説明

携帯電子装置用冷間加工金属ハウジング

【課題】携帯電子装置用の冷間加工ステンレス鋼ベゼルを提供する。
【解決手段】ベゼル310は、ハウジング110と同一平面に固定され、携帯電子装置のケース100の一部を形成する。ベゼルから延びる壁を収容するためのスロットを含むブレース210は、ハウジングに固定される。ベゼルがハウジングに係合する時、ベゼルの壁は、ブレースのスロット内に挿入され、ブレースと壁114との両方に係合するバネ410により解除可能に保持される。ベゼルは、バネを解除することにより解放することができる。ベゼルは、冷間加工ステンレス鋼から製造されるため、硬質であり衝撃に耐性を有する。冷間加工鋼は、更に、設計上の制約及び許容範囲内での製造を容易にすると共に、こうした制約を満たすために製造後に必要となる機械加工が非常に少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電子装置用の冷間加工ステンレス鋼ベゼルに関する。
【背景技術】
【0002】
その本来の性質から、携帯電子装置(例えば、MP3再生機、携帯電話)は、持ち歩かれ、固定電子装置(例えば、デスクトップコンピュータ、テレビ)が受けない衝撃及び不注意による衝突に晒される。こうした携帯装置の電子システムを保護するために、製造者は、耐衝撃ケースを作成してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、既存のケースは、必ずしも製造が容易であり、美的に好ましく、或いは十分な耐衝撃性を有するとは限らない。したがって、硬質で、容易に製造され、美的に好ましい携帯電子装置用ケースに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
携帯電子装置ケース用ベゼルを提供する。
【0005】
ベゼルは、ケースを形成するために取り外し可能にハウジングに係合されるように構成される。ベゼルは、ベゼルの外側表面から延びる取り付け部を含み、取り付け部は、ハウジングに固定されたブレース内に収容される。ブレースは、取り付け部とバネとを同時に収容するように構成されたスロットを含む。バネは、ブレースのリップと取り付け部の係合部材との両方に係合するように構成される。ブレースは、ブレースと取り付け部との両方がバネに係合する時に、ハウジングに固定される。ケースを組み立てた時、ベゼルとハウジングとは、同一平面上にある。
【0006】
ベゼルは、冷間加工されたステンレス鋼により製造され得る。ベゼルの製造中又は製造前に鋼を冷間加工することにより、鋼には、ベゼルの硬度を高めるマルテンサイト変態が生じ、所望の耐衝撃性及び耐傷性が鋼に提供され得る。冷間加工製造プロセスにより、他の製造プロセスよりも高い精度でベゼルを製造することも可能となる。これにより、ベゼルが設計許容範囲を満足させる(例えば、取り付け部がブレースのスロットにしっかり嵌合し、ベゼルの外面がハウジングと同一平面上にある)状態を確保するために必要な製造後機械加工が限定され、コストが低減される。ベゼルは、美的に好ましい仕上げを提供するために研磨してもよい。
【0007】
本発明の上記その他の特徴、性質、及び様々な利点は、次の添付図面と併せて、以下の詳細な説明を考慮することで更に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態による携帯電子装置の分解図である。
【図2】本発明の実施形態による図1の組立済み携帯電子装置ケースの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態による図2の組立済み携帯電子装置ケースの底部のワイヤフレーム斜視図である。
【図4】本発明の実施形態による図1の携帯電子装置ケースのブレース及びバネの端面図である。
【図5】本発明の実施形態による図1の携帯電子装置ケースのバネの斜視図である。
【図6】本発明の実施形態による図2の組立済み携帯電子装置ケースの断面図である。
【図7】本発明の実施形態による携帯電子装置のケースを形成するためにベゼルをハウジングに組み付けるためのプロセスの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によれば、携帯電子装置用冷間加工鋼ベゼルが提供される。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明の実施例に係る一例としての携帯電子装置ケースの構成要素の分解図である。図2は、本発明の実施例に係る図1の組立済み携帯電子装置ケースの斜視図である。ケース100は、底部ハウジング110と、ブレース210と、ベゼル310と、バネ410とを含む。底部ハウジング110は、実質的に水平なプレート112を含み、水平なプレート112から湾曲して離れることで側壁114が形成される。プレート112の内面113(即ち、携帯電子装置の電子機器側を向いたプレート112の表面)は、特定の電子機器要素を収容又は支持するための地形的特徴部(例えば、窪み、穿孔、突状部、及びスロット)を含む。
【0011】
底部ハウジング110は、任意の適切な形状にすることができる。例えば、底部ハウジング110は、実質的に長方形、正方形、楕円形、円形、不規則な形状、又は他の任意の適切な形状にすることができる。図1の例において、底部ハウジング110は、実質的に長方形である。底部ハウジング110は、左側部120と、右側部122と、底部124(図示無し)と、最上部126とを含み得る。隣接する側部(例えば、右側部122及び最上部126)が出会う底部ハウジング110の隅部は、丸みを付けて、心地よい手触り(例えば、堅い角が無い状態)にしてもよい。
【0012】
図3は、本発明の実施例に係る図2の組立済み携帯電子装置ケースの底部からのワイヤフレーム斜視図である。図2及び3に示したように、ブレース210は、底部ハウジング110とベゼル310との結合を支持するために底部ハウジング110に対して固定され得る。ブレース210は、例えば、接着剤を含む任意の適切な方法で底部ハウジング11に対して固定(装着)することができる。本実施例において、側壁114の内面115は、実質的に平滑であり、ブレース210を側壁114に対して接着するために適した表面を提供し得る。別の実施例において、ブレース210と、底部ハウジング110の側壁114とは、相補的構造を含んでもよい(例えば、ブレース210から延びるタブと、底部ハウジング110における対応するノッチ)。更に別の例において、ブレース110は、留め具を使用して底部ハウジング110に固定してもよい(例えば、ネジ、ボルト及びナット、又はクリップ)。別の実施例では、底部ハウジング110に対してブレース210を固定するための他の任意の適切な方法、或いは方法の組み合わせを使用してもよい。
【0013】
ブレース210は、底部ハウジング110の任意の部分に固定され得る。例えば、ケース100は、底部ハウジング110の左側部120及び右側部122に固定される二本のブレース210を含み得る。別の例として、ブレース210は、代わりに、或いは追加として、底部ハウジング110の底部124(図示無し)、最上部126、又は一つ以上の隅部に固定されてもよい。ケース100は、それぞれが底部ハウジング110の異なる部分(例えば、左側部120又は右側部122)に固定されるような、ブレース210について数種類の態様(構成)を含んでもよい。一部の実施形態において、ブレース210は、底部ハウジング110の二つ以上の側部に固定されるように設計され得る(例えば、最上部126と、左側部120の上部と、右側部122の上部とに固定されるように構成されたブレース210)。
【0014】
ブレース210は、底部ハウジング110に対する固定のため、或いはベゼルとの係合のために、任意の適切な構造を含むことができる。図4は、本発明の実施例による図1の携帯電子装置ケースのブレース及びバネの端面図である。図4に示したように、ブレース210は、平滑な下部212と不規則な上部220とを有する。下部212は、側壁114と曲率が一致する湾曲面を有し得る。曲率が一致するため、下部212は、側壁114の内面に(例えば、接着剤を使用して)しっかりと固定できる。ブレース210は、更に、ブレース210の外周から延びて側壁114のノッチ116に収容されるように構成された上方リップ238を含む。
【0015】
上部220は、底部ハウジング110とベゼル310とを係合させる幾つかの要素を含み得る。図1の例において、上部220は、U字形スロット225を定める(携帯電子装置の中心に対する)内壁221及び外壁230を含む。内壁221は、開口部222又は切り欠き224(図3に図示)を含む連続又は不連続壁にしてよい。切り欠き224は、ケース100を組み立てた時にケース110がブレース210及びベゼル310と整合するように、ベゼル310の開口部334(及びバネ410の開口部414)と整合させ得る。一部の実施形態において、切り欠き224及び開口部334(及びバネ410の開口部414)は、ケース100を固定する留め具(例えば、ネジ)を受け入れるように構成し得る。スロット225を定める壁221及び230の表面は、ベゼル310をスロット225内にしっかりと収容するために実質的に平滑にし得る。
【0016】
外壁230は、下部212の最外縁部214(図1に図示)から僅かに凹んだ不連続壁にし得る。外壁230は、自由空間234により分離された数枚の壁要素232を含み得る。各壁要素232は、各壁要素232から底部ハウジング110に向かって外側且つケース100内に収容された電子機器から離れる方向へ延びる(下部212に対する)下方リップ236及び上方リップ238を含む。下方及び上方リップ236及び238は、側壁114のノッチ116内へ延びるように構成し得る。下方及び上方リップ236及び238は、壁要素232の陥凹部240を定める。
【0017】
図3及び4に示したように、ブレース210は、自由空間234内の縁部214から壁要素232に平行に延びるリブ242を含み得る。リブ242は、バネ410を収容及び/又はバネ410と係合するためのU字形の囲いを定め得る。
【0018】
バネ410は、ブレース210をベゼル310に解除可能に結合するために使用し得る。図5は、本発明の実施形態による図1の携帯電子装置ケースのバネの斜視図である。図1及び5に示したように、バネ410は、ベゼル310の特徴部と一致するように計算された間隔を空けた開口部414を特徴とする細長いストリップ412を含み得る(図6と共に更に詳細に説明する)。バネ410は、ストリップ412に沿って分布した幾つかのU字形カンチレバー420を含む。
【0019】
バネ410は、ブレース210内に収容されるように構成し得る。特に、細長いストリップ412は、ストリップ412の一部がリブ242に係合されるように陥凹部240内に収容され得る。下方及び上方リップ236及び238間の距離(即ち、陥凹部240の高さ)と、ストリップ412の幅とは、ストリップ412がリップ236及び238間に確実に(例えば、圧入関係において)嵌合し得るように選択し得ると共に、リブ242は、更に、ストリップ412を陥凹部240内において(例えば、ストリップ412を固定するノッチにより)固定維持するように設計し得る。バネ410は、更に、ブレース210に隣接していない側においてスプリングに接する底部ハウジング110の側壁114の近接性により、ブレース210内に固定され得る
【0020】
カンチレバー420は、カンチレバー420がブレース210の自由空間234内に嵌るように、バネ412に沿って分布させ得る。ブレース210とバネ410との図4に示したように、カンチレバー420は、ストリップ412の下縁部422に取り付けられ、バネ410の前面又は後面がU字形を示すように、ストリップ412の上縁部423に向かって屈曲する。カンチレバー420の先端部424は、カンチレバー420に対する外力に応じて(例えば、カンチレバーバネとして)弾性的に曲がるように構成し得る自由先端部である。例えば、カンチレバー420は、ベゼル310を底部ハウジング110及びブレース210へ圧入した時に曲がり得る。各カンチレバー420は、開口部を含み得る。
【0021】
バネ410をブレース210内に配置した時、カンチレバー420は、自由空間234(図1)においてカンチレバー420が壁要素232の代わりとなるように、外壁230から内壁221へ向かって延びる。アパーチャ426は、ベゼル310のタブ又は突起(例えば、係合部材336)を収容して、ベゼル310がバネ410と係合するように構成され得る。
【0022】
ベゼル310は、ケース100を組み立てるために底部ハウジング110の上に配置するように構成され得る。図1及び6(以下で更に詳細に説明)に示したように、ベゼル310は、ケース100の外部上面を提供する基部構造312を含み得る。図6に示した、構造312の内面320は、携帯電子装置の電子部品又は他の構成要素を支持するための階段部322及び324を含む。例えば、階段部322は、スクリーン350を支持するように構成してよく、階段部324は、反射層352を支持するように構成されてもよい。内面320は、携帯電子装置の一個以上の構成要素(例えば、スクロールホイール等の入力部品)を支持するための他の任意の適切な特徴部を含み得る。
【0023】
基部構造312の下面326は、実質的に水平であり、ベゼル310を底部ハウジング110に係合させた時に、壁114の上面115に接触した状態で配置されるように構成される。下面326及び上面115は、両方とも、ケース100を組み立てた時に緊密な接触を維持するように設計され得る。例えば、下面326及び上面115は、一体化して緊密な一致をもたらすように構成された相補的な特徴部を含み得る。ベゼル310は、ケース100を組み立てた時にベゼル310が底部ハウジング110と同一平面となる状態を確保し得る全ての方向(例えばx、y、及びz方向)において、非常に厳しい許容誤差を可能にする方法及び材料を使用して構成され得る。
【0024】
基部構造312の外面314は、ベゼル310が底部ハウジング110と係合した時に側壁114と同一平面になるように構成された曲面構造とされ得る。外面314は、ベゼル310に美的に好ましい仕上げを提供するために研磨され得る。外面314は、例えば、120又は240グリットの炭化ケイ素を有する研磨ディスク、3又は9μmダイアモンド懸濁物を有するグラインディングディスク又はクロス、又は0.05μmコロイダルシリカ又はアルミナ懸濁物を有するクロスによるものを含め、任意の適切な方法において研磨し得る。
【0025】
取り付け部330は、基部構造312から底部ハウジング110及びブレース210へ向かって延びる。取り付け部330は、下面326を越えて延びる壁332を含む。一部の実施形態において、壁332は、連続していないが、ベゼル310の外周を囲んで分布した個別セグメントを含む。ベゼル310とブレースとの間を強力に接続するために、壁332は、ブレース210のスロット225内に配置されるように構成された取り付け部330の区画において連続させ得る。取り付け部330は、ブレース210、ベゼル310、及びバネ410を整合させるのを助けるために、ケース100を組み立てた時にバネ410の開口部414及び切り欠き224と整合する複数の開口部334を含み得る。一部の実施形態において、開口部334、414、及び切り欠き224は、ベゼル310を底部ハウジング110に固定するために留め具(例えば、ネジ)を受け入れるように構成され得る。
【0026】
スロット225内に配置されるように構成された壁332の断面は、一つ以上の係合部材336を含み得る。係合部材336は、壁332から携帯電子装置の外部向かって延びるタブ又は他の同様の要素にし得る。各係合部材336は、角度付き先端部338と、カンチレバー420の少なくとも一つの開口部426及び414と係合するための水平なタブ340とを含み得る。
【0027】
図6は、本発明の実施例に係る、図2の組立済み携帯電子装置ケースの断面図である。ベゼル310をブレース210に係合させるために、まず、バネ410をブレース210内に配置し係合させる。次に、壁332がスロット225内へ延びるように、ベゼル310をブレース内へ圧入する。ベゼル310を底部ハウジング110へ圧入する時、壁332は、スロット225内へ挿入され、係合部材336は、カンチレバー420を自由空間234内へ押し入れて、スロット225内を完全に占めるために十分な余地を形成する。角度付き先端部338は、カンチレバー420に漸進的に力を加えて、ベゼル310がハウジング110内へ圧入される際にカンチレバー420を漸進的に偏向させるように構成され得る。壁332が完全にスロット225内に挿入されると、開口部426は、(例えば、開口部426の配置を適切に設計することで)タブ340に整合(一致)した状態となる。次に、タブ340は、開口部426内へ延びて、カンチレバー420に力を加えることを止め、カンチレバー420は、自由空間224内の平衡位置へ跳ね戻る。次に、タブ340は、アパーチャ426と係合し、タブ340がバネ410から解除される場合を除き、壁332、即ちベゼル310がブレース210から外れることを防止する。
【0028】
ベゼル310をブレース210及び底部ハウジング110から解除するためには、係合部材336が開口部426から解放されるように、壁332から離れる方向へカンチレバー420を曲げる外力を、バネ410に加え得る。係合部材336が解放されると、ベゼル310をスロット225から取り外し得る。外力は、任意の適切な方法においてバネ410に加えてよい。例えば、ケース100内に挿入してカンチレバー420と係合するように道具を構成し得る。別の例として、磁場が存在する状態で磁力に影響される材料によりカンチレバー420が作成される場合、(例えば、磁石により提供される)磁場は、係合部材336を解除する外力を提供し得る。磁場の存在下において移動する働きをする適切な材料は、例えば、冷間加工された304ステンレス鋼又は404ステンレス鋼等のフェライト材を含む。
【0029】
ケース100の要素は、任意の適切な製造プロセスを用い、任意の適切な材料を使用して製造し得る。例えば、底部ハウジング110は、キャスティング、モールディング(例えば、粉末冶金成型)、鍛造、機械加工、圧延、押し出し、フライス加工、又は他の任意の適切な製造プロセスの一つ以上を使用して形成し得る。底部ハウジング110は、更に、例えば、研磨、バフ仕上げ、バニシ仕上げ、グリット、ショット又はサンドブラスト、タンブリング、ワイヤブラシング、フレームブラスト、電解研磨、又は底部ハウジング110の仕上げをするための他の任意の適切なプロセス(例えば、美的に好ましし外観を提供するもの)を含む、任意の適切な製造プロセスを使用して仕上げし得る。底部ハウジング110は、例えば、アルミニウム、鋼鉄、鉄合金、チタン、マグネシウム、銅合金、他の金属合金、プラスチック、ポリマ、セラミック、又は合成物といった任意の適切な材料により構築し得る。一実施形態において、底部ハウジング110は、アルミニウムから構築し得る。
【0030】
ブレース210及びバネ410は、底部ハウジング110の形成に関連して上述した一つ以上の製造プロセスを使用して構築し得る。加えて、ブレース210及びバネ410は、底部ハウジング110に関連して上述した一つ以上の材料を使用して構築し得る。一実施形態において、ブレース210は、マグネシウムにより作成してよく、バネ410は、ステンレス鋼(例えば、404系ステンレス鋼)により作成してよい。
【0031】
ベゼル310も、底部ハウジング110の形成に関連して上述した一つ一つ以上の製造プロセスと、一つ以上の材料とを使用して構築し得る。一実施形態において、ベゼル310は、例えば、304ステンレス鋼等のステンレス鋼を使用して構築し得る。304ステンレス鋼は、冷間加工により硬化させ得ると共に、ベゼル310が(例えば、携帯電子装置を落下させることで生じる)大きな荷重及び衝撃に耐えることを可能にし得る。
【0032】
304ステンレス鋼は、鉄及び炭素の非磁性固溶体のオーステナイト鋼である。鉄及び炭素分子は、体心立方格子構造を有するフェライトに比較して、高い割合の炭素を含有する面心立方(FCC)格子構造において配置される。オーステナイト鋼における高密度の炭素原子は、フェライトより耐久性が高く硬質な材料を発生させる。オーステナイト鋼は、最大0.15%の炭素と、最小16%のクロムと、低温領域から合金の融点までの全温度においてオーステナイト構造(即ち、FCC格子構造)を保持するために十分なニッケル及び/又はマンガンを含有し得る。十分なニッケル及び/又はマンガンが添加されない場合、FCC格子構造は、不安定となり、BCC格子構造へ戻り得る(即ち、オーステナイト鋼からフェライトへ戻り得る)。304ステンレス鋼は、18/8ステンレス鋼として一般に知られる、クロム18%及びニッケル8%の組成を有しており、最も一般的な等級のステンレス鋼の一つである。
【0033】
一部の金属は、金属内の粒子の拡散の割合と微細構造内での冷却の割合とを制御することで金属の特性を操作するために通常使用される熱処理により強化し得る。しかしながら、304ステンレス等のオーステナイト鋼は、熱処理のみでは強化できない。代わりに、鋼鉄の塑性変形と、鋼鉄の粒度の精錬という他の二方法を使用し得る。
【0034】
材料の塑性変形は、材料の不可逆的変形である。特定のオーステナイト鋼の場合、塑性変形により、鋼鉄の結晶構造の不可逆的変化が生じる。この変化により、転位(例えば、刃状転位及び螺旋転位)と呼ばれる、結晶の格子構造における不規則性が形成される。更なる塑性変形(例えば、新たな転位の形成及び転位増殖)により、多くの転位が材料に導入されると、隣接する変位の歪場が重複し、付加的な転位に対する材料の抵抗力を徐々に増加させる。これにより材料は更に硬化する。この効果は、歪み硬化又は加工硬化として知られている。
【0035】
塑性変形により材料を硬化させる一プロセスは、低温から中程度の温度における材料の塑性変形の結果として材料を硬化させるプロセスである冷間加工である。冷間加工は、例えば、押し出し、引き出し、又はコイニング加工等、低温において実行される任意の適切なプロセスにより提供し得る。
【0036】
304ステンレス鋼等のオーステナイト鋼の塑性変形は、マルテンサイト変態を誘発し得る。マルテンサイト変態は、オーステナイト鋼中のオーステナイトのマルテンサイトへの変態である。オーステナイト及びマルテンサイトは、同一の化学組成と、非常に類似した結晶構造とを有しており、オーステナイトの立方構造は、マルテンサイトからの変態を引き起こすプロセス(例えば、塑性変形又は焼き入れ)中に外へ拡散する時間を有していない炭素の格子間原子により破壊される。したがって、マルテンサイトは、炭素により過飽和状態となる。炭素原子は、マルテンサイト結晶構造の延伸を発生させ、これにより、金属の結晶格子が引き延ばされ、付加的な歪みが形成されるため、塑性変形により発生した転位の歪場と結び付いて材料を硬化させる付加的な歪場が形成される。
【0037】
マルテンサイトを形成する上で有効な塑性変形のためには、材料のマルテンサイト変態温度未満で塑性変形が生じる必要がある。マルテンサイト変態温度(Md)は化学的性質と初期粒度とに依存するため、判定が困難であり、代わりに近似値が使用される。適切な一近似値は、Md30であり、Mdと同様に変化する。Md30は、30%の真歪において微細構造の50%がマルテンサイトへ変態する温度である。
【0038】
オーステナイト鋼の粒子は冷間加工後に鋼を焼き鈍しすることで精錬し得る。金属を焼き鈍しすることで、材料内の結晶では、再結晶化及び核形成が生じ、更に大きな粒子となる。冷間加工により生じた結晶格子内の転位は、新たな粒子が形成される際に消失する。しかしながら、非常に多くの転位が存在して、焼き鈍しによる再結晶化が実用的ではなくなる水準で材料を冷間加工し得るポイントが存在する。
【0039】
焼き鈍しした材料は、例えば、炉内冷却(即ち、完全焼き鈍し熱処理)、空冷(即ち、焼きならし熱処理)、又は焼き入れ(急冷)を含む任意の適切な方法で冷却し得る。金属は、例えば、強制空気又はガス(例えば、窒素)、油、水に溶解したポリマ、水、又は塩水において焼き入れし得る。焼き入れは、オーステナイト鋼内への、オーステナイトより硬質なマルテンサイトの導入を発生させ得る。鋼は、マルテンサイトを導入するために、オーステナイトが不安定になる温度である共析点を介して急冷する必要がある。
【0040】
材料において結果的に生じた粒度及び粒子分布は、焼き入れ前の冷間加工の量(例えば、熱処理前の鋼における転位数)、焼き入れ温度、金属を炉内に残した時間、及び冷却温度に依存し得る。例えば、鋼鉄を炉内に長く残した場合、及び炉内温度を高くした場合、新たに多くの粒子が核形成され、多くの転位が消去される(例えば、延性の高い鋼鉄をもたらす)。別の例として、共析点を介して鋼鉄を急冷した場合に、マルテンサイトを導入し得る(例えば、鋼鉄が硬化される)。
【0041】
304ステンレス鋼は、美的に好ましい表面(例えば、基部構造312の美的に好ましい外面314)を提供するために研磨し得る。鋼鉄は、異なるグリットによる一連の研磨ステップ(例えば、一連のステップが進むにしたがって高いグリット)を使用して研磨し得る。
【0042】
ベゼル310(及びバネ410)は、上述したように、高い強度をもたらす冷間加工プロセスを使用して、304ステンレス鋼により製造し得る。しかしながら、冷間加工は、付加的な製造プロセス無しで、全ての方向(例えば、x、y、及びz方向)において非常に精度の高い制限をもたらす。この特性の組み合わせにより、冷間加工は、ベゼル310の製造に好適なプロセスとなり得る。例えば、冷間加工は、技能を有する機械加工労働者のための費用を含む機械加工に比べ、実質的に安価となり得る。別の例として、ステンレス鋼を鋳造するのが困難であるため(例えば、合金は、鋼鉄から離れ、脆弱な構造を残す傾向にある)、冷間加工金属部品は、ダイカスト金属部品より強度が高くなり得る。加えて、ダイカストは、不正確であり、部品のサイズを設計許容範囲内に変更するために鋳造後の機械加工を要する。
【0043】
ベゼル310が底部ハウジング110と完全に同一な平面となるように、ベゼル310、バネ410、及びハウジング110は、厳しい許容誤差範囲で製造し得る。特に、壁332及びタブ340は、壁332がスロット225内にぴったりと嵌り、タブ340が開口部426及び414の少なくとも一方に係合するように正確に製造し得る。更に、ベゼル310の基部構造312の下面326と、底部ハウジング110の壁114の表面115とは、下面332及び表面115が同一平面となり、ベゼル310の外面314が壁114の外面と同一平面となるように正確に製造し得る。冷間加工プロセスを使用して、少なくともベゼル310(及び底部ハウジング110、ブレース210、及びバネ410)を製造することにより、構成要素の厳密な許容範囲(製造公差)要件を満足させるために最小限の機械加工又は修正のみが求められる完全に近い純構成要素が提供される。
【0044】
以下のフローチャートは、本発明の一部の実施形態に含まれるプロセスを示す役割を果たす。図7は、本発明の実施例に係る携帯電子装置のケースを形成するためにベゼルをハウジングに組み付けるためのプロセスの一例を示すフローチャートである。プロセス700は、ステップ702において開始される。ステップ704において、ブレースを、ケースのハウジングの内面に装着する。ブレースは、例えば、接着剤又は留め具を含む任意の適切な手法を使用して装着してよい。ブレースは、バネを固定するためのリブと、ベゼルを受け入れるためのスロットとを含み得る。ステップ706において、バネをブレース内に挿入及び固定する。バネは、ブレースのリブに嵌合して、バネがリブ内に位置決めされた状態が維持されるように構成し得る。一部の実施形態では、ステップ704及び706の順序を逆にしてもよい。
【0045】
ステップ708において、ベゼルをブレースの上に配置し、ベゼルの取り付け部の壁をブレースのスロット上に整合させる。ステップ710において、壁がブレースのスロットに挿入され且つベゼルの少なくとも一つの係合部材がバネの開口部に係合するように、ベゼルをブレースへ圧入する。バネがブレースとベゼルとに同時に係合すると、ケースが組み立てられる。これにより、プロセス700は、ステップ712において終了する。
【0046】
別の実施例において、組立プロセスは、次のように実行し得る。バネは、ブレースに組み付けられ得る。バネ/ブレースの組み合わせをベゼルに組み付け、これにより、バネは、ベゼルとブレースとの間に捕捉され得る。
【0047】
本発明の上述した実施形態は、限定ではなく例示の目的で提示されたものであり、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電子装置のケースであって、
底部ハウジングと
前記底部ハウジングに結合するように構成され且つスロットを含むブレースと、
前記スロット内へ延びるように構成された取り付け部を有するベゼルと、
前記取り付け部と共に前記スロット内に配置されるように構成され且つ前記ブレース及び前記ベゼルと同時に係合するように構成されたバネと、を備えるケース。
【請求項2】
前記取り付け部は、前記バネと解除可能に係合するように構成された少なくとも一つの係合部材を含む、請求項1記載のケース。
【請求項3】
前記ブレースは、前記バネと解放可能に係合するために、少なくとも一つのリップを含む、請求項1記載のケース。
【請求項4】
前記ブレース、バネ、及びベゼルは、前記ベゼルを前記ブレースに固定する留め具を受け入れるために整合するように構成された開口部を含む、請求項1記載のケース。
【請求項5】
前記ベゼルは、前記バネを前記係合部材から解放することにより前記ブレースから解放される、請求項1記載のケース。
【請求項6】
前記バネは、前記バネに磁力を加えることにより前記係合部材を解放し得る、請求項5記載のケース。
【請求項7】
前記底部ハウジング及びブレースは、同一平面となるように構成される、請求項1記載のケース。
【請求項8】
前記ベゼルは、低温加工ステンレス鋼により構築される、請求項1記載のケース。
【請求項9】
前記ハウジングは、パーソナルメディアデバイス及び携帯電話の少なくとも一方のためのものである、請求項1記載のケース。
【請求項10】
携帯電子装置のケースのハウジングであって、
水平プレートと、
前記水平プレートから延びる側壁と、を備え、
前記側壁の内面は、ブレースを収容するように構成され、前記ブレースは、バネを解放可能に収容するように構成されたスロットを含み、
前記ハウジングは、前記スロット内に配置された前記バネを解放可能に係合するように構成された取り付け部を含むベゼルを収容するように構成されている、ハウジング。
【請求項11】
前記側壁と前記ベゼルの外面とは、前記ベゼルを前記ブレース内に解放可能に係合させた時に同一平面となる、請求項10記載のハウジング。
【請求項12】
前記ブレースは、接着剤を使用して前記側壁の前記内面に固定して留められるように構成された、請求項10記載のハウジング。
【請求項13】
前記ベゼルの前記取り付け部は、前記バネを係合するために少なくとも一つの係合部材を含む、請求項10記載のハウジング。
【請求項14】
前記ベゼルは、ステンレス鋼により構築される、請求項10記載のハウジング。
【請求項15】
前記ハウジングは、アルミニウムにより構築される、請求項10記載のハウジング。
【請求項16】
前記ハウジングは、パーソナルメディアデバイス及び携帯電話の少なくとも一方のためのものである、請求項10記載のハウジング。
【請求項17】
携帯電子装置のケースを形成するためにハウジングと係合するように構成されたベゼルであって、
実質的に平滑な外面を含む基部構造と、
前記基部構造から延びる取り付け部と、を備え、前記取り付け部は、
前記ハウジング内へ延びるように構成され、前記ハウジングと係合するように構成された少なくとも一つの係合部材を含む複数の壁と、
留め具を受け入れるために前記ハウジング内の少なくとも一つの開口部と整合するように構成された少なくとも一つの開口部とを含む、ベゼル。
【請求項18】
前記基部構造の内面は、前記携帯電子装置の一つ以上の構成要素を支持するための少なくとも一つの特徴部を含む、請求項17記載のベゼル。
【請求項19】
前記ベゼルの前記外面は、前記ハウジングと同一平面となるように構成される、請求項17記載のベゼル。
【請求項20】
前記ハウジングは、前記複数の壁をスロット内に収容するように構成されたブレースを含む、請求項17記載のベゼル。
【請求項21】
前記ブレースは、前記少なくとも一つの係合部材と係合するように構成されたバネを収容する、請求項20記載のベゼル。
【請求項22】
前記ベゼルは、ステンレス鋼により構築される、請求項17記載のベゼル。
【請求項23】
低温加工ステンレス鋼により構築される、請求項17記載のベゼル。
【請求項24】
前記ベゼルは、パーソナルメディアデバイス及び携帯電話の少なくとも一方のためのものである、請求項17記載のベゼル。
【請求項25】
携帯電子装置用のベゼルを製造する方法であって、
前記ベゼルの基部構造と取り付け部とを冷間加工ステンレス鋼から製造するステップと、
前記基部構造の外面を研磨するステップと、を備える方法。
【請求項26】
更に、許容範囲要件を満たすために前記基部構造及び取り付け部の少なくとも一方を機械加工するステップを備える、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記基部構造と前記取り付け部とを製造するステップは、鋳造、機械加工、圧延、及びフライス加工の少なくとも一つを使用して前記基部構造と前記取り付け部とを製造するステップを含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記ベゼルの前記外面を研磨するステップは、更に、研磨ディスク、グラインディングディスク、及びポリシングクロスの少なくとも一つを使用して前記ベゼルの前記外面を研磨するステップを含む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
携帯電子装置のケースを組み立てるための方法であって、
バネとベゼルとを収容するように構成されたブレースを底部ハウジングに装着するステップと、
バネを、前記バネに係合するように構成されたリブを含む前記ブレースに挿入するステップと、
前記バネと係合するように構成された少なくとも一つの係合部材を含むベゼルを、前記ブレースに挿入するステップと、を備える方法。
【請求項30】
ブレースを底部ハウジングに装着するステップは、更に、接着剤及び留め具の少なくとも一方を使用してブレースを底部ハウジングに装着するステップ含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
バネを前記ブレースに挿入するステップは、更に、バネを前記ブレースに圧入するステップを含む、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記バネは、前記ベゼルの前記少なくとも一つの係合部材と係合するための開口部を含む、請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記ブレースにベゼルを挿入するステップは、更に
前記ベゼルの取り付け部を前記ブレースのスロットへ挿入するステップと、
前記取り付け部の前記少なくとも一つの係合部材が前記バネを超えて滑動可能となるように前記バネを偏向させるステップと、
前記少なくとも一つの係合部材が前記バネの少なくとも一つの開口部内へ滑動した後で前記バネを解放するステップと、を含む、請求項29記載の方法。
【請求項34】
更に、前記ベゼルと前記ハウジングとが同一平面になるまで、前記ベゼルを前記ブレースへ押し入れるステップを備える、請求項29記載の方法。
【請求項35】
携帯電子装置であって、
ハウジングと、
平面及び外周を有する平坦面及び
前記平坦面の平面から垂直に降下して前記平坦面の前記外周を越えて延びるリップ部を含む構成要素と、
階段部を含むと共に、前記ハウジングに固定された時に前記階段部が前記リップ部と係合して前記構成要素を前記装置上の所定位置に固定するベゼルと、を備える装置。
【請求項36】
前記ベゼルは、実質的に同一平面上において前記ハウジングに接して置かれる、請求項35記載の装置。
【請求項37】
前記ベゼルは、前記電子装置の均一な外周構造を形成する、請求項35記載の装置。
【請求項38】
前記ベゼルは、構造的支持を提供する、請求項35記載の装置。
【請求項39】
前記ベゼルは、前記構成要素の外周を取り囲む、請求項35記載の装置。
【請求項40】
前記ベゼルは、金属的な外観を有する、請求項35記載の装置。
【請求項41】
前記ハウジングと前記ベゼルとの結合は、実質的に連続した表面を形成する、請求項35記載の装置。
【請求項42】
携帯電子装置であって、
前記電子装置の少なくとも一つの機能を実行する回路を含むハウジングと、
第一の平坦面を含む画面と、
上部平坦面及び底部平坦面を含むベゼルと、を備え、前記底部平坦面は、前記ハウジングに装着され、前記上部平坦面は、前記第一の平坦面と実質的に同平面となり、前記ベゼルは、前記ハウジングと比較して視覚的に区別される装置。
【請求項43】
前記ベゼルは、金属的な外観を有する、請求項42記載の装置。
【請求項44】
前記ハウジングと前記ベゼルとの結合は、実質的に連続した表面を形成する、請求項42記載の装置。
【請求項45】
前記ベゼルは、前記電子装置の均一な外周構造を形成する、請求項42記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−50110(P2012−50110A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−219202(P2011−219202)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2009−544948(P2009−544948)の分割
【原出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【出願人】(503260918)アップル インコーポレイテッド (568)
【Fターム(参考)】