説明

換気構造及び建物

【課題】換気性能を向上させることができる換気構造及び建物を得る。
【解決手段】換気部30は、内壁材34及び外壁材36と、内壁材34の上端と外壁材36の上端との間を覆い貫通孔38Bが形成された腰壁上桟38と、内壁材34、外壁材36、及び腰壁上桟38を覆う笠木部材42と、これらで形成される第1通気部46と、第1通気部46に配置された水切り材44と、腰壁上桟38に形成された第2通気部48とを有している。ここで、換気部30では、水切り材44で水が取り除かれると共に外気が第1通気部46に流入する。そして、第1通気部46に流入した外気は、第2通気部48を流れて内部空間51に流入する。これにより、上桟の外側を迂回して建物内部へ向かう通気路を有する構成に比べて、換気経路が簡易な構造となり、且つ換気経路の長さが短くなるので、通気量が増加し、換気性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気構造及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の換気構造は、上端が笠木で覆われたパラペットを形成する外側外部壁材と内側外部壁材との間に通し部材及び補助通し部材が設けられており、外側外部壁材と通し部材との間には、笠木の下側の空間とパラペット内部の空間とを連通させる換気経路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4478433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に開示された先行技術では、通し部材及び補助通し部材があるため、換気経路を内側と外側の二重構造としなければならず、換気経路が複雑になっていた。さらに、換気経路を笠木側から外側外部壁材と内側外部壁材との間に直線状に形成することができず、外側外部壁材と通し部材との間を迂回させて長い経路にしなければならなかった。これらの理由により通気量が少なくなり、換気性能が低下していた。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、換気性能を向上させることができる換気構造及び建物を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る換気構造は、陸屋根上に立設された第1壁材と、前記陸屋根上に前記第1壁材と間隔をあけて立設された第2壁材と、前記第1壁材の上端部と前記第2壁材の上端部との間を覆う上桟と、前記第1壁材、前記第2壁材、及び前記上桟の上端を覆う笠木部材と、前記笠木部材と前記第1壁材、前記第2壁材、及び前記上桟との間に形成され空気が流通する第1通気部と、前記第1通気部に配置され、通気が行われると共に前記第1通気部への水の浸入を遮断する水切り材と、前記上桟に形成され、前記第1通気部と、前記第1壁材と前記第2壁材とで挟まれる内部空間とを連通させる第2通気部と、を有する。
【0007】
請求項1の発明に係る換気構造では、水切り材で水が取り除かれると共に外気が第1通気部に流入する。そして、第1通気部に流入した外気は、上桟に形成された第2通気部を流れて、第1壁材と第2壁材とで挟まれる内部空間に流入する。これにより、上桟の外側を迂回して建物内部へ向かう通気路を有する構成に比べて、換気経路が簡易な構造となり、且つ換気経路の長さが短くなるので、通気量が増加し、換気性能を向上させることができる。
【0008】
請求項2の発明に係る換気構造は、前記水切り材は、対向する1組の第1側壁及び第2側壁を有し、前記第1側壁は前記笠木部材に取付けられ、前記第2側壁の外側には弾性を有する第1弾性部材が取付けられ、前記第1壁材と第2側壁とで前記第1弾性部材が挟まれている。
【0009】
請求項2の発明に係る換気構造では、笠木部材を第1壁材、第2壁材、及び上桟の上端を覆うように取付けるとき、水切り材の第2側壁に取付けられた第1弾性部材が第1壁材に圧接されることで、笠木部材が取付けられる。この取付け構造では、接着剤やビスを用いていないので、笠木部材及び水切り材の取付け、取り外しを容易にすることができる。さらに、圧接された第1弾性部材が第1壁材と第2側壁との間を密閉するので、第1通気部への水の浸入を抑制することができる。
【0010】
請求項3の発明に係る換気構造は、前記笠木部材を固定する固定金具が前記上桟に設けられている。
【0011】
請求項3の発明に係る換気構造では、第1壁材及び第2壁材の上端面に比べて上桟の上面の方が面積が広いため、固定金具の取付面積を増やして笠木部材の固定状態を安定させることができる。
【0012】
請求項4の発明に係る換気構造は、前記第1通気部における前記水切り材よりも前記第2通気部側には、通気が行われると共に前記第2通気部への水の浸入を遮断する遮断部材が設けられている。
【0013】
請求項4の発明に係る換気構造では、水切り材と第2通気部との間に水の浸入を遮断する遮断部材が設けられているので、水切り材で遮断しきれなかった水を遮断することができ、第2通気部への水の浸入を抑制することができる。
【0014】
請求項5の発明に係る換気構造は、前記遮断部材と、前記第1壁材、前記第2壁材、及び前記上桟の少なくとも1つとの間には、弾性を有する第2弾性部材が圧接により設けられている。
【0015】
請求項5の発明に係る換気構造では、第2弾性部材が、遮断部材と、第1壁材、第2側壁、及び上桟の少なくとも1つとの間を密閉するので、第2通気部への水の浸入を抑制することができる。
【0016】
請求項6の発明に係る換気構造は、前記笠木部材には、開放時に前記遮断部材を露出させ、閉塞時に前記遮断部材を覆う開閉部が設けられている。
【0017】
請求項6の発明に係る換気構造では、笠木部材を取付けた後であっても、開閉部材を開放することで遮断部材が露出するので、遮断部材の交換を簡単に行うことができる。
【0018】
請求項7の発明に係る建物は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の換気構造と、前記陸屋根を支持する躯体と、を有する。
【0019】
請求項7の発明に係る建物では、天井側の換気性能が向上することで、天井と連通している内壁と外壁の間の換気も行うことができるので、建物全体の換気性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る換気構造によれば、換気性能を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項2に記載の本発明に係る換気構造によれば、笠木部材及び水切り材の取付け作業を容易にすると共に第1通気部への水の浸入を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項3に記載の本発明に係る換気構造によれば、笠木部材の固定状態を安定させることができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項4に記載の本発明に係る換気構造によれば、第2通気部への水の浸入を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項5に記載の本発明に係る換気構造によれば、第2通気部への水の浸入を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0025】
請求項6に記載の本発明に係る換気構造によれば、遮断部材の交換を簡単に行うことができるという優れた効果を有する。
【0026】
請求項7に記載の本発明に係る建物によれば、建物全体の換気性能を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係るユニット建物の一部の縦断面図である。
【図2】第1実施形態に係る換気部の縦断面図である。
【図3】(A)、(B)第1実施形態に係る水切り材の斜視図である。
【図4】(A)〜(C)第1実施形態に係る笠木部材の取付け工程を示す説明図である。
【図5】第1実施形態に係る換気部における通気状態を示す説明図である。
【図6】(A)他の第1実施例に係る換気部の縦断面図である。(A)他の第2実施例に係る換気部の縦断面図である。
【図7】第2実施形態に係る換気部の縦断面図である。
【図8】(A)、(B)第2実施形態に係るシャッタ部材の開閉状態を示す斜視図である。
【図9】第2実施形態に係る換気部における通気状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る換気構造及び建物について説明する。
【0029】
図1には、第1実施形態の建物の一例としてのユニット建物10の一部が示されている。ユニット建物10は、躯体の一例としての床梁14、天井梁16、及び柱(図示省略)を含んで構成される建物ユニット12を、基礎(図示省略)上に複数組み上げることで構築されている。床梁14及び天井梁16には、断面コ字形状のチャンネル鋼(溝形鋼)が用いられている。
【0030】
ここで、天井梁16が矩形枠状に組まれて天井フレームが構成されており、床梁14が矩形枠状に組まれて床フレームが構成されている。そして、この天井フレームと床フレームとの間に柱が立設されている。また、ユニット建物10の最上部にはベランダ20が設けられており、ベランダ20が床梁14、天井梁16、及び柱(図示省略)で支持されている。
【0031】
ベランダ20は、陸屋根22と、陸屋根22の外縁部に立設された換気構造の一例としての換気部30とを含んで構成されている。陸屋根22は、ユニット建物10の最上部に設けられた床梁14と、床梁14の上面に取付けられた床板18と、床板18の上面に載置された断熱材24と、断熱材24の上面を覆う防水シート26とを含んで構成されている。
【0032】
一方、換気部30は、第1壁材の一例としての内壁材34と、第2壁材の一例としての外壁材36と、上桟の一例としての腰壁上桟38と、内壁材34、外壁材36、及び腰壁上桟38を覆う笠木部材42と、水切り材44と、後述する第1通気部46及び第2通気部48と、を含んで構成されている。
【0033】
詳細には、換気部30において、床梁14の外側面に腰壁32が立設されている。腰壁32の内側面には、平板状の内壁材34が取付けられており、腰壁32の外側面には、平板状の外壁材36が取付けられている。また、内壁材34の下端面は、床板18の上端面よりも所定距離だけ上方(矢印Y方向)に位置されており、腰壁32の内側面には、内壁材34の下端面よりも下方に防水下地35が組付けられている。なお、各部材の取付けに用いるボルト、ナット等の図示は省略している。
【0034】
内壁材34及び外壁材36は、ユニット建物10の外側から内側へ向かう方向(図示の矢印X方向であり水平方向)に間隔をあけて対向配置されている。そして、内壁材34上端部と外壁材36の上端部との間を覆って(内壁材34と外壁材36とで挟まれて)腰壁上桟38が設けられている。
【0035】
腰壁上桟38は、一例として、断面略コ字形状のチャンネル鋼で構成されており、内壁材34と外壁材36との間を覆う平坦部38Aには、矢印X方向に貫通した貫通孔38Bが形成されている。貫通孔38Bは、平坦部38Aの中央に形成されているが、これに限らず、矢印X方向のいずれか一端側に寄せて形成されていてもよい。また、平坦部38Aの貫通孔38Bを除く部位には、笠木部材42を固定するための固定金具の一例としての笠木留金具52が、ビス等の締結手段(図示省略)により取付けられている。
【0036】
図2に示すように、笠木留金具52は、矢印Y方向に向けて凸状に形成され上面が笠木部材42の傾斜に合わせて傾斜面とされた凸部52Aと、矢印X方向で凸部52Aの両端からそれぞれ外側へ平板状に延ばされた取付部52B、52Cと、取付部52B、52Cの凸部52A側とは反対側からそれぞれ斜め上方に延ばされた傾斜部52D、52Eと、傾斜部52D、52Eの取付部52B、52C側とは反対側から矢印X方向に突出された係合部52F、52Gと、を含んで構成されている。
【0037】
また、笠木留金具52は、矢印X方向及び矢印Y方向と直交する矢印Z方向(図示の奥行き方向)に間隔をあけて、腰壁上桟38の平坦部38Aに取付けられている。これにより、換気部30の平面視で、笠木留金具52(凸部52A)が貫通孔38B全体を覆わないようにしている。そして、笠木留金具52の上側に、笠木部材42が配置されている。
【0038】
笠木部材42は、矢印Z方向に見て、間隔をあけて矢印Y方向に直立される内側壁42A、外側壁42Bと、内側壁42Aの上端と外側壁42Bの上端とを繋ぐ傾斜壁42Cとを有する断面略コ字状の部材である。内側壁42Aは、内壁材34側に配置されており、外側壁42Bは、外壁材36側に配置されている。また、外側壁42Bの高さは、内側壁42Aの高さよりも高くなっており、傾斜壁42Cは、内側壁42Aの上端から外側壁42Bの上端に向かって、矢印X方向に対して斜め上方向に傾斜配置されている。
【0039】
内側壁42Aの内側(内壁材34と対向する側)には、矢印Z方向に見て矢印Y方向に対称配置された断面L字状の係合片と断面逆L字状の係合片とからなるガイドレール42Dが突設されている。そして、内側壁42Aとガイドレール42Dとで囲まれた空間である差込部43に、後述する水切り材44の第1側壁44Dが差し込まれるようになっている。なお、図2では、差込部43において、内側壁42Aと第1側壁44Dの外形の区別がつくように間隔をあけて図示しているが、実際は近接しており、第1側壁44D(水切り材44)の取付け位置が、ガイドレール42Dによって決まるようになっている。
【0040】
一方、外側壁42Bの下端には、ゴム製で板状のシール材54の一端が嵌め込まれて支持されるシール材支持部42Eが形成されている。そして、シール材支持部42Eで支持されたシール材54の他端が、弾性変形(屈曲)しながら外壁材36の外側面と接触することで、外壁材36と笠木部材42との間が密閉され、外部からの水の浸入を遮断している。
【0041】
また、傾斜壁42Cには、下面から下方へ突出した断面略L字状の被係合部42F、42Gが設けられている。ここで、笠木部材42の被係合部42F、42Gが笠木留金具52の係合部52F、52Gにそれぞれ係合することで、内壁材34、外壁材36、及び腰壁上桟38を覆って、笠木部材42が固定される。そして、笠木部材42の内側壁42Aと内壁材34との間には、水切り材44が設けられている。
【0042】
図3(A)、(B)に示すように、水切り材44は、水平に配置される板状の底壁44Aを有している。底壁44Aは、平面視で矢印Z方向を長手方向とする矩形状に形成されており、矢印Y方向に貫通した通気用の貫通孔45が、矢印Z方向に間隔をあけて複数形成されている。また、矢印X方向において、底壁44Aの一端(図示の右端)には下部側壁44Bが立設されており、底壁44Aの他端(図示の左端)には第2側壁44Gが立設されている。そして、下部側壁44Bの高さは、第2側壁44Gの高さよりも低くなっている。
【0043】
下部側壁44Bの上端部には、矢印X方向(図示の右方向であり水切り材44の外側方向)に板状に張出した張出部44Cが形成されており、張出部44Cの一端(図示の右端)には、第1側壁44Dが立設されている。第1側壁44Dの下端は、張出部44Cよりも下方に位置しており、第1側壁44Dの上端は、第2側壁44Gの上端よりも下方に位置している。なお、第1側壁44Dと第2側壁44Gは、矢印Y方向における少なくとも一部が対向配置されている。
【0044】
また、第1側壁44Dの内面で張出部44Cよりも上方の部位には、矢印X方向(図示の左方向であり水切り材44の内側方向)に板状に張出した張出部44Eが形成されている。さらに、張出部44Eの他端(図示の左端)には、先端が第2側壁44Gへ向けて徐々に低くなるように傾斜した板状の水切り片44Fが形成されている。水切り片44Fは、水切り材44の平面視で、複数の貫通孔45を覆う位置まで延びている。なお、張出部44Eは、第1側壁44Dの上端よりも下側に位置している。
【0045】
一方、第2側壁44Gの上端部には、矢印X方向(図示の右方向)に板状に張出した張出部44Hが形成されている。張出部44Hは、水切り片44Fよりも上方に位置しており、水切り材44の平面視で水切り片44Fを覆う位置まで張り出されている。ここで、底壁44A、下部側壁44B、張出部44C、第1側壁44D、張出部44E、水切り片44F、第2側壁44G、及び張出部44Hは、一体成形されている。また、水切り材44は、一例として、アルミニウムで構成されている。
【0046】
さらに、水切り材44では、第1側壁44Dの上端と張出部44Hの先端(図示の右端)との間で開口部47が形成されている。これにより、水切り材44では、貫通孔45から流入した外気が、水切り片44Fの先端側を回り込んで略S字状に流れ、開口部47から上方へ流出する。また、外気に含まれる水は、水切り片44Fによって上方への移動(流入)が遮断されるようになっている。
【0047】
また、第2側壁44Gの外側(外面)には、弾性を有する第1弾性部材の一例としてのシーリングゴム49が接着剤で取付けられている。シーリングゴム49は、Y−Z面で矩形状となる板状に形成されており、シーリングゴム49の厚さは、図2において、笠木部材42を笠木留金具52で固定したときに内壁材34と第2側壁44Gとの隙間が塞がる厚さに設定されている。
【0048】
ここで、図2に示すように、笠木部材42と、内壁材34、外壁材36、及び腰壁上桟38との間の空間が第1通気部46となっており、空気(外気)が流通可能となっている。そして、水切り材44は、第1通気部46に配置されている。また、腰壁上桟38の貫通孔38Bは、第1通気部46と、内壁材34及び外壁材36で挟まれる内部空間51とを連通させて第2通気部48を形成している。
【0049】
(作用)
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0050】
まず、換気部30の施工工程(水切り材44及び笠木部材42の取付け工程)について説明する。
【0051】
図4(A)に示すように、水切り材44の第2側壁44Gの外面に接着剤でシーリングゴム49を接着した後、笠木部材42のガイドレール42Dに沿って、水切り材44の第1側壁44Dを差込部43に差し込む。これにより、笠木部材42に対して水切り材44が固定される。また、笠木部材42のシール材支持部42Eにシール材54の一端を嵌め込む。なお、笠木部材42には、予め被係合部42F、42Gが形成されている。
【0052】
続いて、図4(B)に示すように、腰壁上桟38の平坦部38A上に笠木留金具52の取付部52B、52Cを載置して、ビス等の締結手段(図示省略)により笠木留金具52を腰壁上桟38に固定する。そして、内壁材34の上端部外面にシーリングゴム49を押し当てながら、徐々に笠木部材42を降ろしていき、係合部52Fと被係合部42F、係合部52Gと被係合部42Gをそれぞれ係合させる。
【0053】
これにより、図4(C)に示すように、内壁材34、外壁材36、及び腰壁上桟38の上端を覆って笠木部材42が取付けられ、第1通気部46及び第2通気部48が形成されて、換気部30が完成する。なお、シーリングゴム49は、内壁材34と第2側壁44Gとの間を密閉しており、シール材54は、一端が外壁材36に接触して屈曲した状態で、外壁材36と笠木部材42との間を密閉している。
【0054】
このように、換気部30の施工工程では、笠木部材42を内壁材34、外壁材36、及び腰壁上桟38の上端を覆うように取付けるとき、水切り材44の第2側壁44Gに取付けられたシーリングゴム49が内壁材34に圧接されることで、笠木部材42が取付けられる。そして、笠木留金具52との係合により、笠木部材42が固定される。この取付け構造では、接着剤やビスが不要なので、笠木部材42及び水切り材44の取付けを容易に行うことができる。
【0055】
また、笠木部材42の取付けに接着剤やビスを用いていないので、例えば、笠木部材42の内側壁42A、外側壁42Bを押すなどして傾斜壁42Cを撓ませ、係合部52Fと被係合部42F、係合部52Gと被係合部42Gの係合を解除すれば、笠木部材42を容易に取り外すことができる。これにより、第1通気部46、第2通気部48、及び水切り材44の清掃が容易に行え、これらのメンテナンスが容易となる。
【0056】
さらに、水切り材44の第1側壁44Dを笠木部材42の差込部43に差し込むだけで、水切り材44を笠木部材42に取付けられるので、水切り材44の取付けを容易に行うことができる。そして、笠木部材42、水切り材44を別々に腰壁上桟38、内壁材34に取付ける必要がないので、換気部30全体としての工数を減らすことができる。また、笠木部材42の内面(差込部43)の寸法精度と内壁材34の外面の寸法精度とを比較すると、アルミニウムで構成されている笠木部材42の内面の方が寸法精度が良い。このため、内壁材34に水切り材44を固定する施工方法に比べて、水切り材44の取付け精度を向上させることができる。
【0057】
加えて、換気部30の施工において、腰壁上桟38への笠木留金具52の取付けでは、内壁材34及び外壁材36の上端面に比べて、腰壁上桟38の上面(平坦部38A)の方が面積が広いため、笠木留金具52の取付面積を増やして笠木部材42の固定状態を安定させることができる。
【0058】
次に、換気部30の作用について説明する。
【0059】
図5に示すように、換気部30では、シーリングゴム49及びシール材54で隙間が密閉されており、さらに、水切り材44の水切り片44Fによって水が切られる(下方へ落下する)ので、外側から第1通気部46へ水が入り込むことができず、即ち、第1通気部46及び第2通気部48への水の浸入を遮断(抑制)することができる。
【0060】
一方、外気は、矢印Aで示すように、貫通孔45から水切り材44内部に流入し、水切り片44Fの先端側を流れて開口部47から第1通気部46に流入する。そして、第1通気部46に流入した外気は、腰壁上桟38に形成された第2通気部48(貫通孔38B)を流れて、内壁材34と外壁材36とで挟まれる内部空間51に流入する。
【0061】
このように、換気部30では、腰壁上桟38の外側を迂回して内部空間51へ向かう通気路を有する構成や、内壁材34及び外壁材36を二重構造にする構成(例えば、前述の特許文献1に記載の構成)に比べて、外気が流れる換気経路が簡易な構造となり、且つ換気経路の長さが短くなるので、換気部30の通気量が増加し、換気性能を向上させることができる。また、ユニット建物10(図1参照)では、ベランダ20側(天井側)の換気性能が向上することで、ベランダ20の換気部30と連通している他の内壁材と外壁材との間の換気も行うことができるので、ユニット建物10全体の換気性能を向上させることができる。
【0062】
次に、第1実施形態の換気部30の他の第1、第2実施例について説明する。なお、換気部30と同一の部材についは、同じ符号を付与して説明を省略し、換気部30と同様の構成である部材及び部位については、同じ名称を用いて説明を省略する場合がある。
【0063】
図6(A)には、換気部30の他の第1実施例として、換気部30の笠木部材42、水切り材44、及び笠木留金具52を、笠木部材60、水切り材64、及び笠木留金具62に変更して、腰壁上桟38上に水切り材64を配置した構成が示されている。
【0064】
笠木部材60は、内側壁60A、外側壁60B、シール材支持部60C、及び傾斜壁60Dを含んで断面コ字状に形成されており、傾斜壁60Dの下面には、被係合部60E、60F、及び差込部60Gが設けられている。また、シール材支持部60Cには、シール材54の一端が取付けられている。そして、笠木部材60の傾斜壁60Dと腰壁上桟38との間には、水切り材64が設けられている。
【0065】
水切り材64は、第1側壁64A、水切り片64B、貫通孔64C、及び開口部64Dを含んで構成されている。そして、第1側壁64Aが笠木部材60の差込部60Gに差し込まれることにより、貫通孔64C及び開口部64Dが水平方向に開口した状態で配置されている。なお、貫通孔64Cが外気の流入方向(矢印A方向)で上流側に配置されており、開口部64Dが下流側(貫通孔38Bに近い側)に配置されている。また、腰壁上桟38と水切り材64との間には、シーリングゴム49が設けられている。
【0066】
笠木留金具62は、凸部62Aと、取付部62B、62Cと、係合部62D、62Eと、を含んで構成されている。そして、取付部62B、62Cが腰壁上桟38の平坦部38Aにビス等(図示省略)により取付けられており、係合部62D、62Eと笠木部材60の被係合部60E、60Fとが係合することで、笠木部材60が固定されている。また、笠木部材60と内壁材34、外壁材36、及び腰壁上桟38との間が、第1通気部66となっている。
【0067】
ここで、他の第1実施例では、第1通気部66における水切り材64よりも上流側には水が浸入するものの、水切り材64によって水の浸入が遮断されるため、水切り材64よりも下流側及び第2通気部48への水の浸入を抑制することができる。このように、水切り材64を腰壁上桟38の上方に配置してもよい。
【0068】
一方、図6(B)には、換気部30の他の第2実施例として、換気部30の笠木部材42を笠木部材70に変更して、水切り材44を外壁材36側に配置した構成が示されている。
【0069】
笠木部材70は、内側壁70A、シール材支持部70B、外側壁70C、差込部70D、及び傾斜壁70Eを含んで断面コ字状に形成されており、傾斜壁70Eの下面には、被係合部70F、70Gが設けられている。また、シール材支持部70Bには、シール材54の一端が取付けられている。そして、笠木部材70の外側壁70Cと外壁材36との間には、水切り材44が設けられている。
【0070】
水切り材44は、第1実施形態の換気部30(図2参照)の水切り材44とは左右対称となるように逆向きに配置されており、第1側壁44Dが笠木部材70の差込部70Dに差し込まれることにより、貫通孔45及び開口部47が上下方向に開口した状態で配置されている。なお、貫通孔45が開口部47よりも下側に位置している。また、外壁材36と水切り材44との間には、シーリングゴム49が設けられている。さらに、係合部52F、52Gと笠木部材70の被係合部70F、70Gとが係合することで、笠木部材70が固定されている。そして、笠木部材70と内壁材34、外壁材36、及び腰壁上桟38との間が、第1通気部72となっている。
【0071】
ここで、他の第2実施例では、第1通気部72の最も上流側に水切り材44が配置されているので、第1通気部72及び第2通気部48への水の浸入を抑制することができる。このように、水切り材44を外壁材36側に配置してもよい。
【0072】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る換気構造及び建物について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0073】
図7には、第2実施形態の換気構造の一例としての換気部80が示されている。なお、換気部80は、第1実施形態のユニット建物10の換気部30(図2参照)に換えて設けられており、換気部80を除く他の構成はユニット建物10と同様である。
【0074】
換気部80は、換気部30(図2参照)の構成において、腰壁上桟38の平坦部38A上に第2弾性部材の一例としての弾性を有するシーリングゴム84を追加し、シーリングゴム84上に遮断部材の一例としてのフィルタ部材82を追加した構成となっている。さらに、換気部80は、図8(A)、(B)に示すように、笠木部材42における傾斜壁42Cの矢印Z方向(長手方向)の途中に開閉部86が設けられている。
【0075】
詳細には、図7に示すように、フィルタ部材82は、第1通気部46における水切り材44よりも第2通気部48側に設けられている。また、フィルタ部材82は、一例として、換気部80をZ方向に見て断面が台形状のスポンジフィルタで構成されており、通気が行われると共に第2通気部48への水の浸入を遮断している。そして、フィルタ部材82の上面82Aは、笠木部材42の傾斜壁42Cに沿った傾斜面となっており、笠木部材42を笠木留金具52で固定したときに、必要以上の押圧力がフィルタ部材82に作用して通気性能(換気性能)が低下するのを抑えている。
【0076】
さらに、フィルタ部材82は、傾斜した上面82Aが笠木部材42の傾斜壁42Cの下面に接着剤で取付けられており、フィルタ部材82の下面82Bには、板状のシーリングゴム84が接着剤で取付けられている。即ち、笠木部材42とフィルタ部材82及びシーリングゴム84とは一体となっている。そして、笠木部材42を笠木留金具52で固定したとき、フィルタ部材82と腰壁上桟38の平坦部38Aとの間にシーリングゴム84が圧接状態で設けられるようになっている。
【0077】
一方、図8(A)に示すように、笠木部材42の矢印Z方向の一部には、開閉部86が設けられている。開閉部86は、傾斜壁42Cを矢印Y方向に貫通した平面視で矩形状の開口部87と、開口部87に開閉可能に設けられたシャッタ部材88とを含んで構成されている。
【0078】
図8(B)に示すように、開口部87は、傾斜壁42Cにおいて、シャッタ部材88の開放時にフィルタ部材82が露出する部位(フィルタ部材82に対してアクセス可能な部位)に形成されている。なお、ここでは一例として、開口部87の矢印X方向の幅が、内壁材34及び外壁材36の上端が露出する幅となっているが、フィルタ部材82のみが露出する幅となっていてもよい。
【0079】
図8(A)に示すように、シャッタ部材88は、一例として、矢印Z方向を長手方向、矢印X方向を短手方向とする矩形状の4枚の板材88A、88B、88C、88Dを、矢印X方向に並べて連結した構成となっている。なお、連結にはヒンジ部材が用いられているが、図示を省略している。また、4枚の板材88A、88B、88C、88Dの間には、矢印X方向に間隔をあけて矢印Z方向に延びる線状の折曲部L1、L2、L3が形成されている。そして、シャッタ部材88の開放時には、折曲部L1、L3が山折りとされ、折曲部L2が谷折りとされる。
【0080】
なお、開口部87を形成する矢印Z方向の1組の縁部には、それぞれレール部材(図示省略)が取付けられている。そして、折曲部L2及び板材88Dの手前側の縁部L4における矢印Z方向の両端部から外側へ向けて、それぞれ矢印Z方向を軸方向とするシャフト(図示省略)が設けられており、このシャフトがレール部材によって矢印X方向(実際は矢印S方向)に案内されるようになっている。
【0081】
これにより、図8(A)、(B)に示すように、シャッタ部材88は、開口部87の一方側(図示の矢印X方向奥側)に4枚の板材88A、88B、88C、88Dが畳まれることで開口部87を開放し、又は、4枚の板材88A、88B、88C、88Dが並んで開口部87を覆うことで、開口部87を閉塞するようになっている。なお、板材88Dには、操作用の把持部(図示省略)が設けられており、シャッタ部材88の開閉が手動で行えるようになっている。
【0082】
(作用)
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0083】
図7に示すように、換気部80の施工工程では、まず、水切り材44の第1側壁44Dを差込部43に差し込み、笠木部材42に対して水切り材44を固定する。そして、傾斜壁42Cの下面の予め設定された部位に、シーリングゴム84付きのフィルタ部材82を接着する。さらに、シール材支持部42Eにシール材54の一端を嵌め込む。
【0084】
続いて、ビス等の締結手段(図示省略)により笠木留金具52を腰壁上桟38に固定する。そして、係合部52Fと被係合部42F、係合部52Gと被係合部42Gをそれぞれ係合させて笠木部材42を取付ける。これにより換気部80が完成する。
【0085】
換気部80では、シーリングゴム49及びシール材54で隙間が密閉されており、さらに、水切り材44の水切り片44Fによって水が切られる(下方へ落下する)ので、外側から第1通気部46へ水が入り込むことができず、即ち、第1通気部46及び第2通気部48への水の浸入を遮断(抑制)することができる。
【0086】
なお、少量の水が第1通気部46に浸入したとしても、換気部80では、水切り材44と第2通気部48との間にフィルタ部材82及びシーリングゴム84が設けられているので、水切り材44で遮断しきれなかった水を遮断することができ、第2通気部48への水の浸入を抑制することができる。
【0087】
一方、図9に示すように、外気は、貫通孔45から水切り材44内部に流入し、水切り片44Fの先端側を流れて開口部47から第1通気部46に流入する。そして、第1通気部46に流入した外気は、フィルタ部材82を通った後、第2通気部48を流れて、内壁材34と外壁材36とで挟まれる内部空間51に流入する。
【0088】
このように、換気部80では、腰壁上桟38の外側を迂回して内部空間51へ向かう通気路を有する構成や、内壁材34及び外壁材36を二重構造にする構成(例えば、前述の特許文献1に記載の構成)に比べて、外気が流れる換気経路が簡易な構造となり、且つ換気経路の長さが短くなるので、換気部30の通気量が増加し、換気性能を向上させることができる。
【0089】
さらに、図8(A)、(B)に示すように、換気部80では、笠木部材42を取付けた後であっても、開閉部86において、シャッタ部材88を矢印S方向に畳んで開口部87を開放することでフィルタ部材82が露出するので、フィルタ部材82の交換を簡単に行うことができる。また、フィルタ部材82の交換後は、シャッタ部材88を広げることにより開口部87が閉塞されるので、開口部87からの水の浸入を抑制することができる。
【0090】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0091】
水切り材44は、アルミニウムの他にSUSで構成してもよい。また、腰壁上桟38の貫通孔38Bは、矢印X方向のいずれか一方側に寄せて形成されていてもよい。そして、図5、図9において、換気部30、80では、外気の流入方向を矢印Aのみで示していたが、矢印A方向とは逆方向の通気も同様に行われる。
【0092】
フィルタ部材82及びシーリングゴム84は、腰壁上桟38の上方だけでなく、内壁材34側、外壁材36側に配置してもよい。また、シャッタ部材88は、矢印S方向にスライド移動するものであってもよく、あるいは、板状の蓋材の一端部にヒンジ部材を設けて開閉可能に構成してもよい。さらに、シャッタ部材88を、空気を通し水を遮断する弾性体で構成して、このシャッタ部材を弾性変形させて開口部87を開放するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 ユニット建物(建物の一例)
14 床梁(躯体の一例)
16 天井梁(躯体の一例)
22 陸屋根
30 換気部(換気構造の一例)
34 内壁材(第1壁材の一例)
36 外壁材(第2壁材の一例)
38 腰壁上桟(上桟の一例)
42 笠木部材
44 水切り材
44D 第1側壁
44G 第2側壁
46 第1通気部
48 第2通気部
49 シーリングゴム(第1弾性部材の一例)
52 笠木留金具(固定金具の一例)
60 笠木部材
62 笠木留金具(固定金具の一例)
64 水切り材
66 第1通気部
70 笠木部材
72 第1通気部
80 換気部(換気構造の一例)
82 フィルタ部材(遮断部材の一例)
84 シーリングゴム(第2弾性部材の一例)
86 開閉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸屋根上に立設された第1壁材と、
前記陸屋根上に前記第1壁材と間隔をあけて立設された第2壁材と、
前記第1壁材の上端部と前記第2壁材の上端部との間を覆う上桟と、
前記第1壁材、前記第2壁材、及び前記上桟の上端を覆う笠木部材と、
前記笠木部材と前記第1壁材、前記第2壁材、及び前記上桟との間に形成され空気が流通する第1通気部と、
前記第1通気部に配置され、通気が行われると共に前記第1通気部への水の浸入を遮断する水切り材と、
前記上桟に形成され、前記第1通気部と、前記第1壁材と前記第2壁材とで挟まれる内部空間とを連通させる第2通気部と、
を有する換気構造。
【請求項2】
前記水切り材は、対向する1組の第1側壁及び第2側壁を有し、
前記第1側壁は前記笠木部材に取付けられ、
前記第2側壁の外側には弾性を有する第1弾性部材が取付けられ、
前記第1壁材と第2側壁とで前記第1弾性部材が挟まれている請求項1に記載の換気構造。
【請求項3】
前記笠木部材を固定する固定金具が前記上桟に設けられている請求項1又は請求項2に記載の換気構造。
【請求項4】
前記第1通気部における前記水切り材よりも前記第2通気部側には、通気が行われると共に前記第2通気部への水の浸入を遮断する遮断部材が設けられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の換気構造。
【請求項5】
前記遮断部材と、前記第1壁材、前記第2壁材、及び前記上桟の少なくとも1つとの間には、弾性を有する第2弾性部材が圧接により設けられている請求項4に記載の換気構造。
【請求項6】
前記笠木部材には、開放時に前記遮断部材を露出させ、閉塞時に前記遮断部材を覆う開閉部が設けられている請求項4又は請求項5に記載の換気構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の換気構造と、
前記陸屋根を支持する躯体と、
を有する建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−149488(P2012−149488A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10985(P2011−10985)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】