説明

揺動操作型電気部品

【課題】 液体の侵入を防止しつつ操作つまみの機械的強度を確保し、意匠性にも優れた揺動操作型電気部品を提供すること。
【解決手段】 上ケース1に突設した取付枠状部11の相対向する壁部11aに貫通孔11bを形成すると共に、操作つまみ8の内壁部に相対向する向きに突出する一対の回動軸8bを形成し、各回動軸8bを取付枠状部11の外側から各貫通孔11bに挿入して枢着させることにより、操作つまみ8が取付枠状部11を覆った状態で壁部11aに軸支されるようにした。また、仕切り壁12と近傍の壁部11aとの間隔を狭く設定しても操作つまみ8を該壁部11aに確実にスナップイン装着できるようにするため、操作つまみ8の側壁8aにテーパ部8cを形成し、仕切り壁12と対向する側壁8aはテーパ部8cの先端側だけ該仕切り壁12との間隔が若干広くなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作つまみが揺動操作(シーソー操作)されるスイッチ装置や可変抵抗器等の揺動操作型電気部品に係り、特に、その操作つまみの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば車載用パワーウインド装置に適用されるスイッチ装置などとして、揺動操作可能な有底箱形状の操作つまみと、この操作つまみに押圧駆動される移動体を含み該移動体の位置変化に応じて異なる電気信号を出力可能な信号生成部と、この信号生成部を収納したケースとを備え、操作つまみをケースの一部に回動可能に取り付けた揺動操作型電気部品が知られている。
【0003】
図5は、従来のこの種の電気部品における操作つまみの取付構造の一例を示す説明図である(例えば、特許文献1参照)。同図において、有底箱形状の操作つまみ50には、左右の側壁51,52にそれぞれ回動軸53,54が外向きに突出形成されている。この操作つまみ50は、ケースの一部である相対向する壁部55,56の間に組み込まれており、各壁部55,56に形成された貫通孔55a,56aに回動軸53,54を内側から挿入して枢着させている。ただし、両壁部55,56の間隔に比べて、両回動軸53,54を含めた操作つまみ50の幅寸法は若干大きく設定されており、この操作つまみ50を取り付ける際には、側壁51,52等の撓みを利用して操作つまみ50を両壁部55,56の間に圧入していき、各回動軸53,54を対応する貫通孔55a,56aにスナップインさせる。これにより、操作つまみ50はケースの両壁部55,56に回動自在に支持されることとなり、その回動範囲を所定角度内に規制することによって、操作つまみ50の揺動操作が可能となる。
【0004】
また、他の従来例として、ケースの相対向する壁部にそれぞれ軸部を外向きに突出形成すると共に、各軸部を挿入させるための取付孔を操作つまみの一対の側壁に形成し、これら一対の側壁でケースの両壁部を挟み込むようにして各取付孔内に対応する軸部をスナップインさせることにより、操作つまみをケースの壁部に装着するという取付構造も知られている。
【特許文献1】特開平9−259703号公報(第2頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示す従来の揺動操作型電気部品では、ケースの両壁部55,56の間に操作つまみ50が揺動可能に組み込まれており、かつ、回動軸53,54が挿入されている貫通孔55a,56aが外部に露出しているため、雨水や飲み物等の液体が掛かった場合、壁部55,56と側壁51,52との間の隙間や、貫通孔55a,56aと回動軸53,54との間の隙間などを通って、該液体がケースの内部へ入り込みやすくなる。しかるに、ケースの内部には接点部等の信号生成部が収納されているので、この信号生成部に外部から浸入した液体が付着すると、短絡事故や腐食を引き起こす危険性が高まり、信頼性が著しく損なわれるという問題がある。また、操作つまみ50の回動軸53,54が外部から見えてしまうため、意匠性という面からも改善の余地がある。
【0006】
一方、後者の従来例では、ケースの相対向する壁部を覆うようにして操作つまみを取り付けることができるため、雨水や飲み物等の液体がケースの内部へ入り込みにくい構造をある程度実現することはできるが、ケース側の軸部を挿入した操作つまみの取付孔が外部に露出しているため、これら取付孔と軸部との間の隙間を経由してケースの内部へ該液体が入り込む可能性はあり、よって該液体の浸入を確実に防止できるとは言い難い。また、一般的に操作つまみはケースほど剛性が高くはないので、操作つまみの取付孔にケースの軸部を係合させるという構造を採用すると、操作つまみの取付孔周縁部の機械的強度が不足して破損事故を招来しやすいという問題がある。また、この従来例の場合も、操作つまみの取付孔やケース側の軸部が外部から見えてしまうため、意匠性において改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、液体の侵入を防止しつつ操作つまみの機械的強度を確保し、意匠性にも優れた揺動操作型電気部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明による揺動操作型電気部品では、揺動操作可能に保持された有底箱形状の操作つまみと、この操作つまみに押圧駆動される移動体を含み該移動体の位置変化に応じて異なる電気信号を出力可能な信号生成部と、前記操作つまみを軸支する取付枠状部を突設して前記信号生成部を収納したケースとを備え、前記操作つまみの内壁部に相対向する向きに突出する一対の回動軸を形成すると共に、前記取付枠状部の相対向する一対の壁部にそれぞれ貫通孔を形成し、前記回動軸を前記取付枠状部の外側から前記貫通孔に挿入して枢着させる構成とした。
【0009】
このようにケースに突設した取付枠状部が一対の貫通孔を有し、操作つまみの両回動軸を取付枠状部の外側から各貫通孔に挿入して枢着させれば、取付枠状部に軸支される操作つまみによって該取付枠状部を覆うことができ、回動軸や貫通孔が外部に露出することもなくなるため、雨水や飲み物等の液体が掛かっても該液体がケースの内部へ入り込む可能性は極めて低くなる。それゆえ、該液体の浸入に起因する信号生成部の短絡事故や腐食を確実に防止でき、信頼性が向上する。また、高剛性のケース側に形成した貫通孔に操作つまみに形成した回動軸を挿入するという取付構造になっているため、ケース側の軸部を操作つまみ側の孔に挿入するという取付構造に比べて、操作つまみの機械的強度を確保しやすい。また、操作つまみの回動軸や取付枠状部の貫通孔が外部に露出しないため、意匠性も高めやすい。
【0010】
上記の構成において、前記ケースには少なくとも、前記貫通孔の存する面どうしを隣接させて並列に配置した2個の前記取付枠状部と、これら取付枠状部どうしの間に位置する仕切り壁とが突設してあり、かつ、前記操作つまみの開口端部における前記仕切り壁と対向する側壁には、先端側を漸次薄肉にして前記仕切り壁との間隔を漸増させたテーパ部が形成してある場合、操作者の肘が触れる等の意図せぬ力が作用しても、仕切り壁の存在によって操作つまみの誤操作を防止できて安全性が高まると共に、並設された操作つまみどうしの間隔を狭く設定しても、仕切り壁の存在によって手指の感触で各操作つまみを明瞭に識別することができ、それゆえ、車載用パワーウインド装置等に好適な揺動操作型電気部品が得られる。また、操作つまみを取付枠状部にスナップイン装着させる際に、操作つまみは回動軸を有する側壁を外側へ撓ませることになるが、仕切り壁と対向する側壁に前記テーパ部が形成してあり、このテーパ部は取付時に外側へ撓んでも操作つまみの幅寸法をさほど増大させないので、仕切り壁とこれに対向する側壁との間隔を極めて狭く設定して装置全体の小型化を図りつつ、操作つまみを取付枠状部に簡単かつ確実に取り付けることが可能となる。
【0011】
また、上記の構成において、前記信号生成部に抵抗体や摺動子等を配設して揺動操作型可変抵抗器となすことも可能であるが、前記信号生成部に、前記移動体によって駆動される複数の可動接点と、これらの可動接点に接離可能な複数の固定接点とが配設されている場合、車載用パワーウインド装置に好適な操作スイッチが得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の揺動操作型電気部品は、操作つまみの内壁部に形成されて相対向する一対の回動軸を、ケースに突設した取付枠状部に形成されている一対の貫通孔に外側から挿入して枢着させることにより、取付枠状部を覆う操作つまみが該取付枠状部に軸支されるという取付構造を採用しているため、雨水や飲み物等の液体がケースの内部へ入り込む可能性が極めて低く、操作つまみの機械的強度も確保しやすくなり、信頼性の高い揺動操作型電気部品が得られる。また、操作つまみの回動軸や取付枠状部の貫通孔が外部に露出しないため、意匠性も高めやすくなる。
【0013】
特に、並列に配置した2個の取付枠状部の間に仕切り壁を突設した構成において、この仕切り壁と対向する操作つまみの側壁に、先端側を漸次薄肉にして仕切り壁との間隔を漸増させたテーパ部を形成しておけば、仕切り壁と該側壁との間隔を極めて狭く設定して装置全体の小型化を図りつつ、操作つまみを取付枠状部に簡単かつ確実に取り付けることが可能となるため、車載用パワーウインド装置等に好適な揺動操作型電気部品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るスイッチ装置の分解斜視図、図2は該スイッチ装置の断面図、図3は該スイッチ装置の操作つまみを取り付ける際の組立工程を示す説明図、図4は該スイッチ装置の接点部の構成を示す説明図である。
【0015】
本実施形態例に係るスイッチ装置は車載用パワーウインド装置の操作スイッチとして使用されるものであり、このスイッチ装置は、筐体を構成する上ケース1および下ケース2と、この筐体の内部に設置された回路基板3と、複数箇所に中空凸状部5を有して回路基板3上に載置されたクリックゴム4と、複数の中空凸状部5上に横架されたカム部材6と、このカム部材6を押圧駆動するスライダ7と、上ケース1に取り付けられた4個の操作つまみ8および大小の操作体9,10とによって主に構成されている。
【0016】
上ケース1の上面には、各操作つまみ8に対応する取付枠状部11が4箇所に突設されていると共に、近接して並設された2個の取付枠状部11の間に仕切り壁12が突設されている。各取付枠状部11の形状や大きさはすべて同じであり、いずれも、相対向する一対の壁部11aにそれぞれ操作つまみ8を揺動可能に軸支するための貫通孔11bが形成されている。また、仕切り壁12とその両側に位置する取付枠状部11との間隔は狭く設定されており、それゆえ取付枠状部11に装着した操作つまみ8と仕切り壁12との間隔は極めて狭くなっている。ただし、取付枠状部11と仕切り壁12との間隔が狭くても、スライドコア等を用いることにより各取付枠状部11に貫通孔11bを形成することは容易である。この上ケース1の側面には複数箇所に係合孔1aが形成されており、一方、下ケース2の側面には複数箇所に係止突起2aが形成されている。これらの上ケース1と下ケース2は、各係止突起2aを対応する係合孔1aに嵌め入れることによって一体化される。
【0017】
回路基板3には、複数の固定接点13(図4参照)を含む図示せぬ回路パターンが形成されていると共に、LEDやコンデンサ等の図示せぬ各種電子部品が実装されている。
【0018】
クリックゴム4は、回路基板3上に被着される平板部4aの複数箇所に中空凸状部5が立設された一体成形品であって、各中空凸状部5は各固定接点13と対応する位置に配置されている。図4に示すように、中空凸状部5には、平板部4aから膨出するドーム形状の弾性変形部5aと、弾性変形部5aの上端を蓋閉する円柱状のステム5bと、ステム5bの略中央から上方へ突出する凸部5cとが形成されており、ステム5bの下面には固定接点13と接離可能な可動接点14が設けられている。なお、中空凸状部5は同一高さで形状が若干異なる2種類のものが交互に配設されており、一方は凸部5cが大径でステム5bが短く形成されているのに対し、他方は凸部5cが小径でステム5bが長めに形成されている。そのため、前者の中空凸状部5に比べて後者の中空凸状部5は、可動接点14を固定接点13に接触させるまでの作動ストロークが短くなっている。ただし、これら2種類の中空凸状部5の基本的な構成は同等である。
【0019】
カム部材6は、隣接する2個の中空凸状部5上に横架されて操作つまみ8の押圧力を受ける受圧部6aを一対備えており、これら一対の受圧部6aを薄肉で細長い橋絡部6bによって連結した形状に成形されている。受圧部6aの両端部には大小の嵌合孔6cが形成されており、各嵌合孔6cに中空凸状部5の凸部5cが圧入により強嵌合される。つまり、受圧部6aの一端側の大径な嵌合孔6cに大径な凸部5cが強嵌合され、他端側の小径な嵌合孔6cに小径な凸部5cが強嵌合される。これにより、隣接する2個の中空凸状部5によって受圧部6aを水平に保持することができると共に、受圧部6aを介して中空凸状部5に操作つまみ8の押圧力を付与することができる。ただし、橋絡部6bが弾性に富むため、カム部材6を構成する一対の受圧部6aは独立に動作させることができる。
【0020】
スライダ7は、上ケース1に昇降可能に組み込まれて受圧部6aと操作つまみ8との間に介装される押圧片である。このスライダ7の下端部にはカム部材6の受圧部6aに当接する押圧突起7aが形成されており、スライダ7の側面には位置決め用の突条部7bが形成されている。また、図示していないが、上ケース1の上底部には各スライダ7が収納されるスロット状の空所が複数箇所に形成されていると共に、これら空所の壁面にガイド溝が形成されており、このガイド溝に突条部7bを挿入した状態で各空所内にそれぞれスライダ7を昇降可能に配置させている。したがって、スライダ7は上ケース1の所定位置に正確に組み込まれており、昇降動作時にスライダ7が傾くこともない。なお、スライダ7の押圧突起7aは、受圧部6aの中心位置ではなく一端側へ偏った位置に当接される。具体的には、受圧部6aのうち小径な嵌合孔6cに近い側(大径な嵌合孔6cから遠い側)に押圧突起7aが当接される。これは、操作つまみ8に押し込まれてスライダ7が下降したときに、受圧部6aが横架されている2種類の中空凸状部5のうち、凸部5cが大径で作動ストロークが比較的長い一方の中空凸状部5よりも、凸部5cが小径で作動ストロークが短い他方の中空凸状部5の弾性変形部5aを先に座屈させるためである。
【0021】
操作つまみ8は、下端側が開口端となっている有底箱形状の成形品であり、略平行な一対の側壁8aの内壁面にそれぞれ回動軸8bが形成されている。これら一対の回動軸8bは相対向する向きに突出しており、両回動軸8bを上ケース1の取付枠状部11の相対向する壁部11aに形成されている一対の貫通孔11bに外側から挿入して枢着させるというスナップイン装着によって、操作つまみ8は取付枠状部11を覆った状態で壁部11aに揺動操作可能に保持される。また、操作つまみ8の一対の側壁8aの下端部には、先端側が漸次薄肉で外壁が傾斜面となっているテーパ部8cが形成されており、仕切り壁12と対向する側壁8aのテーパ部8cが先端側で該仕切り壁12との間隔を漸増させていることから、操作つまみ8の取付時に必要となる該側壁8aの逃げスペースが確保されている。すなわち、操作つまみ8を取付枠状部11にスナップイン装着させる際には、回動軸8bを有する側壁8aを外側へ撓ませなければならないが、仕切り壁12と対向する側壁8aの場合、必要量だけ撓ませるために仕切り壁12との間隔を広げると上ケース1の幅寸法が不所望に増大してしまう。そこで、予め側壁8aの下端部をテーパ部8cとなして外側に逃げスペースを設けておくことにより、図3に示すように、該側壁8aが取付時に必要量だけ撓んでも近傍の仕切り壁12に当接しないようにしてある。なお、図示していないが、操作つまみ8の上底部には複数の駆動突起が下向きに突出形成されており、これら駆動突起がカム部材6の異なる受圧部6aに対応する2個のスライダ7上に配置されることにより、各スライダ7が選択的に押し込めるようになっている。つまり、操作つまみ8が一方向へ揺動操作されると一方のスライダ7が押し込まれて下降し、操作つまみ8が逆方向へ揺動操作されると他方のスライダ7が押し込まれて下降するようになっている。
【0022】
このように構成されたスイッチ装置を組み立てる際には、中空凸状部5の凸部5cを受圧部6aの嵌合孔6cに強嵌合することによってカム部材6をクリックゴム4に取り付けた後、このクリックゴム4を回路基板3上に載置し、この回路基板3を下ケース2内に収納して固定する。また、操作つまみ8や操作体9,10を上ケース1の上面に取り付けると共に、スライダ7を上ケース1の上底部に組み込む。そして、係止突起2aを係合孔1aに嵌め入れることによって、上ケース1と下ケース2とを一体化する。
【0023】
次に、上述したスイッチ装置の動作について説明すると、非操作時には操作つまみ8がスライダ7を押し込んでいないため、2個の中空凸状部5上に横架されている受圧部6aに対して操作つまみ8の押圧力は付与されず、この受圧部6aは中空凸状部5によって水平に保持されている。この状態で、各中空凸状部5の弾性変形部5aは図2に示すように座屈しておらず、よって可動接点14は対応する固定接点13から離隔してスイッチオフ状態となっている。
【0024】
この状態で操作者が操作つまみ8を一方向へ回転させる揺動操作を行うと、前記駆動突起が下降する側でスライダ7が押し込まれるため、このスライダ7が受圧部6aを押圧駆動して、まず作動ストロークの短い中空凸状部5の弾性変形部5aが座屈し、この中空凸状部5内の可動接点14が対応する固定接点13に接触して第1のスイッチオン信号が出力される。このスイッチオン信号はウインドを開方向に動作させるための駆動信号として利用される。また、中空凸状部5の座屈に伴うクリック感触が操作つまみ8に伝達されるため、操作者はウインドを開駆動させるオン操作が行えたことを手指にて感得することができる。
【0025】
この後、操作つまみ8に対する操作力を除去すると、座屈状態にある中空凸状部5の弾性変形部5aがドーム形状に復元するため、この中空凸状部5上の受圧部6aが押し上げられてスライダ7が上昇し、それに伴って操作つまみ8が非操作時の姿勢に自動復帰すると共に、この中空凸状部5内の可動接点14が対応する固定接点13から離隔してスイッチオフ状態に戻る。
【0026】
しかるに、操作力を除去するのではなく、操作つまみ8を前記一方向へさらに深く回転させる揺動操作を行った場合には、作動ストロークの短い中空凸状部5を座屈させて傾いている受圧部6aがスライダ7によってさらに押し込まれることになるので、この受圧部6aの該中空凸状部5側とは逆側の端部が下方に位置する別の中空凸状部5、つまり作動ストロークの長い中空凸状部5を押し込んでその弾性変形部5aを座屈させる。これにより、受圧部6aが横架されている2個の中空凸状部5内の可動接点14がいずれも対応する固定接点13に接触した状態となるため、それに伴う第2のスイッチオン信号が出力される。このスイッチオン信号はウインドを全開させるための駆動信号として利用される。また、作動ストロークの長い中空凸状部5の座屈に伴うクリック感触が操作つまみ8に伝達されるため、操作者はウインドを全開させるオン操作が行えたことを手指にて感得することができる。
【0027】
こうしてウインドを全開させるオン操作を行った後、操作つまみ8に対する操作力を除去すると、座屈状態にある2個の中空凸状部5の弾性変形部5aがそれぞれドーム形状に復元するため、両中空凸状部5上に横架されている受圧部6aが押し上げられてスライダ7が上昇し、それに伴って操作つまみ8が非操作時の姿勢に自動復帰すると共に、両中空凸状部5内の可動接点14がいずれも対応する固定接点13から離隔してスイッチオフ状態に戻る。
【0028】
なお、非操作状態で操作つまみ8を他方向へ回転操作した場合の動作も基本的に同じであり、操作つまみ8を浅く回転させる揺動操作によって作動ストロークの短い中空凸状部5のみを座屈させることができるため、この中空凸状部5の座屈動作に伴い、ウインドを閉方向に動作させるための駆動信号として利用される第3のスイッチオン信号を出力させることができ、操作力を除去すれば初期状態に自動復帰する。また、操作つまみ8を深く回転させる揺動操作によって、作動ストロークの短い中空凸状部5だけでなく作動ストロークの長い中空凸状部5も座屈させることができるため、これら両中空凸状部5の座屈動作に伴い、ウインドを全閉させるための駆動信号として利用される第4のスイッチオン信号を出力させることができ、操作力を除去すれば初期状態に自動復帰する。
【0029】
このように本実施形態例に係るスイッチ装置は、上ケース1に突設した取付枠状部11の相対向する壁部11aがそれぞれ貫通孔11bを有し、操作つまみ8の両回動軸8bを取付枠状部11の外側から各貫通孔11bに挿入して枢着させているので、操作つまみ8が取付枠状部11を覆った状態で壁部11aに軸支されており、回動軸8bや貫通孔11bが外部に露出することもない。そのため、操作つまみ8やその周辺に雨水や飲み物等の液体が掛かったとしても、その液体が上ケース1の内部へ入り込む可能性は極めて低く、こうした液体の浸入に起因する接点部や電子部品の短絡事故や腐食を確実に防止できて信頼性が向上している。また、上ケース1の一部で比較的剛性が高い取付枠状部11に形成した貫通孔11bに、操作つまみ8に形成した回動軸8bを挿入するという取付構造になっているため、ケース側の軸部を操作つまみ側の孔に挿入するという取付構造に比べて、操作つまみ8の機械的強度が確保しやすい。また、操作つまみ8の回動軸8bや取付枠状部11の貫通孔11bが外部に露出しないため、貫通孔11bを覆う部材を別途設ける等の必要がなくなり、小型でかつ意匠性も高めやすい。
【0030】
また、本実施形態例に係るスイッチ装置では、上ケース1の上面で近接して並設された2個の取付枠状部11の間に仕切り壁12を突設し、この仕切り壁12と近傍の操作つまみ8との間隔を極めて狭く設定してあるため、仕切り壁12によって誤操作を防止しつつ、上ケース1の幅寸法を抑えた小型化が実現されている。すなわち、操作者の肘が触れる等の意図せぬ力が作用しても、仕切り壁12の存在によって操作つまみ8が誤って押し込まれることを防止できて安全性が高まると共に、並設された操作つまみ8どうしの間隔が狭くても、両者間に仕切り壁12が存在することによって手指の感触で各操作つまみ8を明瞭に識別できる。また、操作つまみ8には仕切り壁12と対向する側壁8aの下端部にテーパ部8cが形成してあり、このテーパ部8cは取付時に外側へ撓んでも操作つまみ8の幅寸法をさほど増大させないので、仕切り壁12とこれに対向する側壁8aとの間隔を極めて狭く設定して装置全体の小型化を図りつつ、操作つまみ8を取付枠状部11に簡単かつ確実に取り付けられるようになっている。
【0031】
なお、本実施形態例では、仕切り壁12と対向しない側壁8aの下端部にもテーパ部8cが形成してあるが、これは、各操作つまみ8を共通化して部品コストを低減するためである。
【0032】
また、本実施形態例では、移動体をスライダ7とカム部材6で構成した場合について説明したが、必要に応じてこれら部材の一部を省略してもよく、あるいは他の公知の機構を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態例に係るスイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】該スイッチ装置の断面図である。
【図3】該スイッチ装置の操作つまみを取り付ける際の組立工程を示す説明図である。
【図4】該スイッチ装置の接点部の構成を示す説明図である。
【図5】従来例に係る操作つまみの取付構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 上ケース
2 下ケース
3 回路基板
4 クリックゴム
5 中空凸状部
6 カム部材
6a 受圧部
7 スライダ
7a 押圧突起
8 操作つまみ
8a 側壁
8b 回動軸
8c テーパ部
11 取付枠状部
11a 壁部
11b 貫通孔
12 仕切り壁
13 固定接点
14 可動接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動操作可能に保持された有底箱形状の操作つまみと、この操作つまみに押圧駆動される移動体を含み該移動体の位置変化に応じて異なる電気信号を出力可能な信号生成部と、前記操作つまみを軸支する取付枠状部を突設して前記信号生成部を収納したケースとを備え、
前記操作つまみの内壁部に相対向する向きに突出する一対の回動軸を形成すると共に、前記取付枠状部の相対向する一対の壁部にそれぞれ貫通孔を形成し、前記回動軸を前記取付枠状部の外側から前記貫通孔に挿入して枢着させたことを特徴とする揺動操作型電気部品。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記ケースには少なくとも、前記貫通孔の存する面どうしを隣接させて並列に配置した2個の前記取付枠状部と、これら取付枠状部どうしの間に位置する仕切り壁とが突設してあり、かつ、前記操作つまみの開口端部における前記仕切り壁と対向する側壁には、先端側を漸次薄肉にして前記仕切り壁との間隔を漸増させたテーパ部が形成してあることを特徴とする揺動操作型電気部品。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記信号生成部に、前記移動体によって駆動される複数の可動接点と、これらの可動接点に接離可能な複数の固定接点とが配設されていることを特徴とする揺動操作型電気部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−85946(P2006−85946A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267210(P2004−267210)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】