説明

携帯端末の管理システム

【課題】所定の管理エリアに応じて機能の実行を制限することで不正使用を防止し得る携帯端末の管理システムを提供する。
【解決手段】携帯端末の管理システム10では、送信装置20は、赤外線信号を送信する4つの赤外線信号送信機21〜24と、無線信号を送信する無線信号送信機25とを備えている。そして、携帯端末30は、赤外線信号が検出されず無線信号のみが検出される状態である場合に、決済機能の実行が制限される。また、当該携帯端末30は、無線信号および赤外線信号がともに検出されない状態である場合に、全ての機能の実行が制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末の不正使用を防止する携帯端末の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯端末の不正使用を防止する携帯端末の管理システムに関する技術として、下記特許文献1に示す無線通信システムが知られている。この無線通信システムは、1つのメイン通信装置と複数のサブ通信装置とからなり、双方間の距離が所定以上になると通信不可となるように構成されている。そして、ユーザによりサブ通信装置に対して個人情報に関する更新情報要求または送信要求が入力されてこの要求がメイン通信装置に送信されると、この要求に応じてメイン通信装置から送信された無線データが当該サブ通信装置にて受信されることで、要求に応じた個人情報が表示部に表示される。
【0003】
このように受信した個人情報は、記憶時間管理部によって管理されており、一定時間後に消去されることとなる。これにより、サブ通信装置を不正に取得した不正取得者に対する個人情報の漏洩が抑制される。また、不正取得者がサブ通信装置を不正に使用する場合でも、このサブ通信装置がメイン通信装置から所定以上離れているとメイン通信装置と通信できないので、メイン通信装置からの個人情報の不正取得が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−219534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の無線通信システムを、コンビニエンスストアや駅の売店等にて使用される決済機能等を有する携帯端末に適用する場合、使用が許可される範囲(管理エリア)が比較的広域となり、比較的狭い店舗内での使用に限定することが困難である。一方、上記管理エリアを単に狭くするために送信範囲が狭い送信装置を採用した場合、店舗内であっても送信範囲の死角が出来やすくなり、この死角に携帯端末があることから当該携帯端末の全ての機能を制限してしまうと、利便性が低下してしまうという問題がある。また、比較的狭い管理エリアでありかつ死角をなくすためには、対象の店舗の店舗内レイアウトに応じた送信装置の設置位置を決める必要があり、携帯端末の管理システムを簡単に設置することが困難である。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、所定の管理エリアに応じて機能の実行を制限することで不正使用を防止し得る携帯端末の管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の携帯端末の管理システムでは、所定の管理エリアに対して複数種類の信号を送信する送信装置と、前記所定の管理エリアに応じて機能の実行が制限される携帯端末とを備える携帯端末の管理システムであって、前記携帯端末は、前記送信装置からの前記複数種類の信号を検出可能な検出手段と、前記検出手段による検出状態が、前記複数種類の信号のうちの一部が検出される第1検出状態である場合に当該携帯端末における全ての機能のうちの所定の機能の実行を制限し、前記第1検出状態よりも前記信号の検出種類が少ない第2検出状態である場合に全ての機能の実行を制限する制限手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の携帯端末の管理システムにおいて、前記全ての機能を構成する複数の機能にはそれぞれ重要度が設定されており、前記所定の機能は、前記全ての機能のうちの前記重要度が高い機能であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の携帯端末の管理システムにおいて、前記携帯端末は、決済機能を有しており、前記所定の機能の1つは、前記決済機能であることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯端末の管理システムにおいて、前記送信装置は、前記複数種類の信号のうち所定の種類の信号である第1の信号を送信する第1送信手段と、前記複数種類の信号のうち前記第1の信号とは異なる信号である第2の信号を送信し、前記第1送信手段よりも送信範囲が広い第2送信手段とを備え、前記制限手段は、前記検出手段による検出状態が、前記第1の信号が検出されず前記第2の信号が検出される状態である場合に前記所定の機能の実行を制限し、前記第1の信号および前記第2の信号が検出されない状態である場合に全ての機能の実行を制限することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の携帯端末の管理システムにおいて、前記第1送信手段は、前記第1の信号として赤外線信号を送信する赤外線信号送信手段であり、前記第2送信手段は、前記第2の信号として無線信号を送信する無線信号送信手段であることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯端末の管理システムにおいて、前記送信装置は、赤外線信号を送信可能な赤外線信号送信手段を複数備えて、前記複数種類の信号としてこれら各赤外線信号送信手段から互いに異なるタイミングで赤外線信号を送信するように構成され、前記制限手段は、前記検出手段による検出状態が、前記各赤外線信号送信手段から送信される赤外線信号のうちの一部が検出される第1赤外線検出状態である場合に前記所定の機能の実行を制限し、前記第1赤外線検出状態よりも前記信号の検出種類が少ない第2赤外線検出状態である場合に全ての機能の実行を制限することを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯端末の管理システムにおいて、前記送信装置は、赤外線信号を送信可能な赤外線信号送信手段を1つ備えて、前記複数種類の信号として当該赤外線信号送信手段から断続的に赤外線信号を送信するように構成され、前記制限手段は、前記検出手段による検出状態が、所定の時間内において前記赤外線信号送信手段から断続的に発光される赤外線信号のうちの一部が検出される第1個数検出状態である場合に前記所定の機能の実行を制限し、前記所定の時間内において前記第1個数検出状態よりも検出個数が少ない第2個数検出状態である場合に全ての機能の実行を制限することを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の携帯端末の管理システムにおいて、前記携帯端末は、所定の情報を表示するための表示部を備え、前記検出手段は、前記赤外線信号を検出するための受光面が、前記表示部が配置される外面またはその外面の近傍に配置されることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の携帯端末の管理システムにおいて、前記携帯端末は、前記制限手段により前記所定の機能または全ての機能の実行が制限されるとき、その旨を報知する報知手段を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の携帯端末の管理システムにおいて、前記携帯端末は、前記制限手段により全ての機能の実行が制限されるとき、その旨を周囲に対して警告する警告手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、携帯端末は、検出手段による検出状態が、送信装置により送信される複数種類の信号のうちの一部が検出される第1検出状態である場合に、制限手段により、所定の機能の実行が制限される。また、当該携帯端末は、検出手段による検出状態が、上記第1検出状態よりも信号の検出種類が少ない第2検出状態である場合に、制限手段により、全ての機能の実行が制限される。
【0018】
これにより、検出状態が第1検出状態であることから、携帯端末が所定の管理エリアに対して送信される信号の一部しか検出できない位置、例えば所定の管理エリアの境界近傍のように、所定の管理エリア内にあるか否か判断しにくい位置に携帯端末があると判断される場合には、所定の機能の実行が制限されることとなる。そこで、携帯端末が所定の管理エリア外にある場合には確実に制限したい機能を上記所定の機能として設定することで、携帯端末が所定の管理エリア内にあるか否か判断しにくい位置にある場合でも、所望の機能の実行のみを確実に制限することができる。また、上述のように検出状態が第1検出状態であることから上記所定の機能の実行が制限される場合でも、この所定の機能と異なる他の機能の実行は制限されないので、全ての機能の実行が制限される場合と比較して、利便性の低下を抑制することができる。
【0019】
また、検出状態が第2検出状態であることから、携帯端末が所定の管理エリアに対して送信される信号を検出できない位置または検出困難な位置、すなわち、携帯端末が所定の管理エリアから外れた位置にあると判断される場合には、全ての機能の実行が制限されるので、携帯端末の不正使用を確実に防止することができる。
したがって、所定の管理エリアに応じて機能の実行を制限することで携帯端末の不正使用を防止することができる。
【0020】
請求項2の発明では、全ての機能を構成する複数の機能にはそれぞれ重要度が設定されており、上記所定の機能は、全ての機能のうちの重要度が高い機能である。このため、検出状態が第1検出状態である場合には、重要度の高い機能の実行が制限されるのでセキュリティ性を向上させることができ、上記所定の機能と異なる他の機能の実行は制限されないので利便性の低下を抑制することができる。
【0021】
請求項3の発明では、上記所定の機能の1つは、決済機能であるため、検出状態が第1検出状態である場合には、決済機能の実行が制限されるのでセキュリティ性を向上させることができ、上記所定の機能と異なる他の機能の実行は制限されないので利便性の低下を抑制することができる。
【0022】
請求項4の発明では、第2の信号を送信する第2送信手段は、第1の信号を送信する第1送信手段よりも送信範囲が広く設定されている。そして、制限手段により、検出手段による検出状態が、第1の信号が検出されず第2の信号が検出される状態である場合に上記所定の機能の実行が制限され、第1の信号および第2の信号が検出されない状態である場合に全ての機能の実行が制限される。
【0023】
このように、第2の信号の送信範囲は第1の信号の送信範囲よりも広くなるため、第1の信号が検出されず第2の信号からの信号が検出される状態では、所定の管理エリア内にあるか否か判断しにくい位置に携帯端末があると判断されて、上記所定の機能の実行のみを確実に制限することができる。また、第1の信号および第2の信号が検出されない状態では、携帯端末が所定の管理エリアから外れた位置にあると判断されて、上記第2検出状態と同様に、全ての機能の実行が制限されるので、携帯端末の不正使用を確実に防止することができる。
【0024】
請求項5の発明では、送信装置は、上記第1の信号として赤外線信号を送信する赤外線信号送信手段と、上記第2の信号として無線信号を送信する無線信号送信手段と、を備えている。このため、第2の信号(無線信号)の送信範囲を第1の信号(赤外線信号)の送信範囲よりも確実に広くした送信装置を、容易に構成することができる。
【0025】
請求項6の発明では、送信装置は、赤外線信号を送信可能な赤外線信号送信手段を複数備えており、上記複数種類の信号としてこれら各赤外線信号送信手段から互いに異なるタイミングで赤外線信号を送信するように構成されている。そして、検出手段による検出状態が、各赤外線信号送信手段から送信される赤外線信号のうちの一部が検出される第1赤外線検出状態である場合に、制限手段により、上記所定の機能の実行が制限され、第1赤外線検出状態よりも信号の検出種類が少ない第2赤外線検出状態である場合に制限手段により、全ての機能の実行が制限される。
【0026】
これにより、検出状態が第1赤外線検出状態であることから、携帯端末が所定の管理エリアに対して発光される赤外線の一部しか検出できない位置、例えば所定の管理エリアの境界近傍のように、所定の管理エリア内にあるか否か判断しにくい位置に携帯端末があると判断される場合には、上記所定の機能の実行のみを確実に制限することができる。
【0027】
また、検出状態が第2赤外線検出状態であることから、携帯端末が所定の管理エリアに対して発光される赤外線を検出できない位置または検出困難な位置、すなわち、携帯端末が所定の管理エリアから外れた位置にあると判断される場合には、全ての機能の実行が制限されるので、携帯端末の不正使用を確実に防止することができる。
【0028】
特に、送信装置は、他の信号を送信する送信手段を採用することなく複数の赤外線発光手段を採用して構成されるので、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0029】
請求項7の発明では、送信装置は、赤外線信号を送信可能な赤外線信号送信手段を1つ備えており、上記複数種類の信号として当該赤外線信号送信手段から断続的に赤外線信号を送信するように構成されている。そして、検出手段による検出状態が、所定の時間内において赤外線信号送信手段から断続的に発光される赤外線のうちの一部が検出される第1個数検出状態である場合に、制限手段により、上記所定の機能の実行が制限され、上記所定の時間内において第1個数検出状態よりも検出個数が少ない第2個数検出状態である場合に、制限手段により、全ての機能の実行が制限される。
【0030】
これにより、検出状態が第1個数検出状態であることから、上記所定の時間内において所定の管理エリアに対して断続的に発光される赤外線の一部しか検出できない位置、例えば所定の管理エリアの境界近傍のように、所定の管理エリア内にあるか否か判断しにくい位置に携帯端末があると判断される場合には、上記所定の機能の実行のみを確実に制限することができる。
【0031】
また、検出状態が第2個数検出状態であることから、携帯端末が所定の管理エリアに対して断続的に発光される赤外線を検出できない位置または検出困難な位置、すなわち、携帯端末が所定の管理エリアから外れた位置にあると判断される場合には、全ての機能の実行が制限されるので、携帯端末の不正使用を確実に防止することができる。
【0032】
特に、送信装置は、他の信号を送信する送信手段を採用することなく1つの赤外線信号送信手段を採用して構成されるので、装置構成の簡素化をより図ることができる。
【0033】
請求項8の発明では、検出手段は、赤外線信号を検出するための受光面が、表示部が配置される外面またはその外面の近傍に配置されている。通常、携帯端末は、表示部が上向きになるように把持または載置されるため、受光面への赤外線信号が載置面等によって遮られにくくなるので、赤外線信号送信手段からの赤外線信号の検出精度を向上させることができる。
【0034】
請求項9の発明では、制限手段により所定の機能または全ての機能の実行が制限されるとき、その旨を報知する報知手段が設けられているので、使用者は、使用する携帯端末が所定の機能の実行が制限されている状態または全ての機能の実行が制限されている状態かを容易に把握することができる。
【0035】
請求項10の発明では、制限手段により全ての機能の実行が制限されるとき、その旨を周囲に対して警告する警告手段が設けられている。これにより、携帯端末が所定の管理エリアから離れた場所に持ち出される場合には、制限手段により全ての機能の実行が制限されるとともに警告手段により周囲に対して警告がなされるので、携帯端末の不正使用をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1実施形態に係る携帯端末の管理システムの構成概要を示す説明図である。
【図2】管理エリアと全機能実施可能範囲および一部機能制限範囲との関係を示す説明図である。
【図3】図1の携帯端末の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図4(A)は、図1の携帯端末の平面図であり、図4(B)は、図1の携帯端末の側面図である。
【図5】第1実施形態の制御部における制限処理の流れを例示するフローチャートである。
【図6】受光面による各赤外線の受光状態を示す説明図である。
【図7】第2実施形態において、各赤外線信号送信機における送信タイミングと携帯端末における検出タイミングとの関係を示すタイミングチャートである。
【図8】第2実施形態の制御部における制限処理の流れを例示するフローチャートである。
【図9】第3実施形態において、赤外線信号送信機における送信タイミングと携帯端末における検出タイミングとの関係を示すタイミングチャートである。
【図10】第3実施形態の制御部における規制処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[第1実施形態]
以下、本発明の携帯端末の管理システムを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る携帯端末の管理システム10の構成概要を示す説明図である。図2は、管理エリアS1と全機能実施可能範囲S2および一部機能制限範囲S3との関係を示す説明図である。図3は、図1の携帯端末30の電気的構成を示すブロック図である。図4(A)は、図1の携帯端末30の平面図であり、図4(B)は、図1の携帯端末30の側面図である。
【0038】
本第1実施形態に係る携帯端末の管理システム10は、コンビニエンスストアの店内や駅の売店内などの限定された範囲を所定の管理エリアとし、この管理エリアに応じて管理対象の携帯端末の機能の実行を制限またはその制限の解除を行うシステムである。本第1実施形態では、当該管理システム10は、図1に例示するように、店舗内を所定の管理エリアS1とするとき、この管理エリアS1に対して複数種類の信号を送信する送信装置20を備えており、この送信装置20から送信される信号に応じて管理対象である携帯端末30の機能制限を管理している。
【0039】
送信装置20は、上記複数種類の信号を送信する送信機として、赤外線を発光することで所定の赤外線信号を送信する4つの赤外線信号送信機21〜24と、所定の無線信号を送信する無線信号送信機25とを備えている。各赤外線信号送信機21〜24は、店舗内の四隅にそれぞれ設けられており、図2に示すように、それぞれ送信される赤外線信号を検出可能な送信範囲(以下、全機能実施可能範囲S2ともいう)が管理エリアS1に近くなるように配置されている。
【0040】
また、無線信号送信機25は、店舗内の所定の位置に設けられており、図2に示すように、無線信号を検出可能な送信範囲(以下、一部機能制限範囲S3ともいう)が管理エリアS1および全機能実施可能範囲S2を含むように配置されている。
【0041】
次に、管理システム10の管理対象である携帯端末30について説明する。携帯端末30は、主に、商品に表示されて当該商品の価格などの商品情報を含む情報コードを光学的に読み取る読取機能や、商品の購入に関する決済を行う決済機能等を備えている。当該携帯端末30は、上記決済機能として、現金だけでなくキャッシュカードやクレジットカードのような決済用媒体と非接触通信(無線通信)することで決済処理を行うように構成されている。なお、本第1実施形態では、上記決済用媒体として、非接触型のICカードCを採用している。
【0042】
図3に示すように、携帯端末30の筐体31内には、携帯端末30全体を制御する制御部32が設けられている。この制御部32は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インターフェース等を有しており、メモリ33とともに情報処理装置を構成し得るもので情報処理機能を有している。メモリ33は、半導体メモリ装置で、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM(EPROM、EEPROM等)がこれに相当し、読取処理および決済処理や後述する制限処理等を実行可能な所定のプログラムや、各ハードウェアを制御可能なシステムプログラムなどが予め格納されている。
【0043】
また、制御部32には、表示部34、キー操作部35および通信インターフェース36などが接続されている。表示部34は、制御部32によって制御される構成をなしており、それぞれ、制御部32から表示処理等に関する指令を受けて動作するようになっている。また、キー操作部35は、制御部32に対して操作信号を与える構成をなしており、制御部32は、これらからの操作信号を受けて操作信号の内容に応じた動作を行うようになっている。
【0044】
通信インターフェース36は、外部(例えば銀行側サーバや外部ホスト装置)との間でのデータ通信を行うためのインターフェースとして構成されており、制御部32と協働して通信処理を行う構成をなしている。また、筐体31内には、電源となるバッテリ37や電源部38が収容されており、これらによって制御部32や各種電気部品に電力が供給されるようになっている。
【0045】
また、制御部32には、商品情報読取部40およびICカード通信部50がそれぞれ接続されている。
商品情報読取部40は、購入者により購入される商品の情報等を光学的に取得する機能を有するもので、購入商品などの読取対象に付された情報コード(例えばバーコードなどの一次元コードや二次元コード)を読み取るための画像認識モジュール41を備えている。この画像認識モジュール41は、照明光源や受光センサ(図略)等を備えており、照明光源からの照射光が情報コード(図3ではバーコードBとして例示する)にて反射され反射光が読取口31aを介して受光センサにて受光されると、この反射光に応じた受光信号を受光センサから制御部32に出力するように構成されている。制御部32では、この受光信号に基づいて購入商品の購入情報等が取得されることとなる。
【0046】
ICカード通信部50は、ICカードリーダ制御部51とICカードリーダ通信部52とアンテナ53とを備えている。ICカードリーダ制御部51は、ICカードリーダ通信部52を制御することで当該ICカードリーダ通信部52およびアンテナ53を介して、ICカードCとの間で電磁波による非接触通信(無線通信)を行ない、当該ICカードCに記憶されるカード番号などの決済に関する決済関連情報の読み取り等を行なうように機能するものである。
【0047】
また、制御部32には、赤外線信号検出部61および無線信号検出部62がそれぞれ接続されている。赤外線信号検出部61は、各赤外線信号送信機21〜24から送信される赤外線信号を検出するためのもので、その受光面61aは、図4(A),(B)にて示すように、筐体31の外面のうち表示部34が配置される上面およびその上面の近傍に配置されている。このように受光面61aを配置する理由としては、通常、携帯端末30は、表示部34が上向きになるように把持または載置されるため、受光面61aへの赤外線を載置面等によって遮られにくくするためである。また、無線信号検出部62は、無線信号送信機25から送信される無線信号を検出するためのもので、筐体31内の所定の位置に配置されている。
【0048】
このように構成される携帯端末30は、制御部32により後述する制限処理が実行されることで、赤外線信号や無線信号の検出の有無に基づいて、管理エリアS1に応じて一部の所定の機能または全ての機能の制限およびその解除がなされる。
以下、本第1実施形態における制御部32による制限処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。図5は、第1実施形態の制御部32における制限処理の流れを例示するフローチャートである。図6は、受光面61aによる各赤外線の受光状態を示す説明図であり、図6(A)は、携帯端末30を側面から見た状態の図であり、図6(B)は、携帯端末30を正面から見た状態の図である。
【0049】
まず、電源オン状態になると、図5のステップS101において、無線信号が検出されているか否かについて判定される。ここで、無線信号検出部62により無線信号送信機25からの無線信号が検出される状態である場合には、当該携帯端末30が図2に示す一部機能制限範囲S3内にあると判断されて、ステップS101にてYesと判定される。
【0050】
次に、ステップS103において、赤外線信号が検出されているか否かについて判定される。ここで、赤外線信号検出部61により赤外線信号送信機21〜24の少なくともいずれかからの赤外線信号が検出される状態である場合には、当該携帯端末30が図2に示す全機能実施可能範囲S2内にあると判断されて、ステップS103にてYesと判定される。特に、図6(A),(B)にて例示するように、赤外線信号検出部61は、受光面61aが筐体31の外面のうち表示部34が配置される上面およびその上面の近傍に配置されているため、当該受光面61aへの赤外線が載置面等によって遮られにくくなり、赤外線信号送信機21〜24からの赤外線の検出精度を向上させることができる。
【0051】
続いて、ステップS105にて制限解除処理がなされる。この処理では、後述するように所定の機能または全ての機能が制限されている場合にはその制限が解除されて、当該携帯端末30の全ての機能の実行が可能な制限解除状態となる。
【0052】
このように、無線信号および赤外線信号がともに検出される状態では、当該携帯端末30が管理エリアS1内にあると判断することができる。このため、不正使用を防止する必要がないので、当該携帯端末30は、制限解除状態となり、決済機能等を含めた全ての機能が実行可能となる。
【0053】
そして、ステップS107において、制限解除状態表示処理がなされる。この処理では、制限解除状態である旨、例えば、「操作・決済処理が利用できます」等の表記が表示部34の一部等に表示されて報知される。これにより、使用者は、使用する携帯端末30が全ての機能を実行可能な制限解除状態であることを、容易に把握することができる。そして、上記ステップS101からの処理が繰り返される。
【0054】
このようなステップS101からの処理中に、無線信号を検出していることからステップS101にてYesと判定された後に、赤外線信号が検出されない状態であることからステップS103にてNoと判定されると、ステップS109にて第1制限処理がなされる。この処理では、上述した決済機能の実行が制限されて他の読取機能等の実行が可能な第1制限状態となる。
【0055】
このように、赤外線信号が検出されず無線信号のみが検出される状態では、例えば管理エリアS1の境界近傍のように、管理エリアS1内にあるか否か判断しにくい位置に携帯端末30があると判断することができる。このため、携帯端末30が管理エリアS1内にあるか否か判断しにくい位置にある場合でも、決済機能の実行のみを確実に制限することができる。また、上述のように決済機能の実行が制限される場合でも、読取機能等の他の機能の実行は制限されないので、全ての機能の実行が制限される場合と比較して、利便性の低下を抑制することができる。なお、赤外線信号が検出されず無線信号のみが検出される状態は、特許請求の範囲に記載の「第1検出状態」の一例に相当し得る。また、ステップS109および後述するステップS113の処理を実施する制御部32は、特許請求の範囲に記載の「制限手段」の一例に相当し得る。
【0056】
そして、ステップS111において、第1制限状態表示処理がなされる。この処理では、第1制限状態である旨、例えば、「決済処理ができないエリアです。決済処理ができるエリアへ移動して下さい」等の表記が表示部34の一部等に表示されて報知される。これにより、使用者は、使用する携帯端末30が決済機能の実行が制限されている第1制限状態であることを、容易に把握することができる。
【0057】
また、無線信号が検出されない状態であることからステップS101にてNoと判定されると、ステップS113にて第2制限処理がなされる。この処理では、当該携帯端末30の全ての機能の実行が制限される第2制限状態となる。
【0058】
このように、無線信号および赤外線信号がともに検出されない状態では、携帯端末30が管理エリアS1に対して送信される無線信号および赤外線信号を検出できない位置または検出困難な位置、すなわち、携帯端末30が管理エリアS1から外れた位置にあると判断することができる。このため、不正使用を確実に防止するために、当該携帯端末30は、第2制限状態となり、決済機能等を含めた全ての機能の実行が制限されて当該携帯端末30の操作が禁止される。なお、無線信号および赤外線信号がともに検出されない状態は、特許請求の範囲に記載の「第2検出状態」の一例に相当し得る。
【0059】
そして、ステップS115において、第2制限状態表示処理がなされる。この処理では、第2制限状態である旨、例えば、「操作ができないエリアです。操作ができるエリアへ移動して下さい」等の表記が表示部34の一部等に表示されて報知される。これにより、使用者は、使用する携帯端末30が全ての機能の実行が制限されている第2制限状態であることを、容易に把握することができる。
【0060】
以上説明したように、本第1実施形態に係る携帯端末の管理システム10では、携帯端末30は、赤外線信号が検出されず無線信号のみが検出される状態である場合に、ステップS109にて、決済機能の実行が制限される。また、当該携帯端末30は、無線信号および赤外線信号がともに検出されない状態である場合に、ステップS113にて、全ての機能の実行が制限される。
【0061】
これにより、携帯端末30が管理エリアS1内にあるか否か判断しにくい位置にある場合でも、決済機能の実行のみが確実に制限されるので、セキュリティ性を向上させることができる。また、上述のように決済機能の実行が制限される場合でも、異なる他の機能の実行は制限されないので、全ての機能の実行が制限される場合と比較して、利便性の低下を抑制することができる。
【0062】
また、無線信号および赤外線信号がともに検出されない状態であることから、携帯端末30が管理エリアS1から外れた位置にあると判断される場合には、全ての機能の実行が制限されるので、携帯端末30の不正使用を確実に防止することができる。
したがって、管理エリアS1に応じて機能の実行を制限することで携帯端末30の不正使用を防止することができる。
【0063】
特に、送信装置20は、赤外線信号を送信する各赤外線信号送信機21〜24と、赤外線信号よりも送信範囲が広い無線信号を送信する無線信号送信機25とにより構成されるので、一部機能制限範囲S3を全機能実施可能範囲S2よりも確実に広くした送信装置20を、容易に構成することができる。
【0064】
また、本第1実施形態に係る携帯端末の管理システム10では、携帯端末30は、赤外線信号を検出するための受光面61aが、筐体31の外面のうち表示部34が配置される上面およびその上面の近傍に配置されている。これにより、受光面61aへの赤外線信号が載置面等によって遮られにくくなるので、各赤外線信号送信機21〜24からの赤外線信号の検出精度を向上させることができる。なお、受光面61aは、筐体31の外面のうち表示部34が配置される上面のみ配置されてもよいし、この上面の近傍の側面等にのみに配置されてもよい。
【0065】
さらに、本第1実施形態に係る携帯端末の管理システム10では、決済機能または全ての機能の実行が制限されるとき、その旨が表示部34に表示されることで報知される。このように表示部34が報知手段として機能することで、使用者は、使用する携帯端末30が所定の機能の実行が制限されている状態または全ての機能の実行が制限されている状態かを容易に把握することができる。
【0066】
上記第1実施形態の変形例として、送信装置20は、各赤外線信号送信機21〜24および無線信号送信機25に代えて、赤外線信号や無線信号と異なる信号を送信する第1送信手段とこの第1送信手段よりも送信範囲が広い第2送信手段を採用してもよい。このようにしても、第1送信手段の送信範囲を全機能実施可能範囲S2に対応させ、第2送信手段の送信範囲を一部機能制限範囲S3に対応させることで、上記第1実施形態と同様に、携帯端末30の不正使用を防止することができる。
【0067】
[第2実施形態]
次に、本発明の携帯端末の管理システムを具現化した第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態において、各赤外線信号送信機21〜24における送信タイミングと携帯端末30における検出タイミングとの関係を示すタイミングチャートであり、図7(A)は、各赤外線信号送信機21〜24における送信タイミングを示し、図7(B)は、赤外線信号検出部61により全ての赤外線信号が検出される状態を示し、図7(C)は、赤外線信号検出部61により赤外線信号送信機23からの赤外線信号のみが検出される状態を示し、図7(D)は、赤外線信号検出部61により赤外線信号が検出されない状態を示す。図8は、第2実施形態の制御部32における制限処理の流れを例示するフローチャートである。
【0068】
本第2実施形態に係る管理システム10では、無線信号送信機25を廃止するとともに、各赤外線信号送信機21〜24の送信タイミングを図7(A)に例示するように調整し、上述した制限処理において図5のフローチャートに代えて図8のフローチャートに基づいて演算処理している点が、上記第1実施形態に係る携帯端末の管理システムと異なる。したがって、第1実施形態の携帯端末の管理システムと実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
図7(A)に示すように、各赤外線信号送信機21〜24は、それぞれの送信タイミング(発光タイミング)をずらすようにして、赤外線信号をそれぞれ送信している。そこで、本第2実施形態では、各赤外線信号送信機21〜24は、携帯端末30の赤外線信号検出部61により、2以上の赤外線信号送信機からの赤外線信号を検出可能な携帯端末30の存在範囲が上述した全機能実施可能範囲S2に相当し、1以上の赤外線信号送信機からの赤外線信号を検出可能な携帯端末30の存在範囲が上述した一部機能制限範囲S3に相当するように、配置されている。より多くの赤外線信号送信機からの赤外線信号を検出できる位置ほど、管理エリアS1の中央に近くなるからである。また、1つの赤外線信号送信機からの赤外線信号のみが検出される状態であれば、当該携帯端末30は、管理エリアS1内にあるか否か判断しにくい場所に位置することが推定されるからである。
【0070】
以下、本第2実施形態における制御部32による制限処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。
まず、電源オン状態になると、図8のステップS101aにおいて、1以上の赤外線信号送信機からの赤外線信号を検出しているか否かについて判定される。ここで、図7(B)に例示するように、赤外線信号検出部61により4つの赤外線信号送信機21〜24からの赤外線信号が検出される状態である場合には、当該携帯端末30が図2に示す一部機能制限範囲S3内にあると判断されて、ステップS101aにてYesと判定される。
【0071】
次に、ステップS103aにおいて、2以上の赤外線信号送信機からの赤外線信号を検出しているか否かについて判定される。上述のように赤外線信号検出部61により4つの赤外線信号送信機21〜24からの赤外線信号が検出される状態である場合には(図7(B)参照)、当該携帯端末30が図2に示す全機能実施可能範囲S2内にあると判断されて、ステップS103aにてYesと判定される。
【0072】
このようにステップS103aにてYesと判定されると、上記第1実施形態と同様に、ステップS105にて制限解除処理がなされ、当該携帯端末30の全ての機能の実行が可能な制限解除状態となり、ステップS107にて制限解除状態表示処理がなされ、制限解除状態である旨が表示部34の一部等に表示されて報知される。そして、上記ステップS101aからの処理が繰り返される。
【0073】
このようなステップS101aからの処理中に、赤外線信号検出部61により4つの赤外線信号送信機21〜24のうちの1つからの赤外線信号のみ検出される状態(以下、第1赤外線検出状態ともいう)になると、ステップS103aにてNoと判定される。上記第1赤外線検出状態としては、例えば、図7(C)に例示するように、赤外線信号検出部61により赤外線信号送信機23からの赤外線信号のみ検出される状態が想定される。このようにステップS103aにてNoと判定されると、上記第1実施形態と同様に、ステップS109にて第1制限処理がなされて、決済機能の実行が制限される第1制限状態となり、ステップS111にて第1制限状態表示処理がなされ、第1制限状態である旨が表示部34の一部等に表示されて報知される。
【0074】
また、図7(D)に例示するように、赤外線信号検出部61により4つの赤外線信号送信機21〜24からの赤外線信号のいずれも検出されない状態(以下、第2赤外線検出状態ともいう)になると、ステップS101aにてNoと判定される。このようにステップS101aにてNoと判定されると、上記第1実施形態と同様に、ステップS113にて第2制限処理がなされて、当該携帯端末30の全ての機能の実行が制限される第2制限状態となり、ステップS115にて第2制限状態表示処理がなされ、第2制限状態である旨が表示部34の一部等に表示されて報知される。
【0075】
以上説明したように、本第2実施形態に係る携帯端末の管理システム10では、送信装置20は、4つの赤外線信号送信機21〜24を備えており、これら各赤外線信号送信機21〜24から互いに異なるタイミングで赤外線信号を送信するように構成されている。そして、携帯端末30では、第1赤外線検出状態である場合に、ステップS109にて、決済機能の実行が制限され、第1赤外線検出状態よりも信号の検出種類(検出数)が少ない第2赤外線検出状態である場合に、ステップS113にて、全ての機能の実行が制限される。
【0076】
このようにしても上記第1実施形態と同様に、携帯端末30が管理エリアS1内にあるか否か判断しにくい位置にある場合でも、決済機能の実行のみが確実に制限されるので、セキュリティ性を向上させることができる。また、上述のように決済機能の実行が制限される場合でも、異なる他の機能の実行は制限されないので、全ての機能の実行が制限される場合と比較して、利便性の低下を抑制することができる。
【0077】
また、検出状態が第2赤外線検出状態であることから、携帯端末30が管理エリアS1から外れた位置にあると判断される場合には、全ての機能の実行が制限されるので、携帯端末30の不正使用を確実に防止することができる。
特に、送信装置20は、他の信号を送信する送信手段を採用することなく4つの赤外線信号送信機21〜24を採用して構成されるので、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0078】
[第3実施形態]
次に、本発明の携帯端末の管理システムを具現化した第3実施形態について説明する。図9は、第3実施形態において、赤外線信号送信機21における送信タイミングと携帯端末30における検出タイミングとの関係を示すタイミングチャートであり、図9(A)は、赤外線信号送信機21における送信タイミングを示し、図9(B)は、赤外線信号検出部61にて赤外線信号送信機21からの全ての赤外線信号が検出される状態を示し、図9(C)は、赤外線信号検出部61にて赤外線信号送信機21からの一部の赤外線信号のみが検出される状態を示し、図9(D)は、赤外線信号検出部61にて赤外線信号が検出されない状態を示す。図10は、第3実施形態の制御部32における制限処理の流れを例示するフローチャートである。
【0079】
本第3実施形態に係る管理システム10では、赤外線信号送信機21を除き各赤外線信号送信機22〜24と無線信号送信機25とを廃止するとともに、上述した制限処理において図5のフローチャートに代えて図10のフローチャートに基づいて演算処理している点が、上記第1実施形態に係る携帯端末の管理システムと異なる。したがって、第1実施形態の携帯端末の管理システムと実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
図9(A)に示すように、赤外線信号送信機21は、定間隔にて断続的に赤外線信号を送信するように構成されている。そこで、本第3実施形態では、赤外線信号送信機21は、断続的に送信される赤外線信号のうち、赤外線信号検出部61により所定の時間T内において赤外線信号の検出個数が2以上となる携帯端末30の存在範囲が上述した全機能実施可能範囲S2に相当し、赤外線信号の検出個数が1以上となる携帯端末30の存在範囲が上述した一部機能制限範囲S3に相当するように、配置されている。所定の時間T内において赤外線信号送信機からの断続的な赤外線信号をより多く検出できる位置ほど、管理エリアS1の中央に近くなるからである。また、所定の時間T内において1つのみ検出される状態であれば、当該携帯端末30は、管理エリアS1内にあるか否か判断しにくい場所に位置することが推定されるからである。
【0081】
以下、本第3実施形態における制御部32による制限処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。
まず、電源オン状態になると、図10のステップS101bにおいて、所定の時間T内において赤外線信号の検出個数が1以上検出されているか否かについて判定される。ここで、図9(B)に例示するように、赤外線信号検出部61により所定の時間T内において全ての赤外線信号が検出される状態である場合には、当該携帯端末30が図2に示す一部機能制限範囲S3内にあると判断されて、ステップS101bにてYesと判定される。
【0082】
次に、ステップS103bにおいて、所定の時間T内において赤外線信号の検出個数が2以上検出されているか否かについて判定される。上述のように赤外線信号検出部61により所定の時間T内において4つの赤外線信号が全て検出される状態である場合には(図9(B)参照)、当該携帯端末30が図2に示す全機能実施可能範囲S2内にあると判断されて、ステップS103bにてYesと判定される。
【0083】
このようにステップS103bにてYesと判定されると、上記第1実施形態と同様に、ステップS105にて制限解除処理がなされ、当該携帯端末30の全ての機能の実行が可能な制限解除状態となり、ステップS107にて制限解除状態表示処理がなされ、制限解除状態である旨が表示部34の一部等に表示されて報知される。そして、上記ステップS101bからの処理が繰り返される。
【0084】
このようなステップS101bからの処理中に、図9(C)に例示するように、赤外線信号検出部61により所定の時間T内において赤外線信号の検出個数が1である状態(以下、第1個数検出状態ともいう)になると、ステップS103bにてNoと判定される。このようにステップS103bにてNoと判定されると、上記第1実施形態と同様に、ステップS109にて第1制限処理がなされて、決済機能の実行が制限される第1制限状態となり、ステップS111にて第1制限状態表示処理がなされ、第1制限状態である旨が表示部34の一部等に表示されて報知される。
【0085】
また、図9(D)に例示するように、赤外線信号検出部61により所定の時間T内において赤外線信号が1つも検出されない状態(以下、第2個数検出状態ともいう)になると、ステップS101bにてNoと判定される。このようにステップS101bにてNoと判定されると、上記第1実施形態と同様に、ステップS113にて第2制限処理がなされて、当該携帯端末30の全ての機能の実行が制限される第2制限状態となり、ステップS115にて第2制限状態表示処理がなされ、第2制限状態である旨が表示部34の一部等に表示されて報知される。
【0086】
以上説明したように、本第3実施形態に係る携帯端末の管理システム10では、送信装置20は、赤外線信号送信機21を1つ備えており、当該赤外線信号送信機21から断続的に赤外線信号を送信するように構成されている。そして、携帯端末30では、上記所定の時間T内において第1個数検出状態である場合に、ステップS109にて、決済機能の実行が制限され、上記所定の時間T内において第1個数検出状態よりも検出個数が少ない第2個数検出状態である場合に、ステップS113にて、全ての機能の実行が制限される。
【0087】
このようにしても上記第1実施形態と同様に、携帯端末30が管理エリアS1内にあるか否か判断しにくい位置にある場合でも、決済機能の実行のみが確実に制限されるので、セキュリティ性を向上させることができる。また、上述のように決済機能の実行が制限される場合でも、異なる他の機能の実行は制限されないので、全ての機能の実行が制限される場合と比較して、利便性の低下を抑制することができる。
【0088】
また、検出状態が第2個数検出状態であることから、携帯端末30が管理エリアS1から外れた位置にあると判断される場合には、全ての機能の実行が制限されるので、携帯端末30の不正使用を確実に防止することができる。
特に、送信装置20は、他の信号を送信する送信手段を採用することなく1つの赤外線信号送信機21を採用して構成されるので、上記第2実施形態よりも、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0089】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)上記各実施形態におけるステップ109では、決済機能の実行のみが制限されることに限らず、他の重要な機能の実行が制限されてもよい。すなわち、携帯端末30の全ての機能を構成する複数の機能にそれぞれ重要度を設定し、上記ステップS109では、全ての機能のうちの重要度が高い機能の実行が制限される。このようにしても、検出状態が第1検出状態(第1実施形態)、第1赤外線検出状態(第2実施形態)、第1個数検出状態(第3実施形態)である場合には、重要度の高い機能の実行が制限されるのでセキュリティ性を向上させることができ、重要度の高い機能と異なる他の機能の実行は制限されないので利便性の低下を抑制することができる。
【0090】
(2)上記第1,2実施形態において、送信装置20は、4つの赤外線信号送信機21〜24から送信される赤外線信号により全機能実施可能範囲S2を構成することに限らず、2つ、3つまたは5つ以上の赤外線信号送信機を配置することで全機能実施可能範囲S2を構成してもよい。
【0091】
この場合も含めて、上記第1実施形態におけるステップS103では、各赤外線信号送信機から送信される赤外線信号の一部が検出される場合に第1検出状態であるとして(S103でNo)、ステップS109以降の処理を実施してもよい。また、上記第2実施形態におけるステップS103aでは、各赤外線信号送信機から送信される赤外線信号の一部が検出される場合に第1赤外線検出状態であるとして(S103aでNo)、ステップS109以降の処理を実施してもよい。
【0092】
(3)上記第3実施形態では、所定の時間Tを調整することで、当該所定の時間T内に検出される赤外線信号の個数を2つ、3つまたは5つ以上としてもよい。この場合も含めて、上記ステップS103bでは、所定の時間T内において赤外線信号の一部が検出される場合に第1個数検出状態であるとして(S103bでNo)、ステップS109以降の処理を実施してもよい。
【0093】
(4)上記第2実施形態のステップS101aでは、赤外線信号検出部61により、4つの赤外線信号送信機21〜24からの赤外線信号のいずれも検出されない状態の場合にステップS113以降の処理を実施することに限らず、第1赤外線検出状態よりも検出種類が少ない検出状態である場合にステップS113以降の処理を実施してもよい。また、上記第3実施形態のステップS101bでは、赤外線信号検出部61により、所定の時間T内において赤外線信号が1つも検出されない状態の場合にステップS113以降の処理を実施することに限らず、第1個数検出状態よりも検出種類が少ない検出状態である場合にステップS113以降の処理を実施してもよい。
【0094】
(5)上記各実施形態では、上記ステップS115の処理の後に、全ての機能の実行が制限されている旨を周囲に対して警告する警告手段を採用してもよい。この警告手段としては、例えば、警告音を発するブザーや警告灯等があげられる。これにより、携帯端末30が管理エリアS1から離れた場所に持ち出される場合には、ステップS113により全ての機能の実行が制限されるとともに上記警告手段により周囲に対して警告がなされるので、携帯端末30の不正使用をより確実に防止することができる。
【0095】
(6)上記各実施形態では、管理システム10は、1つの携帯端末30を管理対象としているが、これに限らず、複数の携帯端末30を管理対象としてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10…管理システム
20…送信装置
21〜24…赤外線信号送信機(赤外線信号送信手段)
25…無線信号送信機(無線信号送信手段)
30…携帯端末
32…制御部(制限手段)
61…赤外線信号検出部(検出手段,赤外線信号検出手段)
61a…受光面
62…無線信号検出部(検出手段,無線信号検出手段)
S1…管理エリア
S2…全機能実施可能範囲
S3…一部機能制限範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の管理エリアに対して複数種類の信号を送信する送信装置と、前記所定の管理エリアに応じて機能の実行が制限される携帯端末とを備える携帯端末の管理システムであって、
前記携帯端末は、
前記送信装置からの前記複数種類の信号を検出可能な検出手段と、
前記検出手段による検出状態が、前記複数種類の信号のうちの一部が検出される第1検出状態である場合に当該携帯端末における全ての機能のうちの所定の機能の実行を制限し、前記第1検出状態よりも前記信号の検出種類が少ない第2検出状態である場合に全ての機能の実行を制限する制限手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末の管理システム。
【請求項2】
前記全ての機能を構成する複数の機能にはそれぞれ重要度が設定されており、
前記所定の機能は、前記全ての機能のうちの前記重要度が高い機能であることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末の管理システム。
【請求項3】
前記携帯端末は、決済機能を有しており、
前記所定の機能の1つは、前記決済機能であることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末の管理システム。
【請求項4】
前記送信装置は、前記複数種類の信号のうち所定の種類の信号である第1の信号を送信する第1送信手段と、前記複数種類の信号のうち前記第1の信号とは異なる信号である第2の信号を送信し、前記第1送信手段よりも送信範囲が広い第2送信手段とを備え、
前記制限手段は、前記検出手段による検出状態が、前記第1の信号が検出されず前記第2の信号が検出される状態である場合に前記所定の機能の実行を制限し、前記第1の信号および前記第2の信号が検出されない状態である場合に全ての機能の実行を制限することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯端末の管理システム。
【請求項5】
前記第1送信手段は、前記第1の信号として赤外線信号を送信する赤外線信号送信手段であり、
前記第2送信手段は、前記第2の信号として無線信号を送信する無線信号送信手段であることを特徴とする請求項4に記載の携帯端末の管理システム。
【請求項6】
前記送信装置は、赤外線信号を送信可能な赤外線信号送信手段を複数備えて、前記複数種類の信号としてこれら各赤外線信号送信手段から互いに異なるタイミングで赤外線信号を送信するように構成され、
前記制限手段は、前記検出手段による検出状態が、前記各赤外線信号送信手段から送信される赤外線信号のうちの一部が検出される第1赤外線検出状態である場合に前記所定の機能の実行を制限し、前記第1赤外線検出状態よりも前記信号の検出種類が少ない第2赤外線検出状態である場合に全ての機能の実行を制限することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯端末の管理システム。
【請求項7】
前記送信装置は、赤外線信号を送信可能な赤外線信号送信手段を1つ備えて、前記複数種類の信号として当該赤外線信号送信手段から断続的に赤外線信号を送信するように構成され、
前記制限手段は、前記検出手段による検出状態が、所定の時間内において前記赤外線信号送信手段から断続的に発光される赤外線信号のうちの一部が検出される第1個数検出状態である場合に前記所定の機能の実行を制限し、前記所定の時間内において前記第1個数検出状態よりも検出個数が少ない第2個数検出状態である場合に全ての機能の実行を制限することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯端末の管理システム。
【請求項8】
前記携帯端末は、所定の情報を表示するための表示部を備え、
前記検出手段は、前記赤外線信号を検出するための受光面が、前記表示部が配置される外面またはその外面の近傍に配置されることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の携帯端末の管理システム。
【請求項9】
前記携帯端末は、前記制限手段により前記所定の機能または全ての機能の実行が制限されるとき、その旨を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の携帯端末の管理システム。
【請求項10】
前記携帯端末は、前記制限手段により全ての機能の実行が制限されるとき、その旨を周囲に対して警告する警告手段を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の携帯端末の管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−232789(P2011−232789A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99591(P2010−99591)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】