説明

揮発性麻酔薬組成物およびその使用

本発明は、それを必要としている被検体の疼痛を軽減する方法であって、運動機能を実質的に妨害することなく疼痛を軽減するのに有効な量で、抽出溶媒、例えば、DMSOまたはNMPをさらに含みうる溶液または乳剤中の揮発性麻酔薬を送達することによる方法を提供する。慢性もしくは急性疼痛を治療してもよく、または手術前に被検体の一部を麻酔するために、揮発性麻酔薬を部分麻酔薬として被検体に送達してもよい。特定の態様において、イソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、またはその混合物を用いうる。1回投与、持続的および/または周期的投与を含む投薬法が企図される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
何百万もの人が疼痛に苦しんでいる。疼痛は頭痛、急性下背痛、および急性筋痛などの軽度の場合もあれば、慢性疼痛などの重度の場合もある。慢性疼痛は癌治療、HIV、糖尿病、または他の状態に関連することもある。慢性疼痛は治療が難しいこともあり、多くの慢性疼痛に苦しむ人は現行の鎮痛剤では疼痛がうまく制御されない、または鎮痛剤に著しい有害作用(例えば、悪心および嘔吐、依存、耐性など)が伴うとしている。
【0002】
慢性疼痛管理の問題に取り組む試みにおいて、くも膜下腔内注入ポンプおよび神経刺激剤が開発された。くも膜下腔内注入ポンプは液体鎮痛剤の持続的、または持続的に近い送達を目的としている。これらの注入ポンプの多くは全体を埋込可能で、外部装置の長期使用に比べると感染のリスクを軽減するのに役立つ。注入ポンプは患者または医師が投与量または1日の送達計画を調節できるようにプログラム可能であることもあり、患者の変化する必要性に合わせる助けとなる。
【0003】
神経刺激剤は様々な形態で入手可能であり、神経を刺激して疼痛を軽減する。くも膜下腔内ポンプおよび神経刺激剤はいずれも、耐性の発現を含む欠点を有し、治療の有効性が時間の経過とともに低下する。
【0004】
麻酔または鎮痛を導入するための様々なアプローチが公知である。全身麻酔薬の全身送達は患者の意識を消失させ、知らないうちに手術を行う。これに対し、神経ブロックにおいて麻酔薬を部分的に、例えば、脊椎、脊髄(くも膜下腔内または硬膜外)、または1つの神経の近くに適用して、患者の体の一部だけを麻酔してもよい。全身麻酔のために、手術前の患者への全身麻酔薬の送達は典型的には、最初に導入剤を静脈内注射し、続いて挿管および吸入麻酔ガスの投与によって行う。全身麻酔の作用機作はいまだ完全に理解されていないことは留意する価値がある。
【0005】
かなりの負の副作用が全身麻酔薬の投与によって起こることがある。嘔吐から保護するために必要なチューブを気管に挿入しなければならないが、これは上気道に外傷を生じうる。多くの患者が術後の嗄声ならびに口および喉の圧痛を報告している。加えて、標的とする神経器官に達するのに必要なガスの用量は、非標的器官、特に心臓に有害な影響をおよぼすことがあり、全身麻酔中の心肺疾患のリスクが高まる。特に高齢者においては、全身麻酔後の遷延性認知機能障害のかなりの証拠がある(Moller et al., 1988, Lancet., 351:857-861/非特許文献1)。加えて、部分麻酔技術は全身麻酔と比べて、心肺が原因の全罹患率および死亡率の低下につながるようである(Rasmussen et al., 2003, Acta Anaesthesiologica Scandinavica, 47:260-266/非特許文献2; Rogers et al., 2000, BMJ, 321:1-12/非特許文献3)。
【0006】
例えば、全身麻酔中の揮発性麻酔薬の吸入投与にも特定のリスクが伴う。吸入用に製剤された揮発性麻酔薬組成物は一般に、比較的低い沸点および高い蒸気圧を有する。古くからある揮発性麻酔薬組成物(エーテルおよびシクロプロパンを含む)はしばしば、その液体状態および蒸気状態のいずれでも引火性または爆発性であるが、新しい薬剤ではそのような性質ははるかに少ない(Williams and Lemke, 2002, Foye's Principles of Medicinal Chemistry, Lippincott Williams & Wilkins, NY参照/非特許文献4)。さらに、保健職員の微量の蒸気の吸入による健康上の予後は不明で、おおいに議論の対象となっている。小児科の手術室で用いられるより多くの量において、多量のガスが吸入導入中に漏出し、明白な傾眠または頭痛を引き起こすことがあるが、これは手術室環境では望ましくない。したがって、医療職員による吸入のリスクおよび火災のリスクの両方を最低限に抑えるために、揮発性麻酔薬を安全に取り扱うためのかなりの注意(手術室の換気を含む)を払わなければならず、また取り扱いのあらゆる段階で揮発性麻酔薬が大気中にほとんど、または全く放出されないことを保証するための注意を払わなければならない。
【0007】
明らかに、疼痛管理ならびに局所および部分麻酔のための改善された方法が必要とされている。さらに、その使用に関連する、前述のリスクが低減された揮発性麻酔薬組成物が必要とされている。同様に、運動機能を実質的に妨害することなく疼痛を治療するための、そのような改善された揮発性麻酔薬組成物の送達法も必要とされている。本発明はこれらの必要を満たす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Moller et al., 1988, Lancet., 351:857-861
【非特許文献2】Rasmussen et al., 2003, Acta Anaesthesiologica Scandinavica, 47:260-266
【非特許文献3】Rogers et al., 2000, BMJ, 321:1-12
【非特許文献4】Williams and Lemke, 2002, Foye's Principles of Medicinal Chemistry, Lippincott Williams & Wilkins, NY
【発明の概要】
【0009】
本発明は、それを必要としている被検体の疼痛を軽減するための組成物および方法であって、被検体に経口、静脈内、または吸入以外の経路で揮発性麻酔薬を送達することによる組成物および方法を企図する。本発明は、疼痛軽減を必要としているヒトもしくは動物患者またはマウスもしくはラットなどの実験動物などの被検体において揮発性麻酔薬を投与し、疼痛を軽減するための、改善された揮発性麻酔薬組成物および方法を提供することにより、先行技術における制限を克服する。一つの態様において、本発明は、水性溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を含む揮発性麻酔薬組成物であって、溶液が薬学的に許容される抽出溶媒(例えば、DMSOなど)をさらに含む組成物を提供する。もう一つの態様において、本発明は、乳剤中の揮発性麻酔薬を含む揮発性麻酔薬組成物を提供する。さらにもう一つの態様において、本発明は、リポソームまたは微小液滴中の揮発性麻酔薬を含む揮発性麻酔薬組成物を提供する。
【0010】
揮発性麻酔薬を含む組成物中の抽出溶媒の存在は、物理的特性、薬理学的性質、および/または揮発性麻酔薬の使用の容易さを改善することを含む、実質的な利点を提供しうる。抽出溶媒は揮発性麻酔薬と非共沸様式で相互作用して、揮発性麻酔薬の気化または蒸発を効果的に低減しうる。この様式で、揮発性麻酔薬組成物の貯蔵寿命、耐久性、および/または使用の容易さを改善しうる。揮発性麻酔薬組成物中の抽出溶媒の存在は、投与前の組成物の混合の容易さも改善しうる。加えて、揮発性麻酔薬の薬物動態を抽出溶媒の存在によって変更し、改善された疼痛軽減を提供しうる。例えば、いかなる理論にもしばられたくはないが、本発明者らは、抽出溶媒が特定の態様において揮発性麻酔薬の貯蔵所として機能し、揮発性麻酔薬を特定の領域により効果的に維持しうる、および/または揮発性麻酔薬を作用部位に送達するのを助けうると予想している。揮発性麻酔薬の揮発性低減は、揮発性麻酔薬組成物の取り扱いの容易さも改善しうる。さらに、抽出溶媒の存在による、組成物中の揮発性麻酔薬の気化の低減は、火災および/または医療職員による吸入のリスクの可能性に関する懸念も低減しうる。
【0011】
本発明の方法は、経口、静脈内、または吸入以外の経路による揮発性麻酔薬組成物の投与を含むことが理解される。この方法は好ましくは、慢性または急性疼痛を軽減するのに有効な量での揮発性麻酔薬組成物の被検体への、例えば、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、くも膜下腔内、または硬膜外送達などの局所または部分送達を含む。他の態様において、本発明の揮発性麻酔薬組成物を、疼痛を軽減するのに十分な量で表面投与してもよい。より具体的には、本発明者らは、特定の態様において、本発明の揮発性麻酔薬組成物をヒト被検体に表面投与して、局所疼痛の軽減を達成しうることを見いだした。本明細書において用いられる「疼痛軽減」なる語句は、麻酔、鎮痛、および/または、例えば、部分的神経伝導ブロックを介しての疼痛知覚に関連する神経インパルス阻害の結果としての疼痛軽減を含むように意図されることが理解されるべきである。特定の態様において、本発明の揮発性麻酔薬組成物を、疼痛を軽減するのに有効な量および様式で被検体の一部に送達してもよい。他の態様において、本発明の組成物を、被検体の運動機能を実質的に妨害することなく疼痛を軽減するのに有効な量および様式で被検体の一部に送達してもよい。
【0012】
本発明は、部分麻酔のために以前に用いられた方法に比べて、いくつかの実質的な利点を有する。これらの利点には下記が含まれる:(1)本発明の揮発性麻酔薬は速やかに滴定可能で、したがって本発明の揮発性麻酔薬の投与は鎮痛または部分麻酔を非常に急速に開始しうる。(2)本発明は、投与後の揮発性麻酔薬の急速な消散を可能にし;したがって麻酔または鎮痛は速やかに終止しうる。これらの性質は、医師が要望に応じて部分麻酔薬または鎮痛薬の投薬を速やかに変更するために望ましいと考えられるため、医師にとって特に価値がある。(3)部分麻酔のために現在用いられる特定の薬物は、耐性、薬物相互作用、逆説的反応などを含む様々な理由のために、様々な個人に対して有効に用いられていないことがある。加えて、(4)本発明の揮発性麻酔薬は一般に非オピオイド性化合物であり、オピオイドは耐性、薬物相互作用、および依存などを含む特定の不利益を有するため、医師にとって様々な利益を提供する。
【0013】
様々な抽出溶媒を本発明と共に用いてもよい。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルイソソルビド、エタノール、プロパノール、またはイソプロパノールは抽出溶媒でありうる。抽出溶媒は組成物の約0.1%から約75%、組成物の25%から約75%、組成物の10%から約50%、組成物の約0.1%から約25%、または組成物の約25%から約50%を構成しうる。
【0014】
本発明の一局面は、そのような疼痛軽減を必要としている被検体の疼痛を軽減する方法であって、被検体に疼痛を軽減するのに有効な量で揮発性麻酔薬組成物を部分または局所送達する段階を含む方法に関する。投与がくも膜下腔内または硬膜外である場合、組成物は脂質乳剤を含まない、または本質的に含まない。好ましい態様において、静脈内送達は、本発明から具体的に除外されることはないが、好ましい局面ではない、全身麻酔を生じる可能性があるため、揮発性麻酔薬を静脈内以外の経路で送達する。好ましい揮発性麻酔薬はハロゲン化エーテル麻酔薬である。揮発性麻酔薬組成物は好ましくは、例えば、慢性疼痛または急性疼痛を軽減するために、くも膜下腔内、硬膜外、または神経ブロック法で送達しうる。特定の態様において、揮発性麻酔薬組成物を、静脈穿刺、注射(例えば、Botox(商標))、末梢静脈カニューレ挿入、切開、除毛、入れ墨の適用および除去、マンモグラフィー、または他の手順などの手順の前に局所または表面投与してもよく;他の態様において、揮発性麻酔薬組成物を、非表面経路によって投与してもよい。特定の態様において、揮発性麻酔薬組成物を被検体に送達して、手術前に被検体を麻酔してもよい。
【0015】
揮発性麻酔薬は、イソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、およびその混合物からなる群より選択される、ハロゲン化揮発性麻酔薬でありうる。特定の態様において、イソフルランを用いる。揮発性麻酔薬組成物は、約5ng/mlから約100ng/mlの濃度の揮発性麻酔薬で調製することができる。揮発性麻酔薬は組成物中の約0.1% v/vから約15% v/v、1% v/vから約75% v/v、1% v/vから約50% v/v、5% v/vから約50% v/v、5% v/vから約75% v/v、約10% v/vから約50% v/v、または約10% v/vの揮発性麻酔薬を構成しうる。硬膜外またはくも膜下腔内に投与する場合、脊髄液中の揮発性麻酔薬約250ng/mlから約50,000ng/mlの濃度を達成することが望ましい。揮発性麻酔薬組成物の送達は、持続的、周期的、1回事象であってもよく、または揮発性麻酔薬組成物は別々の場合に被検体に周期的および持続的の両方で投与してもよい。
【0016】
疼痛の軽減は、被検体の体の一部の疼痛知覚の除去を含みうる。特定の態様において、本発明の組成物を、例えば、投薬量、量、濃度、投与の頻度、および/または投与のタイミングを変動させることにより、被検体の運動機能を実質的に妨害することなく疼痛を軽減するのに有効な量および様式で被検体の一部に送達してもよい。
【0017】
好ましくは、本発明の組成物は経口、静脈内、または吸入以外の経路による投与が意図されるため、揮発性麻酔薬を含む組成物は無菌である。これは、すべての出発原料が無菌であることを保証し、投与前にそれらを無菌条件下に維持することによって達成しうる。
【0018】
本明細書において議論する任意の態様は、本発明の任意の方法または組成物に関して実行しうることが企図され、逆もまた同じである。さらに、本明細書に記載の本発明の任意の組成物を用いて、本明細書に記載の本発明の任意の方法を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明を例示するために、本発明の特定の態様を図面に示す。しかし、本発明は図面に示された態様の正確な配置および手段に限定されることはない。
【図1】図1は、揮発性麻酔薬を被検体に送達するための組成物の一般的調製法を表す流れ図を示す。
【図2】図2は、ホットプレート試験を用いて評価した、イソフルラン溶液のくも膜下腔内投与による疼痛の阻害を調べる実験例の結果を示す。
【図3】図3は、人工脳脊髄液(ACSF)および/またはDMSO中のくも膜下腔内イソフルランを用いた疼痛の阻害を調べる実験例の結果を示す。イソフルラン1.46mgの用量での、イソフルラン-ACSFおよびイソフルラン-DMSO/ACSFの時間経過を示す。
【図4】図4は、イソフルラン-ACSFのくも膜下腔内注射後10分の時点の、用量に対する最大推定効果(MPE)の刺激反応(SR)を評価する実験例の結果を示す。
【図5】図5は、イソフルランの皮下投与による疼痛の阻害を調べる実験例の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
全身麻酔薬として用いる化合物は、少なくとも部分的には、意識の消失を生じることにより疼痛を軽減するが、局所麻酔薬は被検体の局所的領域または部分における感覚の消失または知覚遮断を生じることにより疼痛を軽減する。局所麻酔薬が疼痛を軽減するメカニズムは、明確に解明されていないが、一般には神経インパルスの開始および/または伝達を、主としてナトリウムチャネル遮断を介して妨害する能力に関与すると考えられる。特定の態様において、本発明は、被検体の意識消失を引き起こすことなく、被検体の疼痛を軽減または除去するために用いうる。他の態様において、本発明は、被検体の運動機能を実質的に妨害することなく、被検体の疼痛を軽減または除去するために用いうる。
【0021】
本発明は、疼痛軽減を必要としているヒトもしくは動物患者またはマウスもしくはラットなどの実験動物などの被検体において揮発性麻酔薬を投与し、疼痛を軽減するための、改善された揮発性麻酔薬組成物および方法を提供する。特定の態様において、本発明は、水性溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を含む組成物であって、溶液が薬学的に許容される抽出溶媒、例えば、DMSOであるが、それに限定されるわけではない溶媒をさらに含む組成物を提供する。特定の態様において、本発明は、水性溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を含む組成物であって、溶液が薬学的に許容される抽出溶媒、例えば、DMSOであるが、それに限定されるわけではない溶媒を含み、かつ溶液が乳剤の成分である組成物を提供する。特定の追加の態様において、本発明は、水性溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を含む組成物であって、溶液が薬学的に許容される抽出溶媒、例えば、DMSOであるが、それに限定されるわけではない溶媒を含み、かつ溶液がリポソームの成分である組成物を提供する。さらに他の態様において、本発明は、水性溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を含む組成物を提供する。特定の態様において、本発明は、水性溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を含む組成物であって、溶液が乳剤の成分である組成物を提供する。追加の態様において、本発明は、水性溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を含む組成物であって、溶液がリポソームの成分である組成物を提供する。
【0022】
揮発性麻酔薬を含む組成物中の抽出溶媒の存在は、物理的特性、薬理学的性質、および/または揮発性麻酔薬組成物の使用の容易さを改善することを含む、実質的な利点を提供しうる。抽出溶媒は揮発性麻酔薬(例えば、イソフルラン)と非共沸様式で相互作用して、揮発性麻酔薬の気化または蒸発を効果的に低減しうる。この様式で、揮発性麻酔薬組成物の貯蔵寿命、耐久性、および/または使用の容易さを改善しうる。揮発性麻酔薬組成物中の抽出溶媒の存在は、投与前の組成物の混合の容易さも改善しうる。加えて、揮発性麻酔薬の薬物動態を抽出溶媒の存在によって変更し、改善された疼痛軽減を提供しうる。例えば、いかなる理論にもしばられたくはないが、本発明者らは、抽出溶媒が特定の態様において揮発性麻酔薬の貯蔵所として機能し、揮発性麻酔薬を特定の領域により効果的に維持しうる、および/または揮発性麻酔薬を作用部位に送達するのを助けうると予想している。同様に、揮発性麻酔薬溶液が乳剤またはリポソームの成分である特定の態様において、乳剤またはリポソームは揮発性麻酔薬の貯蔵所として機能し、揮発性麻酔薬を特定の領域により効果的に保持しうる、および/または揮発性麻酔薬を作用部位に送達するのを助けうる。溶液中の揮発性麻酔薬の揮発性低減は、揮発性麻酔薬組成物の取り扱いの容易さも改善しうる。さらに、抽出溶媒の存在による、溶液中の揮発性麻酔薬の気化の低減は、火災および/または医療職員による吸入のリスクの可能性に関する前述の懸念も低減しうる。
【0023】
本発明の一局面は、それを必要としている被検体の疼痛を軽減する方法であって、疼痛を軽減するのに有効な量で抽出溶媒を含む溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を、経口、静脈内または吸入以外の経路で被検体に部分または局所送達する段階を含む方法に関する。好ましい態様において、静脈内送達は、本発明から具体的に除外されることはないが、好ましい局面ではない、全身麻酔を生じる可能性があるため、揮発性麻酔薬は静脈内以外の経路で送達する。好ましい揮発性麻酔薬は、水性の薬学的に許容される溶液中に溶解したハロゲン化エーテル麻酔薬である。特定の態様において、揮発性麻酔薬は乳剤またはリポソームの成分でありうる。
【0024】
本発明は、揮発性麻酔薬の被検体への経口、静脈内、または揮発性麻酔薬蒸気だけの吸入による投与を含まないことが理解される。この方法は好ましくは、慢性または急性疼痛を軽減するのに有効な量での、いくつかの態様において乳剤またはリポソームの成分でありうる、水性溶液中の揮発性麻酔薬の被検体への、例えば、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、神経周囲浸潤、くも膜下腔内または硬膜外送達などの局所または部分送達を含む。他の態様において、本発明の組成物を、疼痛を軽減するのに十分な量で表面投与してもよい。特定の態様において、揮発性麻酔薬を被検体に送達して、手術または他の医学的手順の前に被検体を麻酔してもよい。特定の態様において、本発明の組成物を、疼痛を軽減するのに有効な量および様式で被検体の一部に送達してもよい。他の態様において、本発明の組成物を、被検体の運動機能を実質的に妨害することなく疼痛を軽減するのに有効な量および様式で被検体の一部に、経口、静脈内または吸入以外の経路で送達してもよい。
【0025】
本発明は、部分麻酔のために以前に用いられた方法に比べて、いくつかの実質的な利点を有する。これらの利点には下記が含まれる:(1)本発明の揮発性麻酔薬は速やかに滴定可能で、したがって本発明の揮発性麻酔薬の投与は鎮痛または部分麻酔を非常に急速に開始しうる。(2)本発明は、投与後の揮発性麻酔薬の急速な消散を可能にし;したがって麻酔または鎮痛は速やかに終止しうる。これらの性質は、医師が要望に応じて部分麻酔薬または鎮痛薬の投薬を速やかに変更するために望ましいと考えられるため、医師にとって特に価値がある。(3)部分麻酔のために現在用いられる特定の薬物は、耐性、薬物相互作用、逆説的反応などを含む様々な理由のために、様々な個人に対して有効に用いられていないことがある。加えて、(4)本発明の揮発性麻酔薬は一般に非オピオイド性化合物であり、オピオイドは呼吸抑制、心因そう痒、耽溺、耐性、薬物相互作用、および依存などを含む特定の不利益を有するため、医師にとって様々な利益を提供する。
【0026】
特定の態様において、溶液中の揮発性麻酔薬を送達して、手術または他の医学的手順の前に被検体の一部を麻酔する。揮発性麻酔薬は、イソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノンおよびその混合物からなる群より選択される、ハロゲン化揮発性麻酔薬でありうる。これらの薬剤の多くはラセミ混合物である。いくつかの態様において、ラセミ混合物を用いることができる。他の態様において、薬剤のd-異性体またはl-異性体だけを用いることができる(例えば、米国特許第5,114,715号、第5,114,714号および第5,283,372号参照)。特定の態様において、イソフルランを用いる。イソフルラン溶液などの溶液は、約5ng/ml溶液から約100ng/ml溶液の濃度で調製することができる。溶液は溶液中に約1% v/vから約99% v/v、約5% v/vから約50% v/v、または約10% v/vの揮発性麻酔薬を含みうる。揮発性麻酔薬はイソフルランであってもよく、かつ/または溶液は水、食塩水もしくは人工脳脊髄液でありうる。特定の態様において、溶液は乳剤の成分であってもよく、乳剤は抽出溶媒をさらに含みうる。別の態様において、溶液は、抽出溶媒をさらに含み得る、リポソームの成分であってもよい。硬膜外またはくも膜下腔内に投与する場合、脊髄液中の活性薬剤約250ng/mlから約50,000ng/mlの濃度を達成することが望ましい。揮発性麻酔薬組成物の送達は、持続的、周期的、1回事象であってもよく、または揮発性麻酔薬組成物は別々の場合に被検体に周期的および持続的の両方で投与してもよい。疼痛の軽減は、被検体の体の一部の疼痛知覚の軽減または除去を含みうる。疼痛の軽減は、被検体の体の一部の疼痛感覚の軽減または除去を含みうる。疼痛の軽減または除去は運動機能を実質的に妨害することなく達成しうる。
【0027】
いくつかの態様において、本発明の組成物を、例えば、投薬量、量、濃度、投与の頻度、および/または投与のタイミングを変動させることにより、被検体の運動機能を実質的に妨害することなく疼痛を軽減するのに有効な量および様式で被検体の一部に、経口、静脈内または吸入以外の経路で送達してもよい。運動機能を評価するために有用な試験には、例えば、ミネソタ操作速度(Minnesota Rate of Manipulation:MRM)試験(Fleishman, 1964, Abilities and motor skill. In: The structure and measurement of physical fitness Prentice-Hall, Inc.: Englewood Cliffs, N.J, 1964, pp. 23-24)、上肢機能試験(Upper Extremity Function Test:UEFT)(Carroll, 1965, J Chron Dis 18: 479-491)、パデューペグボード(Purdue Pegboard)試験(Tiffin et al., 1948, J Appl Psychol 32: 234-247)、手機能のジェブセン(Jebsen)試験(Jebsen et al., 1969, Arch Phys Med Rehab 50: 311-319)、9ホールペグ(Nine-Hole Peg)試験(Kellor et al., 1971, Am J Occup Ther 25: 77-83)、スミス(Smith)手機能評価(Smith, 1973, Am J Occup Ther 27: 244-251)、ボックスおよびブロック試験(Box and Block Test:BBT)(Holser et al., 1960, Box and Block test. In: Cromwell FS (ed) Occupational therapists manual for basic skills assessment: primary prevocational evaluation Fair Oaks Printing Company: Pasadena, California, pp. 29-31)、手技能の理学的能力評価(Physical Capacities Evaluation of Hand Skill:PCE)(Bell et al., 1976, Am J Occup Ther 30: 80-86)、行動研究部門(Action Research Arm:ARA)試験(Lyle, 1981, Int J Rehabil Res 4: 483-492)、ソラーマン(Sollerman)手機能試験(Sollerman et al., 1995, Scand J Plast Reconstr Surg Hand Surg 29: 167-176)、下肢運動協調試験(Lower Extremity Motor Coordination Test:LEMOCOT)(Desrosiers et al., 2005, Arch Phys Med Rehabil 86, 993-98)、ファグル-マイヤー評価(Fugl-Meyer Assessment)(Fugl-Meyer et al., 1975, Scand J Rehabil Med 7:13-31)、バーグバランス尺度(Berg Balance Scale)(Berg et al., 1995, Scand J Rehabil Med 27:27-36; Berg et al., 1989, Physiother Can 41:304-11, Berg et al, 1992, Arch Phys Med Rehabil 73:1073-80; Stevenson et al., 1996, Arch Phys Med Rehabil 77:656-62)、5メートル歩行試験(5MWT)(Salbach et al., 2001, Arch Phys Med Rehabil 82:1204-12)、2分歩行試験(Wade, 1992, Measurement in neurological rehabilitation. New York: Oxford Univ Pr; Guyatt et al., 1984, Thorax 39:818-22)、および機能自律性評価システム(Functional Autonomy Measurement System)(Hebert, 1988, Age Ageing 17:293-302)が含まれるが、それらに限定されるわけではなく、これらの参照文献はすべてその全体が本明細書に組み入れられる。被検体の運動機能は、被検体の運動機能を本発明の組成物送達後に測定して、比較値の少なくとも約40%、好ましくは比較値の少なくとも約60%、より好ましくは比較値の少なくとも約75%、さらにより好ましくは比較値の約90%であれば、実質的に妨害されない。有用な比較値には、本発明の組成物投与前に被検体の運動機能を測定することにより得た値、未治療であるが、それ以外は同様の状況にある被検体の運動機能を測定することにより得た値、未治療対照被検体の運動機能を測定することにより得た値、または経時(historical)ノルムもしくは平均から公知もしくは誘導される値が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0028】
好ましくは、溶液は経口、静脈内または吸入以外の経路による投与が意図されるため、揮発性麻酔薬を含む水性溶液は無菌である。これは、すべての出発原料が無菌であることを保証し、投与前にそれらを無菌条件下に維持することによって達成しうる。これは、他の型の注入液で行われている抗菌フィルターの組込みによっても達成しうる(例えば、米国特許第5,695,490号参照)。基本の水性溶液については、溶液の性質が非常に重要であるとは考えられず、生理食塩水などの溶液または人工脳脊髄液などの自然の体液を模倣するよう調合した溶液が企図される。
【0029】
本発明のさらにもう一つの局面は、本発明の揮発性麻酔薬溶液を含む密封容器を含む。容器の内部は無菌であってもよい。容器は注射針で容易に突き通すことができるゴム栓を含んでいてもよい。容器はシリンジのチャンバー部分を含んでいてもよい。容器はドリップチャンバーを含んでいてもよい。ドリップチャンバーはカテーテルに連結されていてもよい。カテーテルは硬膜外カテーテルまたはくも膜下腔内カテーテルであってもよい。容器はシリンジ、プラスティック袋、折りたたみ式プラスティック袋、ガラス瓶、ガラスアンプル、またはプラスティック瓶でありうる。容器は注入ポンプに連結されていてもよい。注入ポンプはくも膜下腔内ポンプ、硬膜外送達注入ポンプ、または患者自己管理鎮痛(PCA)ポンプであってもよい。注入ポンプはプログラム可能であってもよい。
【0030】
本発明は、水性溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を含む改善された揮発性麻酔薬組成物であって、溶液が薬学的に許容される抽出溶媒をさらに含む組成物を提供することにより、当技術分野における制限を克服する。抽出溶媒の存在は、溶液から放出される揮発性麻酔薬蒸気の低減(例えば、蒸気の引火性および/または医療職員による吸入に関連するリスクの低減)、組成物の貯蔵寿命もしくは耐久性の改善、および/または揮発性麻酔薬組成物の薬物動態の改善を含む、揮発性麻酔薬組成物の特定の利点を提供しうる。例えば、抽出溶媒は揮発性麻酔薬(例えば、イソフルラン)と非共沸様式で相互作用して、揮発性麻酔薬の気化または蒸発を効果的に低減しうる。この様式で、溶液中の揮発性麻酔薬の貯蔵寿命および/または耐久性を改善しうる。加えて、揮発性麻酔薬の薬物動態を変更し、改善された疼痛軽減を提供しうる。例えば、いかなる理論にもしばられたくはないが、本発明者らは、抽出溶媒が特定の態様において揮発性麻酔薬の貯蔵所として機能し、揮発性麻酔薬を特定の領域により効果的に維持しうる、および/または揮発性麻酔薬を作用部位に送達するのを助けうると予想している。
【0031】
本発明は、それを必要としている被検体の疼痛を軽減するための、そのような揮発性麻酔薬組成物の使用法も提供する。具体的には、揮発性麻酔薬は全身麻酔を生じるために吸入によって送達されてきたが、本発明者らは本発明の揮発性麻酔薬を溶液に溶解して部分または局所(例えば、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、神経周囲、くも膜下腔内、硬膜外、または神経ブロックなど)送達し、疼痛を軽減もしくは阻害または疼痛知覚をブロックもしくは阻害しうることを見いだした。さらに、例えば、溶液中の揮発性麻酔薬、または揮発性麻酔薬乳剤の投薬量、量、濃度、投与の頻度、および/または投与のタイミングを変動させることにより、同時に被検体の運動機能を実質的に妨害することなく疼痛の軽減を達成することができる。一般に、この方法は、特定の態様において溶液、乳剤、またはリポソームの成分であってもよく、揮発性麻酔薬の疼痛を軽減するのに有効な量での被検体への送達を含みうる。本発明は、慢性または急性疼痛の疼痛管理のために用いてもよい。他の態様において、揮発性麻酔薬を被検体に送達して、手術または他の医学的手順の前に被検体の少なくとも一部を麻酔してもよい。
【0032】
抽出溶媒
本発明の揮発性麻酔薬組成物は、揮発性麻酔薬との組み合わせで、抽出溶媒などの溶媒を含んでいてもよい。本明細書において用いられる「抽出溶媒」なる語句は、本発明の組成物中の揮発性麻酔薬と相互作用して、麻酔薬と化学反応することなく揮発性麻酔薬の揮発性を低減しうる溶媒を意味する。特定の抽出溶媒は揮発性麻酔薬と非共沸様式で相互作用するが;それにもかかわらず、本明細書において用いられる「抽出溶媒」なる用語は、溶液からの揮発性麻酔薬の蒸気圧または蒸発が低減するかぎり、揮発性麻酔薬と相互作用して共沸または偽共沸溶液を生成する特定の化合物を含みうる。以下に記載するとおり、様々な抽出溶媒、例えば、DMSO、NMPなどが本発明と共に用いるために構想される。抽出溶媒の正確な濃度は経験的に決定してもよく、用いる具体的な揮発性麻酔薬に応じて変動しうる。特定の態様において、抽出溶媒は組成物中に、組成物中の揮発性麻酔薬の揮発性を低減するのに有効な量で存在することになる。投与したときにほとんど、またはまったく毒性を生じない抽出溶媒の濃度を選択するためにも、特定の注意を払うべきである。特定の抽出溶媒は様々な分離法(例えば、抽出蒸留)において用いうる性質を示しうるが、本発明の態様に従っての抽出溶媒は好ましくは、揮発性麻酔薬を「抽出する」よりもむしろ、その揮発性を低減するために、揮発性麻酔薬を含む薬理学的混合物または溶液中に含まれることが理解されよう。
【0033】
麻酔薬組成物中の抽出溶媒の含有は、投与前に溶液を混合しうる容易さを高めうる。例えば、特定の態様において、抽出溶媒が揮発性麻酔薬組成物中に含まれる場合、投与前の麻酔薬溶液の超音波処理は必要ない。この利点は、手術室などの超音波処理器の存在が騒々しい、または気を散らしうる状況(例えば、慢性投与)において特に有用でありえ、また超音波処理器の騒音の除去は揮発性麻酔薬組成物を、例えば、疼痛軽減のために慢性的または間欠的に投与されている、意識のある患者のために改善された環境を作ることもできる。超音波処理器、または他の類似の装置の必要性をなくすことは、本発明の揮発性麻酔薬組成物の投与に関連するコストを低減するためにも特に有用でありうる。超音波処理器の存在に関連する嵩の低減は患者の可動性を有利に改善することができる。例えば、患者が鎮痛のためにポンプを介して麻酔薬組成物の繰り返し投与を受ける場合、装置の量を減らすことで、患者がさらに超音波処理器を動かす必要がないため、可動性を改善することができる。
【0034】
抽出溶媒は当技術分野において公知で、主成分の蒸気圧を阻止し、それによりそのような溶媒がなければまったく起こらないであろう効率的分離を可能にすることにより、類似の沸点を有する化合物を分離するための抽出蒸留において典型的に用いられる。例えば、米国特許第5,230,778号は、ジメチルホルムアミドなどの抽出溶媒を用いての抽出蒸留によるイソフルランの精製を記載している。米国特許第5,336,429号は、イソフルランおよび低級アルコールまたはエステルを含む、電子部品の清浄用、および金属の脱脂用の溶媒を記載しているが、これらの組成物は実質的に一定の沸点を有する共沸混合物として記載されている。これに対して、本発明は、例えば、鎮痛および/または部分麻酔を導入するための薬学的製剤を提供する。米国特許第5,230,778号に記載のアセトンなどの、当技術分野において公知の特定の抽出溶媒は、それらが高濃度で薬学的製剤中に含まれるのを制限するのに十分毒性でありうる。
【0035】
特定の態様において、抽出溶媒は麻酔薬と共沸混合物として相互作用し、麻酔薬の揮発性を低減しうる。例えば、米国特許第5,230,778号に記載のとおり、エタノールは揮発性麻酔薬と共沸様式で相互作用しうる。
【0036】
様々な濃度の抽出溶媒を本発明と共に用いうる。例えば、揮発性麻酔薬を含む本発明の組成物は約0.1%〜99%、0.1%〜60%、5%〜50%、10%〜40%、5%〜25%、10%〜30%、10%〜25%、25%〜50%、10%〜75%、25%〜75%、10%〜65%、25%〜65%、10%〜60%、25%〜60%、0.1%、1%、5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%またはその中で導きだせる任意の範囲の抽出溶媒を含んでいてもよい。
【0037】
特定の態様において、抽出溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。他の態様において、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルイソソルビドなどの抽出溶媒を用いてもよい。アセトンを用いる場合、生じうる任意の毒性を最小限にするために、適切な用量を選ぶよう注意すべきである。
【0038】
様々な態様において、エタノール、プロパノール、またはイソプロパノールなどの医学的に許容されるアルコールを用いうることが構想される。これらの態様において、用いるアルコールの濃度は、神経近傍への溶液の注射が原因で神経細胞死がほとんど、またはまったく起こらないように、溶液中で十分に希薄である。
【0039】
本発明の揮発性麻酔薬組成物中に単一の抽出溶媒または複数の抽出溶媒が存在してもよい。例えば、特定の態様において、揮発性麻酔薬を含む組成物中に単一の抽出溶媒(例えば、DMSまたはNMP)だけが存在する。他の態様において、揮発性麻酔薬を含む組成物中に2、3、4、またはそれ以上の抽出溶媒が存在してもよい。特定の態様において、本発明の揮発性麻酔薬組成物中に単一の揮発性麻酔薬(例えば、イソフルラン)だけが存在し;他の態様において、本発明の揮発性麻酔薬組成物中に2、3、4、またはそれ以上の揮発性麻酔薬が存在してもよい。
【0040】
N-メチルピロリドン
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)は、本発明の揮発性麻酔薬組成物中に含まれうる溶媒である。NMPは5員ラクタム構造を有する化合物である。水ならびに酢酸エチル、クロロホルム、ベンゼンおよび低級アルコールまたはケトンを含む溶媒と混和性の澄明またはわずかに黄色の液体である。NMPは化学名1-メチル-2-ピロリドンまたはN-メチル-2-ピロリジノンおよびm-ピロールとも呼ばれる。NMPは双極性非プロトン性溶媒のクラスに属し、このクラスにはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドも含まれる。その良好な溶解性により、NMPは、特にポリマーの分野で、広範な化学物質を溶解するために用いられてきた。NMPはまた、織物、樹脂および金属コーティングされたプラスティックの表面処理用の溶媒として、または塗料剥離剤としても用いられる。
【0041】
NMPは特定の薬学的製剤において難溶性薬剤の溶解性を改善するために、薬剤産業において用いられてきた。例えば、NMPは獣医学において様々な薬物と共に用いられてきた。NMPの使用による薬物溶解性の改善、ならびにヒト用の表面および経皮薬学的製品におけるその適用性を主張する、いくつかの特許が発行されている。
【0042】
NMPは相対的に非毒性であるため、溶媒としての本発明との使用に特に適している。NMPは好ましい毒性を有し、それにより様々な表面、経皮および非経口剤形における使用の適当な候補となっている。NMPはInternational Specialty Products(ISP; New Jersey, USA)から市販されている商標PharmasolveとしてのN-メチル-2-ピロリドンのGMP等級で入手可能である。
【0043】
DMSO
ジメチルスルホキシド(DMSO)は本発明の特定の態様において溶媒として用いられる。DMSOは式(CH3)2SOを有する。DMSOは、極性および非極性化合物の両方を溶解し、広範な有機溶媒ならびに水に混和性の、極性非プロトン性溶媒である。
【0044】
DMSOは相対的に非毒性の化合物であり、そのため溶媒としての本発明との使用に特に適している。DMSOは相対的に毒性がないことが十分に確立されており、医学目的でDMSOを使用する可能性がOregon Medical SchoolチームのStanley Jacobによって確立され、彼らはDMSOが皮膚および他の膜を損傷することなく透過し、他の化合物を生体系へ運びうることを見いだした。DMSOは凍結保護物質として、および抗炎症剤としても用いられている。ジメチルスルホキシドは、炭水化物、ポリマー、ペプチドを含む様々な有機物質、ならびに多くの無機塩およびガスを溶解する。
【0045】
様々な態様において、揮発性麻酔薬を含む組成物中の、例えば、約0.1%から約10%という低濃度のDMSOは、投与前に組成物を超音波処理する必要をなくすのに十分であり得る。揮発性麻酔薬を含む組成物中の、例えば、約10%から約75%以上の高濃度のDMSOは、鎮痛または麻酔効果の持続期間の延長を可能にするような様式で、揮発性麻酔薬の薬物動態を変更するのに十分であり得る。
【0046】
揮発性麻酔薬
一般に、記載の組成物および方法と共に用いるのに適したハロゲン化エーテル麻酔薬または揮発性麻酔薬には、室温では液体であることが多いが、容易にガス状となることができるか、または室温ですでに気体状であり、著しい副作用なしに疼痛を軽減しうる薬剤が含まれる。例えば、体によって最小限に代謝されるか、またはそうではなく不活性である薬剤を選択することが望ましいと考えられる。この様式で、肝および腎毒性を最小限に抑えうる。同様に、揮発性麻酔薬は短い半減期を有するか、または滴定を容易にする(すなわち、被検体が経験している疼痛の量に対する送達量を容易に調節することができる)ために作用が迅速であることも望ましいと考えられる。耐性(オピオイドとは異なり)または依存性(オピオイドのように)を生じない活性薬剤ガスも望ましいと考えられる。
【0047】
本発明の組成物および方法において有用な揮発性麻酔薬には、ハロゲン化エーテル化合物、イソフルラン、セボフルラン、ハロタン、エンフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、およびジエチルエーテルが含まれる。特定の態様において、キセノンを本発明と共に用いてもよい。単一の薬剤または薬剤の混合物が本明細書に記載の方法と共に用いるのに特に有用でありうる。
【0048】
様々な態様において、ガス状揮発性麻酔薬を本発明と共に用いてもよい。例えば、ガス状揮発性麻酔薬を本発明の溶液に溶解し、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、硬膜外、くも膜下腔内、または神経ブロック法などの、部分または局所麻酔法において投与してもよい。ハロゲン化麻酔薬以外のガス状揮発性麻酔薬が企図され、例にはキセノン、笑気、シクロプロパン、およびエーテルが含まれ、これらはすべて、様々な態様において、ラセミ混合物の形、またはd-異性体もしくはl-異性体の形で用いることができる。様々な態様において、本発明に従い、他の生物活性ガス(例えば、酸化窒素など)を溶液中で被検体に送達してもよい。
【0049】
複数の揮発性麻酔薬を一度に投与してもよく、異なる揮発性麻酔薬を1回の治療周期を通して様々な時点で投与してもよい。例えば、2、3、4またはそれ以上の揮発性麻酔薬を被検体に同時に、または繰り返し投与してもよい。化合物を被検体に繰り返し投与する場合、化合物の投与間の期間は約1〜60秒、1〜60分、1〜24時間、1〜7日間、1〜6週間もしくはそれ以上、またはその中で導きだせる任意の範囲でありうる。いくつかの場合において、異なる揮発性麻酔薬の送達をそれらの物理的および生理的性質に応じて段階的に行うことが望ましいと考えられる。特定の臨床上のシナリオにおいて、急性疼痛を治療するには作用が短い薬剤が望ましいこともあるが、慢性疼痛への適用には長期持続薬剤がより適していると考えられる。
【0050】
特定の態様において、本発明の揮発性麻酔薬は、ダイズ油乳剤などの脂質乳剤を含むが、それに限定されるわけではない、油中水または水中油乳剤などの乳剤の成分である。例えば、抽出溶媒を含む溶液に溶解した揮発性麻酔薬を含む組成物は、脂質乳剤または水中油乳剤も含んでいてもよい。様々な態様において、本発明の乳剤は溶液に溶解した揮発性麻酔薬を含む水性溶液を含んでいてもよく、溶液は抽出溶媒をさらに含んでいてもよい。揮発性麻酔薬組成物中の、例えば、脂質乳剤などの油中水または水中油乳剤の包含を用いて、例えば、揮発性麻酔薬組成物の安定性に好ましい影響をおよぼしてもよく、かつ/または揮発性麻酔薬の薬物動態を好ましく変更してもよい。例えば、脂質組成物、脂質乳剤、油中水乳剤、および/または水中油乳剤は、本発明の揮発性麻酔薬組成物のくも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、または皮下送達のために有用でありうる。イソフルランの特定の乳剤が以前に静脈内(da Sila Telles Mathias L, et al., 2004, Rev. Bras. Anaestesiol Campianas 54(5), 2004)または硬膜外投与(Chai et al. 2008, British J Anesthesia 100:109-115; Chai et al. Anesthesiology 105: A743, 2006)のため、いずれも麻酔導入用に調製されている。
【0051】
特定の態様において、本発明の乳剤は揮発性麻酔および水を含み、乳化剤をさらに含んでいてもよい。本発明の乳剤は、平均液滴サイズが乳剤のものよりも小さい乳剤であるナノ乳剤も含むが、それらに限定されるわけではない。ナノ乳剤はマイクロ乳剤およびサブマイクロ乳剤と呼ばれることもある。しばしば、ナノ乳剤の物理的外観は、乳剤のしばしば乳状の外観ではなく、その平均液滴サイズが小さいためにむしろ透明である。
【0052】
乳剤
当業者には理解されるであろうとおり、乳剤は2以上の不混和性の液体からなり(すなわち、複数の相を含み)、乳剤は1つ、または本質的に1つの相を含む溶液とは異なる。液体の一方(分散相)が他方(連続相)に分散している。乳剤の1つの型において、連続液体層が水の液滴を取り囲む(例えば、油中水乳剤)。乳剤のもう1つの型において、油が連続水相内に分散している(例えば、水中油乳剤)。同様に、乳化は乳剤を調製する工程である。
【0053】
特定の態様において、本発明の揮発性麻酔薬は、ダイズ油乳剤などの脂質乳剤を含むが、それに限定されるわけではない、油中水または水中油乳剤などの乳剤の成分である。例えば、抽出溶媒を含む溶液に溶解した揮発性麻酔薬を含む組成物は、脂質乳剤または水中油乳剤も含んでいてもよい。様々な態様において、本発明の乳剤は溶液に溶解した揮発性麻酔薬を含む水性溶液を含んでいてもよく、溶液は抽出溶媒をさらに含んでいてもよい。揮発性麻酔薬組成物中の、例えば、脂質乳剤などの油中水または水中油乳剤の包含を用いて、例えば、揮発性麻酔薬組成物の安定性に好ましい影響をおよぼしてもよく、かつ/または揮発性麻酔薬の薬物動態を好ましく変更してもよい。例えば、脂質組成物、脂質乳剤、油中水乳剤、および/または水中油乳剤は、本発明の揮発性麻酔薬組成物のくも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、または皮下送達のために有用でありうる。イソフルランの特定の乳剤が以前に静脈内(da Sila Telles Mathias L, et al., 2004, Rev. Bras. Anaestesiol Campianas 54(5), 2004)または硬膜外投与(Chai et al. 2008, British J Anesthesia 100:109-115; Chai et al. Anesthesiology 105: A743, 2006)のため、いずれも麻酔導入用に調製されている。
【0054】
特定の態様において、本発明の乳剤は揮発性麻酔および水を含み、乳化剤をさらに含んでいてもよい。本発明の乳剤は、平均液滴サイズが乳剤のものよりも小さい乳剤であるナノ乳剤も含むが、それらに限定されるわけではない。ナノ乳剤はマイクロ乳剤およびサブマイクロ乳剤と呼ばれることもある。しばしば、ナノ乳剤の物理的外観は、乳剤のしばしば乳状の外観ではなく、その平均液滴サイズが小さいためにむしろ透明である。
【0055】
特定の態様において、本発明の乳剤は脂質成分を有することができる。様々な態様において、脂質成分は乳剤の約1% v/vから99% v/v、約5% v/vから約75% v/v、約10% v/vから約60% v/v、約20% v/vから約50% v/v、または約30% v/vから約40% v/vの範囲の量を構成することができる。様々な態様において、乳剤の脂質成分はダイズ油、長鎖トリグリセリド、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、ハッカ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、硬化ダイズ油、硬化植物油、中鎖トリグリセリドヤシ油、パーム核油および誘導体、中鎖(C8/C10)モノおよびジグリセリド、d-アルファ-トコフェロール、ダイズ脂肪酸、またはその組み合わせでありうる。特定の態様において、乳剤の脂質成分はダイズ油である。本発明の揮発性麻酔薬組成物を生成するために有用でありうる市販の脂質組成物には、イントラリピッド(Intralipid)(登録商標)、Liposyn(登録商標)、およびNutrilipid(登録商標)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0056】
他の態様において、乳剤は乳化剤をさらに含む。乳化剤は乳剤を安定化する物質である。乳化剤はエマルジェント(emulgent)としても公知かもしれない。乳化剤は界面活性剤であってもよい。様々な態様において、乳化剤は卵リン脂質、精製卵リン脂質、ポリオキシル35ヒマシ油(Cremophor EL)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油(Cremophor RH 40)、ポリオキシル60硬化ヒマシ油(Cremophor RH 60)、ポリソルベート20、ポリソルベート80、コハク酸d-アルファ-トコフェリルポリエチレングリコール1000、Solutol HS-15、プロピレングリコールまたはその組み合わせでありうる。様々な濃度の乳化剤を本発明と共に用いてもよい。例えば、揮発性麻酔薬を含む本発明の組成物は約0.1%〜99%、0.1%〜60%、5%〜50%、10%〜40%、5%〜25%、10%〜30%、10%〜25%、25%〜50%、10%〜75%、25%〜75%、10%〜65%、25%〜65%、10%〜60%、25%〜60%、0.1%、1%、5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%またはその中で導きだせる任意の範囲の乳化剤を含んでいてもよい。
【0057】
他の態様において、本発明の乳剤はパーフルオロカーボン成分を有する。様々な態様において、パーフルオロカーボン成分は乳剤の約0.1% v/vから99% v/v、約5% v/vから約75% v/v、約10% v/vから約60% v/v、約20% v/vから約50% v/v、または約30% v/vから約40% v/vの範囲の量を構成することができる。様々な態様において、パーフルオロカーボンはその限られた毒性および大量のガスを捕捉する能力ゆえに、さらなる利点を提供しうる。一つの態様において、本発明の乳剤は揮発性麻酔薬、パーフルオロカーボン、水および乳化剤を含む。パーフルオロカーボン、具体的にはパーフルオロ-n-オクタンは、網膜剥離の症例において、房水の代わりに眼内に点眼することにより、臨床において用いられてきた(Chang, 1992、S. Intl Ophthalmol Clinic 32:153-163参照)。
【0058】
リポソームおよび微小液滴
様々な態様において、本発明の揮発性麻酔薬はリポソーム懸濁液の成分でありうる。リポソーム(例えば、マルチラメラ、ユニラメラ、および/または多小胞リポソーム)は、リン脂質の1つまたは複数の層を含む壁および哺乳動物の細胞膜をなすものと物理的および/または化学的性質が類似の分子を有する、顕微鏡的、球状、液体充填構造である。非限定例として、リポソームはコレステロール、ステアリルアミン、もしくはホスファチジルコリンなどの様々な天然の膜成分から(例えば、米国特許第5,120,561号および第6,007,838号を参照されたく、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる)、またはDOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)のような純粋な界面活性剤成分で形成することができる。リポソームは、水性もしくは脂質区画のいずれか、または両方にペイロードとして広範な材料を組み込むために調合することができる。一般に、親油性活性物質は二重層に溶解し、両親媒性物質はリン脂質膜に結合し、親水性物質は封入された水性体積中の溶液となる(Artmann et al., 1990, Drug Res. 40 (II) Nr. 12 pp. 1363-1365;その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0059】
非毒性で産業界において入手可能な、薬物担体として、または表面使用のために有用なリポソーム(Gehring et al., 1990, Drug Res. 40 (II) Nr. 12, pp. 1368-1371;その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。リポソームはアジドチミジン(AZT)の抗腫瘍および抗ウイルス誘導体のような親油性薬物のための担体として用いられてきた(Kamps, et al., 1996, Biochim. Biophys. Acta. 1278:183-190)。インスリンもリポソームを介して送達されてきた(Muramatsu et al., 1999, Drug Dev. Ind. Pharm. 25:1099-1105)。薬物担体としての医学的使用のために、リポソームは注射することもでき、脂質で改変されている場合、それらの表面はより親水性となり、したがってそれらが残存する能力は高まりうる。ポリエチレングリコールにより改変したリポソームが、ドキソルビシンのような親水性(水溶性)抗癌剤のための担体として用いられてきた。ミトキサントロンおよびその他のリポソーム誘導体は、それらを外来の侵入者として認識する食細胞に蓄積する傾向があるため、免疫系の食細胞に影響をおよぼす疾患を治療する際に特に有効である(Rentsch et al., 1997, Br. J. Cancer 75:986-992)。リポソームは、欠陥遺伝子によって引き起こされる疾患を治療するために、正常な遺伝子を細胞内に運ぶためにも用いられてきた(Guo et al., 2000, Biosci. Rep. 20:419-432)。リポソームは可変性の組成ゆえに汎用性があるため、ワクチン、タンパク質、ヌクレオチド、プラスミド、薬物、化粧品、または本発明の揮発性麻酔薬を体に送達するために用いることができる。
【0060】
本発明のリポソーム組成物は、本明細書に示す方法および詳細な説明に従い、任意の範囲のリポソームおよび揮発性麻酔薬成分を含むことができる。非限定例として、本発明の組成物のリポソーム成分は0.1%から99.9%リポソーム成分、またはより好ましくは、0.1%〜50%リポソーム成分、およびさらにより好ましくは、0.1%〜30%リポソーム成分を含みうる。様々な態様において、本発明のリポソームはコレステロール、ステアリルアミン、ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、またはその組み合わせを含む。
【0061】
様々な態様において、本発明の揮発性麻酔薬は微小液滴の成分であることもできる。本発明の微小液滴は、適当な脂質の単層によって覆われた、直径が約200オングストロームから約10,000オングストロームの範囲の、有機液相薬物の球からなる。好ましい脂質はリン脂質で、これらは生体膜の天然成分であり、したがって生物学的に適合性である。微小液滴を調製するのに有用な化合物には、ホスファチジルコリン(レシチン)、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルグリセロールが含まれる。
【0062】
微小液滴は、プローブまたはバス超音波処理を含む超音波処理、ホモジナイゼーション、微小流動化、または高強度機械的撹拌によって調製することができる。本発明の微小液滴を調製する好ましい方法は、プローブ超音波処理器を用いての超音波処理による。または、微小液滴はバス超音波処理器で調製することもできる。小規模調製のために、直径1.0cmの試験管を、水を満たしたバス超音波処理器内に、試験管クランプを用いてつるす。微小液滴の成分をまず振盪、ボルテックス混合、ポリトロンまたは他の方法により肉眼的に混合する。次いで、懸濁液をバス超音波処理器に導入し、1〜2時間超音波処理する。調製を大規模で行う場合、試験管を省略し、微小液滴の成分をバス超音波処理器に直接導入することが可能である。微小液滴は高強度機械的撹拌によって生成することもできる。有用な方法には、ワーリングブレンダー、ポリトロンおよび市販の塗料振盪機などの高振動数振盪機が含まれる。微小液滴の調製において有用な他の材料および方法は当技術分野において公知で、米国特許第4,622,219号、米国特許第4,725,442号、米国特許第5,091,188号、Haynes et al.(1989, J Controlled Release 9:1-12)およびHaynes et al.(1985, Anesthesiology 63:490-499)に記載されており、これらはすべてその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0063】
投薬
例えば、くも膜下腔内または硬膜外に投与する揮発性麻酔薬の量は、望まれる特定の適応に依存する。例えば、用量は治療することが意図される疼痛の型に依存することになる。例えば、揮発性麻酔薬の送達が急性疼痛に対して慢性疼痛を軽減することが意図される場合、用量は異なりうる。同様に、揮発性麻酔薬組成物が被検体を麻酔する(くも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、局所皮膚浸潤、または神経ブロック法を含む、全身または局所)ために用いられる場合、用量は異なりうる。被検体の身体の特徴も、適切な用量を決定する際に重要でありうる。体重、年齢などの特徴は重要な因子でありうる。例えば、揮発性麻酔薬イソフルランの場合に示されているとおり、揮発性麻酔薬は年齢と共に効力が高まることもある。
【0064】
多くの揮発性麻酔薬の溶解性は揮発性麻酔薬および/または水性溶液の温度によって影響を受けうるため、揮発性麻酔薬の温度も適切な用量を選択する際の因子であると考えられる。例えば、温度が高くなると揮発性麻酔薬組成物の溶解性と、したがって効力が高まることがあり;この特性は特定の揮発性麻酔薬で明らかにされている。特定の用量は選択した投与法にも依存する。例えば、揮発性麻酔薬組成物は持続的または周期的に送達してもよい。反対に、揮発性麻酔薬組成物は1回事象として単回投与で投与してもよい。
【0065】
揮発性麻酔薬(例えば、ハロゲン化麻酔化合物)を、選択した揮発性麻酔薬および所望の効果に応じて、約250から約50,000ナノグラム/mlの範囲の脊髄液レベルをもたらす量で注入してもよい。特定の態様において、揮発性麻酔薬を約5から約500,000ナノグラム/mlの脳脊髄液(CSF)濃度を達成するために投与してもよい。用量範囲は選択した化合物および患者の多様性に応じて変動することになるが、軽度から中等度の疼痛を治療するためには約0.01から約10,000ナノグラム/mlなどの低用量がより適している一方で、重度の疼痛を治療するため、および麻酔を導入するためには約10,000ナノグラム/mlから約500,000ナノグラム/ml以上などの高用量が適していることは一般に真実である。当然のことながら、用量は1回(例えば、軽度で1回の疼痛発現のため)、繰り返し(例えば、中等度または慢性疼痛のため)、または持続(例えば、重度の疼痛または麻酔目的のため)投与してもよい。これらの投与法の組み合わせを用いてもよい。例えば、重度の疼痛を患っている被検体は、持続的投与を、疼痛を克服するために必要とされる周期的な追加の投与と共に必要とすることもある。
【0066】
揮発性麻酔薬(例えば、イソフルランなどの揮発性麻酔薬)を水、食塩水または人工CSF溶液などの溶液中で混合する態様において、揮発性麻酔薬の濃度は変動しうる。例えば、溶液は約1から約99%、約10から約75%、約10から約50%、約20から約50%、30から約50%、約1から約45%、約1から約40%、約1から約35%、約1から約30%、約1から約25%、約1から約20%、約1から約15%、約1から約10%、約1から約5%、約0.5から約5%、約0.1から約5%、約0.1から約2.5%、約0.5から約2.5%、またはその中から導きだせる任意の範囲の体積比の揮発性麻酔薬を含んでいてもよい。これらの態様において、揮発性麻酔薬は、例えば、イソフルランであってもよく、溶液は水、食塩水、または人工脳脊髄液(ACSF)溶液であってもよい。
【0067】
本発明の組成物の投薬および送達様式は、例えば、量、濃度、投与頻度、および投与のタイミングを変動させることにより、被検体の運動機能を実質的に妨害することなく疼痛軽減を達成するように調節してもよい。
【0068】
揮発性麻酔薬溶液は、界面活性剤、PVP、ポリマー、抗菌剤、保存剤などの1つまたは複数の添加物も含んでいてもよい。特定の態様において、本発明の揮発性麻酔薬組成物は、約0.1〜90%のイソフルラン、メトキシフルラン、またはセボフルオランなどの揮発性麻酔薬、0.1〜99%のNMPまたはDMSOなどの抽出溶媒、0.1〜99%の食塩水、および0〜50%の他の添加物(例えば、グリセロール、界面活性剤、PVPなど)を含んでいてもよい。いくつかの態様において、投与前に最終希釈にかけうる、濃縮製剤を生成することが望ましいと考えられる。
【0069】
様々な態様において、および以下の実施例において示すとおり、約10%のイソフルランなどの揮発性麻酔薬の溶液を用いてもよく;この溶液は鎮痛および/または麻酔を達成するためにボーラス注射として、持続的、および/または繰り返し投与してもよい。したがって、以下の実施例において示すとおり、鎮痛を導入するために揮発性麻酔薬の10% v/v溶液を用いてもよい。様々な態様において、部分麻酔を導入するためにより高濃度の揮発性麻酔薬を用いてもよい。
【0070】
活性物質の送達法
本発明の揮発性麻酔薬を、経口、静脈内または吸入以外の経路で部分または局所送達してもよい。本明細書において用いられる「部分」または「局所」麻酔は全身麻酔とは異なり、神経または神経束近傍などの体の特定の領域への揮発性麻酔薬の優先的送達を可能にする麻酔法を意味する。これに対して、全身麻酔は、例えば、静脈内投与を介しての揮発性麻酔薬の全身投与を可能にする。部分または局所麻酔は典型的には、被検体の体の少なくとも一部の鎮痛または疼痛知覚低減のために被検体に投与する揮発性麻酔薬の体内総濃度を(局所濃度は高まるが)低くすることができる。例えば、くも膜下腔内麻酔、硬膜外麻酔、神経ブロック、および局所皮膚浸潤は、部分または局所麻酔の例である。いくつかの態様において、部分または局所麻酔該溶液が用いうる揮発性麻酔薬の具体的濃度には、約100から約500,000ナノグラム/ml、約100から約250,000ナノグラム/ml、約100から約100,000ナノグラム/ml、約100から約50,000ナノグラム/ml、約100から約25,000ナノグラム/ml、または約100から約10,000ナノグラム/mlが含まれる。用いる揮発性麻酔薬の具体的濃度は、所望の効果に応じて変動してもよく、様々な態様において、揮発性麻酔薬組成物を効果のために滴定し;したがって用いる、または組織において達成される揮発性麻酔薬の濃度は具体的な所望の結果(例えば、鎮痛に比べて部分麻酔)および/または麻酔薬に対する感受性などの患者の特定の特徴に応じて変動しうる。
【0071】
本発明は様々な神経ブロック法と共に用いてもよい。本発明の神経ブロック法は、超音波可視化と共に、または超音波可視化なしで行ってもよく;例えば、超音波装置を用いて、例えば、肩、頚、下背などにおける様々な神経束などの、神経ブロック法に関与する体の領域を可視化してもよい。本発明者らは、本発明を、例えば、膝置換、股関節置換、肩置換、および/または分娩関連手順を含むが、それらに限定されるわけではない、様々な外科手順と共に用いうることを構想している。
【0072】
特定の態様において、本発明の組成物および方法を疼痛管理のために用いてもよい。疼痛管理は、好ましくは被検体を意識不明にすることなる、または運動機能を実質的に妨害することなく、鎮痛を増強する、または疼痛の知覚を低減するために、低い体内総濃度の揮発性麻酔薬を被検体に投与しうるため、全身麻酔とは異なる。いくつかの態様において、疼痛管理のために用いうる揮発性麻酔薬の具体的濃度には、約100から約500,000ナノグラム/ml、約100から約250,000ナノグラム/ml、約100から約100,000ナノグラム/ml、約100から約50,000ナノグラム/ml、約100から約25,000ナノグラム/ml、または約100から約10,000ナノグラム/mlが含まれる。
【0073】
いくつかの態様において、部分または局所麻酔のために用いうる揮発性麻酔薬の具体的濃度には、約100から約500,000ナノグラム/ml、約100から約250,000ナノグラム/ml、約100から約100,000ナノグラム/ml、約100から約50,000ナノグラム/ml、約100から約25,000ナノグラム/ml、または約100から約10,000ナノグラム/mlが含まれる。
【0074】
揮発性麻酔薬の硬膜外またはくも膜下腔内投与は、くも膜下腔内または硬膜外カテーテルの使用などの当技術分野において公知の技術を介して達成しうる。カテーテルは、神経を損傷することなく、医師が阻害することを望む任意の疼痛感覚情報の伝播にとって重要な神経のより近くに設置すべきである。
【0075】
医学的手順の前またはその間に鎮痛を達成するための局所表面投与は、当技術分野において公知の技術を用いて行いうる。そのような医学的手順の例には、手術、静脈穿刺、注射、末梢静脈カニューレ挿入、切開、縫合、または他の手順が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0076】
企図される他の投与経路には下記が含まれる:注射、注入、持続注入、標的細胞を直接浸す局所灌流、カテーテルを介して、ナノ粒子送達を介して、表面投与(例えば、担体媒体、表面制御放出パッチ、創傷ドレッシング、ハイドロコロイド、泡状物、またはハイドロゲル)、動脈内、頭蓋内、および/または腫瘍内。適切な生物学的担体または薬学的に許容される賦形剤を用いてもよい。様々な態様において、投与する化合物はラセミ体、異性体として精製された、または異性体として純粋であってもよい。
【0077】
特定の態様において、本発明の揮発性麻酔薬は静脈内投与しない。静脈内投与は全身麻酔に用いられることが多く(Mathias et al., 2004, Revista Brasileira de Anestesiologia, ISSN 0034-7094)、典型的には被検体の体全体に揮発性麻酔薬を速やかに分布させることになる。したがって、特定の態様において、静脈内投与は部分または局所麻酔での使用には不適合である。
【0078】
溶液
揮発性麻酔薬を選択した後、これを溶液に溶解してもよい。溶液は水、食塩水、人工脳脊髄液、被検体自身の脳脊髄液などの水性溶液であってもよい。いくつかの変形において、他の溶液も適切でありうる。
【0079】
食塩水の様々な製剤が当技術分野において公知で、本発明と共に用いてもよい。例えば、食塩水は乳酸加リンゲル液、酢酸加リンゲル液、リン酸緩衝食塩水(PBS)、ダルベッコのリン酸緩衝食塩水(D-PBS)、トリス緩衝食塩水(TBS)、ハンクス液(HBSS)、または標準クエン酸含有食塩水(SSC)でありうる。
【0080】
特定の態様において、本発明の食塩水は「生理食塩水」(すなわち、NaCl約0.9%w/vの溶液)である。生理食塩水は血液に比べてわずかに高い浸透圧を有するが;様々な態様において、食塩水はヒト患者などの被検体の体内で等張でありうる。生理食塩水(NS)は、経口で液体を摂取することができず、重度の脱水症を発症した患者用の静脈内点滴(IV)においてしばしば用いられる。特定の態様において、「2分の1生理食塩水」(すなわち、約0.45%NaCl)または「4分の1生理食塩水」(すなわち、約0.22%NaCl)を本発明と共に用いてもよい。任意に、約5%デキストロースまたは約4.5g/dLグルコースが食塩水中に含まれてもよい。様々な態様において、1つまたは複数の塩、緩衝液、アミノ酸および/または抗菌剤が食塩水中に含まれてもよい。
【0081】
様々な人工脳脊髄液(ACSF)溶液を本発明と共に用いてもよい。特定の態様において、ACSFは以下の組成(mM)の緩衝塩溶液(pH7.4)である:NaC1、120;KC1、3;NaHCO3、25;CaCl2、2.5;MgCl2、0.5;グルコース、12。ACSFは、Harvard Apparatus(Holliston, Massachusetts)などの様々な商業的供給元から入手することもできる。
【0082】
様々な態様において、保存剤または安定剤が組成物または溶液中に含まれてもよい。例えば、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、EDTA、メタ重亜硫酸塩、ベンジルアルコール、チメロサールまたはその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない、様々な抗菌剤および抗真菌剤などの保存剤によって、微生物の作用を防止することができる。注射用に適した含まれうる物質には、無菌水性溶液または分散液および無菌注射溶液または分散液の即時調製用の無菌散剤が含まれる(米国特許第5,466,468号、その全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる)。すべての場合に、組成物は好ましくは無菌で、容易に注射可能とするために液体でなければならない。溶液は好ましくは製造および保存の条件下で安定で、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。含まれうる安定剤の例には、緩衝剤、グリシンおよびリジンなどのアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどの炭水化物などが含まれる。適切な安定剤または保存剤を所望の投与経路に従って選択してもよい。粒子フィルターまたは微生物フィルターを用いることができ、所望の投与経路によって必要でありうる。
【0083】
溶液中の化合物の重量範囲は変動しうる。例えば、様々な態様において、組成物は約1〜5重量%の揮発性麻酔薬、約1〜5重量%の保存剤/安定剤、約1〜5重量%のNaCl、および約85%〜97%の水を含みうる。揮発性麻酔薬の水に対する比は、所望の効果(疼痛軽減または鎮痛、部分麻酔など)を達成するために、必要に応じて変動しうる。
【0084】
溶液および/または組成物を投与の前に滅菌してもよい。滅菌の方法は当技術分野において周知で、加熱、煮沸、加圧、ろ過、消毒化学物質への曝露(例えば、塩素化と続く脱塩素または溶液からの塩素の除去)、通気、オートクレーブ処理などが含まれる。
【0085】
活性物質ガスを任意の数の様式で溶液中に溶解してもよい。例えば、活性物質ガスを、例えば、気化器を用いて溶液に通気してもよく、または撹拌もしくは超音波処理により可溶化してもよい。特定の態様において、揮発性麻酔薬を液体の形で測定し、溶液中に直接混合してもよい。当然のことながら、揮発性麻酔薬を溶液中に溶解する他の適当な方法も用いうる。揮発性麻酔薬を可溶化した後、これを疼痛軽減(麻酔の形での疼痛軽減を含む)を必要としている被検体に、当技術分野において周知の技術を用いて硬膜外またはくも膜下腔内に投与してもよい。特定の態様において、揮発性麻酔薬を密封減圧容器内で溶液と混合し、次いで混合溶液を3〜5分間機械的に撹拌し、使用まで熱的中性(thermo-neutral)超音波処理器内に維持する。
【0086】
特定の態様において、本発明の溶液は、ダイズ油乳剤などの脂質乳剤を含む、油中水または水中油乳剤などの乳剤の成分でありうる。特定の態様において、食塩水、人工CSF、または患者自身のCSFを、単独または乳剤の成分として、本発明の揮発性麻酔薬のくも膜下腔内または硬膜外投与のために用いてもよい。イソフルランの特定の乳剤が以前に静脈内(da Sila Telles Mathias L, et al., 2004, Rev. Bras. Anaestesiol Campianas 54(5), 2004)または硬膜外投与(Chai et al. 2008, British J Anesthesia 100:109-115)のために調製されている。
【0087】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体に溶解または分散した1つまたは複数の揮発性麻酔薬もしくは生物活性ガスまたは追加の物質の有効量を含む。「薬学的または薬理学的に許容される」なる語句は、例えば、ヒトなどの動物に適切に投与した場合に、有害、アレルギー性または他の不都合な反応を生じない分子実体および組成物を意味する。溶液中の少なくとも1つの揮発性麻酔薬もしくは生物活性ガスまたは追加の活性成分を含む薬学的組成物の調製は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (2000)に例示されるとおり、本開示を考慮すれば当業者には公知であり、この引用文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与のために、製剤はFDA Office of Biological Standardsによって求められる無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度の標準に合致すべきであることが理解されよう。
【0088】
様々な態様において、本発明の組成物はシクロデキストリンをさらに含む。シクロデキストリンは、連結して一連のオリゴ糖環を生成するグルコース単位からなる一般的な分子クラスである。(Challa et al., 2005, AAPS PharmSciTech 6:E329-E357参照)。天然において、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ(CGTアーゼ)によるデンプンの酵素的消化は、環構造中6、7および8つのアンヒドログルコース単位からなるシクロデキストリン(それぞれ、α-、β-、およびγ-シクロデキストリン)の混合物を生じる。商業的には、シクロデキストリンは同じくデンプンから生成されるが、異なる、より特異的な酵素が用いられる。シクロデキストリンは、シサプリド、クロラムフェニコール、デキサメタゾン、デキストロメトラファン、ジフェンヒドラミン、ヒドロコルチゾン、イトラコナゾール、およびニトログリセリンの送達を促進するために製剤中で用いられている。(Welliver and McDonough, 2007, Sci World J, 7:364-371参照)。様々な態様において、本発明のシクロデキストリンはヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン、アルファ-デキストリンまたはその組み合わせである。特定の態様において、シクロデキストリンを可溶化剤として用いることもできる。
【0089】
様々な他の態様において、本発明の組成物は、血漿から精製したヒト血清アルブミン、または組換えヒト血清アルブミンを含むこともできる。特定の態様において、ヒト血清アルブミンは可溶化剤として用いることができる。他の態様において、本発明の組成物は、プロピレングリコールを含むこともできる。他の態様において、本発明の組成物は、パーフルオロオクチルブロミドを含むこともできる。他の態様において、本発明の組成物は、パーフルオロカーボンを含むこともできる。特定の態様において、パーフルオロカーボンは可溶化剤として用いることができる。
【0090】
定義
冠詞「a」および「an」は本明細書において冠詞の1つまたは複数の(すなわち、少なくとも1つの)文法上の対象を指すために用いられる。例として、「要素(an element)」は1つの要素または複数の要素を意味する。
【0091】
本明細書において用いられる「阻害」、「軽減」、または「防止」なる用語、およびこれらの用語の変形は、完全または実質的に完全な阻害を含む、任意の測定可能な低下を含む。
【0092】
本明細書および/または特許請求の範囲において用いられる「有効な」なる用語は、所望の、予期される、または意図される結果を達成するのに十分であることを意味する。
【0093】
本明細書において用いられる「抽出溶媒」なる用語は、溶液中の揮発性麻酔薬と相互作用して、揮発性麻酔薬と化学的に反応することなく、揮発性麻酔薬の揮発性を低減しうる溶媒を意味する。
【0094】
本明細書を通して、「約」なる用語は、値が、その値を決定するのに用いる装置、方法の誤差の固有の差異、または試験被検体の間に存在する差異を含むことを示すために用いられる。
【0095】
本開示は代替物だけおよび「および/または」を意味する定義を支持するが、本明細書において用いられる「または」なる用語は、明らかに代替物だけを意味すると示されているか、または代替物が互いに相容れない場合を除き、「および/または」を意味する。
【0096】
本明細書において用いられる「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含むの任意の形)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有するの任意の形)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)などの含むの任意の形)または「含む(containing)」(ならびに「含む(contains)」および「含む(contain)」などの含むの任意の形)なる語は、包括的または制限なしで、追加の列挙されていない要素または方法段階を除外しない。
【0097】
本開示を通して、本発明の様々な局面を範囲形式で示すことができる。範囲形式での記載は単に便宜および簡略のためであることが理解されるべきであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定であると解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載は、可能性のある下位範囲すべて、ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えるべきである。例えば、1から6などの範囲の記載は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6などの下位範囲、ならびにその範囲内の個々の、および一部の数字、例えば、1、2、3、4、5、5.5および6を具体的に開示していると考えるべきである。これは範囲の広さに関わりなく適用される。
【0098】
本明細書において論じる任意の態様は、本発明の任意の方法または組成物に関して実行することができ、逆もまた同じであることが企図される。さらに、本発明の組成物は本発明の方法を達成するために用いることができる。
【0099】
本発明の他の目的、特徴および利点は、本明細書における詳細な説明を読めば明らかになるであろう。しかし、この詳細な説明から当業者には本発明の精神および範囲内の様々な変化および改変が明らかになると思われるため、詳細な説明および具体例は、本発明の具体的態様を示しているが、これらは例示のために示すにすぎないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0100】
実験実施例
本発明を、以下の実験実施例を参照することにより、さらに詳細に記載する。これらの実施例は例示のために提供するにすぎず、特に記載がないかぎり、限定を意図するものではない。したがって、本発明はいかなる様式でも、以下の実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ本明細書において提供される教示の結果明らかになる任意の、およびすべての変形を含むと解釈されるべきである。
【0101】
実施例1:イソフルランおよびセボフルランのくも膜下腔内投与
本試験は、疼痛の軽減および鎮痛の提供における揮発性麻酔薬の直接くも膜下腔内注射の有効性を評価するために設計した。試験は、くも膜下腔内に直接注射した、または以下の試験において示すとおり食塩水に溶解した、揮発性麻酔薬イソフルランおよびセボフルランを用い、1ヶ月の期間行った。ラットは疼痛/鎮痛試験の詳細に確立されたモデルであるため、用いた被検体動物はラットであった。特に、体重350gmを越えるスプラーグドーリーラットを用いた。ラットをペントバルビタール(50mg/kg)で麻酔し、動物の麻酔深度を侵害刺激に対する角膜反射および足逃避反射によって評価した。
【0102】
ラットの頚を剪毛し、手術中の細菌汚染を避けるために消毒剤溶液で清浄した。後頸部筋の正中外科切開を行い、後頭環椎膜(occipito-atlantoid membrane)を露出した。この膜を同定し、次いで切開した。無菌ポリエチレンカテーテルをくも膜下腔に脊髄の腰部が拡大されるまで(各動物で測定して約7〜8cm)導入した。手術創を、まず頸部筋を3-0絹縫合糸で縫合し、次いでステープルで皮膚切開部を閉鎖して、閉鎖した。
【0103】
手術後、ラットをそれらのケージに移し、ラットが麻酔による低体温症を起こさないように、ケージ上に放射ランプを設置した。ラットを手術終了時から完全に覚醒するまで持続的にモニターした。手術後にいかなる運動障害を示したラットも安楽死させた。
【0104】
手術後5日目に、創傷感染または運動機能不全のないラットを疼痛行動研究室に移し、揮発性麻酔薬によるくも膜下腔内試験に入った。試験のために12匹のラットを選択した。これらのラットはすべてくも膜下腔内カテーテルを有していた。イソフルラン(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)およびセボフルラン(フルオロメチル2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルエーテル)をハロゲン化エーテル化合物として用いた。これらはいずれもハロゲン化揮発性麻酔薬で、イソフルランはBaxterが製造し、セボフルランはAbbott Laboratoriesが製造している。試験AおよびBのために、12匹のラットを4匹ずつの3群に分けた。
【0105】
第一の群において、各ラットに保存剤を含まない生理食塩水2マイクロリットルをくも膜下腔内カテーテルから注射した。次いで、このカテーテルを保存剤を含まない生理食塩水で洗浄した。次いで、この群で疼痛行動試験を実施した。
【0106】
第二の群において、各ラットにイソフルラン2マイクロリットルをくも膜下腔内カテーテルから注射した。このカテーテルも保存剤を含まない生理食塩水で洗浄した。次いで、この群を疼痛行動試験にかけた。
【0107】
第三の群において、各ラットにセボフルラン2マイクロリットルをくも膜下腔内カテーテルから注射した。このカテーテルも保存剤を含まない生理食塩水で洗浄した。次いで、この群を疼痛行動試験にかけた。
【0108】
「ホットプレート」行動試験を用いて、疼痛知覚および鎮痛を評価した。これらの試験で用いた疼痛行動試験モデルは、Tony Yakshによって詳細に確立されている。(例えば、Chaplan et al., 1994, J. Neurosci. Methods, 53:55-63;Yaksh et al., 2001, J. Appl. Physiol., 90:2386-2402;Kim and Chung, 1992, Pain, 50:355-363.;Sorkin et al., 2001, Anesthesiology, 95:965-973参照)。この試験は、ラットの足の下に直接設置した放射熱源などの侵害刺激に反応して、ラットがいかに素早くその後ろ足を逃避するかを調べることを含む。この逃避時間は「熱逃避潜時」として公知である。
【0109】
試験のためにラットを加熱ガラスプレートを25℃に維持した改変ハーグレーブス装置上に移した(Hargreaves et al., 1998, Pain, 32:77-88参照)。プレート下の集束投射電球を足の足底中心部表面に向けた。フォトダイオード活性化タイマーで逃避潜時を測定し、組織の損傷を防ぐために25秒のカットオフ時間を用いた。放射熱に対する熱逃避潜時を、各くも膜下腔内注射の5分後および30分後に測定した。各足を3回試験し、結果を平均した。以下のデータを左右の後ろ足両方について収集した:
【0110】
第1群:5分の時点で試験した対照群(生理食塩水)

【0111】
第2群試験A:5分の時点で試験したイソフルラン群

【0112】
第3群試験B:5分の時点で試験したセボフルラン群

【0113】
次いで、これらのラットにくも膜下腔内注射から回復する時間を与えた。呼吸抑制、心臓、または神経学的損傷などの明白な有害作用はなかった。注射後30分の時点で、以下の分類に従い、ラットを再度試験した:
【0114】
第1群:30分の時点で試験した対照群(生理食塩水)

【0115】
第2群、試験A:30分の時点で試験したイソフルラン群

【0116】
第3群、試験B:30分の時点で試験したセボフルラン群

【0117】
本試験の結果より、疼痛軽減における揮発性麻酔薬のくも膜下腔内投与の有効性が示された。最少量のくも膜下腔内送達用量2マイクロリットルで、イソフルランおよびセボフルランの鎮痛効果が示された。熱潜時は有意に延長され、したがって熱C-線維疼痛経路が有効に抑制されたことを示している。本試験は活性物質ガスをくも膜下腔内送達することの安全性についても、いくらかの解明の光を投じた。試験中、どのラットも有害作用を経験せず、すべての群で熱潜時基準線に戻ったことで示されるとおり、すべてのラットが30分後にはくも膜下腔内注射から完全に回復した。
【0118】
実施例2:食塩水に溶解したイソフルランのくも膜下腔内投与
イソフルランを以下の方法(「通気」法とも呼ばれる)を用いて食塩水に溶解した。試験C:模擬気化装置を、500mlの改変アーレンマイヤーフラスコ(2つの入口および液相中への1カテーテル)を用いて作った。フラスコに0.9%生理食塩水を部分的に充填し、イソフルランの注入のために栓付きガラスピペットを液相の底に挿入した。第二の出口(egress)ピペットにより密封容器からのガスの放出が可能となった。2L/分で酸素中2%イソフルラン溶液をピペットを通して注入し、通気約10分後に0.9%食塩水は飽和した。飽和食塩水から5mLを抜き取り、上の実施例Iに概略を示した手順を用いて10匹の動物に投与した。
【0119】
試験Cのために、すべての動物を実験AおよびBと同様に調製した。本発明者らは4匹の動物に溶解したイソフルラン(0030で調製したとおり)5マイクロリットルをくも膜下腔内カテーテルにより注射した。試験Cで、足逃避までの対照(基準線)潜時は、用いた熱ランプの強度が異なるため異なる。試験Cにおいて、各動物をそれ自体の対照とした。
【0120】
試験Cのデータをここに熱源に対する足逃避までの時間(秒)で示す。表およびグラフ形式。結果を図2に示す。

【0121】
実施例3:人工脳脊髄液に溶解したイソフルランを用いての疼痛のくも膜下腔内阻害
疼痛感受性を、人工脳脊髄液(ACSF)中のイソフルランのくも膜下腔内投与後に測定した。さらに、以下に詳細を示すとおり、イソフルランをまずACSFに溶解し、次いで投与前に超音波処理した。次いで、鎮痛または麻酔を達成するためにくも膜下腔内投与しうるイソフルランの適切な濃度を決定するために、刺激-反応(SR)グラフを生成することにより用量反応関係を評価した。ACSF中のイソフルランのくも膜下腔内投与の薬理学的側面の特徴づけを、ラットを用いて本実施例で実施し;さらに、当業者には理解されるであろうとおり、類似のアプローチを用いて、ヒトにおける正確な薬理学的側面を調べてもよい。
【0122】
ACSF中に溶解したイソフルランを、以下の方法によって調製した。イソフルランを密封減圧容器内で、以下の組成(nM)を有する脳脊髄液(pH7.4)に近似の緩衝塩溶液と10〜50%の体積比で混合した:NaC1、120;KCl、3;NaHCO3、25;CaCl2、2.5;MgCl2、0.5;グルコース、12。混合した溶液を3〜5分間機械的に撹拌し、次いで使用まで熱的中性超音波処理器内に維持した。
【0123】
次いで、ACSF中のイソフルランをラットに以下の方法によりくも膜下腔内投与した。処置溶液を、腰部L1-2上のくも膜下腔内カテーテルにより、10μlの量で送達し、続いて10μlのACSFを流した。
【0124】
人工CSFに溶解したイソフルランのくも膜下腔内投与後に、前述のとおりであるが、20秒のカットオフ時間を用いるよう改変した「ホットプレート」行動試験を用いて疼痛知覚を試験した。前述のとおり、「ホットプレート」行動試験は、放射熱に対する後足逃避潜時(すなわち、ラットが熱源から足を上げるまでの時間)を試験することを含む。
【0125】
ACSF中のイソフルランのくも膜下腔内投与は鎮痛をもたらした。図3に示すとおり、ACSF中のイソフルラン(すなわち、1.46mg用量のイソフルラン)のくも膜下腔内投与は、放射熱に対する後足逃避閾値を試験することにより測定したとおり、鎮痛をもたらした。ACSF中のイソフルラン(10% v/v)の10μL溶液を用いた。以下に記載するとおり、イソフルランのこの用量はくも膜下腔内イソフルランの中等度の用量である。さらに、図3に示すとおり、くも膜下腔内注射用の薬学的組成物中にDMSOが含まれていてもよい。1%の濃度のDMSOを用いた。
【0126】
次いで、動物間の反応を標準化し、鎮痛または麻酔を達成するためにくも膜下腔内投与しうるイソフルランの適切な濃度を決定するために、刺激-反応(SR)グラフを生成することにより用量反応関係を評価した。図4は、ACSF中のイソフルラン注射後10分の時点の用量による最大推定効果(MPE)の刺激-反応(SR)グラフを示す。イソフルランの様々な用量をx軸に示す;例えば、図3に示す、上で用いたイソフルランの10% v/v溶液は、図4に示す約34%MPEに対応する。ACSFおよび1%DMSOを含む薬学的組成物を図3に示す。動物間の反応を標準化するために、ここではMPEを用いる。MPEは((薬物反応時間-基準線反応時間)/(カットオフ時間-基準線反応時間))*100で計算する。ここで用いるカットオフ時間は20秒であった。図4に示すとおり、実質的な鎮痛効果が観察された。1%の濃度のDMSOを用いた。
【0127】
実施例4:イソフルランの足底内投与
ラットを、足逃避潜時を測定することによる足底熱刺激試験(Plantar Heat Stimulation Test)(すなわち、放射熱)(Planar Analgesia Instrument, Ugo Basile, Italy)を用いて、熱刺激に対する反応について評価した。純粋な形のイソフルラン100μlまたは2%リドカイン100μlを、各ラットの一方の後足の足底表面に皮下注射した。各ラットについて、未処置の対側の後足をそれ自体の対照とした。
【0128】
ラットを最低限の動きが可能なアクリル製の箱で15分間馴化した後、熱源を後足の足底中心部表面の下に置いた。逃避潜時は熱刺激開始から後足のはっきりした逃避までの時間と定義された。組織の損傷を避けるために、22秒のカットオフ時間を設定した。熱刺激を、3〜5分の刺激間隔で各後足に3回適用した。熱逃避潜時を処置の前後に評価した。対照足に比べての処置足の逃避潜時の延長を、試験した製剤の鎮痛活性として評価した。
【0129】
本実験の結果を図5に示す。統計学的比較のために、対応スチューデントt-検定分析を用いた。P<0.05で差を有意と考えた(#P<0.05イソフルラン対対照、n=4;*P<0.05リドカイン対対照、n=3)。
【0130】
イソフルランの後足への投与により、未処置の足(con.iso)に比べると有意な抗侵害受容効果(iso)が得られた。抗侵害受容効果は投与後25分で始まり、実験中はずっと持続した。リドカインの投与(lid対con.lid)では有意な抗侵害受容効果が得られ、これは投与後5分で始まり、15分の時点でピークとなり、45分の時点で基準線レベルに戻った。
【0131】
実施例5:イソフルランの安定性
以下の実施例において、記載する組成物中のイソフルランの安定性を2つの様式で評価した。第一に、組成物を肉眼的レベルで相分離の有無について調べた。第二に、組成物のイソフルラン含有量を、経時的に蓋をせずに放置した場合の組成物中の残留イソフルランを秤量することによりもとめた。簡単に言うと、ガラスバイアルに5〜10mlの組成物媒体を加え、秤量し;そのうちの1つは媒体のみ(すなわち、イソフルランなし)を入れ、対照とした。他のバイアルには様々な量のイソフルランを加えた。これらをフード内に蓋をせずに放置した。経時的に、イソフルランが組成物中に残っているか、または蒸発したかを調べるため、バイアルを秤量した。媒体対照において経時的に蒸発した量を、イソフルラン含有組成物の経時的蒸発量から差し引いた。
【0132】
純粋な形のイソフルランは揮発性麻酔薬である。イソフルランの揮発性を評価するために、2つのバイアルに指定量の純粋な形のイソフルランを加えた。バイアルを化学物質換気フードに置き、蓋をせずに放置した。バイアルを指定の時間に秤量して、蒸発したイソフルランの量をもとめた。以下の表に示すとおり、3時間以内に0.7893gのイソフルランが蒸発したが、3.4825gのイソフルランが完全に蒸発するには約8時間かかった。これらの量のイソフルランは、以下の実施例においてイソフルラン組成物を調製するために用いたイソフルランの量とほぼ同等である。
【0133】

【0134】
実施例6:NMPによるイソフルラン溶液(v/v)の調製
純粋イソフルランUSP(フォーレン)液をNMP(Sigma-Aldrich)と指定の濃度で混合し;混合物を激しくボルテックス処理して、均質なイソフルラン-NMP溶液を調製した。溶液中のNMPの量を減らすために、食塩水(0.9%NaCl)を混合物に加えた。
【0135】

【0136】
上の表に示すとおり、10%および40%のイソフルランをNMPと混合し、得られた溶液は澄明に見えた。さらに、NMPの追加は実施例5に比べてイソフルランの揮発性を低下させた。
【0137】
実施例7:イントラリピッド中の乳化イソフルラン(v/v)の調製
純粋イソフルランUSP(フォーレン)液をイントラリピッド20%または30%(Baxter)と指定の濃度で混合し;混合物を激しくボルテックス処理し、30分間超音波処理して、均質なイソフルラン-イントラリピッド乳剤を調製した。
【0138】

【0139】
指定量のイソフルランを含むイントラリピッド乳剤は均質かつ一様に見えた。さらに、イントラリピッドは実施例5に比べてイソフルランの揮発性を低下させた。
【0140】
当業者であれば、イソフルランの乳剤を、10%(w/v)イントラリピッドなどの他の乳剤製剤を含む他の脂質を用い、本明細書に記載の方法の変形を用いて生成しうることを理解するであろう。本発明の揮発性麻酔薬組成物の生成に有用でありうる他の市販の脂質組成物には、Liposyn(登録商標)(B. Braun)およびNutrilipid(登録商標)(B. Braun)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。当業者であれば、デスフルラン、セボフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロタンの乳剤を、本明細書に記載の方法の変形を用いて生成しうることも理解するであろう。
【0141】
実施例8:イントラリピッドおよびNMP中の乳化イソフルラン(v/v)の調製
純粋イソフルランUSP(フォーレン)液をNMP(Sigma-Aldrich)と指定の濃度で混合し;NMP-イソフルラン溶液をイントラリピッド20%または30%(Baxter)に加えた。混合物を激しくボルテックス処理し、30分間超音波処理して、均質なイソフルラン-NMP-イントラリピッド乳剤を調製した。
【0142】

【0143】
NMP存在下で指定量のイソフルランを含むイントラリピッド乳剤は均質かつ一様に見えた。NMP存在下で、イントラリピッドは、実施例7に比べ、NMP非存在下よりも多くのイソフルランを保持することができた。加えて、イントラリピッドおよびNMPの組成物は実施例5に比べてイソフルランの揮発性を低下させた。
【0144】
当業者であれば、イソフルランの乳剤を、10%(w/v)イントラリピッドなどの他の乳剤製剤を含む他の脂質を用い、本明細書に記載の方法の変形を用いて生成しうることを理解するであろう。本発明の揮発性麻酔薬組成物の生成に有用でありうる他の市販の脂質組成物には、Liposyn(登録商標)(B. Braun)およびNutrilipid(登録商標)(B. Braun)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。当業者であれば、デスフルラン、セボフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロタンの乳剤を、本明細書に記載の方法の変形を用いて生成しうることも理解するであろう。
【0145】
実施例9:ポリソルベート80(トゥイーン80)による乳化イソフルランの調製
イソフルランをトゥイーン80(3% v/v)に全量10mlで加えた。混合物を激しくボルテックス処理し、30分間超音波処理して、均質なイソフルラン乳剤を調製した。いくつかの場合には、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホホコリン(DMPC)が製剤中に含まれた。まず、DMPC(0.3%または0.6%)をトゥイーン80(3% v/v)に溶解し、次いでイソフルランをトゥイーン-DMPC混合物に加え、続いて30分間超音波処理した。
【0146】

【0147】
トゥイーン80による乳剤は均質に見えた。DMPCを加えた場合、同じ量のトゥイーン80はDMPCなしよりも多くのイソフルランを保持することができた。さらに、イソフルランとトゥイーン80またはトゥイーン80 DMPCとの組み合わせは実施例5に比べてイソフルランの揮発性を低下させた。
【0148】
実施例10:プロピレングリコールによるイソフルラン溶液(v/v)の調製
純粋イソフルランUSP(フォーレン)液をプロピレングリコール(Sigma-Aldrich)と指定の濃度で混合し;混合物を激しくボルテックス処理して、均質なイソフルラン-プロピレングリコール溶液を調製した。
【0149】

【0150】
8%、10%および30%のイソフルランをプロピレングリコールと混合し、得られた溶液は澄明に見えた。さらに、プロピレングリコールは実施例5に比べてイソフルランの揮発性を低下させた。
【0151】
実施例11:クレモフォールELによる乳化イソフルランの調製
イソフルランをクレモフォールELの水溶液(10% v/v)に全量10mlで加えた。混合物を激しくボルテックス処理し、30分間超音波処理して、均質なイソフルラン乳剤を調製した。
【0152】

【0153】
指定量のイソフルランを含むクレモフォールELによる乳剤は乳状に見えた。さらに、クレモフォールELによる乳剤は実施例5に比べてイソフルランの揮発性を低下させた。
【0154】
実施例12:ジメチルスルホキシド(DMSO)によるイソフルラン溶液(v/v)の調製
純粋イソフルランUSP(フォーレン)液をDMSO(BDH)と指定の濃度で混合した。混合物を激しくボルテックス処理して、均質なイソフルラン-DMSO溶液を調製した。DMSOを含むイソフルラン溶液は澄明に見えた。
【0155】

【0156】
実施例13:パーフルオロオクチルブロミド中のイソフルラン溶液(v/v)の調製
純粋イソフルランUSP(フォーレン)液をパーフルオロオクチルブロミド(Acros Organics)と指定の濃度で混合した。混合物を激しくボルテックス処理して、均質なイソフルラン-パーフルオロオクチルブロミド溶液を調製した。パーフルオロオクチルブロミドを含むイソフルラン溶液は澄明に見えた。
【0157】

【0158】
実施例14:鎮痛のためのイソフルランの表面適用
表面イソフルランの有効性を評価するために、少量(1cc)の50%ISO/DMSO溶液をヒト被検体の皮膚に適用した。被検体は50%ISO/DMSO溶液を適用した場合の局所麻酔特性を観察し、約1時間の間、軽度の接触に対する顕著な局所麻酔反応が認められた。皮膚刺激は観察されなかった。
【0159】
ヒト被検体におけるこの局所麻酔反応をさらに定量するために、本明細書に記載の任意の揮発性麻酔薬組成物を評価する臨床試験を、以下に記載のとおりに実施してもよい。イソフルラン(ISO)は、安全性が十分に確立された、広く用いられている揮発性麻酔薬である。ジメチルスルホキシド(DMSO)は、角質層(不透水性の皮膚層)を通過しての薬物の移動を促進するための薬物送達系として用いられてきた有機溶媒である。以前の研究により、メトキシフルランのレシチンコーティングされた微小液滴による局所麻酔が示されている(Haynes and Kirkpatrick, 1991, Reg Anesth 16:173-80)。
【0160】
本明細書に記載の任意の揮発性麻酔薬組成物の鎮痛を試験するために、以下のアプローチを用いてもよい。表面アミトリプチリン試験(clinicaltrials.gov/show/ NCT00471445参照)を含むものに類似の試験を実施してもよい。有効性および/または局所皮膚刺激についてのヒト志願者における皮膚評価も試験してもよい。アミトリプチリンの例において、皮膚刺激および疼痛阻止特性について異なる用量および媒体単独を比較する、志願者による予備的ヒト試験から、重要な進展が見られた(Gerner et al., 2003, Reg Anesth Pain Med. 28:289-93)。媒体と活性薬物とを区別するために、媒体のみの部位と薬物+媒体(異なる用量で)とを含むよう、以下に概略を示すとおり、いくつかの部位を試験する。
【0161】
被検体の適格性:試験被検体は、皮膚感受性の欠如または他の医学的問題を含む健康問題がない志願者の成人であるべきである。被検体は読み書きができ、その後の4時間の試験プロトコルによる前腕への試験薬の適用に同意する必要がある。
【0162】
処置計画:健常志願者は利き腕ではない方の前腕にマーキングペンで直径約10cmの円を3つ描く。基準線の生命徴候を調べる。
【0163】
薬物を以下のとおりに適用する:低用量揮発性麻酔薬組成物、高用量揮発性麻酔薬組成物、および媒体単独を、それぞれ3つのスポットの1つに適用し、テガダーム(6×7cm、3M Healthcare, St Paul MN)で覆う。これは15分後に除去する。
【0164】
試験を基準線(適用前)、15分(ドレッシング除去後)、60分、3時間、および24時間の時点で、3つの円の中心で行う。試験は、下記により軽度の接触に対する感受性を含む。
【0165】
接触検出閾値。(Aデルタ-小径有髄線維-「高速疼痛」接触):接触検出閾値を、0.1、0.5、0.9、3.2、6.1または8.0mNの力を与えるよう較正されている6つのフォンフライモノフィラメントを用いてのDixon 1の上げ下げ法を用いて決定する。0.5mNで開始して、フォンフライモノフィラメントを約1秒間適用する。被検体が刺激を検出できなければ、次に高い力のフォンフライモノフィラメントを適用する。被検体が刺激を検出すれば、次に低いフォンフライを与える。最初の検出後、さらに4回のフォンフライ適用について一連の上げ下げ試験を続ける。50%機械刺激検出閾値を、Dixon 1に記載の手順を用いて計算する。最高の力のフォンフライモノフィラメントに対しても検出がなければ、50%検出閾値を19mNの値に割り付ける。
【0166】
疼痛検出(C線維-大径無髄「低速疼痛」)、鋭敏度閾値および針プローブに対する疼痛:鋭敏度検出を加重針装置2を用いて調べる。30ゲージ針(直径200im)の先端をやすりで削って平坦な円柱状の末端とする。綿棒アプリケーターを針のルアー結合部に挿入し、綿棒アプリケーターの軸にワッシャーを置いて、刺激のための所望の力レベルを得る。次いで、装置全体を30ccシリンジ内に入れて、針をシリンジの先端から出し、装置がシリンジ内で自由に動くようにする。針を皮膚表面に適用すると、信頼性があり、一貫した力が適用される。100、200および400mNの3段階の力を用いる。各刺激を約1秒間適用する。各力は擬似無作為の順に各関心対象領域内に10回適用する。被検体に、刺激が鋭敏であれば知らせるよう指示する。刺激が鋭敏である場合、次いで被検体は刺激が痛ければ知らせる。
【0167】
皮膚刺激について評価するために、被検体に各時点の各部位で「局所皮膚刺激」を0〜10の等級(0=まったく刺激なし、および10=極度の刺激)で評価するよう依頼する。最後に、各時点の各部位で皮膚の発赤および明白な刺激を「存在または非存在」で調べる。
【0168】
本明細書において引用するそれぞれおよびすべての特許、特許出願、および出版物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0169】
本明細書において開示し、特許請求する組成物および方法はすべて、本開示に照らせば過度の実験を行うことなく生成し、実行することができる。本発明の組成物および方法を好ましい態様に関して記載してきたが、当業者にとっては、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および方法ならびに方法の段階または一連の段階に変化を適用しうることが明らかであろう。より具体的には、化学的および生理学的の両方で関係する特定の物質を本明細書に記載の物質の代わりに用いうるが、同じまたは類似の結果が得られると考えられることが明らかであろう。当業者には明らかなすべてのそのような類似の代用および改変は、添付の特許請求の範囲によって規定されるとおり、本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると思われる。
【0170】
本発明を特定の態様に関して開示してきたが、当業者であれば、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変形を考案しうることが明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような態様および等価の変形を含むと解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要としている被検体の疼痛を軽減する方法であって、疼痛を軽減するのに有効な量で溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を、経口、静脈内または吸入以外の経路で被検体に送達する段階を含み、該溶液が揮発性麻酔薬の揮発性を低減するのに有効な量の抽出溶媒をさらに含み、該溶液が乳剤の成分である、前記方法。
【請求項2】
抽出溶媒がジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抽出溶媒がジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびN-メチル-2-ピロリドン(NMP)からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
抽出溶媒がジメチルイソソルビド、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノールからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
抽出溶媒が溶液の約0.1%から約75%を構成する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
抽出溶媒が溶液の約0.1%から約25%を構成する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
抽出溶媒が溶液の約25%から約75%を構成する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
揮発性麻酔薬を局所または部分送達する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
揮発性麻酔薬がハロゲン化エーテル麻酔薬である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
揮発性麻酔薬をくも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、局所皮膚浸潤、および神経ブロック法から選択される群からの少なくとも1つの経路で送達する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
疼痛が慢性疼痛である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
疼痛が急性疼痛である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
揮発性麻酔薬を手術前、手術中、または手術後に被検体の一部を麻酔するために送達する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
揮発性麻酔薬がイソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノンおよびその混合物からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
揮発性麻酔薬がセボフルランである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
揮発性麻酔薬がメトキシフルランである、請求項14記載の方法。
【請求項18】
溶液が約5ng/mlから約100ng/mlの範囲の量の揮発性麻酔薬を含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
溶液が溶液中に約1% v/vから約75% v/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
溶液が溶液中に約5% v/vから約50% v/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
溶液が人工脳脊髄液を含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
溶液が溶液中に約10% v/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
揮発性麻酔薬がイソフルランであり、溶液が人工脳脊髄液または食塩水を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
溶液を硬膜外またはくも膜下腔内送達して、脊髄液中250ng/mlから50,000ng/mlの揮発性麻酔薬の用量範囲を達成する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
溶液が少なくとも1つのパーフルオロカーボンをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
溶液が少なくとも1つのシクロデキストリンをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
溶液がヒト血清アルブミンをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項29】
揮発性麻酔薬の送達が持続的である、請求項1記載の方法。
【請求項30】
持続的送達が経皮経路または注入ポンプによって達成される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
揮発性麻酔薬の送達が周期的である、請求項1記載の方法。
【請求項32】
揮発性麻酔薬の送達が1回事象である、請求項1記載の方法。
【請求項33】
揮発性麻酔薬の送達を周期的および持続的の両方で被検体に別々の場合に投与する、請求項1記載の方法。
【請求項34】
軽減が被検体の体の一部の疼痛知覚の除去を含む、請求項1記載の方法。
【請求項35】
溶液が無菌である、請求項1記載の方法。
【請求項36】
被検体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項37】
被検体がマウスまたはラットである、請求項1記載の方法。
【請求項38】
溶液が水、食塩水および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1記載の方法。
【請求項39】
食塩水が生理食塩水である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
抽出溶媒がDMSOであり、揮発性麻酔薬がイソフルランであり、溶液が生理食塩水または人工脳脊髄液を含む、請求項1記載の方法。
【請求項41】
DMSOが溶液の約0.1%から約75%を構成する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
疼痛軽減が運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく達成される、請求項1記載の方法。
【請求項43】
揮発性麻酔薬の量を滴定して、運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく疼痛軽減を達成する、請求項1記載の方法。
【請求項44】
揮発性麻酔薬の送達を複数回行い、送達の時機を合わせて、運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく疼痛軽減を達成する、請求項1記載の方法。
【請求項45】
乳剤が脂質を含む、請求項1記載の方法。
【請求項46】
脂質が乳剤の約1% v/vから99% v/v、約5% v/vから約75% v/v、または約10% v/vから約60% v/vの範囲の量を構成する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
脂質がダイズ油を含む、請求項45記載の方法。
【請求項48】
乳剤が乳化剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項49】
乳化剤が卵リン脂質を含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
乳化剤が界面活性剤を含む、請求項48記載の方法。
【請求項51】
乳剤がパーフルオロカーボンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項52】
疼痛を軽減するのに有効な量で水性溶液中に溶解した揮発性麻酔薬の一定量を含む薬学的に許容される組成物であって、該溶液が揮発性麻酔薬の揮発性を低減するのに有効な量の抽出溶媒をさらに含み、該溶液が乳剤の成分であり、ここで薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、前記組成物。
【請求項53】
抽出溶媒がジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項52記載の組成物。
【請求項54】
抽出溶媒がN-メチル-2-ピロリドン(NMP)である、請求項52記載の組成物。
【請求項55】
抽出溶媒がジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノールからなる群の少なくとも1つである、請求項52記載の組成物。
【請求項56】
抽出溶媒が溶液の約0.1%から約75%を構成する、請求項52記載の組成物。
【請求項57】
無菌である、請求項52記載の組成物。
【請求項58】
くも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、および神経ブロックからなる群からの送達経路用に製剤される、請求項52記載の組成物。
【請求項59】
溶液が水、食塩水および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項52記載の組成物。
【請求項60】
溶液が少なくとも1つのパーフルオロカーボンをさらに含む、請求項52記載の組成物。
【請求項61】
溶液が少なくとも1つのシクロデキストリンをさらに含む、請求項52記載の組成物。
【請求項62】
溶液がヒト血清アルブミンをさらに含む、請求項52記載の組成物。
【請求項63】
食塩水が生理食塩水である、請求項59記載の組成物。
【請求項64】
揮発性麻酔薬がイソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノンおよびその混合物からなる群より選択される、請求項52記載の組成物。
【請求項65】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項64記載の組成物。
【請求項66】
揮発性麻酔薬が約5% v/vから約50% v/vの濃度で水性溶液に溶解されている、請求項64記載の組成物。
【請求項67】
揮発性麻酔薬が約10% v/vの濃度で水性溶液に溶解されている、請求項66記載の組成物。
【請求項68】
揮発性麻酔薬がイソフルランであり、水性溶液が人工脳脊髄液である、請求項66記載の組成物。
【請求項69】
乳剤が脂質を含む、請求項52記載の組成物。
【請求項70】
脂質が乳剤の約1%から99%、約5%から約75%、または約10%から約60%の体積比(v/v)の範囲の量を構成する、請求項69記載の組成物。
【請求項71】
脂質がダイズ油を含む、請求項69記載の組成物。
【請求項72】
乳剤が乳化剤をさらに含む、請求項52記載の組成物。
【請求項73】
乳化剤が卵リン脂質を含む、請求項72記載の組成物。
【請求項74】
乳化剤が界面活性剤を含む、請求項72記載の組成物。
【請求項75】
乳剤がパーフルオロカーボンを含む、請求項52記載の組成物。
【請求項76】
それを必要としている被検体の疼痛を軽減する方法であって、揮発性麻酔薬乳剤を、経口、静脈内または吸入以外の経路で被検体に送達する段階を含む方法。
【請求項77】
揮発性麻酔薬を局所または部分送達する、請求項76記載の方法。
【請求項78】
揮発性麻酔薬がハロゲン化エーテル麻酔薬である、請求項76記載の方法。
【請求項79】
揮発性麻酔薬をくも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、局所皮膚浸潤、および神経ブロック法から選択される群からの少なくとも1つの経路で送達する、請求項77記載の方法。
【請求項80】
疼痛が慢性疼痛である、請求項76記載の方法。
【請求項81】
疼痛が急性疼痛である、請求項76記載の方法。
【請求項82】
揮発性麻酔薬を手術前、手術中、または手術後に被検体の一部を麻酔するために送達する、請求項76記載の方法。
【請求項83】
揮発性麻酔薬がイソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノンおよびその混合物からなる群より選択される、請求項76記載の方法。
【請求項84】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項83記載の方法。
【請求項85】
揮発性麻酔薬がセボフルランである、請求項83記載の方法。
【請求項86】
揮発性麻酔薬がメトキシフルランである、請求項83記載の方法。
【請求項87】
乳剤が約5ng/mlから約100ng/mlの範囲の量の揮発性麻酔薬を含む、請求項76記載の方法。
【請求項88】
乳剤が乳剤中に約1% v/vから約75% v/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項76記載の方法。
【請求項89】
乳剤が乳剤中に約5% v/vから約50% v/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項88記載の方法。
【請求項90】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項89記載の方法。
【請求項91】
乳剤が人工脳脊髄液をさらに含む、請求項89記載の方法。
【請求項92】
乳剤が乳剤中に約10% v/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項89記載の方法。
【請求項93】
揮発性麻酔薬がイソフルランであり、乳剤が人工脳脊髄液または食塩水をさらに含む、請求項91記載の方法。
【請求項94】
乳剤を硬膜外またはくも膜下腔内送達して、脊髄液中250ng/mlから50,000ng/mlの揮発性麻酔薬の用量範囲を達成する、請求項76記載の方法。
【請求項95】
揮発性麻酔薬の送達が持続的である、請求項76記載の方法。
【請求項96】
持続的送達が経皮経路または注入ポンプによって達成される、請求項95記載の方法。
【請求項97】
揮発性麻酔薬の送達が周期的である、請求項76記載の方法。
【請求項98】
揮発性麻酔薬の送達が1回事象である、請求項76記載の方法。
【請求項99】
揮発性麻酔薬の送達を周期的および持続的の両方で被検体に別々の場合に投与する、請求項76記載の方法。
【請求項100】
軽減が被検体の体の一部の疼痛知覚の除去を含む、請求項76記載の方法。
【請求項101】
揮発性麻酔薬を含む乳剤が無菌である、請求項76記載の方法。
【請求項102】
被検体がヒトである、請求項76記載の方法。
【請求項103】
被検体がマウスまたはラットである、請求項76記載の方法。
【請求項104】
乳剤が水、食塩水および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項76記載の方法。
【請求項105】
食塩水が生理食塩水である、請求項104記載の方法。
【請求項106】
疼痛軽減が運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく達成される、請求項76記載の方法。
【請求項107】
揮発性麻酔薬のある量を送達して、運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく疼痛軽減を達成する、請求項76記載の方法。
【請求項108】
揮発性麻酔薬の送達を複数回行い、送達の時機を合わせて、運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく疼痛軽減を達成する、請求項76記載の方法。
【請求項109】
乳剤が脂質を含む、請求項76記載の方法。
【請求項110】
脂質が乳剤の約1% v/vから99% v/v、約5% v/vから約75% v/v、または約10% v/vから約60% v/vの範囲の量を構成する、請求項109記載の方法。
【請求項111】
脂質がダイズ油を含む、請求項109記載の方法。
【請求項112】
乳剤が乳化剤をさらに含む、請求項76記載の方法。
【請求項113】
乳化剤が卵リン脂質を含む、請求項112記載の方法。
【請求項114】
乳化剤が界面活性剤を含む、請求項112記載の方法。
【請求項115】
乳剤が少なくとも1つのパーフルオロカーボンをさらに含む、請求項76記載の方法。
【請求項116】
乳剤が少なくとも1つのシクロデキストリンをさらに含む、請求項76記載の方法。
【請求項117】
乳剤がヒト血清アルブミンをさらに含む、請求項76記載の方法。
【請求項118】
揮発性麻酔薬乳剤の一定量を含む薬学的に許容される組成物。
【請求項119】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項118記載の組成物。
【請求項120】
無菌である、請求項118記載の組成物。
【請求項121】
くも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下投与、および神経ブロックによる投与からなる群からの送達経路用に製剤される、請求項118記載の組成物。
【請求項122】
乳剤が水、食塩水および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項118記載の組成物。
【請求項123】
食塩水が生理食塩水である、請求項122記載の組成物。
【請求項124】
揮発性麻酔薬がイソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノンおよびその混合物からなる群より選択される、請求項118記載の組成物。
【請求項125】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項124記載の組成物。
【請求項126】
揮発性麻酔薬が乳剤の約1% v/vから約75% v/vを構成する、請求項124記載の組成物。
【請求項127】
揮発性麻酔薬が乳剤の約10% v/vを構成する、請求項126記載の組成物。
【請求項128】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項126記載の組成物。
【請求項129】
乳剤が脂質を含む、請求項118記載の組成物。
【請求項130】
脂質が乳剤の約1% v/vから99% v/v、約5% v/vから約75% v/v、または約10% v/vから約60% v/vの範囲の量を構成する、請求項129記載の組成物。
【請求項131】
脂質がダイズ油を含む、請求項129記載の組成物。
【請求項132】
乳剤が乳化剤をさらに含む、請求項118記載の組成物。
【請求項133】
乳化剤が卵リン脂質を含む、請求項132記載の組成物。
【請求項134】
乳化剤が界面活性剤を含む、請求項132記載の組成物。
【請求項135】
乳剤がパーフルオロカーボンを含む、請求項118記載の組成物。
【請求項136】
乳剤がシクロデキストリンを含む、請求項118記載の組成物。
【請求項137】
乳剤がヒト血清アルブミンを含む、請求項118記載の組成物。
【請求項138】
それを必要としている被検体の疼痛を軽減する方法であって、疼痛を軽減するのに有効な量で揮発性麻酔薬を含むリポソーム懸濁液を、経口、静脈内または吸入以外の経路で被検体に送達する段階を含む方法。
【請求項139】
揮発性麻酔薬を局所または部分送達する、請求項138記載の方法。
【請求項140】
揮発性麻酔薬がハロゲン化エーテル麻酔薬である、請求項138記載の方法。
【請求項141】
揮発性麻酔薬をくも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、局所皮膚浸潤、および神経ブロック法から選択される群からの少なくとも1つの経路で送達する、請求項138記載の方法。
【請求項142】
疼痛が慢性疼痛である、請求項138記載の方法。
【請求項143】
疼痛が急性疼痛である、請求項138記載の方法。
【請求項144】
揮発性麻酔薬を手術前、手術中、または手術後に被検体の一部を麻酔するために送達する、請求項138記載の方法。
【請求項145】
揮発性麻酔薬がイソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノンおよびその混合物からなる群より選択される、請求項138記載の方法。
【請求項146】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項144記載の方法。
【請求項147】
揮発性麻酔薬がセボフルランである、請求項145記載の方法。
【請求項148】
揮発性麻酔薬がメトキシフルランである、請求項145記載の方法。
【請求項149】
揮発性麻酔薬が約5ng/mlから約100ng/mlの範囲の量を構成する、請求項138記載の方法。
【請求項150】
揮発性麻酔薬が約1% v/vから約75% v/vを構成する、請求項138記載の方法。
【請求項151】
揮発性麻酔薬が約10% v/vから約50% v/vを構成する、請求項150記載の方法。
【請求項152】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項138記載の方法。
【請求項153】
リポソーム懸濁液が人工脳脊髄液中に懸濁されている、請求項138記載の方法。
【請求項154】
揮発性麻酔薬が約10% v/vを構成する、請求項138記載の方法。
【請求項155】
揮発性麻酔薬がイソフルランであり、リポソーム懸濁液が人工脳脊髄液中に懸濁されている、請求項138記載の方法。
【請求項156】
懸濁液を硬膜外またはくも膜下腔内送達して、脊髄液中250ng/mlから50,000ng/mlの揮発性麻酔薬の用量範囲を達成する、請求項138記載の方法。
【請求項157】
懸濁液がパーフルオロカーボンをさらに含む、請求項138記載の方法。
【請求項158】
懸濁液がシクロデキストリンをさらに含む、請求項138記載の方法。
【請求項159】
懸濁液がヒト血清アルブミンをさらに含む、請求項138記載の方法。
【請求項160】
揮発性麻酔薬の送達が持続的である、請求項138記載の方法。
【請求項161】
持続的送達が経皮経路または注入ポンプによって達成される、請求項160記載の方法。
【請求項162】
揮発性麻酔薬の送達が周期的である、請求項138記載の方法。
【請求項163】
揮発性麻酔薬の送達が1回事象である、請求項138記載の方法。
【請求項164】
揮発性麻酔薬の送達を周期的および持続的の両方で被検体に別々の場合に投与する、請求項138記載の方法。
【請求項165】
軽減が被検体の体の一部の疼痛知覚の除去を含む、請求項138記載の方法。
【請求項166】
揮発性麻酔薬を含む懸濁液が無菌である、請求項138記載の方法。
【請求項167】
被検体がヒトである、請求項138記載の方法。
【請求項168】
被検体がマウスまたはラットである、請求項138記載の方法。
【請求項169】
懸濁液が水、食塩水および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項138記載の方法。
【請求項170】
食塩水が生理食塩水である、請求項169記載の方法。
【請求項171】
疼痛軽減が運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく達成される、請求項138記載の方法。
【請求項172】
揮発性麻酔薬の量を滴定して、運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく疼痛軽減を達成する、請求項138記載の方法。
【請求項173】
揮発性麻酔薬の送達を複数回行い、送達の時機を合わせて、運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく疼痛軽減を達成する、請求項138記載の方法。
【請求項174】
揮発性麻酔薬を含むリポソーム懸濁液の一定量を含む薬学的に許容される組成物であって、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、前記組成物。
【請求項175】
無菌である、請求項174記載の組成物。
【請求項176】
くも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、および神経ブロックからなる群からの送達経路用に製剤される、請求項174記載の組成物。
【請求項177】
懸濁液が水、食塩水および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項174記載の組成物。
【請求項178】
食塩水が生理食塩水である、請求項177記載の組成物。
【請求項179】
懸濁液がパーフルオロカーボンをさらに含む、請求項174記載の組成物。
【請求項180】
懸濁液がシクロデキストリンをさらに含む、請求項174記載の組成物。
【請求項181】
懸濁液がヒト血清アルブミンをさらに含む、請求項174記載の組成物。
【請求項182】
揮発性麻酔薬がイソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノンおよびその混合物からなる群より選択される、請求項174記載の組成物。
【請求項183】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項182記載の組成物。
【請求項184】
揮発性麻酔薬が約5% v/vから約50% v/vの濃度を構成する、請求項182記載の組成物。
【請求項185】
揮発性麻酔薬が約10% v/vの濃度を構成する、請求項184記載の組成物。
【請求項186】
揮発性麻酔薬がイソフルランであり、リポソーム懸濁液が人工脳脊髄液中に懸濁されている、請求項184記載の組成物。
【請求項187】
リポソーム懸濁液がコレステロール、ステアリルアミン、ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、またはその混合物を含む、請求項183記載の組成物。
【請求項188】
それを必要としている被検体の疼痛を軽減する方法であって、疼痛を軽減するのに有効な量で溶液中に溶解した揮発性麻酔薬を、経口、静脈内または吸入以外の経路で被検体に送達する段階を含み、該溶液が揮発性麻酔薬の揮発性を低減するのに有効な量の抽出溶媒をさらに含み、該組成物が可溶化剤をさらに含む、前記方法。
【請求項189】
抽出溶媒がジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項188記載の方法。
【請求項190】
抽出溶媒がジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびN-メチル-2-ピロリドン(NMP)からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項188記載の方法。
【請求項191】
抽出溶媒がジメチルイソソルビド、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノールからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項188記載の方法。
【請求項192】
抽出溶媒が溶液の約0.1%から約75%を構成する、請求項188記載の方法。
【請求項193】
抽出溶媒が溶液の約0.1%から約25%を構成する、請求項192記載の方法。
【請求項194】
抽出溶媒が溶液の約25%から約75%を構成する、請求項192記載の方法。
【請求項195】
揮発性麻酔薬を局所または部分送達する、請求項188記載の方法。
【請求項196】
揮発性麻酔薬がハロゲン化エーテル麻酔薬である、請求項188記載の方法。
【請求項197】
揮発性麻酔薬をくも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、局所皮膚浸潤、および神経ブロック法から選択される群からの少なくとも1つの経路で送達する、請求項188記載の方法。
【請求項198】
疼痛が慢性疼痛である、請求項188記載の方法。
【請求項199】
疼痛が急性疼痛である、請求項188記載の方法。
【請求項200】
揮発性麻酔薬を手術前、手術中、または手術後に被検体の一部を麻酔するために送達する、請求項188記載の方法。
【請求項201】
揮発性麻酔薬がイソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノンおよびその混合物からなる群より選択される、請求項188記載の方法。
【請求項202】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項188記載の方法。
【請求項203】
揮発性麻酔薬がセボフルランである、請求項188記載の方法。
【請求項204】
揮発性麻酔薬がメトキシフルランである、請求項188記載の方法。
【請求項205】
溶液が約5ng/mlから約100ng/mlの範囲の量の揮発性麻酔薬を含む、請求項188記載の方法。
【請求項206】
溶液が溶液中に約1% v/vから約75% v/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項188記載の方法。
【請求項207】
溶液が溶液中に約5% v/vから約50% v/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項206記載の方法。
【請求項208】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項207記載の方法。
【請求項209】
溶液が人工脳脊髄液を含む、請求項207記載の方法。
【請求項210】
溶液が溶液中に約10% v/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項207記載の方法。
【請求項211】
揮発性麻酔薬がイソフルランであり、溶液が人工脳脊髄液または食塩水を含む、請求項210記載の方法。
【請求項212】
溶液を硬膜外またはくも膜下腔内送達して、脊髄液中250ng/mlから50,000ng/mlの揮発性麻酔薬の用量範囲を達成する、請求項188記載の方法。
【請求項213】
可溶化剤が少なくとも1つのパーフルオロカーボンを含む、請求項188記載の方法。
【請求項214】
可溶化剤が少なくとも1つのシクロデキストリンを含む、請求項188記載の方法。
【請求項215】
可溶化剤がヒト血清アルブミンを含む、請求項188記載の方法。
【請求項216】
揮発性麻酔薬の送達が持続的である、請求項188記載の方法。
【請求項217】
持続的送達が経皮経路または注入ポンプによって達成される、請求項216記載の方法。
【請求項218】
揮発性麻酔薬の送達が周期的である、請求項188記載の方法。
【請求項219】
揮発性麻酔薬の送達が1回事象である、請求項188記載の方法。
【請求項220】
揮発性麻酔薬の送達を周期的および持続的の両方で被検体に別々の場合に投与する、請求項188記載の方法。
【請求項221】
軽減が被検体の体の一部の疼痛知覚の除去を含む、請求項188記載の方法。
【請求項222】
揮発性麻酔薬を含む溶液が無菌である、請求項188記載の方法。
【請求項223】
被検体がヒトである、請求項188記載の方法。
【請求項224】
被検体がマウスまたはラットである、請求項188記載の方法。
【請求項225】
溶液が水、食塩水および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項188記載の方法。
【請求項226】
食塩水が生理食塩水である、請求項225記載の方法。
【請求項227】
抽出溶媒がDMSOであり、揮発性麻酔薬がイソフルランであり、溶液が生理食塩水または人工脳脊髄液を含む、請求項188記載の方法。
【請求項228】
DMSOが溶液の約0.1%から約75%を構成する、請求項227記載の方法。
【請求項229】
疼痛軽減が運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく達成される、請求項188記載の方法。
【請求項230】
揮発性麻酔薬の量を滴定して、運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく疼痛軽減を達成する、請求項188記載の方法。
【請求項231】
揮発性麻酔薬の送達を複数回行い、送達の時機を合わせて、運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく疼痛軽減を達成する、請求項188記載の方法。
【請求項232】
溶液が乳剤の成分である、請求項188記載の方法。
【請求項233】
乳剤が脂質を含む、請求項232記載の方法。
【請求項234】
脂質が乳剤の約1% v/vから99% v/v、約5% v/vから約75% v/v、または約10% v/vから約60% v/vの範囲の量を構成する、請求項233記載の方法。
【請求項235】
脂質がダイズ油を含む、請求項233記載の方法。
【請求項236】
乳剤が乳化剤をさらに含む、請求項232記載の方法。
【請求項237】
乳化剤が卵リン脂質を含む、請求項236記載の方法。
【請求項238】
乳化剤が界面活性剤を含む、請求項236記載の方法。
【請求項239】
乳剤がパーフルオロカーボンを含む、請求項232記載の方法。
【請求項240】
溶液がリポソーム懸濁液の成分である、請求項188記載の方法。
【請求項241】
リポソーム懸濁液がコレステロール、ステアリルアミン、ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、またはその混合物を含む、請求項188記載の方法。
【請求項242】
疼痛を軽減するのに有効な量で溶液中に溶解した揮発性麻酔薬の一定量を含む薬学的に許容される組成物であって、該溶液が揮発性麻酔薬の揮発性を低減するのに有効な量の抽出溶媒をさらに含み、該組成物が可溶化剤をさらに含み、該組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、前記組成物。
【請求項243】
抽出溶媒がジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項242記載の組成物。
【請求項244】
抽出溶媒がN-メチル-2-ピロリドン(NMP)である、請求項242記載の組成物。
【請求項245】
抽出溶媒がジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノールからなる群の少なくとも1つである、請求項242記載の組成物。
【請求項246】
抽出溶媒が溶液の約0.1%から約75%を構成する、請求項242記載の組成物。
【請求項247】
無菌である、請求項242記載の組成物。
【請求項248】
くも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、および神経ブロックからなる群からの送達経路用に製剤される、請求項242記載の組成物。
【請求項249】
溶液が水、食塩水および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項242記載の組成物。
【請求項250】
可溶化剤がパーフルオロカーボンを含む、請求項242記載の組成物。
【請求項251】
可溶化剤がシクロデキストリンを含む、請求項242記載の組成物。
【請求項252】
可溶化剤がヒト血清アルブミンを含む、請求項242記載の組成物。
【請求項253】
食塩水が生理食塩水である、請求項249記載の組成物。
【請求項254】
揮発性麻酔薬がイソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノンおよびその混合物からなる群より選択される、請求項242記載の組成物。
【請求項255】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項254記載の組成物。
【請求項256】
揮発性麻酔薬が約5% v/vから約50% v/vの濃度で水性溶液に溶解されている、請求項254記載の組成物。
【請求項257】
揮発性麻酔薬が約10% v/vの濃度で水性溶液に溶解されている、請求項256記載の組成物。
【請求項258】
揮発性麻酔薬がイソフルランであり、水性溶液が人工脳脊髄液である、請求項256記載の組成物。
【請求項259】
溶液が乳剤の成分である、請求項242記載の組成物。
【請求項260】
乳剤が脂質を含む、請求項259記載の組成物。
【請求項261】
脂質が乳剤の約1% v/vから99% v/v、約5% v/vから約75% v/v、または約10% v/vから約60% v/vの範囲の量を構成する、請求項260記載の組成物。
【請求項262】
脂質がダイズ油を含む、請求項260記載の組成物。
【請求項263】
乳剤が乳化剤をさらに含む、請求項259記載の組成物。
【請求項264】
乳化剤が卵リン脂質を含む、請求項263記載の組成物。
【請求項265】
乳化剤が界面活性剤を含む、請求項263記載の組成物。
【請求項266】
乳剤がパーフルオロカーボンを含む、請求項259記載の組成物。
【請求項267】
溶液がリポソーム懸濁液の成分である、請求項242記載の組成物。
【請求項268】
リポソーム懸濁液がコレステロール、ステアリルアミン、ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、またはその混合物を含む、請求項267記載の組成物。
【請求項269】
それを必要としている被検体の疼痛を軽減する方法であって、疼痛を軽減するのに有効な量でリン脂質の安定化層によって囲まれた揮発性麻酔薬の球を含む微小液滴懸濁液を、経口、静脈内または吸入以外の経路で被検体に送達する段階を含む方法。
【請求項270】
揮発性麻酔薬を局所または部分送達する、請求項269記載の方法。
【請求項271】
揮発性麻酔薬がハロゲン化エーテル麻酔薬である、請求項269記載の方法。
【請求項272】
揮発性麻酔薬をくも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、局所皮膚浸潤、および神経ブロック法から選択される群からの少なくとも1つの経路で送達する、請求項269記載の方法。
【請求項273】
疼痛が慢性疼痛である、請求項269記載の方法。
【請求項274】
疼痛が急性疼痛である、請求項269記載の方法。
【請求項275】
揮発性麻酔薬を手術前、手術中、または手術後に被検体の一部を麻酔するために送達する、請求項269記載の方法。
【請求項276】
揮発性麻酔薬がイソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノンおよびその混合物からなる群より選択される、請求項269記載の方法。
【請求項277】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項276記載の方法。
【請求項278】
揮発性麻酔薬がセボフルランである、請求項276記載の方法。
【請求項279】
揮発性麻酔薬がメトキシフルランである、請求項276記載の方法。
【請求項280】
揮発性麻酔薬が約5ng/mlから約100ng/mlの範囲の量を構成する、請求項269記載の方法。
【請求項281】
揮発性麻酔薬が約1% v/vから約75% v/vを構成する、請求項269記載の方法。
【請求項282】
揮発性麻酔薬が約10% v/vから約50% v/vを構成する、請求項281記載の方法。
【請求項283】
揮発性麻酔薬が約10% v/vを構成する、請求項281記載の方法。
【請求項284】
微小液滴懸濁液が人工脳脊髄液中に懸濁されている、請求項269記載の方法。
【請求項285】
揮発性麻酔薬がイソフルランであり、微小液滴懸濁液が人工脳脊髄液中に懸濁されている、請求項269記載の方法。
【請求項286】
懸濁液を硬膜外またはくも膜下腔内送達して、脊髄液中250ng/mlから50,000ng/mlの揮発性麻酔薬の用量範囲を達成する、請求項269記載の方法。
【請求項287】
懸濁液がパーフルオロカーボンをさらに含む、請求項269記載の方法。
【請求項288】
懸濁液がシクロデキストリンをさらに含む、請求項269記載の方法。
【請求項289】
懸濁液がヒト血清アルブミンをさらに含む、請求項269記載の方法。
【請求項290】
揮発性麻酔薬の送達が持続的である、請求項269記載の方法。
【請求項291】
持続的送達が経皮経路または注入ポンプによって達成される、請求項269記載の方法。
【請求項292】
揮発性麻酔薬の送達が周期的である、請求項269記載の方法。
【請求項293】
揮発性麻酔薬の送達が1回事象である、請求項269記載の方法。
【請求項294】
揮発性麻酔薬の送達を周期的および持続的の両方で被検体に別々の場合に投与する、請求項269記載の方法。
【請求項295】
軽減が被検体の体の一部の疼痛知覚の除去を含む、請求項269記載の方法。
【請求項296】
揮発性麻酔薬を含む懸濁液が無菌である、請求項269記載の方法。
【請求項297】
被検体がヒトである、請求項269記載の方法。
【請求項298】
被検体がマウスまたはラットである、請求項269記載の方法。
【請求項299】
懸濁液が水、食塩水および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項269記載の方法。
【請求項300】
食塩水が生理食塩水である、請求項299記載の方法。
【請求項301】
疼痛軽減が運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく達成される、請求項269記載の方法。
【請求項302】
揮発性麻酔薬の量を滴定して、運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく疼痛軽減を達成する、請求項269記載の方法。
【請求項303】
揮発性麻酔薬の送達を複数回行い、送達の時機を合わせて、運動機能をほとんど、またはまったく阻害することなく疼痛軽減を達成する、請求項269記載の方法。
【請求項304】
リン脂質がホスファチジルコリンである、請求項269記載の方法。
【請求項305】
微小液滴の直径が約200オングストロームから約10,000オングストロームまでの範囲である、請求項269記載の方法。
【請求項306】
微小液滴を超音波処理、ホモジナイゼーション、微小流動化または高度せん断を含む他の方法によって生成し、揮発性麻酔薬の体積とリン脂質層の重量との比が少なくとも1.0ml/gであり、組成物が少なくとも3%w/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項269記載の方法。
【請求項307】
リン脂質の安定化層によって囲まれた揮発性麻酔薬の球を含む微小液滴懸濁液を含む微小液滴懸濁液の一定量を含む薬学的に許容される組成物であって、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、前記組成物。
【請求項308】
無菌である、請求項307記載の組成物。
【請求項309】
くも膜下腔内、硬膜外、経皮、表面、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、および神経ブロックからなる群からの送達経路用に製剤される、請求項307記載の組成物。
【請求項310】
懸濁液が水、食塩水および人工脳脊髄液からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項307記載の組成物。
【請求項311】
食塩水が生理食塩水である、請求項310記載の組成物。
【請求項312】
懸濁液がパーフルオロカーボンをさらに含む、請求項307記載の組成物。
【請求項313】
懸濁液がシクロデキストリンをさらに含む、請求項307記載の組成物。
【請求項314】
懸濁液がヒト血清アルブミンをさらに含む、請求項307記載の組成物。
【請求項315】
揮発性麻酔薬がイソフルラン、ハロタン、エンフルラン、セボフルラン、デスフルラン、メトキシフルラン、キセノンおよびその混合物からなる群より選択される、請求項307記載の組成物。
【請求項316】
揮発性麻酔薬がイソフルランである、請求項315記載の組成物。
【請求項317】
揮発性麻酔薬が約1% v/vから約75% v/vを構成する、請求項307記載の組成物。
【請求項318】
揮発性麻酔薬が約5% v/vから約50% v/vの濃度を構成する、請求項317記載の組成物。
【請求項319】
揮発性麻酔薬が約10% v/vの濃度を構成する、請求項317記載の組成物。
【請求項320】
揮発性麻酔薬がイソフルランであり、微小液滴懸濁液が人工脳脊髄液中に懸濁されている、請求項307記載の組成物。
【請求項321】
リン脂質がホスファチジルコリンである、請求項307記載の組成物。
【請求項322】
微小液滴の直径が約200オングストロームから約10,000オングストロームまでの範囲である、請求項307記載の組成物。
【請求項323】
微小液滴を超音波処理、ホモジナイゼーション、微小流動化または高度せん断を含む他の方法によって生成し、揮発性麻酔薬の体積とリン脂質層の重量との比が少なくとも1.0ml/gであり、少なくとも3%w/vの揮発性麻酔薬を含む、請求項307記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−510092(P2011−510092A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544419(P2010−544419)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/031707
【国際公開番号】WO2009/094460
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510199328)ベイポジェニックス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】