説明

撮像レンズ装置

【課題】広範囲な合焦範囲を有し、合焦範囲全般にわたって良好な解像度を有する撮像レンズ装置を提供する。
【解決手段】撮像レンズ装置1は、所定の物体距離にある被写体を合焦するための液晶レンズであって、液晶層24aと、液晶層24aの一方の面に隣接して配置され、第1の電極27aと、液晶層24aとの境界面に形成されたフレネルレンズ面26とを有する第1の透明基板21と、液晶層24aの他方の面に隣接して配置され、第2の電極27bを有する第2の透明基板22とを有し、液晶層24aが、液晶層24aに入射する異常光線に対して所定の屈折率を有する場合に、異常光線に対して回折光学素子として機能する液晶レンズ3と、第1の電極27aと第2の電極27b間に印加する電圧を変化させることにより、液晶層24aに入射する異常光線に対する屈折率を変化させるコントローラ8と、被写体の像を撮像する撮像素子6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像レンズ装置に関し、特に可変焦点レンズとして液晶レンズを用いた撮像レンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、デジタルカメラを備えた携帯電話機(以下、カメラ付き携帯電話機とする)が普及している。携帯性の点で、携帯電話機は、小型軽量で、かつ薄型であることが望まれている。従って、カメラ付き携帯電話機に搭載される撮像レンズ装置にも、小型軽量であることと、薄型であることが要求される。また、カメラに搭載されるCCDセンサーまたはCMOSセンサー等の固体撮像素子は、より高い画素数を有するようになり、数百万画素を有する撮像素子が製品化されている。そして、固体撮像素子が有する画素数の増加に伴い、その画素サイズもより小さくなっている。そのため、そのような固体撮像素子を検出器として使用する撮像レンズは、高い解像度を有することが要求される。さらに、携帯電話機が備えるカメラモジュールに要求されるカメラ本来の機能も、より高くなっている。例えば、携帯電話機が備えるカメラモジュールは、可変焦点機構によるオートフォーカス、または、至近距離における被写体の撮影、すなわちマクロ撮影等の機能を有することが求められる。
【0003】
これらの機能を達成するため、従来は、カメラモジュールにステッピングモーターまたはボイスコイルモーター等を有する駆動機構を設けた。そして、合焦時、またはマクロ撮影時には、駆動機構を用いて光学系全体または光学系に含まれる一部のレンズを移動することにより、物体面と像面の共役関係を変化させて合焦する。しかし、従来の技術では、カメラモジュールに駆動機構を設けたことにより、カメラモジュールが大型化するという問題があった。さらに、レンズを駆動するために駆動機構は多くの電力を消費するため、消費電力が増加するという問題があった。さらに、レンズを移動することにより、レンズが傾き、あるいはレンズの光軸がずれ、そのため光学系に収差が発生して、光学系のレンズ性能が劣化するおそれがあった。
【0004】
このような問題を解消するために、液晶レンズに代表されるレンズパワー可変のレンズを用いて、撮像レンズの焦点距離を変える合焦点機構が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の合焦点機構は、2枚の透明基板と、それら透明基板に挟まれた液晶層と、それら透明基板の少なくとも一つに設けられた輪帯電極を有する液晶レンズを有する。そして、その合焦点機構は、輪帯電極を用いて液晶層に印加する電圧の分布を変化させることにより、液晶層内の屈折率分布を変化させる。その結果として、液晶レンズのレンズパワーが変化することにより、合焦点機構は、撮像レンズの合焦位置を変えることができる。また、2枚の透明基板と、それら透明基板に挟まれた液晶層と、それら透明基板の少なくとも一つに設けられた電極を有し、透明基板の一方が曲面で構成される液晶レンズが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の液晶レンズは、液晶層に印加する電圧を変化させることにより、その液晶レンズのレンズパワーを変化させることができる。
【0005】
【特許文献1】特許第3047082号公報(第1−4頁、第1−3図)
【特許文献2】特開2001−272646号公報(第1頁、第1−3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された合焦点機構では、輪帯電極が一様でない構造を有するため、液晶層に滑らかな屈折率分布を持たせることが困難である。また、輪帯電極自身により、液晶レンズに入射する光の回折及び散乱が発生する。そのため、液晶レンズのレンズ性能が低下してしまう。
【0007】
さらに、上記特許文献1または2に開示される手法で合焦機能を実現する場合、マクロ撮影等に対応可能なように合焦可能範囲を広げるためには、液晶レンズの最大レンズパワーを大きくすること、及び液晶レンズのレンズパワーの変動範囲を広くすることが必要となる。そのためには、液晶レンズの液晶層を厚くしなければならない。しかし、液晶層が厚くなるほど、液晶レンズの応答性能が低下し、またそのような液晶レンズの製造は困難となる。
【0008】
従って、従来の液晶レンズの用途は、オートフォーカス機能の実現に限られていた。一方で、液晶レンズは、その他の固定レンズと同程度の光路長を有している。そのため、薄型化要求の厳しい携帯電話機用のカメラモジュールに液晶レンズを採用する場合、光路長が長くなり、カメラモジュールの薄型化が困難となる。さらに、液晶レンズが有するレンズパワーの最大値を大きくすることができないため、合焦可能範囲が限られている。
【0009】
また、撮像レンズは、通常、ある共役関係で撮像レンズの収差が最適となるように設計されている。そのため、合焦のために撮像レンズに含まれる液晶レンズのレンズパワーを変化させた場合、レンズパワーの変動量に応じて、像面湾曲、非点収差等の収差が大きくなり、撮像レンズの解像度が低下する。
【0010】
さらに、従来は、屈折レンズの組み合わせによって撮像レンズの色収差を補正していた。そのため、撮像レンズを、分散特性の異なるレンズ材質からなる複数のレンズで構成し、その複数のレンズの一部を負のレンズパワーを持つ凹レンズとすることが必要となる。したがって、撮像レンズの光路長を短くすることは困難であり、また撮像レンズのコストを下げることが難しいという課題があった。
【0011】
そこで、液晶レンズの透明基板の少なくとも一方をフレネルレンズ形状に形成することにより、液晶レンズを回折光学素子として扱うことが考えられる。この場合、回折光学素子が、例えば、屈折レンズと逆の分散特性を有することを色収差の補正に利用することができる。しかし、色収差を低減できる液晶レンズのレンズパワーの範囲は、位相整合が成り立つ範囲に限定され、合焦範囲全域での色収差を低減することはできなかった。
【0012】
本発明の目的は、上述した従来技術による問題点を解消できる、可動部無しのオートフォーカス機能を持った撮像レンズ装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、合焦範囲全般にわたってレンズ収差が良好に補正された撮像レンズ装置を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、マクロ撮影も可能なオートフォーカス機能を持った撮像レンズ装置を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、小型で応答性能に優れた可動部無しのオートフォーカス機能を持った撮像レンズ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明の撮像レンズ装置は、基本的には下記記載の構成要件を採用するものである。
本発明に係る撮像レンズ装置は、所定の物体距離にある被写体を合焦するための液晶レンズであって、第1の液晶層と、第1の液晶層の一方の面に隣接して配置され、第1の電極と、第1の液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面とを有する第1の透明基板と、第1の液晶層の他方の面に隣接して配置され、第2の電極を有する第2の透明基板とを有し、第1の液晶層が、第1の液晶層に入射する異常光線に対して所定の屈折率を有する場合に、異常光線に対して回折光学素子として機能する液晶レンズと、第1の電極と第2の電極間に印加する電圧を変化させることにより、第1の液晶層の異常光線に対する屈折率を変化させるコントローラと、被写体の像を撮像する撮像素子と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、液晶レンズの液晶層の屈折率を変化させることで液晶レンズのレンズパワーを可変とし、物体距離が無限遠から至近距離まで変化しても、液晶レンズを含む結像レンズ系の一部又は全て、あるいは撮像素子を移動させることなく、被写体の像を撮像素子の撮像面上に合焦させることができる。そのため、小型で合焦を行う際の応答性に優れた撮像レンズ装置が提供される。また、第1の液晶層の異常光線に対する屈折率が所定の値を有する場合には、液晶レンズが回折光学素子としても機能するので、良好な収差補正、特に色収差の補正を行うことができる。そのため、合焦可能範囲を広くしても、物体距離の変動に伴う収差変動を少なくすることができるので、マクロ機能も備えた撮像レンズ装置を提供することができる。なお、本明細書において、異常光線とは、液晶層に入射する光線の偏光成分のうち、液晶層内に含まれる液晶分子の長軸方向の変化に伴って液晶層の屈折率が変化する偏光成分をいう。また、常光線とは、液晶層に入射する光線の偏光成分のうち、異常光線と直交する偏光成分をいう。
【0015】
また、フレネルレンズ面には、フレネルレンズ面を複数の領域に区切る段差が形成され、第1の液晶層に入射する異常光線に対して段差で生じる光路差が、第1の液晶層の異常光線に対する屈折率が所定の値を有する場合に撮像素子が感度を有する波長の整数倍であることが好ましい。このようにフレネルレンズ面に形成される段差を決定することで、液晶レンズを所望の波長に対して回折光学素子として機能させることができる。
【0016】
また、第1の液晶層の異常光線に対する所定の屈折率は、第1の液晶層の異常光線に対する屈折率を変化させる範囲に含まれる屈折率の最小値であることが好ましい。このように屈折率の変動範囲を設定することで、フレネルレンズ面に形成された段差で生じる光路差を、撮像素子が検出しようとする波長の光線に対して常に1波長よりも大きくすることができる。そのため、特に入射光が白色光である場合、可干渉距離が短いので、液晶層の屈折率を上記の所定の屈折率以外に設定したとき、フレネルレンズ面の隣接する領域を通過する光線同士の干渉によるレンズ性能の低下を抑制することができる。
【0017】
さらに、第1の透明基板と第1の液晶層の常光線に対する屈折率とが一致することが好ましい。第1の透明基板と第1の液晶層の常光線に対する屈折率とが一致する場合、液晶レンズは、常光線に対してはレンズパワーを有さないので、レンズ設計が容易となる。
【0018】
あるいは、液晶レンズは、第1の液晶層に入射する常光線に対しても回折光学素子として機能することが好ましい。液晶レンズは、何れの偏光成分に対しても、回折光学素子として機能するので、液晶レンズを含むレンズ系の収差補正が容易となる。
さらに、フレネルレンズ面は、非球面であることが好ましい。
【0019】
さらに、液晶レンズの第2の透明基板は、第1の液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面を有することが好ましい。液晶レンズが回折光学素子として機能する場合、入射光の波長または入射角に依存した回折効率の低下を低減することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る撮像レンズ装置において、液晶レンズは、第2の液晶層と、第2の液晶層の一方の面に隣接して配置され、第2の液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面を有する第3の透明基板と、第2の液晶層の他方の面に隣接して配置される第4の透明基板とを有し、第1の液晶層内の液晶と、第2の液晶層内の液晶とは、それぞれの長軸方向が直交するように配向され、第2の液晶層が、第2の液晶層に入射する異常光線に対して所定の屈折率を有する場合に、異常光線に対して回折光学素子として機能することが好ましい。
このように、液晶の配向方向が互いに直交した2層の液晶層を積層し、それぞれの液晶層の境界にフレネルレンズ面を形成することで、各液晶層の屈折率を変化させることにより全ての偏光成分に対して液晶レンズのパワーを変化させることができる。また第1の液晶層及び第2の液晶層が所定の屈折率を有する場合、液晶レンズは、全ての偏光成分に対して回折光学素子としても機能するので、良好な収差補正、特に色収差の補正を行うことができる。
【0021】
さらに、第1の透明基板が有するフレネルレンズ面及び第3の透明基板が有するフレネルレンズ面は、それぞれシリンドリカルレンズ形状を有し、且つフレネルレンズとして機能する方向が直交するように配置されることが好ましい。
フレネルレンズ面を同心円状のパターンとして形成した場合と同等のレンズ効果を有しながら、フレネルレンズ面上に電極を形成する際に断線の発生などの不具合が生じる可能性を低減することができる。
【0022】
また、本発明に係る他の撮像レンズ装置は、所定の物体距離にある被写体を合焦するための液晶レンズであって、第1の液晶層と、第1の液晶層の一方の面に隣接して配置され、第1の電極と第1の液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面とを有する第1の透明基板と、第1の液晶層の他方の面に隣接して配置され、第2の電極を有する第2の透明基板とを有し、第1の液晶層に入射する常光線に対して回折光学素子として機能する液晶レンズと、第1の電極と第2の電極間に印加する電圧を変化させることにより、第1の液晶層の異常光線に対する屈折率を変化させるコントローラと、被写体の像を撮像する撮像素子と、を有することを特徴とする。
第1の液晶層に入射する常光線に対しては、液晶レンズを回折光学素子として機能させ、レンズ系の収差補正を行うとともに、第1の液晶層に入射する異常光線に対しては、液晶レンズをレンズパワー可変のフレネルレンズとして機能させることができる。そのため、合焦可能範囲を広くしても、物体距離の変動に伴う収差変動を少なくすることができるので、マクロ機能も備えた撮像レンズ装置を提供することができる。
【0023】
また、フレネルレンズ面には、フレネルレンズ面を複数の領域に区切る段差が形成され、第1の液晶層に入射する常光線に対して段差で生じる光路差が、撮像素子が感度を有する波長の整数倍であることが好ましい。このようにフレネルレンズ面に形成される段差を決定することで、液晶レンズを所望の波長に対して回折光学素子として機能させることができる。
【0024】
さらに、本発明に係る撮像レンズ装置において、第1の液晶層に入射する常光線に対して第1の段差で生じる光路差は、上記の波長の1倍又は2倍であり、コントローラは、第1の液晶層に入射する異常光線に対して第1の段差で生じる光路差の最小値が異常光線のコヒーレンス長より大きくなるように第1の液晶層の異常光線に対する屈折率を変化させることが好ましい。このように屈折率の変動範囲を設定することで、液晶レンズは、第1の液晶層に入射する異常光線に対して、フレネルレンズ面の隣接する領域を通過する光線同士の干渉を防止できる。そのため、その干渉の発生によるレンズ性能の低下を抑制することができる。なお、第1の液晶層の異常光線に対する屈折率の変動範囲の上限については、撮像レンズ装置の仕様に従って任意に定められる。
【0025】
さらに、液晶レンズの第2の透明基板は、第1の液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面を有することが好ましい。
【0026】
さらに、液晶レンズは、第2の液晶層と、第2の液晶層の一方の面に隣接して配置され、第2の液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面を有する第3の透明基板と、第2の液晶層の他方の面に隣接して配置される第4の透明基板とを有し、第1の液晶層内の液晶と、第2の液晶層内の液晶とは、それぞれの長軸方向が直交するように配向され、第2の液晶層が、第2の液晶層に入射する常光線に対して回折光学素子として機能することが好ましい。
【0027】
係る構成により、第1と第2の液晶層に同じ駆動波形の電界を印加することにより、入射光の直交する偏向成分の一方に対して第1のフレネルレンズ面を回折光学素子として機能させて収差補正を行うとともに、第2のフレネルレンズ面をレンズパワー可変のレンズとし、直交する偏向成分の他方に対して第1のフレネルレンズ面をレンズパワー可変のレンズとするとともに、第2のフレネルレンズ面を回折光学素子として機能させて収差補正を行うことができる。そのため、液晶レンズは、入射光の全ての偏光成分に対して、良好な収差補正を行いつつ、合焦のためにレンズパワーを変えることができる。
【0028】
さらに、第1の透明基板が有するフレネルレンズ面及び第3の透明基板が有するフレネルレンズ面は、それぞれシリンドリカルレンズ形状を有し、且つフレネルレンズとして機能する方向が直交するように配置されることが好ましい。
【0029】
また、液晶レンズは、回折光学素子として機能する場合、正のパワーを持つレンズであることが好ましい。回折光学素子は、一般的な屈折レンズと逆の分散特性を有する。そのため、回折光学素子として機能する液晶レンズが正のレンズパワーを持つことにより、同様に正のレンズパワーを有する屈折レンズの色収差をキャンセルするので、液晶レンズを含むレンズ系の色収差を良好に補正することができる。
【0030】
また、本発明に係る撮像装置に使用される液晶レンズにおいて、第1の透明基板は、フレネルレンズ面が形成された部材を有することが好ましい。そして、第1の透明基板は、平板状の基板をさらに有し、第1の電極は、平板状の基板と部材の間に配置されることが好ましい。電極を平板状の基板とフレネルレンズ面が形成された部材の間に配置することで、滑らかな面上に電極を形成することができるので、フレネルレンズ面上に電極を形成した場合に生じるおそれのある断線や、フレネルレンズ面近傍での液晶に印加される横電界による配向の乱れを防止することができる。
あるいは、フレネルレンズ面は、第1の透明基板の一部に形成されてもよい。
【0031】
また、本発明に係る液晶レンズは、液晶層と、液晶層の一方の面に隣接して配置され、液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面とを有する第1の透明基板と、液晶層の他方の面に隣接して配置される第2の透明基板と、液晶層に入射する異常光線に対する屈折率が変化するように液晶層に印加する電圧を変化させるための第1の電極及び第2の電極とを有し、液晶層が、液晶層に入射する異常光線に対して所定の屈折率を有する場合に、異常光線に対して回折光学素子として機能することを特徴とする。
【0032】
さらに、本発明に係る他の液晶レンズは、液晶層と、液晶層の一方の面に隣接して配置され、液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面とを有する第1の透明基板と、液晶層の他方の面に隣接して配置される第2の透明基板と、液晶層に入射する異常光線に対する屈折率が変化するように液晶層に印加する電圧を変化させるための第1の電極及び第2の電極とを有し、液晶層に入射する常光線に対して回折光学素子として機能することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、可動部無しにオートフォーカスを達成しながら、オートフォーカス時の収差変動等による撮像レンズの性能劣化を防ぎ、合焦範囲全般にわたって解像度の高い撮像レンズ装置が得られた。
また本発明によれば、マクロ撮影も可能な撮像レンズ装置が得られた。
さらに本発明によれば、小型で応答性能に優れた可動部無しのオートフォーカス機能を持った撮像レンズ装置が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る撮像レンズ装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
本発明に係る撮影レンズ装置は、合焦を行うためにレンズパワー可変の液晶レンズを有する。その液晶レンズは2枚の透明基板とそれら透明基板に挟まれた液晶層を有し、液晶層に接する透明基板の表面に複数の輪帯を有するフレネルレンズが形成される。そして、フレネルレンズの各輪帯間の段差を、その段差で生じる光路差が所定の波長の整数倍となるように形成することで、液晶レンズを回折光学素子としても機能させ、収差補正、特に色収差の補正に利用するものである。
【0035】
まず、本発明にかかる撮像レンズ装置の第1の実施例について説明する。図1は、本発明にかかる撮像レンズ装置の第1の実施例を示す断面図である。
図1に示すように、撮像レンズ装置1は、液晶レンズ3と複数枚の光学レンズからなる光学レンズ群4を有するレンズ系2と、Irフィルター5と、撮像素子6より構成されている。被写体から放射された光束は、最も被写体側に位置する液晶レンズ3に入射する。その入射光は、液晶レンズ3、光学レンズ群4、Irフィルター5を順に透過し、撮像素子6の撮像面7に結像する。本実施例では、光学レンズ群4を4枚の光学レンズで構成しているが、レンズ枚数は4枚に限られない。また、液晶レンズ3の位置は、光学レンズ群4の前側に限定されず、光学レンズ群4の後ろ側でもよい。あるいは、液晶レンズ3を、光学レンズ群4に含まれるレンズに挟まれた中間位置に配置してもよい。また、Irフィルター5は、赤外線をカットし、赤外線に感度のある撮像素子による像質の悪化を少なくするために撮像レンズ装置1に挿入されている。そのため、撮像レンズ装置1が赤外線も検出しようとする場合には、Irフィルター5を省略してもよい。
また、液晶レンズ3は、コントローラ8と接続されている。コントローラ8は、撮像素子6で撮像された画像などに基づいて求めたオートフォーカス信号に基づいて、液晶レンズ3に印加する電圧を制御することにより液晶レンズ3を駆動し、液晶レンズ3のレンズパワーを変化させる。
【0036】
次に、液晶レンズ3の詳細を、図2を用いて説明する。図2は、液晶レンズ3の正面及び断面を示す模式図である。
図2に示すように、液晶レンズ3は、例えば3枚の対向する透明基板21、22、23を有している。上側、すなわち被写体側に配置される透明基板21の下側の面、中央に配置される透明基板22の上下の両面、及び、下側、すなわち光学レンズ群4側に配置される透明基板23の上側の面には、それぞれ透明導電膜からなる電極27a〜27dが形成されている。
【0037】
また、透明基板21の下側の面、及び、透明基板23の上側の面は、フレネルレンズ面として形成されている。このフレネルレンズ面に形成される各段差間の連続面は、単純な球面でもよいが、収差の低減の観点からは、非球面とすることが好ましい。なお、このフレネルレンズ面26は、液晶層24a、24bに接している面であればよく、例えば、透明基板22の上下に設けることも可能である。
【0038】
この透明基板21、23にフレネルレンズ面を形成する手法としては、射出成型により透明樹脂を所定の形状に形成する方法が量産性の観点から好ましい。なお、このフレネルレンズ面を形成する手法は、これに限定されるものではなく、切削加工、インプリント加工等種々の方法を採用することができる。
【0039】
また、透明基板21、22、及び、透明基板22、23の間には、それぞれ、液晶、例えばホモジニアス配向の液晶が封入されており、液晶層24a、24bを構成している。つまり、液晶レンズ3は、透明基板21、22及びそれらに挟まれた液晶層24aからなる上側の液晶パネルと、透明基板22、23及びそれらに挟まれた液晶層24bからなる下側の液晶パネルで構成されている。ここでは、それぞれの液晶パネルの透明基板22は、共通となっている。しかし、作り易さ等のために、共通の1枚の透明基板22の代わりに、上側の液晶パネル用と下側の液晶パネル用の2枚の透明基板で構成してもよい。
【0040】
また、上側の液晶パネルの液晶層に封入されている液晶の配向方向と下側の液晶パネルの液晶層に封入されている液晶の配向方向は直交している。すなわち、それぞれの液晶パネルに含まれる液晶分子の長軸方向が直交している。ホモジニアス配向の液晶分子が電極への電圧印加により基板に対して直交する方向へその長軸方向を変える場合、液晶分子長軸に平行な偏光成分(すなわち、異常光線)に対する液晶層の屈折率が変化する。これにより、上側の液晶パネルでは、液晶分子長軸と平行なある偏光成分の位相変調を行い、下側の液晶パネルでは、上側の液晶パネルで変調した偏光成分と直交する偏光成分の位相変調を行うことができる。その結果、液晶レンズ3は、全ての偏光成分の位相変調、すなわちレンズ効果をもたらすことができる。なお、液晶レンズ3に使用される液晶の配向は、ホモジニアス配向に限らず、ホメオトロピック配向、ツイストネマティック配向など種々の方式の配向としてもよい。
【0041】
また、コントローラ8は、上側の液晶パネル(すなわち、透明基板21、22、液晶層24aで構成される液晶パネル)と下側の液晶パネル(すなわち、透明基板22、23、液晶層24bで構成される液晶パネル)を、同じ波形の駆動電圧によって駆動する。ここで用いる駆動電圧は、例えばパルス高さ変調(PHM)またはパルス幅変調(PWM)された交流電圧である。
【0042】
また、図2に示すように、透明基板21〜23の間には、液晶層24a、24bの周縁部にそれぞれシール25a、25bが設けられている。シール25a、25bは、スペーサ(図示せず)を含み、液晶の漏れを防止するとともに、そのスペーサによって各液晶層24a、24bの厚さを一定に保っている。
【0043】
次に、上述した液晶レンズ3のフレネルレンズ面の構造に関して詳細に説明する。図3は、レンズ面の頂点(すなわち、光軸上のレンズ面の点)を原点に半径方向のフレネルレンズ面の断面を表す図である。図3において、グラフの横軸は、半径方向の位置を表し、グラフの縦軸は、光軸方向の位置を表す。
図3の点線320に示すように、まず、液晶レンズ3のフレネルレンズ面も、他のレンズと同様に、光軸に対して中心対称の連続曲面として設計される。その連続曲面では、光軸から半径方向に離れるにつれて、レンズ面とその頂点との光軸方向における距離が大きくなる。ここで、その距離が所定の値となると、そのレンズ面の光軸に沿った位置が頂点と同じ位置となるように、レンズ面に段差を設ける。同様に、レンズ面とその頂点との光軸方向における距離が所定の値となると、レンズ面に段差を設けることにより、図3に示す実線310のような断面形状が得られる。そして、段差で区切られた輪帯を複数有するフレネルレンズ面が形成される。この場合は、各輪帯の段差を一定とした例であるが、必ずしも段差を一定にする必要は無い。点線320で示した連続曲面は、一例として下記(1)式で示されるような非球面形状とすることができる。一般に、非球面形状を有するレンズ面は、単純な球面形状を有するレンズ面よりも効率的に収差を補正することができる。
【0044】
フレネルレンズ面は、その面に設けられた各段差をなくして曲面を連続的につなげたときの曲面が、例えば下記に示す(1)式で表される。
【数1】

ここでzは、光軸に沿った方向におけるレンズ面の頂点からの距離(ただし頂点よりも像側となる場合、zは正の値となる)、rは光軸からの距離を表し、cは上記の曲線の曲率を表す。また、Kは円錐係数を表し、Q、及びA〜Hの各係数は、それぞれ定数である。このとき、オートフォーカスに直接関わる、すなわち、レンズパワーに影響するのは、rの項、すなわち、(1)式の右辺の第1項及び第2項である。これ以外の項、例えばr、r、r、r10の項の係数B、D、F及びHを適切に設定することにより、レンズ系2の収差を良好に補正することができる。
【0045】
また、光路差(実際の段差×レンズ面を境界とする二つの媒質の屈折率差)が入射光の波長の整数倍となるように、段差を設定することにより、フレネルレンズ面に回折光学素子としての機能を持たせることができる。回折光学素子は、屈折レンズと逆の負の分散特性を持つため、回折レンズ、屈折レンズの2種類のレンズを組み合わせることにより、色収差をキャンセルし低減させることができる。すなわち、レンズ系2は、全体として正のレンズパワーを持っているため、液晶レンズ3も回折レンズとして正のレンズパワーを持たせることにより、レンズ群4で発生する色収差と液晶レンズ3で発生する色収差をお互いにキャンセルさせ、レンズ系2の色収差を効果的に補正することができる。
【0046】
しかしながら、液晶レンズ3では、液晶層24a、24bの屈折率が変化するため、段差の位相整合は、液晶レンズ3のレンズパワーがあるレベルとなるときのみ成立する。ここで、本発明における「位相整合条件」とは、フレネルレンズ面に設けられた段差で生じる光路差が、フレネルレンズに入射する光線の波長の整数倍となる条件をいう。撮像レンズ装置のように白色光を扱う場合、レーザー光のような位相の揃った光束ではないため、フレネルレンズ面における不連続部の各段差の光路差は、波長の1倍となることが好ましい。
【0047】
また、あるレンズパワーで位相整合が成立している場合、液晶レンズ3のレンズパワーを変動させることにより、各輪帯からの波面が逆位相となることがある。特に、液晶レンズ3のレンズパワーを、位相整合が成立する場合のレンズパワーの半分に設定すると、各輪帯からの光束が干渉し、位相不整合による悪影響が最も大きくなる。そのため、撮像レンズ装置1の解像度の低下をもたらす。しかし、結像に関与する光線は白色光であり、もともとコヒーレンスが低く、可干渉距離が短い。そこで、液晶レンズ3のレンズパワーの使用範囲を、位相整合が成立する場合のレンズパワーが最小となるように設定することにより、すなわち、位相整合が成立する場合よりも各段差における光路差が大きくなるようにその使用範囲を設定することにより、位相不整合による影響を小さくできる。また、各段差における光路差を波長と一致させるのではなく、波長の2倍以上の整数倍に設定する事により、各輪帯から出射される光束間の位相差が大きくなり、位相不整合による悪影響をより小さくできる。
【0048】
なお、液晶レンズ3は、撮像素子6で検出しようとする波長域に含まれる何れかの波長、すなわち、撮像素子6が感度を有する波長の何れかについて位相整合条件を満たすことが好ましい。例えば、撮像素子6が最も高い感度を有する波長、あるいは、撮像素子6の各波長に対する感度の重心となる波長について、位相整合条件を満たすことが好ましい。また、入射光の波長分布が分かっている場合には、入射光の中心波長又は重心波長について位相整合条件を満たすようにしてもよい。
【0049】
上述した方針に基づき設計したレンズ設計データを表1及び表2に示す。表1は、液晶レンズ3及び光学レンズ群4の近軸設計データを示す。表1に示す値において、「曲率半径」および「面間隔」の単位はミリメートル(mm)である。また、「面間隔」は、光軸上におけるレンズ面の間隔を表す。また、表2には、各レンズ面の非球面係数を示す。なお、表2に示されていない、係数G及びHの値は、各面とも0である。図1に示すように、物体側に液晶レンズ3があり、次に4枚の光学レンズ群4、Irフィルター5、撮像面7の順に構成された光学系である。
【0050】
【表1】

【表2】

【0051】
このときの液晶レンズ3を構成するフレネルレンズ面は、球面収差、コマ収差、非点収差などの収差を良好に補正するために、先に示した(1)式で表される非球面となっている。すなわち、オートフォーカス時の収差変動を低減するように、フレネルレンズ面は、非球面となっている。そして、物体側のフレネルレンズ面(液晶層1の物体側面)では、(1)式の各係数は、それぞれ、Q=0.0267、B=0.0133、D=−0.0190、A=C=E=F=G=H=0である。一方、像側のフレネルレンズ面(液晶層2の像側面)では、(1)式の各係数は、それぞれ、Q=−0.0267、B=−0.0133、D=0.0190、A=C=E=F=G=H=0である。
また、各フレネルレンズ面は、異常光線に対して、基板21〜23と液晶層24a、24bの屈折率差が最小のとき、及び常光線に対して、設計波長において位相整合条件を満たすように、各輪帯間の段差が設定されている。本実施例において、設計波長はd線(波長587nm)である。そして、液晶層24a、24bの常光線に対する屈折率、及び異常光線に対する屈折率の最小値は、1.58、各輪帯間の段差は、9.8μmとなるように設計されている。すなわち、上記の(1)式及び各係数で表される非球面について、zの値が9.8μm又は−9.8μmとなるところに段差が設けられる。
【0052】
表1及び表2に示したレンズデータで構成された光学系を用い、液晶レンズ3の液晶層24a、24bの屈折率を変化させ、フォーカシングをしたときのシミュレーション結果について、以下に述べる。このシミュレーションにおいて、液晶層24a、24bの異常光線に対する屈折率を、1.58から1.72まで変化させた。すなわち、屈折率1.52の透明基板21〜23と液晶層24a、24bとの異常光線に対する屈折率差を0.06から、0.2まで変化させた。この屈折率変化に対応する物体距離は、無限遠から100mmとなっている。図4(a)及び図4(b)に、このときのMTF(Modulation Transform Function)のシミュレーション結果を示す。ここに示すMTFは、レンズ性能を表す尺度として一般的に広く使われており、ある空間周波数の繰り返しパターンを、撮像レンズにより結像したときのコントラストの伝達度合いを表しており、MTFが高ければ高いほど、高解像度のレンズであることを表している。そして、図4(a)及び図4(b)は、それぞれ、液晶層24a、24bの屈折率を、1.58(物体距離無限遠)、1.72(物体距離100mm)とした場合の本実施例における撮像レンズ装置1の空間周波数100lp/mmについてのMTFのシミュレーション結果を示す。また、図4(a)及び図4(b)において、横軸はデフォーカスポジション(mm)、縦軸はMTF(%)を表す。デフォーカスポジションは、光軸方向の位置を示し、近軸光学的な像点の位置が0となり、その前後の位置ずれ量を表している。図4(a)に示すグラフ410は、画角0度の光束についてのMTFを示す。また、実線で表されたグラフ420及び一点鎖線で表されたグラフ430は、それぞれ最大画角(33°)の40%の画角の光束についての子午方向及び球欠方向のMTFを示す。同様に、実線で表されたグラフ440及び一点鎖線で表されたグラフ450は、それぞれ最大画角(33°)の70%の画角の光束についての子午方向及び球欠方向のMTFを示す。
【0053】
同様に、図4(b)に示すグラフ415は、画角0度の光束についてのMTFを示す。また、実線で表されたグラフ425及び一点鎖線で表されたグラフ435は、それぞれ最大画角(33°)の40%の画角の光束についての子午方向及び球欠方向のMTFを示す。同様に、実線で表されたグラフ445及び一点鎖線で表されたグラフ455は、それぞれ最大画角(33°)の70%の画角の光束についての子午方向及び球欠方向のMTFを示す。
図4(a)及び図4(b)に示すように、各画角についてのMTFがピークとなる位置がほぼ等しく、また液晶レンズ3のレンズパワーを変化させて合焦する物体距離を至近距離から無限遠にまで変化させても、各画角についてのMTFがピークとなる位置の変動が僅かであり、良好なフォーカシングが達成されていることが分かる。
【0054】
上記のように、本発明の第1の実施形態によれば、合焦に使用するレンズパワー可変の液晶レンズ3の液晶層24a、24bと透明基板21、23の境界に設けられたフレネルレンズ面26の各輪帯間の段差を、レンズパワー最小(すなわち、液晶層24a、24bの異常光線に対する屈折率が最小)となる近傍で、その段差での光路差が入射光の波長、特に撮像素子6が感度を有する波長の何れかの整数倍となるように設定する。これにより、液晶レンズ3を回折光学素子としても機能させることができるとともに、液晶レンズ3のレンズパワーを変化させても、フレネルレンズ面26の各輪帯からの光束が干渉することを防止することができる。その結果、撮像レンズ装置1は、合焦可能範囲全域において良好な結像性能を有することができる。
【0055】
次に、本発明にかかる撮像レンズ装置の第2の実施例について説明する。図5は、本発明にかかる撮像レンズ装置の第2の実施例を示す断面図である。
図5に示すように、撮像レンズ装置11は、液晶レンズ13と複数個の光学レンズからなるレンズ系12と、Irフィルター14と、撮像素子15とにより構成されている。そして、被写体から放射された光束は、レンズ系12、Irフィルター14を透過して、撮像素子15の撮像面16に結像する。第1の実施例と第2の実施例の相違点は、液晶レンズ13のレンズパワーの使用範囲の設定方法、レンズ系12の構成、及びレンズ系12と液晶レンズ13の位置関係にある。そこで、以下に液晶レンズ13のレンズパワーの使用範囲の設定方法について詳述する。ここで、液晶レンズ13の構造は、フレネルレンズ面の形状(輪帯の幅、各輪帯の曲面形状、段差)を除けば、液晶レンズ3と同様の構造を有する。そこで液晶レンズ13の構造に関しては、図2を用いて説明する。なお、レンズ系12及び液晶レンズ13のフレネルレンズ面の形状については、後述する。また、第1の実施例と同様に、液晶レンズ13は、コントローラ17と接続されている。そして、コントローラ17は、撮像素子15で撮像された画像などに基づいて求めたオートフォーカス信号に基づいて、液晶レンズ13に印加する電圧を制御することにより液晶レンズ13を駆動し、液晶レンズ13のレンズパワーを変化させる。
【0056】
上記のように、光路差(実際の段差×レンズ面を境界とする二つの媒質の屈折率差)が入射光の波長の整数倍となるように、段差を設定することにより、フレネルレンズ面に回折光学素子としての機能を持たせることができる。また、回折光学素子は、屈折レンズと逆の負の分散特性を持つため、回折レンズ、屈折レンズの2種類のレンズを組み合わせることにより、効率的に色収差を補正することができる。
【0057】
しかしながら、異常光線については、液晶レンズ13の液晶層24aまたは24bの屈折率が変化するため、フレネルレンズ面26における段差での位相整合条件は、液晶レンズ13のレンズパワーが特定の値となるときのみ成立する。液晶レンズ13のレンズパワーがその特定の値以外の値となる場合、液晶レンズ13は、回折光学素子としては機能せず、フレネルレンズとして機能する。そのため、液晶レンズ13への印加電圧を変化させることにより、撮像レンズ装置11は、焦点位置の調整を行うことができる。しかし、位相整合条件が成立しない場合、液晶レンズ13は回折光学素子としては機能しないので、結果として液晶レンズ13は合焦可能範囲全域での収差補正効果を有さない。特に、各輪帯からの波面が逆位相となる場合の位相不整合による悪影響が最も大きく、レンズ解像度の低下をもたらすことが考えられる。
【0058】
一方で、常光線に対しては、印加電圧を変化させても液晶レンズ13の液晶層24a及び24bの屈折率は不変であり、合焦可能範囲全域での位相整合条件を成立させることができる。そこで、本実施形態では、液晶レンズ13を、常光線に対しては収差補正を行うための回折光学素子として機能し、異常光線に対しては、オートフォーカスを行うためのレンズパワー可変のフレネルレンズとして機能させるようにした。すなわち、液晶レンズ13は、一方の偏光成分の収差補正を行いながら、それに直交する偏光成分では、レンズパワーを変化させる。そして、液晶レンズ13は、収差補正機能とレンズパワー変化によるオートフォーカス機能の両立を達成することができる。そこで、このような機能素子を直交して2層配置することにより、液晶レンズ3は、全ての偏光成分に関して、収差補正とレンズパワー可変の両機能を持った光学素子として機能することができる。
【0059】
つまり、図2に示したように、長軸方向が互いに直交する液晶を有する2層の液晶層24a、24bに同じ駆動波形を印加することにより、液晶レンズ13は、直交する偏向成分の一方に対して液晶層24aで収差補正を行うとともに、液晶層24bのレンズパワーに変化を与え、直交する偏向成分の他方に対して液晶層24aのレンズパワーに変化を与えるとともに、液晶層24bで収差補正を行うことができる。このような作用を受けて、液晶層24a、24bを有する液晶レンズ3は、偏光分離により全ての偏向成分に対してそれぞれ異なる層の液晶層24a、24bを使って、収差補正とレンズパワー変化を同時に行うことができる。
【0060】
表3に、レンズ系12のレンズ設計データを示す。表3は、レンズ系12の近軸設計データを示す。表3に示す値において、「曲率半径」および「面間隔」の単位はミリメートル(mm)である。また、「面間隔」は、光軸上におけるレンズ面の間隔を表す。また、表4には、(1)式で表わされる各レンズ面の非球面係数を示す。なお、表4に示されていない係数の値は0である。表3において、各レンズ面は物体側(図5の左側)から順に記載されている。
【0061】
【表3】

【表4】

【0062】
このときの液晶レンズ13を構成するフレネルレンズ面は、球面収差、コマ収差、非点収差などの収差を良好に補正するために、先に示した(1)式で表される非球面となっている。すなわち、オートフォーカス時の収差変動を低減するように、フレネルレンズ面は、非球面となっている。そして、物体側のフレネルレンズ面(液晶層1の物体側面)では、(1)式の各係数は、それぞれ、Q=−0.0732、B=−0.0650、D=0.2155、c=K=A=C=E=F=G=H=0である。一方、像側のフレネルレンズ面(液晶層2の像側面)では、(1)式の各係数は、それぞれ、Q=0.0732、B=0.0650、D=−0.2155、c=K=A=C=E=F=G=H=0である。
また、各フレネルレンズ面は、常光線の設計波長に対して位相整合条件を満たすように、各輪帯間の段差が設定されている。ここで設計波長は、550線nmであり、段差は、11μmである。すなわち、上記の(1)式及び各係数で表される非球面について、zの値が11μm又は−11μmとなるところに段差が設けられる。また、液晶層24a及び24bの常光線に対する屈折率は、1.52である。
【0063】
また、液晶レンズ13は、常光線側の偏光成分に対して色収差を補正し、異常光線側の偏光成分に対して、オートフォーカスを行うためにレンズパワーを変化させる。
【0064】
表3及び表4に示したレンズデータで構成された光学系を用い、液晶レンズ13の液晶層24a、24bの屈折率を変化させ、フォーカシングをしたときのシミュレーション結果について、以下に述べる。このシミュレーションにおいて、液晶レンズ13における液晶層24a、24bの異常光線に対する屈折率を1.62から1.72まで変化させた。すなわち、屈折率1.57の透明基板21〜23と液晶層24a、24bとの屈折率差を0.05から、0.15まで変化させた。なお、この場合において、フレネルレンズ面は、液晶層24a、24bに対して凸の形状を有するので、フレネルレンズ面は負のパワーを有する。この屈折率変化に対応する物体距離は、100mmから無限遠となる。図6(a)及び図6(b)は、それぞれ、液晶層24a、24bの屈折率を1.62(物体距離100mm)、1.72(物体距離無限遠)とした場合の本実施例における撮像レンズ装置11の空間周波数140lp/mmについてのMTFのシミュレーション結果を示す。また、図6(a)及び図6(b)において、横軸はデフォーカスポジション(mm)、縦軸はMTF(%)を表す。図6(a)に示すグラフ610は、画角0度の光束についてのMTFを示す。また、実線で表されたグラフ620及び一点鎖線で表されたグラフ630は、それぞれ最大画角(33°)の40%の画角の光束についての子午方向及び球欠方向のMTFを示す。同様に、実線で表されたグラフ640及び一点鎖線で表されたグラフ650は、それぞれ最大画角(33°)の70%の画角の光束についての子午方向及び球欠方向のMTFを示す。
【0065】
同様に、図6(b)に示すグラフ615は、画角0度の光束についてのMTFを示す。また、実線で表されたグラフ625及び一点鎖線で表されたグラフ635は、それぞれ最大画角(33°)の40%の画角の光束についての子午方向及び球欠方向のMTFを示す。同様に、実線で表されたグラフ645及び一点鎖線で表されたグラフ655は、それぞれ最大画角(33°)の70%の画角の光束についての子午方向及び球欠方向のMTFを示す。
図6(a)及び図6(b)に示すように、各画角についてのMTFがピークとなる位置がほぼ等しく、また液晶レンズ13のレンズパワーを変化させて合焦する物体距離を至近距離から無限遠にまで変化させても、各画角についてのMTFがピークとなる位置の変動が僅かであり、良好なフォーカシングが達成されていることが分かる。また、画角0度の光線に対するMTFのピークの近傍で、各画角の光線に対するMTFは十分高い値となっており、収差が良好に補正されていることが分かる。
【0066】
上記のように、本発明の第2の実施形態によれば、合焦に使用するレンズパワー可変の液晶レンズ13の液晶層24a、24bと透明基板21、23の境界に設けられたフレネルレンズ面26の各輪帯間の段差を、常光線に対して段差で生じる光路差が入射光の設計波長の整数倍、好ましくは1倍となるように設定する。また、異常光線に対して段差で生じる光路差が入射光の設計波長よりも大きくなる範囲で液晶層24a、24bの屈折率を変化させる。これにより、液晶レンズ13を、レンズパワーの変動範囲全域で回折光学素子としても機能させることができる。その結果、撮像レンズ装置11は、広い合焦可能範囲を有することができるとともに、合焦可能範囲全域において良好な結像性能を有することができる。
【0067】
なお、フレネルレンズ面26が回折光学素子として機能しない偏光成分、すなわち液晶層24aまたは24bの屈折率が可変となる異常光線について、各輪帯からの回折光の干渉による解像度低下を最小限に抑えるため、フレネルレンズ面26に設けられる段差は、その段差で生じる光路差が設計波長のコヒーレンス長に比べて十分に大きくなるように設計することが好ましい。フレネルレンズ面26が回折光学素子として機能する偏光成分、すなわち液晶層24aまたは24bにおける常光線についての位相整合条件を満たしながらこの構成を達成するために、常光線に対して液晶と基板の屈折率差を小さくし、異常光線に対して液晶と基板の屈折率差を大きくする。
【0068】
例えば、設計波長を500nmとする。そして、液晶層24a、24bの屈折率は常光線に対して1.5であり、異常光線に対して1.5から1.7まで変化させることが可能であると仮定する。一方、フレネルレンズ面26を構成する基板の屈折率を1.52とする。この場合、常光線に対する基板と液晶層24a、24bの屈折率差は0.02となる。そこで、フレネルレンズ面26に設けられた段差を25μmに設定すれば、設計波長500nmの光線に対して段差で生じる光路差が1倍となり、位相整合条件が成立する。そのため、液晶レンズ3は回折光学素子として機能し、液晶レンズ13を組み込んだレンズ系の収差を補正するために利用することができる。
【0069】
一方、異常光線に対する液晶層24a、24bの屈折率を変化させる範囲を、1.6から1.7に限定すれば、フレネルレンズ面26に設けられた段差で生じる光路差は、設計波長500nmの光線に対して、設計波長の4倍から9倍程度となる。そのため、入射光が白色光であれば、液晶レンズ13は回折光学素子として殆ど機能せずに、単なるパワー可変レンズとして機能する。したがって、オートフォーカス用の可変焦点レンズとしてこの液晶レンズ3を使用することができる。このように、異常光線に対してフレネルレンズ段差で生じる光路差が入射光のコヒーレンス長よりも大きい範囲で液晶層24a、24bの屈折率を変化させれば、焦点調節範囲内で位相不整合による収差の悪化を防止できる。なお、この場合、異常光線に対する基板と液晶層24a、24bの屈折率差は、0.08から0.18となる。そのため、フレネルレンズ面26の各輪帯の曲率を適切に選べば、液晶レンズ13のレンズパワーを大きく変化させることができる。したがって、液晶レンズ13のレンズパワーを変化させることにより、十分に広い範囲、例えば物体距離100mmから無限遠での合焦を達成することができる。
【0070】
次に、本発明の撮像レンズ装置において使用される液晶レンズの構造の他の実施例について説明する。
図7に、本実施例に係る液晶レンズ70の断面図を示す。なお、液晶レンズ70についても、実施例1に係る液晶レンズ3と同様、液晶の長軸が互いに直交するように配置された2層の液晶層が積層された構造を有するが、図7では、簡単化のために一層の構造のみを示した。
本実施例に係る液晶レンズ70の構成と実施例2に係る液晶レンズ13の構成の相違点は、フレネルレンズ面の配置にある。すなわち、液晶レンズ3では、フレネルレンズ面26は、液晶層を挟み対向する透明基板の一方にのみ設けられている。しかし、液晶レンズ70では、フレネルレンズ面73、74が、液晶層75を挟み対向する透明基板71、72の両側に設けられている。他の要件は同一であるので、ここでの詳細な説明は割愛する。なお、本実施例に係る液晶レンズについても、第1又は第2の実施例に係る液晶レンズ3と同様に、液晶レンズのフレネルレンズ面に設けられる段差の幅及び液晶レンズのレンズパワーの使用範囲を設定することができる。なお、液晶レンズ3のフレネルレンズ面形状及び光学レンズの各構成は仕様にあわせて適宜変更される。
【0071】
フレネルレンズ面73、74は、透明基板71、72のそれぞれの液晶層75に接する面に設けられている。また、上側の透明基板71に設けられるフレネルレンズ面73の不連続部の段差はd1であり、下側の透明基板72に設けられるフレネルレンズ面74における不連続部の段差はd2である。液晶層75の厚さ、及びフレネルレンズ面73、74における不連続部の段差は、実際の値としては、それぞれ10μm前後であるが、分かりやすくするために、図7においては、それらは透明基板71、72の厚さに比べて、誇張して示されている。
【0072】
本実施例に示すように、フレネルレンズ面73、74を1つの液晶パネル内で積層構造とすることにより、回折光学素子の問題点である回折効率の低下を避けることができる。理想的に設計された、回折面を1面のみ有する回折光学素子は、特定の波長を有し、特定の入射角で入射する光線についてのみ、理論上100%の回折効率を得ることができる。そして、その特定の波長以外の波長を有し、又はその特定の入射角以外の入射角で入射する光線については、回折効率の低下が生じる。また、所望の回折光以外の光束、主に0次光は、フレアの原因となり、解像度の低下をもたらす。そこで、液晶レンズ70を、単層のフレネルレンズ構造ではなく、積層のフレネルレンズ構造とすることにより、設計の自由度が上がり、各液晶層の屈折率、分散等の光学特性、フレネルレンズ面73、74における不連続部の段差の高さや間隔等をより柔軟に設定できる。そのため、フレネルレンズ面73と74とで、回折効率の分散特性や入射角度特性をお互いにキャンセルするように、液晶レンズ70を設計することができる。したがって、回折効率が入射光線の波長及び入射角度に依存しない回折光学素子を得ることができる。
【0073】
例えば、図8に示すような、液晶層を挟んで回折光学面が向かい合って配置されている場合、回折効率ηm(m:次数)は、以下の式で示される。
【数2】

ここで、nは、第1の回折光学面81の基板の屈折率、dは、第1の回折光学面81の格子深さを表す。同様に、nは、第2の回折光学面82の基板の屈折率、dは、第2の回折光学面82の格子深さを表す。また、λは入射光線の波長であり、θは、第1の回折光学面81に入射する光線の入射角度を表し、θは、第2の回折光学面82に入射する光線の入射角度を表す。θmは、m次(ただしm=1、2、・・・)の回折光の出射角度を表す。そして、n(λ)は、液晶層の波長λに対する屈折率を表す。(2)式に示されるように、積層する材質の光学特性と回折光学面81、82における不連続部の段差の最適化により、基板の材質の分散特性や入射角特性に依存しない回折光学素子を設計することができる。
【0074】
ここで、積層型回折素子として液晶レンズを構成した場合における、フレネルレンズ面形状における不連続部の段差の回折効率について説明する。本実施例において、上下の透明基板71、72の光学特性は、それぞれ、上:屈折率1.55、アッベ数56、下:屈折率1.6、アッベ数56とした。また、中間の液晶層75の光学特性は、屈折率1.5、アッベ数30とした。そして、フレネルレンズ面73の形状は、(1)式を用いて表され、その係数は、Q=0.024、B=0.022、D=−0.072である。そして、フレネルレンズ面73の頂点から、光軸に沿った方向の距離が3.9μmとなる度に、レンズ面の光軸方向の位置が頂点の位置と等しくなるように段差を設けた。また、フレネルレンズ面74の形状も、(1)式を用いて表され、その係数は、Q=0.049、B=0.044、D=−0.144である。そして、フレネルレンズ面74の頂点から、光軸に沿った方向の距離が7.8μmとなる度に、レンズ面の光軸方向の位置が頂点の位置と等しくなるように段差を設けた。
【0075】
図9は、上記の積層型回折格子の回折効率の入射角度特性を示すグラフである。グラフの値は、空間周波数200lp/mmについて示されている。本グラフから、適切な材料の光学特性、及びフレネルレンズ面形状における不連続部の段差を選択することにより、利用する入射角度範囲で100%近い回折効率が得られることが判る。
【0076】
このように、液晶層の両側にフレネルレンズ面を設け、段差を適切に設計することにより、液晶層が所定の屈折率を有する場合に積層型の回折光学素子として機能させることができる。そして、フレネルレンズ面を積層した場合に、各層での入射角度特性や分散特性をお互いにキャンセルするような構成とすることにより、利用波長領域、及び入射角度領域全域で回折効率の高い回折素子とすることができる。
例えば、実施例2のように、常光線に対して回折光学素子として機能するように、それぞれのフレネルレンズ面の段差を設定すればよい。上記の実施例において、液晶層75の屈折率1.5が、常光線に対する屈折率であるとし、異常光線に対しては、液晶層75の屈折率を例えば1.65から1.72の範囲で変動させる。このように構成すると、液晶レンズ70は、常光線に対しては積層型の回折光学素子として機能し、異常光線に対してはパワー可変のフレネルレンズとして機能する。あるいは、実施例1のように、異常光線に対する屈折率が最小となるところで回折光学素子として機能するように、それぞれのフレネルレンズ面の段差を設定すればよい。この場合には、液晶層75の異常光線に対する屈折率を変化させた場合に、干渉による収差の悪化を防止するため、上記の実施例と異なり、液晶層75の異常光線に対する屈折率が最小の値となるときでも、透明基板71、72よりも高い屈折率を有するように、液晶及び透明基板の材質を選択することが好ましい。
【0077】
なお、液晶レンズを、積層型の回折光学素子として形成した場合であっても、製作精度等により、回折効率の低下が生じる。また、フレネルレンズ面73、74の積層型の回折光学素子の欠点として、誤差感度に敏感であるという課題がある。すなわち、製造精度が不十分である場合、積層型の回折光学素子は、所望の特性を発揮できない。そこで、そのような回折光学素子を製造するためには、対向するフレネルレンズ面73、74の位置、間隔を高い精度で位置決めする必要がある。そのため、回折光学素子を製造する際、アライメント方法、間隔(ギャップ)管理に特別な手法を用いなければならなかった。一方で、液晶パネルの製造においては、上下基板の位置合わせ、上下基板の間隔決定は、非常に高い精度で行われている。例えば、上下基板の位置合わせを、アライメントマークを利用したカメラ撮影による画像処理を用いて行う方法が確立されている。また、上下基板間隔の決定を、スペーサーを利用した高精度なギャップ管理手法を用いて行う方法が確立されている。したがって、本発明に係る液晶レンズは、これらの方法を用いることにより、特別な工程を追加することなく高精度で製造することが可能である。
【0078】
また、本発明の撮像レンズ装置において使用される液晶レンズの構造のさらに他の実施例について説明する。
本実施例に係る液晶レンズについても、第1又は第2の実施例に係る液晶レンズ3と同様に、液晶レンズのフレネルレンズ面に設けられる段差の幅及び液晶レンズのレンズパワーの使用範囲を設定することができる。なお、液晶レンズ3のフレネルレンズ面形状及び光学レンズの各構成は仕様にあわせて適宜変更される。
【0079】
本実施例に係る液晶レンズと実施例1に係る液晶レンズ3とは、透明電極とフレネルレンズ面の位置関係で相違する。本実施例に係る液晶レンズでは、フレネルレンズ面が、透明電極よりも液晶層24a、24b(図2参照)側に配置されている。このような位置関係の場合、透明基板21、23上に直接フレネルレンズ面を形成することができない。そのため、フレネルレンズ面を形成するために射出成型等の成型方法を採用できない。以下、本実施例と実施例1の液晶レンズにおける、フレネルレンズ面と電極の位置関係、及びフレネルレンズ面の形成方法について、さらに詳しく説明する。
【0080】
例えば、液晶レンズ3を構成する透明基板として、樹脂材料を使用する場合、フレネルレンズ面形状を刻んだ透明基板を射出成型により製造することができる。この場合、液晶を駆動する電極を、透明基板の上に容易に成膜することができる。しかしながらこのような構成とした場合、2つの問題が生じる。
【0081】
第1の問題点は、フレネルレンズ面での電極の断線である。フレネルレンズ面には、先に示したように、各輪帯間に段差が存在する。その段差において電極膜が断線することを防止するために、例えば、電極膜厚を厚くしたり、フレネルレンズ面の一部になだらかな部位を設けることが必要となる。
【0082】
第2の問題点は、フレネルレンズ面近傍において、液晶分子の挙動を設計値通りに制御することが難しいことである。これは、フレネルレンズ面の各輪帯及び各輪帯間の段差が液晶層に対して平行でないため、それらの上に形成された電極からフレネルレンズ面近傍において横電界が生じるためである。横電界により、液晶分子が所望の方向に配列しない場合、液晶層の屈折率が十分に変化しない可能性がある。
【0083】
これに対し、電極上にフレネルレンズ面を設けた場合、上記問題が生じない。このような構造の形成方法について、一例を、図10(a)及び図10(b)を用いて説明する。
図10(a)に示すように、まず、透明基板101上に透明導電膜からなる電極102を真空蒸着などの成膜方法を用いて成膜する。次に、電極102の表面に、液体状の紫外線硬化樹脂103をスピンコート法等の成膜方法を用いて塗布する。その後、紫外線硬化樹脂103にフレネルレンズ面構造を形成した金型104を押し当て、金型104の形状を紫外線硬化樹脂103に転写する。このとき、透明基板101側から紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂103を硬化する。そして、電極102の表面に塗膜された紫外線硬化樹脂103上にフレネルレンズ面が形成される。図10(b)は、形成されたフレネルレンズ面の断面構造の概略図を示す。なお、このような金型の転写は、ナノインプリントの技術を用いて行うことができる。また、フレネルレンズ面を形成する材料は、紫外線硬化樹脂に限られない。例えば、そのような材料として、熱硬化樹脂を使用することもできる。
【0084】
この図10(b)に示す構成とすれば、電極102は平板状の透明基板101上に成膜されるので、電極102が断線する可能性は非常に少なくなる。また、平面状の電極102が透明基板101に沿って平面状に形成されるため、図示しない液晶層を挟んで対向する透明基板に設けられた電極との間に、一様な電界を発生させることができる。そのため、液晶分子の異常な挙動は生じないので、液晶層の屈折率を仕様通りの値に設定することが容易となる。さらに、フレネルレンズ面を透明基板101上に形成するよりも前に電極102を形成するので、電極102を形成する時の温度上昇によるフレネルレンズ面の変形を防止することができる。
【0085】
なお、本実施例に係る液晶レンズでは、電極102と液晶層の間に紫外線硬化樹脂103が存在するため、その樹脂層による電圧降下が生じる。そこで、液晶分子を駆動するために十分な電圧を液晶層に印加するため、駆動電圧を第1の実施例に係る液晶レンズよりも高くしなければならない。しかし、そのような駆動電圧の上昇は、紫外線硬化樹脂103の厚さを数μmから10数μmと薄くすることで、実用上問題とならないようにすることができる。
【0086】
また、紫外線硬化樹脂103の成型時において、紫外線硬化樹脂103の層の厚さにばらつきが生じることもある。あるいは、紫外線硬化樹脂103の上にシール部材を設けると、シール部材が紫外線硬化樹脂103に沈み込むこともある。そのため、紫外線硬化樹脂103の上にシール部材を設ける構成では、液晶層を挟む2枚の電極間の距離を一定とするように液晶レンズ3を製造することは難しい。また、電極間の距離が一定でない場合、液晶層に印加される駆動電圧も変動してしまう。そこで、フレネルレンズ面の周囲で、紫外線硬化樹脂103の層の一部を除去し、電極102の上に直接シール部材を設けることにより、電極間の距離のばらつきを抑制することができる。特に、駆動電圧の周波数に対して、紫外線硬化樹脂103の誘電率と、液晶の誘電率が等しい場合には、紫外線硬化樹脂103の層の厚さのばらつきに影響されることなく、駆動電圧を制御することができる。このように、電極間の距離のばらつきを抑制することにより、液晶層に印加される駆動電圧の変動を抑制することができる。
【0087】
さらに、フレネルレンズが形成される材質に導電性物質を用い、電極として機能させてもよい。これにより、電極膜を別途設けなくてよくなるので、液晶レンズを構成する層の数が減り、各層間の境界での反射光によるゴーストなどの悪影響を低減することができる。特に、電極膜に使用される材質の屈折率が、透明基板に使用される材質の屈折率と大きな差を有することがある。このような場合、電極膜と透明基板の境界での反射率が高くなってしまうため、フレネルレンズ面を電極した場合に生じる横電界よりも、像品質に悪影響を与えてしまうので、フレネルレンズが形成される材質を電極として機能させることが好ましい。例えば、フレネルレンズが形成される紫外線硬化樹脂103として、導電性ポリマーを使用することができる。使用可能な導電性ポリマーとしては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリエチレンジオキシチオフェンなどがある。特に、ポリエチレンジオキシチオフェン、及びポリエチレンジオキシチオフェンをベースとした導電性コーティング剤(例えば、インスコンテック社(韓国)により商品化されているコニソル)は、高い導電率を有するため、紫外線硬化樹脂103として好適に使用することができる。
【0088】
また、上記した紫外線硬化樹脂103に用いる樹脂材料の屈折率や分散値のコントロールは可能であり、透明基板101との屈折率マッチングや、液晶の常光線に対する屈折率と一致させる等の工夫が可能である。例えば、第1の実施例のように、液晶層の異常光線に対する屈折率が最小となる場合に液晶レンズを回折光学素子として機能させる場合、液晶の常光線に対する屈折率と一致させる。このように樹脂材料を選択することにより、レンズパワー可変となる偏光成分(異常光線)に直交する偏光成分(常光線)に対して、液晶レンズは素ガラス状態となり、レンズパワーを全く持たない。このように設定することで、設計が単純になり、液晶レンズの設計が容易となる。
【0089】
図11を参照しつつ、本発明に係る液晶レンズのさらに他の実施例を説明をする。図11は、本実施例による液晶レンズの概略平面図及び概略断面図である。上述した実施例による液晶レンズは、同心円状のフレネルレンズ面構造を持っていたが、本実施例の液晶レンズ3は、シリンドリカルレンズ形状のフレネルレンズ面構造は有している。また、ここに示すシリンドリカルレンズに設けられた段差は、基本的に実施例1、2で示した液晶レンズのフレネルレンズ面に設けられる段差と同様に設定できる。
【0090】
図11に示すように、本実施例による液晶レンズは、透明基板111と透明基板112とで液晶層24bを挟持した構成となっている。そして、透明基板112上には、シリンドリカル形状を有するフレネルレンズ面が形成される。このシリンドリカル形状を有するフレネルレンズ面が形成された透明基板112と、同様のシリンドリカル形状を有するフレネルレンズ面が形成された透明基板とを、フレネルレンズとして機能する方向が直交するように配置することにより、一般のレンズと同様の機能を持たすことができる。なお、図11では、理解しやすいように、下側の液晶パネルのみを示しており、上側の透明基板のフレネルレンズ面と液晶層は省略している。
【0091】
この構成の利点は、フレネルレンズ面の周辺部で各段差で区切られたフレネルレンズ構造の接続が可能であり、図示しない透明導電膜からなる電極の断線を防ぐことができる。また、液晶レンズの液晶層内の液晶分子に対する初期配向を正確に決定することができる。
【0092】
液晶分子の初期配向を決定するための配向処理として、ラビング法により形成される配向膜を用いる方法が最も一般的に使用される。この方法では、まず、ポリイミド系の樹脂を透明電極上に印刷して配向膜を形成する。その後、焼成処理を行い、レーヨン、コットン等の配向布で配向膜を一方向に擦る。これにより、配向膜上に形成された溝の方向に沿って液晶分子が配向する。しかし、フレネルレンズ面構造等の微細構造があると、フレネルレンズ構造の溝の部分における配向が不十分となり、配向が乱れる場合がある。
【0093】
このとき、フレネルレンズ面が輪帯状ではなく、シリンドリカル構造を持っていると、溝に平行な方向でのラビング処理を容易に行うことができる。また、直交する方向への配向処理は、まず溝に平行にラビングし、その後、配向方向を変える手段が考えられる。配向方向を変える手段としては、UV照射による手法が知られており、UV照射を行うことにより、UV照射された部位の配向方向が回転し、照射時間により、その回転角を制御でき、90度回転させることもできる。
また、斜方蒸着による配向処理も、溝に平行な方向に行う場合、有効に機能する。
【0094】
なお、以上説明してきた各実施例に係る液晶レンズについて、フレネルレンズ面に配向用の微細構造を設けてもよい。例えば、フレネルレンズ面を形成するための成型用金型に、液晶分子を初期配向させる方向に沿って、100nm以下の幅を有する微小な溝を多数形成しておく。そして、この金型を用いて、フレネルレンズ面が形成される透明基板、あるいは紫外線硬化樹脂の成型を行う。これにより、フレネルレンズ面上に配向用の溝が形成される。そのため、液晶レンズの製造時において、配向膜を形成するなどの配向処理を省略することができる。また、フレネルレンズ面を形成するための成型用金型に、微小な溝を形成する代わりに、一酸化ケイ素(SiO)を斜方蒸着して、その金型に配向用の微小構造を形成してもよい。さらに、成型されるフレネルレンズ面の形状を有する金型に、SiOを斜方蒸着して形成した金型をマスター金型とし、電鋳、ガラスナノインプリントなどの手法を用いて他の金型にマスター金型の形状を転写する。そして、マスター金型の形状が転写された金型を用いて、フレネルレンズ面が形成される透明基板、あるいは紫外線硬化樹脂の成型を行うようにしてもよい。
【0095】
以上のように、本発明に係る撮像レンズ装置は、小型・薄型化の制約が大きく、なおかつ高解像度が要求される撮像レンズ装置に適し、特に、カメラ付き携帯電話機に適している。また、本発明は、通常の銀塩写真用のカメラ、デジタルカメラ、ムービーカメラまたは車等の後方確認用カメラなどのカメラにも適用可能な技術である。また、上述した液晶レンズは、ズームレンズにも用いることができる。そして、液晶レンズの屈折率を変化させることにより、変倍を行うようにズームレンズを構成することができる。
【0096】
以上において本発明は、上述した実施例に限らず、種々変更可能である。例えば、実施例1に記載した寸法などは一例であり、本発明はそれらの値に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る撮像レンズ装置の第1の実施例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る撮像レンズ装置を構成する液晶レンズの一例を示す断面図と平面図である。
【図3】本発明に係る液晶レンズのフレネルレンズ面の断面形状を説明するための図である。
【図4】(a)は本発明に係る撮像レンズ装置の第1の実施例における物体距離を無限遠としたときのMTFのグラフであり、(b)は本発明に係る撮像レンズ装置の第1の実施例における物体距離を100mmとしたときのMTFのグラフである。
【図5】本発明に係る撮像レンズ装置の第2の実施例を示す断面図である。
【図6】(a)は本発明に係る撮像レンズ装置の第2の実施例における物体距離を100mmとしたときのMTFのグラフであり、(b)は本発明に係る撮像レンズ装置の第2の実施例における物体距離を無限遠としたときのMTFのグラフである。
【図7】本発明に係る液晶レンズの他の構成例を示す断面の模式図である。
【図8】本発明に係る積層型回折光学素子の回折効率を説明するための回折格子の断面図である。
【図9】本発明に係る積層型回折格子の入射角度に対する回折効率の変化を示すグラフである。
【図10】(a)は本発明に係る液晶レンズのフレネルレンズ面を形成する手段を説明する図であり、(b)は電極とフレネルレンズ面の位置関係を説明する図である。
【図11】本発明に係る液晶レンズの他の一例の平面模式図及び断面模式図である。
【符号の説明】
【0098】
1、11 撮像レンズ装置
2、12 レンズ系
3、13、70 液晶レンズ
4 光学レンズ群
5、14 Irフィルター
6、15 撮像素子
7、16 撮像面
8、17 コントローラ
21、22、23、71、72 透明基板
24a、24b、75 液晶層
25a、25b シール
26、73、74 フレネルレンズ面
27a、27b、27c、27d 電極
81 第1の回折格子
82 第2の回折格子
101 透明基板
102 電極
103 紫外線硬化樹脂
104 金型
111、112 透明基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物体距離にある被写体を合焦するための液晶レンズであって、
第1の液晶層と、
前記第1の液晶層の一方の面に隣接して配置され、第1の電極と、前記第1の液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面とを有する第1の透明基板と、
前記第1の液晶層の他方の面に隣接して配置され、第2の電極を有する第2の透明基板とを有し、
前記第1の液晶層が、前記第1の液晶層に入射する異常光線に対して所定の屈折率を有する場合に、前記異常光線に対して回折光学素子として機能する液晶レンズと、
前記第1の電極と前記第2の電極間に印加する電圧を変化させることにより、前記第1の液晶層の異常光線に対する屈折率を変化させるコントローラと、
前記被写体の像を撮像する撮像素子と、
を有することを特徴とする撮像レンズ装置。
【請求項2】
前記フレネルレンズ面には、前記フレネルレンズ面を複数の領域に区切る段差が形成され、前記第1の液晶層に入射する異常光線に対して前記段差で生じる光路差が、前記第1の液晶層の異常光線に対する屈折率が所定の値を有する場合に前記撮像素子が感度を有する波長の整数倍である、請求項1に記載の撮像レンズ装置。
【請求項3】
前記第1の透明基板は、前記フレネルレンズ面が形成された部材を有する、請求項1又は2に記載の撮像レンズ装置。
【請求項4】
前記第1の透明基板は、平板状の基板を有し、前記第1の電極は、前記平板状の基板と前記部材の間に配置される、請求項3に記載の撮像レンズ装置。
【請求項5】
前記第1の透明基板の一部に前記フレネルレンズ面が形成される、請求項1又は2に記載の撮像レンズ装置。
【請求項6】
前記所定の屈折率は、前記第1の液晶層の異常光線に対する屈折率を変化させる範囲に含まれる屈折率の最小値である、請求項1〜5の何れか一項に記載の撮像レンズ装置。
【請求項7】
前記第1の透明基板と前記第1の液晶層の常光線に対する屈折率とが一致する、請求項1〜6の何れか一項に記載の撮像レンズ装置。
【請求項8】
前記液晶レンズは、前記第1の液晶層に入射する常光線に対して回折光学素子として機能する、請求項1〜6の何れか一項に記載の撮像レンズ装置。
【請求項9】
前記フレネルレンズ面は、非球面である、請求項1〜8の何れか一項に記載の撮像レンズ装置。
【請求項10】
前記第2の透明基板は、前記第1の液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面を有する、請求項1〜9の何れか一項に記載の撮像レンズ装置。
【請求項11】
前記液晶レンズは、
第2の液晶層と、
前記第2の液晶層の一方の面に隣接して配置され、前記第2の液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面を有する第3の透明基板と、
前記第2の液晶層の他方の面に隣接して配置される第4の透明基板とを有し、
前記第1の液晶層内の液晶と、前記第2の液晶層内の液晶とは、それぞれの長軸方向が直交するように配向され、
前記第2の液晶層が、前記第2の液晶層に入射する異常光線に対して所定の屈折率を有する場合に、前記異常光線に対して回折光学素子として機能する、請求項1〜10の何れか一項に記載の撮像レンズ装置。
【請求項12】
前記第1の透明基板が有するフレネルレンズ面及び前記第3の透明基板が有するフレネルレンズ面は、それぞれシリンドリカルレンズ形状を有し、且つフレネルレンズとして機能する方向が直交するように配置される、請求項11に記載の撮像レンズ装置。
【請求項13】
所定の物体距離にある被写体を合焦するための液晶レンズであって、
第1の液晶層と、
前記第1の液晶層の一方の面に隣接して配置され、第1の電極と、前記第1の液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面とを有する第1の透明基板と、
前記第1の液晶層の他方の面に隣接して配置され、第2の電極を有する第2の透明基板とを有し、
前記第1の液晶層に入射する常光線に対して回折光学素子として機能する液晶レンズと、
前記第1の電極と前記第2の電極間に印加する電圧を変化させることにより、前記第1の液晶層の異常光線に対する屈折率を変化させるコントローラと、
前記被写体の像を撮像する撮像素子と、
を有することを特徴とする撮像レンズ装置。
【請求項14】
前記フレネルレンズ面には、前記フレネルレンズ面を複数の領域に区切る段差が形成され、前記第1の液晶層に入射する常光線に対して前記段差で生じる光路差が、前記撮像素子が感度を有する波長の整数倍である、請求項13に記載の撮像レンズ装置。
【請求項15】
前記第1の液晶層に入射する常光線に対して前記段差で生じる光路差は、前記波長の1倍又は2倍であり、
前記コントローラは、前記第1の液晶層に入射する異常光線に対して前記段差で生じる光路差の最小値が該異常光線のコヒーレンス長より大きくなるように前記第1の液晶層の異常光線に対する屈折率を変化させる、請求項14に記載の撮像レンズ装置。
【請求項16】
前記第1の透明基板は、前記フレネルレンズ面が形成された部材を有する、請求項13〜15の何れか一項に記載の撮像レンズ装置。
【請求項17】
前記第1の透明基板は、平板状の基板を有し、前記第1の電極は、前記平板状の基板と前記部材の間に配置される、請求項16に記載の撮像レンズ装置。
【請求項18】
前記第1の透明基板の一部に前記フレネルレンズ面が形成される、請求項13〜15の何れか一項に記載の撮像レンズ装置。
【請求項19】
前記フレネルレンズ面は、非球面である、請求項13〜18の何れか一項に記載の撮像レンズ装置。
【請求項20】
前記第2の透明基板は、前記第1の液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面を有する、請求項13〜19の何れか一項に記載の撮像レンズ装置。
【請求項21】
前記液晶レンズは、
第2の液晶層と、
前記第2の液晶層の一方の面に隣接して配置され、前記第2の液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面を有する第3の透明基板と、
前記第2の液晶層の他方の面に隣接して配置される第4の透明基板とを有し、
前記第1の液晶層内の液晶と、前記第2の液晶層内の液晶とは、それぞれの長軸方向が直交するように配向され、
前記第2の液晶層が、前記第2の液晶層に入射する常光線に対して回折光学素子として機能する、請求項13〜20の何れか一項に記載の撮像レンズ装置。
【請求項22】
前記第1の透明基板が有するフレネルレンズ面及び前記第3の透明基板が有するフレネルレンズ面は、それぞれシリンドリカルレンズ形状を有し、且つフレネルレンズとして機能する方向が直交するように配置される、請求項21に記載の撮像レンズ装置。
【請求項23】
前記液晶レンズは、回折光学素子として機能する場合、正のパワーを持つレンズである請求項1〜22の何れか一項に記載の撮像レンズ装置。
【請求項24】
液晶層と、
前記液晶層の一方の面に隣接して配置され、前記液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面とを有する第1の透明基板と、
前記液晶層の他方の面に隣接して配置される第2の透明基板と、
前記液晶層に入射する異常光線に対する屈折率が変化するように前記液晶層に印加する電圧を変化させるための第1の電極及び第2の電極とを有し、
前記液晶層が、前記液晶層に入射する異常光線に対して所定の屈折率を有する場合に、前記異常光線に対して回折光学素子として機能することを特徴とする液晶レンズ。
【請求項25】
液晶層と、
前記液晶層の一方の面に隣接して配置され、前記液晶層との境界面に形成されたフレネルレンズ面とを有する第1の透明基板と、
前記液晶層の他方の面に隣接して配置される第2の透明基板と、
前記液晶層に入射する異常光線に対する屈折率が変化するように前記液晶層に印加する電圧を変化させるための第1の電極及び第2の電極とを有し、
前記液晶層に入射する常光線に対して回折光学素子として機能することを特徴とする液晶レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−90259(P2008−90259A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19809(P2007−19809)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】