説明

撮像レンズ、これを備えた撮像装置および携帯型情報端末

【課題】光束の収差の補正性能に優れ、小型化された撮像レンズを提供する。
【解決手段】本発明に係る撮像レンズ1は、撮像素子14に対して被写体像を結像する撮像レンズにおいて、上記被写体側に配置された、正の屈折力を有する第1レンズ11aと、撮像素子14の上記被写体側に配置された、第2レンズ群12とを備え、第2レンズ群12は、光学特性の互いに異なる材料からなる第3レンズおよび第4レンズが積層されてなり、第4レンズ12bは、撮像素子14側が平面形状となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラなどの小型カメラに用いられる撮像レンズに関するものであり、特に、携帯型情報端末および携帯電話機に内蔵される小型カメラとして好適なレンズ全長の短い撮像レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD(Charge Coupled Device)およびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)に代表される固体撮像素子を用いたデジタルスチルカメラの普及が急速に進み、多種多様なデジタルスチルカメラが開発されている。デジタルスチルカメラの小型化は、固体撮像素子における技術の進歩と共に年々進んでいる。その中でも、携帯型情報端末または携帯電話機に搭載されるデジタルスチルカメラは、その筐体における大きさの制限などにより、特に小型化が求められている。
【0003】
デジタルスチルカメラの小型化を行う上では、まず、固体撮像素子の画素数を増加させることが有効である。近年、半導体プロセスの技術進歩により、上記固体撮像素子の画素数は飛躍的に大きくなっており、これにより、一画素あたりの面積が小さくなって撮像素子全体の面積が縮小でき、携帯電話機などに搭載可能な大きさで、上述の携帯電話機などに搭載されるカメラにおいても300万〜500万画素のカメラが搭載されている。
【0004】
次に、デジタルスチルカメラの小型化のために、レンズについても小型化が求められている。固体撮像素子の小型化の比率に応じて、レンズを小型化する、すなわち、レンズの焦点距離を短縮させる場合、レンズ構成枚数を減らすことなくレンズを小型化することは、レンズ1枚あたりの肉厚が薄くなるため製造工程上困難である。一方、レンズ構成枚数を減らす場合、良好な光学性能を得るための収差補正に対して不利となる。
【0005】
このような現状において、例えば、特許文献1には、2枚のプラスチック非球面レンズによって構成された撮像レンズが開示されている。特許文献1によれば、光学特性が良好であり、小型化された撮像レンズを提供することができる。
【特許文献1】特開2005−121685号公報(平成17年5月12日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の撮像レンズは、光束の収差を補正するにあたり問題を有している。
【0007】
具体的には、特許文献1に開示された撮像レンズでは、全長の短いコンパクトな光学系を実現しているものの、2枚のレンズによって、光軸以外の光束を含めた全ての光束を補正しなければならないという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、光束の収差の補正性能に優れ、小型化された撮像レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る撮像レンズは、上記課題を解決するために、撮像素子に対して被写体像を結像する撮像レンズにおいて、被写体側に配置された、正の屈折力を有する、少なくとも1枚のレンズからなる被写体側レンズと、撮像素子の上記被写体側に配置された撮像素子側レンズ群とを備え、上記撮像素子側レンズ群は、光学特性の互いに異なる材料からなるレンズ層が2層以上積層されてなり、上記レンズ層のうち、最も撮像素子側に配置されているレンズ層は、撮像素子側が平面形状となっていることを特徴としている。
【0010】
上記の発明によれば、被写体側レンズによって補正することができない光束の収差を撮像素子側レンズ群によって効率良く補正することができる。すなわち、光軸外の光束の収差を補正するため、光学特性の互いに異なる材料からなるレンズを積層することにより、小さなスペースに収差補正に必要な非球面を少ない多数配置できる。これにより、光束の収差の補正性能に優れ、小型化された撮像レンズを提供することができる。
【0011】
また、本発明に係る撮像レンズでは、上記最も撮像素子側に配置されているレンズ層の平面形状に接して、平面板が備えられていることが好ましい。
【0012】
これにより、平面板は撮像側レンズ群に接触して備えられているので、撮像レンズ群を保持する際、鏡筒に新たなレンズ保持機構を設ける必要がない。すなわち、本発明に係る撮像レンズでは、レンズ保持機構を設ける必要のあるレンズの枚数を減らすことができ、撮像レンズの小型をさらに実現することが可能である。
【0013】
さらに、本発明に係る撮像素子側レンズ群は、光学特性の互いに異なる材料からなるレンズ層が2層以上積層されており、さらに最も撮像素子側のレンズ層に接触して平面板が備えられている。このような構成のため、撮像素子側レンズ群と平面板とを一体して取り扱うことができ、平面板と撮像素子とが、一体のパッケージとして取り扱うことができることと同様に、本撮像レンズが撮像素子を備える場合、撮像素子側レンズ群、平面板および撮像素子を一体のパッケージとして取り扱うことが可能である。
【0014】
また、本発明に係る撮像レンズでは、上記撮像レンズ群は、曲面形状を有しており、上記レンズ層は、当該撮像素子側レンズ群の中心から周辺までに亘って、正の屈折力が増加する構成であることが好ましい。
【0015】
上記の構成によって、上記の構成によって、撮像レンズ群の中央部の厚さを薄くし、光軸外部の厚さを厚くすることができる。これによって、光学長が長くなることを抑制でき、光学外の光束を効果的に補正することができる。
【0016】
また、本発明に係る撮像レンズでは、上記レンズ層のうちの少なくとも1層の材料が樹脂材料であることが好ましい。
【0017】
これにより、上記撮像レンズを製造するにあたり、量産性およびコスト面において有利となる。
【0018】
また、本発明に係る撮像レンズでは、上記最も撮像素子側に配置されているレンズ層の材料が樹脂材料であることが好ましい。
【0019】
これにより、上記撮像レンズを製造するにあたり、例えば、2P法などの公知の方法によって容易に製造することが可能となる。また、樹脂材料が用いられるので、上記撮像レンズを製造するにあたり、量産性およびコスト面において有利となる。
【0020】
また、本発明に係る撮像レンズでは、上記レンズ層のうち最も被写体側に位置するレンズ層は、樹脂材料からなることが好ましい。
【0021】
これにより、上記撮像レンズを製造するにあたり、量産性およびコスト面においてさらに有利となる。
【0022】
また、本発明に係る撮像レンズでは、上記レンズ層のうち最も被写体側に位置するレンズ層は、無機材料からなることことが好ましい。
【0023】
これにより、光学系の安定性および特性に優れた撮像レンズを提供することができる。
【0024】
また、本発明に係る撮像レンズでは、上記互いに異なる材料からなるそれぞれの層について、レンズ層における任意の少なくとも2層間でのd線による屈折率の差が0.05以上および/またはアッベ数の差が5以上であることが好ましい。
【0025】
上記のような屈折率および/またはアッベ数の差の値であることにより、撮像素子側レンズの非球面の面数を増加させた場合の効果が大きくなる。
【0026】
また、本発明に係る撮像レンズでは、最も撮像素子側のレンズ層における平面形状部分の面積と、平面板における上記平面形状部分側の面積とが等しい構成にすることができる。
【0027】
このような構成であれば、平面板のサイズを最小限とすることができ、平面板のサイズをコンパクト化し、製造コストを低減させることができる。
【0028】
また、本発明に係る撮像レンズでは、最も撮像素子側のレンズ層における平面形状部分の面積と、平面板における上記平面形状部分に接触している面の面積とが等しいことが好ましい。
【0029】
これにより、撮像素子側レンズ群および平面板は、より安定した状態で取り扱われることができる。
【0030】
また、本発明に係る撮像レンズでは、上記平面板は、赤外線カットフィルタおよび光学的ローパスフィルタの少なくとも一方の機能を有することが好ましい。
【0031】
平面板が上記の機能を有することによって、別途赤外線カットフィルムや、光学的ローパスフィルタを備える必要がなくなるため、それらを備える場合に比べ撮像レンズをさらに小型化することができる。
【0032】
また、本発明に係る撮像装置では、撮像レンズと、上記撮像レンズで結像された被写体像を撮像する撮像素子とを備えることが好ましい。
【0033】
上記撮像装置は、上記の撮像素子側レンズ群に平面板が接触して備えられているので、上記撮像レンズを備える撮像装置においては、平面板と撮像素子が一体のパッケージとできることと同様に、撮像素子と撮像素子側レンズ群とを一体のパッケージとして取り扱うことができる。一般に撮像レンズ系においてレンズ群は鏡胴やホルダといった保持機構を別途必要とするが、撮像素子と撮像素子側レンズ群とを一体とすることで撮像素子側レンズ群のための保持機構を設ける必要がなく、小型化が可能となり、高精度に位置決めが出来、パッケージ化されたものは、温度変化や衝撃などでズレが生じることが少なく、環境変化があっても性能を維持することができる。さらには、撮像装置の小型・軽量化を行うことができ、量産効率の高い撮像装置を提供することができる。また環境変化による性能の劣化を抑制することができる。
【0034】
また、本発明に係る携帯型情報端末では、上記撮像装置を備えることが好ましい。
【0035】
上記撮像レンズは光学特性が良好であり、小型化されているため、携帯型情報端末の光学特性の向上および小型化を達成することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る撮像レンズは、以上のように、光学特性の互いに異なる材料からなるレンズ層が2層以上積層されてなり、上記レンズ層のうち、最も撮像素子側に配置されているレンズ層は、撮像素子側が平面形状となっているものである。
【0037】
それゆえ、被写体側レンズによって補正することができない光束の収差を撮像素子側レンズ群によって効率良く補正することができる。すなわち、光軸外の光束の収差を補正するため、光学特性の互いに異なる材料からなるレンズを積層することにより、小さなスペースに収差補正に必要な非球面を少ない多数配置できる。これにより、光束の収差の補正性能に優れ、小型化された撮像レンズを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明に係る撮像レンズの一実施形態について図1ないし図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0039】
<撮像レンズ>
図1は、本実施の形態に係る撮像レンズ1の断面図を示している。同図に示すように、撮像レンズ1は、被写体側(図1においては左手側)から順に、第1レンズ群11、第2レンズ群(撮像素子側レンズ群)12および平面板13によって構成されている。さらに、第1レンズ群11は、2枚の第1レンズ(被写体側レンズ)11aおよび第2レンズ(被写体側レンズ)11bからなっており、第2レンズ群12は、第3レンズ(レンズ層)12aおよび第4レンズ(レンズ層)12bからなっている。
【0040】
なお、第1レンズ群11の被写体側には開口絞り10が配置され、平面板13の撮像素子側には撮像素子(固体撮像素子)14が配置されている。開口絞り10および撮像素子14は、撮像レンズ1を構成する要素ではないが、撮像レンズ1を構成する要素の位置関係を明確にするため、便宜上、同図中に図示している。
【0041】
開口絞り10は、撮像レンズ1を通過する光量を調節するための装置である。開口絞り10を備える位置については、特に限定されるものではない。同図においては、被写体側レンズの被写体側に開口絞り10が備えられている構成を図示しているが、第1レンズ11aおよび第2レンズ11bの間に備えられている構成としてもよいし、第1レンズ11aの撮像素子14側に備えられている構成としてもよい。
【0042】
第1レンズ群11は、物体側から入射した光束に対して正の屈折力を有しており、物体からの光を受ける開口絞り10側から順に、第1レンズ11a、および第2レンズ11bによって構成されている。
【0043】
同図に示すように第1レンズ群11は、第1レンズ11aおよび第2レンズ11bの2枚のレンズから構成されているが、この枚数に限定されるものではなく1枚のレンズから構成されていてもよい。しかし、撮像レンズ1の小型・軽量化と球面収差、非点収差および歪曲収差などの各種収差の補正をさらに良好に行えるという観点から、2枚程度であることが好ましい。
【0044】
第1レンズ11aの形状は、被写体側が凸形状であると共に球面形状である。一方、撮像素子14側は凹形状であると共に低次の非球面形状を有するレンズである。
【0045】
第2レンズ11bは、被写体側が凹形状であり、撮像素子14側が凸形状である。また、被写体側面および像面側面の両面とも非球面形状を有するレンズである。
【0046】
第1レンズ11aおよび第2レンズ11bの材料は、特に限定されるものではなく、具体的に、プラスチックなどの樹脂材料、ガラスおよび半導体などの無機材料、また、液晶、液体などをも用いることができる。さらにこれらの中でも、量産性およびコストの観点から樹脂材料(プラスチック)であることが好ましく、光学系の安定性および特性(例えば、屈折率、分散特性、耐熱性など)の観点からは、ガラスであることが好ましい。
【0047】
第1レンズ11aおよび第2レンズ11bの形成方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、第1レンズ11aおよび第2レンズ11bがプラスチックからなる場合には、射出成形により形成されることが好ましい。
【0048】
上記のように、第2レンズ群12は、平面板13の被写体側側面部に接するように形成されている曲面形状を有するレンズであることが好ましい。これにより、平面板は撮像側レンズ群に接触して備えられているので、撮像レンズ群を保持する際、鏡筒に新たなレンズ保持機構を設ける必要がない。すなわち、本発明に係る撮像レンズでは、レンズ保持機構を設ける必要のあるレンズの枚数を減らすことができ、撮像レンズの小型をさらに実現することが可能であるからである。
【0049】
また、第2レンズ群12は、第2レンズ群12の中心から周辺までに亘って、正の屈折力が増加する構成であることが好ましい。これによって、光学長が長くなることを抑制でき、光学外の光束を効果的に補正することができるからである。
【0050】
第2レンズ群12は被写体側の第3レンズ12aおよび撮像素子側の第4レンズ12bが積層されてなっていると共に、それぞれは光学特性の互いに異なる材料からなっているものである。さらに、第3レンズ12aの被写体側は曲面形状であり、第2レンズ群12の中心から周辺までに亘って、正の屈折力が増加する構成となるよう、第3レンズ12aは、第3レンズ12aの中心から周辺までに亘って、正の屈折力が増加する構成となっている。
【0051】
第3レンズ12aの形状については、曲面形状であれば特に限定されるものではないが、非球面形状であることが好ましく、光軸中心部が凹形状を有する非球面形状であることがより好ましい。第3レンズ12aの形状を光軸中心部が凹形状を有する非球面形状とすることによって、光軸中心部の厚さを薄くし、光軸外部の厚さを厚くできる。これによって、光学長を長くすることなく光軸外の光束を効果的に補正できる。なお、第3レンズ12aの形状において、光軸中心の厚さは0であってもよい。これは、光軸中心については、収差を補正する必要がほとんどないためである。なお、第3レンズ12aの周辺部において正の屈折力を有するような非球面形状であることが好ましい。
【0052】
第4レンズ12bは、第3レンズ12aと積層されてなっており、第4レンズ12bの撮像素子14側は平面形状となっている。このように平面形状となっているため、第4レンズ12bと平面板13とが面接触する構成にすることができる。
【0053】
第3レンズ12aおよび第4レンズ12bの材料は、上述した曲面形状を有するように第3レンズ12aを形成できるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、プラスチックなどの樹脂材料、ガラスおよび半導体などの無機材料、また、液晶、液体なども用いることができる。これらの中でも、量産性およびコストの観点からプラスチックであることが好ましく、光学系の安定性および特性(例えば、屈折率、分散特性および耐熱性など)の観点からは、ガラスであることが好ましい。
【0054】
第4レンズ12bの材料を樹脂とすることによって、平面板13上に第4レンズ12bを容易に形成することができ、さらに第3レンズ12aの形成の際に平面板13が損傷することを防ぐことができる。
【0055】
特に、第3レンズ12aおよび第4レンズ12bの材料のうち少なくとも何れかが樹脂であれば、第2レンズ群12を形成することが容易となる。具体的には、成型や研磨などにより得られた第3レンズ12aと平面板13との間に光学樹脂を充填し、2P(Photoreplication Process)法により硬化、接着することによって、第4レンズ12bを形成し、第2レンズ群12を得ることができる。
【0056】
また、第3レンズ12aおよび第4レンズ12bの両方を2P法によって形成してもよい。第4レンズ12bを平面板13上に2P法で形成した後、第3レンズ12aを第4レンズ12bの上に2P法で形成した後に、第3レンズ12aを第4レンズ12bの上に2P法で形成することによって、第2レンズ群12を得ることができる。
【0057】
第3レンズ12aおよび第4レンズ12bの光学特性は互いに異なるものであるが、これら2枚のレンズの屈折率またはアッベ数(逆分散率)の差が大きい場合には、上記2枚のレンズが積層される非球面の面数を増やす効果が大きくなるので好ましい。具体的には、屈折率の差が、0.05以上であれば好ましい。また、アッベ数の差が5以上であれば好ましい。
【0058】
なお、撮像レンズ1においては、第2レンズ群12のレンズは2枚である構成としているが、第3レンズ12aと第4レンズ12bとの間にさらにレンズを有する構成とすることができる。その場合、2P法などの従来公知の方法を用いて第2レンズ群を製造することができる。第2レンズ群12が3枚以上のレンズを備えている場合には、第2レンズ群12が備える3枚以上のレンズにおける任意の少なくとも2枚のレンズ間でのd線による屈折率の差が0.05以上および/またはアッベ数の差が5以上であればよい。
【0059】
平面板13は、通常、撮像素子14の損傷を防止するために用いられるものであり、ゴミ、埃などの異物から撮像素子14を保護するためのものである。撮像レンズ1においては、第2レンズ群12が平面板13の被写体側側面部に形成されていることによって、第3レンズ12aを保持するためのレンズ保持機構を設ける必要がない。また、上記平面板13上に光学特性の互いに異なるレンズを複数積層することにより、光束の収差を補正に必要な非球面を平面上に多数形成でき、第2レンズ群12を小さなスペースに配置させることができる。なお、第2レンズ群12と平面板13とが1つの部材として一体成形されていれば、第2レンズ群と平面板13とを安定して取り扱いうことができるため、さらに好ましい。
【0060】
また、最も撮像素子14側にある第4レンズ12bの平面形状部分の面積と、平面板13における、第4レンズ12bの平面形状部分に接触している面積とを等しい構成にすることができる。これにより、平面板13の大きさを必要最小限の大きさにすることができるため、製造コストを低減させることができる。なお、平面板13の面積と、第4レンズ12bの面積とは、完全に等しくなくとも上記の効果を得ることは可能であり、略等しい面積であってもよい。
【0061】
平面板13の材料は、特に限定されるものではないが、平面板13自体は、撮像レンズ1に入射した光線に対して何ら影響を及ぼさない必要があるため、光学コーティング膜を有するガラスからなることが好ましい。すなわち、撮像素子14を保護するためのカバーガラスであることが好ましい。なお、本実施形態において、平面板13は、撮像素子14のカバーとしての役割を担っている。
【0062】
また、平面板13は、赤外線カットフィルタおよび光学的ローパスフィルタの少なくとも一方の機能を有することが好ましく、上記の両機能を有していることがさらに好ましい。これにより、撮像レンズ1に、別途赤外線カットフィルムや光学的ローパスフィルタを備える必要がなくなるため、撮像レンズ1をさらに小型化することができる。
【0063】
撮像素子14は、撮像レンズ1を通過した光線を電気信号に変換するための電気変換部を備えた電子部品である。一般的に、撮像素子14には、その受光側の面の中央部に画素が2次元的に配置された電気変換部が形成され、その周囲に信号処理回路が形成されている。信号処理回路は、各画素を順次駆動し信号電荷を得る駆動回路部と、各信号電荷をデジタル信号に変換するA/D変換部と、このデジタル信号を用いて画像信号出力を形成する信号処理部などから構成されている。なお、撮像素子14の種類は、特に限定されるものではない。具体的には、CCDおよびCMOSなどを用いることができる。
【0064】
次に、上記撮像レンズ1の詳細なデータについて説明する。表1および表2は、撮像レンズ1の具体的な撮像レンズのデータを示している。表1は撮像レンズの基本的なデータを示している。
【0065】
ここで、本明細書等における「非球面形状」について説明する。本明細書等に係る非球面形状は、光軸方向にZ軸、光軸と直交する方向にY軸をとるとき、数式1に示す非球面式を用いて表すことができる。
【0066】
【数1】

【0067】
ただし、Kは円錐定数、Rは曲率半径、A、B、CおよびDはそれぞれ第4次、第6次、第8次および第10次の非球面係数、Zは光軸から高さYの位置にある非球面上の点から、非球面の頂点の接平面(光軸に垂直な平面)に下ろした垂線の長さを示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
表1において、「f」は撮像レンズ全体の合成焦点距離、「FNO」は撮像レンズのFナンバー(F値)、「d」は撮像素子の対角長さを示している。
【0071】
表1および2に示したレンズデータにおける面番号Siの欄には、最も被写体側の構成要素の面を1番目として、撮像素子側に向かうに従って順次増加するように番号を付したi番目(i=1〜9)の面の番号を示している。曲率半径Riの欄には、被写体側からi番目の面の曲率半径の値を示している。面間隔Diの欄には、被写体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との光軸上の間隔を示している。RiおよびDiの値の単位はmm(ミリメートル)である。屈折率およびアッベ数の欄には、平面板13も含めたレンズ要素(第1レンズ11a、第2レンズ11b、第3レンズ12a、第4レンズ12bおよび平面板13)のd線(587.6nm)に対する屈折率およびアッベ数の値を示している。前述したとおり、屈折率の違いが、0.05以上、または、アッベ数(逆分散率)の差が5以上あれば好ましい。このような値であれば、撮像素子14側レンズの非球面の面数を増加させた場合の効果が大きくなる。屈折率およびアッベ数の具体的な数値としては、特に限定されるものではないが、屈折率が1.4以上1.8以下であり、アッベ数が45以上60以下である範囲を挙げることができる。
【0072】
また、表2は面番号3〜6の非球面形状に関するデータ(非球面係数)を示している。
【0073】
本実施の形態に係る撮像レンズ1では、d線での屈折率ndとアッベ数νdは、第3レンズ12a_nd=1.75、νd=45.0、第4レンズ12b_nd=1.45、νd=50.0、平面板13_nd=1.52、νd=64.2であり、それぞれ屈折率の違いが、0.05以上、または、アッベ数(逆分散率)の差が5以上である。
【0074】
図2において、(a)は、撮像レンズ1の球面収差を、(b)は撮像レンズ1の非点収差を、(c)は撮像レンズ1の歪曲収差を示す収差図である。各収差図には、d線を基準波長とした収差を示すが、球面収差図においては、440nmおよび660nmについての収差も示す。非点収差図において、実線はタンジェンシャル(メリディオナル)方向の収差を示し、点線はサジタル方向の収差を示している。
【0075】
同図から分かるように、平面板13上に第3レンズ12aおよび第4レンズ12bを積層するよう形成することによって、十分に収差補正がなされた撮像レンズ1を実現することができる。
【0076】
<撮像装置20の構成>
撮像装置20の構成について、図3を参照して以下に説明する。同図は、撮像装置20の断面図である。なお、図4では、撮像レンズとして、撮像レンズ1の構成を採用しているが、もちろんこれに限定されるものではなく、本発明において取り得る範囲で適宜変更することが可能である。
【0077】
図3に示すように、撮像装置20は、撮像レンズ1、撮像素子14、筐体21、支持基板22、フレキシブルプリント基板23、赤外線カットフィルタ24およびレンズ保持部25によって構成されている。
【0078】
また、本実施の形態における撮像素子14の受光側(被写体側)面の外縁近傍には、多数のパッド(図示しない)が設けられており、ボンディングワイヤWを介して支持基板22に接続されている。なお、撮像素子14の種類は、特に限定されるものではない。具体的には、CCDおよびCMOSなどを用いることができる。
【0079】
支持基板22は、その一方の面において撮像素子14および筐体21を支持する硬質の基板である。また、支持基板22の他方の面(撮像素子14が支持されている面と反対側の面)には、その一端部が接続されたフレキシブルプリント基板23が備えられている。支持基板22には、表裏両面に多数の信号伝達用パッドが設けられており、一方の面ではボンディングワイヤWを介して撮像素子14と接続され、他方の面ではフレキシブルプリント基板23と接続されている。
【0080】
フレキシブルプリント基板23は、外部の回路(例えば、撮像装置20を搭載した装置が有する制御回路)から撮像素子14を駆動するための電圧およびクロック信号の供給を受けたり、また、デジタルYUV信号を外部へ出力したりすることを可能にする基板である。なお、Yは輝度信号を、Uは赤と輝度信号との色差信号、Vは青と輝度信号との色差信号である。
【0081】
筐体21は、支持基板22の撮像素子14側の面に撮像素子14を覆うように固定配置された遮光性のものである。具体的には、筐体21は、撮像素子14側においては撮像素子14を囲むように広く開口されて支持基板22に当接されており、他端側においては小開口を有するフランジ付きの筒状に形成されている。
【0082】
筐体21は、その内部にレンズ保持部25を備えている。レンズ保持部25は、第1レンズ11a、第2レンズ11bおよび開口絞り10を保持するための部材である。
【0083】
また、筐体21の上部には、赤外線カットフィルタ24が固定配置されている。なお赤外線カットフィルタ24は、撮像レンズ1と撮像素子14との間に固定配置されていてもよい。なお、平面板13に赤外光カット機能を付加していてもよい。
【0084】
撮像装置20は、上記の第2レンズ群12に平面板13が接触して備えられているので、上記撮像レンズ1を備える撮像装置20においては、平面板13と撮像素子が一体のパッケージとできることと同様に、撮像素子と撮像素子側レンズ群とを一体のパッケージとして取り扱うことができる。
【0085】
一般に撮像レンズ系においてレンズ群は鏡胴やホルダといった保持機構を別途必要とするが、撮像素子と撮像素子側レンズ群とを一体とすることで撮像素子側レンズ群のための保持機構を設ける必要がなく、小型化が可能となり、高精度に位置決めが出来、パッケージ化されたものは、温度変化や衝撃などでズレが生じることが少なく、環境変化があっても性能を維持することができる。さらには、撮像装置の小型・軽量化を行うことができ、量産効率の高い撮像装置を提供することができる。また環境変化による性能の劣化を抑制することができる。
【0086】
また、本実施の形態における携帯型情報端末は、撮像レンズ1を備えるものである。本実施の形態に係る携帯情報端末としては、撮像レンズを備えることができるものであれば特に限定されない。具体的には、携帯型電話機、モバイル機器、ノートパソコンなどが挙げられる。
【0087】
以上、本発明の具体的な実施例を示したが、本発明は、先に示した実施例の具体的形状および数値に限定されるものではなく、所望の光学特性および光学長を得るために、各パラメータを適宜変更することができる。
【0088】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係る撮像レンズは、デジタルスチルカメラなどの撮像機器に好適に用いることができ、携帯用途に適した小型の撮像機器に対して特に好適に用いることができる。具体的な撮像機器としては、携帯型情報端末または携帯電話機に搭載されるデジタルカメラを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本実施の形態に係る撮像レンズの断面図である。
【図2】本実施の形態に係る撮像レンズの球面収差、非点収差および歪曲収差を示す収差図である。
【図3】本実施の形態に係る撮像装置の断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 撮像レンズ
10 開口絞り
11 第1レンズ群
11a 第1レンズ
11b 第2レンズ
12 第2レンズ群
12a 第3レンズ
12b 第4レンズ
13 平面板
14 撮像素子
20 撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子に対して被写体像を結像する撮像レンズにおいて、
被写体側に配置された、正の屈折力を有する、少なくとも1枚のレンズからなる被写体側レンズと、
撮像素子の上記被写体側に配置された撮像素子側レンズ群とを備え、
上記撮像素子側レンズ群は、光学特性の互いに異なる材料からなるレンズ層が2層以上積層されてなり、
上記レンズ層のうち、最も撮像素子側に配置されているレンズ層は、撮像素子側が平面形状となっていることを特徴とする撮像レンズ。
【請求項2】
上記最も撮像素子側に配置されているレンズ層の平面形状に接して、平面板が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項3】
上記レンズ層は、当該撮像素子側レンズ群の中心から周辺までに亘って、正の屈折力が増加する構成であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
【請求項4】
上記撮像素子側レンズ群は、曲面形状を有していることを特徴とする請求項3に記載の撮像レンズ。
【請求項5】
上記レンズ層のうちの少なくとも1層の材料が樹脂材料であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項6】
上記最も撮像素子側に配置されているレンズ層の材料が樹脂材料であることを特徴とする請求項5の何れか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項7】
上記レンズ層のうち最も被写体側に位置するレンズ層は、樹脂材料からなることを特徴とする請求項5または6に記載の撮像レンズ。
【請求項8】
上記レンズ層のうち最も被写体側に位置するレンズ層は、無機材料からなることを特徴とする請求項5または6に記載の撮像レンズ。
【請求項9】
上記互いに異なる材料からなる2層以上のレンズ層における任意の少なくとも2層間でのd線による屈折率の差が0.05以上および/またはアッベ数の差が5以上であることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項10】
最も撮像素子側のレンズ層における平面形状部分の面積と、平面板における上記平面形状部分側の面積とが等しいことを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項11】
上記平面板は、赤外線カットフィルタおよび光学的ローパスフィルタの少なくとも一方の機能を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の撮像レンズと、
上記撮像レンズで結像された被写体像を撮像する撮像素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
請求項12に記載の撮像装置を備えることを特徴とする携帯型情報端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−299271(P2008−299271A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148286(P2007−148286)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】