説明

携帯通信端末

【課題】GPS測位機能に影響を与えることなく、システムタイムを更新できる携帯通信端末を提供すること。
【解決手段】携帯電話機1は、基地局から時刻データを受信する通信部40と、受信された時刻データに基づいて、システムタイムを更新する更新部32と、更新される前のシステムタイムを保持する記憶部70と、更新後のシステムタイム又は更新前のシステムタイムを用いてGPS測位処理を行う測位部33と、GPS測位処理の進行状況を監視し、予め設定されている所定の条件に基づいて、システムタイムを変更可能及び変更不可能なタイミングを検知する測位監視部34と、システムタイムを変更不可能なタイミングと検知された場合に、測位部33が更新前のシステムタイムを用い、システムタイムを変更可能なタイミングと検知された場合に、測位部33が更新後のシステムタイムを用いるように切り替える切替部35と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS(Global Positioning System)による位置測位機能を有する携帯通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯通信端末の現在地情報を取得するために、GPSによる測位サービスが提供されている。このサービスでは、携帯通信端末は、GPS衛星の信号と同期するための時刻情報(システムタイム)を保持している必要がある。
【0003】
ところで、基地局と通信する携帯通信端末は、この基地局と同期する際に、携帯通信端末自身が有する時計よりも高精度な、基地局が保持している時刻情報を取得できる。そして、携帯通信端末では、この取得した時刻情報を利用してシステムタイムを更新し、GPS衛星の信号と同期を図ることができる。また、例えば、GPS衛星の保持している時刻を推定し、この時刻情報を随時更新する方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−086320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、GPSによる測位処理中は、GPS衛星の信号と同期するためのシステムタイムがスムーズに変化し、角や跳びがないことが求められる。すなわち、システムタイムが更新されると、更新のタイミングによっては、適切な測位処理が実行されず、携帯通信端末は、測位時間が長くなったり、測位に失敗したり、測位精度が低下したりする場合があった。
【0006】
また、携帯通信端末のシステムタイムは、GPS測位のアプリケーションに限らず、他のアプリケーションにおいても参照される可能性があるため、適宜、更新されることが望ましい。
【0007】
本発明は、GPS測位機能に影響を与えることなく、システムタイムを更新できる携帯通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る携帯通信端末は、基地局から時刻データを受信する受信部と、前記受信部により受信された前記時刻データに基づいて、システムタイムを更新する更新部と、前記更新部により更新される前のシステムタイムを保持する記憶部と、前記更新部により更新された更新後のシステムタイム、又は前記記憶部により保持されている更新前のシステムタイムを用いてGPS測位処理を行う測位部と、前記GPS測位処理の進行状況を監視し、予め設定されている所定の条件に基づいて、システムタイムを変更可能及び変更不可能なタイミングを検知する測位監視部と、前記測位監視部により前記システムタイムを変更不可能なタイミングと検知された場合に、前記測位部が前記記憶部により保持されている更新前のシステムタイムを用い、前記システムタイムを変更可能なタイミングと検知された場合に、前記測位部が前記更新後のシステムタイムを用いるように切り替える切替部と、を備える。
【0009】
また、前記切替部は、前記測位部が前記更新後のシステムタイムを用いている場合、前記記憶部により保持されている前記更新前のシステムタイムを破棄することが好ましい。
【0010】
また、前記測位監視部は、前記GPS測位処理におけるGPS衛星捕捉補助情報の取得、GPS衛星信号の同期、及びGPS衛星からの距離測定を行っている区間の少なくともいずれかを、前記システムタイムを変更不可能なタイミングとすることが好ましい。
【0011】
また、前記測位監視部は、前記測位部が前記GPS測位処理を繰り返し行っている場合、1回の測位処理と次の測位処理との間の区間を、さらに前記システムタイムを変更不可能なタイミングと検知することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る携帯通信端末は、前記受信部により受信された前記時刻データを監視し、当該時刻データが示す時刻と前記システムタイムとの相違を検知する時刻監視部をさらに備え、前記更新部は、前記時刻監視部により前記時刻と前記システムタイムとの相違が検知された場合に、当該システムタイムを更新することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、GPS測位機能に影響を与えることなく、システムタイムを更新できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯電話機の機能を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るAssistedモードにおける測位処理を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の実施形態に係るBasedモードにおける測位処理を示すシーケンス図である。
【図5】本発明の実施形態に係るStand aloneモードにおける測位処理を示すシーケンス図である。
【図6】本発明の実施形態に係るシステムタイムの切り替えタイミングの一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るシステムタイム監視処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係るGPS測位監視処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係るシステムタイム更新処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。なお、本実施形態では、携帯通信端末の一例として、携帯電話機1を説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る携帯電話機1(携帯通信端末)の外観斜視図である。
携帯電話機1は、操作部側筐体2と、表示部側筐体3と、を備えて構成される。操作部側筐体2は、表面部10に、操作部11と、携帯電話機1の使用者が通話時や音声認識アプリケーションを利用時に発した音声が入力されるマイク12と、を備えて構成される。操作部11は、各種設定機能や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、電話番号の数字やメールの文字等を入力するための入力操作ボタン14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作ボタン15と、から構成されている。
【0017】
また、表示部側筐体3は、表面部20に、各種情報を表示するための表示部21と、通話の相手側の音声を出力するレシーバ22と、を備えて構成されている。
【0018】
また、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、携帯電話機1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体2と表示部側筐体3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが互いに開いた状態(開放状態)にしたり、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを折り畳んだ状態(折畳み状態)にしたりできる。
【0019】
図2は、本実施形態に係る携帯電話機1の機能を示すブロック図である。
携帯電話機1は、操作部11と、表示部21と、制御部30と、通信部40(受信部)と、メインアンテナ41と、GPS通信部50と、GPSアンテナ51と、音声制御部60と、記憶部70と、を備える。
【0020】
制御部30は、携帯電話機1の全体を制御しており、例えば、表示部21、通信部40、GPS通信部50、音声制御部60等に対して所定の制御を行う。また、制御部30は、操作部11等から入力を受け付けて、各種処理を実行する。そして、制御部30は、処理実行の際には、記憶部70を制御し、各種プログラム及びデータの読み出し、並びにデータの書き込みを行う。
【0021】
さらに、制御部30は、時刻監視部31と、更新部32と、測位部33と、測位監視部34と、切替部35とを備える。そして、制御部30は、携帯電話機1のユーザから現在位置の測位要求を受け付けると、基地局との通信を伴った所定の処理に基づいて、取得した位置情報を出力する。なお、制御部30が備える各部の機能は後述する。
【0022】
通信部40は、所定の周波数帯(例えば、2GHz帯や800MHz帯等)で外部装置(基地局)と通信を行う。そして、通信部40は、メインアンテナ41より受信した信号を復調処理し、処理後の信号を制御部30に供給し、また、制御部30から供給された信号を変調処理し、メインアンテナ41から外部装置に送信する。
【0023】
特に、本実施形態において、通信部40は、音声通話やメール等に係る信号の送受信に加えて、基地局からネットワークを介して測位サーバと接続し、衛星サーチ補助情報(GPS衛星捕捉補助情報)や、測位結果等を取得する。なお、詳細は後述するが、衛星の捕捉状況に応じて、制御部30にて実行される測位の方法は異なり、送受信されるデータの内容も異なる。
【0024】
また、本実施形態において、通信部40は、携帯電話機1のシステムタイムを調整するために、基地局が保持している高精度なシステムタイム(時刻データ)を受信する。
【0025】
GPS通信部50は、GPSアンテナ51により受信したGPS衛星からの所定周波数帯の電波信号を復調処理し、処理後の信号を制御部30に供給する。なお、GPS通信部50及びGPSアンテナ51の機能は、それぞれ、通信部40及びメインアンテナ41が担ってもよい。
【0026】
音声制御部60は、制御部30の制御に従って、通信部40から供給された信号に対して所定の音声処理を行い、処理後の信号をレシーバ22に出力する。レシーバ22は、音声制御部60から供給された信号を外部に出力する。なお、この信号は、レシーバ22に代えて、又はレシーバ22と共に、スピーカ(図示せず)から出力されるとしてもよい。
【0027】
また、音声制御部60は、制御部30の制御に従って、マイク12から入力された信号を処理し、処理後の信号を通信部40に出力する。通信部40は、音声制御部60から供給された信号に所定の処理を行い、処理後の信号をメインアンテナ41より出力する。
【0028】
記憶部70は、例えば、ワーキングメモリを含み、制御部30による演算処理に利用される。また、本実施形態では、後述の処理を実行するプログラムや各種データベース等が記憶される。なお、記憶部70は、着脱可能な外部メモリを兼ねていてもよい。
【0029】
ここで、携帯電話機1におけるGPS測位の種類について説明する。測位には、Assistedモード、Basedモード及びStand aloneモードが存在する。
【0030】
Assistedモードでは、携帯電話機1は、測位サーバから衛星サーチ補助情報(AA(Acquisition Assistance)データ)を受信し、GPS衛星をサーチする。サーチ結果は測位サーバに戻され、測位サーバにて位置計算が行われる。携帯電話機1は、位置計算の結果を受信し、測位結果として出力する。
【0031】
Basedモードでは、携帯電話機1は、基地局から衛星情報(Ephemerisデータ及びAlmanacデータ)を受信する。携帯電話機1は、受信した衛星情報に基づいてAAデータを作成した後、衛星をサーチする。さらに、携帯電話機1は、サーチ結果を測位サーバに送信することなく、自ら位置計算を行う。したがって、Basedモードは、携帯電話機1が衛星を捕捉できない状態では測位ができない。
【0032】
Stand aloneモードでは、携帯電話機1は、測位のために基地局と通信を行わない。すなわち、携帯電話機1は、GPS衛星の信号を解読して、Ephemerisデータ及びAlmanacデータを自ら取得する。
【0033】
なお、Basedモード及びStand aloneモードでは、携帯電話機1は、前回の測位で取得したEphemerisデータ及びAlmanacデータと測位結果とを、次回の測位に利用する。
【0034】
次に、GPS測位処理の各ステップについて説明する。GPS測位処理は、「AAデータ取得(作成)」、「GPS衛星サーチ」、「衛星信号同期」、「擬似距離測定」、「位置計算」及び「測位情報保存」の各ステップからなる。
【0035】
AAデータ取得(作成)ステップは、Assistedモードと、Basedモード又はStand aloneモードとで異なる。
【0036】
まず、Assistedモードの場合、携帯電話機1は、基地局で作成されたAAデータを通信により取得する。このAAデータは、GPS衛星が放送しているEphemerisデータと基地局のシステムタイム(時刻データ)とから、現在基地局周辺で捕捉可能なGPS衛星とその位置とを計算したものである。したがって、AAデータを作成するのに利用された基地局のシステムタイムと、携帯電話機1のシステムタイムとにずれがある場合、測位精度の低下が懸念される。すなわち、AAデータの受信中に携帯電話機1のシステムタイムが更新されると、AAデータは古いシステムタイムだが、携帯電話機1は新しいシステムタイムを保持することとなるため、このステップでは、システムタイムの変更は不可とする。
【0037】
次に、Basedモードの場合、携帯電話機1は、Ephemerisデータ及びAlmanacデータを通信にて取得して、AAデータを作成する。この場合も、AAデータの作成からGPS衛星のサーチ開始までの間にシステムタイムがずれてしまうと、AAデータの正確性が劣化してしまうため、システムタイムの変更は不可とする。なお、Stand aloneモードの場合は、Ephemerisデータ及びAlmanacデータをGPS衛星の信号を解読して取得する。
【0038】
GPS衛星サーチステップでは、携帯電話機1は、AAデータ、現在時刻(システムタイム)及び現在位置の概略に基づいて、可視衛星を決定し、GPS衛星の信号をサーチする。一旦サーチが開始されると、所定周期(1m秒)のカウントが可能であれば、システムタイムを参照する必要がない。したがって、このステップでは、システムタイムの変更が可能である。
【0039】
衛星信号同期ステップでは、携帯電話機1は、GPS衛星サーチステップにて捕捉した信号と同期して航法メッセージを取得する。携帯電話機1は、複数のGPS衛星からの信号と同期し、次の擬似距離測定ステップを実行するまで同期をし続けている必要があるが、この信号同期には時刻情報が使用されるため、システムタイムが変更されることにより同期できなくなるおそれがある。したがって、このステップでは、システムタイムの変更は不可とする。
【0040】
擬似距離測定ステップでは、携帯電話機1は、自機と各GPS衛星との擬似距離を測定する。擬似距離は、GPS衛星から信号が発信された時刻と携帯電話機1が受信した時刻との差により求められる。このとき、携帯電話機1のシステムタイムが変更されると、正確な距離測定ができないため、測位の失敗や測位精度の低下が引き起こされる。したがって、このステップでは、システムタイムの変更は不可とする。
【0041】
位置計算ステップでは、携帯電話機1(Assistedモードの場合は測位サーバ)は、各GPS衛星との擬似距離に基づいて、携帯電話機1の現在地を計算する。計算には、時刻情報は必要ないので、このステップでは、システムタイムの変更が可能である。
【0042】
Basedモード又はStand aloneモードの場合、測位情報保存ステップでは、携帯電話機1は、測位時間の短縮や測位精度の向上のため、前回の測位動作で用いたデータや測位結果を、次の測位に利用できるように保存する。このとき、システムタイムが変更されても測位動作に問題はないが、古いタイムスタンプのデータでは、次回の測位時に正しく利用できない場合がある。したがって、このステップでは、システムタイムの更新は行わないことが望ましい。
【0043】
以上のことから、GPS測位処理の実行中に、システムタイムの更新が禁止されるのは、AAデータ取得(作成)ステップ、衛星同期ステップ及び擬似距離測定ステップである。測位モード毎にシステムタイムが変更不可となるタイミングを、図3〜図4に示す。
【0044】
図3は、本実施形態に係るAssistedモードにおける測位処理を示すシーケンス図である。
携帯電話機1は、基地局の位置情報に基づいて、概略の位置を測位(基地局測位1)した後、AAデータを取得(AAデータ要求、AAデータ送信)し、GPS衛星サーチ、衛星信号同期、擬似距離測定の各ステップを実行する。続いて、携帯電話機1は、基地局測位2の後、基地局に位置計算結果を要求し、測位サーバにて計算された位置計算結果を基地局から受信する。これらのステップのうち、システムタイム変更の影響があり、変更不可とされるのは、AAデータ取得、衛星信号同期及び擬似距離測定の各ステップである。
【0045】
図4は、本実施形態に係るBasedモードにおける測位処理を示すシーケンス図である。
携帯電話機1は、基地局測位の後、Ephemerisデータ及びAlmanacデータを取得すると、AAデータ作成、GPS衛星サーチ、衛星信号同期、擬似距離測定、位置計算及び測位情報保存の一連のステップを繰り返し実行する。これらのステップのうち、システムタイム変更の影響があり、変更不可とされるのは、AAデータ作成、衛星信号同期及び擬似距離測定の各ステップである。
【0046】
図5は、本実施形態に係るStand aloneモードにおける測位処理を示すシーケンス図である。
携帯電話機1は、AAデータ作成、GPS衛星サーチ、衛星信号同期、擬似距離測定、位置計算及び測位情報保存の一連のステップを繰り返し実行する。これらのステップのうち、システムタイム変更の影響があり、変更不可とされるのは、AAデータ作成、衛星信号同期及び擬似距離測定の各ステップである。
【0047】
図2に戻り、本実施形態に係る制御部30の各部の機能を詳述する。
時刻監視部31は、通信部40により受信された基地局のシステムタイム(時刻データ)を監視し、このシステムタイムと携帯電話機1が保持しているシステムタイムとの相違を検知する。
【0048】
更新部32は、時刻監視部31により基地局のシステムタイムと携帯電話機1のシステムタイムとの相違が検知された場合に、基地局のシステムタイムに基づいて、携帯電話機1のシステムタイムを更新する。
また、本実施形態では、更新部32により携帯電話機1のシステムタイムが更新されるのに伴って、更新部32により更新される前のシステムタイムを、擬似システムタイムとして、記憶部70に保持する。
【0049】
測位部33は、更新部32により更新された更新後のシステムタイム、又は記憶部70により保持されている更新前のシステムタイムを用いてGPS測位処理を行う。
【0050】
測位監視部34は、GPS測位処理の進行状況、すなわち前述のいずれのステップを実行中であるかを監視し、予め設定されている所定の条件に基づいて、システムタイムを変更可能及び変更不可能なタイミングを検知する。具体的には、測位監視部34は、AAデータ取得(作成)、衛星信号同期及び擬似距離測定の各ステップを実行中は、システムタイムを変更不可であると検知する。
【0051】
また、測位監視部34は、測位部33がGPS測位処理を繰り返し行っている場合、1回の測位処理と次の測位処理との間の区間を、さらにシステムタイムを変更不可能なタイミングと検知する。
【0052】
切替部35は、測位監視部34によりシステムタイムを変更不可能なタイミングと検知された場合に、測位部33が記憶部70により保持されている更新前のシステムタイムを用い、システムタイムを変更可能なタイミングと検知された場合に、測位部33が更新後のシステムタイムを用いるように切り替える。
また、切替部35は、測位部33が更新後のシステムタイムを用いている場合、記憶部70により保持されている更新前のシステムタイムを破棄する。
【0053】
図6は、本実施形態に係るシステムタイムの切り替えタイミングの一例を示す図である。この例では、測位部33はBasedモード又はStand aloneモードにてGPS測位処理を実行している。
【0054】
1回目のGPS測位処理が終了し、測位情報の保存が行われた後、時刻監視部31によりシステムタイムの変化が検知されたとき、図6(a)の場合は、システムタイムが変更不可と検知されておらず、新しいシステムタイムに切り替わっている。この場合、1回目のGPS測位処理の測位情報保存ステップにおいて、古いシステムタイムのタイムスタンプが割り当てられている。すると、2回目のGPS測位処理のAAデータ取得(作成)ステップにおいて、前回の測位情報の古いシステムタイムと現在の時刻情報である新しいシステムタイムとが参照されて、整合性がとれなくなる。
【0055】
そこで、測位監視部34は、測位情報保存から次の測位処理の開始までの期間も、システムタイムを更新不可と検知し、システムタイムの切り替えを禁止する。具体的には、図6(b)のように、システムタイムの変化が検知された後、擬似システムタイム(古いシステムタイム)が利用され、次回の測位処理において、AAデータ取得(作成)ステップが終了した時点で、新しいシステムタイムに切り替えられる。
【0056】
図7は、本実施形態に係る時刻監視部31によるシステムタイム監視処理を示すフローチャートである。
ステップS1において、時刻監視部31は、通信部40により基地局のシステムタイムを取得する。
【0057】
ステップS2において、時刻監視部31は、携帯電話機1のシステムタイムと基地局のシステムタイムとが相違するか否かを判定する。制御部30は、この判定がYESの場合、処理をステップS3に移し、判定がNOの場合、処理をステップS4に移す。
【0058】
ステップS3において、時刻監視部31は、システムタイム変更のトリガーとして、制御部30にシステムタイムが変化したことを通知する。
【0059】
ステップS4において、時刻監視部31は、本処理の終了要求を受け付けたか否かを判定する。制御部30は、この判定がYESの場合、処理を終了し、判定がNOの場合、処理をステップS1に戻す。
【0060】
図8は、本実施形態に係る測位監視部34によるGPS測位監視処理を示すフローチャートである。
ステップS11において、測位監視部34は、位置測位を要求する起動中の機能・アプリケーションの種類を判断する。
【0061】
ステップS12において、測位監視部34は、ステップS11において判断した機能・アプリケーションの種類に応じて、システムタイムの変更許可タイミングを決定する。具体的には、測位監視部34は、GPS測位処理における上述のステップ単位でシステムタイムの変更可能及び変更不可のタイミングを決定する。なお、この変更許可タイミングは、予め記憶部70に記憶されている機能・アプリケーション毎の条件データに基づいて決定されることとしてよい。
【0062】
ステップS13において、測位監視部34は、GPS測位処理の状態を監視し、進行状況(進行中のステップ)を判断する。
【0063】
ステップS14において、測位監視部34は、ステップS13において判断された進行中のステップが、ステップS12で決定された変更可能なタイミングであるか否かを判定する。制御部30は、この判定がYESの場合、処理をステップS15に移し、判定がNOの場合、処理をステップS13に戻す。
【0064】
ステップS15において、測位監視部34は、システムタイム切り替えのトリガーとして、制御部30にシステムタイム変更許可を通知する。
【0065】
ステップS16において、測位監視部34は、本処理の終了要求を受け付けたか否かを判定する。制御部30は、この判定がYESの場合、処理を終了し、判定がNOの場合、処理をステップS13に戻す。
【0066】
図9は、本実施形態に係る制御部30(特に、更新部32及び切替部35)によるシステムタイム更新処理を示すフローチャートである。本処理は、GPS測位処理を伴う機能・アプリケーションが起動されたことに応じて実行される。
【0067】
ステップS21において、制御部30は、時刻監視部31によるシステムタイム監視処理(図7)を起動する。
【0068】
ステップS22において、制御部30(更新部32)は、システムタイム監視処理(図7)によりシステムタイムの変化が通知されたか否かを判定する。制御部30は、この判定がYESの場合、処理をステップS23に移し、判定がNOの場合、ステップS22を繰り返す。
【0069】
ステップS23において、制御部30は、測位監視部34によるGPS測位監視処理(図8)を起動する。
【0070】
ステップS24において、制御部30(切替部35)は、記憶部70に擬似システムタイムを作成して、測位部33がこの擬似システムタイムを使用するように切り替える。
【0071】
ステップS25において、制御部30(更新部32)は、携帯電話機1が保持している正規のシステムタイムを基地局のシステムタイムで更新する。
【0072】
ステップS26において、制御部30(切替部35)は、GPS測位監視処理(図8)により正規のシステムタイムの変更許可が通知されたか否かを判定する。制御部30は、この判定がYESの場合、処理をステップS27に移し、判定がNOの場合、ステップS26を繰り返す。
【0073】
ステップS27において、制御部30(切替部35)は、システムタイムの変更が可能となったので、擬似システムタイム(古いシステムタイム)から変更後の正規のシステムタイム(新しいシステムタイム)へ、測位部33が使用するシステムタイムを切り替える。
【0074】
ステップS28において、制御部30は、測位監視部34に終了要求を通知し、GPS測位監視処理(図8)を停止させる。
【0075】
ステップS29において、制御部30(切替部35)は、不要となった擬似システムタイムを記憶部70から破棄する。
【0076】
ステップS30において、制御部30は、機能・アプリケーション等から本処理の終了要求を受け付けたか否かを判定する。制御部30は、この判定がYESの場合、処理をステップS31に移し、判定がNOの場合、処理をステップS22に戻す。
【0077】
ステップS31において、制御部30は、時刻監視部31に終了要求を通知し、システムタイム監視処理(図7)を停止させる。
【0078】
以上のように、本実施形態によれば、GPSによる位置測位動作中に、基地局から受信されるシステムタイムがずれた場合であっても、擬似システムタイムを利用するので、正規のシステムタイムが変更された影響を受けることなく、位置測位を継続することができる。したがって、位置測位結果の精度向上や測位時間の短縮が期待できる。
【0079】
また、本実施形態によれば、擬似システムタイムを作成することで、GPS測位動作中であっても、基地局から受信したシステムタイムを携帯電話機1のシステムタイムとして即座に更新することができる。したがって、このシステムタイムを参照する機能・アプリケーションは、通常の動作を継続することができる。
【0080】
さらに、本実施形態によれば、測位動作の状態を監視することで、可能なタイミングで擬似システムタイムから正規のシステムタイムへ参照先を切り替える。したがって、位置測位動作後に作成される各種測位データのタイムスタンプを正しい時刻情報とすることができる。これにより、時間の位置測位において、測位データの適切な利用が可能となるので、位置測位結果の精度向上や測位時間の短縮が期待できる。
【0081】
また、本実施形態によれば、位置測位を要求する機能・アプリケーションの使用用途に応じて、システムタイムを切り替えるタイミング(システムタイムの変更可能及び変更不可タイミング)を設定しておくことができるので、状況に応じて安定した位置測位が可能となる。
【0082】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく種々の形態で実施することができる。また、前述の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、前述のものに限定されない。
【0083】
前述の実施形態において、携帯通信端末として携帯電話機1について説明しているが、携帯通信端末はこれに限定されず、本発明は、PHS(登録商標;Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム機、ナビゲーション装置、パーソナルコンピュータ等の様々な携帯通信端末に適用可能である。
【0084】
さらに、前述の実施形態において、携帯電話機1は、ヒンジ機構4により折り畳み可能な型式としたが、これには限られない。携帯電話機1は、このような折り畳み式ではなく、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、操作部側筐体2と表示部側筐体3との重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(ターンタイプ)や、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが1つの筐体に配置され連結部を有さない型式(ストレートタイプ)でもよい。また、携帯電話機1は、開閉及び回転可能ないわゆる2軸ヒンジタイプであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 携帯電話機(携帯通信端末)
11 操作部
21 表示部
30 制御部
31 時刻監視部
32 更新部
33 測位部
34 測位監視部
35 切替部
40 通信部(受信部)
41 メインアンテナ
50 GPS通信部
51 GPSアンテナ
60 音声制御部
70 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局から時刻データを受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記時刻データに基づいて、システムタイムを更新する更新部と、
前記更新部により更新される前のシステムタイムを保持する記憶部と、
前記更新部により更新された更新後のシステムタイム、又は前記記憶部により保持されている更新前のシステムタイムを用いてGPS測位処理を行う測位部と、
前記GPS測位処理の進行状況を監視し、予め設定されている所定の条件に基づいて、システムタイムを変更可能及び変更不可能なタイミングを検知する測位監視部と、
前記測位監視部により前記システムタイムを変更不可能なタイミングと検知された場合に、前記測位部が前記記憶部により保持されている更新前のシステムタイムを用い、前記システムタイムを変更可能なタイミングと検知された場合に、前記測位部が前記更新後のシステムタイムを用いるように切り替える切替部と、を備える携帯通信端末。
【請求項2】
前記切替部は、前記測位部が前記更新後のシステムタイムを用いている場合、前記記憶部により保持されている前記更新前のシステムタイムを破棄する請求項1に記載の携帯通信端末。
【請求項3】
前記測位監視部は、前記GPS測位処理におけるGPS衛星捕捉補助情報の取得、GPS衛星信号の同期、及びGPS衛星からの距離測定を行っている区間の少なくともいずれかを、前記システムタイムを変更不可能なタイミングとする請求項1又は請求項2に記載の携帯通信端末。
【請求項4】
前記測位監視部は、前記測位部が前記GPS測位処理を繰り返し行っている場合、1回の測位処理と次の測位処理との間の区間を、さらに前記システムタイムを変更不可能なタイミングと検知する請求項3に記載の携帯通信端末。
【請求項5】
前記受信部により受信された前記時刻データを監視し、当該時刻データが示す時刻と前記システムタイムとの相違を検知する時刻監視部をさらに備え、
前記更新部は、前記時刻監視部により前記時刻と前記システムタイムとの相違が検知された場合に、当該システムタイムを更新する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の携帯通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−114619(P2011−114619A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269663(P2009−269663)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】