のため変位レベルが2水準の場合を例示しているが、より多水準の変位レベルが設定された場合についても、考え方は同様である。
【0106】
領域配置データDAが生成されると、データ合成手段24が、該領域配置データDAに基づいて描画データDDを生成する(ステップS35)。具体的には、各部分領域ごとに、第1の実施の形態と同様に、各メッシュ領域REの配置位置を、分割描画データD2に記述されてなる理想的な位置から、領域配置データDAに記述されている基準位置Msの配置位置に対応させてシフトさせたうえで、個々のメッシュ領域REの描画内容を合成し、描画領域全体に対する描画内容を表現する一の描画データDDを生成する。
【0107】
本実施の形態の場合も、第1の実施の形態と同様に、ベクター形式で記述されたパターンデータDPは、前処理の際に一度だけラスター形式のデータである初期描画データD1に変換されるのみである。よって、基板Sに応じた描画データDDを生成するための所要時間が、従来よりも顕著に短縮される。
【0108】
また、本実施の形態の場合は、局所的な変形の程度に応じてサイズの異なるメッシュ領域REを使い分けるので、第1の実施の形態よりもさらに基板の変形に精度よく対応した描画データを生成することができる。
【符号の説明】
【0109】
1、101 描画装置
2、102 データ処理装置
3 露光装置
32 ステージ
33 光源
33a 変調手段
34 撮像手段
Ma、Ma1、Ma2、Ma3、Ma4 アライメントマーク
Ms、Ms1、Ms2、Ms3、Ms4 (メッシュ領域の)基準位置
RE、REα、REβ メッシュ領域
RE0 基本領域
RE1 付加領域
RE2 描画領域
S 基板
Sa 被描画面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から露光用光を照射することによって基板に画像を形成する描画装置であって、
描画対象とされる基板を載置するためのステージと、
前記ステージに載置された前記基板の被描画面を撮像する撮像手段と、
ベクター形式で記述されたパターンデータを取得し、前記パターンデータをラスター形式の初期描画データに変換する生成する変換手段と、
前記初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、前記複数のメッシュ領域のそれぞれについて、前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成する分割手段と、
前記撮像手段が前記基板を撮像することにより得られる撮像画像から特定される、前記基板に設けられたアライメントマークの位置に基づいて、前記複数のメッシュ領域を前記基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定する配置位置特定手段と、
前記複数のメッシュ領域を前記位置特定手段によって特定された配置位置に再配置させた状態で、前記分割描画データにおいて前記複数のメッシュ領域と関連づけられている前記描画内容を合成し、一の描画データを生成する合成手段と、
を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記データ分割手段が、
前記露光用光により画像を形成する際の露光分解能と、
あらかじめ特定された、前記基板に対し画像を形成する際に許容される最大の変形度合いと、
に基づいて定まる分割サイズに従って、前記描画領域を分割する、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項3】
請求項2に記載の描画装置であって、
前記描画領域が矩形領域として定められ、
前記基板に許容される最大の変形度合いが、前記矩形領域の辺について許容される最大の傾斜を示す情報により特定される、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項4】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記データ分割手段が、
分割サイズが異なる複数の分割態様にて前記描画領域を前記複数のメッシュ領域に分割し、
前記分割サイズと前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成し、
前記配置位置特定手段は、
前記基板に設けられたアライメントマークの位置から特定される、前記描画領域についての所定の部分領域ごとの変位レベルに応じて、前記部分領域において再配置に利用する前記分割態様を特定したうえで、前記部分領域ごとに前記複数のメッシュ領域を再配置する際の配置位置を特定する、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の描画装置であって、
前記データ分割手段は、前記複数のメッシュ領域のそれぞれが、隣接するメッシュ領域とオーバーラップするように、前記描画領域を前記複数のメッシュ領域に仮想的に分割する、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項6】
光源から露光用光を照射することによって基板に画像を形成する描画装置用のデータ処理装置であって、
ベクター形式で記述されたパターンデータを取得し、前記パターンデータをラスター形式の初期描画データに変換する生成する変換手段と、
前記初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、前記複数のメッシュ領域のそれぞれについて、前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成する分割手段と、
描画対象とされる基板を撮像することにより得られる撮像画像から特定される、前記基板に設けられたアライメントマークの位置に基づいて、前記複数のメッシュ領域を前記基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定する配置位置特定手段と、
前記複数のメッシュ領域を前記位置特定手段によって特定された配置位置に再配置させた状態で、前記分割描画データにおいて前記複数のメッシュ領域と関連づけられている前記描画内容を合成し、一の描画データを生成する合成手段と、
を備えることを特徴とする描画装置用のデータ処理装置。
【請求項7】
光源から露光用光を照射することによって基板に画像を形成する描画装置用の描画データを生成する方法であって、
ベクター形式で記述されたパターンデータを取得し、前記パターンデータをラスター形式の初期描画データに変換する生成する変換工程と、
前記初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、前記複数のメッシュ領域のそれぞれについて、前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成する分割工程と、
描画対象とされる基板を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において得られる撮像画像から、前記基板に設けられたアライメントマークの位置を特定するアライメントマーク位置特定工程と、
前記アライメントマーク位置特定工程における特定結果に基づいて、前記複数のメッシュ領域を前記基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定する配置位置特定工程と、
前記複数のメッシュ領域を前記位置特定工程において特定された配置位置に再配置させた状態で、前記分割描画データにおいて前記複数のメッシュ領域と関連づけられている前記描画内容を合成し、一の描画データを生成する合成工程と、
を備えることを特徴とする描画装置用の描画データ生成方法。
【請求項1】
光源から露光用光を照射することによって基板に画像を形成する描画装置であって、
描画対象とされる基板を載置するためのステージと、
前記ステージに載置された前記基板の被描画面を撮像する撮像手段と、
ベクター形式で記述されたパターンデータを取得し、前記パターンデータをラスター形式の初期描画データに変換する生成する変換手段と、
前記初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、前記複数のメッシュ領域のそれぞれについて、前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成する分割手段と、
前記撮像手段が前記基板を撮像することにより得られる撮像画像から特定される、前記基板に設けられたアライメントマークの位置に基づいて、前記複数のメッシュ領域を前記基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定する配置位置特定手段と、
前記複数のメッシュ領域を前記位置特定手段によって特定された配置位置に再配置させた状態で、前記分割描画データにおいて前記複数のメッシュ領域と関連づけられている前記描画内容を合成し、一の描画データを生成する合成手段と、
を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記データ分割手段が、
前記露光用光により画像を形成する際の露光分解能と、
あらかじめ特定された、前記基板に対し画像を形成する際に許容される最大の変形度合いと、
に基づいて定まる分割サイズに従って、前記描画領域を分割する、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項3】
請求項2に記載の描画装置であって、
前記描画領域が矩形領域として定められ、
前記基板に許容される最大の変形度合いが、前記矩形領域の辺について許容される最大の傾斜を示す情報により特定される、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項4】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記データ分割手段が、
分割サイズが異なる複数の分割態様にて前記描画領域を前記複数のメッシュ領域に分割し、
前記分割サイズと前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成し、
前記配置位置特定手段は、
前記基板に設けられたアライメントマークの位置から特定される、前記描画領域についての所定の部分領域ごとの変位レベルに応じて、前記部分領域において再配置に利用する前記分割態様を特定したうえで、前記部分領域ごとに前記複数のメッシュ領域を再配置する際の配置位置を特定する、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の描画装置であって、
前記データ分割手段は、前記複数のメッシュ領域のそれぞれが、隣接するメッシュ領域とオーバーラップするように、前記描画領域を前記複数のメッシュ領域に仮想的に分割する、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項6】
光源から露光用光を照射することによって基板に画像を形成する描画装置用のデータ処理装置であって、
ベクター形式で記述されたパターンデータを取得し、前記パターンデータをラスター形式の初期描画データに変換する生成する変換手段と、
前記初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、前記複数のメッシュ領域のそれぞれについて、前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成する分割手段と、
描画対象とされる基板を撮像することにより得られる撮像画像から特定される、前記基板に設けられたアライメントマークの位置に基づいて、前記複数のメッシュ領域を前記基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定する配置位置特定手段と、
前記複数のメッシュ領域を前記位置特定手段によって特定された配置位置に再配置させた状態で、前記分割描画データにおいて前記複数のメッシュ領域と関連づけられている前記描画内容を合成し、一の描画データを生成する合成手段と、
を備えることを特徴とする描画装置用のデータ処理装置。
【請求項7】
光源から露光用光を照射することによって基板に画像を形成する描画装置用の描画データを生成する方法であって、
ベクター形式で記述されたパターンデータを取得し、前記パターンデータをラスター形式の初期描画データに変換する生成する変換工程と、
前記初期描画データが表現する描画対象画像を含む描画領域を複数のメッシュ領域に仮想的に分割し、前記複数のメッシュ領域のそれぞれについて、前記描画領域における配置位置と当該配置位置における描画内容とを関連づけた分割描画データを生成する分割工程と、
描画対象とされる基板を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において得られる撮像画像から、前記基板に設けられたアライメントマークの位置を特定するアライメントマーク位置特定工程と、
前記アライメントマーク位置特定工程における特定結果に基づいて、前記複数のメッシュ領域を前記基板の形状に応じて再配置する際の配置位置を特定する配置位置特定工程と、
前記複数のメッシュ領域を前記位置特定工程において特定された配置位置に再配置させた状態で、前記分割描画データにおいて前記複数のメッシュ領域と関連づけられている前記描画内容を合成し、一の描画データを生成する合成工程と、
を備えることを特徴とする描画装置用の描画データ生成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−204421(P2010−204421A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50388(P2009−50388)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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