説明

携帯用機器のコード保持構造

【課題】通常使用時に不必要な突起部分を凸設させることなく、従って携帯用機器の携帯性を損ねることなく、それでいてコードを巻き付ける時には先端からほどけないように確実に保持することができるようにする。
【解決手段】筐体aの外周面を延長するようにしてコード保持部2が設けられ、その下にコードをくぐらせることができるように凹部11が設けられている。また、機器本体1に巻き付けられたコードの一方がコード引き出し部2に、もう一方がコード保持部12によりそれぞれずれていかないように押さえられる構成であると共に、凹部11は、コード引き出し部2からの引き出し方向に垂直な方向にコードが通過できるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器本体からコード(cord)が引き出されている携帯用機器のコード保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話充電用のACアダプタなどの携帯用機器では、機器本体から引き出されたコードをコンパクトにまとめた方が、携帯性という視点から好ましい。
このコードは、購入時には結束バンド等により一まとめにされているが、使用開始後にはその都度結束バンドで巻くのも面倒であり、機器本体にコードを巻き付けて携帯している場面がしばしば見られる。
【0003】
ここで、従来のACアダプタとして、上下両面の周縁を鍔状部として側面より突出させ、出力コードを巻き付けても逸脱しないようにし、先端の出力プラグを挿入保持可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、電子部品が搭載される回路基板のコネクタのケーブルからの放射ノイズを抑制する構造において、コネクタの外周面にケーブル矯正用の突起部材を設け、ケーブルの引き出しのループを小さく、且つ高さを低くするようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−95260号公報
【特許文献2】特開2004−235398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1のものは、コードを巻き取るために、通常使用時には不必要な鍔状部として機器筐体から突出させる必要があり、その分、携帯性や使用時の利便性を損ねてしまっていた。
【0006】
また、上述した特許文献2のものは、回路基板のコネクタからの多数のケーブルを束ねるために、通常使用時には不必要なケーブル矯正用の突起部材を機器筐体に凸設する必要があり、その分、携帯性や使用時の利便性を損ねてしまっていた。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、通常使用時に不必要な突起部分を凸設させることなく、従って携帯用機器の携帯性を損ねることなく、それでいてコードを巻き付ける時には先端からほどけないように確実に保持することができる携帯用機器のコード保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明に係る携帯用機器のコード保持構造は、機器本体に、コードを保持するコード保持部材と、上記コード保持部材および当該コード保持部材によって押さえられるコードを納める凹部と、が設けられたことを特徴とする。
【0009】
上記コードは、上記機器本体内部から引き出されて該引き出し口が挿抜不能に固定され、上記コード保持部材は、上記機器本体における、上記引き出し口から引き出し方向に垂直な方向に最も遠い面の近傍に配設されることが好ましい。
【0010】
上記コードは、上記機器本体内部から引き出されて該引き出し口が挿抜不能に固定され、上記コード保持部材は、上記機器本体における、上記引き出し口から引き出し方向に垂直な方向に最も遠い面における、引き出し口からの引き出し方向と逆方向の頂点近傍に配設されたことであってもよい。
【0011】
上記凹部は、上記引き出し口からの引き出し方向に垂直な方向に、コードが上記コード保持部材に押さえられて当該凹部内を通過できるように形成されることが好ましい。
【0012】
上記凹部におけるコード通過方向の両端と上記コード保持部材との間隔はコード径より大きく、コード通過方向と垂直な方向における上記コード保持部材先端から上記凹部内壁の間隔はコード径より小さいことが好ましい。
【0013】
上記コード保持部材は、コードを上記凹部内に挿抜可能なだけの弾性を少なくとも有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、通常使用時に不必要な突起部分を凸設させることなく、従って携帯用機器の携帯性を損ねることなく、それでいてコードを巻き付ける時には先端からほどけないように確実に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る携帯用機器のコード保持構造を、携帯電話のACアダプタに適用した一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
まず、本実施形態の概略について説明する。
【0016】
一般に、携帯電話には充電用のACアダプタが添付されているが、携帯時にコードの処理が煩雑になる点があった。
この点を考慮し、本実施形態に係るACアダプタは、携帯時にコードをACアダプタ筐体に巻いて持ち運ぶ場合であっても、コードを結束バンド等で纏めた場合であっても、携帯電話に接続するソケット部分がACアダプタ本体の一部に形成された保持構造により保持可能であり、携帯時の利便性を向上させることができるものである。
【0017】
次に、本実施形態に係るACアダプタの構成について説明する。
図1を参照すると、本発明の一実施例としてのACアダプタの携帯時のコード処理保持構造が示されている。
また、図2の矢視図A−Aにより、ACアダプタのコード保持部形状と、ACアダプタの筐体aおよび筐体bの組立て前のコード保持部形状とが示されている。
【0018】
図1、図2に示されるように、本実施形態に係るACアダプタは、機器本体1から、先端にソケットを備えたコードが引き出されて構成されている。
このコードは、コード引き出し部2により機器本体1に対して挿抜不能に固定され、先端のソケットにより携帯電話に接続可能となっている。
【0019】
機器本体1は、電子部品などの内部構成が筐体aおよび筐体bにより被装されて構成され、コンセントへの接続部分等の各種凹凸部分を除けば全体として略直方体で、各頂点近傍が丸みを帯びた形状となっている。
【0020】
また、機器本体1には、上述のようにコード引き出し部2が設けられると共に、そのコードの引き出し方向に垂直な方向についてそのコード引き出し部2から最も遠い面における、引き出し方向と逆方向に最も遠い2つの頂点近傍にコード保持部12が配設されている。
【0021】
さらに、そのコード保持部12が収納される凹部11は、コード引き出し部2からの引き出し方向に垂直な方向に、コードがコード保持部12に押さえられて凹部11内を通過できるように形成されている。
【0022】
以上のように、本実施形態に係るACアダプタでは、上述したコード引き出し部2と、コード保持部12とが、上述した略直方体形状の機器本体1における対角線の両端付近に配設されることにより、コード引き出し部2から引き出されたコードを機器本体1に巻き付けてコード保持部12でコードを保持した時、機器本体1に巻き付けられたコードの一方がコード引き出し部2に、もう一方がコード保持部12によりそれぞれずれていかないように押さえられることとなる。
さらに、凹部11は、コード引き出し部2からの引き出し方向に垂直な方向にコードが通過できるように形成されているため、本実施形態に係るACアダプタでは、機器本体1に巻き付けられたコードがずれていかないようにより確実に押さえることができる。
このことにより、巻き取られたコードのずれ防止のために鍔状部などを側面から突出させるといった、通常使用時に不必要な突起部分を凸設させることなく、従って携帯用機器の携帯性を損ねることなく、巻き付けられたコードを確実に保持することができる。
【0023】
次に、コード保持部12周りの詳細な構成について説明する。
コード保持部12は、図2、図3に示すように、筐体bに形成された凹部11内に収まるように形成されている。
すなわち、図3の断面B−Bに、コード保持部の断面形状が示されている。この図3に示されるように、ACアダプタ筐体外形部寸法を増加すること無しに筐体aにあらかじめコード保持部12を、筐体bに凹部11を、それぞれ形成しておき、これらを組み立てた際に凹部11とコード保持部12との間でコードを保持することができる構造となっている。
換言すれば、機器本体1における凹部11内の空間に、コード保持部12と、そのコード保持部12によって保持されるコードとが収納されるように、凹部11とコード保持部12とが形成されている。
【0024】
ここで、コードを保持する凹部11とコード保持部12との構造における、コード径と筐体形状の寸法関係について、図2の矢視A−A図を用いて説明する。
図2中の「イ」、「ロ」、すなわち凹部11におけるコード通過方向の両端とコード保持部12との間隔は、コードが通過可能なように、コード径より若干大きめの寸法とする。
図2中の「ハ」、すなわちコード通過方向と垂直な方向におけるコード保持部12先端から凹部11内壁の間隔は、コードがほどけないように、コード径より若干小さめの寸法とする。
【0025】
このように、筐体bに形成された凹部11は、筐体外形寸法を増加すること無しにコード保持部12とコードとを収納して少し余裕があるように形成されている。
また、コード保持部12は平板形状とし、バネ性を持たせることにより、上下に撓む構造が可能となり、図2中のスリット幅である「ハ」をコード径より小さくしてもコードをコード保持部12の下に通すことが可能となり、より確実なコード保持を実現することができる。
このコード保持は、凹部11内を通過するコードをコード保持部12で押さえることにより、コードの弾性により保持されることとなる。
【0026】
以上のように、上述した本実施形態によるコード保持構造では、筐体aの外周面を延長するようにしてコード保持部2が設けられ、その下にコードをくぐらせることができるように凹部11が設けられているため、通常使用時に不必要な突起部分を凸設させることなく、従って携帯用機器の携帯性を損ねることなく、それでいてコードを巻き付ける時には凹部11とコード保持部12との間で確実に保持することができ、先端からほどけないようにすることができる。
【0027】
また、機器本体1に巻き付けられたコードの一方がコード引き出し部2に、もう一方がコード保持部12によりそれぞれずれていかないように押さえられる構成であると共に、凹部11は、コード引き出し部2からの引き出し方向に垂直な方向にコードが通過できるように形成されている。
このため、巻き取られたコードのずれ防止のために鍔状部などを側面から突出させるといった、通常使用時に不必要な突起部分を凸設させることなく、従って携帯用機器の携帯性を損ねることなく、巻き付けられたコードを確実に保持することができる。
【0028】
このように、ユーザがACアダプタ筐体にコードを巻いて携帯する場合に、最終的なコード纏め方法として、ソケット部分近傍を機器本体1に簡単に保持できるような構造となっている。
【0029】
以上のような構成により、本実施形態によれば、携帯電話と一緒に携帯する際にACアダプタのコードが所定の場所に保持できるようになり携帯の利便性向上に寄与する形状を実現することができる。
【0030】
なお、上述した各実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
例えば、本実施形態に係るACアダプタの筐体は、各種のプラスチックで構成されてもよく、他の材料で構成されてもよい。
【0031】
また、コード保持部12の部分は、コードを凹部11内に挿抜させることが可能なだけの弾性を少なくとも有する材料であれば各種の材料を用いてよい。
【0032】
また、本実施例におけるACアダプタは携帯電話用として説明したが、他の携帯機器に添付されるACアダプタや、コードが引き出される携帯機器に対しても、上述した本実施形態は同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態としてのACアダプタにコードを巻き付けてまとめた状態を示す斜視図である。
【図2】A−A方向からの部分拡大矢視図と、各筐体の分解図である。
【図3】B−Bにおける部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 機器本体
11 凹部
12 コード保持部
2 コード引き出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体に、
コードを保持するコード保持部材と、
前記コード保持部材および当該コード保持部材によって押さえられるコードを納める凹部と、が設けられたことを特徴とする携帯用機器のコード保持構造。
【請求項2】
前記コードは、前記機器本体内部から引き出されて該引き出し口が挿抜不能に固定され、
前記コード保持部材は、前記機器本体における、前記引き出し口から引き出し方向に垂直な方向に最も遠い面の近傍に配設されたことを特徴とする請求項1記載の携帯用機器のコード保持構造。
【請求項3】
前記コードは、前記機器本体内部から引き出されて該引き出し口が挿抜不能に固定され、
前記コード保持部材は、前記機器本体における、前記引き出し口から引き出し方向に垂直な方向に最も遠い面における、引き出し口からの引き出し方向と逆方向の頂点近傍に配設されたことを特徴とする請求項1記載の携帯用機器のコード保持構造。
【請求項4】
前記凹部は、前記引き出し口からの引き出し方向に垂直な方向に、コードが前記コード保持部材に押さえられて当該凹部内を通過できるように形成されたことを特徴とする請求項2または3記載の携帯用機器のコード保持構造。
【請求項5】
前記凹部におけるコード通過方向の両端と前記コード保持部材との間隔はコード径より大きく、
コード通過方向と垂直な方向における前記コード保持部材先端から前記凹部内壁の間隔はコード径より小さいことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の携帯用機器のコード保持構造。
【請求項6】
前記コード保持部材は、コードを前記凹部内に挿抜可能なだけの弾性を少なくとも有することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の携帯用機器のコード保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−252047(P2007−252047A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69837(P2006−69837)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】