説明

撥水シート

【課題】材料選択の幅の制限を最小化し、ナノオーダーでの精密な凹凸形状の制御が不要であるといった簡便な手法により、低コストで基材表面に撥水性を付与しうる技術を提供する。
【解決手段】本発明の撥水シートは、撥水シート本体の一方の面に多数の凹部が設けられてなる構成を有する。そして、凹部の開口部の平均面積(A[μm])に対する凹部の平均深さ(D[μm])の比の値(D/A)が0.006以上である。また、凹部が形成された表面の面積に対して凹部の面積が占める割合が60%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水シートに関する。より詳細には、本発明の撥水シートは、太陽電池モジュール用保護シート、看板、マーキングフィルム、窓ガラス等の防汚性を向上させるなどの用途に用いられうる。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の目的で、各種シートの表面を撥水処理することが行われている。例えば、基材表面に撥水性薄膜を形成させる方法として、刷毛、スプレー、ロールコーターまたは浸漬等の塗布手段を用いて基材上に撥水性の塗料を塗布し、乾燥することにより撥水性塗膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。ただし、このように塗布法によって撥水性薄膜を形成するという手法は、材料そのものが有する低い表面エネルギーを利用している。したがって、使用可能な材料が限られる、薄膜が形成される基材の種類によっては密着力が非常に低くなるという問題があった。
【0003】
かような問題を解決する方法として、CVD法を用いて撥水性薄膜を形成する方法が提案されている。例えば、特許文献2には、オルガノシラン等の有機ケイ素化合物ガスとフッ素化合物ガスとをプラズマや高熱、光等により気相中で分解反応させて、前記分解反応物を基材表面に堆積させることにより撥水性薄膜を形成させる方法が記載されている。また、特許文献3には、有機ケイ素化合物ガスを低温プラズマ法により分解して生成する反応生成物を基材上に堆積させて、撥水性酸化ケイ素薄膜を形成させる方法が記載されている。前記特許文献2および特許文献3の技術においては、薄膜の撥水性成分としてオルガノシラン等の有機ケイ素化合物が用いられている。ここで、有機ケイ素化合物は一般的に蒸気圧が低い。このため、大気圧において、常温では液体である。そこで、CVD法における薄膜を形成するためのガス成分として前記有機ケイ素化合物を用いる場合には、有機ケイ素化合物を気化させる必要があるが、蒸気圧が低い有機ケイ素化合物を気化させる場合には真空チャンバ等を用いて高真空雰囲気で気化させる必要がある。かような場合、撥水性薄膜の形成に用いられるCVD装置に高真空を維持する性能が要求され、高価な装置が必要になるという問題があった。特に、大面積のガラス板等の基材に撥水性薄膜を形成したり、工業生産する際にロール状の鋼材等に連続的に撥水性薄膜を形成したりする場合においては、大きな真空チャンバとプラズマ形成領域を備えたCVD装置が必要になり、生産コストが非常に高くなるという問題があった。
【0004】
また、大型のCVD装置を用いて撥水性薄膜を基材上に均一に形成するためには、前記プラズマ形成領域に均一に効率よく薄膜を形成するためのガス成分を供給する必要がある。この場合に、薄膜を形成するためのガスの主成分として前記有機ケイ素化合物を用いる場合には、装置内の温度分布により、例えば真空チャンバの壁面等で有機ケイ素化合物が結露して、プラズマ形成領域における有機ケイ素濃度が変動し、基材表面に均一な薄膜を形成することが困難であるという問題があった。
【0005】
一方、アスペクト比の高い無数の微細錐状突起を備えた微細凹凸面を設けることによって撥水構造を形成する技術も提案されている(例えば、特許文献4を参照)。しかしこの手法では、アスペクト比の高い微細凹凸を周期的に形成しなくてはならず、構造の制御が困難である、生産効率が低い、という問題があった。
【0006】
さらには、硬化性樹脂にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を分散させて塗膜を形成した後、ブラスト処理をすることにより表面を粗面化する方法(例えば、特許文献5を参照)、フッ素樹脂基材の表面をブラストし粗面化する方法(例えば、特許文献6を参照)、吸水率0.5%以下の未硬化の液状樹脂を基材表面に施し、該未硬化樹脂の表面に疎水性微粒子粉末を一部埋没するよう衝突させ、次いで前記樹脂を硬化させ、前記疎水性微粒子粉末を樹脂に固定させ粗面化表面を形成する方法(例えば、特許文献7を参照)が提案されている。しかしこれらの手法はいずれも、ブラスト法を用いているために規則的な構造を設けることはできず、効率的な凹凸が作製できず大きな効果を得にくい、性能がバラつき易いなどという問題があった。
【0007】
また、樹脂中にシリカ等の無機微粒子や有機微粒子を混合させる方法(例えば、特許文献8を参照)も提案されている。しかし、この手法では粉体の分散性が撥水性に大きく影響することから、粉体が樹脂層で覆われてしまうために凹凸形状が発現されにくいという問題があった。
【0008】
このように、各種シートの表面を撥水処理することを目的として、従来非常に多数の技術が提案されている。しかしながら、基材の表面に基材とは異なる撥水性材料を形成する方法では、撥水性材料が脱落し、結果として撥水効果が低減する虞がある。また、特許文献4のように、基材表面に微小な突起を形成するという手法では、製造コストが高騰するという問題がある。
【0009】
なお、特許文献9には、撥水性樹脂からなる基材の表面に所定の形状の凹部(深さ0.7μm)を一定のピッチで設けた成形物と、当該成形物をプラズマエッチングにより製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−222339号公報
【特許文献2】特開平10−130844号公報
【特許文献3】特許第3720974号公報
【特許文献4】特開2009−28994号公報
【特許文献5】特開平6−345881号公報
【特許文献6】特開平6−263897号公報
【特許文献7】特開平6−296924号公報
【特許文献8】特開平3−244679号公報
【特許文献9】特開2006−083244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した従来技術における現状に鑑みなされたものであり、材料選択の幅の制限を最小化し、ナノオーダーでの精密な凹凸形状の制御が不要であるといった簡便な手法により、低コストで基材表面に撥水性を付与しうる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった。その結果、所定のサイズを有する多数の凹部を基材表面に設置することにより上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明の撥水シートは、撥水シート本体の一方の面に多数の凹部が設けられてなる構成を有する。そして、凹部の開口部の平均面積(A[μm])に対する凹部の平均深さ(D[μm])の比の値(D/A)が0.006以上である。また、撥水シート本体を平面視したときの、凹部が形成されている有効領域における凹部の占有率が60%以上である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の撥水シートによれば、材料選択の幅の制限を最小化し、ナノオーダーでの精密な凹凸形状の制御が不要であるといった簡便な手法により、低コストで基材表面に撥水性を付与しうる技術が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の撥水シートの断面図である。
【図2】図1における撥水シートの平面図である。
【図3】図2に示す凹部12aの1つの鉛直断面を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の変形例を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態の撥水シートの断面図である。図1に示すように、撥水シート10は、撥水シート本体12を有する。
【0018】
[撥水シート本体]
撥水シート本体12の基材は特に制限されず、従来公知の合成樹脂が用いられうる。撥水シート本体12を構成しうる合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、ポリスチレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;エチルセルロース、トリ酢酸セルロース等のセルロース誘導体;およびポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸とそのエステル化合物、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66など)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリm−フェニレンイソフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミド、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。その他、後述する製造方法の欄において列挙した撥水シート本体も同様に用いられうる。なお、後述する実施例において示されているように、本発明によれば、撥水シート本体12自体が本来有する撥水性の高低に関わりなく、撥水性に優れた撥水シートが提供されうる。
【0019】
ここで、本実施形態の撥水シート10が透明性を要求される用途(例えば、後述する太陽電池モジュール用保護シートの特にフロントシートなど)に用いられる場合には、撥水シート本体は全光線透過率に優れる材料から構成されることが好ましい。かような材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸とそのエステル化合物、ウレタン樹脂などが挙げられる。なお、この場合の撥水シート本体の全光線透過率の値は特に制限されないが、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0020】
撥水シート本体12の厚さ(後述する図3に示す距離t)は特に限定されないが、通常は10〜500μm程度である。また、撥水シートの軽量化という観点からは、撥水シート本体12の厚さは、好ましくは20〜300μmであり、より好ましくは30〜200μmであり、さらに好ましくは40〜150μmである。特に、撥水シート本体12の厚さが薄すぎると、撥水シート10を例えば各種の保護シートなどの用途に適用した場合の強度が低下する虞がある。なお、後述するように撥水シート本体12が2層以上からなる場合には、上述した撥水シート本体12の厚さの規定はすべての撥水シート本体12の合計厚さに対するものである。
【0021】
撥水シート本体12としては、既に製品が商業的に入手可能である場合には、市販品を購入したものを用いてもよいし、自ら調製可能である場合には、自ら調製したものを用いてもよい。撥水シート本体12を自ら調製する手法について特に制限はないが、例えば、樹脂の前駆体であるモノマー(例えば、付加反応型オルガノポリシロキサン(ポリジメチルシロキサンなど))を触媒(例えば、白金触媒など)とともに含む溶液を工程シートの表面にキャスティングし、加熱硬化させることにより、撥水シート本体12を自ら調製することが可能である。
【0022】
図1に示す実施形態において、撥水シート本体12の一方の表面には、多数の円形の凹部12aが設けられている。図2は、撥水シート本体12を凹部12aが形成された側から平面視した、撥水シート10の平面図である。図2に示すように、本実施形態の多数の凹部12aは、六方充填配置となるように撥水シート本体12の表面に形成されている。なお、図2に示す形態では、すべての凹部12aが同一の形状・サイズを有しているが、場合によっては、異なる形状・サイズの凹部12aが混在していてもよい。
【0023】
図3は、図2に示す凹部12aの1つの鉛直断面を示す断面図である。図3に示すように、本実施形態において形成された凹部12aの垂直断面形状は半球状である。ここで、図3に示す距離wは、当該半球の開口部の直径を示し、距離dは、当該半球の深さを示し、距離tは、撥水シート本体の厚さを示す。本実施形態において、撥水シート本体12の表面に形成される凹部12aは、開口部のサイズに対して比較的深いという点に特徴を有する。
【0024】
より具体的には、凹部の深さdの平均値(平均深さ)をD[μm]とし、当該凹部の開口部の面積(aとする)の平均値(平均面積)をA[μm]とした場合に、当該平均面積(A)に対する当該平均深さ(D)の比の値(D/A)が、0.006以上である。D/Aの値がかような範囲内の値であれば、大きい接触角を示す、すなわち、撥水性の高い撥水シートが得られる。一方、D/Aの値が0.006未満であると、撥水シート本体の表面に対して充分に高い撥水性を付与することが困難である。これは、D/Aの値が所定の値より小さいと、換言すれば、開口部の面積に対して凹部の深さが浅いと、水が凹部の底面付近に接触できることとなり、シートの水に対する濡れ性が高まることによるものと考えられる。なお、上述した凹部12aに関する各種距離(開口部の幅w、深さd、開口部の面積a)の具体的な値について特に制限はなく、上述した本願発明の規定を満足するように適宜決定されうる。なお、一例として、凹部12aの開口部の幅(本実施形態においては、円形の開口部の直径)wの平均値(W)は、好ましくは25〜120μmであり、より好ましくは40〜110μmであり、さらに好ましくは50〜100μmである。また、凹部12aの深さdの平均値(D)は、好ましくは20〜100μmであり、より好ましくは23〜75μmであり、さらに好ましくは25〜50μmである。さらに、凹部12aの開口部の面積aの平均値(A)は、好ましくは1600〜10000μmであり、より好ましくは1800〜9000μmであり、さらに好ましくは1900〜8000μmである。なお、場合によっては、これらの範囲を外れることがあってもよいことはもちろんである。
【0025】
本実施形態の撥水シート10におけるもう1つの特徴は、撥水シート本体12を平面視したときの、凹部12aが形成されている有効領域における凹部12aの占有率が所定の値以上である点にある。より詳細には、当該占有率は60%以上であり、好ましくは65〜99%であり、より好ましくは70〜90%であり、さらに好ましくは75〜80%である。当該占有率が60%を下回ると、たとえ上述したD/Aの値が上記所定の値を満足していたとしても、依然として撥水シート本体の表面に充分な撥水性を付与することができない。
【0026】
撥水シート本体12の凹部12aが形成された側の表面に、他の層がさらに積層されていてもよい(図示せず)。かような他の層としては、例えば、撥水シート本体12の撥水性をより一層向上させるための撥水層や、防汚層、ハードコート層などが挙げられる。凹部12aの表面にさらに積層される撥水層の具体的な形態としては、例えば、フッ素樹脂やシリコーン樹脂からなる層が例示されうる。かような撥水層は、フッ素樹脂やシリコーン樹脂またはそのモノマーを適用な溶媒中に溶解・分散させた後、得られた溶液を凹部12aの表面に塗布し、乾燥および必要に応じてモノマーの重合のための熱処理を施すことにより、形成されうる(後述する実施例2を参照)。
【0027】
以上、撥水シート本体12が1層のみからなる形態を例に挙げて本発明の一実施形態を詳細に説明したが、当該実施形態の変形例として、図4に示すように、撥水シート本体12が2層以上からなる形態もまた、採用されうる。図4に示す形態においては、撥水シート本体12が、第1の撥水シート本体12xと、第2の撥水シート本体12yとの2層からなる。そして、凹部12aは、第1の撥水シート本体12xのみに形成されている。かような構成とすることにより、凹部12aの深さを第1の撥水シート本体12xの厚さに調整できる。
【0028】
また、上記では、図1〜図3を参照しつつ、凹部12aが半球状の形状を有する実施形態について詳細に説明したが、凹部12aが他の形状を有していてもよいことはもちろんである。例えば、凹部12aは、半球状以外にも、円柱状、多角柱(直方体、三角柱、五角柱、六角柱)状、円錐状、多角錘(四角錘、三角錘)状、多角錐台状などの形状を有しうる。なお、これらの形状を有する場合のように、凹部12aの開口部の形状が円形ではない場合の開口部の幅wの値としては、開口部の面積と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を用いるものとする。例えば、開口部の形状が1辺50μmの正方形である場合(後述する実施例7〜9を参照)、開口部の面積は50×50=2500[μm]となる。2500[μm]の面積を有する円の直径は、2×(2500/π)1/2≒56.4μmと算出され、この値がこの場合の開口部の幅wの値となる。
【0029】
さらに、上記では、図1〜図3を参照しつつ、凹部12aが六方充填配置となるように形成された実施形態について詳細に説明したが、このように形成された多数の凹部12aにおいて、隣接する凹部12aどうしの境界の少なくとも一部が融合していることが好ましい。かような形態によれば、非凹部の面積を小さくできるという利点がある。なお、凹部12aは他の配置形態で配置されていてもよい。例えば、図5に示すように、凹部12aが格子状に配置されていてもよい。なお、図5に示す形態では、凹部12aの開口部の形状は正方形である。
【0030】
上述したように、本実施形態の撥水シート10において、撥水シート本体12の表面は高い撥水性を示す。ここで、撥水シート本体12の表面の撥水性の指標として、水の接触角の好ましい形態が規定される。具体的には、凹部12aを有する撥水シート本体12の表面に対する水の接触角は、好ましくは120°以上であり、より好ましくは125°以上であり、さらに好ましくは130°以上であり、特に好ましくは135°以上であり、最も好ましくは140°以上である。なお、撥水シート本体12の表面に対する水の接触角の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0031】
[粘着シート]
図1〜図4に示す実施形態の撥水シート10は、凹部12aが設けられている面とは反対側の面に粘着層が設けられることによって粘着シートとされてもよい。また、かような粘着層が設けられる場合には、粘着層の表面にさらに剥離シートが設けられてもよい。以下、本実施形態の撥水シートが粘着シートとされる場合の具体的な形態について説明するが、下記の形態のみには限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0032】
(粘着層)
粘着層は、粘着剤を含む。本実施形態の粘着シートにおいて用いられる粘着層の形態について特に制限はなく、粘着シートに関する従来公知の知見が適宜参照されうる。以下、粘着層の構成材料の一例について、より詳細に説明する。
【0033】
粘着層に含まれる粘着剤の具体的な構成については、特に制限なく採用されうる。粘着層に含まれる粘着剤の一例としては、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体からなるベースポリマーと、架橋剤とを含有するものが挙げられる。以下、かような形態を例に挙げてより詳細に説明するが、場合によっては、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などの粘着剤が用いられてももちろんよい。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸とモノアルコールとのエステルであって、当該モノアルコールの有するアルキル基がn−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ブチル基、イソブチル基、メチル基、エチル基、イソプロピル基などであるものが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体は、これらの(メタ)アクリル酸エステルの1種または2種以上を含みうる。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の全繰り返し単位に占める上述した(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位100モル%に対して、好ましくは30〜99モル%であり、より好ましくは50〜95モル%である。
【0036】
また、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体は、上述したもの以外の成分として、カルボキシル基、ヒドロキシル基、グリシジル基等の有機官能基を有する(メタ)アクリル酸系単量体由来の繰り返し単位を含んでもよい。かような成分としては、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の全繰り返し単位に占めるこれらの繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位100モル%に対して、好ましくは0.01〜15モル%であり、より好ましくは0.3〜10モル%である。
【0037】
粘着剤の凝集力を高める目的で、コモノマー成分として酢酸ビニルや(メタ)アクリル酸メチル等を適宜共重合することも可能である。また、粘着力を高める目的で粘着付与剤を添加することも可能である。
【0038】
粘着剤に含有される架橋剤についても、特に制限はない。ただし、粘着層の黄変を防止するという観点から、好ましくは、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物、エポキシ化合物、または金属キレート化合物が架橋剤として用いられる。これらの架橋剤は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、場合によっては、これら以外の従来公知の架橋剤が用いられてももちろんよい。
【0039】
上述した各種架橋剤の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。架橋剤の一例を挙げると、脂肪族イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、また、脂環式イソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、上述した化合物のビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などの形態で用いられてもよい。エポキシ化合物としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。また、金属キレート化合物としては、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタンなどが挙げられる。
【0040】
粘着剤における架橋剤の含有量について特に制限はないが、上述した(メタ)アクリル酸系(共)重合体100質量部に対して、好ましくは0.001〜15質量部であり、より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0041】
以上、粘着剤の一例として、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体からなるベースポリマーと、架橋剤とを含有するものを例に挙げて説明したが、その他の従来公知の粘着剤が用いられてももちろんよい。
【0042】
粘着層の厚さは特に制限されないが、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは15〜50μmである。粘着層の厚さは、被着体の表面(被着面)の凹凸の大きさにより適宜選択して設定される。
【0043】
粘着層は、従来公知のその他の添加剤をさらに含みうる。かような添加剤としては、例えば、粘着付与剤、充填剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂などの天然樹脂、C5系、C9系、DCPD系などの石油樹脂、クマロンインデン樹脂、キシレン樹脂などの合成樹脂などが挙げられる。充填剤としては、例えば、亜鉛華、シリカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0044】
(剥離シート)
剥離シートは、粘着シートの使用前において、粘着層を保護し、粘着性の低下を防止する機能を有する層である。そして、剥離シートは、粘着シートの使用時には剥離される。
【0045】
剥離シートの具体的な形態は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。剥離シートは一般的に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム;グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙などの紙といった材料を基材として構成される。これらの基材の厚みは、通常10〜400μm程度である。また、剥離シートの表面には、粘着層の剥離性を向上させるためのシリコーン樹脂などから構成される剥離剤からなる層が設けられてもよい。かような層が設けられる場合の当該層の厚みは、通常0.01〜5μm程度である。
【0046】
[用途]
上述した実施形態の撥水シート10や粘着シートは、例えば、太陽電池モジュール用保護シートとして用いられうる。これらの撥水シート10や粘着シートが保護シートとして適用されうる太陽電池モジュールについて特に制限はなく、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池等の従来公知の各種太陽電池モジュールに適用が可能である。上述した実施形態の撥水シート10や粘着シートは、上述したように優れた撥水性を示す。このため、これらの撥水シート10や粘着シートを太陽電池モジュールの保護シートとして用いることで、当該太陽電池モジュールの耐候性を向上させることが可能となる。
【0047】
その他、上述した実施形態の撥水シート10や粘着シートは、高い撥水性が要求されるマーキングフィルムなどの用途にも用いられうる。
【0048】
[製造方法]
上述した実施形態の撥水シート10や粘着シートの製造方法について特に制限はなく、撥水シートや粘着シートの製造に関する従来公知の手法が適宜参照されうる。一例として、例えば、撥水シートを粘着シートとする場合には、粘着剤を撥水シート本体に塗工し、乾燥・熱硬化といった処理を行なって粘着層を形成するという手法が用いられうる。さらに剥離シートを設ける場合には、これにさらに剥離シートを貼り合わせればよい。また、剥離シートを設ける場合には、剥離シートに予め粘着剤を塗工することで粘着層を形成し、これに撥水シート本体を貼り合わせるという手法が用いられてもよい。以下、本発明の撥水シート10における特徴的な構成である撥水シート本体12の表面への凹部12aの形成手法について、代表的な2つの形態を例に挙げて詳細に説明する。
【0049】
(第1の製造方法)
第1の製造方法は、マイクロビーズを用いた転写法である(後述する実施例1〜6を参照)。この方法では、まず、加熱により可塑化しうる撥水シート本体の表面に、所望の粒径を有するマイクロビーズを所望の量で配置する。次いで、撥水シート本体を加熱することにより可塑化させながら、マイクロビーズを撥水シート本体の表面に圧着させる。これにより、撥水シート本体の表面に凹部が形成される。よって、本形態の製造方法において製造される撥水シートを構成する撥水シート本体は、所定温度以上での加熱により可塑化しうるもの(すなわち、熱可塑性樹脂)であることが必要である。かような撥水シート本体としては、例えば、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)などの低密度ポリエチレン(LDPE))、ポリプロピレンのようなポリオレフィン;ポリメチルペンテン;エチレン−プロピレン−ブテン共重合体;ポリ塩化ビニル;熱可塑性ポリエステル;アクリル樹脂;熱可塑性ウレタン樹脂;ポリカーボネート;ポリスチレン;ポリメチルメタクリレート;エチレンビニルアセテートなどが挙げられる。
【0050】
本形態の製造方法では、用いるマイクロビーズの粒径およびその圧着の程度を調節することにより、撥水シート本体の表面に形成される凹部のサイズが制御されうる。例えば、後述する実施例1〜6で行ったように、球状のマイクロビーズが半分(半径深さまで)埋め込まれるように圧着することで、図1〜図3に示すように半球状の形状を有する凹部が形成される。この場合、用いるマイクロビーズの粒径が、凹部の開口部の直径に相当することになる。また、少なくとも一部のマイクロビーズが半分(半径深さ)以上埋め込まれるように調節すれば、隣接する凹部どうしが融着した構成の凹部群が形成されうる。なお、マイクロビーズの形状は球状のみに限定されるわけではなく、形成する凹部の形状に応じて適宜選択されうる。マイクロビーズを撥水シート本体の表面に圧着するための手段は特に制限されず、慣用されている加熱圧着(ホットプレス)機が適宜用いられうる。なお、加熱温度も特に制限されず、用いられる撥水シート本体の種類によって変動しうるため一義的に決定することは困難であるが、撥水シート本体のガラス転移温度(Tg)以上融点(mp)以下の温度であることが好ましい。あえて言えば、加熱温度は50〜150℃程度であることが好ましい。
【0051】
マイクロビーズの圧着により凹部を形成した後、必要に応じて撥水シート本体を冷却して固化させる。そして、凹部の形成に用いたマイクロビーズを除去することにより、一方の表面に凹部が形成されてなる撥水シート本体が完成する。なお、マイクロビーズを除去するための手段について特に制限はなく、撥水シート本体を傾斜させることでマイクロビーズを重力により落下させて除去してもよいし、粘着性のシートにマイクロビーズのみを接着させて当該シートを剥離することにより除去してもよい。
【0052】
(第2の製造方法)
第2の製造方法では、凸部が配置された型を用いて、表面に凹部が形成された撥水シート本体を製造する。
【0053】
かような手法により凹部が形成された撥水シート本体を製造するには、例えば、形成を希望する凹部に対応するように凸部が形成された型の表面に、撥水シート本体を圧着して、撥水シート本体の表面に凸部形状を転写することで、凹部を形成することができる(実施例8を参照)。この場合に用いられうる撥水シート本体に特に制限はない。特に、かような手法によれば、熱可塑性ではない樹脂からなる撥水シート本体の表面にも凹部を形成することができるという点で、好ましい。
【0054】
また、場合によっては、撥水シート本体の前駆体を含む溶液を、上述したのと同様の型の表面にキャスティングし、熱処理を施すことにより、当該前駆体を撥水シート本体の基材(例えば、樹脂)へと変換させて、撥水シート本体を作製してもよい。かような手法によってもまた、撥水シート本体の表面に、型の凸部に対応した凹部が形成されうる。なお、当該形態において、撥水シート本体の形成に用いられる溶液の一例としては、例えば、オルガノゾルが例示される。オルガノゾルとは、樹脂粉末が可塑剤とともに分散媒としての有機溶媒中に分散してなるコロイド溶液をいう。オルガノゾルの一例としては、例えば、塩化ビニルゾル(ポリ塩化ビニル樹脂を含む)、アクリルゾルなどが挙げられる。この際に用いられる有機溶媒について特に制限はなく、例えば、ブチルセロソルブ、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチルなどが用いられうる。かようなオルガノゾルの組成について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0055】
この場合に、撥水シート本体の前駆体から撥水シート本体を作製するための具体的な形態、例えば、前駆体の塗布量、熱処理の手法・条件なども特に制限されず、作製を希望する撥水シート本体の形態に応じて、適宜選択されうる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、下記の実施例のみに限定されるべきではない。
【0057】
[実施例1]
撥水シート本体を構成する基材として、厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ株式会社、商品名:SC)を準備した。この基材の一方の面に、平均粒子径100μmのガラスビーズを六方充填配置になるように並べ、温度120℃に設定された加熱圧着機を用いて、ガラスビーズを平均粒子径の約50%までポリプロピレンフィルムに埋め込んだ。そして、ガラスビーズが埋め込まれた面に粘着シートを貼り合わせ、粘着シートを剥がすことにより、ガラスビーズを取り除いた。
【0058】
これにより、ポリプロピレンフィルムの一方の面に、直径100μm、深さ50μmの半球状の凹部群が、間隔10μmの六方充填配置で形成されてなる撥水シートを得た。なお、凹部が形成された表面の面積に対して凹部の面積が占める割合は75%であり、非凹部の面積が占める割合は25%であった。
【0059】
[実施例2]
上述した実施例1において得られた撥水シートの凹部が形成された側の面に、下記の組成を有するポリジメチルシロキサン溶液を塗布し、120℃にて30秒間加熱乾燥した。これにより、厚さ0.1μmのポリジメチルシロキサン層を形成した。
【0060】
(ポリジメチルシロキサン溶液の組成)
付加反応型シリコーン:KS−847H(信越化学工業株式会社製)100質量部
白金系触媒:CAT PL−50T(信越化学工業株式会社製)1質量部
溶剤:メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶媒(適量)
[実施例3]
工程シートとしてのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面にフッ素系剥離剤を塗布し、その上にさらに上述した実施例2に記載のポリジメチルシロキサン溶液を塗布し、150℃にて2分間加熱乾燥した。これにより、基材としてのポリジメチルシロキサン層(厚さ:50μm)を形成した。
【0061】
次いで、上記で形成された基材(ポリジメチルシロキサン層)の露出面に、上述した実施例1と同様の手法により半球状(直径約100μm、深さ約50μm)の凹部群を形成した。そして最終的に、工程シートであるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がして、撥水シートを得た。
【0062】
[実施例4]
基材として、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム(三井化学ファブロ株式会社、商品名:ソーラーエバSC4、厚さ:600μm)を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、撥水シートを得た。
【0063】
[実施例5]
ガラスビーズとして、平均粒子径が50μmのものを用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、撥水シートを得た。なお、本実施例において六方充填配置で形成された半球状の凹部のサイズは、直径50μm、深さ25μmであった。また、凹部が形成された表面の面積に対して凹部の面積が占める割合は63%であり、非凹部の面積が占める割合は37%であった。
【0064】
[実施例6]
基材として、ポリフッ化ビニルフィルム(デュポン株式会社、商品名:テドラー(登録商標)TUB10AAH4、厚さ:38μm)を用いたこと以外は、上述した実施例5と同様の手法により、撥水シートを得た。
【0065】
[実施例7]
機械構造用炭素鋼板の表面に、開口部(正方形)の1辺が50μm、深さ30μmの逆四角錘台の形状を有する凹部群が間隔9μmで四方格子状に形成された凹型鋼板を作製した。
【0066】
一方、坪量127g/m2の中性紙の表面に、シラン架橋性ポリプロピレン(三菱樹脂株式会社、商品名:リンクロン(登録商標)XPM−800HM)を約230℃に加熱して押出し、基材としてのポリプロピレン層(厚さ:40μm)を形成した。
【0067】
次いで、上記ポリプロピレン層が冷却される前に、当該ポリプロピレン層に上記で作製した凹型鋼板を圧着した。これにより、底面(正方形)の1辺が約50μm、高さ約30μmの四角錘台の形状を有する凸部群が、間隔9μmで四方格子状に形成された工程シートを得た。
【0068】
得られた工程シートの表面に、下記の組成を有する塩化ビニルゾルを塗布し、溶剤を揮発させた後、190℃にて2分間加熱することにより、塩化ビニルフィルムを形成した。そして最終的に、塩化ビニルフィルムから工程シートを剥がすことにより、開口部(正方形)の1辺が約50μm、深さ約30μmの逆四角錘台の凹部群が四方格子状に形成されてなる撥水シートを得た。なお、凹部が形成された表面の面積に対して凹部の面積が占める割合は72%であり、非凹部の面積が占める割合は28%であった。
【0069】
(塩化ビニルゾルの組成)
塩化ビニルゾル微粒子(PolyOne社、商品名:Geon178)100質量部
ポリエステル系可塑剤(大日精化工業株式会社、商品名:ファインサイザー NS−4070)10質量部
溶剤:ブチルセロソルブ(適量)
[実施例8]
機械構造用炭層鋼板の表面に、底面(正方形)の1辺が50μm、高さ30μmの四角錘台の形状を有する凸部群が間隔9μmで四方格子状に形成された凸型鋼板を作製した。
【0070】
一方、基材として準備した非結晶性ポリエステルフィルム(三菱樹脂株式会社、商品名:ディアフィクス(登録商標)、厚さ:100μm)の一方の面に、上記で作製した凸型鋼板を接触させ、加熱圧着機を用いて圧着することにより、開口部1辺約50μm、深さ約30μmの逆四角錘台の形状を有する凹部群が、間隔約9μmで四方格子状に形成されてなる撥水シートを得た。なお、凹部が形成された表面の面積に対して凹部の面積が占める割合は72%であり、非凹部の面積が占める割合は28%であった。
【0071】
[実施例9]
基材として、上述した実施例1と同様の無延伸ポリプロピレンフィルムを用いたこと以外は、上述した実施例8と同様の手法により、撥水シートを得た。
【0072】
[比較例1]
凸型鋼板に形成される凸部の高さを10μmとしたこと以外は、上述した実施例9と同様の手法により、撥水シートを得た。
【0073】
[比較例2]
凸型鋼板の凸部の間隔を50μmとしたこと以外は、上述した実施例9と同様の手法により、撥水シートを得た。なお、凹部が形成された表面の面積に対して凹部の面積が占める割合は25%であり、非凹部の面積が占める割合は75%であった。
【0074】
[比較例3]
凸型鋼板の凸部の底面の1辺を500μm、高さ20μm、間隔を30μmとしたこと以外は、上述した実施例9と同様の手法により、撥水シートを得た。なお、凹部が形成された表面の面積に対して凹部の面積が占める割合は89%であり、非凹部の面積が占める割合は11%であった。
【0075】
[接触角の測定]
上記で得られたそれぞれの撥水シートの凹部が形成された面に対する水の接触角を、JIS R3257:1999(基板ガラス表面のぬれ性試験方法)に準拠し、接触角測定器(KRUSS社、商品名:DSA100)を使用して測定した。測定結果を下記の表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示す結果から、一方の表面に多数の凹部が設けられた撥水シートにおいて、凹部の開口部の平均面積(A[μm])に対する凹部の平均深さ(D[μm])の比の値(D/A)が所定の値(0.006)以上であって、かつ、凹部が形成された有効領域における凹部の占有率が60%以上であると、充分に高い接触角を示す撥水シートが得られることがわかる。
【0078】
特に、例えばポリフッ化ビニル(実施例6)やポリエチレンテレフタレート(実施例8)のように本来(凹形成前)の撥水性が低い(接触角が小さい)撥水シート本体(基材)を用いた場合であっても、本発明の構成とすることにより、優れた撥水性が付与されうる。
【符号の説明】
【0079】
10 撥水シート、
12 撥水シート本体、
12a 凹部、
12x 第1の撥水シート本体、
12y 第2の撥水シート本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水シート本体の一方の面に多数の凹部が設けられてなる撥水シートであって、前記凹部の開口部の平均面積(A[μm])に対する前記凹部の平均深さ(D[μm])の比の値(D/A)が0.006以上であり、前記撥水シート本体を平面視したときの、前記凹部が形成されている有効領域における前記凹部の占有率が60%以上である、撥水シート。
【請求項2】
前記凹部が六方充填配置で形成されている、請求項1に記載の撥水シート。
【請求項3】
隣接する凹部どうしの境界の少なくとも一部が融合している、請求項1または2に記載の撥水シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の撥水シートの前記撥水シート本体の他方の面に、粘着剤を含有する粘着層が配置されてなる、粘着シート。
【請求項5】
請求項4に記載の粘着シートからなる、太陽電池モジュール用保護シート。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法であって、
撥水シート本体を加熱しながら当該撥水シート本体の表面にマイクロビーズを圧着させることにより、前記凹部を形成する工程を含む、製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法であって、
前記凹部に対応するように凸部が形成された型を用いて、表面に凹部が形成された撥水シート本体を得る工程を含む、製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−77147(P2012−77147A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222187(P2010−222187)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】