説明

携帯端末用コマンド入力装置および携帯端末用コマンド入力方法

【課題】携帯端末に配備された加速度センサで検知される様々な情報により携帯端末に実装された各種の機能を自由に呼び出すことができ、また、携帯中の誤動作も生じにくい携帯端末用コマンド入力装置を提供する。
【解決手段】タップ操作に相当する振動信号や筐体11の姿勢変化信号の組み合わせからなる予め決められた起動信号が加速度センサ19で検知された場合に限ってコマンド受付手段23の作動を許容する構成としてコマンド受付手段23の不用意な作動を防止し、コマンド受付手段23が様々な外乱を機能選択コマンドとして誤認識しないようにする。また、振動信号と姿勢変化信号の組み合わせで機能選択コマンドを作成することで、機能選択コマンドの拡張性を増し、携帯電話1に実装された各種の機能を自由に呼び出せるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に配備された加速度センサと該加速度センサからの信号出力に基いて携帯端末の動作を制御する制御部とを備えた携帯端末用コマンド入力装置および携帯端末用コマンド入力方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の携帯端末においてコマンドを入力するにはキーの押下によるものが一般的であるが、近年においては、キー操作によるコマンド入力方法では、携帯端末の小型化により搭載されるキーの個数に制限が生じたり、また、キー自体の小型化によって、ユーザが快適な操作で入力を行えなくなるといった問題が生じてきている。
【0003】
また、キー操作では上下左右の選択キーとメニュー呼び出しキーが個別に配置されているため、メニューから機能を選択する場合に指先の移動が必要であり、キータッチ数も増加する。
【0004】
特に、手が不自由なユーザの場合、小さなキーを操作することが困難であるため、簡単なコマンド入力方法が必要となる。
【0005】
キー操作以外のコマンド入力方法としては、音声によるコマンド入力方法や加速度センサを利用したコマンド入力方法の開発が進められている。
【0006】
このうち、加速度センサを利用したコマンド入力方法としては、ユーザが筐体を揺する操作を加速度センサからの信号で検知して表示部の照明装置の点灯時間を増長するものが特許文献1として提案され、また、ユーザが筐体を振る操作を加速度センサからの信号で検知してトップメニューの表示を行なうものが特許文献2として提案されている。また、特許文献3では、ユーザが筐体を揺する操作を加速度センサからの信号で検知してスピーカからの着信音の出力に換えてバイブレータの振動で着信を報知するようにしたものが提案されている。
【0007】
しかし、これらのものは、筐体を揺すったり振ったりする際に生じる振動を単純に感知して携帯端末の機能を起動させるといった単機能的なものに過ぎず、携帯端末に実装された様々な機能を選択的に起動することができないので、拡張性に乏しいといった問題があり、また、携帯電話等の携帯端末はポケットやバッグに納められて持ち運ばれることが多いため、携帯中の振動によって誤動作を生じる恐れもある。
【0008】
【特許文献1】特開2003−179686号公報
【特許文献2】特開2003−163742号公報
【特許文献3】特開2002−354097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の課題は、前記従来技術の不都合を改善し、携帯端末の筐体に配備された加速度センサで検知される様々な情報により携帯端末に実装された各種の機能を自由に呼び出すことができ、また、携帯中の誤動作も生じにくい携帯端末用コマンド入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による携帯端末用コマンド入力装置は、携帯端末の筐体に配備された加速度センサと、前記加速度センサからの信号出力に基いて前記携帯端末の動作を制御する制御部とを備えた携帯端末用コマンド入力装置であり、前記課題を達成するため、特に、
前記加速度センサが予め決められた起動信号を検知した場合に限り、予め設定された時間の範囲で前記加速度センサからの信号を機能選択コマンドとして受け付けるコマンド受付手段と、
前記携帯端末に実装された各種の機能と其の実行を指示する機能選択コマンドとの関係を対応させて記憶したコマンド記憶手段と、
前記コマンド受付手段によって受け付けられた機能選択コマンドに対応する携帯端末の機能を前記コマンド記憶手段から求めて当該機能の実行を前記携帯端末に指示する動作指令手段とを前記制御部に設けたことを特徴とする構成を有する。
【0011】
以上の構成によれば、携帯端末の筐体に配備された加速度センサが予め決められた起動信号を検知した場合に限り、コマンド受付手段が、予め設定された時間の範囲で前記加速度センサからの信号を機能選択コマンドとして受け付ける。
携帯端末に実装された各種の機能と其の実行を指示する機能選択コマンドとの対応関係は制御部のコマンド記憶手段に予め記憶されており、制御部の動作指令手段は、コマンド受付手段によって受け付けられた機能選択コマンドに対応する携帯端末の機能をコマンド記憶手段から求め、当該機能の実行を携帯端末に指示する。
このように、予め決められた起動信号を加速度センサが検知した場合に限ってコマンド受付手段の作動が許容される構成であるので、携帯端末がポケットやバッグに納められて持ち運ばれる間に加速度センサが筐体の振動や揺れ或いは姿勢変化等を検知して信号を出力した場合であっても、これらの信号がコマンド受付手段や動作指令手段によって機能選択コマンドとして御認識されることはなく、携帯端末の機能が誤って起動されるといった問題が改善される。
つまり、携帯端末がポケットやバッグに納められて持ち運ばれる間に加速度センサが筐体の振動や揺れ或いは姿勢変化等を検知して出力する信号が起動信号と偶然に一致する可能性は皆無ではないが、コマンド受付手段が加速度センサからの信号を機能選択コマンドとして受け付ける時間には制限があるので、更に、この時間の範囲内に何れかの機能選択コマンドと同等の振動や揺れ或いは姿勢変化等が偶然に生じて此の振動や揺れ或いは姿勢変化等が何れかの機能選択コマンドとして認識されるといった可能性は殆どなく、携帯端末の機能の誤作動を実質的に解消することが可能である。
また、携帯端末に実装された各種の機能と其の実行を指示する機能選択コマンドとの関係はコマンド記憶手段に記憶されているので、筐体を振動させたり振ったり姿勢変化させたりといった様々な操作の組み合わせによって機能選択コマンドを生成することで、ユーザは、所望する携帯端末の機能を選択的かつ自由に起動することができる。
コマンド記憶手段には携帯端末に実装された様々な機能の各々に対応して機能選択コマンドを記憶するようにしているので、複数の機能選択コマンドが存在することになるが、上述の通り、コマンド受付手段の作動が許容されるのは加速度センサが予め決められた起動信号を検知した場合に制限されるので、様々な態様の機能選択コマンドがコマンド記憶手段に記憶されている場合であっても、携帯端末の持ち運び中に生じる筐体の振動や揺れ或いは姿勢変化等を検知して加速度センサから出力される信号が機能選択コマンドとして御認識される可能性は殆どない。
【0012】
コマンド受付手段の作動を許容させるための起動信号としては、筐体に対して行われるタップ操作(軽く叩く操作)の際に加速度センサで検知される振動信号もしくは該振動信号の組み合わせを利用することが望ましい。
【0013】
携帯端末の持ち運び中には筐体の振動や揺れ或いは姿勢変化等が様々な態様で発生するが、通常の持ち運び動作では専ら揺れや姿勢変化が生じることが殆どであり、筐体を叩くような現象は殆ど発生しないから、筐体に対して行われるタップ操作の際に加速度センサで検知される振動信号(シングルタップ時の信号)もしくは此の振動信号の組み合わせ(ダブルタップ時の信号やトリプルタップ時の信号等)を起動信号とすることで、コマンド受付手段が不用意に作動することを防止できる。
【0014】
一方、携帯端末に実装された各種の機能の実行を指示する機能選択コマンドとしては、筐体の姿勢変化の際に加速度センサで検知される姿勢変化信号もしくは此の姿勢変化信号の組み合わせや、筐体に対して行われるタップ操作の際に加速度センサで検知される振動信号もしくは此の振動信号の組み合わせ、あるいは、筐体に対して行われるタップ操作の際に加速度センサで検知される振動信号と筐体の姿勢変化の際に加速度センサで検知される姿勢変化信号の組み合わせを利用することができる。
【0015】
タップ操作による振動信号や筐体の姿勢変化による姿勢変化信号の組み合わせを機能選択コマンドとして利用することで、携帯端末に実装された多種多様な機能を自由に呼び出して実行させることが可能となる。
特に、筐体の姿勢変化の際に加速度センサで検知される姿勢変化信号のうち、正逆のピッチングや正逆のローリングに相当する姿勢変化信号は、携帯端末のディスプレイの上下左右の向きと対応するので、これらの姿勢変化信号を画面のスクロール表示機能やページの送り/戻し機能と対応させることで、ユーザによる直感的な操作が可能となる。
姿勢変化信号としては、ピッチングやローリングに相当する信号の他、正逆のヨーイングに相当する信号を利用することが可能であり、直交3軸方向の振動(加速度)や直交3軸周りの姿勢変化(ピッチング,ローリング,ヨーイング)を検知する加速度センサ自体に関しては、既に、ゲーム機や慣性計等の分野で公知である。
実際には、正逆のピッチング,正逆のローリング,正逆のヨーイングといった姿勢変化信号とタップ操作による振動信号の組み合わせを自由に利用して機能選択コマンドを形成することが可能であり、携帯端末に実装された各種の機能と此れらの機能選択コマンドとを対応させることで、携帯端末のセキュリティロックの設定/解除,ディスプレイ上での画面のスクロール表示やページの送り/戻し,初期メニューの表示,待ち受け画面への復帰,ミュージックプレイヤーの再生/停止,電子メールの送信,Webブラウザの表示等を始めとする携帯端末の各種の機能を自由に実行させることができる。
【0016】
また、携帯端末に実装された各種の機能と其の実行を指示する機能選択コマンドとの関係をコマンド記憶手段に登録するための教示操作実行コマンドを制御部に入力するための教示指令入力手段と、教示操作実行コマンドを検知して機能選択コマンドの登録対象とする機能の選択と前記コマンド受付手段の作動を許容し、該コマンド受付手段によって受け付けられた機能選択コマンドを当該時点で選択されている携帯端末の機能に対応させてコマンド記憶手段に記憶させる機能選択コマンド登録手段とを制御部に備えるようにしてもよい。
【0017】
このような構成を適用した場合では、ユーザが機能選択コマンドを自由に作成し、此の機能選択コマンドを携帯端末が有する何れかの機能に対応させてコマンド記憶手段に登録したり、または、特定の機能の呼び出しに利用される機能選択コマンドを自由に書き換えたりすることができる。
手が不自由なユーザの場合であっても、筐体に対するタップ操作,筐体に対するピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作のうち幾つかの操作は容易に実行可能と考えられるので、可能な選択肢の範囲でバリアフリーの操作が可能となる。
また、携帯電話やPDA等の携帯端末の場合においては、インターネットとの接続や電子メールの送受信といったことも可能であるので、タップ操作,ピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作等の組み合わせからなる機能選択コマンドのテンプレートを予めメーカ側で作成しておき、このテンプレートをユーザ側の携帯端末にダウンロードしてコマンド記憶手段に登録するといったことも現行の技術範囲で可能であり、利便性が更に向上する。
【0018】
更には、機能選択コマンド登録手段の作動後、コマンド記憶手段に新たに記憶された機能選択コマンドと携帯端末の機能との対応関係を携帯端末のディスプレイに可視表示する登録結果表示手段を制御部に備えるようにしてもよく、特に、機能選択コマンドに相当する筐体の振動(タップ操作)および姿勢変化をアニメーションもしくはアイコンによって表示することが望ましい。
【0019】
ユーザは、自分が新たに登録した機能選択コマンド、すなわち、タップ操作,ピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作等の組み合わせの態様を直ちに確認できるので、誤操作による機能選択コマンドの登録ミスを事前に察知して再設定行為を行うことができる。
【0020】
本発明による携帯端末用コマンド入力方法は、携帯端末の筐体に配備された加速度センサによって検知される信号に基いて携帯端末の動作を制御するようにした携帯端末用コマンド入力方法であり、前記と同様の課題を達成するため、
前記加速度センサによって検知可能な振動信号や姿勢変化信号の組み合わせからなる起動信号、および、前記加速度センサによって検知可能な振動信号や姿勢変化信号の組み合わせからなる機能選択コマンドと前記携帯端末に実装された各種の機能との対応関係を前記携帯端末の制御部に予め記憶させておき、
前記加速度センサによって前記起動信号が検知された場合に限り、予め設定された時間の範囲で、前記加速度センサによって検知される振動信号や姿勢変化信号を前記制御部が機能選択コマンドとして読み込み、
前記制御部が、前記加速度センサによって検知された機能選択コマンドに対応する携帯端末の機能を求め、当該機能の実行を携帯端末に指示するようにしたことを特徴とする構成を有する。
【0021】
このように、予め決められた起動信号を加速度センサが検知した場合に限って振動信号や姿勢変化信号の組み合わせからなる機能選択コマンドの読み込みが許容されるので、携帯端末がポケットやバッグに納められて持ち運ばれる間に加速度センサが筐体の振動や揺れ或いは姿勢変化等を検知して信号を出力した場合であっても、これらの信号がコマンド受付手段や動作指令手段によって機能選択コマンドとして御認識されることがなく、携帯端末の機能が誤って起動されるといった問題が改善される。
また、携帯端末に実装された各種の機能と其の実行を指示する機能選択コマンドとの関係は予め制御部に記憶されているので、筐体を振動させたり振ったり姿勢変化させたりといった様々な操作の組み合わせによって機能選択コマンドを生成することで、ユーザは、所望する携帯端末の機能を選択的かつ自由に起動することができる。
【0022】
既に述べた通り、制御部による機能選択コマンドの読み込みを許容するめの起動信号としては、筐体に対して行われるタップ操作の際に加速度センサで検知される振動信号もしくは該振動信号の組み合わせを利用することが望ましく、また、携帯端末に実装された各種の機能の実行を指示する機能選択コマンドとしては、筐体の姿勢変化の際に加速度センサで検知される姿勢変化信号もしくは此の姿勢変化信号の組み合わせや、筐体に対して行われるタップ操作の際に加速度センサで検知される振動信号もしくは此の振動信号の組み合わせ、あるいは、筐体に対して行われるタップ操作の際に加速度センサで検知される振動信号と筐体の姿勢変化の際に加速度センサで検知される姿勢変化信号の組み合わせを利用することができる。
【0023】
また、機能選択コマンドを制御部に記憶させる操作は、携帯端末に実装された各種の機能に対応する機能選択コマンドとなる振動信号や姿勢変化信号の組み合わせを筐体に対するユーザのタップ操作や姿勢変化操作により加速度センサを介して制御部に読み込ませる教示操作によって実現することができる。
【0024】
更に、教示操作によって制御部に新たに記憶された機能選択コマンドと携帯端末の機能との対応関係を、制御部の処理で携帯端末のディスプレイに可視表示することで、ユーザが新たに登録した機能選択コマンド、すなわち、タップ操作,ピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作等の組み合わせの態様を直ちに確認できるので、誤操作による機能選択コマンドの登録ミスを事前に察知し改めて適切な教示操作を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の携帯端末用コマンド入力装置および携帯端末用コマンド入力方法は、予め決められた起動信号を加速度センサが検知した場合に限ってコマンド受付手段の作動を許容する構成であるので、携帯端末がポケットやバッグに納められて持ち運ばれる間に加速度センサが筐体の振動や揺れ或いは姿勢変化等を検知して信号を出力した場合であっても、これらの信号がコマンド受付手段や動作指令手段によって機能選択コマンドとして御認識されることはなく、携帯端末の機能が誤って起動されるといった問題が改善される。
【0026】
また、携帯端末に実装された各種の機能と其の実行を指示する機能選択コマンドとの関係がコマンド記憶手段に記憶されているので、筐体を振動させたり振ったり姿勢変化させたりといった様々な操作の組み合わせによって機能選択コマンドを生成することにより、ユーザは、所望する携帯端末の機能を選択的かつ自由に起動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための最良の形態について一例を挙げて具体的に説明する。
【0028】
図1(a)は本発明のコマンド入力方法を適用した携帯端末用コマンド入力装置を携帯端末の一種である携帯電話に実装した場合の一実施形態について外観の概略を示した斜視図、また、図2は同携帯電話1の構成の概略を示したブロック図である。
【0029】
携帯電話1は、図1(a)に示されるように、通話用のマイク2およびスピーカ3とキー操作部4ならびに送受信用のアンテナ6を有し、ディスプレイ5にはバックライト7が併設されている。
【0030】
ディスプレイ5は液晶パネルあるいは有機EL等によって構成され、電話番号の選択表示や着信履歴等の表示、更には、作成過程にあるメールや受信メールの表示等に利用される。
【0031】
キー操作部4は、電話番号の入力操作等の場合にはテンキーとして使用され、また、電子メールの作成等に際してはテキストデータ入力用のカナキー等として利用される。
【0032】
図2に示されるROM8には、通話や電子メールの送受信等に必要とされる処理をCPU9に実行させるための制御プログラムの他、カナ文字変換に使用される辞書等の固定的なデータが格納されている。
【0033】
RAM10は作業用のメモリであり、CPU9がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するようになっている。
【0034】
バックライト7はディスプレイ5を照明するためのデバイスであり、CPU9からの指令でオン/オフ制御される。また、キー操作部4を背後から透過照明するための光源を筐体11の一部である主筐体12に内蔵し、バックライト7と併せて駆動制御する場合もある。
【0035】
ディスプレイ5は表示制御部14を介してCPU9により駆動制御される。
【0036】
タイマ15は現在時刻の把握や経過時間の計測、さらには、設定した時間あるいは時刻でイベントを通知する場合等に使用されるデバイスである。
【0037】
不揮発性メモリ16は長期の記憶を必要とする各種の設定データやパラメータ等を書き換え可能に保存するためのメモリであり、メールのテキストデータや登録済電話番号および電子メールアドレス等が記憶されるようになっている。
【0038】
従来と同様、携帯電話1を通話に使用する場合においては、マイク2から入力された音声が音声処理部17でA/D変換されてCPU9に転送され、更に、CPU9の処理で通信形式データに変換された後、送受信部18で変調されて内蔵式もしくは伸縮式のアンテナ6を介して最寄の基地局に送信される。
【0039】
また、アンテナ6で受信された通信電波は送受信部18で復調されてCPU9に転送され、CPU9の処理で音声データに変換されてから、音声処理部17でD/A変換等の処理操作を受けてスピーカ3から音声として出力される。
【0040】
以上に述べた通り、携帯電話1のハードウェア上の基本構成に関しては従来のものと同様である。
【0041】
本実施形態においては、これらの公知要素に加え、更に、携帯電話1の筐体11に生じる振動や揺れ及び姿勢変化等を検知するための加速度センサ19が、筐体11の一部である副筐体13の内部に一体的に配備されている。
【0042】
加速度センサ19は、図3に示されるように直交3軸を成すX,Y,Z各軸方向の振動(加速度)の検出と、図4に示されるような直交3軸X,Y,Z各軸周りの姿勢変化(ピッチング,ローリング,ヨーイング)の検知が可能なもので、この種の加速度センサについては、ゲーム機や慣性計等の分野において既に公知である。X,Y,Z各軸方向の振動(加速度)を合成して実質的な移動方向(加速方向)を求めたり、姿勢変化の方向や姿勢変化量を求めたりするためには、方向ベクトルの合成や積分処理等が必要となるが、これらの演算処理に関してはCPU9の内部処理によって実現することができ、また、この演算機能をデバイスとしての加速度センサ19自体に持たせることも可能である。
【0043】
この実施形態では、加速度センサ19が副筐体13の側に配備されており、副筐体13を開いた場合と、副筐体13を主筐体12に閉じ合わせた場合とでは、図3および図4に示されるようなセンサ座標系に対する主筐体12の姿勢に変化が生じるが、加速度センサ19は、ディスプレイ5の法線がセンサ座標系のZ軸と一致し、ディスプレイ5の横幅方向がセンサ座標系のX軸と一致し、ディスプレイ5の縦幅方向がセンサ座標系のY軸と一致するようにして副筐体13内に納められているので、例えば、図1(a)に示されるようにして副筐体13を開いてディスプレイ5に文字や画像等を表示して閲覧している際にディスプレイ5すなわち副筐体13を開閉方向に俯仰させたとすれば、センサ座標系におけるX軸周りのピッチング方向の姿勢変化(図1(a)中の矢印a)が検知され、また、首を振る様にして副筐体13をスイヴェルさせた場合には、センサ座標系におけるY軸周りのローリング方向の姿勢変化(図1(a)中の矢印b)が検知されることになる。
また、副筐体13を主筐体12に閉じ合わせた状況下では、ディスプレイ5の表面とキー操作部4の表面とが重合するので、図1(b)に示されるように、閉じられることによって実質的な厚みを増大させた筐体11の厚み方向がセンサ座標系のZ軸と一致し、閉じられた筐体11の縦幅方向つまりアンテナ6の長さ方向がセンサ座標系のY軸と一致し、主筐体12と副筐体13とを開閉可能に接続しているヒンジ20の軸方向がセンサ座標系のX軸と一致することになるので、図1(b)に示される矢印a’の方向に筐体11を回転させればセンサ座標系におけるX軸周りのピッチングが検知され、また、図1(b)に示される矢印b’の方向に筐体11を回転させたとすればセンサ座標系におけるY軸周りのローリングが検知されることとなる。
【0044】
携帯電話1に実装された携帯端末用コマンド入力装置21の構成を図5の機能ブロック図に示す。
【0045】
携帯端末用コマンド入力装置21は、携帯電話1の副筐体13に配備された加速度センサ19と、加速度センサ19からの信号出力に基いて携帯電話1の動作を制御する制御部22とによって構成される。
【0046】
制御部22の主要部は、図5に示されるように、加速度センサ19からの信号を機能選択コマンドとして受け付けるコマンド受付手段23、および、携帯電話1に実装された各種の機能と其の実行を指示する機能選択コマンドとの関係を対応させて記憶したコマンド記憶手段24と、コマンド受付手段23によって受け付けられた機能選択コマンドに対応する携帯電話1の機能をコマンド記憶手段24から求めて当該機能の実行を携帯電話1に指示する動作指令手段25によって構成される。
そして、制御部22には、更に、携帯電話1に実装された各種の機能と其の実行を指示する機能選択コマンドとの関係をコマンド記憶手段24に登録するための処理を開始するための教示操作実行コマンドを受け付ける教示指令入力手段26と、機能選択コマンドの登録対象とする機能の選択とコマンド受付手段23の作動を許容し、コマンド受付手段23によって受け付けられた機能選択コマンドを其の時点で選択されている携帯電話1の機能に対応させてコマンド記憶手段24に記憶させる機能選択コマンド登録手段27と、機能選択コマンド登録手段27の作動後、コマンド記憶手段24に新たに記憶された機能選択コマンドと携帯電話1の機能との対応関係を携帯電話1のディスプレイ5に可視表示する登録結果表示手段28が併設されている。
【0047】
制御部22は携帯電話1のCPU9,ROM8,不揮発性メモリ16,タイマ15,キー操作部4を利用して構築されたもので、具体的には、制御部22におけるコマンド受付手段23の機能がCPU9およびROM8内の制御プログラムとタイマ15によって実現され、制御部22における動作指令手段25,機能選択コマンド登録手段27,登録結果表示手段28の機能が携帯電話1のCPU9およびROM8内の制御プログラムによって実現されている。また、携帯電話1の不揮発性メモリ16は制御部22におけるコマンド記憶手段24として機能し、携帯電話1のキー操作部4が制御部22における教示指令入力手段26を兼ねている。
【0048】
既に述べた通り、加速度センサ19は、携帯電話1の筐体11に生じる振動や揺れ及び姿勢変化等を検知することが可能なもので、このうち、本実施形態においては、筐体11に対して行われるタップ操作の際に加速度センサ19で検知される振動信号、より具体的には、筐体11を指先で2回に亘って軽く叩くダブルタップ操作の際に加速度センサ19で検知される振動信号の組み合わせ即ちタップ−タップの操作を、コマンド受付手段23の起動信号として利用している。コマンド受付手段23による機能選択コマンドの受け付けが許容されるのは、起動信号であるダブルタップ操作が検知されてからタイマ15による設定時間の計時が終了するまでの時間範囲に制限される。
【0049】
また、機能選択コマンドとしては、筐体11に対して行われるタップ操作の際に加速度センサ19で検知される振動信号と筐体11の姿勢変化の際に加速度センサ19で検知される姿勢変化信号との組み合わせにより、例えば、タップ−タップ−正ロール−負ロール,タップ−タップ−負ロール−正ロール,タップ−正ロール−負ロールといったように多数のものが定義され、これらの機能選択コマンドと、各機能選択コマンドに対応して呼び出されるべき携帯電話1の諸機能との関係が、予め何組かコマンド記憶手段24に登録されている。
機能選択コマンドは、タップ操作の際に加速度センサ19で検知される振動信号の組み合わせのみによって、例えば、トリプルタップやフォースタップ等のように構成してもよいし、また、筐体11の姿勢変化の際に加速度センサ19で検知される姿勢変化信号の組み合わせのみによって、例えば、正ロールのみ,正ピッチのみ,正ロール−負ロール−正ロール等のように構成しても構わない。
【0050】
不揮発性メモリ16からなるコマンド記憶手段24に記憶された機能選択コマンドと携帯電話1に実装された機能との対応関係の一例を図6の概念図に示す。
【0051】
この実施例では、例えば、加速度センサ19によって副筐体13における正ピッチ方向の姿勢変化つまり図1(a)に示されるように副筐体13を開いた状態でディスプレイ5を上傾きに姿勢変化させる動作が検知されると、ディスプレイ5の画面を上にスクロールする機能が呼び出され(図6のアドレス1の欄を参照)、また、加速度センサ19によって副筐体13における負ピッチ方向の姿勢変化つまり図1(a)に示されるように副筐体13を開いた状態でディスプレイ5を下傾きに姿勢変化させる動作が検知されると、ディスプレイ5の画面を下にスクロールする機能が呼び出されようになっている(図6のアドレス2の欄を参照)。
これと同様、加速度センサ19によって副筐体13における正ロール方向の姿勢変化つまり図1(a)に示されるように副筐体13を開いた状態でディスプレイ5を右傾きに姿勢変化させる動作が検知されると、ディスプレイ5の画面上でページを1ページだけ進める機能が呼び出され(図6のアドレス3の欄を参照)、また、加速度センサ19によって副筐体13における負ロール方向の姿勢変化つまり図1(a)に示されるように副筐体13を開いた状態でディスプレイ5を左傾きに姿勢変化させる動作が検知されると、ディスプレイ5の画面上でページを1ページだけ戻す機能が呼び出されようになっている(図6のアドレス4の欄を参照)。
副筐体13の姿勢変化の際に加速度センサ19で検知される姿勢変化信号のうち、正逆のピッチング(図1(a)中の矢印a)や正逆のローリング(図1(a)中の矢印b)に相当する姿勢変化信号は、ディスプレイ5の上下左右の向きと対応するので、これらの姿勢変化信号を画面のスクロール表示機能やページの送り/戻し機能と対応させることで、ユーザによる直感的な操作が可能となる。
画面のスクロールやページの送り/戻しに関する機能は、携帯電話1のモードがメール作成モードやメール閲覧モードにあった場合さらにはWebページ閲覧モード等にあった場合でも常に利用される機能であり、携帯電話1の置かれたモードによる制限を受けない機能である(図6のアドレス1〜iの欄を参照)。
【0052】
また、この実施形態の携帯電話1には、該携帯電話1の使用をソフトウェアあるいはハードウェアによってロックするセキュリティ機能があり、図1(b)のようにして折り畳まれた状態の筐体11に対するタップ操作および姿勢変化がタップ−タップ−正ロール−負ロールの順で加速度センサ19によって検知されるとセキュリティロックを掛ける機能が呼び出され(図6のアドレスi+1の欄を参照)、また、図1(b)のようにして折り畳まれた状態の筐体11に対するタップ操作および姿勢変化がタップ−タップ−負ロール−正ロールの順で加速度センサ19によって検知されるとセキュリティロックを解除する機能が呼び出されるようになっている(図6のアドレスi+2の欄を参照)。
セキュリティ機能をハードウェアで実現しているもの、例えば、主筐体12と副筐体13を電磁駆動式のロック爪等で閉鎖状態に固定することで携帯電話1に対する外部操作を完全に禁止する構造のものにあっては、図1(b)のようにして折り畳まれた状態の筐体11に対して上述の操作を行う必要があるが、セキュリティ機能をソフトウェアで実現しているもの、例えば、キー操作部4の主要なキーに対する入力操作の読み込みをキャンセルすることでセキュリティを実現するような構造のものにあっては、セキュリティロックの設定および解除の操作は、主筐体12と副筐体13を図1(a)のようにして開いた状態あるいは主筐体12と副筐体13を図1(b)のようにして閉じた状態の何れでも可能である。ハードウェアを利用したセキュリティロック機能やソフトウェアを利用したセキュリティロック機能それ自体に関しては既に様々なものが公知であり、その構成は問わない。
セキュリティロックの設定/解除に必要とされる機能選択コマンドは従来の暗証番号に相当するものであるから、その操作内容は他者に知られないようにすることが望ましい。この実施形態においては、特に、タップ操作と姿勢変化の組み合わせでセキュリティロックの設定/解除に必要とされる機能選択コマンドを構成しているので、第三者が無作為に携帯電話1を振り回したり振動させたりしても、不用意にセキュリティロックが解除されるような問題は生じない。
また、ディスプレイ5に初期メニューを表示する機能は、図1(a)のようにして開かれた状態にある副筐体13あるいは主筐体12に対するタップ操作と図1(a)のようにして開かれた状態にある副筐体13の姿勢変化がタップ−正ロール−負ロールの順で加速度センサ19によって検知されると呼び出され(図6のアドレスi+3の欄を参照)、ディスプレイ5の表示を待ち受け画面に戻す機能は、タップ操作がタップ−タップ−タップの順でトリプルタップとして検知されると呼び出されるようになっている(図6のアドレスi+4の欄を参照)。
これらの機能も、携帯電話1の置かれたモードによる制限を受けない機能である(図6のアドレスi+1〜jの欄を参照)。
【0053】
更に、この実施形態の携帯電話1は、ミュージックプレイヤーとしての機能やWebブラウザとしての機能も兼ね備えており、其の時点で携帯電話1のモードとしてミュージックプレイヤーモードが選択されている状況下にあっては、筐体11に対するタップ操作および姿勢変化がタップ−正ロールの順で加速度センサ19によって検知されると音楽の再生を開始する機能が呼び出され(図6のアドレスj+1の欄を参照)、筐体11に対するタップ操作および姿勢変化がタップ−負ロールの順で加速度センサ19によって検知されると音楽の再生を停止する機能が呼び出されるようになっている(図6のアドレスj+2の欄を参照)。また、其の時点で携帯電話1のモードとしてメール作成モードが選択されている状況下にあっては、筐体11に対するタップ操作および姿勢変化がタップ−正ロールの順で加速度センサ19によって検知されるとメールを送信する機能が呼び出される(図6のアドレスj+3の欄を参照)。更に、其の時点で携帯電話1のモードとしてWebページ閲覧モードが選択されている状況下にあっては、筐体11に対するタップ操作および姿勢変化がタップ−負ロールの順で加速度センサ19によって検知されるとブラウザを閉じてWebページ閲覧モードを終了する機能が呼び出されるようになっている(図6のアドレスj+4の欄を参照)。
従って、タップ−正ロールによって構成される機能選択コマンドは音楽再生およびメール送信といった2つの機能に対応し、また、タップ−負ロールによって構成される機能選択コマンドは音楽の再生停止およびWebブラウザの終了といった2つの機能に対応することになるが、CPU9は、携帯電話1がどのようなモードに置かれているかを判断した上で機能選択コマンドに対応した機能を呼び出すので、これらの機能選択コマンドが混同して用いられることはない。
つまり、音楽の再生や再生停止に関する機能はミュージックプレイヤーモードにおいてのみ利用される機能、また、メール送信に関する機能はメール作成モードにおいてのみ利用される機能であり、更に、ブラウザの終了に関する機能はWebページ閲覧モードにおいてのみ利用される機能であって、これらの機能は、携帯電話1の置かれたモードによる制限を受ける機能である(図6のアドレスj+1〜kの欄を参照)。
【0054】
不揮発性メモリ16からなるコマンド記憶手段24には、機能選択コマンドと其れに対応する機能の関係について多種多様なものが記憶されるが、他の組み合わせについては説明を省略する。
【0055】
前述した通り、画面のスクロール表示機能やページの送り/戻し機能に関しては、直感的な操作が可能となることから、筐体11の正逆のピッチング操作からなる機能選択コマンドを画面のスクロール表示機能に対応させ、筐体11の正逆のローリング操作からなる機能選択コマンドをページの送り/戻し機能に対応させることが望ましいが、その他の機能に関しては、タップ操作や姿勢変化操作の態様と其れによって実行される機能との間の合理的な関連性は希薄であるので、タップ操作,ピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作等を適当に組み合わせることで、ユーザが思うように、各機能に対応する機能選択コマンドを作成しても一向に構わない。
【0056】
携帯電話1が有する機能に対応させて機能選択コマンドを作成してコマンド記憶手段24に登録したり、あるいは、特定の機能の呼び出しに利用される機能選択コマンドを書き換えたりする際には、教示指令入力手段26として機能するキー操作部4のカスタム設定キーを操作することで機能選択コマンド登録手段27に教示操作実行コマンドを入力し、機能選択コマンド登録手段27からの指令でコマンド受付手段23の作動を一時的に許容状態とした上で、筐体11に対するタップ操作や姿勢変化の操作をユーザ自らが行い、これらの操作に応じて加速度センサ19から出力される振動信号や姿勢変化信号を機能選択コマンドとしてコマンド受付手段23に読み込ませ、この機能選択コマンドを、其の時点で選択されている携帯電話1の機能に対応させて、コマンド記憶手段24に記憶させるようにする。
仮に、ユーザの手が不自由であったとしても、タップ操作,ピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作のうちの何れかの操作は可能と考えられるので、機能選択コマンドのカスタマイズは、利便性の拡張やバリアフリー化の面で有益である。
また、この携帯電話1はインターネットとの接続や電子メールの送受信といったことも可能であるので、想定される手先の障害の種別等に合わせて予めメーカ側でタップ操作,ピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作等の組み合わせからなる機能選択コマンドのテンプレートを何種類か作成しておき、これらのテンプレートの中からユーザの障害に見合ったテンプレートをユーザ側の判断で選択して携帯電話1にダウンロードし、自動的にコマンド記憶手段24に登録するといったことも可能である。
また、これとは逆に、手に障害のあるユーザ自身が各機能に対応してトライ&エラーで開発した機能選択コマンドを同等の障害を有する他のユーザに電子メール等で送信して試させたり、メーカー側が運営するWebサイトにアップロードするといったようなことも可能である。
これらのことは、特定のデータ構造を有するファイルの送受信に関わるものに過ぎず、従来技術の範囲で十分に実施可能な処理であるから、技術的な説明は省略する。
【0057】
更に、この実施形態では、機能選択コマンド登録手段27の作動後、コマンド記憶手段24に新たに記憶された機能選択コマンドと携帯電話1の機能との対応関係が、登録結果表示手段28の処理によって、携帯電話1のディスプレイ5にアニメーションもしくはアイコンで表示されるようになっている。
例えば、メールを送信する機能にタップ−正ロールの操作からなる機能選択コマンドを対応させて記憶させた場合では、手紙が風に乗って流れるようなアイコンに対応させて、携帯電話1が震えるアイコンと図1(a)中の携帯電話1がY軸の周りで正方向に所定角度ローリングした状態を示すアイコンとを此の順で例えば左から右に向けて並べて表示するといったことが可能である。アニメーション表示とする場合には、手紙が風に乗って流れるような画像と、携帯電話1が震える画像と、図1(a)中の携帯電話1がY軸の周りで正方向に徐々にローリングしていく画像とを、時系列的に表示するといったことも可能である。
【0058】
図7および図8は携帯電話1と携帯端末用コマンド入力装置21を制御するCPU9の処理動作を簡略化して示したフローチャートである。
【0059】
次に、携帯端末用コマンド入力装置21の制御部22におけるコマンド受付手段23,動作指令手段25,機能選択コマンド登録手段27,登録結果表示手段28として機能するCPU9の処理動作と本実施形態におけるコマンド入力方法の具体例について図7および図8を参照して説明する。
【0060】
携帯電話1に電源が投入されると、CPU9は、まず、コマンド受付手段23の作動状態を記憶するコマンド受付フラグFをリセット状態とする初期化処理を実行する(ステップS1)。
コマンド受付フラグFは、コマンド受付手段23の作動状態を記憶するフラグであり、このフラグがセットされている状況下ではコマンド受付手段23が加速度センサ19からの信号出力を機能選択コマンドとして読み込むことが許容される一方、コマンド受付フラグFがリセットされた状況下にあっては、コマンド受付手段23が加速度センサ19からの信号出力を機能選択コマンドとして読み込むことが禁止されるようになっている。
【0061】
次いで、コマンド受付手段23として機能するCPU9は、コマンド受付フラグFがセットされているか否かを判定するが(ステップS2)、この時点ではコマンド受付フラグFがリセット状態に保持されているので、ステップS2の判定結果は偽となり、コマンド受付手段23として機能するCPU9は、更に、加速度センサ19によって起動信号が検知されているか否か、つまり、筐体11に対するユーザのダブルタップ操作が検知されているか否かを判定することになる(ステップS3)。
【0062】
ダブルタップ操作からなる起動信号が検知されずにステップS3の判定結果が偽となった場合はコマンド受付手段23を起動する必要はないので、機能選択コマンド登録手段27として機能するCPU9は、更に、教示指令入力手段26として機能するキー操作部4のカスタム設定キーがユーザによって操作されているか否か、要するに、不揮発性メモリ16からなるコマンド記憶手段24に新たな機能選択コマンドを登録したり登録済みの機能選択コマンドの書き換えを行ったりする要求がユーザによって入力されているか否かを判定する(ステップS18)。
【0063】
カスタム設定キーの操作が検知されずにステップS18の判定結果が偽となった場合には、機能選択コマンドの登録処理や書き換え処理も不要であることを意味するので、CPU9は、携帯電話1の制御に関わる通常の処理のみを従来と同様にして実行し(ステップS19)、当該周期の処理を終了する。
【0064】
以下、ダブルタップ操作からなる起動信号やカスタム設定キーの操作がステップS3あるいはステップS18の判定処理で検知されない限り、CPU9は、ステップS2,ステップS3,ステップS18の判定処理とステップS19の通常処理のみを繰り返し実行して、従来の携帯電話の場合と同様に、携帯電話1の制御に関わる処理のみを継続的に実行する。
【0065】
このようにしてステップS2,ステップS3,ステップS18,ステップS19の処理が繰り返し実行される間に、ダブルタップ操作からなる起動信号がステップS3の判定処理で検知されると、CPU9は、コマンド受付手段23の作動が許容されたことを示すガイダンスメッセージあるいはアイコン等を携帯電話1のディスプレイ5に表示してユーザに知らせると共に(ステップS4)、タイマ15を起動してコマンド受付手段23の作動開始後の経過時間の計測を始め(ステップS5)、同時に、コマンド受付フラグFをセットすることにより、コマンド受付手段23への機能選択コマンドの入力が許容されたことを自ら記憶する(ステップS6)。
【0066】
次いで、コマンド受付手段23として機能するCPU9は、筐体11に対するタップ操作に対応した振動信号や筐体11の姿勢変化操作に対応した姿勢変化信号の組み合わせからなる機能選択コマンドが加速度センサ19から入力されているか否か、要するに、携帯電話1が有する何らかの機能を呼び出すための操作がユーザの手によって行われているか否かを判定することになる(ステップS7)。
【0067】
この段階で機能選択コマンドの入力が検知されずにステップS7の判定結果が偽となった場合には、コマンド受付手段23として機能するCPU9は、更に、タイマ15で計測される経過時間が予め決められた設定値、例えば、15秒に達しているか否かを判定し(ステップS8)、設定値に達していなければ、再びステップS2の判定処理に移行してコマンド受付フラグFがセットされているか否かを判定する。この時点では既にコマンド受付フラグFがセットされているので、ステップS2の判定結果は真となり、コマンド受付手段23として機能するCPU9は、ステップS7,ステップS8,ステップS2の判定処理のみを繰り返し実行して、加速度センサ19からの機能選択コマンドの入力、あるいは、コマンド受付手段23作動開始後の経過時間の設定値到達を待機することになる。
【0068】
このようにしてステップS7,ステップS8,ステップS2の判定処理が繰り返し実行される間にステップS7の判定処理で機能選択コマンドの入力が検知された場合には、動作指令手段25として機能するCPU9が、コマンド記憶手段24として機能する不揮発性メモリ16に記憶されている機能選択コマンドの一覧(図6参照)を検索し、今回の処理で検知された機能選択コマンドがセキュリティロックの設定/解除に関するものであるか否かを判定する(ステップS11)。そして、この機能選択コマンドがセキュリティロックの設定/解除に関するものであれば、動作指令手段25として機能するCPU9は、機能選択コマンドの内容に対応した機能をコマンド記憶手段24から呼び出して、其の機能に対応した処理を携帯電話1に実行させる(ステップS17)。
図6の例ではタップ操作および姿勢変化からなる機能選択コマンドがタップ−タップ−正ロール−負ロールの順で加速度センサ19によって検知された場合とタップ−タップ−負ロール−正ロールの順で検知された場合にステップS11の判定結果が真となり、このうち、タップ操作および姿勢変化がタップ−タップ−正ロール−負ロールの順で検知された場合にステップS17の処理でセキュリティロックが設定され(図6のアドレスi+1の欄を参照)、また、タップ操作および姿勢変化がタップ−タップ−負ロール−正ロールの順で検知された場合にはステップS17の処理でセキュリティロックの設定が解除されることになる(図6のアドレスi+2の欄を参照)。
このようにしてセキュリティロックの設定/解除に関する処理が実行された場合、CPU9は、コマンド受付手段23の作動が許容されたことを示すガイダンスメッセージの表示をクリアし(ステップS9)、コマンド受付フラグFをリセットして(ステップS10)、初期の待機状態へと復帰する。
従って、ステップS3の判定処理で改めてダブルタップ操作の起動信号が検出されない限り、コマンド受付手段23による機能選択コマンドの読み込みは実行されない。
【0069】
一方、前述のステップS11の判定結果が偽となり、今回の処理で検知された機能選択コマンドがセキュリティロックの設定/解除に関するものでないことが明らかとなった場合には、動作指令手段25として機能するCPU9は、コマンド記憶手段24として機能する不揮発性メモリ16に記憶されている機能選択コマンドの一覧(図6参照)を検索し、今回の処理で検知された機能選択コマンドが携帯電話1の置かれたモードに依存するものであるか否かを判定する(ステップS12)。そして、この機能選択コマンドがモードに依存するものでなければ、動作指令手段25として機能するCPU9が、今回の処理で検知された機能選択コマンドの態様のみに基いて、この機能選択コマンドの内容に対応した機能をコマンド記憶手段24から呼び出し、其の機能に対応した処理を携帯電話1に実行させる(ステップS13)。
仮に、今回のステップS7の処理で画面の上スクロールに相当する正ピッチの姿勢変化が検知されたとすれば、この機能選択コマンドに対応する機能はディスプレイ5の画面を上にスクロールする機能であるから(図6のアドレス1の欄を参照)、ステップS13の処理では、携帯電話1の機能を利用して上スクロールを行なう処理が実行されることになる。
このようにしてスクロール処理が行なわれた場合、CPU9は、タイマ15を再起動してコマンド受付手段23の作動開始後の経過時間の計測を初めからやり直し(ステップS16)、ステップS2の処理へと移行する。
この場合はコマンド受付フラグFのセット状態が保持されるので、ステップS2の判定結果が真となり、また、タイマ15の再起動によって機能選択コマンドの読み込み許容時間も実質的に増長されているので、副筐体13を正ピッチの方向に傾けた状態を其のまま維持すれば、ステップS7,ステップS11,ステップS12,ステップS13,ステップS16,ステップS2の処理が繰り返し実行されることとなり、画面の連続スクロールが許容される。
また、このようにして画面の連続上スクロールが行われる間にステップS7の処理で画面の下スクロールに相当する負ピッチの姿勢変化が機能選択コマンドとして検知されたとすれば、この機能選択コマンドに対応する機能はディスプレイ5の画面を下にスクロールする機能であるから(図6のアドレス2の欄を参照)、ステップS13の処理では、携帯電話1の機能を利用して画面の下スクロールを行なう処理が開始されることになるので、格別な切り替え処理を行なうことなく、上スクロールから下スクロールへの切り替えを行なうことができる。画面のページの送りや戻しに関する処理も、これと同等である。
【0070】
一方、前述したステップS12の判定結果が真となり、今回の処理で検知された機能選択コマンドが携帯電話1の置かれたモードに依存するものであることが明らかとなった場合には、動作指令手段25として機能するCPU9は、まず、携帯電話1が現時点でどのようなモードに置かれているのかを検出し(ステップS14)、携帯電話1が置かれているモードと今回の処理で検知された機能選択コマンドの態様とに基いて、これらのモードおよび機能選択コマンドに対応した機能をコマンド記憶手段24から呼び出し、其の機能に対応した処理を携帯電話1に実行させる(ステップS15)。
仮に、今回のステップS7の処理でミュージックプレイヤーの再生およびメールの送信に相当するタップ−正ロールの信号が機能選択コマンドとして検知されたとした場合(図6のアドレスj+1,j+3の欄を参照)、この時点で携帯電話1のモードがミュージックプレイヤーモードとなっていれば、この機能選択コマンドとモードに対応する機能は音楽の再生であるから(図6のアドレスj+1の欄を参照)、ステップS15の処理では、携帯電話1の機能を利用して音楽の再生を行なう処理が実行されることになる。また、この時点で携帯電話1のモードがメール作成モードとなっていれば、この機能選択コマンドとモードに対応する機能はメールの送信であるから(図6のアドレスj+3の欄を参照)、ステップS15の処理では、携帯電話1の機能を利用してメールの送信を行なう処理が実行されることになる。
【0071】
これに対し、前述のようにしてステップS7,ステップS8,ステップS2の判定処理が繰り返し実行される間にステップS7の判定処理によって機能選択コマンドの入力が検知されることなくタイマ15で計測される経過時間が設定値に到達してしまった場合、つまり、ステップS8の判定結果が真となった場合には、予め決められた設定時間だけ待機してもユーザによる機能選択コマンドの入力が行なわれなかったことを意味するので、コマンド受付手段23として機能するCPU9は、コマンド受付手段23の作動が許容されていることを示すガイダンスメッセージの表示をクリアし(ステップS9)、コマンド受付フラグFをリセットして(ステップS10)、初期の待機状態へと復帰する。
【0072】
セキュリティロックの設定/解除に相当する機能選択コマンドを除けば、例えば、画面の上スクロールや下スクロールのように、機能選択コマンドに対応した機能を実現するための処理を連続的に実行することが可能であるが、最終的な機能選択コマンドの入力操作が確認されてから予め設定された時間たとえば15秒が経過すると、前記と同様にしてステップS9,ステップS10の処理が実行されてCPU9は初期の待機状態に復帰し、改めてダブルタップ操作による起動信号が検知されない限り、コマンド受付手段23の作動は禁止される。
この実施形態では、長文の送信メールや受信メールあるいはWebページ等の内容確認に必要とされる画面の上下スクロールやページの送り/戻しを想定し、これらの処理の場合には、最終的な機能選択コマンドの入力操作が確認されてからの経過時間が設定値に達するまでの間、機能選択コマンドの入力を許容するようにしているが、これらの処理の場合においても、コマンド受付手段23の起動後の経過時間のみに依存して機能選択コマンドの入力を禁止するようにしてもよい。
【0073】
一方、CPU9が前述のステップS2,ステップS3,ステップS18,ステップS19の処理を繰り返し実行して携帯電話1の制御に必要とされる通常の処理を行なっている間に、教示指令入力手段26として機能するキー操作部4のカスタム設定キーの操作がステップS18の判定処理で検出された場合、即ち、不揮発性メモリ16からなるコマンド記憶手段24に新たな機能選択コマンドを登録したり登録済みの機能選択コマンドの書き換えを行ったりするための教示操作実行コマンドがユーザの手で入力された場合においては、CPU9は、まず、機能選択コマンドの登録や書き換えを行なうための教示モードに入ったことを示すガイダンスメッセージ、例えば、「必要な機能を呼び出した上で教示操作を行って下さい」等のメッセージを表示した後(ステップS20)、タイマ15を起動して教示モードに入ってからの経過時間の計測を開始する(ステップS21)。
【0074】
次いで、機能選択コマンド登録手段27として機能するCPU9は、キー操作部4の選択キーや階層移動キー等に対して行われるユーザの操作に応じ、従来と同様、携帯電話1のキー操作に基く通常の手順でユーザの要求する機能つまり機能選択コマンドの登録対象として選択する機能を呼び出した後(ステップS22)、コマンド受付手段23の作動を許容する。そして、機能選択コマンド登録手段27として機能するCPU9は、筐体11に対するタップ操作,ピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作等で生じる振動や姿勢変化信号が加速度センサ19を介してコマンド受付手段23に入力されているか否か、要するに、機能選択コマンドの作成に必要とされる教示操作がユーザによって行われているか否かを判定し(ステップS23)、これらの信号が入力されていれば、予め決められた時間の範囲たとえば15秒の範囲で此れらの入力操作を受け付けて、タップ操作,ピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作等で生じる振動や姿勢変化信号の組み合わせを、ユーザが作成した機能選択コマンドとしてRAM10に一時記憶する(ステップS24,ステップS25)。
【0075】
そして、予め設定された時間が経過したことがステップS25の判定処理で検知されると、機能選択コマンド登録手段27として機能するCPU9は、前述のステップS22の処理で選択された機能が携帯電話1のモードに依存したものであるか否かを判定し(ステップS26)、モードに依存した機能でなければ、コマンド記憶手段24として機能する不揮発性メモリ16に記憶されている機能選択コマンドの一覧(図6参照)を検索し、現時点で選択されている機能すなわちステップS22の処理で選択された機能に対応する機能選択コマンドの欄に、ステップS24の処理で一時記憶された振動や姿勢変化信号の組み合わせ、要するに、ユーザによって新たに作成された機能選択コマンドの内容を上書きして登録する(ステップS28)。また、ステップS26の判定結果が真となり、今回の処理で選択された機能が携帯電話1のモードに依存したものであることが明らかとなった場合には、機能選択コマンド登録手段27として機能するCPU9は、現時点で携帯電話1が置かれているモードを検出した上で、コマンド記憶手段24として機能する不揮発性メモリ16に記憶されている機能選択コマンドの一覧(図6参照)を検索し、現時点で携帯電話1が置かれているモードと現時点で選択されている機能とに対応した機能選択コマンドの欄に、ステップS24の処理で一時記憶された振動や姿勢変化信号の組み合わせ、つまり、ユーザによって新たに作成された機能選択コマンドの内容を上書きして登録することになる(ステップS27)。
従って、例えば、ステップS22の処理においてモードに依存しないセキュリティロック設定の機能が呼び出され、ステップS23〜ステップS25の処理で筐体11に対するタップ−正ロール−負ロール−タップの操作が順に検知されたとすれば、このタップ−正ロール−負ロール−タップの信号の組み合わせが、これまで記憶されていたタップ−タップ−正ロール−負ロールの信号の組み合わせに代えて、セキュリティロックを設定するための機能選択コマンドとしてコマンド記憶手段24に登録されることになる(図6のアドレスi+1の欄を参照)。また、例えば、ステップS22の処理においてミュージックプレイヤーのモードに依存した音楽再生の機能が呼び出され、ステップS23〜ステップS25の処理で、筐体11に対するタップ−正ヨーの操作が順に検知されたとすれば、このタップ−正ヨーの信号の組み合わせが、これまで記憶されていたタップ−正ロールの信号の組み合わせに代えて、ミュージックプレイヤーモードで音楽を再生するための機能選択コマンドとしてコマンド記憶手段24に登録されることになる(図6のアドレスj+1の欄を参照)。
【0076】
このようにして機能選択コマンド登録手段27の処理によって機能選択コマンドの新規登録あるいは書き換え操作が行われると、次いで、登録結果表示手段28として機能するCPU9が、ステップS22の処理で選択された携帯電話1の機能とステップS24の処理で一時記憶された信号の組み合わせ即ち新たに登録された機能選択コマンドの内容とに基いて、携帯電話1の機能と機能選択コマンドとの対応関係を携帯電話1のディスプレイ5に可視表示する(ステップS29)。
例えば、ミュージックプレイヤーモードで音楽を再生する機能にタップ−正ヨーの操作からなる機能選択コマンドを対応させて記憶させた場合では、ミュージックプレイヤーから音符が流れ出すようなアイコンに対応させて、携帯電話1が震えるアイコンと図1(b)中の携帯電話1がZ軸の周りで正方向に所定角度ヨーイングした状態を示すアイコンとを此の順で並べて表示するといったことが可能である。アイコン表示に代え、アニメーション表示を利用して機能選択コマンドに相当する筐体11の振動および姿勢変化を時系列的に表示するようにしてもよい。
【0077】
ユーザは、ディスプレイ5に表示されたアイコンやアニメーションを確認することで、自分が行なったと思う操作が機能選択コマンドとして的確に登録されているか否かを判断し、自分が行なったと思う操作がアイコンやアニメーションの表示によって的確に再現されていれば、キー操作部4の教示終了キーを操作して教示操作を終え、また、自分が行なったと思う操作がアイコンやアニメーションによって再現されていなければ、キー操作部4のパラメータ調整キーを操作する。
【0078】
これらの教示終了キーやパラメータ調整キーの操作はステップS30の判定処理でCPU9によって検知される。
【0079】
教示終了キーの操作が検知された場合には、ユーザが思う通りの機能選択コマンドが適切に登録されたことを意味するので、CPU9は、このまま初期の待機状態へと復帰し、携帯電話1の制御に関わる通常の処理を再開する。
【0080】
また、ステップS30の判定処理によってパラメータ調整キーの操作が検知された場合には、ユーザが思う通りの機能選択コマンドが適切に登録されていないこと、具体的には、ユーザが筐体11に対して行うタップ操作の強弱やユーザが筐体11を姿勢変化させる際の勢い(加速度)や姿勢の変化量と加速度センサ19の検出特性等が上手くマッチングしていないことを意味するので、CPU9は、改めて、加速度センサ19の検出特性等の微調整に関わる許容値再設定処理を実行する(ステップS31)。
【0081】
この許容値再設定処理は、例えば、タップ操作の有無の判断基準とする振動の大きさの閾値やピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作等の有無の判断基準とする姿勢変化量の閾値の再設定に関わる処理である。
指や手首の弱いユーザによって行われるタップ操作を適切に認識できるようにするためには、タップ操作の有無の判断基準とする閾値を小さめに設定し、また、外乱による僅かな振動がタップ操作として誤認識されてしまうような場合においては、この閾値を大きめに設定し直すとよい。
また、指や手首に障害があってリスト動作の自由度が低いユーザの場合には、ピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作等の有無の判断基準とする姿勢変化量の閾値を小さめに設定して筐体11の僅かな姿勢変化を検知できるようにし、これとは逆に、指や手首の動作に関する抑制が不十分なユーザの場合では、姿勢変化量の閾値を大きめに設定し直すことにより、チック等による外乱で生じる筐体11の姿勢変化が不用意にピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作等として誤認識されないようにすることが望ましい。
このような設定操作は、例えば、タップ操作,ピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作といった操作態様毎の閾値を大,中,小といったふうに何段階かに分けて、ディスプレイ5を利用してユーザに提示し、何れかの値をユーザに選択させて不揮発性メモリ16のパラメータ記憶領域に再設定するといった容易な手順で実施可能である。
【0082】
閾値のパラメータの再設定操作を行った場合には、ユーザは、前記と同様にして再びキー操作部4のカスタム設定キーを操作し、機能選択コマンドの登録や書き換えを行なうためのステップS20〜ステップS29の処理を再実行した上で、ステップS29の処理で表示されるアイコン表示やアニメーション表示を参照し、自分が行なった操作が機能選択コマンドとして的確に登録されているか否かを判断する。
このようなリトライ操作を必要に応じて繰り返し実行することで、タップ操作の有無の判断基準とする振動の大きさの閾値やピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作等の有無の判断基準とする姿勢変化量の閾値の最適化が可能であり、それ以降に行われる機能選択コマンドの教示操作においては、煩わしい再設定操作やリトライ操作を行うことなく、ユーザが考えた通りの機能選択コマンドを容易に作成して不揮発性メモリ16からなるコマンド記憶手段24に登録することができるようになる。
【0083】
なお、このようにして閾値が最適化された状況下においてもユーザ自身が思い描いたような機能選択コマンドが作成されなかった場合には、単に、ユーザの不注意による操作ミス等が失敗の原因である可能性が高いので、敢えて、閾値最適化のためにステップS31の処理を再実行する必要はない。このような場合は、ステップS29の処理でディスプレイ5に表示されたアイコンやアニメーションを確認し、思うような機能選択コマンドが登録されなかったことが判った時点で直ちに教示終了キーを操作し、CPU9の処理動作を初期の待機状態に復帰させ、前記と同様にしてキー操作部4のカスタム設定キーを操作し、機能選択コマンドの登録や書き換えを行なうためのステップS20〜ステップS29の処理のみを再実行すればよい。これにより、誤操作による機能選択コマンドの登録ミスを事前に察知して適切な再設定行為を行うことができる。
【0084】
コマンド受付手段23の作動を許容するための起動信号としては、ダブルタップ操作の他にも、姿勢変化信号の組み合わせ等を利用することが可能であるが、この実施形態では、特に、起動信号としてダブルタップ操作で生じる振動信号の組み合わせを利用することで、コマンド受付手段23の不用意な起動を防止している。
携帯電話1の持ち運び中には筐体11の振動や揺れ或いは姿勢変化等が様々な態様で発生するが、通常の持ち運び動作では専ら揺れや姿勢変化が生じることが殆どであり、筐体11を叩くような現象は殆ど発生しないから、筐体11に対して行われるタップ操作の際に加速度センサ19で検知される振動信号の組み合わせを起動信号として利用することにより、姿勢変化信号の組み合わせのみを起動信号として利用した場合と比べ、より高い確率でコマンド受付手段23の不用意な作動を防止することが可能となる。
【0085】
コマンド受付手段23の作動が許容されるのは起動信号が加速度センサ19によって検知された場合だけであるから、仮に、携帯電話1がポケットやバッグに納められて持ち運ばれる間に加速度センサ19が筐体11の振動や揺れ或いは姿勢変化等を検知して偶発的に機能選択コマンドと同等の信号が出力された場合であっても、この信号がコマンド受付手段23に機能選択コマンドとして読み込まれる心配はない。
なお、極めて厳密に言えば、携帯電話1がポケットやバッグに納められて持ち運ばれる間に加速度センサ19がダブルタップ操作と同等の衝撃を検知するという可能性もあるが、仮に、このような状況下でコマンド受付手段23の作動が許容されたとしても、コマンド受付手段23が加速度センサ19からの信号を機能選択コマンドとして受け付ける時間には例えば15秒といった制限があるので、更に、この短い時間の範囲内に何れかの機能選択コマンドと同等の振動や揺れ或いは姿勢変化等が偶然に発生して此の振動や揺れ或いは姿勢変化等が何れかの機能選択コマンドとしてコマンド受付手段23に誤認識されるといった可能性は殆どない。コマンド記憶手段24に多数の機能選択コマンドが登録されている状況下では、何れかの機能選択コマンドと同等の振動や揺れ或いは姿勢変化等が偶然に生じる可能性は確率的に或る程度は高くなるが、実際には、この確率に起動信号となるダブルタップ操作と同等の衝撃の発生確率を乗じた直積が誤動作の発生確率であるから、その確率は極めて低いものであって、携帯電話1の機能の誤作動は、ほぼ確実に防止されと考えてよい。
【0086】
また、機能選択コマンドは、任意回数のタップ操作,正負のピッチング操作,正負のローリング操作,正負のヨーイング操作を任意に組み合わせ且つ順列を変えて構成することができるので、携帯電話1の機能が如何に多かろうとも、必ず、一対一の対応関係で機能選択コマンドと携帯電話1の機能とを対応させてコマンド記憶手段24に登録することが可能である。無論、ユーザが全ての機能選択コマンドを覚えられるかどうかは別の問題であるが、少なくとも理論上は、これらの機能選択コマンドを駆使することで、キー操作部4に全く手を触れることなく携帯電話1の全ての機能を使いこなすことができる。
【0087】
なお、この実施形態では、タップ操作の有無,正負のピッチング操作の有無,正負のローリング操作の有無,正負のヨーイング操作の有無からなる任意の組み合わせ及び順列を機能選択コマンドとして判定し、単に、操作の時系列を追ってユーザが入力した機能選択コマンドと予めコマンド記憶手段24に記憶されている機能選択コマンドとの一致不一致を判定することでユーザが所望する機能を動作指令手段25によって読み出させるようにしているが、更に、機能選択コマンドを構成する各操作の所要時間をタイマ15を利用して測定し、教示操作の時点でタップ操作や各種の姿勢変化操作に対応させて当該所要時間をコマンド記憶手段24に記憶させ、ユーザが入力した機能選択コマンドとコマンド記憶手段24に記憶されている機能選択コマンドとの一致不一致の判定に際し、各操作の所要時間を含めて一致不一致の判定基準としてもよい。
例えば、タップ−正ロールの信号の組み合わせをミュージックプレイヤーモードにおける音楽再生機能に対応させてコマンド記憶手段24に記憶させる代わりに、タップ−正ロール(ロール所要時間0.2秒)といったふうにコマンド記憶手段24に記憶させるようにした場合では、ユーザによるタップ−正ロールの操作が改めて検知された場合であっても、その時の正ロールの所要時間が例えば0.2秒±10%の範囲にない場合には、音楽再生機能に対応した機能選択コマンドの入力が適切に行なわれなかったものとして、音楽再生機能の呼び出しを非実行にするといったことが可能である。
ここでは時間ずれに関する許容範囲を仮に±10パーセントとして説明したが、この許容範囲は、前述したタップ操作の有無の判断基準とする振動の大きさの閾値やピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作等の有無の判断基準とする姿勢変化量の閾値の場合と同様、ユーザからの要求に応じてパラメータを変更することで調整可能である。
【0088】
携帯電話1の形状は一般に細長いので、筐体11のヨーイング操作のためには比較的に広い空間が必要となるが、タップ操作,正負のピッチング操作,正負のローリング操作のためには広い空間は不要である。従って、ユーザが携帯電話1のミュージックプレイヤーを頻繁に利用するような場合にあっては、タップ操作,正負のピッチング操作,正負のローリング操作のみを組み合わせてミュージックプレイヤーの操作に必要とされる機能を読み出すための機能選択コマンドを作成し、これをコマンド記憶手段24に登録するようにすることで、例えば、携帯電話1をポケットに納めたままの状態でミュージックプレイヤーの全ての機能を使いこなすといったことも可能である。
【0089】
また、従来の携帯電話においてキー操作部4に割り当てられていた機能、例えば、選択キーや階層移動キーの機能を機能選択コマンドに割り振るようにすれば、キー操作部4に配置するキーの数自体を削減したり、携帯電話1を更に小型化するといったことも可能である。
この小型化は単なる小型化ではなく、タップ操作,ピッチング操作,ローリング操作,ヨーイング操作の組み合わせからなる機能選択コマンド、つまり、携帯電話1の筐体11を直接的に叩いたり筐体11を持って姿勢を変化させたりすることで生成されるコマンドを利用したものであるから、携帯電話1の小型化によって一般的に生じる弊害、つまり、キーの過剰な小型化による操作性の悪化といった問題を生じる心配がない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明のコマンド入力方法を適用した携帯端末用コマンド入力装置を携帯端末の一種である携帯電話に実装した場合の一実施形態について外観の概略を示した斜視図であり、図1(a)は携帯電話を開いた状態で示した斜視図、また、図1(b)は携帯電話を閉じた状態で示した斜視図である。
【図2】同実施形態における携帯電話のハードウェア構成の概略を示したブロック図である。
【図3】直交3軸方向に対する加速度センサの検出機能を簡略化して示した概念図である。
【図4】直交3軸の各軸周りに対する加速度センサの検出機能を簡略化して示した概念図である。
【図5】同実施形態の携帯電話に実装された携帯端末用コマンド入力装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図6】コマンド記憶手段に記憶された機能選択コマンドの一例を示した概念図である。
【図7】同実施形態の携帯電話と携帯端末用コマンド入力装置を制御するCPUの処理動作を簡略化して示したフローチャートである。
【図8】同実施形態の携帯電話と携帯端末用コマンド入力装置を制御するCPUの処理動作を簡略化して示したフローチャートの続きである。
【符号の説明】
【0091】
1 携帯電話(携帯端末)
2 マイク
3 スピーカ
4 キー操作部
5 ディスプレイ
6 アンテナ
7 バックライト
8 ROM
9 CPU
10 RAM
11 筐体
12 主筐体
13 副筐体
14 表示制御部
15 タイマ
16 不揮発性メモリ
17 音声処理部
18 送受信部
19 加速度センサ
20 ヒンジ
21 携帯端末用コマンド入力装置
22 制御部
23 コマンド受付手段
24 コマンド記憶手段
25 動作指令手段
26 教示指令入力手段(カスタム設定キー)
27 機能選択コマンド登録手段
28 登録結果表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末の筐体に配備された加速度センサと、前記加速度センサからの信号出力に基いて前記携帯端末の動作を制御する制御部とを備えた携帯端末用コマンド入力装置であって、
前記加速度センサが予め決められた起動信号を検知した場合に限り、予め設定された時間の範囲で前記加速度センサからの信号を機能選択コマンドとして受け付けるコマンド受付手段と、
前記携帯端末に実装された各種の機能と其の実行を指示する機能選択コマンドとの関係を対応させて記憶したコマンド記憶手段と、
前記コマンド受付手段によって受け付けられた機能選択コマンドに対応する携帯端末の機能を前記コマンド記憶手段から求めて当該機能の実行を前記携帯端末に指示する動作指令手段とを前記制御部に設けたことを特徴とする携帯端末用コマンド入力装置。
【請求項2】
前記起動信号が、前記筐体に対して行われるタップ操作の際に前記加速度センサで検知される振動信号もしくは該振動信号の組み合わせによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の携帯端末用コマンド入力装置。
【請求項3】
前記機能選択コマンドが、前記筐体の姿勢変化の際に前記加速度センサで検知される姿勢変化信号もしくは該姿勢変化信号の組み合わせによって構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の携帯端末用コマンド入力装置。
【請求項4】
前記機能選択コマンドが、前記筐体に対して行われるタップ操作の際に前記加速度センサで検知される振動信号もしくは該振動信号の組み合わせによって構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の携帯端末用コマンド入力装置。
【請求項5】
前記機能選択コマンドが、前記筐体に対して行われるタップ操作の際に前記加速度センサで検知される振動信号と前記筐体の姿勢変化の際に前記加速度センサで検知される姿勢変化信号の組み合わせによって構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の携帯端末用コマンド入力装置。
【請求項6】
携帯端末に実装された各種の機能と其の実行を指示する機能選択コマンドとの関係を前記コマンド記憶手段に登録するための教示操作実行コマンドを前記制御部に入力するための教示指令入力手段と、前記教示操作実行コマンドを検知して機能選択コマンドの登録対象とする機能の選択と前記コマンド受付手段の作動を許容し、該コマンド受付手段によって受け付けられた機能選択コマンドを当該時点で選択されている携帯端末の機能に対応させて前記コマンド記憶手段に記憶させる機能選択コマンド登録手段とを前記制御部に備えたことを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5記載の携帯端末用コマンド入力装置。
【請求項7】
前記機能選択コマンド登録手段の作動後、前記コマンド記憶手段に新たに記憶された機能選択コマンドと携帯端末の機能との対応関係を携帯端末のディスプレイに可視表示する登録結果表示手段を前記制御部に備えたことを特徴とする請求項6記載の携帯端末用コマンド入力装置。
【請求項8】
前記登録結果表示手段は、前記機能選択コマンドに相当する前記筐体の振動および姿勢変化をアニメーションもしくはアイコンによって表示するように構成されていることを特徴とする請求項7記載の携帯端末用コマンド入力装置。
【請求項9】
携帯端末の筐体に配備された加速度センサによって検知される信号に基いて携帯端末の動作を制御するようにした携帯端末用コマンド入力方法であって、
前記加速度センサによって検知可能な振動信号や姿勢変化信号の組み合わせからなる起動信号、および、前記加速度センサによって検知可能な振動信号や姿勢変化信号の組み合わせからなる機能選択コマンドと前記携帯端末に実装された各種の機能との対応関係を前記携帯端末の制御部に予め記憶させておき、
前記加速度センサによって前記起動信号が検知された場合に限り、予め設定された時間の範囲で、前記加速度センサによって検知される振動信号や姿勢変化信号を前記制御部が機能選択コマンドとして読み込み、
前記制御部が、前記加速度センサによって検知された機能選択コマンドに対応する携帯端末の機能を求め、当該機能の実行を携帯端末に指示するようにしたことを特徴とする携帯端末用コマンド入力方法。
【請求項10】
前記起動信号が、前記筐体に対して行われるタップ操作の際に前記加速度センサで検知される振動信号もしくは該振動信号の組み合わせによって構成されていることを特徴とする請求項9記載の携帯端末用コマンド入力方法。
【請求項11】
前記機能選択コマンドが、前記筐体の姿勢変化の際に前記加速度センサで検知される姿勢変化信号もしくは該姿勢変化信号の組み合わせによって構成されていることを特徴とする請求項9または請求項10記載の携帯端末用コマンド入力方法。
【請求項12】
前記機能選択コマンドが、前記筐体に対して行われるタップ操作の際に前記加速度センサで検知される振動信号もしくは該振動信号の組み合わせによって構成されていることを特徴とする請求項9または請求項10記載の携帯端末用コマンド入力方法。
【請求項13】
前記機能選択コマンドが、前記筐体に対して行われるタップ操作の際に前記加速度センサで検知される振動信号と前記筐体の姿勢変化の際に前記加速度センサで検知される姿勢変化信号の組み合わせによって構成されていることを特徴とする請求項9または請求項10記載の携帯端末用コマンド入力方法。
【請求項14】
携帯端末に実装された各種の機能に対応する機能選択コマンドとなる振動信号や姿勢変化信号の組み合わせを前記筐体に対するユーザのタップ操作や姿勢変化操作により前記加速度センサを介して前記制御部に読み込ませる教示操作を行うことによって、機能選択コマンドと前記携帯端末に実装された各種の機能との対応関係を前記携帯端末の制御部に記憶させるようにしたことを特徴とする請求項9,請求項10,請求項11,請求項12または請求項13記載の携帯端末用コマンド入力方法。
【請求項15】
前記教示操作によって前記制御部に新たに記憶された機能選択コマンドと携帯端末の機能との対応関係を、前記制御部の処理で携帯端末のディスプレイに可視表示するようにしたことを特徴とする請求項14記載の携帯端末用コマンド入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−176641(P2008−176641A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10511(P2007−10511)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】