撮像装置、情報処理装置およびプログラム
【課題】予め決められた期間にわたって撮像手段が撮像した場合の暗電流の値を用いて、指定された期間にわたって撮像手段が撮像した場合の信号からそのときの暗電流の成分を除去する。
【解決手段】撮像装置9は、複数の撮像素子が直線状に並べられた読取部1と、指定部20、制御部21、記憶部22を備えたコントローラと、照射部3とを有する。記憶部22は、第1期間、および第1期間よりも長い第2期間のそれぞれにわたって被撮像体に向けて光を照射せずに撮像素子に撮像させて得た第1信号と第2信号とを記憶する。制御部21は、指定部20で指定された第3期間にわたって光を照射せずに撮像素子に撮影させた場合に得られる値を、第1信号および第2信号を用いる線形補間により推算するとともに、第3期間にわたって光を照射し、撮像素子に撮像させて第3信号を取得する。そして制御部21は、取得した第3信号から推算した値を減算する。
【解決手段】撮像装置9は、複数の撮像素子が直線状に並べられた読取部1と、指定部20、制御部21、記憶部22を備えたコントローラと、照射部3とを有する。記憶部22は、第1期間、および第1期間よりも長い第2期間のそれぞれにわたって被撮像体に向けて光を照射せずに撮像素子に撮像させて得た第1信号と第2信号とを記憶する。制御部21は、指定部20で指定された第3期間にわたって光を照射せずに撮像素子に撮影させた場合に得られる値を、第1信号および第2信号を用いる線形補間により推算するとともに、第3期間にわたって光を照射し、撮像素子に撮像させて第3信号を取得する。そして制御部21は、取得した第3信号から推算した値を減算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被撮像体に光を照射して反射光を複数の撮像素子で撮像することで被撮像体上に描かれた画像を読み取る撮像装置がある。撮像素子は、受けた光の量に応じて発生した電荷を読み出して映像信号を出力するが、受光していないときであっても電荷を発生する。これは、撮像素子が熱によって励起するためである。この受光していないときの電荷により生じる電流を一般に暗電流という。暗電流は読み取られた画像にとってノイズとなるため、これを除去する技術が種々開発されている。
【0003】
特許文献1には、撮像素子と、撮像素子を駆動制御する駆動回路と、撮像素子の電荷蓄積時間を検出する時間検出回路と、演算回路と、撮像素子の暗電流を演算するための演算定数に関するデータを予め記憶しておく不揮発性メモリと、減算回路と、を有する撮像装置の暗電流除去方式において、前記演算回路は前記撮像素子の電荷蓄積時間と前記不揮発性メモリからの前記データ、および前記撮像素子の温度に基づいて暗電流を算出し、算出した暗電流を前記減算回路において撮像信号から減算することにより、撮像信号に重畳した暗電流を除去することを特徴とする撮像装置の暗電流除去方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−46077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、予め決められた期間にわたって撮像手段が撮像した場合の暗電流の値を用いて、指定された期間にわたって撮像手段が撮像した場合の信号からそのときの暗電流の成分を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る撮像装置は、被撮像体を撮像し、当該被撮像体から受光した光量に対応した信号を出力する撮像手段と、前記被撮像体に光を照射する照射手段と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を第1期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第1信号値と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第1期間よりも長い第2期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第2信号値とを記憶する記憶手段と、前記第1期間以上、且つ、前記第2期間以下の期間である第3期間にわたって前記照射手段により光が照射された状態で前記被撮像体を前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第3信号値を取得する取得手段と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第3期間にわたって前記撮像手段が撮影した場合の前記信号の値である第4信号値を、前記記憶手段に記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間により推算する推算手段と、前記取得手段が取得した第3信号値から前記推算手段が推算した第4信号値を減算して、第5信号値を出力する減算手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る撮像装置は、請求項1に記載の態様において、前記減算手段は、前記第3期間が前記第1期間である場合に、前記第3信号値から前記第1信号値を減算し、前記第3期間が前記第2期間である場合に、前記第3信号値から前記第2信号値を減算して、前記第5信号値を出力することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に係る撮像装置は、請求項1または2に記載の態様において、前記撮像手段は、直線に沿って並べられた複数の基板であって、当該直線の方向に沿ってそれぞれ決められた数の撮像素子が配置された複数の基板を備え、前記記憶手段は、前記複数の基板のうち代表となる基板である代表基板に配置された各撮像素子について、前記第1信号値と第2信号値とを記憶するとともに、当該代表基板において決められた第1位置に配置された撮像素子と、当該代表基板以外の基板において前記第1位置に対応する位置に配置された撮像素子とにおける前記第1信号値または前記第2信号値の差である嵩上げ値を、当該代表基板以外の基板ごとに記憶し、前記推算手段は、前記撮像素子が前記代表基板以外の基板に配置されている場合、前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間によって得た値を前記嵩上げ値により補正して前記第4信号値を推算することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係る撮像装置は、請求項3に記載の態様において、前記記憶手段は、前記代表基板に配置された各撮像素子のうち、決められた第2位置に配置された撮像素子について、前記第1信号値と第2信号値とを記憶し、前記推算手段は、前記撮像素子が前記代表基板以外の基板において、前記第2位置と異なる第3位置に配置されている場合、前記記憶手段により記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いて、予め決められた数式に基づいて、前記代表基板において前記第3位置に配置された撮像素子の前記第1信号値および前記第2信号値を推算し、推算した当該第1信号値および第2信号値を用いる線形補間によって得た値を前記嵩上げ値により補正して前記第4信号値を推算することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係る情報処理装置は、照射手段による光の照射を停止した状態で被撮像体を第1期間にわたって撮像手段が撮像した場合に当該撮像手段によって出力される信号であって、当該撮像手段が前記被撮像体から受光した光量に対応した信号の値である第1信号値と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第1期間よりも長い第2期間にわたって前記撮像素子が撮像した場合の前記信号の値である第2信号値とを記憶する記憶手段と、前記第1期間以上、且つ、前記第2期間以下の期間である第3期間にわたって照射手段により光が照射された状態で前記被撮像体を前記撮像素子が撮像した場合の前記信号の値である第3信号値を取得する取得手段と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第3期間にわたって前記撮像手段が撮影した場合の前記信号の値である第4信号値を、前記記憶手段に記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間により推算する推算手段と、前記取得手段が取得した第3信号値から前記推算手段が推算した第4信号値を減算して、第5信号値を出力する減算手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6に係るプログラムは、被撮像体を撮像し、当該被撮像体から受光した光量に対応した信号を出力する撮像手段と、前記被撮像体に光を照射する照射手段と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を第1期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第1信号値と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第1期間よりも長い第2期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第2信号値とを記憶する記憶手段とを具備する撮像装置のコンピュータを、前記第1期間以上、且つ、前記第2期間以下の期間である第3期間にわたって前記照射手段により光が照射された状態で前記被撮像体を前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第3信号値を取得する取得手段と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第3期間にわたって前記撮像手段が撮影した場合の前記信号の値である第4信号値を、前記記憶手段に記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間により推算する推算手段と、前記取得手段が取得した第3信号値から前記推算手段が推算した第4信号値を減算して、第5信号値を出力する減算手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の撮像装置によれば、予め決められた期間にわたって撮像手段が撮像した場合の暗電流の値を用いて、指定された期間にわたって撮像手段が撮像した場合の信号からそのときの暗電流の成分を除去することができる。
請求項2に記載の撮像装置によれば、不必要な推算を回避することができる。
請求項3に記載の撮像装置によれば、撮像手段に含まれる全ての撮像素子について第1信号および第2信号を記憶しなくてもよい。
請求項4に記載の撮像装置によれば、代表基板に含まれる全ての撮像素子について第1信号および第2信号を記憶しなくてもよい。
請求項5に記載の情報処理装置によれば、予め決められた期間にわたって撮像手段が撮像した場合の暗電流の値を用いて、指定された期間にわたって撮像手段が撮像した場合の信号からそのときの暗電流の成分を除去することができる。
請求項6に記載のプログラムによれば、予め決められた期間にわたって撮像手段が撮像した場合の暗電流の値を用いて、指定された期間にわたって撮像手段が撮像した場合の信号からそのときの暗電流の成分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の全体構成を説明する図である。
【図2】1つのチップを示す図である。
【図3】キャリブレーション機能における制御部の機能的構成を示す図である。
【図4】画像読取機能における制御部の機能的構成を示す図である。
【図5】撮像装置がキャリブレーションをするときの動作の流れを示す図である。
【図6】制御部が最大期間にわたって読取部の各撮像素子に撮像させて取得した暗電流を示す図である。
【図7】撮像素子においてそれぞれ測定される暗電流を撮像期間ごとに表した図である。
【図8】撮像期間と暗電流との関係を示す図である。
【図9】撮像装置が画像を読み取るときの動作の流れを示す図である。
【図10】変形例において撮像装置が画像を読み取るときの動作の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施形態
1−1.全体構成
以下に本発明の実施形態に係る撮像装置9を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置9の全体構成を説明する図である。読取部1は、複数(ここでは10個)のチップ10を備える。図2は、1つのチップ10を示す図である。図2に示すチップ10は、図1において左端に配置されたチップ10である。このチップ10は、直線状に並べられたn個(nは2以上の整数;例えばn=312)撮像素子C1〜Cn(以下、特に区別の必要がない場合は、これらを総称して「撮像素子C」と記す)と、各撮像素子Cによって出力される映像信号を増幅するアンプ100を備える。撮像素子Cは、画像が形成された原稿などの被撮像体を撮像する素子であり、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサや、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサなどである。アンプ100は、添字が小さい方の撮像素子Cが配置された側の端に配置されている。読取部1は、各チップ10を、撮像素子Cが並べられた方向に沿って直線状に配列している。
【0015】
コントローラ2は、指定部20と制御部21と記憶部22とを備える。指定部20は、各種の指示を入力するための操作ボタンなどを備えており、ユーザによる操作を受け付けてその操作内容に応じた信号を制御部21に供給する。制御部21は、記憶部22に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することによりコントローラ2の各部を制御する。また、制御部21は、読取部1を制御して読取部1から各撮像素子Cによって出力されアンプ100によって増幅された映像信号を取得する。また、制御部21は、照射部3を制御する。
【0016】
記憶部22はハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどの記憶手段であり、制御部21に読み込まれるプログラムを記憶する。また、記憶部22は、制御部21が予め決められた期間にわたって読取部1に撮像させることにより取得した映像信号を記憶する。照射部3は、LED(Light Emitting Diode)などを備え、読み取るべき画像が形成された原稿などの被撮像体に向けて光を照射する。
【0017】
1−2.制御部の機能的構成
撮像装置9は、読取部1を校正するキャリブレーション機能と、被撮像体に形成された画像を読み取る画像読取機能とを有する。以下、各機能についてそれぞれ説明する。
【0018】
(1)キャリブレーション機能
図3は、キャリブレーション機能における制御部21の機能的構成を示す図である。キャリブレーション機能において制御部21は、取得部211および光量調整部214として機能する。指定部20からキャリブレーションをする旨の指示を受けたとき、光量調整部214は、照射部3へ供給する電流を下げて照射部3による光の照射を停止する。そして、照射部3による光の照射が停止している間に、取得部211は、予め決められた最大および最小の期間のそれぞれにわたって読取部1の各撮像素子Cに撮像させ、得られた映像信号をそれぞれ取得する。そして、取得部211は、取得した映像信号を、撮像させた期間および撮像素子Cごとに対応付けて記憶部22に記憶する。
【0019】
(2)画像読取機能
画像読取機能とは、撮像装置9の制御部21が、読取部1によって被撮像体からの反射光に応じた映像信号を取得し、キャリブレーションの結果に基づいてその映像信号から暗電流の成分を除去することにより、被撮像体に形成された画像を読み取る機能である。
図4は、画像読取機能における制御部21の機能的構成を示す図である。画像読取機能において制御部21は、取得部211、推算部212、減算部213および光量調整部214として機能する。指定された期間にわたって画像の読み取りを行う旨の指示を指定部20から受けた時、光量調整部214は、照射部3へ供給する電流を調整し、決められた光量の光を照射部3に照射させる。そして、この決められた光量の光が照射部3によって被撮像体に照射されている間に、取得部211は、指定された期間にわたって読取部1の各撮像素子Cに撮像させ、得られた映像信号をそれぞれ取得する。また、推算部212は、記憶部22から各撮像素子Cに対応付けられて記憶された映像信号を読み出し、読み出した映像信号および指定部20により指定された期間をパラメータとする線形補間の演算をする。これにより推算部212は、光が照射されていないときに、指定部20により指定された期間にわたって各撮像素子Cに撮像させた場合に得られるはずの映像信号を推算する。
【0020】
1−3.動作
次に、キャリブレーション機能および画像読取機能のそれぞれについて、撮像装置9の動作を説明する。
図5は、撮像装置9がキャリブレーションをするときの動作の流れを示す図である。制御部21は、指定部20からキャリブレーションをする旨の指示を受けたか否かを判定し(ステップS101)、この指示を受けていない間(ステップS101;NO)は、この判定を続ける。指定部20からキャリブレーションをする旨の指示を受けた場合(ステップS101;YES)、制御部21は、光量調整部214として機能し、照射部3による光の照射を停止する(ステップS102)。次に、制御部21は、取得部211として機能し、予め決められた最小の期間(以下、最小期間という)Tmin(本発明における第1期間)にわたって読取部1の各撮像素子Cに撮像させ、その各撮像素子Cからそれぞれ暗電流の値である暗電流値Dmin(本発明における第1信号値)を取得する(ステップS103)。また、制御部21は、予め決められた最大の期間(以下、最大期間という)Tmax(本発明における第2期間)にわたって読取部1の各撮像素子Cに撮像させ、その各撮像素子Cからそれぞれ暗電流値Dmax(本発明における第2信号値)を取得する(ステップS104)。このステップS103とステップS104の実行の順序は上述の逆でもよい。そして、暗電流値Dminおよび暗電流値Dmaxを取得した制御部21は、これらを記憶部22に記憶する(ステップS105)。
【0021】
図6は、制御部21が最大期間Tmaxにわたって読取部1の各撮像素子Cに撮像させて取得した暗電流値Dmaxを示す図である。暗電流値Dmaxは、チップ10ごとに大きさが異なっているが、それぞれのチップ10内における撮像素子の位置と暗電流値との相対的な関係は共通している。例えば、図6に示すように、各チップ10においてそれぞれ暗電流値は、撮像素子Ciの添字iが小さい方ほど大きい傾向がある。これは、図2に示したとおり、チップ10において添字が小さい撮像素子Ciが配置された側の端にアンプ100が配置されているからである。つまり、アンプ100に近いほど、撮像素子Cがアンプ100から発生する熱によって加熱されて高温になり易く、暗電流値が大きくなる傾向があるからである。ただし、撮像素子Cには個体差があるため、横軸に撮像素子Cの添字を表し、縦軸に暗電流値の出力を表した場合、このグラフは同じチップ10内においても単調減少曲線になるとは限らない。
【0022】
図7は、撮像素子C1〜Cnにおいてそれぞれ測定される暗電流値を撮像期間ごとに表した図である。撮像期間が最大期間Tmaxの場合、制御部21が撮像素子Ciから取得する暗電流値はDmax[i]である。また、撮像期間が最小期間Tminの場合、制御部21が撮像素子Ciから取得する暗電流値はDmin[i]である。
【0023】
撮像期間は、最小期間Tmin以上、且つ最大期間Tmax以下の値で指定される。例えば、指定された撮像期間がTminよりも長いT1の場合、制御部21が撮像素子Ciから取得する暗電流値はD1[i]であり、指定された撮像期間がT1よりも長くTmaxよりも短いT2の場合、制御部21が撮像素子Ciから取得する暗電流値はD2[i]である。この場合、Dmin[i]<D1[i]<D2[i]<Dmax[i]が成り立つ。
【0024】
図8は、撮像期間と暗電流値との関係を示す図である。横軸に撮像期間を表し縦軸に暗電流値の出力を表すと、図8に示すように、どの撮像素子Cにおいても暗電流値の出力の大きさが撮像期間の長さの一次関数として表されることがわかる。例えば、撮像素子Cnにおいて、最大期間Tmaxにわたって撮像したときの暗電流値はDmax[n]であり、最小期間Tminにわたって撮像したときの暗電流値はDmin[n]であるところ、この撮像素子Cnにおいて、指定された期間T1(Tmin≦T1≦Tmax)にわたって撮像したときの暗電流値D1[n]は、以下の式によって表される。
【0025】
D1[n]≒(Dmax[n]−Dmin[n])/(Tmax−Tmin)×(T1−Tmin)+Dmin[n]
これは撮像素子Cnに限らずに成り立つため、全ての撮像素子Ciにおいて以下の式(1)が成り立つ。
【0026】
[数1]
Dx[i]≒(Dmax[i]−Dmin[i])/(Tmax−Tmin)×(T−Tmin)+Dmin[i]・・・(1)
【0027】
ここで、式(1)のTはTmin以上、且つTmax以下の期間である。そして、Dx[i]は、指定された期間T(本発明における第3期間)にわたって撮像素子Ciに撮像させた場合に発生する暗電流値(本発明における第4信号値)である。すなわち、指定された期間Tにわたって撮像素子Ciに撮像させた時の暗電流値Dx[i]は、最大期間Tmaxとこれに対応する暗電流値Dmax[i]の組、および最小期間Tminとこれに対応する暗電流値Dmin[i]の組によって線形補間により推算される。なお、TがTminまたはTmaxである場合、上述の式(1)に従って演算をするとT=TminでDx[i]=Dmin[i]になり、T=TmaxでDx[i]=Dmax[i]になるが、この線形補間はこの場合の演算を含む。
【0028】
図9は、撮像装置9が画像を読み取るときの動作の流れを示す図である。制御部21は、指定部20から画像読取をする旨の指示を受けたか否かを判定し(ステップS201)、この指示を受けていない間(ステップS201;NO)は、この判定を続ける。指定部20から画像読取をする旨の指示を受けた場合(ステップS201;YES)、制御部21は、光量調整部214として機能し、照射部3による決められた光量の光の照射を開始する(ステップS202)。次に、制御部21は、取得部211として機能し、指定部20により指定された期間(以下、指定期間という)Tにわたって読取部1の各撮像素子Ci(iは1〜10n)に撮像させ、その各撮像素子Ciからそれぞれ映像信号Di(本発明における第3信号値)を取得する(ステップS203)。そして、制御部21は、推算部212として機能し、指定期間Tにわたって照射部3による光の照射を行わずに各撮像素子Ciに撮像させた場合に得られる暗電流値Dx[i]を上述した式(1)に基づいた線形補間により推算する(ステップS204)。映像信号Diを取得し、暗電流値Dx[i]を推算した制御部21は、減算部213として機能し、映像信号Diから暗電流値Dx[i]を減算して、得られた数値(本発明における第5信号値)を出力する(ステップS205)。これにより、映像信号Diに含まれるノイズ成分に近い暗電流値Dx[i]が除去されるため、読取部1により読み取られた画像のムラが目立たなくなる。
【0029】
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0030】
2−1.最小期間、最大期間の除外
上述した実施形態において、全ての指定期間Tについて式(1)を適用した線形補間により暗電流値Dx[i]を推算していたが、推算に先立って指定期間Tが最小期間や最大期間に一致するか否かを判定してもよい。図10は、この変形例において撮像装置9が画像を読み取るときの動作の流れを示す図である。図10に示すステップのうち図9に示したステップと共通するものについては、共通の符号を付して説明を省略する。ステップS203の後、制御部21は、指定期間Tが最小期間Tminに等しいか否かを判定する(ステップS211)。指定期間Tが最小期間Tminに等しいと判定した場合(ステップS211;YES)、制御部21は、各撮像素子Ciから取得した映像信号Ciから記憶部22に記憶されたDmin[i]をそれぞれ減算する(ステップS212)。
【0031】
指定期間Tが最小期間Tminに等しいと判定しなかった場合(ステップS211;NO)、制御部21は、指定期間Tが最大期間Tmaxに等しいか否かを判定する(ステップS213)。指定期間Tが最大期間Tmaxに等しいと判定した場合(ステップS213;YES)、制御部21は、各撮像素子Ciから取得した映像信号Ciから記憶部22に記憶されたDmax[i]をそれぞれ減算する(ステップS214)。
【0032】
そして、指定期間Tが最大期間Tmaxに等しいと判定しなかった場合(ステップS213;NO)、制御部21は、上述したステップS204およびステップS205を順次実行すればよい。これにより予め記憶されているため推算の必要がない暗電流値を推算する手間が省かれる。
【0033】
2−2.代表チップ
上述した実施形態では、読取部1に含まれる全ての撮像素子Ciについて、最小期間Tminに対応する暗電流値Dmin[i]と、最大期間Tmaxに対応する暗電流値Dmax[i]とを実測し、記憶部22に記憶していたが、読取部1に含まれる1つのチップ10に備えられた撮像素子Cについて、これらを記憶してもよい。すなわち、読取部1に含まれる複数のチップ10のうち、いずれか1つを代表として記憶してもよい。この場合、記憶部22は、代表となるチップ10(以下、代表チップともいう)に配置された各撮像素子Ciについて、暗電流値Dmin[i]と暗電流値Dmax[i]とを記憶するとともに、この代表チップにおいて決められた位置に配置された撮像素子Ciの暗電流値Dmin[i]と、この代表チップ以外のチップ10においてその位置に対応する位置に配置された撮像素子Ck(k≠i)の暗電流値Dmin[k]との差である嵩上げ値を、この代表チップ以外のチップ10ごとに記憶すればよい。
【0034】
例えば、チップ10が図2に示した配置である場合、チップ10の右端の撮像素子C、すなわち、チップ10において添字iが最大である撮像素子Ciから生じる暗電流値が最も小さくなることが分かっている。このとき、制御部21は、キャリブレーションを行うに先立って、各チップ10においてそれぞれ添字iが最大になる位置(本発明における第1位置)に配置された撮像素子Ciに、最小期間Tminにわたって撮像させて得た暗電流値Dmin[i](i=n,2n,3n,…,10n)を取得する。そして、これらの中から最も小さいものを特定し、特定した暗電流値Dmin[i]を発生させた撮像素子Ciを有するチップ10を代表とすればよい。制御部21は、代表となったチップ10の暗電流値Dmin[i]と、それ以外のチップ10の暗電流値Dmin[k](k≠i)との差を算出し、代表以外のチップ10ごとにこれを「嵩上げ値」として対応付けて記憶部22に記憶する。そして、制御部21は、代表となったチップ10についてのみ、最小期間Tminに対応する暗電流値Dmin[i]と、最大期間Tmaxに対応する暗電流値Dmax[i]とを実測し、記憶部22に記憶する。
【0035】
例えば、代表となったチップ10が図1に示した読取部1のうち左端にあるチップ10である場合、添字iは、iが1〜nである。制御部21は、左端からj番目(jは2以上10以下の整数)のチップ10に対応する嵩上げ値B[j]として、(Dmin[j×n]−Dmin[n])を記憶する。そして制御部21は、iが1〜nの撮像素子Ciについて、最小期間Tminに対応する暗電流値Dmin[i]と、最大期間Tmaxに対応する暗電流値Dmax[i]とを実測し、記憶部22に記憶する。
【0036】
次に、制御部21は、画像読取を行うに際して、iが1〜nの撮像素子Ciについては上述した式(1)に従って線形補間を行う。一方、i>nの撮像素子Ciについては、制御部21は、以下の式(2)に従って線形補間を行う。
【0037】
[数2]
Dx[i]≒(Dmax[i mod n]−Dmin[i mod n])/(Tmax−Tmin)×(T−Tmin)+Dmin[i mod n]+B[j]・・・(2)
【0038】
ここで、「i mod n」とは、自然数nを法とする整数iの剰余であり、jは、上述したチップ10の左端からの位置を示す値である。したがって、式(2)におけるDmax[i mod n]とDmin[i mod n]とは、代表となったチップ10(iが1〜n)のDmax[i]とDmin[i]とにそれぞれ対応する。つまり、制御部21は、代表となったチップ10以外のチップ10において各撮像素子Cが発生する暗電流値の推算を、まず、代表となったチップ10において対応する位置の撮像素子Cについて記憶されたデータを用いて行う。そして制御部21は、得られた各値に対してチップ10ごとに記憶した嵩上げ値を加算して「嵩上げ」をすることで、各チップ10間のずれを補正する。これにより、記憶部22は、最小期間Tminに対応する暗電流値Dmin[i]と、最大期間Tmaxに対応する暗電流値Dmax[i]とを全ての撮像素子Ciについて記憶しなくても、代表となるチップ10に含まれる撮像素子Ciについて記憶すれば、全撮像素子について暗電流値が推算される。
【0039】
なお、上述の例では、代表となったチップ10に配置された全ての撮像素子Cについて、最小期間Tminに対応する暗電流値Dmin[i]と、最大期間Tmaxに対応する暗電流値Dmax[i]とを実測し、記憶部22に記憶しているが、一部の撮像素子Cについてこれらを実測し、それ以外の撮像素子Cについては推算値を用いるようにしてもよい。この推算値は、例えば高次の多項式など予め決められた数式に基づく補間計算によって推算されてもよい。具体的に、この数式には、三次関数や四次関数などのほか、指数関数、三角関数、対数関数の項などを含んでいてもよいし、これらを組み合わせた関数を含んでいてもよい。要するに、チップ10内の撮像素子Cの位置に対する暗電流値の分布を、予め決められた数式によって近似してもよい。
【0040】
例えば、各チップ10において、撮像素子Cの位置と暗電流の値とを表す点が、予め決められた三次関数に沿って描かれることが分かっている場合、記憶部22は、代表となったチップ10の撮像素子Cのうち、少なくとも3つの位置(本発明における第2位置)に配置された撮像素子Cについて、暗電流値Dmin[i]と暗電流値Dmax[i]とを実測した各値を記憶すればよい。このとき、制御部21は、代表となったチップ10以外のチップ10に配置された撮像素子Cであって、上述した3つの撮像素子Cの位置と異なる位置に配置されている撮像素子Cについて暗電流値を推算する場合、記憶部22に記憶された暗電流値Dmin[i]と暗電流値Dmax[i]とを用いて上述の三次関数に基づく補間計算を行い、代表となったチップ10において、この撮像素子Cの位置に対応する位置に配置されている撮像素子Cの暗電流値Dmin[i]と暗電流値Dmax[i]とをそれぞれ推算する。そして、推算されたこれら数値を用いて、上述の式(2)に従って線形補間を行うことで、指定期間Tにおけるこの撮像素子Cの暗電流値を推算すればよい。これにより、記憶部22は、代表チップ10に配置されている全ての撮像素子Cについて実測値をそれぞれ記憶しなくてもよい。
【0041】
2−3.情報処理装置
上述したコントローラ2は、情報処理装置として観念される。すなわち、このコントローラ2の記憶部22は、照射部3による光の照射を停止した状態で被撮像体を最小期間Tminにわたって撮像素子Cに撮像させて得た暗電流値Dminと、照射部3による光の照射を停止した状態で被撮像体を最小期間Tminよりも長い最大期間Tmaxにわたって撮像素子Cに撮像させて得た暗電流値Dmaxとを記憶する。また、このコントローラ2の取得部211は、最小期間Tmin以上、且つ最大期間Tmax以下の期間として指定された指定期間Tにわたって照射部3により決められた光量の光が照射された状態で被撮像体を撮像素子Cに撮像させて映像信号Diを取得する。また、このコントローラ2の推算部212は、照射部3による光の照射を停止した状態で被撮像体を指定期間Tにわたって撮像素子Cに撮影させた場合に得られる暗電流値を、記憶部22に記憶された暗電流値Dminおよび暗電流値Dmaxを用いる線形補間により推算する。また、このコントローラ2の減算部213は、取得部211が取得した映像信号Diから推算手段が推算した暗電流値を減算する。
【0042】
2−4.プログラム
制御部21によって実行される各プログラムは、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体、光ディスクなどの光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの、コンピュータ装置が読み取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムを、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。なお、上記の制御部21によって例示した制御手段としてはCPU以外にも種々の装置が適用される場合があり、例えば、専用のプロセッサなどが用いられる。
【符号の説明】
【0043】
1…読取部、10…チップ、100…アンプ、2…コントローラ、20…指定部、21…制御部、211…取得部、212…推算部、213…減算部、214…光量調整部、22…記憶部、3…照射部、9…撮像装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被撮像体に光を照射して反射光を複数の撮像素子で撮像することで被撮像体上に描かれた画像を読み取る撮像装置がある。撮像素子は、受けた光の量に応じて発生した電荷を読み出して映像信号を出力するが、受光していないときであっても電荷を発生する。これは、撮像素子が熱によって励起するためである。この受光していないときの電荷により生じる電流を一般に暗電流という。暗電流は読み取られた画像にとってノイズとなるため、これを除去する技術が種々開発されている。
【0003】
特許文献1には、撮像素子と、撮像素子を駆動制御する駆動回路と、撮像素子の電荷蓄積時間を検出する時間検出回路と、演算回路と、撮像素子の暗電流を演算するための演算定数に関するデータを予め記憶しておく不揮発性メモリと、減算回路と、を有する撮像装置の暗電流除去方式において、前記演算回路は前記撮像素子の電荷蓄積時間と前記不揮発性メモリからの前記データ、および前記撮像素子の温度に基づいて暗電流を算出し、算出した暗電流を前記減算回路において撮像信号から減算することにより、撮像信号に重畳した暗電流を除去することを特徴とする撮像装置の暗電流除去方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−46077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、予め決められた期間にわたって撮像手段が撮像した場合の暗電流の値を用いて、指定された期間にわたって撮像手段が撮像した場合の信号からそのときの暗電流の成分を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る撮像装置は、被撮像体を撮像し、当該被撮像体から受光した光量に対応した信号を出力する撮像手段と、前記被撮像体に光を照射する照射手段と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を第1期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第1信号値と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第1期間よりも長い第2期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第2信号値とを記憶する記憶手段と、前記第1期間以上、且つ、前記第2期間以下の期間である第3期間にわたって前記照射手段により光が照射された状態で前記被撮像体を前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第3信号値を取得する取得手段と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第3期間にわたって前記撮像手段が撮影した場合の前記信号の値である第4信号値を、前記記憶手段に記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間により推算する推算手段と、前記取得手段が取得した第3信号値から前記推算手段が推算した第4信号値を減算して、第5信号値を出力する減算手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る撮像装置は、請求項1に記載の態様において、前記減算手段は、前記第3期間が前記第1期間である場合に、前記第3信号値から前記第1信号値を減算し、前記第3期間が前記第2期間である場合に、前記第3信号値から前記第2信号値を減算して、前記第5信号値を出力することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に係る撮像装置は、請求項1または2に記載の態様において、前記撮像手段は、直線に沿って並べられた複数の基板であって、当該直線の方向に沿ってそれぞれ決められた数の撮像素子が配置された複数の基板を備え、前記記憶手段は、前記複数の基板のうち代表となる基板である代表基板に配置された各撮像素子について、前記第1信号値と第2信号値とを記憶するとともに、当該代表基板において決められた第1位置に配置された撮像素子と、当該代表基板以外の基板において前記第1位置に対応する位置に配置された撮像素子とにおける前記第1信号値または前記第2信号値の差である嵩上げ値を、当該代表基板以外の基板ごとに記憶し、前記推算手段は、前記撮像素子が前記代表基板以外の基板に配置されている場合、前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間によって得た値を前記嵩上げ値により補正して前記第4信号値を推算することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係る撮像装置は、請求項3に記載の態様において、前記記憶手段は、前記代表基板に配置された各撮像素子のうち、決められた第2位置に配置された撮像素子について、前記第1信号値と第2信号値とを記憶し、前記推算手段は、前記撮像素子が前記代表基板以外の基板において、前記第2位置と異なる第3位置に配置されている場合、前記記憶手段により記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いて、予め決められた数式に基づいて、前記代表基板において前記第3位置に配置された撮像素子の前記第1信号値および前記第2信号値を推算し、推算した当該第1信号値および第2信号値を用いる線形補間によって得た値を前記嵩上げ値により補正して前記第4信号値を推算することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係る情報処理装置は、照射手段による光の照射を停止した状態で被撮像体を第1期間にわたって撮像手段が撮像した場合に当該撮像手段によって出力される信号であって、当該撮像手段が前記被撮像体から受光した光量に対応した信号の値である第1信号値と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第1期間よりも長い第2期間にわたって前記撮像素子が撮像した場合の前記信号の値である第2信号値とを記憶する記憶手段と、前記第1期間以上、且つ、前記第2期間以下の期間である第3期間にわたって照射手段により光が照射された状態で前記被撮像体を前記撮像素子が撮像した場合の前記信号の値である第3信号値を取得する取得手段と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第3期間にわたって前記撮像手段が撮影した場合の前記信号の値である第4信号値を、前記記憶手段に記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間により推算する推算手段と、前記取得手段が取得した第3信号値から前記推算手段が推算した第4信号値を減算して、第5信号値を出力する減算手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6に係るプログラムは、被撮像体を撮像し、当該被撮像体から受光した光量に対応した信号を出力する撮像手段と、前記被撮像体に光を照射する照射手段と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を第1期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第1信号値と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第1期間よりも長い第2期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第2信号値とを記憶する記憶手段とを具備する撮像装置のコンピュータを、前記第1期間以上、且つ、前記第2期間以下の期間である第3期間にわたって前記照射手段により光が照射された状態で前記被撮像体を前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第3信号値を取得する取得手段と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第3期間にわたって前記撮像手段が撮影した場合の前記信号の値である第4信号値を、前記記憶手段に記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間により推算する推算手段と、前記取得手段が取得した第3信号値から前記推算手段が推算した第4信号値を減算して、第5信号値を出力する減算手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の撮像装置によれば、予め決められた期間にわたって撮像手段が撮像した場合の暗電流の値を用いて、指定された期間にわたって撮像手段が撮像した場合の信号からそのときの暗電流の成分を除去することができる。
請求項2に記載の撮像装置によれば、不必要な推算を回避することができる。
請求項3に記載の撮像装置によれば、撮像手段に含まれる全ての撮像素子について第1信号および第2信号を記憶しなくてもよい。
請求項4に記載の撮像装置によれば、代表基板に含まれる全ての撮像素子について第1信号および第2信号を記憶しなくてもよい。
請求項5に記載の情報処理装置によれば、予め決められた期間にわたって撮像手段が撮像した場合の暗電流の値を用いて、指定された期間にわたって撮像手段が撮像した場合の信号からそのときの暗電流の成分を除去することができる。
請求項6に記載のプログラムによれば、予め決められた期間にわたって撮像手段が撮像した場合の暗電流の値を用いて、指定された期間にわたって撮像手段が撮像した場合の信号からそのときの暗電流の成分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の全体構成を説明する図である。
【図2】1つのチップを示す図である。
【図3】キャリブレーション機能における制御部の機能的構成を示す図である。
【図4】画像読取機能における制御部の機能的構成を示す図である。
【図5】撮像装置がキャリブレーションをするときの動作の流れを示す図である。
【図6】制御部が最大期間にわたって読取部の各撮像素子に撮像させて取得した暗電流を示す図である。
【図7】撮像素子においてそれぞれ測定される暗電流を撮像期間ごとに表した図である。
【図8】撮像期間と暗電流との関係を示す図である。
【図9】撮像装置が画像を読み取るときの動作の流れを示す図である。
【図10】変形例において撮像装置が画像を読み取るときの動作の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施形態
1−1.全体構成
以下に本発明の実施形態に係る撮像装置9を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置9の全体構成を説明する図である。読取部1は、複数(ここでは10個)のチップ10を備える。図2は、1つのチップ10を示す図である。図2に示すチップ10は、図1において左端に配置されたチップ10である。このチップ10は、直線状に並べられたn個(nは2以上の整数;例えばn=312)撮像素子C1〜Cn(以下、特に区別の必要がない場合は、これらを総称して「撮像素子C」と記す)と、各撮像素子Cによって出力される映像信号を増幅するアンプ100を備える。撮像素子Cは、画像が形成された原稿などの被撮像体を撮像する素子であり、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサや、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサなどである。アンプ100は、添字が小さい方の撮像素子Cが配置された側の端に配置されている。読取部1は、各チップ10を、撮像素子Cが並べられた方向に沿って直線状に配列している。
【0015】
コントローラ2は、指定部20と制御部21と記憶部22とを備える。指定部20は、各種の指示を入力するための操作ボタンなどを備えており、ユーザによる操作を受け付けてその操作内容に応じた信号を制御部21に供給する。制御部21は、記憶部22に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することによりコントローラ2の各部を制御する。また、制御部21は、読取部1を制御して読取部1から各撮像素子Cによって出力されアンプ100によって増幅された映像信号を取得する。また、制御部21は、照射部3を制御する。
【0016】
記憶部22はハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどの記憶手段であり、制御部21に読み込まれるプログラムを記憶する。また、記憶部22は、制御部21が予め決められた期間にわたって読取部1に撮像させることにより取得した映像信号を記憶する。照射部3は、LED(Light Emitting Diode)などを備え、読み取るべき画像が形成された原稿などの被撮像体に向けて光を照射する。
【0017】
1−2.制御部の機能的構成
撮像装置9は、読取部1を校正するキャリブレーション機能と、被撮像体に形成された画像を読み取る画像読取機能とを有する。以下、各機能についてそれぞれ説明する。
【0018】
(1)キャリブレーション機能
図3は、キャリブレーション機能における制御部21の機能的構成を示す図である。キャリブレーション機能において制御部21は、取得部211および光量調整部214として機能する。指定部20からキャリブレーションをする旨の指示を受けたとき、光量調整部214は、照射部3へ供給する電流を下げて照射部3による光の照射を停止する。そして、照射部3による光の照射が停止している間に、取得部211は、予め決められた最大および最小の期間のそれぞれにわたって読取部1の各撮像素子Cに撮像させ、得られた映像信号をそれぞれ取得する。そして、取得部211は、取得した映像信号を、撮像させた期間および撮像素子Cごとに対応付けて記憶部22に記憶する。
【0019】
(2)画像読取機能
画像読取機能とは、撮像装置9の制御部21が、読取部1によって被撮像体からの反射光に応じた映像信号を取得し、キャリブレーションの結果に基づいてその映像信号から暗電流の成分を除去することにより、被撮像体に形成された画像を読み取る機能である。
図4は、画像読取機能における制御部21の機能的構成を示す図である。画像読取機能において制御部21は、取得部211、推算部212、減算部213および光量調整部214として機能する。指定された期間にわたって画像の読み取りを行う旨の指示を指定部20から受けた時、光量調整部214は、照射部3へ供給する電流を調整し、決められた光量の光を照射部3に照射させる。そして、この決められた光量の光が照射部3によって被撮像体に照射されている間に、取得部211は、指定された期間にわたって読取部1の各撮像素子Cに撮像させ、得られた映像信号をそれぞれ取得する。また、推算部212は、記憶部22から各撮像素子Cに対応付けられて記憶された映像信号を読み出し、読み出した映像信号および指定部20により指定された期間をパラメータとする線形補間の演算をする。これにより推算部212は、光が照射されていないときに、指定部20により指定された期間にわたって各撮像素子Cに撮像させた場合に得られるはずの映像信号を推算する。
【0020】
1−3.動作
次に、キャリブレーション機能および画像読取機能のそれぞれについて、撮像装置9の動作を説明する。
図5は、撮像装置9がキャリブレーションをするときの動作の流れを示す図である。制御部21は、指定部20からキャリブレーションをする旨の指示を受けたか否かを判定し(ステップS101)、この指示を受けていない間(ステップS101;NO)は、この判定を続ける。指定部20からキャリブレーションをする旨の指示を受けた場合(ステップS101;YES)、制御部21は、光量調整部214として機能し、照射部3による光の照射を停止する(ステップS102)。次に、制御部21は、取得部211として機能し、予め決められた最小の期間(以下、最小期間という)Tmin(本発明における第1期間)にわたって読取部1の各撮像素子Cに撮像させ、その各撮像素子Cからそれぞれ暗電流の値である暗電流値Dmin(本発明における第1信号値)を取得する(ステップS103)。また、制御部21は、予め決められた最大の期間(以下、最大期間という)Tmax(本発明における第2期間)にわたって読取部1の各撮像素子Cに撮像させ、その各撮像素子Cからそれぞれ暗電流値Dmax(本発明における第2信号値)を取得する(ステップS104)。このステップS103とステップS104の実行の順序は上述の逆でもよい。そして、暗電流値Dminおよび暗電流値Dmaxを取得した制御部21は、これらを記憶部22に記憶する(ステップS105)。
【0021】
図6は、制御部21が最大期間Tmaxにわたって読取部1の各撮像素子Cに撮像させて取得した暗電流値Dmaxを示す図である。暗電流値Dmaxは、チップ10ごとに大きさが異なっているが、それぞれのチップ10内における撮像素子の位置と暗電流値との相対的な関係は共通している。例えば、図6に示すように、各チップ10においてそれぞれ暗電流値は、撮像素子Ciの添字iが小さい方ほど大きい傾向がある。これは、図2に示したとおり、チップ10において添字が小さい撮像素子Ciが配置された側の端にアンプ100が配置されているからである。つまり、アンプ100に近いほど、撮像素子Cがアンプ100から発生する熱によって加熱されて高温になり易く、暗電流値が大きくなる傾向があるからである。ただし、撮像素子Cには個体差があるため、横軸に撮像素子Cの添字を表し、縦軸に暗電流値の出力を表した場合、このグラフは同じチップ10内においても単調減少曲線になるとは限らない。
【0022】
図7は、撮像素子C1〜Cnにおいてそれぞれ測定される暗電流値を撮像期間ごとに表した図である。撮像期間が最大期間Tmaxの場合、制御部21が撮像素子Ciから取得する暗電流値はDmax[i]である。また、撮像期間が最小期間Tminの場合、制御部21が撮像素子Ciから取得する暗電流値はDmin[i]である。
【0023】
撮像期間は、最小期間Tmin以上、且つ最大期間Tmax以下の値で指定される。例えば、指定された撮像期間がTminよりも長いT1の場合、制御部21が撮像素子Ciから取得する暗電流値はD1[i]であり、指定された撮像期間がT1よりも長くTmaxよりも短いT2の場合、制御部21が撮像素子Ciから取得する暗電流値はD2[i]である。この場合、Dmin[i]<D1[i]<D2[i]<Dmax[i]が成り立つ。
【0024】
図8は、撮像期間と暗電流値との関係を示す図である。横軸に撮像期間を表し縦軸に暗電流値の出力を表すと、図8に示すように、どの撮像素子Cにおいても暗電流値の出力の大きさが撮像期間の長さの一次関数として表されることがわかる。例えば、撮像素子Cnにおいて、最大期間Tmaxにわたって撮像したときの暗電流値はDmax[n]であり、最小期間Tminにわたって撮像したときの暗電流値はDmin[n]であるところ、この撮像素子Cnにおいて、指定された期間T1(Tmin≦T1≦Tmax)にわたって撮像したときの暗電流値D1[n]は、以下の式によって表される。
【0025】
D1[n]≒(Dmax[n]−Dmin[n])/(Tmax−Tmin)×(T1−Tmin)+Dmin[n]
これは撮像素子Cnに限らずに成り立つため、全ての撮像素子Ciにおいて以下の式(1)が成り立つ。
【0026】
[数1]
Dx[i]≒(Dmax[i]−Dmin[i])/(Tmax−Tmin)×(T−Tmin)+Dmin[i]・・・(1)
【0027】
ここで、式(1)のTはTmin以上、且つTmax以下の期間である。そして、Dx[i]は、指定された期間T(本発明における第3期間)にわたって撮像素子Ciに撮像させた場合に発生する暗電流値(本発明における第4信号値)である。すなわち、指定された期間Tにわたって撮像素子Ciに撮像させた時の暗電流値Dx[i]は、最大期間Tmaxとこれに対応する暗電流値Dmax[i]の組、および最小期間Tminとこれに対応する暗電流値Dmin[i]の組によって線形補間により推算される。なお、TがTminまたはTmaxである場合、上述の式(1)に従って演算をするとT=TminでDx[i]=Dmin[i]になり、T=TmaxでDx[i]=Dmax[i]になるが、この線形補間はこの場合の演算を含む。
【0028】
図9は、撮像装置9が画像を読み取るときの動作の流れを示す図である。制御部21は、指定部20から画像読取をする旨の指示を受けたか否かを判定し(ステップS201)、この指示を受けていない間(ステップS201;NO)は、この判定を続ける。指定部20から画像読取をする旨の指示を受けた場合(ステップS201;YES)、制御部21は、光量調整部214として機能し、照射部3による決められた光量の光の照射を開始する(ステップS202)。次に、制御部21は、取得部211として機能し、指定部20により指定された期間(以下、指定期間という)Tにわたって読取部1の各撮像素子Ci(iは1〜10n)に撮像させ、その各撮像素子Ciからそれぞれ映像信号Di(本発明における第3信号値)を取得する(ステップS203)。そして、制御部21は、推算部212として機能し、指定期間Tにわたって照射部3による光の照射を行わずに各撮像素子Ciに撮像させた場合に得られる暗電流値Dx[i]を上述した式(1)に基づいた線形補間により推算する(ステップS204)。映像信号Diを取得し、暗電流値Dx[i]を推算した制御部21は、減算部213として機能し、映像信号Diから暗電流値Dx[i]を減算して、得られた数値(本発明における第5信号値)を出力する(ステップS205)。これにより、映像信号Diに含まれるノイズ成分に近い暗電流値Dx[i]が除去されるため、読取部1により読み取られた画像のムラが目立たなくなる。
【0029】
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0030】
2−1.最小期間、最大期間の除外
上述した実施形態において、全ての指定期間Tについて式(1)を適用した線形補間により暗電流値Dx[i]を推算していたが、推算に先立って指定期間Tが最小期間や最大期間に一致するか否かを判定してもよい。図10は、この変形例において撮像装置9が画像を読み取るときの動作の流れを示す図である。図10に示すステップのうち図9に示したステップと共通するものについては、共通の符号を付して説明を省略する。ステップS203の後、制御部21は、指定期間Tが最小期間Tminに等しいか否かを判定する(ステップS211)。指定期間Tが最小期間Tminに等しいと判定した場合(ステップS211;YES)、制御部21は、各撮像素子Ciから取得した映像信号Ciから記憶部22に記憶されたDmin[i]をそれぞれ減算する(ステップS212)。
【0031】
指定期間Tが最小期間Tminに等しいと判定しなかった場合(ステップS211;NO)、制御部21は、指定期間Tが最大期間Tmaxに等しいか否かを判定する(ステップS213)。指定期間Tが最大期間Tmaxに等しいと判定した場合(ステップS213;YES)、制御部21は、各撮像素子Ciから取得した映像信号Ciから記憶部22に記憶されたDmax[i]をそれぞれ減算する(ステップS214)。
【0032】
そして、指定期間Tが最大期間Tmaxに等しいと判定しなかった場合(ステップS213;NO)、制御部21は、上述したステップS204およびステップS205を順次実行すればよい。これにより予め記憶されているため推算の必要がない暗電流値を推算する手間が省かれる。
【0033】
2−2.代表チップ
上述した実施形態では、読取部1に含まれる全ての撮像素子Ciについて、最小期間Tminに対応する暗電流値Dmin[i]と、最大期間Tmaxに対応する暗電流値Dmax[i]とを実測し、記憶部22に記憶していたが、読取部1に含まれる1つのチップ10に備えられた撮像素子Cについて、これらを記憶してもよい。すなわち、読取部1に含まれる複数のチップ10のうち、いずれか1つを代表として記憶してもよい。この場合、記憶部22は、代表となるチップ10(以下、代表チップともいう)に配置された各撮像素子Ciについて、暗電流値Dmin[i]と暗電流値Dmax[i]とを記憶するとともに、この代表チップにおいて決められた位置に配置された撮像素子Ciの暗電流値Dmin[i]と、この代表チップ以外のチップ10においてその位置に対応する位置に配置された撮像素子Ck(k≠i)の暗電流値Dmin[k]との差である嵩上げ値を、この代表チップ以外のチップ10ごとに記憶すればよい。
【0034】
例えば、チップ10が図2に示した配置である場合、チップ10の右端の撮像素子C、すなわち、チップ10において添字iが最大である撮像素子Ciから生じる暗電流値が最も小さくなることが分かっている。このとき、制御部21は、キャリブレーションを行うに先立って、各チップ10においてそれぞれ添字iが最大になる位置(本発明における第1位置)に配置された撮像素子Ciに、最小期間Tminにわたって撮像させて得た暗電流値Dmin[i](i=n,2n,3n,…,10n)を取得する。そして、これらの中から最も小さいものを特定し、特定した暗電流値Dmin[i]を発生させた撮像素子Ciを有するチップ10を代表とすればよい。制御部21は、代表となったチップ10の暗電流値Dmin[i]と、それ以外のチップ10の暗電流値Dmin[k](k≠i)との差を算出し、代表以外のチップ10ごとにこれを「嵩上げ値」として対応付けて記憶部22に記憶する。そして、制御部21は、代表となったチップ10についてのみ、最小期間Tminに対応する暗電流値Dmin[i]と、最大期間Tmaxに対応する暗電流値Dmax[i]とを実測し、記憶部22に記憶する。
【0035】
例えば、代表となったチップ10が図1に示した読取部1のうち左端にあるチップ10である場合、添字iは、iが1〜nである。制御部21は、左端からj番目(jは2以上10以下の整数)のチップ10に対応する嵩上げ値B[j]として、(Dmin[j×n]−Dmin[n])を記憶する。そして制御部21は、iが1〜nの撮像素子Ciについて、最小期間Tminに対応する暗電流値Dmin[i]と、最大期間Tmaxに対応する暗電流値Dmax[i]とを実測し、記憶部22に記憶する。
【0036】
次に、制御部21は、画像読取を行うに際して、iが1〜nの撮像素子Ciについては上述した式(1)に従って線形補間を行う。一方、i>nの撮像素子Ciについては、制御部21は、以下の式(2)に従って線形補間を行う。
【0037】
[数2]
Dx[i]≒(Dmax[i mod n]−Dmin[i mod n])/(Tmax−Tmin)×(T−Tmin)+Dmin[i mod n]+B[j]・・・(2)
【0038】
ここで、「i mod n」とは、自然数nを法とする整数iの剰余であり、jは、上述したチップ10の左端からの位置を示す値である。したがって、式(2)におけるDmax[i mod n]とDmin[i mod n]とは、代表となったチップ10(iが1〜n)のDmax[i]とDmin[i]とにそれぞれ対応する。つまり、制御部21は、代表となったチップ10以外のチップ10において各撮像素子Cが発生する暗電流値の推算を、まず、代表となったチップ10において対応する位置の撮像素子Cについて記憶されたデータを用いて行う。そして制御部21は、得られた各値に対してチップ10ごとに記憶した嵩上げ値を加算して「嵩上げ」をすることで、各チップ10間のずれを補正する。これにより、記憶部22は、最小期間Tminに対応する暗電流値Dmin[i]と、最大期間Tmaxに対応する暗電流値Dmax[i]とを全ての撮像素子Ciについて記憶しなくても、代表となるチップ10に含まれる撮像素子Ciについて記憶すれば、全撮像素子について暗電流値が推算される。
【0039】
なお、上述の例では、代表となったチップ10に配置された全ての撮像素子Cについて、最小期間Tminに対応する暗電流値Dmin[i]と、最大期間Tmaxに対応する暗電流値Dmax[i]とを実測し、記憶部22に記憶しているが、一部の撮像素子Cについてこれらを実測し、それ以外の撮像素子Cについては推算値を用いるようにしてもよい。この推算値は、例えば高次の多項式など予め決められた数式に基づく補間計算によって推算されてもよい。具体的に、この数式には、三次関数や四次関数などのほか、指数関数、三角関数、対数関数の項などを含んでいてもよいし、これらを組み合わせた関数を含んでいてもよい。要するに、チップ10内の撮像素子Cの位置に対する暗電流値の分布を、予め決められた数式によって近似してもよい。
【0040】
例えば、各チップ10において、撮像素子Cの位置と暗電流の値とを表す点が、予め決められた三次関数に沿って描かれることが分かっている場合、記憶部22は、代表となったチップ10の撮像素子Cのうち、少なくとも3つの位置(本発明における第2位置)に配置された撮像素子Cについて、暗電流値Dmin[i]と暗電流値Dmax[i]とを実測した各値を記憶すればよい。このとき、制御部21は、代表となったチップ10以外のチップ10に配置された撮像素子Cであって、上述した3つの撮像素子Cの位置と異なる位置に配置されている撮像素子Cについて暗電流値を推算する場合、記憶部22に記憶された暗電流値Dmin[i]と暗電流値Dmax[i]とを用いて上述の三次関数に基づく補間計算を行い、代表となったチップ10において、この撮像素子Cの位置に対応する位置に配置されている撮像素子Cの暗電流値Dmin[i]と暗電流値Dmax[i]とをそれぞれ推算する。そして、推算されたこれら数値を用いて、上述の式(2)に従って線形補間を行うことで、指定期間Tにおけるこの撮像素子Cの暗電流値を推算すればよい。これにより、記憶部22は、代表チップ10に配置されている全ての撮像素子Cについて実測値をそれぞれ記憶しなくてもよい。
【0041】
2−3.情報処理装置
上述したコントローラ2は、情報処理装置として観念される。すなわち、このコントローラ2の記憶部22は、照射部3による光の照射を停止した状態で被撮像体を最小期間Tminにわたって撮像素子Cに撮像させて得た暗電流値Dminと、照射部3による光の照射を停止した状態で被撮像体を最小期間Tminよりも長い最大期間Tmaxにわたって撮像素子Cに撮像させて得た暗電流値Dmaxとを記憶する。また、このコントローラ2の取得部211は、最小期間Tmin以上、且つ最大期間Tmax以下の期間として指定された指定期間Tにわたって照射部3により決められた光量の光が照射された状態で被撮像体を撮像素子Cに撮像させて映像信号Diを取得する。また、このコントローラ2の推算部212は、照射部3による光の照射を停止した状態で被撮像体を指定期間Tにわたって撮像素子Cに撮影させた場合に得られる暗電流値を、記憶部22に記憶された暗電流値Dminおよび暗電流値Dmaxを用いる線形補間により推算する。また、このコントローラ2の減算部213は、取得部211が取得した映像信号Diから推算手段が推算した暗電流値を減算する。
【0042】
2−4.プログラム
制御部21によって実行される各プログラムは、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体、光ディスクなどの光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの、コンピュータ装置が読み取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムを、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。なお、上記の制御部21によって例示した制御手段としてはCPU以外にも種々の装置が適用される場合があり、例えば、専用のプロセッサなどが用いられる。
【符号の説明】
【0043】
1…読取部、10…チップ、100…アンプ、2…コントローラ、20…指定部、21…制御部、211…取得部、212…推算部、213…減算部、214…光量調整部、22…記憶部、3…照射部、9…撮像装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被撮像体を撮像し、当該被撮像体から受光した光量に対応した信号を出力する撮像手段と、
前記被撮像体に光を照射する照射手段と、
前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を第1期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第1信号値と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第1期間よりも長い第2期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第2信号値とを記憶する記憶手段と、
前記第1期間以上、且つ、前記第2期間以下の期間である第3期間にわたって前記照射手段により光が照射された状態で前記被撮像体を前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第3信号値を取得する取得手段と、
前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第3期間にわたって前記撮像手段が撮影した場合の前記信号の値である第4信号値を、前記記憶手段に記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間により推算する推算手段と、
前記取得手段が取得した第3信号値から前記推算手段が推算した第4信号値を減算して、第5信号値を出力する減算手段と
を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記減算手段は、前記第3期間が前記第1期間である場合に、前記第3信号値から前記第1信号値を減算し、前記第3期間が前記第2期間である場合に、前記第3信号値から前記第2信号値を減算して、前記第5信号値を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、直線に沿って並べられた複数の基板であって、当該直線の方向に沿ってそれぞれ決められた数の撮像素子が配置された複数の基板を備え、
前記記憶手段は、前記複数の基板のうち代表となる基板である代表基板に配置された各撮像素子について、前記第1信号値と第2信号値とを記憶するとともに、当該代表基板において決められた第1位置に配置された撮像素子と、当該代表基板以外の基板において前記第1位置に対応する位置に配置された撮像素子とにおける前記第1信号値または前記第2信号値の差である嵩上げ値を、当該代表基板以外の基板ごとに記憶し、
前記推算手段は、前記撮像素子が前記代表基板以外の基板に配置されている場合、前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間によって得た値を前記嵩上げ値により補正して前記第4信号値を推算する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記代表基板に配置された各撮像素子のうち、決められた第2位置に配置された撮像素子について、前記第1信号値と第2信号値とを記憶し、
前記推算手段は、前記撮像素子が前記代表基板以外の基板において、前記第2位置と異なる第3位置に配置されている場合、前記記憶手段により記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いて、予め決められた数式に基づいて、前記代表基板において前記第3位置に配置された撮像素子の前記第1信号値および前記第2信号値を推算し、推算した当該第1信号値および第2信号値を用いる線形補間によって得た値を前記嵩上げ値により補正して前記第4信号値を推算する
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
照射手段による光の照射を停止した状態で被撮像体を第1期間にわたって撮像手段が撮像した場合に当該撮像手段によって出力される信号であって、当該撮像手段が前記被撮像体から受光した光量に対応した信号の値である第1信号値と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第1期間よりも長い第2期間にわたって前記撮像素子が撮像した場合の前記信号の値である第2信号値とを記憶する記憶手段と、
前記第1期間以上、且つ、前記第2期間以下の期間である第3期間にわたって照射手段により光が照射された状態で前記被撮像体を前記撮像素子が撮像した場合の前記信号の値である第3信号値を取得する取得手段と、
前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第3期間にわたって前記撮像手段が撮影した場合の前記信号の値である第4信号値を、前記記憶手段に記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間により推算する推算手段と、
前記取得手段が取得した第3信号値から前記推算手段が推算した第4信号値を減算して、第5信号値を出力する減算手段と
を具備することを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
被撮像体を撮像し、当該被撮像体から受光した光量に対応した信号を出力する撮像手段と、
前記被撮像体に光を照射する照射手段と、
前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を第1期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第1信号値と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第1期間よりも長い第2期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第2信号値とを記憶する記憶手段と
を具備する撮像装置のコンピュータを、
前記第1期間以上、且つ、前記第2期間以下の期間である第3期間にわたって前記照射手段により光が照射された状態で前記被撮像体を前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第3信号値を取得する取得手段と、
前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第3期間にわたって前記撮像手段が撮影した場合の前記信号の値である第4信号値を、前記記憶手段に記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間により推算する推算手段と、
前記取得手段が取得した第3信号値から前記推算手段が推算した第4信号値を減算して、第5信号値を出力する減算手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
被撮像体を撮像し、当該被撮像体から受光した光量に対応した信号を出力する撮像手段と、
前記被撮像体に光を照射する照射手段と、
前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を第1期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第1信号値と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第1期間よりも長い第2期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第2信号値とを記憶する記憶手段と、
前記第1期間以上、且つ、前記第2期間以下の期間である第3期間にわたって前記照射手段により光が照射された状態で前記被撮像体を前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第3信号値を取得する取得手段と、
前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第3期間にわたって前記撮像手段が撮影した場合の前記信号の値である第4信号値を、前記記憶手段に記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間により推算する推算手段と、
前記取得手段が取得した第3信号値から前記推算手段が推算した第4信号値を減算して、第5信号値を出力する減算手段と
を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記減算手段は、前記第3期間が前記第1期間である場合に、前記第3信号値から前記第1信号値を減算し、前記第3期間が前記第2期間である場合に、前記第3信号値から前記第2信号値を減算して、前記第5信号値を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、直線に沿って並べられた複数の基板であって、当該直線の方向に沿ってそれぞれ決められた数の撮像素子が配置された複数の基板を備え、
前記記憶手段は、前記複数の基板のうち代表となる基板である代表基板に配置された各撮像素子について、前記第1信号値と第2信号値とを記憶するとともに、当該代表基板において決められた第1位置に配置された撮像素子と、当該代表基板以外の基板において前記第1位置に対応する位置に配置された撮像素子とにおける前記第1信号値または前記第2信号値の差である嵩上げ値を、当該代表基板以外の基板ごとに記憶し、
前記推算手段は、前記撮像素子が前記代表基板以外の基板に配置されている場合、前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間によって得た値を前記嵩上げ値により補正して前記第4信号値を推算する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記代表基板に配置された各撮像素子のうち、決められた第2位置に配置された撮像素子について、前記第1信号値と第2信号値とを記憶し、
前記推算手段は、前記撮像素子が前記代表基板以外の基板において、前記第2位置と異なる第3位置に配置されている場合、前記記憶手段により記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いて、予め決められた数式に基づいて、前記代表基板において前記第3位置に配置された撮像素子の前記第1信号値および前記第2信号値を推算し、推算した当該第1信号値および第2信号値を用いる線形補間によって得た値を前記嵩上げ値により補正して前記第4信号値を推算する
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
照射手段による光の照射を停止した状態で被撮像体を第1期間にわたって撮像手段が撮像した場合に当該撮像手段によって出力される信号であって、当該撮像手段が前記被撮像体から受光した光量に対応した信号の値である第1信号値と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第1期間よりも長い第2期間にわたって前記撮像素子が撮像した場合の前記信号の値である第2信号値とを記憶する記憶手段と、
前記第1期間以上、且つ、前記第2期間以下の期間である第3期間にわたって照射手段により光が照射された状態で前記被撮像体を前記撮像素子が撮像した場合の前記信号の値である第3信号値を取得する取得手段と、
前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第3期間にわたって前記撮像手段が撮影した場合の前記信号の値である第4信号値を、前記記憶手段に記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間により推算する推算手段と、
前記取得手段が取得した第3信号値から前記推算手段が推算した第4信号値を減算して、第5信号値を出力する減算手段と
を具備することを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
被撮像体を撮像し、当該被撮像体から受光した光量に対応した信号を出力する撮像手段と、
前記被撮像体に光を照射する照射手段と、
前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を第1期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第1信号値と、前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第1期間よりも長い第2期間にわたって前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第2信号値とを記憶する記憶手段と
を具備する撮像装置のコンピュータを、
前記第1期間以上、且つ、前記第2期間以下の期間である第3期間にわたって前記照射手段により光が照射された状態で前記被撮像体を前記撮像手段が撮像した場合の前記信号の値である第3信号値を取得する取得手段と、
前記照射手段による光の照射を停止した状態で前記被撮像体を前記第3期間にわたって前記撮像手段が撮影した場合の前記信号の値である第4信号値を、前記記憶手段に記憶された前記第1信号値および前記第2信号値を用いる線形補間により推算する推算手段と、
前記取得手段が取得した第3信号値から前記推算手段が推算した第4信号値を減算して、第5信号値を出力する減算手段
として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−102391(P2013−102391A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245807(P2011−245807)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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