説明

搬送装置

【課題】針部材を用いて搬送物を搬送する搬送装置において、実際の針先の摩耗状態に適応した針交換告知を行う。
【解決手段】本発明の搬送装置は、針部材35が装着された駆動装置31を備え、積層された搬送物における最上部の搬送物に針部材35を引掛けた状態で駆動装置31を駆動させることにより、最上部の搬送物を所定方向に搬送するものであり、電流値検出部37と告知判定部50Aとを備えて構成されている。電流値検出部37は、駆動装置31が移動する間の駆動装置31のモータ34の電流値を検出する。告知判定部50Aは、電流値検出部37によって検出された電流値を予め設定された閾値と比較し、電流値が閾値以下である場合に、針部材35が所定の摩耗状態に達したと判定し、針部材の交換告知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針部材を用いて搬送物を搬送する装置に関するものであり、より具体的には、新聞や小冊子等の商品を販売する自動販売機に適用され、上記の商品を商品取出口まで搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、新聞や小冊子等を販売する自動販売機が知られている。この自動販売機は、前面が開口した箱状の本体キャビネットと、本体キャビネットの前面開口を閉塞する外扉とを備えている。本体キャビネットには、上下方向に複数段の棚が設けてあり、各棚には、新聞等を収納する収納ラックと、この収納ラックから新聞を取出口まで搬送する搬送装置とを備えている。収納ラックは、前面及び上面が開口してあり、販売する新聞等を積層した状態で収納できるようになっている。搬送装置は、本体キャビネットの奥方から前方に移動する駆動装置と、駆動装置に取り付けられるアームと、アームの先端に取り付けられる針部材を備えている。この搬送装置は、自動販売機本体から販売指令を受信すると、駆動装置がアームを奥方から前方に移動させることにより、一番上にある搬送物だけを針部材で引掛けて前方に搬送し、取出口に導くようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】近畿車輛株式会社 「近畿車輌-新聞自動販売機-KNC-10」[平成20年6月1日検索]、インターネット<URL:http://www.kinkisharyo.co.jp/ja/sanki/sa-seihin/sa-knc-10.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した搬送装置は、搬送時に搬送物との接触を繰り返すことにより針部材の先端が摩耗することで搬送物の引掛かりが悪くなる。そのため、定期的(1年に1回程度)に針部材を交換するか、あるいは、搬送回数が所定の回数に達したときに表示や音声等によって針部材を交換する旨の告知を行っている。
【0005】
しかしながら、所定の搬送回数に達するたびに針部材の交換を行う場合、実際には交換を要するほど針先が摩耗していないにも拘わらず針交換を行うこととなり、必要以上に針部材を消費してしまうという問題がある。逆に、針先の摩耗が著しい場合には、針交換を告知する前に搬送不具合を引き起こしてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、針部材を用いて搬送物を搬送する搬送装置において、実際の針先の摩耗状態に適応した針交換告知を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る搬送装置は、針部材が装着された駆動装置を備え、積層された搬送物における最上部の搬送物に前記針部材を引掛けた状態で前記駆動装置を駆動させることにより、最上部の前記搬送物を所定方向に搬送する搬送装置において、前記駆動装置が移動する間の前記駆動装置におけるモータの電流値を検出する電流検出手段と、前記電流検出手段によって検出された電流値を予め設定された閾値と比較し、前記電流値が前記閾値以下である場合に、前記針部材が所定の摩耗状態に達したと判定し、前記針部材の前記針部材の交換告知を行う告知判定手段と、備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る搬送装置は、上記請求項1において、前記告知判定手段が、所定の搬送回数分の前記電流値の平均値を算出し、この平均値を前記閾値と比較することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る搬送装置は、上記請求項1又は2において、環境温度を検出する温度検出手段を備え、前記温度検出手段の検出した温度に応じて前記電流値を補正することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る搬送装置は、針部材が装着された駆動装置を備え、積層された搬送物における最上部の搬送物に前記針部材を引掛けた状態で前記駆動装置を駆動させることにより、最上部の前記搬送物を所定方向に搬送する搬送装置において、前記駆動装置の移動に伴う前記搬送物の搬送距離を検出する搬送距離検出手段と、前記搬送距離検出手段によって検出された搬送距離を予め設定された閾値と比較し、前記搬送距離が前記閾値以下である場合に、前記針部材が所定の摩耗状態に達したと判定し、前記針部材の交換告知を行う告知判定手段と、備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に係る搬送装置は、上記請求項4において、前記告知判定手段が、所定の搬送回数分の前記搬送距離の平均値を算出し、この平均値を前記閾値と比較することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に係る搬送装置は、上記請求項4又は5において、前記搬送距離検出手段が、積層された各搬送物の搬送開始位置に応じて各搬送物の前記搬送距離を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の搬送装置によれば、実際の針先の摩耗状態に適応した針交換告知が可能となるため、針部材の摩耗による搬送不具合を未然に防止することができるとともに、未摩耗状態での不要な針交換を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明の搬送装置を新聞自動販売機に適用した場合の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態である搬送装置を適用した新聞自動販売機を示す正面図である。この新聞自動販売機は新聞を販売する自動販売機であり、一台で複数種類の新聞を販売できるようになっている。
【0016】
図1に示すように、新聞自動販売機は、前面が開口した箱状の本体キャビネット1と、本体キャビネット1の左側縁に支承され、本体キャビネット1の前面開口を閉塞する外扉2とを備えている。この外扉2には、ハンドルロック3、硬貨投入口4、紙幣挿入口5、電子マネー受付部6、表示器7、釣銭返却レバー8及び釣銭返却口9が配設されている。ハンドルロック3は外扉2を施錠するものである。硬貨投入口4は、硬貨を受け付ける開口であり、この硬貨投入口4から投入された硬貨は、外扉2の背面内側に配設した図示しない硬貨処理装置に収容される。紙幣挿入口5は、紙幣を受け付ける開口であり、この紙幣挿入口5から挿入された紙幣は、外扉2の背面内側に配設した図示しない紙幣処理装置に収容される。電子マネー受付部6は、電子マネーがチャージされたカード等の記録媒体を受け付ける部分であり、かざされた記録媒体との間で電子マネーデータを送受信することにより、対価を収受するようになっている。表示器7は、「販売中」、「釣り銭切れ」等の各種情報を表示する部分である。
【0017】
また、外扉2には、表示選択部11及び取出口12が上下方向に複数設けられている。表示選択部11は、新聞の紙名が記載されたプレート13と、プレート13に記載された新聞を選択する選択ボタン14とを有している。選択ボタン14は、例えば、点灯可能な押ボタンスイッチで構成され、選択可能な場合に点灯し、選択された場合には一定時間点滅するように制御される。取出口12は、新聞を取り出すための開口であり、その開口幅は、新聞が通るように新聞の長手方向の長さと略同一となるように形成されている。この取出口12の奥方上部には図示しないフラッパが支承され、このフラッパにより新聞取出口12が閉塞されている。なお、最上段の表示選択部11の上方には、注目記事が掲載された新聞を展示する展示部15が設けられている。
【0018】
一方、本体キャビネット1には、上述した複数の各取出口12に対応する収納ラック20及び搬送装置30がそれぞれ配置されている。図2は、取出口12、収納ラック20及び搬送装置30の位置関係を示す斜視図、図3は、収納ラック20及び搬送装置30の斜視図、図4は、搬送装置30におけるハンド33の斜視図、図5は、ハンド33の側面図である。
【0019】
収納ラック20は、販売する新聞を積層した状態で収納する箱体である。収納ラック20は、図3に示すように、その前面と上面とが開口しており、本体キャビネット1に引き出し可能に搭載されている。図示は省略するが、この収納ラック20には、新聞の長手方向が収納ラック20の幅方向となるようにして、複数部の新聞が積層された状態で収納される。そして、積層された新聞における最上部の新聞が、搬送装置30によって前面の開口部から繰り出されるようになっている。
【0020】
収納ラック20の底面には、図3に示すように底上部材21が取り付けられている。底上部材21の上面には、後述する針部材35の移動域に亘って切り抜き21aが設けられている。この切り抜き21aは、収納ラック20に収納された最後の新聞が繰り出された後、後述する針部材35を移動させる際にこの針部材35を挿通させるための孔であり、針部材35が収納ラック20の底面に当たって欠損することを防止する。
【0021】
また、収納ラック20の前面開口部と取出口12との間には、図2に示すように上ガイド板22a及び下ガイド板22bが配設されている。上下ガイド板22a,22bはそれぞれ取出口12に向けて傾斜する態様で配置されている。搬送装置30によって搬送される新聞は、この上下ガイド板22a,22bに沿って移動することにより、取出口12まで誘導される。
【0022】
搬送装置30は、新聞自動販売機の販売制御部からの販売指令にしたがって、収納ラック20に収納された新聞を一部ずつ搬送して取出口12まで導くものである。この搬送装置30は、駆動装置31と、駆動装置31に基端部が取り付けられるアーム32と、アーム32の先端に取り付けられ、針部材35が装着されたハンド33を備えている。
【0023】
駆動装置31は、図2及び図3に示すように収納ラック20の側方に配置され、モータ34(図6−1を参照)を駆動させることにより、収納ラック20の側面に沿って往復移動可能に構成されている。この駆動装置31には、アーム32の基端側が上下方向に回動可能に取り付けてあり、販売指令にしたがってアーム32を収納ラック20の奥方から前方に移動させ、その後、前方から奥方に移動させるようになっている。
【0024】
アーム32は、鋼板等からなる細長の板状体であり、上述したように、その基端側が駆動装置31に対して回動可能に取り付けられることで、その先端側が上下方向に移動可能に構成されている。上記構成とすることで、収納ラック20に積層された新聞の積層高さに応じて、アーム32の先端側を上下動させることができる。このアーム32の先端部にはハンド33が取り付けられている。
【0025】
ハンド33は、図4に示すように、後述する針部材35を保持するものであり、所定の幅寸法を有して形成されている、図4に示す例では、ハンド33の左右端部に1箇所ずつ針部材35a,35bが装着されている。ハンド33は、その中央部分がアーム32に取り付けられることで、右側の針部材35aと左側の針部材35bとに均等に力が作用するように構成されている。
【0026】
針部材35は、鋭利に形成された先端部に新聞の紙面を引掛けて保持するものである。針部材35が新聞を引掛けた状態で駆動装置31を駆動させ、アーム32を収納ラック20の奥方から前方に移動させることにより、針部材35も奥方から前方に移動する。その結果、針部材35に保持された新聞は前方に搬送され、取出口12まで導かれる。この後、アーム32を逆方向(前方から奥方)に移動させることにより、針部材35は収納ラック20の奥方に戻される。以下では、新聞自動販売機が待機状態にあるときの針部材35の位置を「待機位置」とよび、待機位置から新聞を引掛けた状態で前方に移動させて、新聞を搬送終了位置まで搬送したときの針部材35の位置を「折り返し位置」とよぶ。
【0027】
なお、ハンド33には、図5に示すようにカバー36が設けられている。このカバー36は、図5に示す状態のように針部材35が新聞90の紙面に接している場合には針35を露出させる一方、新聞90の入れ替えや補充作業の際にアーム32が持ち上げられ、針部材35が新聞90から離反した場合には、針部材35を覆い隠すように構成してある。
【0028】
新聞自動販売機が待機状態にあるとき、搬送装置30は収納ラック20の奥方側に配置され、針部材35は待機位置に位置している。新聞自動販売機の硬貨投入口4等から対価が収受され、利用者によって選択ボタン14が押下されると、選択された新聞を搬送する搬送装置30に搬送指令が出力される。搬送装置30は、収納ラック20に積層された最上部の新聞の上にハンド33を降ろし、針部材35の先端に新聞を引掛けた状態で、アーム32を奥方から前方に移動させることにより、針部材35を待機位置から折り返し位置まで移動させる。これにより、針部材35に引掛けられた最上部の新聞は、2番目の新聞上を摺動させられて前方に搬送され、取出口12に搬出される。新聞の搬送が終了すると、搬送装置30は、針部材35の先端を新聞から離反させた状態でアーム32を前方から奥方に移動させることにより、針部材35を折り返し位置から待機位置に移動させる。
【0029】
上記のように構成された搬送装置30は、以下に説明する針交換告知システムを備えている。針交換告知システムは、新聞搬送時における駆動装置31のモータ34の負荷電流値(以下、単に「電流値」とよぶ)を測定し、測定された電流値を予め設定した閾値と比較することにより針部材35の摩耗状態を検出し、所定の摩耗状態に達していると判定した場合に針部材35の交換を告知するように構成されている。図6−1は、針交換告知システムの概念図であり、図6−2は、針交換告知システムのブロック図である。
【0030】
針交換告知システムは、図6−1及び図6−2に示すように、電流値検出部37、温度センサ40、告知判定部50A、記憶部54A及び出力部60を備えている。
【0031】
電流値検出部37は、針部材35が新聞を引掛けた状態で収納ラック20の待機位置から折り返し位置に移動する間の、駆動装置31におけるモータ34の電流値を測定するものである。新聞90の搬送を繰り返すことで針部材35の先端が摩耗すると、搬送時に針部材35が新聞90を確実に保持することができなくなり、搬送途中で新聞90の表面を空滑りするようになる。針部材35が空滑りするようになると、空滑りしないときと比べてモータ34に負荷が掛らなくなる。したがって、このときのモータ34の電流値は、針部材35が空滑りしないときと比べて小さくなる。すなわち、針部材35の摩耗が進むほど、針部材35の空滑りが多くなり、モータ34の電流値は小さくなる。したがって、モータ34の電流値を監視することで、針部材35の摩耗状態を検出することが可能である。なお、本実施の形態では、針部材35が新聞を引掛けた状態で待機位置から折り返し位置まで移動する間の電流の平均値を、1回の搬送時の電流値として検出する。
【0032】
温度センサ40は、新聞自動販売機の機内温度(機内に温度調整機構や発熱要素機構がない場合には外気温度)を測定するものであり、搬送装置30近傍の所定位置に配置されている。以下では、この機内温度を「環境温度」とよぶ。
【0033】
告知判定部50Aは、電流値検出部37が検出した電流値を予め設定した閾値と比較することにより、針部材35が所定の摩耗状態に達したか否かを判定し、所定の摩耗状態に達していると判定した場合に、出力部に対して針交換の告知動作を行わせるものである。告知判定部50Aは、電流値補正部51、平均値演算部52及び比較部53を備えている。
【0034】
電流値補正部51は、電流値検出部37から受信した電流値を、上述した温度センサ40で測定された環境温度に応じて補正する演算を行う。駆動装置31のモータ34の電流値は、環境温度に応じて変化する。具体的には、常温(20℃)を基準温度として、環境温度が基準温度より高くなると電流値は減少し、環境温度が基準温度より低くなると電流値は増加する。具体的な例を挙げると、環境温度が0℃の場合、基準温度と比べて電流値は20%増加する。また、環境温度が40℃の場合、基準温度と比べて電流値は5%減少する。このため、電流値検出部37で検出された電流値を基準温度での値に補正することで、針摩耗状態の検出精度を向上させている。
【0035】
平均値演算部52は、電流値補正部51から受信した電流値を一時的に格納し、所定の搬送回数分(例えば3回分)の電流値の平均値を算出する。1回の搬送で測定した電流値を単独で閾値と比較すると、突発的な負荷減少異常に対して誤った告知を行う可能性がある。そこで、上記のように所定の搬送回数分の電流値の平均値を算出し、この平均値を閾値と比較するようにしたことで、針摩耗状態の検出精度を向上させている。
【0036】
比較部53は、平均値演算部52で算出された電流値の平均値を、記憶部54Aに記憶された電流値の閾値データ45と比較するものである。比較部53は、電流値の平均値が閾値以下である場合に、針部材35の先端が所定の摩耗状態に達したと判定し、出力部60に対して針交換の告知指令を送信し、告知動作を行わせる。一方、電流値の平均値が閾値を上回る場合には、針部材35の先端が未摩耗状態であると判定し、出力部60に対して針交換の告知指令を送信しない。
【0037】
記憶部54Aは、電流値の閾値データを格納する部位である。搬送時のモータ34の電流値は、搬送物の大きさや重さ等により異なる。このため、記憶部54Aには、新聞、小冊子、雑誌等の搬送物に応じた閾値データが格納されている。なお、これらの閾値データは、上述した基準温度での電流値である。
【0038】
出力部60は、告知制御部50からの告知指令を受信した場合に告知動作を行うものである。この出力部50が行う告知動作としては、たとえば液晶ディスプレイ等の表示装置への表示、ランプの点灯や点滅、あるいは、スピーカからの音声による動作を挙げることができる。
【0039】
図7は、上述した針交換告知システムの処理の流れを示す概略フローチャートである。以下、図7を参照しながら、針交換告知の処理手順について説明する。
【0040】
利用者によって新聞自動販売機の選択ボタン14が押下されると(ステップS11)、選択された新聞を搬送する搬送装置30に搬送指令が出力される。搬送装置30は、収納ラック20に収納された最上部の新聞の上にハンド33を降ろし、針部材35の先端に新聞を引掛けた状態で、針部材35を待機位置から折り返し位置まで移動させる。電流値検出部37は、針部材35を待機位置から折り返し位置まで移動させる間における駆動装置31のモータ34の電流値を測定する(ステップS12)。電流値検出部37によって測定されたモータ34の電流値は、告知判定部50Aに送信される。告知判定部50Aは、電流値補正部51を通じて電流値を基準温度での値に補正した後に、平均値演算部52を通じて所定の搬送回数分の電流値の平均値を算出する(ステップS13)。次いで、告知判定部50Aは、比較部53を通じて、上記平均値を記憶部54Aに記憶された閾値データと比較する(ステップS14)。平均値が閾値以下である場合(ステップS14:Yes)、告知判定部50Aは、針部材35が所定の摩耗状態に達したものと判定し、出力部60に対して針交換の告知指令を送信し、所定の告知動作を行わせる(ステップS15)。なお、告知判定部50Aは、針部材35が所定の摩耗状態に達したと判定した場合に、この判別結果を新聞自動販売機の販売制御部に送信する。販売制御部は、当該新聞の選択ボタン14の操作を無効化する。一方、平均値が閾値を上回る場合には(ステップS14:No)、針部材35の先端が未摩耗状態であると判定し、出力部60に対して針交換の告知指令を送信しない。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態の搬送装置30によれば、駆動装置31が移動する間のモータ34の電流値を検出する電流値検出部37と、電流値検出部37によって検出された電流値を予め設定された閾値と比較し、この電流値が閾値以下である場合に、針部材35が所定の摩耗状態に達したと判定し、針部材35の交換告知を行う告知判定部50Aとを備えた構成としたことで、実際の針先の摩耗状態に適応した告知が可能となるため、針の摩耗による搬送不具合を未然に防止することができるとともに、未摩耗状態での不要な針交換を防止することができる。
【0042】
また、本実施の形態の搬送装置30によれば、所定の搬送回数分の電流値の平均値を算出し、この平均値を閾値データ55と比較するようにしたことで、突発的な負荷減少異常に対して誤った告知を行うことを防止し、針部材35の摩耗状態の検出精度を向上させることができる。
【0043】
さらに、本実施の形態の搬送装置30によれば、環境温度を検出する温度センサ40を備え、この温度センサ40の検出した環境温度に応じて、電流値検出部37で検出した電流値を補正するようにしたことで、針部材35の摩耗状態の検出精度をさらに向上させることができる。
【0044】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る搬送装置について説明する。なお、上述した実施の形態1で説明した構成と同一の構成については同一の符号を付して説明する。
【0045】
図8−1は、実施の形態2の搬送装置30における針交換告知システムの概念図、図8−2は、図8−2に示した新聞90と搬送開始位置検出センサ80の上面図、図8−3は、図8−1に示した針交換告知システムのブロック図である。この実施の形態2では、駆動装置30の移動に伴う新聞の搬送距離を検出し、検出された搬送距離を予め設定された閾値と比較することにより針部材35の摩耗状態を検出し、所定の摩耗状態に達していると判定した場合に針部材35の交換を告知するように構成している。それ以外の構成は上記実施の形態1と同じである。
【0046】
図8−3に示すように、実施の形態2における針交換告知システムは、搬送距離検出センサ70、搬送開始位置検出センサ80、告知判定部50B、記憶部54B及び出力部60を備えている。
【0047】
搬送距離検出センサ70は、新聞90が針部材35によって搬送される際の新聞90の搬送距離を検出するものであり、取出口12と上下ガイド板22a、22bとの間に配置されている。ここで、搬送距離とは、新聞90が収納ラック20内に収納されている状態にあるときの新聞90の前端位置(以下、「搬送開始位置」とよぶ)と、針部材35によって新聞90が取出口12に搬出されたときの新聞90の前端位置(以下、「搬送終了位置」とよぶ)との間の距離である。
【0048】
新聞90の搬送を繰り返すことで針部材35の先端部分が摩耗すると、搬送時に針部材35が新聞90を確実に保持することができなくなり、搬送途中で新聞90の表面を空滑りするようになる。このときの搬送距離は、針部材35が空滑りしない場合と比べて短くなる。すなわち、針先が摩耗した状態で搬送された新聞90の搬送終了位置は、針先が摩耗していない状態で搬送された搬送終了位置よりも手前側になる。特に針先が著しく摩耗している場合には、搬送終了位置が取出口12に達せず、新聞90が外部へ排出されないといった事態も生じる。したがって、新聞90の搬送終了位置を、予め決められた閾値と比較することで、針部材35の先端の摩耗状態を検出することが可能である。この搬送距離検出センサ70は、たとえば光信号を投光する投光素子と、この光信号を受光する受光素子とからなる透過形光センサ等を用いることができる。投光素子と受光素子は、図8−1に示すように、上下ガイド板22a、22bを通過した新聞90の上下を挟む態様で、新聞90の搬送方向に複数組配置される。そして、各投光素子から各受光素子に向けて投光し、各受光素子の受光の有無で、新聞90の搬送終了位置を検出する。すなわち、複数組の光センサを並設し、どの位置の光センサがOFFしたかで搬送距離を測定することが可能である。光センサを並設した場合、隣接する投光の影響を受けることがあるが、隣接する光センサの投光と受光の方向を逆にして配置すれば干渉はなくなる。なお、より精密な位置検出を行う場合には、画像センサを用い、認識した新聞90の座標位置から搬送距離を算出する。
【0049】
搬送開始位置検出センサ80は、収納ラック20に積層された新聞90において、最上部にある新聞90の積層位置(高さ方向の位置)を検出するものであり、図8−2に示すように、積層された新聞90の側方に配置されている。この搬送開始位置検出センサ80は、上述した搬送距離検出センサ70と同様に、たとえば光信号を投光する投光素子と、この光信号を受光する受光素子とからなる光センサ等を用いることができる。投光素子と受光素子は、図8−2に示すように、積層された新聞90の両側方を挟む態様でそれぞれ配置される。そして、投光素子から受光素子に向けて投光し、受光素子の受光の有無で、最上部にある新聞90の積層位置(高さ方向の位置)を検出する。
【0050】
告知判定部50Bは、搬送距離検出センサ70が検出した搬送距離を予め設定した閾値と比較することにより、針部材35が所定の摩耗状態に達したか否かを判定し、所定の摩耗状態に達していると判定した場合に、出力部に対して針交換の告知動作を行わせるものである。告知判定部50Bは、搬送距離補正部56、平均値演算部57及び比較部58を備えている。
【0051】
搬送距離補正部56は、搬送距離検出センサ70から受信した搬送距離を、上述した搬送開始位置検出センサ80で検出された搬送開始位置に応じて補正する演算を行う。収納ラック20に積層された新聞90と取出口12までの距離は、収納ラック20内の新聞90の残量によって異なる。例えば、最上部の新聞90の高さ位置(収容残量高さ)が取出口12の位置とほぼ同じ高さである場合、新聞90から取出口12までの距離は最も短くなる。一方、最上部の新聞90の高さ位置(収容残量高さ)が取出口12の高さ位置よりも高いか、あるいは、低い場合には、新聞90から取出口12までの距離は、取出口12と同じ高さ位置にある場合と比べて長くなる。このため、本実施の形態では、取出口12と同じ高さ位置を基準位置とし、搬送距離検出センサ70で検出された搬送距離を、基準位置での値に補正することで、針摩耗状態の検出精度を向上させている。
【0052】
平均値演算部57は、搬送距離補正部56から受信した搬送距離を一時的に格納し、所定の搬送回数分(例えば3回分)の搬送距離の平均値を算出する。1回の搬送で測定した搬送距離を単独で閾値と比較すると、突発的な搬送距離の減少異常に対して誤った告知を行う可能性がある。そこで、上記のように所定の搬送回数分の搬送距離の平均値を算出し、この平均値を閾値と比較することで、針摩耗状態の検出精度を向上させている。
【0053】
比較部58は、平均値演算部57で算出された搬送距離の平均値を、記憶部54Bに記憶された搬送距離の閾値データ59と比較するものである。比較部58は、搬送距離の平均値が閾値以下である場合に、針部材35の先端が所定の摩耗状態に達したと判定し、出力部60に対して針交換の告知指令を送信し、告知動作を行わせる。一方、搬送距離の平均値が閾値を上回る場合には、針部材35の先端が未摩耗状態であると判定し、出力部60に対して針交換の告知指令を送信しない。
【0054】
記憶部54Bは、搬送距離の閾値データを格納する部位である。搬送距離は、搬送物の大きさ等により異なる。このため、記憶部54Bには、新聞、小冊子、雑誌等の搬送物に応じた閾値データが格納されている。
【0055】
出力部60は、告知制御部50からの告知指令を受信した場合に告知動作を行うものである。この出力部50が行う告知動作としては、たとえば液晶ディスプレイ等の表示装置への表示、ランプの点灯や点滅、あるいは、スピーカからの音声による動作を挙げることができる。
【0056】
図9は、上述した針交換告知システムの処理の流れを示す概略フローチャートである。以下、図9を参照しながら、針交換告知の処理手順について説明する。
【0057】
利用者によって新聞自動販売機の選択ボタン14が押下されると(ステップS21)、選択された新聞を搬送する搬送装置30に搬送指令が出力される。搬送装置30は、収納ラック20に収納された最上部の新聞の上にハンド33を降ろし、針部材35の先端に新聞を引掛けた状態で、針部材35を待機位置から折り返し位置まで移動させる。搬送距離検出センサ70は、取出口12に搬出された新聞90の搬送距離(すなわち搬送終了位置)を検出する(ステップS22)。搬送距離検出センサ70によって検出された搬送距離は、告知判定部50Bに送信される。告知判定部50Bは、搬送距離補正部56を通じて搬送距離を基準位置での値に補正した後に、平均値演算部57を通じて所定の搬送回数分の搬送距離の平均値を算出する(ステップS23)。次いで、告知判定部50Bは、比較部58を通じて、上記平均値を、記憶部54Bに記憶された閾値データと比較する(ステップS24)。平均値が閾値以下である場合(ステップS24:Yes)、告知判定部50Bは、針部材35が所定の摩耗状態に達したものと判定し、出力部60に対して針交換の告知指令を送信し、所定の告知動作を行わせる(ステップS25)。なお、告知判定部50Bは、針部材35が所定の摩耗状態に達したと判定した場合に、この判別結果を新聞自動販売機の販売制御部(図示せず)に送信する。販売制御部は、当該新聞の選択ボタン14の操作を無効化する。一方、平均値が閾値を上回る場合には(ステップS24:No)、針部材35の先端が未摩耗状態であると判定し、出力部60に対して針交換の告知指令を送信しない。
【0058】
以上説明したように、実施の形態2の搬送装置30によれば、駆動装置31の移動に伴う新聞90の搬送距離を検出する搬送距離検出センサ70と、搬送距離検出センサ70によって検出された搬送距離を予め設定された閾値と比較し、搬送距離が閾値以下である場合に、針部材35が所定の摩耗状態に達したと判定し、針部材35の交換告知を行う告知判定部50Bとを備えた構成としたことで、実際の針先の摩耗状態に適応した告知が可能となるため、針の摩耗による搬送不具合を未然に防止することができるとともに、未摩耗状態での不要な針交換を防止することができる。
【0059】
また、実施の形態2の搬送装置30によれば、所定の搬送回数分の搬送距離の平均値を算出し、この平均値を閾値データ55と比較するようにしたことで、突発的な搬送量の減少異常に対して誤った告知を行うことを防止し、針部材35の摩耗状態の検出精度を向上させることができる。
【0060】
さらに、実施の形態2の搬送装置30によれば、積層された各新聞90の搬送開始位置に応じて各搬送物の搬送距離を補正するようにしたことで、針部材35の摩耗状態の検出精度をさらに向上させることができる。
【0061】
なお、上記実施の形態では、本発明の搬送装置を新聞自動販売機に適用した例について説明したが、これに限定されるものではなく、他の自動販売機や、自動販売機以外の搬送装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の搬送装置を適用した新聞自動販売機を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態である搬送装置及び収納ラックを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態である搬送装置及び収納ラックを示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態である搬送装置におけるハンドの斜視図である。
【図5】図4に示したハンドの側面図である。
【図6−1】実施の形態1における針交換告知システムの概念図である。
【図6−2】実施の形態1における針交換告知システムのブロック図である。
【図7】実施の形態1における針交換告知システムの処理の流れを示す概略フローチャートである。
【図8−1】実施の形態2における針交換告知システムの概念図である。
【図8−2】実施の形態2における針交換告知システムの概念図である。
【図8−3】実施の形態2における針交換告知システムのブロック図である。
【図9】実施の形態2における針交換告知システムの処理の流れを示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 本体キャビネット
2 外扉
3 ハンドルロック
4 硬貨投入口
5 紙幣挿入口
6 電子マネー受付部
7 表示器
8 釣銭返却レバー
9 釣銭返却口
11 表示選択部
12 取出口
13 プレート
14 選択ボタン
20 収納ラック
21 底上部材
21a 切り抜き孔
22a 上ガイド板
22b 下ガイド板
30 搬送装置
31 駆動装置
32 アーム
33 ハンド
34 モータ
35 針部材
36 カバー
37 電流値検出部(電流検出手段)
40 温度センサ
50A,50B 告知判定部(告知判定手段)
51 電流値補正部
52,57 平均値演算部
53,58 比較部
54A,54B 記憶部
55 電流値閾値データ
56 搬送距離補正部
59 搬送距離閾値データ
60 出力部
70 搬送距離検出センサ(搬送距離検出手段)
80 搬送開始位置検出センサ
90 新聞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針部材が装着された駆動装置を備え、
積層された搬送物における最上部の搬送物に前記針部材を引掛けた状態で前記駆動装置を駆動させることにより、最上部の前記搬送物を所定方向に搬送する搬送装置において、
前記駆動装置が移動する間の前記駆動装置におけるモータの電流値を検出する電流値検出手段と、
前記電流値検出手段によって検出された電流値を予め設定された閾値と比較し、前記電流値が前記閾値以下である場合に、前記針部材が所定の摩耗状態に達したと判定し、前記針部材の交換告知を行う告知判定手段と、
を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記告知判定手段は、
所定の搬送回数分の前記電流値の平均値を算出し、この平均値を前記閾値と比較することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
環境温度を検出する温度検出手段を備え、前記温度検出手段の検出した温度に応じて前記電流値を補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
針部材が装着された駆動装置を備え、
積層された搬送物における最上部の搬送物に前記針部材を引掛けた状態で前記駆動装置を駆動させることにより、最上部の前記搬送物を所定方向に搬送する搬送装置において、
前記駆動装置の移動に伴う前記搬送物の搬送距離を検出する搬送距離検出手段と、
前記搬送距離検出手段によって検出された搬送距離を予め設定された閾値と比較し、前記搬送距離が前記閾値以下である場合に、前記針部材が所定の摩耗状態に達したと判定し、前記針部材の交換告知を行う告知判定手段と、
を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
前記告知判定手段は、
所定の搬送回数分の前記搬送距離の平均値を算出し、この平均値を前記閾値と比較することを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記搬送距離検出手段は、積層された各搬送物の搬送開始位置に応じて各搬送物の前記搬送距離を補正することを特徴とする請求項4又は5に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−143721(P2010−143721A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323268(P2008−323268)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】