説明

損傷した哺乳類神経組織を治療するためのピリジン類

本発明は、新規なピリジン類、そのようなピリジン類を含む医薬組成物類および、限定はされないが、1つの実施態様において損傷脊椎などの損傷した哺乳類の神経組織の治療におけるそのような組成物類の使用、化合物類、組成物類を提供し、本発明の方法は、神経組織損傷を通る活動電位もしくは神経インパルス伝導を回復することにより哺乳類の神経組織損傷を治療する。有意に、本発明の化合物の生体内適用は、SSEP試験に基づいて、化合物が既知の薬剤4-アミノピリジン(4-AP)での匹敵する治療よりも低濃度でより長く続く効果を与えることを確立した。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照によって本明細書に取り込まれる、2002年12月6日に出願された米国仮特許出願出願番号60/431,637に対して、U. S. C. §119 (e) の下に優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、新規なピリジン類、そのようなピリジン類を含む医薬組成物および、限定はされないが、損傷脊椎などの損傷した哺乳類の神経組織の治療においてそのような組成物を使用する方法を提供する。1実施態様において、本発明の化合物、組成物および方法は、神経組織損傷を通る活動電位もしくは神経インパルス伝導を回復することにより哺乳類の神経組織損傷を治療する。有意に、本発明の化合物の生体内適用は、SSEP試験に基づいて、本発明の化合物が公知の薬剤4-アミノピリジン(4-AP)での比較治療よりも低濃度でより長く続く効果を与えることを確立した。本発明の方法は、病気もしくは物理的外傷により起こるニューロンの損傷の修復を促進するために用いることができる。
【0003】
発明の背景
脊髄損傷後の機能の損失に対する生物学的原理は、脊髄を「上行および下行」する神経インパルス伝達の排除である。損傷の古さには関係なく、部分的な機能回復のための原理は、本発明の場合には薬理学的手段によるが、そのような神経インパルスの回復である。
【0004】
哺乳動物の神経系の機械的損傷は、ときには取り返しのできない機能欠乏をもたらす。末梢神経系(peripheral nervous system: PNS)もしくは中枢神経系(central nervous system: CNS)の両方に対する外傷に関連するほとんどの機能欠乏は、神経繊維に沿った神経インパルス通行の流れをブロックする神経繊維もしくは軸索への損傷から起こる。これは、軸索切断により生じるケーブルにおける物理的中断によるかもしれない。膜がもはやイオン壁として機能しない、および/または焦点的に脱髄化する場合にも遮断が起こり得る[Honmou, O. and Young, W. (1995) Traumatic injury to the spinal axons (Waxman, S. G., Kocsis, J. D., Stys, P. K., Eds.): The Axon, New York: Oxford UP, pp 480-503; Maxwell, W. L. (1996): Histopathological changes at central nodes of ravier after stretch-injury, Microscopy Research and Technique, 34: 522-535; Maxwell, W. L., Watt, C., Graham, DI., Gennarelli, LA. (1993):Ultrastructural evidence of axonal shearing as a result of lateral acceleration of the head in non-human primates, Acta Neuropathol, 86: 136-144; Maxwell, W. L., Graham, D. I. (1997): Loss of axonal microtubules and neurofilaments after stretch-injury to guinea pig optic nerve fibers, J Neurotrauma, 14: 603-614; Blight, AR. (1993): Remyelination, Revascularization, and Recovery of Function in Experimental Spinal Cord Injury (Seil, F. J., Ed.): Advances in Neurobiology: Neural Injury and Regeneration, Vol. 59, New York, Raven Press, pp. 91-103]。いずれの場合も、機能欠乏は、神経インパルス伝導における破壊が理由で起こる。脊髄損傷に関連する重い行動欠乏ですら、白質への初期の機械的損傷によるところが大きいと、今では理解されている[Blight, A. R. : Morphometric analysis of a model of spinal cord injury in guinea pigs, with behavioral evidence of delayed secondary pathology, J. Neurolog, Sci., 103: 156-171, 1991]。遅発であるが進行性症状の出現、いわゆる「二次損傷」の[Honmou and Young, W. (1995): Traumatic injury to the spinal axons (Waxman, S. G., Kocsis, J. D., Stys, P. K., Eds.): The Axon, New York: Oxford UP pp 480-503; Young, W. (1993): Secondary injury mechanisms in acute spinal cord injury, J. Emerg. Med., 11: 13-22]は、その後空洞化された挫傷のある脊髄の典型的な臨床像に導く損傷および難治性行動を逐次的に拡大する。
【0005】
脊髄損傷は、ヒトが経験する臨床的損傷においてすら脊髄に対する圧迫損傷である。脊髄が「切断される」という一般的な考えは、脊髄の横方向への真の解剖切開がヒトの損傷では極めて稀であるので、大部分正しくない。損傷後、可変量(すなわち「rind」)の脊髄の白質が、損傷を受けないまま残される。しかし、解剖学的に損傷を受けていない神経繊維のこの領域は、機能しない。特に、この局部的領域(通常大きさは1椎骨セグメント未満)は、損傷の領域を通る神経インパルスを伝導しない。これは、脱髄および他の要因のせいと信じられている。損失、すなわち、神経プロセスを絶縁するミエリンの減少した厚さは、ランビエ節(Nodes of Ranvier)で伝導遮断を起こす。これは、いわゆる「ボルテージゲーテッド」(voltage gated)の速いカリウムチャンネルが、ミエリンの絶縁層の下にある有髄の神経繊維におけるパラノダル領域に集中するからである。傷害後、ミエリンが縮むか、あるいは損失すると、カリウムチャンネルのクラスターが、細胞外液にさらされ、その電気的絶縁も奪われる。これらのむき出しのチャンネル中のカリウム損失は、カリウムの細胞外濃度を増大させ、かつ神経インパルスを消滅させる手助けをする(現実にはこの局部的神経膜の減極作用)。実際、脊髄損傷に近い細胞外微小環境は、カリウムが豊富であり、それ自体により、神経組織が正常に機能する能力を弱めることは周知であ。Eidelberg他、(1975), Immediate consequences of spinal cord injury: Possible role of potassium in axonal conduction block, Surg Neurol 3:317-321。
【0006】
さらに、ミエリンの電気的絶縁能力の損失は、神経インパルスが結節性領域を横断し始めることができる前に神経インパルスを消滅させる手助けをする短絡カリウムの流れを容易にする。Blight A. R. (1993), "Remyelination, revascularization, and recovery of function in experimental spiral cord injury", Seil F. J. (ed) Advances in neurobiology: Neural injury and regeneration (vol) 59 pp 91-103。神経繊維内部から外部環境へのカリウムのこの脱出を遮断する薬剤(いわゆるチャンネルブロッカー)は、ヒト患者における種々の回復機能に関連する脊髄損傷を通る活動電位(すなわち神経インパルス)伝導の回復のための生物学的原理であると信じられている。Hayes K. C.他(1993) Pre-clinical trial of 4-Aminopyridine in patients with chronic spinal cord injury, Paraplegia 31:216-224; Hayes K. C.(1994) 4-Aminopyridine and spiral cord injury: A review, Restor Neurol Neurosci 6:259-270; Hansebout R. R., Blight他(1993) 4-Aminopyridine in chronic spinal cord injury: A controlled, double-blind, crossover study in eight patients. J Neurotrauma 10:19-24。このタイプの唯一の薬剤である4-アミノピリジン(いわゆる、ファムプリジン(Fampridine)と呼ばれる)薬剤の「経時的放出」形態の薬物は、麻痺したヒトの神経機能の回復に有望であることを示した。しかし、臨床学的に意義ある機能回復は、治療人口の約30%にしか起こらず、残りにおいては、これらの回復は、薬剤の必要濃度で生じる多くの望ましくない副作用と関連する。そのような許容されない副作用には、天秤の一方の端で中程度の平衡損失のめまい感、他方では発作の可能性まで、含まれる。
【0007】
この問題は非常に重大なものなので、脳脊髄液への4-AP直接注入は、犬に適用され、Pratt K.他 (1995) Plasma and cerebral spinal fluid concentrations of 4-Aminopyridine following intravenous injection and metered intrathecal delivery in canines, J Neurotrauma 12:23-39、そして最近6人のヒト患者で試された。Halter J. A.他 (2000) Intrathecal administration of 4-Aminopyridine in chronic spinal injured patients, Spinal Cord 12:7828-232。これは、理論的に、血液の高濃度を排除しながら、脊髄損傷に直接高濃度の薬剤を与えるであろう。そのような鞘内投与が可能である一方、特別なポンプを移植し、損傷した脊髄にカニューレ挿入するためには広範囲の複雑な外科的手術を必要とする。したがって、脊髄損傷の治療に有用で、前述の欠陥に悩むことのない改善された化合物、医薬組成物、および方法に対する需要が存在する。特に、哺乳類のCNS組織、特に脊髄組織への外傷の損傷結果をそれの生体内治療により減少させる化合物、組成物および方法に対する需要が存在する。
【0008】
発明の目的
本発明の1つの目的は、損傷脊椎(これに限定はされない)などの損傷した哺乳類の神経組織の治療に有用な新規な化合物類、医薬組成物および、方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、損傷脊椎(これに限定はされない)などの損傷した哺乳類の神経組織の治療に有用で、損傷を通る活動電位もしくは神経インパルス伝導を回復する新規な化合物、医薬組成物および、方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、哺乳類の神経組織、特に脊髄組織への外傷の損傷結果をそれの生体内治療により減少させる化合物、組成物および方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、化合物、組成物および、神経組織の成長もしくは増殖を刺激する方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、損傷脊椎(これに限定はされない)などの損傷した哺乳類の神経組織の治療に有用で、望ましくない副作用がなく、必要とする被検者に容易に施すことができる新規な化合物、医薬組成物および、方法を提供することである。
【0012】
発明の概要
前述の目的によれば、本発明は、新規な置換ピリジン類、そのようなピリジン類を含む医薬組成物類、および、損傷脊椎(これに限定はされない)を含む損傷した哺乳類の神経組織の治療においてそのようなピリジン類を使用する方法を提供する。1実施態様において、本発明の化合物、組成物および方法は、神経組織損傷を通る活動電位もしくは神経インパルス伝導を回復することにより哺乳類の神経組織損傷を治療する。有意に、本発明の化合物の生体内適用は、以下に定義されるSSEP試験に基づいて、化合物が公知の薬剤4-APでの比較治療よりも低濃度でより長く続く効果を与えることを示した。化合物は、生体内投与で、神経組織損傷を通る神経インパルス伝導を回復することにより外傷CNS組織損傷の有害な結果を減少させた。
【0013】
本発明の化合物、組成物および方法は、比較的望ましくない副作用がなく、必要とする被検者に容易に施すことができる。本発明の置換ピリジンは、以前認識されなかったカリウムチャンネルブロッキング活性を示し、哺乳動物に安全に送達され、既知の薬剤4 -APよりも低濃度で作用し、単一の投与適用で延長された期間有効である。本発明のピリジンの例は、下記式(I)により与えられる。本発明のピリジンの製剤学的に許容される塩類、溶媒和化合物類および多形体類も企図されることを理解すべきである。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、R1は、HもしくはC1-C4アルキル基であり;
R2は、下記式の基:
【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
もしくはOR基であり;
R3は、H、C1-C20アルキル基、OR基、下記式のアルキレンエステル基:
【0019】
【化4】

【0020】
アミン基-NR11R12もしくは-(CH2)m=基(ここでは、mは、1〜3であり、R6と環を形成する)であり、Rは、C1-C20アルキル基(好ましくはC1-C6アルキル基)、アリール基(好ましくはフェニル)もしくはアルキレンアリール基であり(アルキレン基は、C1-C20アルキレン基、好ましくはC1-C3アルキレン基であり、アリール基は、好ましくはフェニル基である)、R10は、C1-C10アルキル基(好ましくはC1-C3アルキル基)であり、nは、1〜20であり(好ましくは1〜3)、R11は、前述のH、C1-C4アルキル、アリール、アルキレンアリール(アルキレン基は、長さが20炭素単位以下であり、アリール基は、好ましくはフェニルである)もしくはアルキレンエステル基から選ばれ、R12は、前述のH、C1-C4アルキル、アリール、アルキレンアリール(アルキレン基は、長さが20炭素単位以下であり、アリール基は、好ましくはフェニルである)もしくはアルキレンエステル基から選ばれるか、あるいは-(CH2)z-基であり(ここでは、zは、R12がR6と環を形成するように、0〜2である)、好ましくはR11およびR12の一方がH以外のものであるとき、R11もしくはR12の他方はHであり;R6は、H、C1-C4アルキル、F、Cl、Br、I、NO2もしくはNR13R14基であり(式中、R13は、HもしくはC1〜C3アルキル基であり、R14は、-(CH2)m-基であり(ここでは、mは、0〜3であり、R3が不在のとき、下記式の基と環を形成する:
【0021】
【化5】

【0022】
));そしてR7、R8およびR9のそれぞれは、独立してH、C1-C4アルキル、F、Cl、Br、IもしくはNO2から選ばれ、好ましくはR7、R8およびR9の少なくとも2つ、より好ましくは3つは、Hである。
【0023】
本発明には、式(I)の化合物の製剤学的に許容される酸付加塩類が含まれる。本発明の前述した塩基化合物の製剤学的に許容される酸付加塩類を調製するために用いられる酸類は、非毒性酸付加塩類、すなわち、ヒドロクロライド、ヒドロブロマイド、ヒドロヨーダイド、ニトレート、サルフェート、ビサルフェート、ホスフェート、酸ホスフェート、アセテート、ラクテート、シトレート、酸シトレート、タルトレート、ビタルトレート、スクシネート、マレエート、フマレート、グルコネート、サッカレート、ベンゾエート、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネートおよびパモエート[すなわち、1,1'-メチレン-ビス(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)]塩などの製剤学的に許容されるアニオンを含む塩類を形成するものである。
【0024】
本発明には、式(I)の塩基付加塩類も含まれる。性質が酸性である式(I)のこれらの化合物の製剤学的に許容される塩基塩類を調製するために試薬として用いてもよい化学塩基類は、そのような化合物と非毒性塩基塩類を形成するものである。そのような非毒性塩基塩類には、限定はされないが、アルカリ金属カチオン類(例、カリウムおよびナトリウム)およびアルカリ土類金属カチオン類(例、カルシウムおよびマグネシウム)などの製剤学的に許容されるカチオンから誘導されるもの、アンモニウムもしくはN-メチルグルカミン-(メグルミン)などの水溶性アミン付加塩類、ならびに低級アルカノールアンモニウムおよび製剤学的に許容される有機アミン類の他の塩基塩類が含まれる。
【0025】
本発明の化合物には、全ての立体異性体類(すなわち、シスおよびトランス異性体類)および式(I)化合物の全ての光学異性体類(例、RおよびSエナンチオマー類)、ならびにそのような異性体類のラセミック、ジアステレオメリックおよび他の混合物、さらには化合物の全ての多形体類が含まれる。
【0026】
本発明の化合物は、オレフィン様二重結合を含んでもよい。そのような二重結合が存在するとき、本発明の化合物は、シスおよびトランス形状として、ならびにそれらの混合物として存在する。
【0027】
特に断りがない限り、本明細書で言及されるアルキルおよびアルケニル基、ならびに本明細書で言及される他の基のアルキル部分(例、アルコキシ)は、線状でも枝分れでもよく、また環状(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルあるいはシクロヘキシル)でも、線状もしくは枝分れでもよく、環状部分を含んでもよい。特に断りがない限り、ハロゲンには、弗素、塩素、臭素および沃素が含まれる。
【0028】
本発明は、またCNSもしくはPNS組織損傷の有害な結果を減少させることなど、損傷した哺乳類の神経組織、特に損傷した人間の神経組織を治療するための、そのような治療を必要とする哺乳動物、好ましくは人間に、式(I)の化合物もしくはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体を有効量投与することを含む方法に関する。
【0029】
本発明は、またCNSもしくはPNS組織損傷の有害な結果を減少させることなど、損傷した哺乳類の神経組織、特に損傷した人間の神経組織を治療するための、下記の化合物を含む医薬組成物に関する:
(a)製剤学的に許容されるキャリヤー;および
(b)式(I)の化合物、あるいはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体。
【0030】
前記において、活性化合物(すなわち、式(I)の化合物、あるいはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体)の量は、組成物が、CNSもしくはPNS組織損傷の有害な結果を減少させることを含んで、損傷した哺乳類の神経組織を治療するのに有効であるような量である。
【0031】
本発明は、また式(I)の化合物、あるいはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体の有効量の生体内投与により、神経組織損傷を通る活動電位もしくは神経インパルス伝導を回復することにより、CNSもしくはPNS組織損傷の有害な結果を減少させ、関連した神経組織損傷を治療する方法に関する。
【0032】
本発明の化合物および医薬組成物は、神経栄養因子として適用してもよい。本明細書で用いられる「神経栄養因子」という語は、神経組織の成長もしくは増殖を刺激できる化合物を言う。これに関し、それらを単独に投与してもよいし、あるいは、限定はされないが、神経成長因子(NGF)、インスリン成長因子(IGF-1)およびgIGF-1などのその活性切断誘導体、酸性および塩基性繊維芽細胞成長因子(それぞれ、aFGFおよびbFGF)、血小板誘導成長因子(PDGF)、脳誘導神経栄養因子(BDNF)、線毛神経栄養因子(CNTF)、神経膠細胞ライン誘導神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)およびニューロトロフィン4/5(NT-4/5) などを含む既知の神経栄養因子とともに投与してもよい。
【0033】
本発明の化合物の生体外試験は、カリウムチャンネル遮断特性を示すだけでなく、一般に神経回路を特定的に励起させる働きもすることを例証した。さらに、生体内試験は、脊髄白質(神経繊維のみからなる)の損傷領域を通る神経インパルス伝導を回復することにおけるこれらの化合物の有効性を確立した。損傷を通る神経インパルスの上行性誘発斉射を伝播する脊髄の能力を示す(それはついで脳で記録される(後にさらに説明する))体性感覚換起電位試験(sumatosensory evoked potential: SSEP)は、正常のSSEP(損傷前)の20%を越えるSSEPの生体内回復を確立し、また4-APにより誘発される類似のSSEP回復の回復の大きさを越える。有意に、本発明の化合物の生体内適用は、SSEP試験に基づいて、これらの化合物が、たった1回の適用で、4-AP比較治療よりも低濃度でより長く続く効果を与えることを示した。
【0034】
本発明の追加の側面は、下記の詳細な記述に示される。
発明の詳細な記述
本明細書に用いられたとき、下記の語は、下記それぞれの意味を有する。"4-AP" は、4-アミノピリジンを意味する。
【0035】
「二重スクロースギャップ単離および記録チャンバー(Double sucrose gap isolation and recording chamber)」は、器官培養におけるモルモットの脊髄白質のストリップへの標準化挫傷を通る複合活動電位伝播を試験するために用いた新規な手段である。脊髄損傷後の行動の損失についての生物学的原理は、身体からの神経「入力」から脳に向かって脊髄を上行する神経インパルス「通行」の中断であり、かつその逆、すなわち、身体中のターゲットに向かって脊髄を「下行する」脳に起こるインパルス通行の損失である。かくて、この試験媒体は、麻痺に関する決定的で適切な生物学的原理の一次評価である。二重スクロースギャップチャンバーは、動物試験でのみ評価できる投与(例えば、静脈内もしくは経口投与)の最適経路などの他の実践的な考えから独立して「完全な(whole)」動物における類似の機能を試験する、より困難な時間を費やす手段前多くの薬学的介在を「予備選別」する特別の手段である。
【0036】
図6に示されるように、単離された脊髄(点描した帯状の領域)が、中央のウェルが酸素化Krebs溶液(細胞外液に類似)で連続的に満たされたチャンバーに備えられて示されている。試験薬物を、このチャンバーに添加した。流れている等張スクロース溶液で満たした狭いギャップにより中央ウェルから分かれた等張KCl(細胞内液に類似)が満たされた別々のウェルに脊髄の両端が横たわっている。電極は、Ag/AgClワイヤから形成した。活動電位を左側のスクロースギャップで1対の電極を通して発生させ、脊髄の中心部分を通って伝導し、慣用のブリッジ増幅技術により右側ギャップにおけるもう1対の電極により記録した。脊髄への圧迫は、中央のKrebs溶液を含むチャンバー内で、そのおよそ中間点で実施される。ついで、これは離れた側の1対の記録用電極に向かって脊髄を通る複合活動電位の伝導を妨害する。
【0037】
上に示したように、長さがおよそ35〜40mmの単離した脊髄白質のストリップ(成長したモルモットから得た)をチャンバーに入れ、蠕動ポンプにより酸素化Krebs溶液(約2ml/mm)を絶えず注ぐ。脊髄ストリップの自由両端を、等張(120mM)塩化カリウムを満たしたサイド区画室へのスクロースギャップチャンネルを交差させて置く。チャンバーの温度を、サーミスタ装置(Cambion Instruments)で自動温度調節したベースにおけるPeltierユニットで維持する。軸索を刺激し、複合活動電位および複合膜電位(ギャップ電位の形で)を、サイドチャンバーおよび中央浴内に配置した銀/塩化銀ワイヤ電極により白質のストリップの向かい合う両端で記録する。中央浴を、計器グラウンドに接続する。刺激単離ユニットを通して刺激を送達するが、刺激は通常0.1ミリ秒定電流単極パルスの形である。ブリッジ増幅器およびNeurocorder(ともにNeurodata Instruments Inc.製)を用いて、ビデオテープのデジタルデータ貯蔵のために記録を取る。続いての分析を、Macintosh Power PC G3 コンピュータに注文製のLabview (登録商標)ソフトウエア(National Instruments)を用いて実施する。これらの手順は、二重スクロースギャップチャンバーの構造とともに、Moriarty, L. J.; Duerstock, B. S.; Bajaj, C. L.; Lin, K.; Borgens, R. B. Two and Three Dimensional Computer Graphic Evaluation of the Subacute Spinal Cord Injury. J. Neurologic. Sci. 1998, 155, 121-137; Borgens, R. B.; Shi, R.; Bohner, T. D. Behavioral Recovery from Spinal Cord Injury Following Delayed Application of Polyethylene Glycol. Journal of Experimental Biology 2002, 205, 1-2に記載されているが、両方ともその内容は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0038】
本発明の新規なピリジンに言及して本明細書で用いられたときの「有効量」は、患者もしくは被検対象に投与されたとき、損傷がひどいので正常な機能が可能ではない神経の電気的および/または行動的機能に測定可能な改善をもたらすのに足る化合物の量を示す。下で説明するように、治療の効力は、神経機能の回復を検知する方法を含む種々の方法で測定できる。他の薬剤、例えば、4-APについて「有効量」という語の使用に関して、その語は、本発明における薬剤の使用の文脈内で有効なその薬剤の量を言うために用いられる。
【0039】
本明細書で用いられる「神経組織」は、特に中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)の哺乳類の細胞などの脊椎をもつ神経組織を言う。より具体的には、神経組織には、脊髄ニューロン構造、末梢神経系神経および脳の神経細胞すら含まれる。
【0040】
「神経組織損傷」、「損傷した哺乳類の神経組織」、あるいは「CNSもしくはPNS神経組織損傷」には、原因にかかわりなく神経組織に関連した損傷、例えば、限定はされないが、神経組織損傷、外傷誘因圧迫、腫瘍、出血、感染プロセス、脊髄狭窄症もしくは欠陥血液供給などの外傷に起因する損傷が含まれる。
【0041】
「損傷した哺乳類の神経組織を治療」には、限定はされないが、神経組織損傷を通る活動電位もしくは神経インパルス伝導を回復するための本発明の化合物、組成物および方法の生体内施療が含まれる。その語には、活動電位もしくは神経インパルス伝導の回復を通してであれ、神経組織の成長もしくは増殖を刺激することによってであれ、外傷近くの細胞外微小環境における望ましくない状態を改善することによってであれ、あるいは他の方法であれ、哺乳類の神経組織への損傷の損傷結果を減少させる努力におけるそのような施療も含まれ得る。
【0042】
本明細書で用いられる「神経栄養因子」は、本発明の化合物および本明細書で前述したような既知の神経栄養因子を含む、神経組織の成長もしくは増殖を刺激することができる化合物を言う。
【0043】
「体性感覚誘発電位試験(SSEP)」は、「完全な」動物における上行性神経インパルス「通行」を測定する手段である。SSEPは、損傷を通る神経インパルスの上行性誘発斉射を伝播する脊髄の能力を示し、上行性誘発斉射はついで脳で記録される。これらの誘発電位の斉射は、動物の後ろ足の脛骨神経の電気的刺激により開始され、電気的刺激は、損傷を受けていない動物の脳の対側性知覚皮質への侵害受容インパルスの上行性知覚斉射を誘発する。重い脊髄損傷は、損傷を交差する誘発電位の能力を排除し、かくてSSEPは、損傷後脳で記録されない。完全な動物を通るSSEP伝導の回復の定量的評価は、特定の、集中的な、標準化CNS損傷後、行動損失を逆にするのに有用なこれらの化合物の可能性のより適切な尺度を提供する。SSEP記録の失敗が他の要因によるかもしれないという可能性を排除するために、制御記録が、前足の正中神経を用いて実施される。この神経回路はまったく損傷を受けていないので(すなわち、脊髄損傷のレベルを「超えて」いる)、正常なSSEPは、そのような「制御」刺激後に得るようにしなければいけない。図2は、この試験プロトコルの説明図であり、損傷を受けていない動物における正常な記録の例、中間胸部脊髄損傷後の感覚インパルスの排除を提供し、正中神経制御手順の重要性を強調しながら、これらの点を詳細に説明している。
【0044】
"Tracks"、"Long Tracks" および "CAPS" は、以下の意味を有する。脊髄(脳とは別個に)において、神経繊維の長い破壊されていない束(「路(tracts)」と呼ばれる)は、ときには脊髄の全長に渡って、それを上行および下行して(「長路(long tracts」)、神経インパルスを運ぶ。そのような「長路」(背面柱通路、脊髄視床路など)を運ばれた神経インパルスが、CAPsである。完全な動物において、例えば、足に適用された痛い刺激により、刺激を受けた神経インパルスは、脊髄全体を上行して脳まで − 脳の知覚皮質の体性感覚領域まで至る。脊髄を走行して後脳まで至るCAPsは、1つの神経から次の神経に至るシナプス介在伝導を有さないかもしれない − 後脳から皮質に至るのは、非常に困難なことである − そこでは数百のシナプスが、知覚皮質で終わるためにその種々の領域で1つの脳ニューロンから次へと神経インパルスを「リレー」している。だから、足に適用された痛い刺激が最終的には意識に認識されるのである。これらの上行CAPsは、脳の複雑な神経回路を通るシナプス伝達とともに、CAPsに対照して「誘発電位」と呼ばれる。CAPsは、脊髄白質の限定された領域を通って測定されるが、誘発電位は、完全な動物を通る伝導を示す。脊髄損傷は、脊髄を通るCAP伝導を中断するが(図1)、もちろんそれは、完全な動物における脊髄を通る伝導も排除する。
【0045】
I.新規なピリジン類の合成
本発明の代表的な化合物(その構造式は、図4および5に示される)の合成を、下に詳細に記載する方法で達成した。しかし、式(I)の新規なピリジン類の他の誘導体類および置換体類も、本発明の範囲内にあることを了解されたい。
【0046】
式(I)のこれらの代表的な化合物の出発物質は、当業界で入手可能か、あるいは公知である。例えば、4-(メチルアミノ)ピリジンを、Lancaster Synthesisから購入した。4-(ジメチルアミノ)ピリジンを、ウィスコン州ミルウォーキーのSigma-Aldrichから購入した。下記のアミド類および尿素類を、例えば、その内容が参照によって本明細書に取り込まれるGhosh, S.; Krishnan, A.; Das, P. K. Ramakrishnan, S. Determination of Critical Micelle Concentration by Hyper-Rayleigh Scattering. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 1602-1606: Kato, T.; Yamamoto, Y.; Takeda, S. Ketene and Its Derivatives. IV. Reaction of Primary Aime with Ketene Acetals. Yakugaku Zasshi 1973, 93 (8), 1034-1042: Meanwell, N. A.; Sit, S. Y.; Wong, H. S.; Gao, O.; St. Laurent, D. R.; Balasubramanian, N. Regiospecific Functionalization of 1,3-Dihydro-2H-benzimidazol-2-one and Structurally Related Cyclic Urea Derivatives. J. Org. Chem. 1995, 60, 1565-1582: Kovalenko, A. L.; Serov, Y. V.; Nikonov, A. A.; Tselinskii, I. V. Aminomethylation of N,N'-and N,N,N'-Substituted Ureas with N-Methylene-tert-butylamine. Zhur. Org. Khim. 1991, 27 (10), 2074-2077に記載される従来の方法を用いて合成した。
【0047】
【化6】

【0048】
下記のカルバメート類は、4-APから合成した。
【0049】
【化7】

【0050】
R=Me、Etもしくはt-Bu
4-APを、ペンシルベニア州Lower GwyneddのRichman Chemical Co.から購入した。全ての試薬を、さらなる精製なしで受け取って用いた。融点を、Thomas Hover融点装置を用いて毛管中で測定し、補正しなかった。NMRスペクトルを、指示した溶媒を用いてBruker ARX-300装置で得た。
【0051】
N-(4-ピリジル)t-ブチルカルバメート(1)の合成:4-アミノピリジン(50.0g、531mmol)の0℃でのトリエチルアミン/CH2Cl2(1:1、200mL)溶液に、ジ-t-ブチル-ジカルボネート(116g、531mmol)のCH2Cl2(150mL)溶液を徐々に添加した。得られた混合物を、一晩中室温まで温め、ついで濃縮した。粗生成物を温EtOAc中に入れ、ろ過し、へキサンで沈殿させた。沈殿物をろ過により集め、へキサンで洗浄し、真空下で乾燥させて、91.0g(88%収率)の純粋な目的のt-ブチルカルバメートを得た。Mp=147−148℃。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.97 (s, 1H, N-H); 8.39 (d, J=5.2 Hz, 2H, Ar); 7.41 (d, J=5.2 Hz, 2H, Ar); 1.46 (s, 9H, t-Bu)。13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 153.1 (C=O); 150.3 (Ar); 147.3 (Ar); 113.0 (Ar); 81.5 (O-C-R3); 28.6 (Me)。C10H14N2O2 (MW=194.23) の分析計算:C=61.84, H=7.27, N=14.42。発見:C=61.60, H=7.05, N=14.50。
【0052】
N-(4-ピリジル)エチルカルバメート(2)の合成:4-アミノピリジン(20.0g、212mmol)の0℃でのCH2Cl2(200mL)溶液に、トリエチルアミン(30.0mL、212mmol)およびエチルクロロホルメート(20.3mL、212mmol)を添加した。結果として得られた混合物を、一晩中室温まで温め、ついで濃縮した。固体生成物を飽和水性NaHCO3でスラリー化し、1時間攪拌し、濃縮し、真空下で乾燥させた。粗生成物を、温MeOH(500mL)で1時間スラリー化し、ろ過し、ろ過物を濃縮した。粗カルバメートをトルエン/へキサンから再結晶化して、31.8g(90%収率)の純粋な目的のエチルカルバメートを得た。Mp=127−128℃。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 10.02 (s, 1H, N-H); 8.56 (d, J=6.2 Hz, 2H, Ar); 7.63 (d, J=6.2 Hz, 2H, Ar); 4.33 (q, J=7.1 Hz, 2H, OCH2); 1.38 (t, J=7.1 Hz, 3H, Me)。13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 154.3 (C=O); 150.2 (Ar); 147.3 (Ar); 113.3 (Ar); 61.8 (OCH2); 14.8 (Me)。C8H10N2O2 (MW=166.18) の分析計算:C=57.82, H=6.07, N=16.86。発見:C=58.01, H=5.92, N=16.62。
【0053】
N-(4-ピリジル)メチルカルバメート(3)の合成:4-アミノピリジン(20.0g、212mmol)の0℃でのCH2Cl2(200mL)溶液に、トリエチルアミン(30.0mL、212mmol)およびメチルクロロホルメート(16.4mL、212mmol)を添加した。結果として得られた混合物を、一晩中室温まで温め、ついで濃縮した。固体生成物を飽和水性NaHCO3でスラリー化し、1時間攪拌し、濃縮し、真空下で乾燥させた。ついで、粗生成物を温MeOH(500mL)で1時間スラリー化し、ろ過し、ろ過物を濃縮した。粗カルバメートをトルエン/へキサンから再結晶化して、15.5g(48%収率)の純粋な目的のメチルカルバメートを得た。
【0054】
N-(4-ピリジル)メチルカルバメート(3)を合成するために、下記の手順も用いてもよい:4-アミノピリジン(15.0g、160mmol)の0℃でのCH2Cl2(200mL)溶液に、トリエチルアミン(30.0mL、212mmol)を、ついでメチルクロロホルメート(15.0mL、192mmol)を添加した。粗カルバメートを水から再結晶化して、15.9g(66%収率)の純粋なメチルカルバメート12を得た。Mp=168−170℃。1H NMR (300 MHz, MeOH-d4) δ 8.49 (d, J=6.5 Hz, 2H, Ar); 7.67 (d, J=6.5 Hz, 2H, Ar); 5.22 (br s, 1 H, N-H); 3.94 (s, 3H, OMe)。13C NMR (75 MHz, MeOH-d4) δ 156.0 (C=O); 151.0 (Ar); 149.2 (Ar); 114.3 (Ar); 53.3 (OMe)。C7H8N2O2 (MW=152.15) の分析計算:C=55.26, H=5.30, N=18.41。発見:C=55.29, H=5.31, N=18.20。
【0055】
N-(4-ピリジル)イソプロピルカルバメート(4)の合成:4-アミノピリジン(2.00g、21.2mmol)の0℃でのCH2Cl2(50mL)溶液に、トリエチルアミン(3.50mL、25.0mmol)およびイソプロピルクロロホルメート(22.0mL、トルエン中1.0M)を添加した。氷浴を除去し、結果として得られた混合物を、2時間室温まで温めた。反応混合物を、シリカゲル(EtOAc)のプラグを通してろ過し、ついで濃縮した。粗生成物をEtOAcから再結晶化して、1.90g(50%収率)の純粋な目的のイソプロピルカルバメートを得た。
【0056】
N-(4-ピリジル)ドデシルカルバメート(5)の合成:4-アミノピリジン(3.00g、31.9mmol)の0℃でのCH2Cl2(50mL)溶液に、トリエチルアミン(5.60mL、40.0mmol)およびドデシルクロロホルメート(8.70g、35.0mmol)を添加した。氷浴を除去し、結果として得られた混合物を、飽和水性NaHCO3に注ぐ前に3時間室温まで温めた。生成物を、CH2Cl2で抽出し、ブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濃縮した。粗生成物をEtOAc/へキサンから再結晶化して、8.80g(90%収率)の純粋な目的のドデシルカルバメートを得た。
【0057】
N-(4-ピリジル)ベンジルカルバメート(6)の合成:4-アミノピリジン(2.00g、21.2mmol)の0℃でのCH2Cl2(30mL)溶液に、トリエチルアミン(3.50mL、25.0mmol)およびベンジルクロロホルメート(3.10mL、22.0mmol)を添加した。氷浴を除去し、結果として得られた混合物を、飽和水性NaHCO3に注ぐ前に一晩中室温まで温めた。生成物を、CH2Cl2で抽出し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。粗生成物をEtOAcから再結晶化して、2.90g(60%収率)の純粋な目的のベンジルカルバメートを得た。
【0058】
N-(4-ピリジル)ベンズアミド(7)の合成:4-アミノピリジン(3.00g、31.9mmol)の0℃でのCH2Cl2(50mL)溶液に、トリエチルアミン(6.70mL、47.9mmol)およびベンゾイルクロライド(3.70mL、31.9mmol)を添加した。氷浴を除去し、結果として得られた混合物を、1.5時間室温まで温めた。反応物を、飽和水性NaHCO3で急冷し、CH2Cl2で抽出し、ブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濃縮した。粗生成物をEtOAc/へキサンから再結晶化して、4.73g(75%収率)の純粋な目的のベンズアミドを得た。
【0059】
N-(4-ピリジル)アセトアミド(8)の合成:4-アミノピリジン(2.00g、21.2mmol)の0℃でのCH2Cl2(30mL)溶液に、トリエチルアミン(3.60mL、25.6mmol)および無水酢酸(2.20mL、23.2mmol)を添加した。氷浴を除去し、結果として得られた混合物を、飽和水性NaHCO3に注ぐ前に一晩中室温まで温めた。混合物を15分間攪拌し、ついで層を分離した。水性層を、CH2Cl2でもう2回同じ方法で抽出した。結合有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。粗生成物をEtOAcから再結晶化して、1.60g(56%収率)の純粋な目的のアセトアミドを得た。
【0060】
N-(4-ピリジル)プロピオンアミド(9)の合成:4-アミノピリジン(3.00g、31.9mmol)の0℃でのCH2Cl2(30mL)溶液に、トリエチルアミン(6.70mL、47.8mmol)およびプロピオニルクロライド(3.30mL、38.2mmol)を添加した。氷浴を除去し、結果として得られた混合物を、飽和水性NaHCO3に注ぐ前に4時間室温まで温めた。混合物を45分間攪拌し、ろ過した。ろ過ケークをEtOAcから再結晶化して、1.65g(50%収率)の純粋な目的のプロピオンアミドを得た。
【0061】
N-(4-ピリジル)トリメチルアセトアミド(10)の合成:4-アミノピリジン(2.00g、21.2mmol)の0℃でのCH2Cl2(30mL)溶液に、トリエチルアミン(3.50mL、25.0mmol)およびピバロイルクロライド(2.70mL、23.2mmol)を添加した。氷浴を除去し、結果として得られた混合物を、飽和水性NaHCO3に注ぐ前に一晩中室温まで温めた。混合物を5分間攪拌し、ついで層を分離した。水性層を、CH2Cl2でもう2回同じ方法で抽出した。結合有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。粗生成物をEtOAcから再結晶化して、1.40g(37%収率)の純粋な目的のトリメチルアセトアミドを得た。
【0062】
N-(4-ピリジル)エチルスクシナメート(11)の合成:4-アミノピリジン(1.50g、16.0mmol)のCH2Cl2(50mL)溶液に、トリエチルアミン(3.50mL、25.0mmol)およびエチル-4-オキソ-クロロブチレート(2.25mL、16.0mmol)を添加した。結果として得られた混合物を、飽和水性NaHCO3に注ぐ前に1.5時間攪拌した。混合物を5分間攪拌し、ついで層を分離した。水性層を、CH2Cl2でもう2回抽出した。結合有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。粗生成物をEtOAc/へキサンから再結晶化して、590mg(17%収率)の純粋な目的のエチルスクシナメートを得た。
【0063】
N,N'-(4-ピリジル)尿素(12)の合成:4-アミノピリジン(3.00g、31.9mmol)およびカルボニルジイミダゾール(5.17g、32.0mmol)のベンゼン(50mL)混合物を、5時間還流した。反応混合物を濃縮し、粗生成物をH2Oから再結晶化して、1.60g(47%収率)の純粋な目的の尿素を得た。
【0064】
N,N'-(3,4-ピリジル)尿素(13)の合成:3,4-ジアミノピリジン(2.50g、23.0mmol)およびカルボニルジイミダゾール(7.50g、46.0mmol)のベンゼン(50mL)混合物を、H2Oに注ぐ前に4時間還流した。結果として得られた混合物を、1.0 M HClで酸性化し、層を分離した。水性層のpHを、飽和水性NaHCO3で〜40に調製し、ついで溶液を濃縮した。固体生成物を高真空下で16時間乾燥させ、ついで温MeOHでスラリー化した。スラリー化混合物をろ過し、ろ過物を濃縮した。粗生成物をH2Oから再結晶化して、2.63g(85%収率)の純粋な目的の尿素を得た。
【0065】
P,P-ジフェニル N-(4-ピリジル)ホスフィンアミド(14)の合成:4-アミノピリジン(1.00g、10.6mmol)のCH2Cl2(30mL)溶液に、トリエチルアミン(1.70mL、12.0mmol)および塩化ジフェニルホスフィン(2.00mL、10.6mmol)を添加した。反応混合物を、飽和水性NaHCO3に注ぐ前に6時間攪拌した。結果として得られた混合物を、15分間攪拌し、ついで層を分離した。水性層を、CH2Cl2でもう2回抽出した。結合有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。粗生成物をMeOH/H2Oから再結晶化して、2.69g(86%収率)の純粋なホスフィンアミドを得た。
【0066】
4-ピリジニルホスホアミド酸、ジフェニルエステル(15)の合成:4-アミノピリジン(1.00g、10.6mmol)のCH2Cl2(30mL)溶液に、トリエチルアミン(2.20mL、16.0mmol)およびジフェニルクロロホスフェート(2.30mL、11.0mmol)を添加した。反応混合物を、飽和水性NaHCO3に注ぐ前に3時間攪拌した。結果として得られた混合物を、15分間攪拌し、ついで層を分離した。水性層を、CH2Cl2でもう2回抽出した。結合有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。粗生成物をMeOH/H2Oから再結晶化して、1.36g(39%収率)の純粋な目的のホスホアミド酸ジエステルを得た。
【0067】
特に示さない限り、上記反応のそれぞれの圧力は、重要ではない。一般に、反応は、約1〜約3気圧、好ましくは周囲大気(約1気圧)の圧力で実施される。
性質が塩基性である式(I)の化合物は、種々の無機および有機酸で幅広い異なる塩類を形成できる。そのような塩類は、動物への投与に製剤学的に許容されなければならないが、実践においては、初めに式(I)の化合物を製剤学的に許容されない塩として反応混合物から単離し、ついでアルカリ性試薬での処理により単に後者を遊離塩基化合物に転換し、その後遊離塩基を製剤学的に許容される酸付加塩に転換することが、しばしば望ましい。本発明の塩基化合物の酸付加塩類は、塩基化合物を水性溶媒媒体中、あるいはメタノールもしくはエタノールなどの適切な有機溶媒中で、実質的に当量の選ばれた鉱酸もしくは有機酸で処理することにより容易に調製される。溶媒の慎重な蒸発で、所望の固体塩が得られる。
【0068】
本発明の塩基化合物の製剤学的に許容される酸付加塩類を調製するために用いられる酸類は、非毒性酸付加塩類、すなわち、ヒドロクロライド、ヒドロブロマイド、ヒドロイオダイド、ニトレート、スルフェートもしくはビスルフェート、ホスフェートもしくは酸ホスフェート、アセテート、ラクテート、シトレートもしくは酸シトレート、タルトレートもしくはビタルトレート、スクシネート、マレエート、フマレート、グルコネート、サッカレート、ベンゾエート、メタンスルホネートおよびパモエート[すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)]塩などの製剤学的に許容されるアニオン含む塩類を形成するものである。
【0069】
性質がやはり酸性である式(I)のこれらの化合物は、種々の製剤学的に許容されるカチオンと塩基性塩類を形成できる。そのような塩類の例には、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩類、特にナトリウムおよびカリウム塩が含まれる。これらの塩類は、全て従来の技術により調製される。本発明の製剤学的に許容される塩基性塩類を調製するために試薬として用いられる化学塩基類は、本明細書に記載される式(I)の酸性化合物と非毒性塩基性塩類を形成するものである。これらの非毒性塩基性塩類には、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムなどの製剤学的に許容されるカチオンから誘導されるものが含まれる。これらの塩類は、対応する酸性化合物を、所望の製剤学的に許容されるカチオンを含む水溶液で処理し、ついで結果として得られる溶液を、好ましくは減圧下、蒸発させて乾燥させることにより容易に調製できる。あるいは、それらを、酸性化合物の低級アルカノール溶液と所望のアルカリ金属アルコキシドを混合し、ついで結果として得られる溶液を、前述と同じ方法で蒸発させて乾燥させることによって調製してもよい。どちらの場合でも、反応の完全性および最大限の生成物収率を確かなものとするために、好ましくは化学量論量の試薬が用いられる。
【0070】
本発明の組成物を、1つ以上の製剤学的に許容されるキャリヤーを用いて従来の方法で処方できる。これらの製剤学的に許容される組成物に用いてもよい製剤学的に許容されるアーンナー(earner)には、限定はされないが、イオン交換体、アルミナ、アルミニウムステアレート、レシチン、人間の血清アルブミンなどの血清たんぱく質、ホスフェートなどの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、カリウムソルベート、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩もしくはプロルアミンスルフェートなどの電解質、燐酸水素二ナトリウム、燐酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれる。
【0071】
本発明の組成物を、経口、非経口、吸入噴霧、局所、直腸、鼻、頬、膣もしくは移植した貯蔵所により投与してもよい。本明細書に用いられる「非経口」という語には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、鞘内、肝臓内、病巣内および頭蓋内注入もしくは点滴技術が含まれる。好ましくは、組成物は、経口、腹腔内もしくは静脈内に投与される。
【0072】
本発明の組成物の無菌で注入できる形態は、水性もしくは油性の懸濁液であってもよい。これらの懸濁液は、適切な分散もしくは湿潤剤および沈殿防止剤を用いて、当業界で既知の技術により処方できる。無菌で注入できる製剤は、非毒性の非経口的に受け入れられる希釈剤もしくは溶媒中の無菌で注入できる溶液もしくは懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール溶液であってもよい。用いてもよい許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、Ringer溶液および等張性塩化ナトリウムがある。さらに、無菌の不揮発性油類も、溶媒もしくは懸濁媒体として従来用いられている。このためには、合成モノ-もしくはジ-グリセリドなどの刺激のない不揮発性油は、いずれも用いてもよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、オリーブ油もしくはヒマシ油など、特にそのポリオキシエチル化形での、天然の製剤学的に許容される油類のように、注入物の調製に有用である。これらの油溶液もしくは懸濁液は、Ph. Helvもしくは類似のアルコールなどの長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤も含んでもよい。
【0073】
本発明の医学組成物を、限定はされないが、カプセル、錠剤、水性懸濁液もしくは溶液などの経口で受け入れることができる投与で経口投与してもよい。経口使用のための錠剤の場合、普通用いられるキャリヤーには、ラクトースおよびコンスターチが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も、典型的に添加される。カプセル形での経口投与の場合、有用な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥コンスターチが含まれる。水性懸濁液が経口使用に必要なとき、活性成分は、乳化剤および沈殿防止剤と組み合わされる。所望なら、甘味剤、風味剤もしくは着色剤も添加してもよい。
【0074】
代替的に、本発明の医薬組成物を、直腸投与のために座薬の形で投与してもよい。これらは、薬剤を、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、したがって直腸内では溶けずに薬剤を放出する適切な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製できる。そのような材料には、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0075】
本発明の医薬組成物を、特に治療対象が目、皮膚もしくは下部腸管路の病気など局所的適用で容易にアクセスできる領域もしくは器官を含むとき、局所的に投与してもよい。好適な局所的製剤は、これらの領域もしくは器官のそれぞれのために容易に調製される。
【0076】
下部腸管路の局所的適用は、直腸座薬製剤(上を参照)もしくは適切な浣腸製剤で実施できる。局所的経皮性膏薬も用いてもよい。
局所的適用に関し、医薬組成物を、1種以上のキャリヤー中に懸濁もしくは溶解させた活性成分を含む適切な軟膏に処方してもよい。本発明の化合物の局所的投与のためのキャリヤーには、限定はされないが、鉱油、液体石油、白色石油、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が含まれる。代替的に、医薬組成物を、1種以上の製剤学的に許容されるキャリヤー中に懸濁もしくは溶解させた活性成分を含む適切なローションもしくはクリームに処方できる。好適なキャリヤーには、限定はされないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が含まれる。
【0077】
眼科での使用に関し、医薬組成物を、等張性のpHを調整した無菌食塩水微小化懸濁液として、もしくは好ましくは等張性のpHを調整した無菌食塩水溶液として、ベンジルアルコニウムクロライドなどの防腐剤の有無にもかかわらず、処方してもよい。代替的に、眼科での使用に関し、医薬組成物を、ワセリンなどの軟膏に処方してもよい。
【0078】
本発明の医薬組成物を、鼻のエアゾールもしくは吸入により投与してもよい。そのような組成物を、医薬処方当業界で周知の技術により調製するが、またベンジルアルコールもしくは他の適切な防腐剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン類、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散助剤を用いて、食塩水溶液として調製してもよい。
【0079】
単一投与の形を作るキャリヤー材料と組み合わせてもよい本発明の新規なピリジンの量は、治療されるホスト、投与の具体的なモードに応じて変化する。好ましくは、組成物を、kg体重/日につき約5〜100mg、より好ましくは約10〜50mgの新規なピリジンの投与量をこれらの組成物を受ける患者に投与できるように、処方すべきである。
【0080】
個々の患者のための特定な投与量および治療生活規制は、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性、常食、投与期間、排泄度、薬物組合せ、ならびに治療医師の判断および治療される個々の病気もしくは損傷の重大性などの種々の要因によることも理解すべきである。
【0081】
1つの実施態様によれば、本発明は、単一投与の形もしくは別個の多数投与の形で新規なピリジン化合物および神経栄養剤を投与する方法を提供する。別個の投与の形が利用されるなら、それらを、薬剤の生物学的利用能および薬物動力学に応じて、同時に、連続的に、あるいは互いの投与から約12時間未満内に、より好ましくは約8時間未満内に投与してもよい。
【0082】
好ましくは、本発明の方法は、患者における神経組織損傷を通る神経インパルス伝導を回復するために用いられる。
本発明の方法および組成物を、幅広い病気もしくは身体的外傷により起こる神経損傷を治療するために用いてもよい。これらには、限定はされないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS、発作および発作関連虚血、神経パロパシー(neural paropathy)、他の神経退行病、運動ニューロン病、坐骨挫傷、脊髄損傷および顔面神経挫傷が含まれる。本発明の組成物を、単独で、あるいはそれの組合せの一部として投与してもよい。活性剤の組合せが投与される場合、それらを、同時、別々あるいは逐次的に投与してもよい。
【0083】
II.新規なピリジンに応答する神経インパルス伝導の回復のための生体外試験
電位治療値のための本発明の新規なピリジンの生体外スクリーニングは、脊髄白質(神経繊維のみからなる)の損傷領域を通る神経インパルス伝導を回復することにおけるそれらの有効性を例証した。生体外試験に対する進歩のメリットを得るために、単離において損傷した脊髄に適用される水溶液中の化合物は、適用後少なくとも15分以内で複合活動電位伝導のそのような部分的回復を示すべきである;Shi R, Pryor JD (2002), Pathological changes of isolated spinal cord axons in response to mechanical stretch, Neuroscience 110: 765-77。図1〜6を参照すると、二重スクロースギャップ単離および記録チャンバー(先に定義された通り)を用いた新規なピリジンの生体外試験は、この基準を満足させた。神経インパルス伝導を回復することにおけるそのような化合物の有効性は、器官培養におけるモルモットの脊髄白質のストリップへの標準化打撲傷を通る複合活動電位伝播を試験することにより測定された。
【0084】
先に開示したように、脊髄損傷後の行動の損失に対する生物学的原理は、身体からの神経「入力」から脳に向かって脊髄を上行する神経インパルス「通行」の中断であり、かつその逆、すなわち、身体中のターゲットに向かって脊髄を「下行する」脳に起こるインパルス通行の損失である。かくて、この試験ビヒクルは、麻痺に関する決定的で適切な生物学的原理の一次評価である。
【0085】
二重スクロースギャップ生体外記録:図6を参照すると、この図は、二重スクロースギャップ記録および単離チャンバーを示す。モルモットの全脊髄を深く麻酔をかけた動物から急速に切開し(下を参照)、緩衝剤で処理した、通気したKrebs溶液に使用するまで入れておく。チャンバーに入れる前に、通常脊髄を縦に裂いて、チャンバーについで載せるほとんど白質の長いストリップ(約38〜40mm)を単離する。異なる浴媒体を含む3つの大きな区画室がある:そのうち中央のチャンバーに酸素化Krebs溶液を絶えず吸入したり抜いたりし(吸引により)、両端のチャンバーには等張性KClを満たす。脊髄の長さは、チャンバーの中間に配置された2つの小さな貯蔵所とともに全3つのチャンバーにわたる。これらの小さな貯蔵所は、絶えず吸入され、吸い出されるスクロースを含む。スクロースは、脊髄の両端を生理的溶液における中心部から電気的に単離する手助けをする。脊髄の一方の端での刺激は、複合活動電位(CAP)を生み、それは白質を通って伝導されてチャンバーの他方の端で記録される。CAPの他に勝るもののない分解能を与えるのは、流れるスクロースによりなされる両端の電気的単離、および脊髄セグメントの両端が中心よりも細胞内電位に近い(細胞外電位で)という事実である。さらに、複合膜電位(ギャップ電位)の連続的監視も、それぞれの試験のコース中に注視される。
【0086】
典型的に、脊髄は、電気的刺激に対する特徴的応答を生むために、約1時間記録チャンバーで安定化される。その後、脊髄は、衝撃子を約1.5m/sで用いてその中央(中央チャンバーにおいて)に伸張される。これは、脊髄を標準化方法で伸張する。伸張は、損傷を交差するCAP伝播における一時的な損失を誘因するが、これは経時的に改善する。いったん自然発生的な回復が安定した「回復CAP」を生むと、薬物は、中央チャンバーを浴する媒体に添加される。CAPの記録は連続的であるが、振幅における薬物誘因変化が安定化するには、約0.5時間必要である。この応答は、「薬物前」回復電位における増大(もしくは低下)と記録される(それは、100%まで標準化される)。次に、薬物は、チャンバーから洗い流され、脊髄の損傷は、「薬物後」電気記録を得る前に、新鮮な空気にさらされたKrebs溶液におよそ1時間さらされる。
【0087】
二重スクロースギャップ記録および単離チャンバーをさらに参照すると、図1セクションAは、この装置とはやや異なる実施態様の特徴を示す。特に、図1の右上の模式的3D図面は、その寸法を示し、チャンバーは透明なPlexiglasで形作ってある。模式的3D図面の下に、4つの区画室が図示され、それに吸入される溶液に応じてラベル付けされている。これらの溶液は吸引により取り出され、毛管ポンプ(図示せず)を用いて媒体のほどほどの、けれども連続的な流れを生じる。外側の区画室は、細胞内電位に、あるいはその近くにあり、一方中心チャンバー(バランスを取った生理的器官培養溶液を含む)は細胞外電位にある。したがって、神経インパルスエピソードの間の膜電位の内反は、「単一」ユニット細胞内電気生理学的記録に類似する方法で直接記録され、複合活動電位(CAP)の分解能に増大を生む。
【0088】
CAPは、モルモットの脊髄の長さの数万倍の個々の神経繊維(軸索と呼ばれる)の同時刺激(fire)により生じる。脊髄は刺激されて、チャンバー(図示される例では、左側)の片側でCAPsを同時に「刺激」させ、CAPsの到着は、右端で記録される。2つの異なる溶液の混合は、示されたチャンバーを通るスクロースの速やかに流れる境界線により非常に減少し、それはまたチャンバーの全幅にわたる脊髄セグメントの両端を電気的に単離する。生理的溶液(Krebsの)もpH安定化され、中央チャンバーを通って吸入される媒体を与える貯蔵所で酸素化される。これは、生理学的測定の間脊髄の生存能力を増大し、保証する。慎重に切開したおよそ40mm長さの脊髄セグメントを、2日間まで正常に機能して(神経インパルス電位に示されるように)、チャンバーに維持できる。単一の引き出されたCAPが、セクションBに示され、多くの反復CAPs(連続した反復刺激により生じた)が、セクションCに示される。そのような記録は、細胞内単一神経繊維記録を示し、このレベルの分解能は、細胞外記録技術によりCAPsを測定する従来の手段よりおよそ100倍も優れている。
【0089】
中間、すなわち、中心生理学的区画室において、標準化脊髄への挫傷後脊髄を通る複合神経インパルス(CAP)伝導が、セクションDに示される。左側で刺激された神経インパルスの通過は損傷に達し、ブロックされ、右側で記録されるチャンバーを通過し損ねる。
【0090】
図1セクションFを参照すると、CAPは、薬学的介在後再び現れ始める:本発明の化合物は、中央区画室で損傷部位を浴する生理的溶液、すなわち、Krebs溶液を含む区画室に、導入された。神経インパルス伝導の回復の定量的側面を比較するもっとも正確な手段は、損傷前値を「試験」薬物の導入により生じた値と比較するためのCAP(すなわち、「曲線の下の領域」)の大きさおよび期間の誘導をコンピュータで算出することである。
【0091】
III.生体内試験
モルモットを用いた生体動物試験の間、本発明の新規なピリジン誘導体を、あらかじめその中間胸部脊髄へ標準化圧迫損傷を与えた大きな成熟モルモットに胃管を通して投与した。この第二の技術において伝導を回復するこれらの化合物の能力を、SSEPの定量的評価により測定した。下記のプロトコルおよび投与経路を用いた。
【0092】
脊髄損傷の前に、十分に成熟したモルモット(Hartly種、およそ400g)を、Ketamine/Rompumの筋肉内注射で軽く鎮静させ、図2に示したように刺激および記録電極の設置の間固定した。ついで、一連のSSEP記録を、この正常な動物における頚骨および正中神経の刺激後に取った。全ての外科的手順および生理学的記録は、麻酔をかけた動物で実施されたことに注目されたい。全動物研究は、University Animal Care and Use Committeeにより承認されたプロトコルの下で、研究における動物使用に関しては大学、州および連邦のガイドラインを厳重に遵守して、実施された。
【0093】
続いて、背の椎弓切開外科手順を、背柱内の中間胸部脊髄の背(背側に近い方)の領域にさらして実施し、脊髄の硬い被膜(硬膜)を鋭く切り除き、脊髄に標準化技術(定変位圧迫)により挫傷を与えた。Blight AR(1991a), Morphometric analysis of a model of spinal cord injury in guinea pigs, with behavioral evidence of delayed secondary pathology, J Neurol Sci 103: 156-171; Borgens RB, Shi R, Bohnert D (2002), Behavioral recovery from spinal cord injury following delayed application of polyethylene glycol, J Exp Biol 205: 1-12, 両方ともその内容が参照によって本明細書に取り込まれる。
【0094】
この手順の5〜10分以内に、別のSSEP記録設定を取り、いずれの場合においても確定的な制御手順(正中神経刺激)を示しながら、SSEPの完全な排除を実証している。この「平坦線」記録は、脊髄への損傷が重く、SSEPの排除により示される全ての上行性機能に譲歩していることを証明した。
【0095】
全ての動物が、回復、治癒され、損傷後2ヶ月まで外科手術に再び用いられることはなかった。しかし、定期的な生理学的記録が、それらの状態を監視するために、そして損傷後およそ2ヶ月で最終の記録が中間胸部損傷を通る上行性SSEP伝導の慢性的損失を確認するために取られた。
【0096】
8週間が過ぎ、「薬物前適用」電気的記録が得られた後、モルモットを軽く鎮静させ、試験化合物を胃管により直接胃に投与した(化合物は、胃への導入の間未溶解だったが、胃管および化合物の残りは、1ml未満の蒸留水の二次導入により胃に勢いよく流された。
【0097】
SSEPの電気的記録をその後開始し、5〜6時間の後処理の間毎時取った。
血液試料を、これらの種々の時間で得られ、HPLC検知技術により化合物の正確な血漿中濃度の後の測定のために冷凍した(この最終工程は、臨床での使用のために化合物のより高い知識展開を可能とする)。
【0098】
ほとんどの場合、薬物を、鎮静させた動物の口に挿入された胃管により直接動物の胃に投与された。
図2を参照すると、正常機能の神経回路が、脊髄を上行して脳の体側性知覚運動皮質で測定される誘発電位で終わる、前足の正中神経で刺激された神経インパルスの脊髄への通路により輪郭が描かれている。損傷を受けていないもの(未損傷もしくは正常な動物)において足の脛骨神経の刺激は、脳に到達する類似の圧倒的な量の誘発電位を生じるだろう。これはピーク(P)1および2として示される;モルモットの左側への現実の電気的記録のトップに初期および後期到達誘発電位。脳と後ろ足との中間で脊髄に挫傷を与えることは、脊髄上のこれらの電位の伝達を排除する。損傷は、足に適用された痛い刺激の認識を、SSEPを中断することによって脳の皮質により排除した。
【0099】
図2の左に示される実際の体性感覚誘発電位記録は、そのような挫傷が作られた直後の誘発電位の完全な排除を示した(挫傷後記録)。このブロックされた伝導状態は、この動物で1ヶ月間続く試験の間続いた。下の記録は、損傷により排除されなかったら誘発電位は脳で測定されたであろうということを証明しながら、この脊髄損傷動物において1ヶ月実施された正中神経制御手順を示す。
【0100】
図2の右に挿入により単純化した神経回路は、後ろ足、実際には脛骨神経(正常なら足および脳への脊髄を上行する誘発電位を生じるだろう)、に適用された電気的刺激を示す。これは脊髄における破壊として現れる脊髄損傷により中断された。脳に配置された電極から記録された上行性SSEPの排除は、制御手順に起因する人工産物(artifact)ではないということを、研究所で確立できる。図2で示されるデータをもたらす実験において、前足を刺激し(現実には、後ろ足の正中神経)、脳に向かって脊髄を上行したSSEPを生じたが、これはこの神経回路が局部的な脊髄損傷により中断されなかったからである(すなわち、それは損傷のレベル「以上」だった)。
【0101】
図2の左に、SSEPの実際の生理学的記録を示す(挿入記号C)。それぞれの波形は、後ろ足もしくは前足の関連する神経の200回反復した刺激の平均である。トップに正常なSSEPが、後ろ足脛骨神経の刺激への応答において、知覚皮質で記録されて、示される。2つのSSEPピークが示されていることに注目されたい.(P1およびP2)。P1は、初期到達誘発電位(刺激後約24msecで記録)、P2は、後期到達である(刺激後約60msec)。これは、速い、および遅い伝導繊維およびシナプスが、脳まで脊髄を上行するにつれて異なる潜伏期間のピークに分かれるからである。中間胸部脊髄への挫傷は、SSEPの記録(挫傷後記録)を排除したが、それは、この個々の動物における1ヶ月の連続した監視の間回復しなかった。下の記録は、SSEPを記録できないことは、他の変動のせいではなく、脊髄の損傷のせいであることを証明する制御SSEP(正中神経刺激)を示す。
【0102】
今やや異なるプロトコルに目を転じると、大きな(>350gm)成獣雌性モルモット(複数)を鎮静させ(ナトリウムペントバルビタル、下記参照)、正常な生活規制の体性感覚誘発電位(SSEP)試験を、損傷を与えていない動物で実施した。これには、初めに(通常)対側性の上肢の正中神経および対側性の下肢の正中神経の刺激に応答する体性知覚皮質からの誘発電位を記録することが含まれた。これらのベースラインの記録が得られた後、動物に深く麻酔をかけ、脊髄を外科手術用にさらし、標準化技術により挫傷を与えた(下記手術を参照)。1時間以内に、第2セットの電気的記録が得られ、できたばかりの損傷を通る誘発電位伝導の伝導損失を実証した。挫傷のレベル以上の神経回路は損傷を受けておらず、正常なSSEPがこの動物の正中神経刺激後に記録できることを先ず確立することが重要であったが、これがSSEP記録手順において体内制御を構成する(図7参照)。
【0103】
図7を参照すると、記録Aは、脛骨神経の刺激に応答して脊髄を上行する初期到達誘発電位の未編集電気的記録である(ピーク1:P 1)。下の3つのトレースは、200の刺激の個々の列である。上記の単一のトレースは、記録B〜Dとともに、平均波形である。この記録は、脊髄圧迫の前に鎮静させたモルモットから得た。Bにおいて、脊髄圧迫1時間後に取った波形は、同じ動物における上肢の正中神経の制御刺激を示す。初期到達EPの大きな振幅を注目されたい。Cにおいて、脊髄損傷を通るSSEPコンダクタンスの完全な損失は、同時に同じ動物において後ろ足の脛骨神経の刺激後に現れる。損傷した脊髄白質を通って伝導する複合活動電位の上行性斉射の能力におけるこの完全な損失は、この動物において1週間後も明らかである(D)。そのような記録は、この報告に用いられたすべての動物の特徴である。
【0104】
図2同様、図7のモルモットの図面は、正中神経の刺激により活性化された制御回路を示す。下肢の脛骨神経の刺激により活性化された神経回路は、脊髄への損傷により中断することが示されている。
【0105】
これらの記録が得られた後、動物は、麻酔から回復し、1週間維持された。誘発電位の別のセットを記録して、残りの伝導不足〜損傷後1週間までの程度を確立した。これらの記録を取った後、動物に4-APを投与したが、それは基準として、あるいは胃管強制栄養法による誘導の1つとして用いられた。ついで、薬物が伝導に与えた効果を、t=30分、1時間、ついで1時間ごとに4時間まで監視した。記録期間が完了した後、動物を回復させ、ついでおりに戻した。記録の最終セットを翌日得(18時間後)、ついで動物を安楽死させた。
【0106】
手術:慣用の定変位損傷が、損傷の行動的および解剖学上の結果の変異性を減少させるための手段として定衝撃よりも好ましい。この慣用の方法は、Borgen, R. B.; Shi, R.; Bohner, T. D. Behavioral Recovery from Spinal Cord Injury Following Delayed Application of Polyethylene Glycol. Journal of Experimental Biology 2002, 205, 1-12: Blight, A. R. Morphometric analysis of a model of spinal cord injury in guinea pigs, with behavioral evidence of delayed secondary pathology. J. Neurolog. Sci. 1991, 103, 156-171に記載されているが、両方ともその内容が参照により本明細書に取り込まれる。
【0107】
手短に:成熟モルモット(複数)(>〜350g;Hartley種)を100mg/kgのケタミンHClおよび20mg/kgのキシラジンの筋肉内注射により麻酔をかけた。背の椎弓切除手順は、脊髄をおよそ12番目の胸部椎骨レベル(T12)で第一腰椎レベル(L1)にさらした。さらされた脊髄に、特別に改変したdetenteを有するかん子を用いて挫傷を与えた。電気記録用に動物を固定するために、より穏やかな鎮静を、筋肉内注射(0.1ccナトリウムペントバルビタル、50mg/ml)によりもたらした。研究の終わりで、動物は麻酔下にあったが、モルモットを、麻酔投与を有意に増加させ、ついでかん流/固定(グルタルアルデヒドの燐酸緩衝Ringer溶液)により、安楽死させた。
【0108】
SSEP:SCLで観察された行動における破滅的欠乏に関連するのは、脊髄損傷の白質を通る神経インパルス伝導の損失である。脊髄を上行および下行する複合神経インパルスのこれらの斉射は、多くの軸索およびシナプスと関連し、上肢および下肢の複合神経の電気的活性化により(SSEP中で)、もしくは皮質の活性化により(運動誘発電位記録、もしくはMEP、本明細書では実施されない)、同時に刺激されたときに、「誘発電位」(EP)と言われる。大きく上行するインパルスの刺激のこの形は、ついで脳の対側性知覚運動皮質でそれらを記録するのだが、体性感覚誘発電位試験(SSEP)と言われる。
【0109】
下肢の脛骨神経の刺激を、膝後面で神経近くに挿入された1対の針電極を用いて達成した。類似のSSEPを、1対の刺激電極で前肢の正中神経の刺激により誘発した。記録電極を、中性電極を通常耳介に配置して、対側性皮質領域を覆う頭皮に配置した。
【0110】
検査の1期間中の完全な電気記録には、神経を200回続けて刺激することが含まれた(2mA平方波、3Hzで200μsec持続期間;図7のセクションAを参照)。ついで、これらの記録のうち3〜4セットを平均して、図7のセクションAおよびBに示される定量的研究のために単一の波形を生じた。記録および刺激は、Nihon Kohden Neuropak 4 およびPower Mac G-3 コンピュータを用いた。
【0111】
定量的評価には、刺激開始(刺激人工産物により示される)からEP開始まで潜伏期間の測定が含まれたが、もっとも信頼できる有益な比較データには、IPLab(登録商標)スペクトルソフトウエア(Scanalytics, フェアファックス、バージニア州)を用いてピクセルにおいてEPの下の領域の測定が含まれた。ピーク波形(ベースラインの上にある)の下のこれらの領域を、後損傷(あるいは後治療)EPを正常な動物で記録された初期EPの領域により分けて標準化した。もし損傷が理論的に治療後の伝導に回復する前に全(100%)神経繊維が刺激生活規制により同時に正常に刺激したら、平均SSEPは、したがって単一性(1.0)に達するだろう。
【0112】
薬物投与:薬物を、下記の方法を用いる胃管強制栄養法により投与した。全試験薬物を、丸い先端を有する供給針(18ゲージ、55mm長さ、もしくは16ゲージ、75mm長さ;Fine Science Tools)を用いてモルモットの胃に溶液で(下記参照)導入した。胃管強制栄養法は、鎮静させた動物で実施されるのみである。モルモットにおいて、柔らかい口蓋は、管を通す小さな開口部のみで舌の底と連続している。供給針を、切歯と大臼歯の初めの間に進めるが、これが供給針の胃への進出を容易にして、飲み込みもしくは絞扼反射を開始する。この操作の前に、正確な針(モルモットのサイズに合わせた)に、動物の最後の肋骨に隣接してその端を置き、鼻の先端近くに針の基部に印を付けることにより、印を付ける。これは、胃管強制栄養法の間胃に進出する必要な長さの見積もりを与える。針を、シリンジもしくは吸引器に接続して、材料を胃に導入、あるいはそこから取り出せるようにすることができる。
【0113】
投薬量および重量データ:モルモットの出発投薬量を、犬における対麻痺の臨床ケースで与えられた4-APの範囲内での作業により見積もった(0.5〜1.0mg/kg体重)。およそ500gのモルモットの場合、これは約0.25gの全投薬量をもたらす。胃管強制栄養法用の原液を調製したが、それにおいては0.2ccの水溶液は、0.2mgの4-APを含んだ。これは、動物に与えられた全濃度の相対的標準化を可能とし、動物の体重において有意な変化がないことにより容易だった(4-APで試験した10匹の動物について、平均体重は421.5±20.9gであった;メチルカルバメートについて、平均重量は411.6±23gだった;P≧0.5)。4-APの有効投薬量は、0.47±0.04mg/kgに等しい電気生理学的記録に改善をもたらすのに十分だった。比較によると、カルバメート3の有効投薬量は、やや低いようだったが(0.37±0.2mg/kg)、この違いは、小さな試料サイズ(P≧0.05)に与えられるとき統計学上違いはなかった。
【0114】
IV.結果
モルモットの脊髄を通る伝導の生体外試験
下に示される(メチルアミノ)ピリジン類、アミド類および尿素類は全て、4-APと同じ有効濃度で回復CAP振幅において増大をもたらし損ねた。
【0115】
【化8】

【0116】
3つの化合物、N-(4-ピリジル)メチルカルバメート(3);N-(4-ピリジル)エチルカルバメート(2)およびN-(4-ピリジル)t-ブチルカルバメート(1)は全て、損傷した脊髄を通る伝導を回復する変化する能力を示した。これら3つのカルバメート類でのパイロット実験は、4-AP(100μM)の作用濃度に等しいかそれ以下の作用濃度は、二重スクロースギャップ記録チェンバーにおける再現性のある伝導回復を生むことができることを確立した。メチルカルバメート(3)およびエチルカルバメート(2)は、4-APと同様に行動し、毒性なしでおよそ100μMの濃度でCAP伝導の回復を生むことがわかった。これらの生体外実験における毒性は、CAPの有意な減少と定義された。一方、t-ブチルカルバメート(1)は、浴溶液に添加されたとき、100μMで白質に毒性であることがわかった。しかし、カルバメート(1)は、4-APで見られるよりもはるかに低い有効濃度(1μM)で、毒性なしで損傷を通るCAP伝導を再現的に強めることがわかった。メチルカルバメート(3)については、100μMの有効濃度は、平均30.6±11.7%(n=4)の、回復CAPの振幅における増大をもたらした。エチルカルバメート(2)については、増大は、同じ濃度で18.6±8.7%(n=8)だった。この振幅における増大は、統計学上有意だった(P≦0.04)。1時間の洗浄後、強化されたCAPは、薬物前レベルまで振幅が降下した。t-ブチルカルバメート(1)は、1μM(n=5)で15.4±3.4%だけ回復CAP振幅を増大させた。この増大は、薬物前CAPsよりも非常に有意だった(P≦0.002)。図8は、これら3つの薬物のそれぞれについてCAP強化の電気的記録の例を与え、これらのデータをグラフで示す。特に、パネルAにおいて、第一の電気的記録は、エチルカルバメート(2)の添加前の回復複合活動電位(CAP)を示す(初めの小さな波形は、刺激人工産物である)。第二の記録は、カルバメート(2)の添加後約1/2時間で取られた。CAPの振幅における〜20%増大に注目されたい。第三の記録は、この強化CAPの振幅が、薬物除去および〜30分の洗浄後薬物前レベルまで戻ったことを示す。パネルBは、メチルカルバメート(3)の導入後に得られた電気的記録の類似のセットを示す。再び、薬物の存在下振幅における増大は、明白である。この強化は、薬物投与の間維持されただけで、ほぼ薬物前レベルが、薬物を洗い流した後に測定された。パネルCは、t-ブチルカルバメート(1)を用いて、AおよびBに対する記録の類似のセットを示す。この薬物は、はるかに低い濃度(1μM)でCAP振幅を強めるのに有効だった。パネルDは、全データの柱状図表を与える。カルバメート(3)および(2)は、100μM濃度でCAP振幅を統計学上強め(P≦0.04;星印1つ)、一方カルバメート(1)は、薬物前振幅に比較して1μMで統計学上CAPを改善した(P≦0.002;星印2つ)。
【0117】
モルモットにおける生体内試験
手術後、SSEPは、電気的記録が達成される時間までには(<1時間)、全動物において排除されていた。2匹を除いた全てにおいて、これらの「平坦線」記録は、1週間の記録の特徴でもあり、手術後1週間のモルモットのいずれにおいても伝導の自然発生的な回復の証拠がほとんど見られないことを示した。2つの例外において、小さな、非常に初期に到達する誘発電位(EP;およそ25msecの潜伏期間)が見られたが、このピークの大きさは、ベースライン上にはほとんど検知できず、それは信頼できるほど誘発されなかった。したがって、胃管強制栄養法およびさらなる記録は、これらの動物で実施され、そのデータは、残りとともにプールされる。4-APならびにカルバメート(3)および(2)の胃管強制栄養法は、波乱がなかった;しかし、t-ブチルカルバメート(1)を用いてこの手順を実施することはできなかった。結晶性カルバメート(1)は、容認されず、経口挿入のための既知の濃度の溶液を作る初期の試みには、問題があった。結果として、本明細書に与えられるのは、比較のための下記の予備生体外データのみである。
【0118】
4-APは、初期到達EP(ベースライン上)の復帰により観察されるように、挿入後30分〜1時間以内のEPの強力な、信頼できる強化をもたらした。10匹の動物中2匹は、胃管強制栄養法後4時間で4-APへ応答しなくなった。カルバメート(1)および(2)を用いたときは、応答への失敗はなかった。
【0119】
試料サイズが小さかったにもかかわらず、メチルカルバメート(1)によるEP回復の明らかな強化が実証されたことに注目されたい(図3参照)。図3は、N-(4-ピリジル)メチルカルバメート(1)の経口投与後の脊髄伝導の回復を示す。図3では、正常なSSEPの未編集電気的記録が、セクションAに示される。波形は、後ろ足の脛骨神経の電気的刺激後鎮静させたモルモットの知覚皮質上に配置された電極により記録された。やはりセクションAで、下の3つの記録は、神経の200回の反復刺激の個々のトレースである。点線(SA)は、刺激人工産物を印付けている。初期到達皮質電位は、未損傷モルモットにおける刺激(P1と印付けた)後およそ30msで示される(A)。
【0120】
セクションBにおいて、試験化合物の経口摂取への応答が、セクションAにおいて記録を与える同じ動物に示される。セクションBの上の記録は、本明細書に記載されるような中間胸部脊髄への挫傷後1時間でなされた。後ろ足の脛骨神経刺激後の皮質電位の完全な排除に注目されたい。1週間後(セクションBにおける第二トレース)、この脊髄損傷を通るインパルスを伝導し損ねることは、ほとんど変わらなかった。下の記録は、N-(4-ピリジル)メチルカルバメート(1)の胃管投与後1時間でなされた。ほぼ正常な皮質電位(P1)の急速な確立に注目されたい。
【0121】
試料サイズが小さかったにもかかわらず、メチルカルバメート(1)によるEP回復の明らかな強化が実証されている(図3)。かくて、これらの群間の統計学的比較が与えられる。全てのデータは、回復EPの下の領域(ピクセルで現される)を同じ損傷前データにより分けて標準化した。
【0122】
データは、カルバメート(1)が損傷後1週間で4-APに匹敵するEP回復を有意に強化したことを示す。両面ANOVAおよび率直なStudentのT検定の両方が、有意な増大を確認した(ANOVA=0.02;両側Student T=0.47)。後者の検定は小さい試料サイズのみにより控えめだとして、この比較は、下記表1に与えられる。構造的に類似するエチルカルバメート(2)と比べたメチルカルバメート(1)によるEP強化に注目されたい(表1)。後者のカルバメートは、4-APデータに比べて有意性を満たさなかった。
【0123】
【表1】

【0124】
4-APの3つのカルバメート誘導体(1、2および3)を試験した。3つの化合物は全て、研究した濃度で毒性を示すことなく、薬物前レベル以上のCAPにおける増大を誘発した。メチルおよびエチルカルバメート(3)および(2)は、4-APよりもやや低いCAP回復を誘発したが、4-APと同じ濃度(100μM)で有効だった。t-ブチルカルバメート(1)からの結果も興味深かった。4-APに最適な濃度を用いると、この化合物は、脊髄に極めて毒性であることが証明された。しかし、4-APの最適濃度の1μM、1%では、t-ブチルカルバメート(1)は、カルバメート(3)および(2)について観察された回復に等しい回復CAPにおける増大を示した。
【0125】
したがって、3つの化合物、メチルカルバメート(3)、エチルカルバメート(2)およびt-ブチルカルバメート(1)は、全て機械的に損傷した脊髄セグメントにおける活動電位コンダクタンスを強めることができることが、本開示から明らかである。100μMで、カルバメート(3)および(2)はCAP伝導を有意に強め、他方t-ブチルカルバメートは、1μMで、CAP電動を有意に強めることができた。
【0126】
前記記載および例は、単に本発明を説明するものであり、本発明の範囲を限定すると解釈すべきでないことは、当業者は理解すべきである。本明細書に示される詳細の変法が、上記特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲から逸脱しなければ、なされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】(i)器官培養におけるモルモットの脊髄白質のストリップへの標準化挫傷を通る複合活動電位伝播を試験するために用いた二重スクロースギャップ単離および記録チャンバー(セクションA)、(ii)単一に引き出されたCAP(セクションB)、(iii)反復CAPsの数(セクションC)、(iv)標準化挫傷を受けさせた後の脊髄を通るCAP伝導(セクションD)、および(v)薬学的介在後再び現れ始めるCAPを示す。
【図2】生体内で本発明の化合物を試験するために用いたSSEP試験プロトコルを示し、損傷を受けていない動物における正常な記録、中間胸部脊髄損傷後の知覚インパルスの排除および正中神経制御手順の重要性を示す。
【図3】正常なSSEPの現実の未編集電気的記録を示し、本発明の化合物であるN-(4ピリジル)メチルカルバメートの生体内投与に応答するほぼ正常な皮質電位(P 1) の急速な確立を示す。
【図4】本発明のピリジン誘導体の数例の構造式を示す。
【図5】本発明のいくつかのピリジン誘導体の追加例の構造式を示す。
【図6】器官培養におけるモルモットの脊髄白質のストリップへの標準化挫傷を通る複合活動電位伝播を試験するために用いた二重スクロースギャップ単離および記録チャンバーを示す。
【図7】鎮静させたモルモットにおけるSSEPの測定を示す。
【図8】本発明の化合物の存在下への回復複合神経インパルスの応答を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)に記載の化合物、あるいはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体:
【化1】

式中、R1は、HもしくはC1-C4アルキル基であり;
R2は、下記式の基:
【化2】

【化3】

もしくはOR基であり;
R3は、H、C1-C20アルキル基、OR基、下記式のアルキレンエステル基:
【化4】

アミン基-NR11R12もしくは-(CH2)m=基(ここでは、mは、1〜3であり、R6と環を形成する)であり、Rは、C1-C20アルキル基、アリール基もしくはアルキレンアリール基であり、R10は、C1-C10アルキル基であり、nは、1〜20であり、R11は、前述のH、C1-C4アルキル、アリール、アルキレンアリールもしくはアルキレンエステル基から選ばれ、R12は、前述のH、C1-C4アルキル、アリール、アルキレンアリールもしくはアルキレンエステル基から選ばれるか、あるいは-(CH2)z-基であり(ここでは、zは、R12がR6と環を形成するように、0〜2である)、R11およびR12の一方がH以外のものであるとき、R11もしくはR12の他方はHであり;R6は、H、C1-C4アルキル、F、Cl、Br、I、NO2もしくはNR13R14基であり(ここでは、R13は、HもしくはC1-C3アルキル基であり、R14は、-(CH2)m-基であり(ここでは、mは、0〜3であり、R3が不在のとき、下記式の基と環を形成する:
【化5】

));そしてR7、R8およびR9のそれぞれは、独立してH、C1-C4アルキル、F、Cl、Br、IもしくはNO2から選ばれ、好ましくはR7、R8およびR9の少なくとも2つ、より好ましくは3つは、Hである。
【請求項2】
下記の化合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の化合物、あるいはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体:
N-(4-ピリジル)t-ブチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)エチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)メチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)イソプロピルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ドデシルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ベンジルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ベンズアミド;
N-(4-ピリジル)アセトアミド;
N-(4-ピリジル)プロピオンアミド;
N-(4-ピリジル)トリメチルアセトアミド;
N-(4-ピリジル)エチルスクシナメート;
N,N'-(4-ピリジル)尿素
N,N'-(3,4-ピリジル)尿素
P,P-ジフェニルN-(4-ピリジル)ホスフィンアミド;および
4-ピリジニルホスホアミド酸、ジフェニルエステル。
【請求項3】
製剤学的に許容されるキャリヤーおよび治療に有効なある量の請求項1に記載の化合物、あるいは、それの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体を含む、損傷した哺乳類の神経組織の治療のための医薬組成物。
【請求項4】
請求項1の化合物が、下記の化合物からなる群から選ばれる、請求項3に記載の医薬組成物:
N-(4-ピリジル)t-ブチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)エチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)メチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)イソプロピルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ドデシルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ベンジルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ベンズアミド;
N-(4-ピリジル)アセトアミド;
N-(4-ピリジル)プロピオンアミド;
N-(4-ピリジル)トリメチルアセトアミド;
N-(4-ピリジル)エチルスクシナメート;
N,N'-(4-ピリジル)尿素
N,N'-(3,4-ピリジル)尿素
P,P-ジフェニルN-(4-ピリジル)ホスフィンアミド;および
4-ピリジニルホスホアミド酸、ジフェニルエステル;
ならびにそれらの製剤学的に許容される塩類、溶媒和化合物類もしくは多形体類。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物、あるいはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体を有効量、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、損傷した哺乳類の神経組織に苦しむ哺乳動物を治療する方法。
【請求項6】
哺乳類の神経組織が、外傷、病気、外傷誘因圧迫、腫瘍、出血、感染プロセス、脊髄狭窄症もしくは欠陥血液供給の結果損傷した場合の、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物、あるいはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体の投与が、哺乳類の神経組織損傷を通る活動電位もしくは神経インパルス伝導を回復する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
損傷した哺乳類の神経組織が、CNSもしくはPNS組織である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
損傷した哺乳類の神経組織が、脊髄組織であり、哺乳動物が、人間である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
下記の化合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の化合物、あるいはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体を有効量、哺乳動物に投与することを含む、請求項5に記載の方法:
N-(4-ピリジル)t-ブチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)エチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)メチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)イソプロピルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ドデシルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ベンジルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ベンズアミド;
N-(4-ピリジル)アセトアミド;
N-(4-ピリジル)プロピオンアミド;
N-(4-ピリジル)トリメチルアセトアミド;
N-(4-ピリジル)エチルスクシナメート;
N,N'-(4-ピリジル)尿素
N,N'-(3,4-ピリジル)尿素
P,P-ジフェニルN-(4-ピリジル)ホスフィンアミド;および
4-ピリジニルホスホアミド酸、ジフェニルエステル。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物、あるいはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体が、神経栄養因子として機能する、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物、あるいはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体が、別の製剤学的活性剤とともに投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記別の製剤学的活性剤が、神経栄養因子である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物、あるいはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体が、N-(4-ピリジル)t-ブチルカルバメート;N-(4-ピリジル)エチルカルバメート;N-(4-ピリジル)メチルカルバメート;およびN-(4-ピリジル)イソプロピルカルバメートからなる群から選ばれる、請求項5に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)に記載の化合物:
【化1】

あるいはそれの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体:
式中、R1は、HもしくはC1-C4アルキル基であり;
R2は、下記式の基:
【化2】

【化3】

もしくはOR基であり;
式中、R3は、下記式のアルキレンエステル基であり:
【化4】

(ここでは、nは、1〜20である)、もしくはアミン基-NR11R12であり;あるいはR3およびR6は、一緒になって-(CH2)m-基を形成し(ここでは、mは、1〜3である)、
R10は、C1-C20アルキル基であり、
R11は、H、C1-C4アルキル、アリール,アルキレンアリールおよび下記式のアルキレンエステル基からなる群から選ばれ:
【化5】

(ここでは、nは、1〜20である);R12は、下記式のアルキレンエステル基であり:
【化6】

(ここでは、nは、1〜20である);あるいは
R11は、Hであり、R12およびR6は、一緒になって-(CH2)z-基を形成し(ここでは、zは、0〜2である);
R6は、H、C1-C4アルキル、F、Cl、Br、I、NO2もしくはNR13R14基であり(ここでは、R13は、HもしくはC1-C3アルキル基であり、R14は、HもしくはC1-C3アルキル基である);あるいはR14は、R3と一緒にされて-(CH2)p-基を形成し(ここでは、pは、0〜3である);
Rは、C1-C20アルキル基、アリール基もしくはアルキレンアリール基であり;
R4およびR5は、アリールもしくはアリールオキシであり;そして
R7、R8およびR9は、それぞれ独立してH、C1-C4アルキル、F、Cl、Br、IおよびNO2からなる群から選ばれる。
【請求項2】
下記の化合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の化合物:
N-(4-ピリジル)イソプロピルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ベンジルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ベンズアミド;
N-(4-ピリジル)プロピオンアミド;
N-(4-ピリジル)トリメチルアセトアミド;
N-(4-ピリジル)エチルスクシナメート;
N,N'-(4-ピリジル)尿素
N,N'-(3,4-ピリジル)尿素
P,P-ジフェニルN-(4-ピリジル)ホスフィンアミド;および
4-ピリジニルホスホアミド酸、ジフェニルエステル;ならびに
それらの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体。
【請求項3】
製剤学的に許容されるキャリヤーおよび有効量の式(I)に記載の化合物:
【化7】

あるいはそれらの製剤学的に許容される塩、溶媒和化合物もしくは多形体を含む、損傷した哺乳類の神経組織の治療のための医薬組成物:
式中、R1は、HもしくはC1-C4アルキル基であり;
R2は、下記の基:
【化8】

【化9】

もしくはOR基であり;
式中、R3は、H、C1-C20アルキル基、アリール基、OR基、下記式のアルキレンエステル基であり:
【化10】

(ここでは、nは、1〜20である)、もしくはアミン基-NR11R12であり;あるいはR3およびR6は、一緒になって-(CH2)m-基を形成し(ここでは、mは、1〜3である)、
R10は、C1-C20アルキル基であり
R11は、H、C1-C4アルキル、アリール,アルキレンアリールおよび下記式のアルキレンエステル基:
【化11】

(ここでは、nは、1〜20である)からなる群から選ばれ;
R12は、H、C1-C4アルキル、アリール,アルキレンアリールおよび下記式のアルキレンエステル基:
【化12】

(ここでは、nは、1〜20である)からなる群から選ばれ;あるいはR12およびR6は、一緒になって-(CH2)z-基を形成し(ここでは、zは、0〜2である)、式中、R11もしくはR12の少なくとも1つは、Hであり;
R6は、H、C1-C4アルキル、F、Cl、Br、I、NO2もしくはNR13R14基であり(ここでは、R13は、HもしくはC1-C3アルキル基であり、R14は、HもしくはC1-C3アルキル基である);あるいはR14は、R3と一緒になって-(CH2)p-基を形成し(ここでは、pは、0〜3である);
Rは、C1-C20アルキル基、アリール基もしくはアルキレンアリール基であり;
R4およびR5は、アリールもしくはアリールオキシであり;そして
R7、R8およびR9は、それぞれ独立してH、C1-C4アルキル、F、Cl、Br、IおよびNO2からなる群から選ばれる。
【請求項4】
前記化合物が、下記の化合物からなる群から選ばれる、請求項3に記載の医薬組成物:
N-(4-ピリジル)t-ブチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)エチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)メチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)イソプロピルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ドデシルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ベンジルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ベンズアミド;
N-(4-ピリジル)アセトアミド;
N-(4-ピリジル)プロピオンアミド;
N-(4-ピリジル)トリメチルアセトアミド;
N-(4-ピリジル)エチルスクシナメート;
N,N'-(4-ピリジル)尿素
N,N'-(3,4-ピリジル)尿素
P,P-ジフェニルN-(4-ピリジル)ホスフィンアミド;および
4-ピリジニルホスホアミド酸、ジフェニルエステル;
ならびにそれらの製剤学的に許容される塩類、溶媒和化合物類および多形体類。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物、ならびにそれの製剤学的に許容される塩類、溶媒和化合物類および多形体類を有効量、それを必要とする哺乳動物に投与するを含む、損傷した哺乳類の神経組織に苦しむ哺乳動物を治療する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物の有効量の投与が、外傷、病気、外傷誘因圧迫、腫瘍、出血、感染プロセス、脊髄狭窄症もしくは欠陥血液供給の結果神経組織損傷を有する哺乳動物に対してである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物の有効量の投与が、哺乳類の神経組織損傷に対してであり、それにより活動電位もしくは神経インパルス伝導が回復する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物の有効量の投与が、損傷した哺乳類の神経組織を対象とし、損傷した哺乳類の神経組織が、CNSもしくはPNS組織である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物の有効量の投与が、損傷した哺乳類の神経組織を対象とし、損傷した哺乳類の神経組織が、脊髄組織である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物が、下記の化合物からなる群から選ばれる、請求項5に記載の方法:
N-(4-ピリジル)t-ブチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)エチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)メチルカルバメート;
N-(4-ピリジル)イソプロピルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ドデシルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ベンジルカルバメート;
N-(4-ピリジル)ベンズアミド;
N-(4-ピリジル)アセトアミド;
N-(4-ピリジル)プロピオンアミド;
N-(4-ピリジル)トリメチルアセトアミド;
N-(4-ピリジル)エチルスクシナメート;
N,N'-(4-ピリジル)尿素
N,N'-(3,4-ピリジル)尿素
P,P-ジフェニルN-(4-ピリジル)ホスフィンアミド;
4-ピリジニルホスホアミド酸、ジフェニルエステル;
ならびにそれらの製剤学的に許容される塩類、溶媒和化合物類および多形体類。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物の投与が、神経栄養因子を必要とする哺乳動物に対してである、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物の投与が、別の製剤学的に許容される活性剤と組み合わされる、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物の投与が、神経栄養因子と組み合わされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物が、N-(4-ピリジル)t-ブチルカルバメート;N-(4-ピリジル)エチルカルバメート;N-(4-ピリジル)メチルカルバメート;およびN-(4-ピリジル)イソプロピルカルバメートからなる群から選ばれる、請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−515585(P2006−515585A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559375(P2004−559375)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/038834
【国際公開番号】WO2004/052291
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
Macintosh
【出願人】(598063203)パーデュー・リサーチ・ファウンデーション (59)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】