説明

搬送車システム、速度決定方法

【課題】環状の軌道上を一方通行で走行する搬送車を備える搬送車システムにおいて実荷状態で走行する搬送車の状況を把握し、搬送車システムの搬送効率を向上させる。
【解決手段】環状の軌道101と、搬送車102と、ステーション103とを備え、さらに、荷物を搬送する計画を示す情報である搬送計画を取得する搬送計画取得部104と、ステーション103、および、セグメントのレイアウト情報であるマップを取得するマップ取得部105と、搬送計画とマップとからセグメント毎に荷物を積載した状態で搬送車が通過する回数である実荷通過度数を算出する度数算出部106と、周回方向において実荷通過度数が連続的に増加するセグメントの区間である増加区間を特定する増加区間特定部107と、増加区間の実荷通過度数の低いセグメントにおける搬送車102の速度を低下させる制御部108とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、環状の軌道に沿って設けられるステーションの間を一方通行で走行する複数の搬送車が荷物を搬送する搬送車システムに関し、特に、搬送車の速度を制御する搬送車システム、および、搬送車の速度決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造工場やディスプレイ製造工場などの複数の製造工程を経て生産される製品の工場では、分散状態で配置される生産設備の間を搬送車が無人で半製品などを搬送する搬送車システムが導入されることがある。この搬送車システムの一つとして、搬送車が走行する軌道を環状とし、複数の搬送車が環状の軌道上を一方通行で周回するシステムがある。
【0003】
このような、閉じた環状の軌道を備える搬送車システムの搬送効率の向上を目的として、例えば特許文献1には、軌道上における搬送車の搬送効率を監視し、必要に応じて新たな搬送車を軌道に投入したり、また、退避させたりする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−227059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の技術では、搬送車システムの実際の稼働状況を確認したうえで稼働させる搬送車の台数や搬送車の軌道上の速度などのパラメータを切り替えることがなされているため、最適なパラメータを見つけ出すことは困難である。さらに、時間帯や季節などによって変化する工場や物流センターの生産計画や搬送計画に適したパラメータを事前に準備しておき搬送車システムを柔軟に運用することは困難である。
【0006】
また、能力シミュレーション装置などを用いてシミュレーションすることで、最適なパラメータが決定される場合もあるが、シミュレーションに時間がかかり、処理能力の高いコンピュータが必要になるなどの問題もある。
【0007】
本願発明は上記課題に鑑みなされたものであり、搬送車システムの稼働状況を事前に把握し、搬送車の速度を決定することができる搬送車システム、および、速度決定方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる搬送車システムは、環状の軌道を一方通行で走行し、荷物を搬送する複数の搬送車と、前記軌道に沿って配置され前記搬送車と荷物の受け渡しをする複数のステーションと、一の前記ステーションから他の前記ステーションへ荷物を搬送する計画を示す情報である搬送計画を取得する搬送計画取得部と、複数の前記ステーション、および、隣接する前記ステーションの間の経路を示すセグメントのレイアウト情報であるマップを取得するマップ取得部と、前記搬送計画と前記マップとからセグメント毎に荷物を積載した状態で前記搬送車が通過する回数である実荷通過度数を算出する度数算出部と、周回方向において実荷通過度数が連続的に増加するセグメントの区間である増加区間を特定する増加区間特定部と、少なくとも一つの増加区間の実荷通過度数の低いセグメントにおいて、実荷通過度数のより高いセグメントを通過する前記搬送車の速度である第一速度よりも遅い第二速度を前記搬送車に設定する制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
これによれば、セグメント毎の実荷通過度数に着目することで、搬送車による搬送が頻繁に行われているセグメントの手前の区間で搬送車の速度を落とす設定を行うことができる。従って、搬送が頻繁に行われるセグメントの手前で搬送車の速度が低下(速度が0の場合は停止)して待機状態となるため、荷物を搬送車に渡す準備のあるステーションがあるにもかかわらず、空荷の搬送車が当該ステーションの前を素通りしてしまう、搬送割り付けの空振りを回避することができ、搬送車システム全体の搬送効率を向上させる設定を事前に行うことが可能となる。
【0010】
また、前記増加区間特定部はさらに、増加区間を最大実荷通過度数と最小実荷通過度数との差分が第一閾値よりも多い増加区間に限定するものでもよい。
【0011】
また、前記増加区間特定部はさらに、増加区間を最小実荷通過度数が第二閾値よりも少ない増加区間に限定するものでもよい。
【0012】
また、前記増加区間特定部はさらに、増加区間を実荷通過度数の増加率が第三閾値よりも高い増加区間に限定するものでもよい。
【0013】
また、前記増加区間特定部はさらに、増加区間を最大実荷通過度数が第四閾値よりも多い増加区間に限定するものでもよい。
【0014】
これらの条件を単独、または、複合的に採用することにより、搬送車の速度を落とすべきセグメントを明確にすることができ、より効果的に搬送車システム全体の調整を行うことが可能となる。
【0015】
さらに、実荷通過度数の前記軌道全体における最大値を特定する最大値特定部と、前記最大値が第五閾値を超えると、第五閾値を超えない場合に比べて前記軌道上を走行する搬送車の台数を増加させる台数決定部とを備えてもかまわない。
【0016】
これによれば、軌道に投入すべき搬送車の台数を決定することができ、無駄な資源の投入を抑制して搬送車システム全体の効率を高めることが可能となる。
【0017】
また、上記目的を達成するために本願発明に係る速度決定方法は、環状の軌道を一方通行で走行し、荷物を搬送する複数の搬送車と、前記軌道に沿って配置され前記搬送車と荷物の受け渡しをする複数のステーションとを備える搬送車システムにおいて前記搬送車の速度を決定する速度決定方法であって、一の前記ステーションから他の前記ステーションへ荷物を搬送する計画を示す情報である搬送計画を搬送計画取得部により取得し、複数の前記ステーション、および、隣接する前記ステーションの間の経路を示すセグメントのレイアウト情報であるマップをマップ取得部により取得し、前記搬送計画と前記マップとからセグメント毎に荷物を積載した状態で前記搬送車が通過する回数である実荷通過度数を度数算出部により算出し、周回方向において実荷通過度数が連続的に増加するセグメントの区間である増加区間を増加区間特定部により特定し、少なくとも一つの増加区間の実荷通過度数の低いセグメントにおいて、実荷通過度数のより高いセグメントを通過する前記搬送車の速度である第一速度よりも遅い第二速度を制御部により前記搬送車に設定することを特徴とする。
【0018】
これによれば、セグメント毎の実荷通過度数に着目することで、搬送車による搬送が頻繁に行われているセグメントの手前の区間で搬送車の速度を落とす設定を行うことができる。従って、搬送が頻繁に行われるセグメントの手前で搬送車の速度が低下して待機状態となるため、荷物を搬送車に渡す準備のあるステーションがあるにもかかわらず、空荷の搬送車が当該ステーションの前を素通りしてしまう、搬送割り付けの空振りを回避することができ、搬送車システム全体の搬送効率を向上させる設定を事前に行うことが可能となる。
【0019】
なお、前記速度決定方法が含む各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを実施することも本願発明の実施に該当する。無論、そのプログラムが記録された記録媒体を実施することも本願発明の実施に該当する。
【発明の効果】
【0020】
本願発明によれば、実際に搬送車システムを稼働させる前に、セグメント毎の実荷通過度数を算出して、あるセグメントにおける搬送車の速度を決定することで、搬送車システムの搬送効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、搬送車システムの機構構成を模式的に示す平面図である。
【図2】図2は、搬送車システムの機能構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】図3は、実荷通過度数をセグメント毎に算出し、増加区間を特定する方法を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本願発明に係る搬送車システム、速度決定方法の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本願発明に係る搬送車システム、速度決定方法の一例を示したものに過ぎない。従って本願発明は、以下の実施の形態を参考に請求の範囲の文言によって範囲が画定されるものであり、以下の実施の形態のみに限定されるものではない。
【0023】
図1は、搬送車システムの機構構成を模式的に示す平面図である。
【0024】
図2は、搬送車システムの機能構成を模式的に示すブロック図である。
【0025】
同図に示すように、搬送車システム100は、環状の軌道上で荷物を一方通行で搬送するシステムであって、機構構成として、軌道101と、搬送車102と、ステーション103とを備えている。また、搬送車システム100は機能構成として、搬送計画取得部104と、マップ取得部105と、度数算出部106と、増加区間特定部107と、制御部108とを備えている。
【0026】
軌道101は、搬送車102が走行する進路を決定するものであり、環状に設けられるものである。具体的には軌道101は、床面に敷設されるレールや、搬送車102を誘導するために床面に断続的に設けられる磁石などである。また、搬送車102がレーザー光線による三角測量や電波などの位置認識システムを備え自立的に走行する場合、軌道101は、具体的なものでは無くプログラムなどによって仮想的に設けられるものとなる。なお、図1中では軌道101を単純な形状として記載しているが、実際に軌道101を敷設する場合は、工場建屋や生産設備の配置などによって複雑な形状となる。また、分岐部を備えて他の軌道と一部分共有するような場合も軌道101に含まれる。
【0027】
搬送車102は、環状の軌道101を一方通行で走行し、荷物を搬送する搬送車である。搬送車102は、ステーション103から渡された荷物を他のステーション103まで搬送するものでもよく、また、ステーション103との間で荷物を移載する移載装置を備えていてもかまわない。また本実施形態の場合、搬送車102は、軌道101上のどの部分を走行しているか、例えばどのステーション103とどのステーション103との間を走行しているかを認識することができ、また、当該情報や荷物を保持しているか否かの情報を中央制御装置140に送信し、どのステーション103で荷物を受け取りどのステーション103で荷物を渡すかを示す搬送計画や、第一速度で走行する部分と第一速度よりも低速な第二速度で走行する部分を示す情報などを受信することができるものとなっている。
【0028】
ステーション103は、軌道101に沿って配置され、搬送車102と荷物の受け渡しをする施設である。具体的に例えば、ステーション103は、生産設備や保管庫のローダやアンローダである。図1において、ステーション103は、アンローダ(軌道101向きに白抜き矢印があるもの)と、ローダ(軌道101と反対向きに白抜き矢印があるもの)の別体として記載されているが、ステーション103は、ローダとアンローダの両機能を併せ持つものでもよい。また、ステーション103は、搬送車102との間で荷物の移載が可能な移載装置を備えていてもよい。
【0029】
中央制御装置140は、搬送車システム100の全体を司る装置である。具体的には、中央制御装置140は、中央演算装置と、メモリと、インターフェースとを備えたコンピュータに特定のプログラムを実行させることにより実現されている。
【0030】
搬送計画取得部104は、一のステーション103から他のステーション103へ荷物を搬送する計画を示す情報である搬送計画を取得する処理部であり、中央制御装置140の一機能である。具体的に搬送計画取得部104は、搬送車システム100が設置されている工場の生産計画から、複数の搬送計画を抽出し、または、生産計画に基づいて演算を行うことで算出することにより搬送計画を取得する。
【0031】
また、搬送計画は、図3では始端が黒丸、終端が矢印の線で表しており、一本の線が一つの搬送計画を表している。搬送計画の黒丸は、対応するステーション103において荷物が搬送車102に渡されることを表し、搬送計画の矢印は、対応するステーション103において荷物が搬送車102から受け取られることを表している。
【0032】
マップ取得部105は、複数のステーション103、および、隣接するステーション103の間の経路を示すセグメントのレイアウト情報であるマップを取得する処理部であり、中央制御装置140の一機能である。具体的にマップ取得部105は、図3に示すように、予め与えられたステーション103のレイアウトの情報と軌道101の情報とから概念的な情報であるセグメントS1〜S6を算出し、セグメントS1〜S6のレイアウトの情報やセグメントS1〜S6とステーション103との位置関係などをマップとして取得する。
【0033】
なお、マップ取得部105は、生産設備などの移動や変更がない限り一度取得すれば、マップを記憶しておけばよい。
【0034】
度数算出部106は、搬送計画取得部104が取得した搬送計画とマップ取得部105が取得したマップとからセグメントS1〜S6毎に荷物を積載した状態で搬送車102が通過する回数である実荷通過度数を算出する処理部であり、中央制御装置140の一機能である。具体的に度数算出部106は、図3に示すように、複数の搬送計画(同図中実線矢印)と、マップ(セグメントS1〜S6のレイアウト)から、搬送計画の重なり数を実荷通過度数として算出する。本実施形態の場合、ステーション103であるAからBへ荷物を搬送する搬送計画はないため、セグメントS1における実荷通過度数は0となる。ステーション103であるBからDへ荷物を搬送する搬送計画aが一つあるため、つまり、搬送車102はBで荷物を積みセグメントS2とセグメントS3とを通過してDで荷物を下ろすため、セグメントS2の実荷通過度数は1となる。セグメントS3においては、先ほどの搬送計画aとステーション103であるCからDへ荷物を搬送する搬送計画bがあるため、つまり、セグメントS3では実荷状態の搬送車102が2回通過するため、実荷通過度数は2となる。同様にしてセグメントS4における実荷通過度数は1、セグメントS5における実荷通過度数は2、セグメントS6における実荷通過度数は1となる。
【0035】
増加区間特定部107は、周回方向において実荷通過度数が連続的に増加するセグメントの区間である増加区間を特定する処理部であり、中央制御装置140の一機能である。具体的に増加区間特定部107は、図3に示すように、セグメントS1〜セグメントS3は、実荷通過度数が0、1、2と連続的に増加しているためセグメントS1〜セグメントS3を増加区間として特定する。また、セグメントS4〜セグメントS5は、実荷通過度数が1、2と連続的に増加しているためセグメントS4〜セグメントS5も増加区間として特定する。
【0036】
ここで、セグメントS4〜セグメントS5のように、隣り合うセグメントの区間でしか実荷通過度数が増加していないが、このような場合も「連続して増加」の語の意味に含まれるものとしている。また、実荷通過度数が0、1、1、2と増加する場合など同じ度数が連続する場合も「増加」の語の意味に含まれるものとしている。
【0037】
また、増加区間特定部107は、増加区間を特定するに際し、次の様な条件のいずれか、または、次の条件を組み合わせて特定する増加区間を絞り込んでもよい。
【0038】
また、「増加区間」とは概念的なものであり、増加区間特定部107により特定、または、限定された区間が増加区間となる。
【0039】
以下条件i)〜iv)
i)実荷通過度数の増加率が第三閾値よりも高い増加区間に限定する。
【0040】
ここで、増加率とは、増加区間の最大実荷通過度数と最小実荷通過度数との差分を増加区間に含まれるセグメントの数、または、増加区間の実距離で除した値である。具体的には、セグメントS1〜セグメントS3の区間は差分が2でセグメント数が3であるから増加率が0.67となり、セグメントS4〜セグメントS5の区間は、差分が1でセグメント数が2であるから増加率は0.5となる。そして第三閾値が0.6であった場合、セグメントS1〜セグメントS3のみが増加区間として限定される。
【0041】
なお、「増加率が第三閾値よりも高い」の語には「増加率が最も高い」も含まれる。
【0042】
ii)増加区間における最大実荷通過度数が第四閾値よりも多い増加区間に限定する。
【0043】
具体的には、セグメントS1〜セグメントS3の区間もセグメントS4〜セグメントS5の区間も最大実荷通過度数は2である。そして第四閾値が0.9の場合、両方が増加区間として限定される。
【0044】
なお、「最大実荷通過度数が第四閾値よりも多い」の語には「最大実荷通過度数が最もも多い」も含まれる。
【0045】
iii)増加区間における最小実荷通過度数が第二閾値よりも少ない増加区間に限定する。
【0046】
具体的には、セグメントS1〜セグメントS3の区間は最小実荷通過度数は0、セグメントS4〜セグメントS5の区間も最小実荷通過度数は1である。そして第二閾値が0.9の場合、セグメントS1〜セグメントS3のみが増加区間として限定される。
【0047】
なお、「最小実荷通過度数が第二閾値よりも少ない」の語には「最小実荷通過度数が最も少ない」も含まれる。
【0048】
iv)増加区間における最大実荷通過度数と最小実荷通過度数との差分が第一閾値よりも多い増加区間に限定する。
【0049】
具体的には、セグメントS1〜セグメントS3の区間は差分が2、セグメントS4〜セグメントS5の区間は、差分が1となる。そして第一閾値が1.5であった場合、セグメントS1〜セグメントS3のみが増加区間として限定される。
【0050】
なお、「差分が第一閾値よりも多い」の語には「差分が最も多い」も含まれる。
【0051】
また増加区間特定部107は、減少区間を特定することにより増加区間を特定してもかまわない。つまり、減少区間の最小実荷通過度数が最も小さいセグメントは増加区間の開始セグメントと見なせるからである。
【0052】
制御部108は、少なくとも一つの増加区間の実荷通過度数の低いセグメントにおいて、実荷通過度数のより高いセグメントを通過する搬送車102の速度である第一速度よりも遅い第二速度を搬送車102に設定する処理部であり、中央制御装置140の一機能である。具体的に制御部108は、増加区間(セグメントS1〜S3)の実荷通過度数の最も低いセグメントS3を通過する場合、少なくとも空荷状態の搬送車102は第二速度で通過するように搬送車102に向けて送信する。また、セグメントS1、セグメントS2を通過する際は、第二速度よりも早い第一速度で通過するように搬送車102に送信してもよい。
【0053】
なお、「第二速度」の語には、速度が0、すなわち該当のセグメントにおいて搬送車102が待機する状態も含むものとしている。
【0054】
以上の搬送車システム100、および、速度決定方法を採用することにより、軌道101とステーション103との位置関係を示すマップと、生産計画などから作成される搬送計画とを取得するだけで、実際に搬送車システム100を稼働させることなく、また、詳細なシミュレーションを行うことなく、非常に簡便に搬送車102が実荷状態で頻繁に通過する区間を特定することが可能となる。そして、当該結果に基づき、搬送車システム100の搬送効率が低下しないように、軌道101の特定区間において搬送車102の速度を落とし、また、要すれば待機させて、荷物を受け渡す予定のあるステーション103の前を空荷状態の搬送車102が通過する、いわゆる空振りの発生を抑止し、搬送車システム100の搬送効率を向上させることが可能となる。
【0055】
さらに本実施の形態の場合、搬送車システム100の中央制御装置140は、最大値特定部141と、台数決定部142とを備えている。
【0056】
最大値特定部141は、実荷通過度数の軌道101全体における最大値を特定する処理部であり、中央制御装置140の一機能である。具体的に最大値特定部141は、図3に示すように最大値を2と特定する。
【0057】
台数決定部142は、実荷通過度数の前記最大値が第五閾値を超えると、第五閾値を超えない場合に比べて軌道101上を走行する搬送車102の台数を増加させる処理部であり、中央制御装置140の一機能である。具体的には、実荷通過度数の最大値が2であり、第5閾値が1.6であった場合、台数決定部142は、実荷通過度数の最大値が1の場合に比べて軌道101上で走行する搬送車102の台数が増加するように、軌道101に接続され予備の搬送車102を保管するベイから搬送車102を追加する命令を送信する。
【0058】
以上の搬送車システム100によれば、軌道101上で周回する搬送車102の延べ周回数、すなわち、搬送車システム100の繁忙状況を事前に把握することができ、当該繁忙状況に対応して搬送車102を軌道101上に投入することが可能となる。従って、タイムラグ無く実際の状況に対応でき、搬送車システム100の搬送効率を向上させることが可能となる。
【0059】
さらに、搬送車システム100を工場に導入する前などに置いても、大まかな生産計画に基づいて必要な搬送車の台数を決定することもでき、無駄な設備投資を抑制することが可能となる。
【0060】
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本願発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本願発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本願発明に含まれる。
【0061】
また、周回方向を第一方向として実荷通過度数の最大値を求め、一方、周回方向を第一方向とは逆の第二方向として実荷通過度数の最大値を求め、最大値が少ない方の周回方向を採用してもかまわない。これにより、搬送効率を向上させることが可能となる。
【0062】
また、上記条件i)〜iv)に基づき限定された増加区間と、当該増加区間を限定した条件と異なる条件で限定された増加区間とが一つの軌道に存在してもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本願発明は、環状の軌道を一方通行で走行する搬送車を複数備える搬送車システムに適用でき、特に、半導体製造工場やディスプレイ製造工場など季節や年度によって生産計画が頻繁に変わる工場内の搬送車システムに好適である。
【符号の説明】
【0064】
100 搬送車システム
101 軌道
102 搬送車
103 ステーション
104 搬送計画取得部
105 マップ取得部
106 度数算出部
107 増加区間特定部
108 制御部
140 中央制御装置
141 最大値特定部
142 台数決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の軌道を一方通行で走行し、荷物を搬送する複数の搬送車と、
前記軌道に沿って配置され前記搬送車と荷物の受け渡しをする複数のステーションと、
一の前記ステーションから他の前記ステーションへ荷物を搬送する計画を示す情報である搬送計画を取得する搬送計画取得部と、
複数の前記ステーション、および、隣接する前記ステーションの間の経路を示すセグメントのレイアウト情報であるマップを取得するマップ取得部と、
前記搬送計画と前記マップとからセグメント毎に荷物を積載した状態で前記搬送車が通過する回数である実荷通過度数を算出する度数算出部と、
周回方向において実荷通過度数が連続的に増加するセグメントの区間である増加区間を特定する増加区間特定部と、
少なくとも一つの増加区間の実荷通過度数の低いセグメントにおいて、実荷通過度数のより高いセグメントを通過する前記搬送車の速度である第一速度よりも遅い第二速度を前記搬送車に設定する制御部と
を備える搬送車システム。
【請求項2】
前記増加区間特定部はさらに、増加区間を最大実荷通過度数と最小実荷通過度数との差分が第一閾値よりも多い増加区間に限定する
請求項1に記載の搬送車システム。
【請求項3】
前記増加区間特定部はさらに、増加区間を最小実荷通過度数が第二閾値よりも少ない増加区間に限定する
請求項2に記載の搬送車システム。
【請求項4】
前記増加区間特定部はさらに、増加区間を実荷通過度数の増加率が第三閾値よりも高い増加区間に限定する
請求項3に記載の搬送車システム。
【請求項5】
前記増加区間特定部は、増加区間を最大実荷通過度数が第四閾値よりも多い増加区間に限定する
請求項4に記載の搬送車システム。
【請求項6】
前記増加区間特定部はさらに、増加区間を最小実荷通過度数が第二閾値よりも少ない増加区間に限定する
請求項1に記載の搬送車システム。
【請求項7】
前記増加区間特定部はさらに、実荷通過度数の増加率が第三閾値よりも高い増加区間に限定する
請求項1に記載の搬送車システム。
【請求項8】
前記増加区間特定部は、増加区間を最大実荷通過度数が第四閾値よりも多い増加区間に限定する
請求項1に記載の搬送車システム。
【請求項9】
さらに、
実荷通過度数の前記軌道全体における最大値を特定する最大値特定部と、
前記最大値が第五閾値を超えると、第五閾値を超えない場合に比べて前記軌道上を走行する搬送車の台数を増加させる台数決定部と
を備える請求項1に記載の搬送車システム。
【請求項10】
環状の軌道を一方通行で走行し、荷物を搬送する複数の搬送車と、前記軌道に沿って配置され前記搬送車と荷物の受け渡しをする複数のステーションとを備える搬送車システムにおいて前記搬送車の速度を決定する速度決定方法であって、
一の前記ステーションから他の前記ステーションへ荷物を搬送する計画を示す情報である搬送計画を搬送計画取得部により取得し、
複数の前記ステーション、および、隣接する前記ステーションの間の経路を示すセグメントのレイアウト情報であるマップをマップ取得部により取得し、
前記搬送計画と前記マップとからセグメント毎に荷物を積載した状態で前記搬送車が通過する回数である実荷通過度数を度数算出部により算出し、
周回方向において実荷通過度数が連続的に増加するセグメントの区間である増加区間を増加区間特定部により特定し、
少なくとも一つの増加区間の実荷通過度数の低いセグメントにおいて、実荷通過度数のより高いセグメントを通過する前記搬送車の速度である第一速度よりも遅い第二速度を制御部により前記搬送車に設定する
速度決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−247944(P2012−247944A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118417(P2011−118417)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】