説明

搬送フレーム及びその製造方法

【課題】部品などの対象物の形状やサイズが厳密に一様でなくても、対象物を固定する力が一様にかかり、十分に固定することが可能な搬送フレームを提供するとともに、金属板部材同士が良好に接合可能であり、過酷な使用環境下でも耐久性の高い搬送フレームの製造方法を提供する。
【解決手段】対象物の一時的固定のために、弾性体として平面スパイラルバネ40、42を用い、対象物の挿入時に平面スパイラルバネが圧縮されて効果的に対象物が2次元的に移動しつつ挿入されるようにした。表面より3nmの深さの酸素原子濃度が15at%未満の素材からなる複数枚の金属板部材を用いて金属板部材同士が所定箇所でのみ接合されるよう、拡散接合を施し、使用時の耐久性を高めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送フレーム及びその製造方法に関し、特に電子部品などの対象物を加工したり、洗浄したり、搬送したりするために対象物を一時的に固定して搬送可能な搬送フレーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子部品などの部品を製造する際には、その製造工程における、加工、搬送、洗浄などを効率よく行うために、部品などの対象物を一時的に固定して搬送する搬送用フレームが使用されることが多い。搬送用フレームは、「搬送トレー」、単に「トレー」あるいは「搬送治具」などと呼ばれることがあるが、本願では「搬送フレーム」と呼ぶことにする。
【0003】
従来から知られている搬送フレームとしては、固定部に対して、例えば、一方向に動く板バネを用いて、部品を固定部と可動板バネの間に挟み込んで固定する方式のものがある(下記の特許文献1及び特許文献3参照)。また、搬送フレームを構成する複数の部材同士を接合するために液相拡散接合を用いる搬送フレームの製造方法が周知である(下記の特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−230580号公報
【特許文献2】特開2008−6500号公報
【特許文献3】特開2009−96523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、移動方向が限られた板バネを用いた搬送フレームでは、部品などの対象物の形状やサイズが厳密に一様でないために、部品などの対象物を固定する力が一様にかからず、十分に固定されない。そのため、部品などの対象物が洗浄や搬送工程で動いてしまい、搬送フレームの役目を十分に果たすことができないという第1の問題点がある。また、複数枚の金属板部材から構成される搬送フレームの場合、金属板部材同士を所定箇所で相互に接合する必要があるが、界面の酸素原子濃度を0.1〜3at%に制御して、液相拡散接合する方法では大気中で表面の酸素原子濃度を3at%未満にすることは困難であり、接合に不具合が生じやすく、使用環境によっては接合部の剥がれなどの耐久性に問題があるという第2の問題点がある。
【0006】
したがって、本発明は上記第1の問題点を解決し、部品などの対象物の形状やサイズが厳密に一様でなくても、部品などの対象物を固定する力が一様にかかり、十分に固定することが可能で、部品などの対象物が洗浄や搬送工程で動いてしまうことのない、搬送フレームを提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、上記第2の問題点を解決し、金属板部材同士が良好に接合可能であり、過酷な使用環境下でも耐久性の高い搬送フレームの製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の目的を達成するために、本発明では対象物の一時的固定のために、平面スパイラルバネを用いている。すなわち本発明によれば、対象物を一時的に固定して搬送する搬送フレームであって、前記対象物を少なくとも2カ所で支持する固定部と、前記対象物に付勢力を与えて前記固定部との間で保持して一時的に固定する弾性体とを有する搬送フレームにおいて、
前記弾性体として、平面スパイラルバネを用いたことを特徴とする搬送フレームが提供される。
また、上記第2の目的を達成するために、本発明では搬送フレームを構成する複数枚の金属板部材を加工して、所定箇所で相互に接合しているが、これらの金属板部材の表面より3nmの深さの酸素原子濃度が15at%未満にすることにより、拡散接合性を良好にし、過酷な使用環境下でも高い耐久性を得ている。
すなわち、本発明によれば、対象物を一時的に固定して搬送する搬送フレームであって、前記対象物を少なくとも2カ所で支持する固定部と、前記対象物に付勢力を与えて前記固定部との間で保持して一時的に固定する平面スパイラルバネとを有する搬送フレームの製造方法であって、表面より3nmの深さの酸素原子濃度が15at%未満の素材からなる複数枚の金属板部材を用いて、感光性樹脂パターン形成、エッチングパターン形成により前記複数枚の金属板部材を加工し、加工後の前記複数枚の金属板部材同士が所定箇所でのみ接合されるよう、拡散接合を施す、搬送フレームの製造方法が提供される。
【0008】
なお、前記搬送フレームが外枠を有し、前記外枠に前記平面スパイラルバネとは別の平面スパイラルバネを介して前記固定部が接続されていることは、本発明の好ましい態様である。また、前記搬送フレームが外枠と、前記外枠に前記平面スパイラルバネとは別の少なくとも2つの平面スパイラルバネを介して保持された押しガイド部とを有し、前記弾性体としての平面スパイラルバネが前記押しガイド部に接続されていることは、本発明の好ましい態様である。また、前記搬送フレームの下方に下層を有することは本発明の好ましい態様である。また、前記搬送フレームの上方に上層を有することは、本発明の好ましい態様である。さらに、前記平面スパイラルバネを含む前記搬送フレームは、一枚の金属板を加工して構成されていることは、本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の搬送フレームによれば、弾性体としての平面スパイラルバネが2次元的に伸縮可能であり、固定部との相互作用により、サイズや形状が一様でない部品などの対象物の挿入時に平面スパイラルバネが圧縮されて効果的に対象物が2次元的に移動しつつ挿入されるようにし、結果として短時間で効率よく一時的に固定することができ、洗浄や搬送の効率を向上させることができる。また、請求項7に記載の搬送フレームの製造方法によれば、相互に接合される複数枚の金属板部材について、表面より3nmの深さの酸素原子濃度が15at%未満にすることにより、拡散接合性を良好にして搬送フレームを造ることができる。接合性が良好となることにより、搬送や洗浄など過酷な使用条件下においても多層構造の搬送フレームの接合部分が剥がれにくくなり、耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の搬送フレームの好ましい実施の形態の要部である中層を示す平面図である。
【図2】図1に示す要部を含む搬送フレームの上層を示す平面図である。
【図3】図1に示す要部を含む搬送フレームの下層を示す平面図である。
【図4】図1に示す要部を含む搬送フレームの好ましい実施の形態の平面図である。
【図5】図4の搬送フレームを点線で切断して矢印方向に見た断面図である。
【図6】図5の搬送フレームに2つの部品が保持されている様子を示す断面図である。
【図7】図1の中層の中で、上層及び下層に接合される部分と接合されない部分を識別して示した模式的平面図である。
【図8】本発明の搬送フレームの製造方法の好ましい実施の形態の示す模式図である。
【図9】本発明の搬送フレームの製造方法の好ましい実施の形態を説明するためのグラフであり、SUS304素材の深さが3nmの酸素原子濃度が15at%以上と15at%未満の素材の鉄の化学シフトを示したものである。
【図10】本発明の搬送フレームの製造方法の好ましい実施の形態を説明するためのグラフであり、SUS304素材の深さが3nmの酸素原子濃度が15at%以上と15at%未満の素材のクロムの化学シフトを示したものである。
【図11】本発明の搬送フレームの製造方法の好ましい実施の形態により製造された搬送フレームの接合状態を示す写真であり、深さ3nmの酸素原子濃度が15at%以上の厚さ0.4mmのSUS304素材と15at%未満厚さ0.4mmのSUS304の素材の拡散接合状態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の搬送フレームの好ましい実施の形態の要部である搬送フレーム10の中層14の平面図である。図1に示す中層14は、図2に示す搬送フレームの上層12と、図3に示す搬送フレームの下層16により上下からサンドイッチ状に挟み込まれて、搬送フレーム10が完成する。図4は、搬送フレーム10の平面図である。図5は、搬送フレーム10のかかる上層12、中層14、下層16の積層状態を示す断面図である。また、図6は、図5の搬送フレーム10に2つの部品44、46が保持されている様子を示す断面図である。
【0012】
本発明の搬送フレーム10は、上述のように、上層12と、中層14と、下層16の3層構造をとることが基本であるが、上層12は不要な場合があり、その場合は、中層14と下層16の2層構造とすることができる。また特殊な用途の場合、上層12のみならず、下層16をも除去して中層14のみで搬送フレームを構成することもできる。このように、本発明の搬送フレームは、基本構造は3層であるものの、用途などに応じて、上述のように、2層あるいは1層構造とすることもできる。いずれの場合も中層14は必須であり、また本発明の新規な構成の多くはこの中層14の構造にある。
【0013】
したがって、まず中層14の構造について説明する。中層14は、四角な枠状の枠部14Aと、殆どの部分が枠部14の内部空間に存在する中部ガイド部14Bと、枠部14の内部空間内で、中部ガイド部14Bと平行に配される押しガイド部14Cと、後述する複数の平面スパイラルバネ34、36、38、40、42とを有している。枠部14Aは、四角形(本実施の形態では、長方形)のすべての辺のほほ全部に沿って一周するよう、配されているが、図1の右側に示されるように完全に一周するのではなく、わずかな隙間14Dがある。図1における横方向をX方向、縦方向をY方向として以下の説明を行う。枠部14Aは、相互に対向する2つの長手部14A−1、14A−2と、これらの図中左端同士を連結する短手部14A−3と、長手部14A−1の右端から図中上方に伸長する右端下部14A−4と、長手部14A−2の右端から図中下方(Y方向)に伸長する右端上部14A−5とを有し、さらに、短手部14A−3の略中央部から図中右方向(X方向)に僅かに伸長する突起部24と、短手部14A―3の上端に近い位置から図中右方(X方向)に僅かに伸長する突起部26と、右端上部14A−5の上端に近い位置から図中左方(X方向)に僅かに伸長する突起部28とを有する。突起部24の先端には、平面スパイラルバネ24の一端が設けられ、平面スパイラルバネ24の他端には中部ガイド部14Bの左端部が設けられている。中部ガイド部14Bは、2つのU字状凹部18、20を形成する構造を有し、中部ガイド部14Bの右端には突起部22が存在する。この突起部22の一部は、前述の枠部14Aの隙間14Dから枠部14Aの外部に突出している。
【0014】
突起部26と28の間には、平面スパイラルバネ36、38を介して前述の押しガイド部14Cが設けられている。押しガイド部14には、その左端及び右端から所定距離の位置に図中下方(Y方向)に僅かに伸長する突起部30、32があり、突起部30、32のそれぞれには、平面スパイラルバネ40、42の一端が設けられている。平面スパイラルバネ40、42の他端は、中部ガイド部14Bの2つのU字状凹部18、20のそれぞれの、X方向の略中央部に位置する。
【0015】
次に前述の3層構造の本発明の実施の形態について説明する。図2は、搬送の対象物である、例えば部品が入るように開口している上部開口部12A、12Bを備える上層12の平面図であり、また、図4は、上層12の上部開口部12A、12Bより小さい下部開口部16A、16Bを備える下層16の平面図であり、中層14は、これら上層12と下層16の間に挟み込まれる形となる。なお、図5の断面図に示されるように、上層12と下層16は、それぞれ外周部分に縁部を有し、この縁部でのみ中層14と接合されているので、中層のうち、中部ガイド部14Bや押しガイド部14Cなどは、上層12及び下層16には接触しない構造となっている。
【0016】
図7は本発明の搬送フレーム10の上記実施の形態の中層14のどの部分が上層12及び下層16と接合されるかを模式的に示す平面図である。中層14のうち、上層12及び下層16に固定される部分は、梨地で示され、一方、上層12及び下層16に固定されない部分は、無地で示されている。なお、上記実施の形態では、上層12及び下層16に固定される部分(梨地で示された部分)は、前述の特許文献2に記載の拡散接合により、固定されている。固定されていない部分中、中部ガイド部14Bと押しガイド部14Cは、固定されている部分に対して、図中X方向及びY方向を含む2次元方向に移動可能である。かかる2次元的な移動を本発明では「揺動」と呼ぶ。
【0017】
上記中層14の構成及び動作についてさらに詳しく説明すると、押しガイド部14Cは、平面スパイラルバネ36、38を介して、突起部26、28の間に設けられ、また中部ガイド部14Bは、平面スパイラルバネ34を介して突起部24に支持されている。すなわち、押しガイド部14Cと中部ガイド部14Bは、これらの突起部36、38、24を介して中層14の固定部分(梨地部分)に揺動可能に一体化している。平面スパイラルバネ40、42は、突起部30、32を介して押しガイド部14Cに一体化している。なお、枠部14A、中部ガイド部14B、押しガイド部14C、突起部24、26、28、30、32、平面スパイラルバネ34、36、38、40、42、すなわち中層14の各要素は、1枚の金属板を用いてエッチングにより一体構造として造られる。
【0018】
このように、中部ガイド部14Bが平面スパイラルバネ34により突起部24に揺動可能に設けられていることにより、中部ガイド部14Bは左右上下に、すなわち図7の紙面に平行な2次元的に固定部に対して揺動可能となり、部品などの対象物を2つのU字状凹部18、20と平面スパイラルバネ30、32により構成される対象物収納部にインサートし易くしている。なお、部品などの対象物は、使用者が手作業で対象物収納部にインサートする場合もあるし、又は、機械などで振動させながら自動的に対象物収納部にインサートする場合もある。また、押しガイド部14Cは、平面スパイラルバネ36、38によって、左右上下に(上記2次元的に)揺動可能であり、したがって、押しガイド部14Cに突起部30、32を介して設けられた平面スパイラルバネ40、42も2次元的に揺動可能であり、対象物である部品を2つのU字状凹部18、20と平面スパイラルバネ30、32により構成される対象物収納部にインサートし易くしている。
【0019】
このようにして対象物収納部にインサート(挿入)された部品などの対象物は、上記2つのU字状凹部18、20と平面スパイラルバネ30、32により一時的に固定され、搬送や対象物の加工などが行われる。
【0020】
上記実施の形態では、対象物収納部として、中部ガイド部14BにU字状凹部18、20を設けているが、この部分の形状は、U字状凹部に限らず、すなわち、3点で支持する代わりに2点で支持するV字状凹部であってもよい。すなわち、中部ガイド部14Bは、1つの対象物の収納部として、少なくとも2点で支持する構造であればよい。
【0021】
また、本発明では平面スパイラルバネ34、36、38、40、42を用いているが、これらのうち、平面スパイラルバネ34、36、38は、それらの両側で他の部材に接合されている。すなわち、平面スパイラルバネ34は、突起部24と中部ガイド部14Bの左端との間に設けられていて、また、平面スパイラルバネ36は突起部26と押しガイド部14Cの左端の間に、また平面スパイラルバネ38は、突起部28と押しガイド部14Cの右端と間に設けられている。これらの平面スパイラルバネ34、36、38は、そのスパイラル構造の内、最外周の略半円部分の両端が他の部材と結合されている。したがって、中部ガイド部14Bや押しガイド部14Cの揺動時に、スパイラル構造の内、最外周の略半円部分が半径外方に付勢されるときは、この略半円部分のみが弾性力を提供する。一方、中部ガイド部14Bや押しガイド部14Cの揺動時に、スパイラル構造の内、最外周の略半円部分が半径内方に付勢されるときは、この略半円部分が半径内方向に圧縮されるので、付勢力が強い場合、最外周の半円部分は、その内側のスパイラル構造に当接し、最外周から2番目のスパイラル構造は最外周から3番目のスパイラル構造に当接するというように順次当接するので、1つの平面スパイラルバネに加えられる圧縮力に応じて当該平面スパイラルバネの複数の周のスパイラル構造が当接して圧縮力を吸収する。
【0022】
平面スパイラルバネ40、42は、スパイラル構造の最外周の端部でそれぞれ突起部30、32に設けられているが、部品などの対象物が収納部に挿入される過程では、平面スパイラルバネ40、42の図中下端が部品などの対象物と接触し、上記他の平面スパイラルバネ34、36、38と同様に作用する。すなわち、部品などが挿入される過程では、平面スパイラルバネ40、42に部品から応力が加えられると、1つの平面スパイラルバネに加えられる圧縮力に応じて当該平面スパイラルバネの複数の周のスパイラル構造が当接して圧縮力を吸収する。
【0023】
図8は、本発明に係る搬送フレーム10の製造方法の実施の形態を説明するための断面図による工程の説明図である。まず、ステンレス板などの素材の表面の油分をアルカリで洗浄し、塩酸や硝酸などの酸を用いて3nmの深さの酸素原子量を15at%未満にする。なお、あらかじめ別工程で3nmの深さの酸素原子量を15at%未満にした素材がある場合は、上記洗浄工程と酸処理工程を省略することができる。次に、ドライフイルムやスピンコーターなどを用いて感光性樹脂を素材の上に形成する。次に、感光性樹脂に光や電子を照射して感光させる。そして、アルカリ性の現像液に浸漬して、光や電子を照射した部分を溶解させて(ポジ型感光性樹脂)、凹凸のある感光性樹脂のパターンを形成する。次に、素材にあったエッチング液(例えば、塩化第二鉄)を用いて、凹形、抜き形のエッチングパターンを形成する。次に、凹形、抜き形のエッチングパターンを重ね、拡散接合を行い一体化して搬送フレーム10を形成する。
【0024】
図9は、本発明に係る搬送フレーム10の製造方法の実施の形態において、SUS304素材の深さが3nmの酸素原子濃度が15at%以上と15at%未満の素材の鉄の化学シフトを示した図である。図9において、酸素原子濃度が15at%以上の素材は、本発明の製造工程を経ていない。また、15at%未満の素材は本発明の製造工程を経ているものである。それぞれの素材の3nmの深さの位置をX線光電子分光法(Quanter2000アルバック.ファイ製)で分析すると、15at%以上の素材は酸素原子濃度が20.58at%、Fe2O3の化学結合であった。15at%未満の素材は酸素原子濃度が14.75at%、Feの化学結合であった。
【0025】
図10は、本発明に係る搬送フレーム10の製造方法の実施の形態において、SUS304素材の深さが3nmの酸素原子濃度が15at%以上と15at%未満の素材のクロムの化学シフトを示した図である。図10において、酸素原子濃度が15at%以上の素材は、本発明の製造工程を経ていない。また、15at%未満の素材は本発明の製造工程を経ているものである。それぞれの素材の3nmの深さの位置をX線光電子分光法(Quanter2000アルバック.ファイ製)で分析すると、15at%以上の素材は酸素原子濃度が20.58at%、Cr2O3の化学結合であった。15at%未満の素材は酸素原子濃度が14.75at%、Crの化学結合であった。
【0026】
図11は、本発明に係る搬送フレームの製造方法の実施の形態において、深さ3nmの酸素原子濃度が15at%以上の厚さ0.4mmのSUS304素材と15at%未満厚さ0.4mmのSUS304の素材の拡散接合状態を示した写真である。すなわち拡散接合したそれぞれの素材の断面に加工し、走査電子顕微鏡(SU6600日立ハイテクノロノジー製)で観察した結果(写真)が図11に示されている。図11において、酸素原子濃度が15at%以上の素材は、本発明の製造工程を経ていない。また、15at%未満の素材は本発明の製造工程を経ているものである。酸素原子濃度が15at%以上の厚さ0.4mmのSUS304素材を拡散接合する。そして、酸素原子濃度が15at%未満の厚さ0.4mmのSUS304素材を拡散接合する。図11より、本発明の製造工程を経ていない酸素原子濃度が15at%以上の素材は接合不良を起こしていたことがわかる。また、本発明の製造工程を経ている15at%未満の素材は接合が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明したように本発明は、対象物を一時的に固定して搬送する搬送フレームであって、対象物を少なくとも2カ所で支持する固定部と、対象物に付勢力を与えて前記固定部との間で保持して一時的に固定する弾性体とを有する搬送フレームにおいて、弾性体として、平面スパイラルバネを用いたので、対象物を対象物収納部にインサートしやすく、短時間で対象物を一時的にかつ確実に固定することが可能である。
また本発明において、表面より3nmの深さの酸素原子濃度が15at%未満の素材から構成することにより、拡散接合性を良好にし、一様でない部品を効率よく固定することができ、洗浄や搬送の効率を向上させる搬送フレームを造ることを主眼としているが、投入口を部品の形状に合わせ、さらに、二連などにすることによりさらに効率が向上し、電子部品以外の製造に伴う搬送に応用できる。
したがって、本発明は、電子部品を初めとする各種対象物の一時的固定による搬送のための搬送フレームと、その製造方法を用いる各種産業において有用である。
【符号の説明】
【0028】
10 搬送フレーム
12 上層
12A、12B 上部開口
14 中層
14A
14A−1、14A−2 長手部
14A−3 短手部
14A−4 右端下部
14A−5 右端上部
14B 中部ガイド部
14C 押しガイド部
14D 隙間
16 下層
16A、16B 下部開口
18、20 U字状凹部
22、24、26、28、30、32 突起部
34、36、38、40、42 平面スパイラルバネ
44、46 部品(対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を一時的に固定して搬送する搬送フレームであって、前記対象物を少なくとも2カ所で支持する固定部と、前記対象物に付勢力を与えて前記固定部との間で保持して一時的に固定する弾性体とを有する搬送フレームにおいて、
前記弾性体として、平面スパイラルバネを用いたことを特徴とする搬送フレーム。
【請求項2】
前記搬送フレームが外枠を有し、前記外枠に前記平面スパイラルバネとは別の平面スパイラルバネを介して前記固定部が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送フレーム。
【請求項3】
前記搬送フレームが外枠と、前記外枠に前記平面スパイラルバネとは別の少なくとも2つの平面スパイラルバネを介して保持された押しガイド部とを有し、前記弾性体としての平面スパイラルバネが前記押しガイド部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送フレーム。
【請求項4】
前記搬送フレームの下方に下層を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の搬送フレーム。
【請求項5】
前記搬送フレームの上方に上層を有することを特徴とする請求項4に記載の搬送フレーム。
【請求項6】
前記平面スパイラルバネを含む前記搬送フレームは、一枚の金属板を加工して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送フレーム。
【請求項7】
対象物を一時的に固定して搬送する搬送フレームであって、前記対象物を少なくとも2カ所で支持する固定部と、前記対象物に付勢力を与えて前記固定部との間で保持して一時的に固定する平面スパイラルバネとを有する搬送フレームの製造方法であって、表面より3nmの深さの酸素原子濃度が15at%未満の素材からなる複数枚の金属板部材を用いて、感光性樹脂パターン形成、エッチングパターン形成により前記複数枚の金属板部材を加工し、加工後の前記複数枚の金属板部材同士が所定箇所でのみ接合されるよう、拡散接合を施す、搬送フレームの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−17130(P2012−17130A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156271(P2010−156271)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(592034098)株式会社アロン社 (7)
【Fターム(参考)】