説明

揮発性物質分配装置

空気中への揮発性の液体の継続的な供給と増大した供給の時間についての可能性とを共に提供する方法であって、開口を有する貯蔵器(1)中の液体(3)を提供し、この開口を、貯蔵器内に内部蒸発空間(6)を規定するように0.05〜0.4mmの厚さの膜(4)により覆い、連続的供給を、内部蒸発空間内で蒸発し、膜を通過する液体により提供し、増大した供給を、液体と接触させ、次にこれから分離した膜中に吸収された液体からの蒸発により提供することを含む、前記方法。この方法は、単純であり、安価なデバイスを用いて容易に行われる。また、膜を好適に選択することにより、その中に吸収される液体が散布された際に色が変化することによって、寿命終了の指示が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性物質を分配する(dispensing)装置に関し、より具体的には、蒸発させることによって液体から周辺環境に揮発性物質を送出するための、膜を使用する分配デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
芳香剤、殺菌剤、殺真菌剤および消毒剤などの揮発性液体を周辺環境中に分配するための膜を使用する分配デバイスは、当該分野において十分知られている。かかる分配デバイスの広く一般化しているタイプの1つは、本質的に、揮発性液体を収納する貯蔵器と、貯蔵器を覆うとともに揮発性液体と接触する膜とからなる。かかる分配デバイスは、拡散現象を利用して分配原動力をもたらす。液相は膜から周辺環境へ蒸発する。かかるデバイスは、追加として、加熱要素および/またはファンなどの補助分配手段を含んでいてもよい。
【0003】
かかるデバイスは、確実な効果があり、商業的に成功を収めてきたが、それらには、ある実際的な欠点がある。1つには、「慣れ(habituation)」と呼ばれる現象、即ち連続的に放出すると、人はその臭いに慣れてしまい、それに気づかなくなることである。したがって、芳香剤の多くは、ある程度は無駄にされる。このことは克服することができるが、それを行う手段は、一般的に比較的複雑であるとともに、比較的高価であった。例えば、自動開放オリフィスなどを備える、プログラム可能デバイスを提供することができる。そのような費用および複雑さは、正当化されないことが多い。
【0004】
国際公報PCT/CH2006/000287には、これらの欠点の多くを克服する単純なデバイスが開示されている。このデバイスは、揮発性液体で湿潤されており、次に液体と膜とが分離された際に大気中に蒸発させる、比較的厚い膜(厚さ0.1〜5mm、好ましくは0.5〜5mm)を用いる。これが良好に作動する一方、これは、膜中の液体が完全に蒸発した際に、実質的に液体のさらなる放出はなく、その理由は、厚い膜が、貯蔵器内の蒸発した液体の放出を容易に可能にせず、膜のさらなる装填が必要であるからであるという問題を抱える。
【発明の概要】
【0005】
ここで、この問題を克服し、液体の連続的な放出および増大した放出を必要である際に共に得ることが可能であることが、見出された。したがって、本発明は、空気中への揮発性の液体の継続的な供給と増大した供給の時間についての可能性とを共に提供する方法であって、開口を有する貯蔵器中の液体を提供し、この開口を、貯蔵器内に内部蒸発空間を規定するように0.05〜0.4mmの厚さの膜により覆い、連続的供給を、内部蒸発空間内で蒸発し、膜を通過する液体により提供し、増大した供給を、液体と接触させ、次にこれから分離した膜中に吸収された液体からの蒸発により提供することを含む、前記方法を提供する。
【0006】
本発明はさらに、空気中への揮発性の液体の継続的な供給と増大した供給の時間についての可能性とを共に提供するように適合された装置であって、該装置が、開口を有する貯蔵器を含み、この開口が、貯蔵器内に内部蒸発空間が規定されるように0.05〜0.4mmの厚さの膜により覆われており、膜が、これと物理的に接触した際に液体を吸収し、これを空気中に放出することができる、前記装置に関する。
【0007】
貯蔵器が所望の単一の開口を有している限り、それを、任意好適な形状を有し、任意好適な材料で製作してもよい。本質的に、それは、そこに収納されている揮発性液体に耐性がなくてはならない。即ち、それによって化学的に劣化、軟化または膨潤してはならない。ガラス、セラミック、金属および選択されたプラスチックを使用してもよく、かかる選択はすべて、当業者の知識の範囲である。これを、内部蒸発空間を規定するように、好適に設計する。典型的な単純な配置において、貯蔵器は、広口の容器の形態を有し、該口は、膜により閉止され、液体の量は、好適な空間が規定される程度である。当業者は、実用的および装飾的の両方の、貯蔵器の多くの変形を容易に構想することができる。
【0008】
連続的供給様式において、開口を閉止する膜は、貯蔵器中の液体と直接接触しないが、増強された供給様式が望ましい場合には、膜が液体と接触することができるように、装置を構成する。当業者は、これらの要件に適合するように装置を容易に構成することができる。1つの単純な変形において、開口は、デバイスが水平表面上に位置する際には、貯蔵器の最上部またはこの付近に位置し、単に倒立させることにより膜を液体と接触させることができる。必然的に、開口はまた、容器の側面中にあり得る。膜と液体とを接触させることをまた、任意好適な手段により、例えば貯蔵器を支持構造体中に枢動可能に装着することにより、達成してもよい。
【0009】
膜は、以下の要件を満たす任意の膜とすることができる:
・内部蒸発空間から空気中に液体および蒸気が通過できなければならない;
・液体と接触するときに、所望の時間にわたって空気中に蒸発させるのに十分な液体を吸収することができる構成のものでなければならない。
【0010】
これらのうちの第2の条件は、膜は合理的な厚さでなければならないことを要求する―即ち、当該技術分野において現在使用されている種類の極めて薄い膜は、液体の通過を可能とするが、十分な時間の蒸発のために十分な液体を保持できない。しかし、これは、過度に厚くすることはできず、または貯蔵器内の揮発した液体は、通過しない。膜の厚さは、0.05〜0.4mmの範囲内でなければならない。
【0011】
これはまた、膜がある程度の浸透性を有しなければならないことを意味する。これを、本質的に浸透性の膜、例えばそのように作製することができるある種のポリマー物質を用いることにより、達成することができる。しかし、好ましくは、浸透性は、多孔質充填材の膜において用いることによりもたらされる。これらを、以下に一層十分に記載する。
【0012】
前述の要件を満足する任意の材料を、本発明において用いてもよい。
代表的な好適な材料は、米国特許第3,351,495号に詳細に記載されている。当該明細書に記載されたポリオレフィンは、超高分子量ポリオレフィン、特に、超高分子量ポリエチレンである。その平均重量平均分子量は、少なくとも300,000、好ましくは少なくとも1,000,000、そして特には約4〜7×10である。ポリオレフィンの標準荷重メルトインデックスは、実質的に0、すなわち0.1未満、より具体的には0.01未満である。ポリオレフィンの還元粘度は、4.0以上、他の態様においては、10より大きく、とくに15より大きい。
【0013】
ポリエチレンは最も広く使用されている材料であるが、ポリオレフィン混合物も使用することができる。特に、また好適なのは、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、エチレン/プロピレンコポリマー類、エチレン/へキシレンコポリマー類、エチレン/ブテンコポリマー類、プロピレン/ブテンコポリマー類、エチレン/プロピレン/ブテンコポリマー類、およびエチレンまたはプロピレンとエチレン性不飽和モノカルボン酸、即ちアクリル酸、メタクリル酸、またはそれらの混合物とのコポリマー類である。
【0014】
1種の特定の膜材料は、ポリマー材料、特に多孔質の充填されたポリマー材料である。1つの特定の態様において、材料は、ポリオレフィンである。かかる材料は、電池セパレーターとして商業的に入手できる。典型的なかかる材料は、本質的に少なくとも300,000の分子量(重量平均)、実質的に0の標準荷重メルトインデックスおよび4.0以上の還元粘度を有する8〜100容量%のポリオレフィン、1〜92容量%の充填材および1〜40容量%の可塑剤の均質混合物からなる。
【0015】
上記で述べた膜は、芳香剤と関連して、例えばエアフレッシュナーにおいて用いた際に、さらなる顕著な利点を有する。多くの既知の膜は、疎水性材料、例えばポリオレフィン類、例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらの配合物製である。かかる膜では、芳香剤の最も極性の高い成分の良好な拡散が可能にならない。例えば、アルコール官能を有する分子は、容器内に保持され、膜を適切に通過しない。これは、香料製造者にとって明らかに主要な制約事項である。その理由は、アルコール類、例えばリナロール、フェニルエチルアルコールおよびジヒドロミルセノール(dihydromyrcenol)並びに極性溶媒が、かかる用途において広範囲に用いられているからである。
【0016】
充填された微小孔性膜は、この選択性の現象を示さず、これらは、好ましい膜である。
【0017】
好適な充填材および可塑剤は当該分野において知られている。この文脈において、ここでも米国特許第3,351,495号を参照する。具体的な充填材は、微粉(finely-divided)シリカ(ケイ酸)である。充填材の平均粒度(直径)は、0.01〜約20μmの範囲内であり、充填材の表面積は、30〜950m/gの範囲内、特に少なくとも100m/gである。用いることができる他の充填材には、種々の鉱物充填材、例えば粘土、ゼオライトおよび炭酸塩類、並びに木炭が含まれる。
高密度ポリオレフィン/微粉シリカ膜が、特に好ましい。
【0018】
本発明において用いる材料は、可塑剤、特に水不溶性油、特にプロセス油を含んでいてもよい。
均質混合物の量に対する特に望ましい範囲は、15〜60容量%、好ましくは30〜45容量%のポリオレフィン、35〜80容量%、特に50〜65容量%の充填材、および1〜10容量%の可塑剤である。
言及した構成成分に加えて、本発明において用いられる材料は、抗酸化剤(通常0.1〜1%)、潤滑剤(通常、0.1〜1%)、静電気防止剤、色素、染料、導電性カーボンブラック、安定剤、光安定剤などの当該分野で認識された添加剤を含むことができる。
【0019】
本発明のさらなる態様において、本発明の装置は、寿命終了(end-of-life)インジケータを含む。かかる態様は、デバイスの交換が必要なとき、または膜上の液体の充填が使い果たされたときを知らせることができるため、極めて有用である。本発明において、このことは、膜の色変化、即ち液体が充填された膜が乾燥した膜と色が異なることによって達成される。このことは、任意の簡便な手段で達成することができる。例えば、これを、液体と相互作用して色変化を生じる材料を膜内に組み入れることによって達成することができる。この相互作用する材料は、必然的に、色変化が可逆的であるように選択しなければならない。
【0020】
本発明の1つの態様において、液体の存在または不在に依存して色を変化させる能力は、膜の固有の特性であり、したがってこれを達成するために膜を改変する必要がない。これは、本明細書で上述した好ましいポリオレフィン/シリカ製電池セパレータタイプの膜の特性であり、また、本発明の作用において、これらが特に有用であることの他の理由である。したがって、本発明はさらに、膜の補充の必要性が膜の色の変化により指示される、本明細書において上述したような装置を提供する。
【0021】
作動に際して、装置は、膜を液体と接触させずに支持する。これにより、液体の空気中への持続的な供給が確実になる。増大した放出が必要である際には、膜を液体で充填するのに十分な時間にわたり、液体を膜と接触させ、次いで両者を隔離する。これは、例えば、単に装置を倒立させ、次いで再び元にひっくり返すことにより行うことができる。例えば、装置を逆さまに立たせることができるように、膜を装置の平坦上部の付近に配置してもよい。あるいはまた、装置は、クレードル(cradle)中またはピボット上に装着してもよい。
本発明を、好ましい態様を示す、添付の図面を参照してさらに説明する。これは、芳香剤を収納するエアフレッシュナーを表す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、好ましい実施態様の概略縦断面図である。
【図2】図2は、ある時間にわたる、実施態様の液体放出特性を示すチャートである。
【0023】
全体的に1で示す装置は、一端に開口3を備える容器の形状を有する貯蔵器2からなる。この貯蔵器は、揮発性液体4、この場合には芳香剤を収納する。貯蔵器の開放端は、膜5によって閉止されている。膜は、厚さ0.05〜0.4mmのポリエチレン/シリカ膜である(用いた実際の膜は、Membrane DS2 drying sweat system ex Daramic Inc.である)。膜5は、平坦上部を有し、これにより装置を倒立させ、水平面上に安定的に設置することが可能になる。膜5と液体4との間に、内部蒸発空間6がある。
【0024】
液体の連続的な放出のために、装置を、図1に示すように設置し、膜は芳香剤とは接触していない。芳香剤は、内部蒸発空間6中に蒸発し、膜5に浸透し、そうして大気中に広がる。
【0025】
増大した芳香剤が存在することが大気中で望ましい場合には、装置を、これが十分な液体を吸収するのに十分な時間にわたり、典型的にはわずか1秒にわたり倒立させる。膜の色は、不透明白色から液体の色に変化し、これはわずかに透明になる。装置を、適切な方を上にして設置し、揮発性液体が膜から発散を開始する。特定の充填についての寿命終了は、膜の色を観測することによって観測することができる。その元の色に戻った際に、膜を、再び倒立させて再び充填することができる。
【0026】
図2は、1週間だけの期間にわたって採取した測定の結果をグラフで示す。縦軸上に示す強度数値は、芳香剤業界において用いられるのと同様の、経験者パネルによる、ある間隔で採取された芳香剤の強度の評価値である。強度は、5=極めて強い、4=強い、3=普通、2=弱い、1=極めて弱い、0=無臭である。1日および4日の指標において、当該デバイスを倒立させて、膜を充填し、芳香剤の量は、感知可能な程度に増大する。これは、約1日の期間で平均レベルまで低下する。
【0027】
当業者であれば、本発明の多数の可能な変更形態を思い付くが、これらは本発明の範囲内にあるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中への揮発性の液体の継続的な供給と増大した供給の時間についての可能性とを共に提供する方法であって、開口を有する貯蔵器中の液体を提供し、この開口を、貯蔵器内に内部蒸発空間を規定するように0.05〜0.4mmの厚さの膜により覆い、連続的供給を、内部蒸発空間内で蒸発し、膜を通過する液体により提供し、増大した供給を、液体と接触させ、次にこれから分離した膜中に吸収された液体からの蒸発により提供することを含む、前記方法。
【請求項2】
膜の材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、エチレン/プロピレンコポリマー類、エチレン/へキシレンコポリマー類、エチレン/ブテンコポリマー類、プロピレン/ブテンコポリマー類、エチレン/プロピレン/ブテンコポリマー類、およびエチレンまたはプロピレンとエチレン性不飽和モノカルボン酸とのコポリマー類からなる群から選択され、膜の材料は好ましくは充填されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
膜の材料が、少なくとも300,000の分子量(重量平均)、0.1未満の標準荷重メルトインデックスおよび4.0以上の還元粘度を有する8〜100容量%のポリオレフィン、1〜92容量%の充填材および1〜40容量%の可塑剤の均質混合物から本質的になる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポリオレフィンが、超高分子量ポリオレフィン、好ましくは超高分子量ポリエチレンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ポリオレフィンが、少なくとも1,000,000、好ましくは4〜7×10の分子量を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
標準荷重メルトインデックスが0.01未満であり、好ましくは実質的に0である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ポリオレフィンの還元粘度が10より大きく、好ましくは15よりも大きい、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
充填材が多孔質である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
空気中への揮発性の液体の継続的な供給と増大した供給の時間についての可能性とを共に提供するように適合された装置であって、該装置が、開口を有する貯蔵器を含み、この開口が、貯蔵器内に内部蒸発空間が規定されるように0.05〜0.4mmの厚さの膜により覆われており、膜が、これと物理的に接触した際に液体を吸収し、これを空気中に放出することができる、前記装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−501419(P2010−501419A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524859(P2009−524859)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000401
【国際公開番号】WO2008/022477
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】