説明

揮発性薬剤徐放積層体

【課題】 揮発性薬剤を高濃度で長期間にわたり揮発させることができ、持続的に揮発性薬剤の効果が発揮できる揮発性薬剤徐放積層体の提供。
【解決手段】 バリア性フィルム24の一方の表面に粘着性コート層21を、他方の表面に非粘着性コート層27を配した積層構造体20−1を1単位とし、一方の積層構造体の非粘着性コート層27と他方の積層構造体20−2の粘着性コート層21とが剥離可能に積層された積層構造体を2単位以上20−1〜20−5重ね合わせたマルチ積層体20である。それぞれの1単位の最上層に位置する粘着性コート層21は、揮発性薬剤23を含有している

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性薬剤を徐々に気化放出させる揮発性薬剤徐放積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の揮発性薬剤徐放積層体は、例えば特許文献1に開示されるように、薬剤を含有した樹脂フィルムの一方の面に対して最上層となる剥離可能な薬剤不透過剥離シートを積層し、他方の面に薬剤不透過層、粘着剤層、剥離シート層を順次積層している。最下層である剥離シート層を除去して積層体を所望の場所に貼り付ける。そして最上層の薬剤不透過シートを剥離することで、樹脂フイルムから薬剤が徐々に放出される。
【0003】
しかし、かかる構成では剥離シート層を除去した後は薬剤の放散が必要以上に進行し、薬剤の効果が早期に消失するおそれがある。かかる問題を解決するために、特許文献2に記載された揮発性薬剤徐放積層体は、バリア性基材フィルム上に揮発性薬剤を含浸した粘着剤層を積層するとともに、粘着剤層の上に徐放性コントロールフィルムが積層されている。徐放性コントロールフィルムにより、薬剤を所望の濃度で放出させることができ、薬剤の過度の放出を防止することができる。
【特許文献1】実開昭62−50925号公報
【特許文献2】特開平7−24048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2に記載された構成によっても依然として、薬剤含有層に含まれる薬剤は時間の経過と共に次第にその濃度が低下し、それにつれて揮発量は減衰曲線的に減少することは避けられない。徐放性コントロールフィルムの役割は、単に揮発の速度を抑えているに過ぎないからである。
【0005】
そこで、本発明は従来の揮発性薬剤徐放積層体の不都合を解消し、揮発性薬剤を高濃度で長期間にわたり揮発させることができ、持続的に揮発性薬剤の効果が発揮できる揮発性薬剤徐放積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、バリア性フィルムの一方の表面に粘着性コート層を、他方の表面に非粘着性コート層を配した積層構造体を1単位とし、一方の積層構造体の該非粘着性コート層と他方の積層構造体の粘着性コート層とが剥離可能に積層された該積層構造体を2単位以上重ね合わせたマルチ積層体を備え、該マルチ積層体のうち、使用時に外気に曝される側の層を最上層と定義したとき、それぞれの該1単位の該最上層側に位置する側の該非粘着性コート層又は該粘着性コート層には、揮発性薬剤を含有している揮発性薬剤徐放積層体を提供している。
【0007】
ここで、該マルチ積層体の最上位の積層構造体上には、バリア性トップフィルムが剥離可能に設けられているのが好ましい。
【0008】
また、それぞれの該積層構造体は、該バリア性フィルムの一方側の面に該非粘着性コート層が設けられ、該バリア性フィルムの他方側の面に該粘着性コート層が設けられ、該揮発性薬剤は該非粘着性コート層に混入され、該バリア性トップフィルムは該非粘着コート層上に位置する粘着性塗布層と、該粘着性塗布層上に積層されたバリア性構造物とを有することが好ましい。この場合、該バリア性構造物は、基材と該基材の一面側に形成されたバリア層とを有し、該バリア層は該基材と該粘着性塗布層との間にあるのが好ましい。
【0009】
又は、それぞれの該積層構造体は、該バリア性フィルムの一方側の面に該粘着性コート層が設けられ、該バリア性フィルムの他方側の面に該非粘着性コート層が設けられ、該揮発性薬剤は該粘着性コート層に混入され、該バリア性トップフィルムは該粘着コート層上に位置する非粘着性塗布層と、該非粘着性塗布層上に積層されたバリア性構造物とを有することが好ましい。この場合、該バリア性構造物は、基材と該基材の一面側に形成されたバリア層とを有し、該バリア層は該基材と該非粘着性塗布層との間にあるのが好ましい。
【0010】
更に、該1単位の積層構造体を長尺帯状体とし、該マルチ積層体は、該長尺帯状体をロール状に巻回したことにより、ロールの直径方向に沿って該積層構造体が複数単位の配列をなす構成であるのが好ましい。
【0011】
更に、互いに面し合う一方の積層構造体の該非粘着性コート層と他方の積層構造体の粘着性コート層の間であって該粘着コート層の外縁付近の少なくとも一部には、非粘着性材料が配置されているのが好ましい。
【0012】
更に、それぞれの該1単位の該最上層側に位置する側の該非粘着性コート層又は該粘着性コート層には、揮発性薬剤の濃度の変化を色の変化であらわすための指示薬が混入されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の揮発性薬剤徐放積層体によれば、それぞれの積層構造体のうち使用時に外気に曝される側の層に揮発性薬剤が含有され、また積層構造体は互いに剥離可能に複数単位積層されているので、最上層の積層構造体からの揮発性薬剤が所定程度揮発して減少したときは、最上層の積層構造体を剥がして新たな積層構造体を露出させ、新たな積層構造体の最上層から揮発性薬剤を揮発させることができる。すなわち積層構造体の単位数に応じて揮発性薬剤を持続的に揮散させることができ、長期に亘って徐放効果を発揮することが可能となる。
【0014】
請求項2記載の揮発性薬剤徐放積層体によれば、マルチ積層体の最上位の積層構造体上に、バリア性トップフィルムが剥離可能に設けられているので、使用を開始する前まで、揮発性薬剤の揮発を抑えることができる。
【0015】
請求項3記載の揮発性薬剤徐放積層体によれば、使用時において外気に曝される側の最上層は非粘着性コート層であるので、例えば揮発性薬剤が防虫剤である場合に、揮発性薬剤徐放積層体を箪笥内に配置したときに、衣類が最上層に粘着することがない。
【0016】
請求項4、6記載の揮発性薬剤徐放積層体によれば、バリア層が最外層とはならず、基材で保護されるので、バリア層の擦過を防止できる。請求項5記載の揮発性薬剤徐放積層体は、請求項1記載の揮発性薬剤徐放積層体を具体化したものである。
【0017】
請求項7記載の揮発性薬剤徐放積層体によれば、1単位の積層構造体を長尺帯状体とし、マルチ積層体は、長尺帯状体をロール状に巻回したことにより提供できるので、ロールの最外周側での徐放効果が減少したときは、ロールの巻回を解くことにより、新たな徐放面が出現できる。またロールの半径方向内方部分は半径方向外方部分で保護されるので、内放部分での徐放作用を防止できる。
【0018】
請求項8記載の揮発性薬剤徐放積層体によれば、非粘着性材料が粘着コート層の外縁付近に設けられているので、最上位の積層構造体の剥離を容易に開始することができる。
【0019】
請求項9記載の揮発性薬剤徐放積層体によれば、それぞれの1単位の最上層側に位置する側の非粘着性コート層又は粘着性コート層には、揮発性薬剤の濃度の変化を色の変化であらわすための指示薬が混入されているので、揮発性薬剤が揮発して濃度が低下したとき、色の変化によって容易に揮発性薬剤の濃度の低下が認識でき、最上層の積層構造体を剥がして新たな積層構造体を露出させ、新たな積層構造体の最上層から揮発性薬剤を揮発させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の第1の実施の形態による揮発性薬剤徐放積層体について図1に基づき説明する。揮発性薬剤徐放積層体1は平面視長方形であり、バリア性トップフィルム10と、積層構造体20−1〜20−5を複数個例えば5個積層させたマルチ積層体20とを備える。なお以下の説明において、図面に示されるように上下方向を積層方向として説明する。
【0021】
バリア性トップフィルム10は、最上層の積層構造体20−1上に剥離可能に積層され、バリア性構造物11と剥離層14とを有する。バリア性構造物11は樹脂製の基材12とバリア層13を有する。基材12は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドフィルム、等が挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの様なガスバリヤ性の良いフィルムが望ましい。
【0022】
バリア層13はアルミニウム等の金属蒸着や、セラミック蒸着や、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムなどの無機物(金属酸化物又は金属化合物)の蒸着により、樹脂層の表面に形成される。バリア層13の擦過を防止するために、バリア層13は基材12と剥離層14との間に位置する。バリア層13の厚さは、5〜500μm、望ましくは10〜100μmである。蒸着に代えて、バリア層を成す材料の箔又は薄膜を基材に貼付けたり、バリア層を成す材料を基材にコーティングしてもよい。
【0023】
剥離層14は、シリンコーン系離型剤、パラフィン系コート剤等が挙げられる。機能性物質の吸収を少なくする為、剥離層14は出来る限り薄い方が望ましく、0.01〜10μmが好ましい。
【0024】
マルチ積層体20を構成する複数の積層構造体20−1〜20−5はそれぞれ、上層から順に粘着性コート層21、バリア性フィルム24,非粘着性コート層27を有する。最上の積層構造体20−1の粘着性コート層21は、バリア性トップフィルム10の剥離層14により剥離可能に覆われる。また各粘着性コート層21は、粘着剤層22と粘着剤層22内に混入された揮発性薬剤23を有する。バリア性トップフィルム10は、揮発性薬剤徐放積層体1の使用を開始する前まで、揮発性薬剤23の揮発を抑えることができる。
【0025】
揮発性薬剤23を含浸させる粘着剤層22に用いる粘着剤としては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシルの如き(メタ)アクリル酸エステルの一種または二種以上と、該エステル類と共重合可能な(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチルの如き官能性モノマーとの共重合物等のアクリル系粘着剤、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のビニル系粘着剤、天然ゴムや、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブテンゴム、ブチルゴム等の合成ゴムを主成分とするゴム系粘着剤が用いられる。上記アクリル系、ゴム系、ビニル系の各種粘着剤が選択使用できるが、アクルル系粘着剤から選択使用するのが好ましく、特に、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと該モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体が好ましく、架橋タイプのものがより好ましい。尚、粘着剤中には必要に応じ、テルペン系樹脂、石油系樹脂等の粘着付与剤、流動パラフィン、動植物油(例えばオリーブ油、大豆油、牛油、トン脂)、ポリブテン、低級イソプレン、ワックス等の粘着力、保持力調整剤、酸化チタン、酸化亜鉛、メタケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等の充填剤、水および乳化剤(例えばソルビタンモノオレエート、ラウリルスルホン酸ナトリウム)、乳化助剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム)などを配合することもできる。また揮発性薬剤を含浸保持できる粘着剤であれば、ここに例示した以外の粘着剤も用いることができる。
【0026】
揮発性薬剤23は、例えば香料、防黴剤、防腐剤、防虫剤、殺虫剤、殺菌剤、防錆剤、消臭剤、抗菌剤、消炎剤である。具体的には、ジャコウ、シベット(レイビョウ香)、カストル(カイリ香)、アンバーグリス(リュウゼン香)等の動物性香料、ラベンダー油、ハッカ油、レモン油、オレンジ油、ローズ油、ショウノウ油、ビャクダン油、ヒノキ油等の植物精油からなる植物性香料等の天然香料、テルペン化合物、芳香族化合物等からなる合成香料、あるいはそれらをブレンドした調合香料等の香料、イソチオシアン酸メチル、イソチオシアン酸エチル、イソチオシアン酸アリル、イソチオシアン酸イソブチル、イソチオシアン酸n−ブチル、イソチオシアン酸フェニル、イソチオシアン酸ベンジル等のイソチオシアン酸エステル類、ジフェニル、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、パラクロルメタクレゾール、α−ブロムシンナムアルデヒド等の防黴剤、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸等の防腐剤、DDVP剤、ピペロニルブトキシド等の防虫・殺虫剤、ホルマリン、サリチル酸、クレオソート、フェノール等の殺菌剤、ジシクロヘキシルアミン亜硝酸塩、シクロヘキシルアミン炭酸塩、イソプロピルアミン安息香酸塩、ジイソプロピルアミンコハク酸塩等の有機アミンの無機および有機酸塩、安息香酸、ナフトール酸等の芳香族酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸等の炭素数6〜10の脂肪酸、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール等の複素環式アミン、m−ジニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のニトロ置換芳香族化合物、ヘキサメチレンテトラミンおよびその誘導体等の一種又は2種以上の混合物からなる防錆剤等である。揮発性の薬剤であれば特にその種類は限定されず、使用目的に応じ適宜選択使用できる。
【0027】
バリア性フィルム24は、粘着剤層22に隣接するバリア層25と樹脂で構成される基材26とにより構成される。これらバリア層25と基材26とはバリア性構造物11を構成するバリア層13及び基材12と同様である。粘着剤層22の下側をバリア性フィルム24で覆っているので、揮発性薬剤が下方から放散されることが防止できる。
【0028】
非粘着性コート層27はバリア性フィルム24に隣接しシリンコーン系離型剤、パラフィン系コート剤等により剥離性を有して構成される。非粘着性コート層27には、次の積層構造体20−2の粘着性コート層21が粘着しているが、剥離性を有するために、粘着性コート層21から容易に剥離可能である。
【0029】
以上の構成によれば、マルチ積層体20の最上位の積層構造体20−1上にあるバリア性トップフィルム10を剥離すると、揮発性薬剤23を含有する粘着性コート層21が出現し、所望の徐放効果が発揮できる。最上層の積層構造体20−1からの揮発性薬剤23が所定程度揮発して減少したときは、最上層の積層構造体20−1を剥がして新たな次の積層構造体20−2を露出させ、新たな積層構造体20−2の最上層である粘着性コート層21から揮発性薬剤を揮発させることができる。すなわち積層構造体の単位数に応じて揮発性薬剤を持続的に揮散させることができ、長期に亘って徐放効果を発揮することが可能となる。
【0030】
本発明の第2の実施の形態による揮発性薬剤徐放積層体1Aについて図2に基づき説明する。第1の実施の形態と同様に揮発性薬剤徐放積層体1Aは平面視長方形であり、バリア性トップフィルム50と、積層構造体60−1〜60−5を複数個例えば5個積層させたマルチ積層体60とを備える。
【0031】
バリア性トップフィルム50は、バリア性構造物51と粘着層54とを有する。バリア性構造物51は第1の実施の形態と同様な基材52とバリア層53を有する。粘着層54は、第1の実施の形態における粘着剤層22と同様な材料により構成される。
【0032】
マルチ積層体60を構成する複数の積層構造体60−1〜60−5はそれぞれ、上層から順に非粘着性コート層61、バリア性フィルム64,粘着性コート層67を有する。最上の積層構造体60−1の非粘着性コート層61は、バリア性トップフィルム50の粘着層54に対して剥離可能である。また各非粘着性コート層61は、非粘着剤層62と非粘着剤層62内に混入された揮発性薬剤63を有する。非粘着剤層62、バリア性フィルム64、粘着性コート層67の材料はそれぞれ、第1の実施の形態の非粘着性コート層27,バリア性フィルム24,粘着剤層22の材料と同じである。
【0033】
以上の構成によれば、マルチ積層体60の最上位の積層構造体60−1上にあるバリア性トップフィルム50を剥離すると、揮発性薬剤63を含有する非粘着性コート層61が出現し、所望の徐放効果が発揮できる。最上層の積層構造体60−1からの揮発性薬剤63が所定程度揮発して減少したときは、最上層の積層構造体60−1を剥がして新たな次の積層構造体60−2を露出させ、新たな積層構造体60−2の最上層である非粘着性コート層61から揮発性薬剤を揮発させることができる。すなわち積層構造体の単位数に応じて揮発性薬剤を持続的に揮散させることができ、長期に亘って徐放効果を発揮することが可能となる。また使用時において最上層は非粘着性コート層61であるので、例えば揮発性薬剤が防虫剤である場合に、揮発性薬剤徐放積層体1Aを箪笥内に配置したときに、衣類が最上層61に付着することがない。
【0034】
本発明による揮発性薬剤徐放積層体は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲で規定された発明の要旨の範囲内で様々な変更が可能である。例えば、1単位の積層構造体を長尺帯状体とし、長尺帯状体をロール状に巻回したことにより、ロールの直径方向に沿って視たとき、積層構造体が複数単位の配列をなしてマルチ積層体として機能するようにしてもよい。係る構成によれば、ロールの最外周側での徐放効果が減少したときは、ロールの巻回を解くことにより、新たな徐放面が出現できる。またロールの半径方向内方部分は半径方向外方部分で保護されるので、内放部分での徐放作用を防止できる。また、ロールの巻回を解いて新たな徐放面を出現させる際に、ロールの幅方向に適切にミシン目などの切れ目を入れておき、その切れ目に沿って引き裂いて新たな徐放面を出現させるのが好ましい。
【0035】
また、互いに面し合う一方の積層構造体の非粘着性コート層と他方の積層構造体の粘着性コート層の間であって粘着コート層の外縁付近の少なくとも一部に、紙等の非粘着性材料を配置してもよい。係る構成によれば最上位の積層構造体の剥離を容易に開始することができる。又は、粘着コート層の塗工面積を小さくしたり、塗工パターンで粘着コート層の外縁を取り囲むように非塗工部を設けることで、同様に最上位の積層構造体の剥離を容易に開始することができる。
【0036】
また、上述した実施の形態において、それぞれの積層構造体の最上層側に位置する側の非粘着性コート層又は粘着性コート層に、揮発性薬剤の濃度の変化を色の変化であらわすための指示薬を混入してもよい。揮発性薬剤が揮発して濃度が低下したとき、色の変化によって容易に揮発性薬剤の濃度の低下が容易に認識でき、最上層の積層構造体を剥がして新たな積層構造体を露出させ、新たな積層構造体の最上層から揮発性薬剤を揮発させることができる。指示薬としては、pH指示薬、酸化還元指示薬、吸着指示薬、TLC呈色指示薬等が挙げられ、それらを用途に応じて適宜用いることとする。
【0037】
また、バリア性トップフィルム10、50のバリア性構造物11、51において、基材12、52単体で十分なガスバリア性が発揮できれば、バリア層13,53は設けなくてもよい。係る基材の材料としては、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体が好適である。
【0038】
加えて、それぞれの積層構造体の最上層側に特開平7−24048号に記載された徐放性コントロールフィルムを貼り付けてもよい。徐放性コントロールフィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等の樹脂フィルムや、紙、布、合成紙などが用いられ、一般に膜厚5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度のものが用いられる。上述した揮発性薬剤徐放積層体の製造方法については、公知の積層フィルムの製造方法に準じればよく説明は省略する。
【0039】
なお、第1の実施の形態において、バリア性フィルム24を構成する基材26が、剥離性を有する基材であれば、非粘着コート層27を省略できる。その場合には、基材26が新たな積層構造体20−2の粘着層22に剥離可能に直接接触する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施の形態による揮発性薬剤徐放積層体を示す断面図。
【図2】本発明の第2の実施の形態による揮発性薬剤徐放積層体を示す断面図。
【符号の説明】
【0041】
1,1A 揮発性薬剤徐放積層体
10、50 バリア性トップフィルム
11、51 バリア性構造物
12、52 基材
13、53 バリア層
20、60 積層構造体
21 67 粘着性コート層
22 粘着剤層
23,63 揮発性薬剤
24 、64 バリア性フィルム
27、61 非粘着性コート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア性フィルムの一方の表面に粘着性コート層を、他方の表面に非粘着性コート層を配した積層構造体を1単位とし、一方の積層構造体の該非粘着性コート層と他方の積層構造体の粘着性コート層とが剥離可能に積層された該積層構造体を2単位以上重ね合わせたマルチ積層体を備え、
該マルチ積層体のうち、使用時に外気に曝される側の層を最上層と定義したとき、それぞれの該1単位の該最上層側に位置する側の該非粘着性コート層又は該粘着性コート層には、揮発性薬剤を含有していることを特徴とする揮発性薬剤徐放積層体。
【請求項2】
該マルチ積層体の最上位の積層構造体上には、バリア性トップフィルムが剥離可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の揮発性薬剤徐放積層体。
【請求項3】
それぞれの該積層構造体は、該バリア性フィルムの一方側の面に該非粘着性コート層が設けられ、該バリア性フィルムの他方側の面に該粘着性コート層が設けられ、
該揮発性薬剤は該非粘着性コート層に混入され、
該バリア性トップフィルムは該非粘着コート層上に位置する粘着性塗布層と、該粘着性塗布層上に積層されたバリア性構造物とを有することを特徴とする請求項2記載の揮発性薬剤徐放積層体。
【請求項4】
該バリア性構造物は、基材と該基材の一面側に形成されたバリア層とを有し、該バリア層は該基材と該粘着性塗布層との間にあることを特徴とする請求項3記載の揮発性薬剤徐放積層体。
【請求項5】
それぞれの該積層構造体は、該バリア性フィルムの一方側の面に該粘着性コート層が設けられ、該バリア性フィルムの他方側の面に該非粘着性コート層が設けられ、
該揮発性薬剤は該粘着性コート層に混入され、
該バリア性トップフィルムは該粘着コート層上に位置する非粘着性塗布層と、該非粘着性塗布層上に積層されたバリア性構造物とを有することを特徴とする請求項2記載の揮発性薬剤徐放積層体。
【請求項6】
該バリア性構造物は、基材と該基材の一面側に形成されたバリア層とを有し、該バリア層は該基材と該非粘着性塗布層との間にあることを特徴とする請求項5記載の揮発性薬剤徐放積層体。
【請求項7】
該1単位の積層構造体を長尺帯状体とし、該マルチ積層体は、該長尺帯状体をロール状に巻回したことにより、ロールの直径方向に沿って該積層構造体が複数単位の配列をなすことを特徴とする請求項1記載の揮発性薬剤徐放積層体。
【請求項8】
互いに面し合う一方の積層構造体の該非粘着性コート層と他方の積層構造体の粘着性コート層の間であって該粘着コート層の外縁付近の少なくとも一部には、非粘着性材料が配置されていることを特徴とする請求項1記載の揮発性薬剤徐放積層体。
【請求項9】
それぞれの該1単位の該最上層側に位置する側の該非粘着性コート層又は該粘着性コート層には、揮発性薬剤の濃度の変化を色の変化であらわすための指示薬が混入されていることを特徴とする請求項1記載の揮発性薬剤徐放積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−216516(P2007−216516A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39875(P2006−39875)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】