説明

撮像装置および画像処理方法

【課題】垂直方向の光学歪み補正を行うにあたって、ラインバッファの必要なライン数を低減する。
【解決手段】画像データを所定の画素数の横幅を持つ短冊データに分割する。また、補正する画像がたる歪みであるか糸巻き歪みであるかを判別する。次に、中心を通る水平軸と垂直軸により画像を4つの象限に分割し、補正しようとする短冊の象限がどの象限であるかを判別する。たる歪みの場合は、第1象限ではType3、第2象限ではType1、第3象限ではType2、及び第4象限ではType4のバッファ制御を行う。また糸巻き歪みの場合は、第1象限ではType4、第2象限ではType2、第3象限ではType1、及び第4象限ではType3のバッファ制御を行う。それぞれの制御タイプは読み出し基準ラインと読み出し方向が異なっている。それぞれの象限において、選択されたバッファ制御を用いて短冊毎に光学歪み補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置および画像処理方法に係り、特に撮像レンズの光学歪みを補正する撮像装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学歪みには、大別して、沈胴ズームレンズにおいて多く発生するたる歪みと、屈曲系のレンズ機構に発生する糸巻き歪みがある。図1は、従来の光学歪み補正の流れを示す図である。撮影した画像を入力画像データとして、まず水平方向の光学歪み補正及びリサイズを行い、次に垂直方向の方角歪み補正及びリサイズを行う。
【0003】
図2は、たる歪みの補正について示す図である。図2(a)は、撮影され、歪み補正前の画像のフレーム全体を実線で、撮像された被写体の歪みの大きさを点線で示している。図2(b)は、図2(a)の画像に対して水平方向の歪み補正を行ったことを示す図である。水平方向の歪み補正は、フレームの原点を通る垂直軸に対して左右対称に水平方向に画像を引き伸ばすが、画面の端ほど大きく引き伸ばすことにより、歪みを補正する。図2(c)は、図2(b)の画像に対して垂直方向の歪み補正を行ったことを示す図である。垂直方向の歪み補正は、フレームの原点を通る水平軸に対して上下対称に垂直方向に画像を引き伸ばすが、画面の端ほど大きく引き伸ばすことにより、歪みを補正する。このように、たる歪み補正については、画像の中心に対して角の周辺領域を引き伸ばすように行われる。なお、図2においてはリサイズについては省略している。
【0004】
図3は、糸巻き歪みの補正について示す図である。図3(a)は、撮影され、歪み補正前の画像のフレーム全体を実線で、撮像された被写体の歪みの大きさを点線で示している。図3(b)は、図3(a)の画像に対して水平方向の歪み補正を行ったことを示す図である。水平方向の歪み補正は、フレームの原点を通る垂直軸に対して左右対称に水平方向に画像を縮小するが、画面の端ほど大幅に縮小することにより、歪みを補正する。図3(c)は、図3(b)の画像に対して垂直方向の歪み補正を行ったことを示す図である。垂直方向の歪み補正は、フレームの原点を通る水平軸に対して上下対称に垂直方向に画像を縮小するが、画面の端ほど大幅に縮小することにより、歪みを補正する。このように、たる歪み補正については、画像の中心に対して角の周辺領域を縮小するように行われる。なお、図3においてもリサイズについては省略している。
【0005】
上記の画像の引き伸ばし及び縮小の補正量については、ズーム比毎にレンズの歪みを高次関数によって近似し、出力画像の出力位置から入力画像の参照する位置を逆算することにより算出し、また引き伸ばし及び縮小後は、周辺画素との補間処理及びリサイズ処理を行い補正を完成させる。特許文献1では、リサイズ処理と同時にレンズの光学歪み補正を行う回路について言及している。また特許文献2では、光学歪み補正を実施する際に、メモリ使用量を低減するための短冊処理について述べている。
【0006】
ここで、図4を用いて短冊処理について説明する。図4(a)は、撮影画像のフレームを所定の画素数の横幅を持った、縦長の複数本の短冊41に分割したことを示す図である。図4(b)は、短冊41の1つを拡大した図と、短冊41の横方向の画素数と同じビット数を備えるラインバッファ(メモリ)31を示す図である。図4(b)に示すように、ラインバッファ31は短冊41の複数のラインを読み出すことが可能であり、読み出せるライン数はラインバッファのライン数で決まる。
【0007】
前述したように、垂直方向の光学歪み補正は、撮像レンズ固有の歪み関数によって、出力画像の出力位置から入力画像の参照する位置を逆算することにより行う。この演算は、ラインバッファで読み出したデータ内で行い、必要なバッファ量は歪みの曲率に応じて異なるが、予め用意されたライン数以上の補正は不可能である。
【特許文献1】特開2005−11268号公報
【特許文献2】特開2004−64710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5は、短冊処理を用いて垂直方向の光学歪み(糸巻き歪み)補正を行う際の、正しい被写体像(出力ライン)について各画素から逆算したカーブと、このカーブを補正するにあたって必要となるラインバッファの量について示している。たる歪み及び糸巻き歪みの特性から、凹変化の逆算座標カーブを補正するためには出力ラインは下側に、凸変化の逆算座標カーブを補正するためには出力ラインは上側に存在することになるが、この逆算座標カーブはたる歪み・糸巻き歪みに関わらず、原点を通る水平軸を境に短冊内で凹凸が反転する。また前述したように、予め用意されたライン数以上の補正はできない。このため、両カーブに対応するために、出力ラインを挟んで上下にラインバッファを持つ必要がある。しかし、この出力ラインの上下のラインバッファは同時にデータを使用することがなく、上又は下のデータのみを使用している。このため、無駄にラインバッファのライン数が多くなり、ラインバッファへの書き込み時間が長くなるという欠点があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、処理に必要なラインバッファのライン数を半減し、ラインバッファへの書き込み時間が短縮できる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために請求項1に係る撮像装置は、撮影レンズ及び撮像素子を介して取得した1フレームの画像データをメモリに保持し、前記フレームを縦長の複数本の短冊に分割して前記メモリから各短冊ごとに画像データを読み出し、前記短冊の横方向の画素数と同じ画素数を記憶する複数ライン分のラインバッファに書き込み、このラインバッファからの読み出しライン位置を制御することにより前記撮影レンズの垂直方向の光学歪みを補正する撮像装置において、前記ラインバッファは、前記撮影レンズの垂直方向の光学歪みであって、前記短冊の幅内での生じる最大歪みに相当するライン数分のラインバッファであり、前記ラインバッファを介して読み出される画像データが、前記フレームの第1象限から第4象限のうちの何れの象限内の画像データかを判別する判別手段と、前記撮影レンズの光学歪みの特性と前記判別された象限とに基づいて前記ラインバッファから読み出しを開始する基準ラインを最上段のライン、又は最下段のラインのいずれかに設定するとともに、前記ラインバッファの読み出し方向を設定して、前記ラインバッファからの画像データの読み出しを制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
これにより処理に必要なラインバッファのライン数を半減し、ラインバッファへの書き込み時間が短縮できる。
【0012】
請求項2に示すように請求項1に記載の撮像装置において、前記制御手段は、前記撮影レンズの光学歪みが樽歪みであり、かつ前記判別された象限が第1、第2象限の場合、及び前記撮影レンズの光学歪みが糸巻き歪みであり、かつ前記判別された象限が第3、第4象限の場合には、前記ラインバッファからの読み出しを開始する基準ラインを最上段のラインに設定して前記ラインバッファからの画像データの読み出しを制御し、前記撮影レンズの光学歪みが糸巻き歪みであり、かつ前記判別された象限が第1、第2象限の場合、及び前記撮影レンズの光学歪みが樽歪みであり、かつ前記判別された象限が第3、第4象限の場合には、前記ラインバッファからの読み出しを開始する基準ラインを最下段のラインに設定して前記ラインバッファからの画像データの読み出しを制御し、前記判別された象限が第1、第4象限の場合は前記ラインバッファの読み出し方向を右から左に設定して前記ラインバッファからの画像データの読み出しを制御し、前記判別された象限が第2、第3象限の場合は前記ラインバッファの読み出し方向を左から右に設定して前記ラインバッファからの画像データの読み出しを制御することを特徴とする。
【0013】
前記目的を達成するために請求項3に係る撮像装置は、撮影レンズ及び撮像素子を介して取得した1フレームの画像データをメモリに保持し、前記フレームを縦長の複数本の短冊に分割して前記メモリから各短冊ごとに画像データを読み出し、前記短冊の横方向の画素数と同じ画素数を記憶する複数ライン分のラインバッファに書き込み、このラインバッファからの読み出しライン位置を制御することにより前記撮影レンズの垂直方向の光学歪みを補正する撮像装置において、前記ラインバッファは、1からnラインの第1のラインバッファと、n+1から2nラインの第2のラインバッファとからなり、前記第1のラインバッファと第2のラインバッファとを水平方向に接続し、隣接する2つの短冊の画像データの光学歪みを同時に補正する第1の制御手段と、前記第1のラインバッファと第2のラインバッファとを垂直方向に接続し、光学歪みの補正可能な範囲を2倍に拡大して光学歪み補正を行う第2の制御手段と、前記第1の制御手段による制御と第2の制御手段による制御とを切り替える切替手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
これにより、歪みの大きさに応じた適切なラインバッファ制御に切り替えることができる。
【0015】
請求項4に示すように請求項3に記載の撮像装置において、画像データを取得したときの撮影レンズのズーム比から前記画像データの垂直方向の光学歪みの歪み量を算出する算出手段と、前記歪み量と所定の閾値とを比較することにより、前記歪み量の大小を判定する判定手段とを備え、前記切替手段は、前記判定手段が前記歪み量を前記所定の閾値より小さいと判定したときは第1の制御手段に、前記判定手段が前記歪み量を前記所定の閾値より大きいと判定したときは第2の制御手段に、前記ラインバッファの制御を切り替えることを特徴とする。
【0016】
このように、撮影レンズのズーム比により2つのラインバッファを水平方向に接続するか垂直方向に接続するかを判断することにより、ズーム比が小さく歪みが大きいときには補正量を大きくし、ズーム比が大きく歪みが小さいときには、歪み補正処理時間を短縮することができる。
【0017】
請求項5に示すように請求項3に記載の撮像装置において、前記フレームの原点を通る垂直軸と前記ラインバッファを介して読み出される画像データとの距離を測定する手段と、前記距離と所定の閾値とを比較することにより、前記距離の大小を判定する距離判定手段とを備え前記切替手段は、前記距離判定手段が前記距離を前記所定の閾値より小さいと判定したときは第1の制御手段に、前記距離判定手段が前記距離を前記所定の閾値より大きいと判定したときは第2の制御手段に、前記ラインバッファの制御を切り替えることを特徴とする。
【0018】
このように、画面のフレームの中心から距離により2つのラインバッファを水平方向に接続するか垂直方向に接続するかを判断することにより、画面の端で歪みが大きいときにはラインバッファを垂直に接続することにより補正量を大きくし、画面の中心近傍で歪みが小さいときにはラインバッファを水平に接続することにより歪み補正処理時間を短縮することができる。
【0019】
前記目的を達成するために請求項6に記載の画像処理方法は、撮影レンズ及び撮像素子を介して取得した1フレームの画像データをメモリに保持し、前記フレームを縦長の複数本の短冊に分割して前記メモリから各短冊ごとに画像データを読み出し、前記短冊の横方向の画素数と同じ画素数を記憶する複数ライン分のラインバッファに書き込み、このラインバッファからの読み出しライン位置を制御することにより前記撮影レンズの垂直方向の光学歪みを補正する画像処理方法において、前記ラインバッファは、前記撮影レンズの垂直方向の光学歪みであって、前記短冊の幅内での生じる最大歪みに相当するライン数分のラインバッファであり、前記ラインバッファを介して読み出される画像データが、前記フレームの第1象限から第4象限のうちの何れの象限内の画像データかを判別する判別工程と、前記撮影レンズの光学歪みの特性と前記判別された象限とに基づいて前記ラインバッファから読み出しを開始する基準ラインを最上段のライン、又は最下段のラインのいずれかに設定するとともに、前記ラインバッファの読み出し方向を設定して、前記ラインバッファからの画像データの読み出しを制御する制御工程とを備えたことを特徴とする画像処理方法。
【0020】
前記目的を達成するために請求項7に記載の画像処理方法は、撮影レンズ及び撮像素子を介して取得した1フレームの画像データをメモリに保持し、前記フレームを縦長の複数本の短冊に分割して前記メモリから各短冊ごとに画像データを読み出し、前記短冊の横方向の画素数と同じ画素数を記憶する複数ライン分のラインバッファに書き込み、このラインバッファからの読み出しライン位置を制御することにより前記撮影レンズの垂直方向の光学歪みを補正する画像処理方法において、前記ラインバッファは、1からnラインの第1のラインバッファと、n+1から2nラインの第2のラインバッファとからなり、前記第1のラインバッファと第2のラインバッファとを水平方向に接続し、隣接する2つの短冊の画像データの光学歪みを同時に補正する第1の制御工程と、前記第1のラインバッファと第2のラインバッファとを垂直方向に接続し、光学歪みの補正可能な範囲を2倍に拡大して光学歪み補正を行う第2の制御工程と、前記第1の制御手段による制御と第2の制御手段による制御とを切り替える切替工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、撮像レンズの光学歪みの特性と、処理を行う短冊が画面のどの象限であるかに基づいて、ラインバッファの制御を切り換えることにより、処理に必要なラインバッファのライン数を半減し、ラインバッファへの書き込み時間が必要最低限で済む撮像装置を提供することができる。また同数のラインバッファを使用した場合には、歪みの補正可能範囲が大きい撮像装置を提供することができる。また、撮影時のレンズのズーム比や処理短冊の画面内の位置により、2つのラインバッファを水平に接続して歪み補正を行うか、垂直に接続して歪み補正を行うかを切り替えることにより、歪みの大きさに応じた適切なラインバッファ制御を行う撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明に係る撮像装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0023】
<第1の実施の形態>
図6は、本発明に係る第1の実施の形態のデジタルカメラ1の内部構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
同図においてCPU19は、操作スイッチ18の入力に基づいてデジタルカメラ1内の各回路を統括制御するもので、カメラ制御プログラムにしたがった処理を実行する。
【0025】
このCPU19の各回路の制御は、BUS16を介しておこなう。またCPU19は、ROM21及びメインメモリ20との間で、必要なデータの授受を行う。ROM21には、カメラ制御プログラム、起動時のオープニング画像、停止時のエンディング画像、デジタルカメラ1の操作に使用するメニュー画像等のGUI用の画像、スクリーンセイバー用の画像、処理中のプログレス表示用の画像(目盛りが変化する砂時計の画像等)、キー操作音(シャッター音等)、警告音、及びエラー音等を示す音声データ等が記録されている。
【0026】
まず電源が投入されると、CPU19はこれを検出し、カメラ内電源をONにし、一定期間ROM21に格納されているオープニング画像を表示した後、撮影モードで撮影スタンバイ状態にする。この撮影スタンバイ状態では、CPU19は、LCD26に動画(スルー画)を表示させる。
【0027】
ユーザ(撮影者)は、LCD26に表示されるスルー画を見ながらフレーミングしたり、撮影したい被写体を確認したり、撮影後の画像を確認したり、撮影条件を設定したりする。
【0028】
上記撮影スタンバイ状態時に操作スイッチ18の1つであるレリーズボタンが押されると、操作スイッチインターフェース17を介してCPU19にレリーズ信号が入力され、CPU19は、AF制御部11を介して撮像レンズ10を駆動し、撮像レンズ10を介してCCD12の受光面上に被写体像を結像させる。CCD12は、受光面に結像された被写体像をその光量に応じた量のR、G、Bの信号電荷に変換する。この信号電荷は、CPU19の指令に従いCDS/AMP回路13に送られ、ここで相関二重サンプリング処理された後増幅され、A/D変換器14に加えられる。
【0029】
A/D変換器14によってデジタル信号に変換された点順次のR,G,B信号は、メインメモリ20に記憶される。
【0030】
メインメモリ20に記憶されたR、G、B信号は、CPU19の指令に従い、図示しない水平方向光学歪み補正部によって水平方向の光学歪みが補正され、次に垂直方向光学歪み補正部27によって垂直方向の光学歪みが補正される。その後、画像信号処理部15により輝度信号(Y信号)及び色差信号(Cr,Cb 信号)に変換されるとともに、ガンマ補正等の所定の処理が施され、再びメインメモリ20に格納される。
【0031】
上記のようにしてメインメモリ20に格納されたYC信号は、圧縮伸張部24によって所定のフォーマットに圧縮されたのち、メディア制御部22を介してデジタルカメラ1に着脱自在な記録メディア23に記録される。
【0032】
また操作スイッチ18を操作して再生モードが選択されると、記録メディア23に記録されている最終コマの画像ファイルがメディア制御部22を介して読み出される。この読み出された画像ファイルの圧縮データは、圧縮伸張部24を介して非圧縮のYC信号に伸張される。
【0033】
伸張されたYC信号は、LCD制御部25によって表示用の信号形式に変換されてLCD26に出力される。これにより、LCD26には記録メディア23に記録されている最終コマの画像が表示される。
【0034】
次に、垂直方向光学歪み補正部27について説明する。図7は、垂直方向光学歪み補正部27の内部構成を示すブロック図である。
【0035】
垂直方向光学歪み補正部27は、メインメモリ20との間で読み書きするデータを記憶するためのラインバッファ31と、メインメモリ20とラインバッファ31との間のDMA転送を制御するDMAコントローラ30と、演算により光学歪みを補正する演算部32から構成されている。
【0036】
ラインバッファ31はDMAコントローラ30と接続されており、DMAコントローラ30は、BUS16を介したメインメモリ20内の、CPU19からのアドレス指定に応じた撮影画像データの一部(縦長の短冊に分割した撮影画像の、短冊内におけるラインバッファと同ワード分のデータ)を、ラインバッファ31へ転送する。演算部32はBUS16を介したCPU19からの命令にしたがって、ラインバッファ31内のデータを演算し、光学歪みの補正の演算を行い、その結果をメインメモリ20に記憶させる。
【0037】
次に、垂直方向の光学歪み補正について、図8〜図13を用いて説明する。デジタルカメラ1は、撮影した画像に対してたる歪みか糸巻き歪みかの判断を行い、また撮影画像を4つの象限に分割し、歪み補正処理を行う短冊のデータがどの象限に属するかの判断を行うことにより、少ないライン数のラインバッファで効率よく垂直方向の光学歪み補正を行う。
【0038】
図8は、本発明に係る第1の実施の形態のデジタルカメラ1の、垂直方向の光学歪み補正の流れを示すフローチャートである。最初に、光学歪み補正のパラメータ設定を行う(ステップS801)。光学歪み補正のパラメータには、たる歪みを補正するか糸巻き歪みを補正するかの補正タイプと、その補正量が含まれている。たる歪みであるか糸巻き歪みであるかは、撮影したレンズの特性で決まり、1つの画像内で補正タイプが変化することは無いため、最初に設定を行う。また前述したように、ズーム比毎にレンズの光学歪みを高次関数によって近似することにより、補正量を算出する。
【0039】
次に補正タイプの判定を行う(ステップS802)。設定された補正タイプがたる歪みの場合はステップS803へ、糸巻き歪みの場合はステップS810へ進む。次に、歪み補正処理を行う領域がどの象限に属するかを判定する。
【0040】
ここで、象限について図9を用いて説明する。図9は、撮影画像の中心(原点)を通る水平軸(X軸)及び垂直軸(Y軸)の2つの軸によって、撮影画像を4つの象限に分割したことを示す図である。ここで、X軸より上且つY軸より右を第1象限、X軸より上且つY軸より左を第2象限、X軸より下且つY軸より左を第3象限、X軸より下且つY軸より右を第4象限とする。
【0041】
また、ラインバッファの読み出しの制御における4つのタイプについて説明する。ラインバッファの読み出しの制御には、図10(a)に示す、読み出しを開始する基準ラインを最上段に持ち、右側のビットから順に左側へビットを読み出すType1、図10(b)に示す、基準ラインを最下段に持ち、右側のビットから順に左側へビットを読み出すType2、図10(c)に示す、基準ラインを最上段に持ち、左側のビットから順に右側へビットを読み出すType3、及び図10(d)に示す、基準ラインを最下段に持ち、左側のビットから順に右側へビットを読み出すType4の4種類がある。
【0042】
図8のフローチャートにおいて、補正タイプがたる歪みの場合は、ステップS803〜S805において処理を行う象限を判定し、判定された象限に対応したラインバッファの読み出しの制御タイプを割り当てる(ステップS806〜S809)。また補正タイプが糸巻き歪みの場合は、ステップS810〜S812において処理を行う象限を判定し、同様に判定された象限に対応したラインバッファの読み出しの制御タイプを割り当てる(ステップS806〜S809)。
【0043】
図11(a)に示すように、たる歪みの補正においては、第1象限ではType3、第2象限ではType1、第3象限ではType2、及び第4象限ではType4のラインバッファ制御を用いる。また図11(b)に示すように、糸巻き歪みの補正においては、第1象限ではType4、第2象限ではType2、第3象限ではType1、及び第4象限ではType3のラインバッファ制御を用いる。
【0044】
ラインバッファの制御の割り当てが終了すると、撮影画像を複数の縦長の短冊に断片化し、短冊毎に歪み補正を行う。断片化された短冊の横方向の画素数とラインバッファの1ラインのビット数は一致しており、また短冊の横方向の画素数は、撮影画像の横方向の画素数の2分の1の約数となっており、短冊が第1象限と第2象限、又は第3象限と第4象限をまたぐことがないように構成されている。ここでは、図12〜図19を用いて、たる歪みの補正を例に取り、説明する。
【0045】
図12(a)は、水平方向の歪み補正がされた撮影画像を実線で示しており、垂直方向の歪み補正後の画像の最外周の逆算座標カーブを点線で示している。歪み補正処理は、撮影画像の左の短冊から行われ、1つの短冊の処理が終わると、その右側の短冊の処理へと移行する。図12(b)は、最も左側の短冊の上部を拡大した図である。
【0046】
前述したとおり、補正タイプがたる歪みの場合の第2象限ではType1のラインバッファ制御を用いる。即ち、読み出し基準ラインを最上段に持ち、右側のビットから順に左側へビットを読み出す。図12(c)は、この短冊の最上段からラインバッファ31のライン数分をラインバッファ31に書き込んだことを示す図である。前述したようにこの書き込みは、CPU19によりアドレス指定されたDMAコントローラ30によって行われる。ここでは、最外周の逆算座標カーブが、読み出し開始位置である最上段の読み出し基準ラインの右端に達していないため、最外周の逆算座標カーブが読み出し開始位置に達するまで、CPU19はDMAコントローラ30に指定するアドレスをインクリメントして、ラインバッファ31のデータの書き込みを行う。即ち、縦長の短冊に対して、1段ずつラインバッファ31を下げて短冊のデータの書き込みを行う。
【0047】
図13は、図12の状態から短冊に対してラインバッファ31を2段下げ、読み出し開始位置に最外周の逆算座標カーブが到達した状態を示している。このように読み出し開始位置に最外周の逆算座標カーブが到達すると、垂直方向光学歪み補正部27の演算部32が、逆算座標カーブに沿って画素の入替を行う。図14(a)に示すように、ラインバッファ31内において、最外周の逆算座標カーブは、座標L1、K1、J1、I2、H2、G2、F2、E2、D3、C3、B3、及びA4上に存在する。演算部32はラインバッファ31からこの画素を順次読み出して1つのラインのデータとし(図14(b))、メインメモリ20内の、処理中の画像データとは別の領域である補正済み短冊領域の最上段のラインに書き込む(図14(c))。
【0048】
次に、ラインバッファ31の読み出し基準ラインが、現在処理を行っている短冊の最終ラインかどうかの判断を行い(ステップS814)、最終ラインでない場合は、ラインバッファ31の中心がX軸と重なっているかどうかの判断を行う(ステップS815)。ラインバッファ31の中心がX軸と重なっていない場合は、ステップS813に戻り、処理を継続する。
【0049】
ステップS813に戻ると短冊に対してラインバッファ31をさらに1段下げ、短冊のデータをラインバッファ31に書き込む。そして読み出し開始位置を通る逆算座標カーブの歪み補正を行い、補正済み短冊領域の前回書き込んだラインの1段下側のラインに、この補正データを書き込む。
【0050】
以下同様に、ラインバッファ31を短冊に対して1段ずつ下げて、短冊データをラインバッファ31に書き込み、読み出し開始位置を通る逆算座標カーブの歪み補正を行い、補正済み短冊領域の前回書き込んだラインの1段下のラインに書き込んでいく。
【0051】
処理が進み、ラインバッファ31の中心がX軸と重なった場合(ステップS815)は、歪み補正処理を行う領域を下側の象限に変更する(ステップS816)。
【0052】
図15は、ラインバッファ31の中心がX軸と重なった様子を示した図である。図15(a)は、撮影画像を示しており、図15(b)は、最も左側の短冊の中心部を拡大して示した図であり、図15(c)は、中心がX軸と重なった位置にある状態のラインバッファ31を示す図である。ここまで第2象限の歪み補正を行ってきたが、ここから第3象限の歪み補正を行う。またこの状態において、短冊のデータをラインバッファ31に書き込み、歪み補正をせずにそのまま補正済み短冊領域に書き込む。
【0053】
象限を変更してステップS803に戻ると、ステップS803〜S805において、処理を行う象限が第3象限であると判断し、ラインバッファ制御はType2が選択される。前述したように、Type2では読み出しを開始する基準ラインを最下段に持ち、右側のビットから順に左側へビットを読み出す制御を行う。
【0054】
バッファ制御の種類が選択されると、これまでと同様に、ラインバッファ31を1段ずつ下げ、光学歪み補正を行う(ステップS813)。図16(a)は、最も左側の短冊の第3象限の部分を拡大した図であり、これから処理を行う逆算座標カーブを点線で示している。図16(b)は、これから処理を行う領域をラインバッファに書き込んだことを示す図である。ラインバッファ31の読み出し制御がType2であるので、最下段の右端の読み出し開始位置を通る逆算座標カーブについて補正を行う。
【0055】
ラインバッファ31の読み出し制御がType1であった第1象限と同様に、垂直方向光学歪み補正部27の演算部32が、逆算座標カーブに沿って画素の入替を行う。図17(a)に示すように、ラインバッファ内において、逆算座標カーブは、座標L6、K6、J6、I6、H6、G6、F6、E6、D5、C5、B5、及びA4上に存在するので、演算部32はラインバッファ31からこの座標の画素を順次読み出して、1つのラインのデータとし(図17(b))、補正済み短冊領域の該当する場所に書き込む(図17(c))。このように、象限の最終ラインに到達するまでラインバッファ31を1段ずつ下げて、歪み補正処理を行っていく。
【0056】
処理が進み、読み出し基準ラインが短冊の最終ラインに到達した場合(ステップS814)は、歪みが補正されたデータが格納されている補正済み短冊領域のデータを、処理を行った短冊に書き込む(ステップS817)。このように、メインメモリ20内に撮影画像データとは別の補正済み短冊領域を備え、歪み補正後のデータを一時的に補正済み短冊領域に記憶し、1つの短冊の処理が全て終了してから撮影画像の短冊に補正済み短冊領域のデータを書き替えることにより、処理中の撮影画像の短冊のデータの上書きによる誤処理を防止する。
【0057】
その後、処理を行った短冊が最後の短冊であるかどうかの判定を行い(ステップS818)、まだ処理を行っていない短冊がある場合は、右隣の短冊へ移行し(ステップS819)、歪み補正を行う。ここで、次の短冊における歪み補正の処理においても、ラインバッファ31を短冊の上部から1段ずつ下へ下げて、同様の処理を行っていく。
【0058】
図18は、第1象限における歪み補正処理を示す図である。補正タイプがたる歪みの場合の第1象限では、Type3のラインバッファ制御を用いる。即ち、読み出し基準ラインを最上段に持ち、左側のビットから順に右側へビットを読み出す。図18(a)は、これから処理を行う短冊の領域をラインバッファ31に書き込んだことを示す図であり、読み出し基準位置である座標A1上を通る逆算座標カーブの歪み補正を行う。ここではType3のラインバッファ制御であるので、演算部32は、ラインバッファ31の左側から逆算座標カーブの存在する座標A1、B1、C1、D1、E2、F2、G2、H2、I2、J3、K3、及びL4の画素を読み出して1つのラインのデータとし(図18(b))、補正済み短冊領域の該当するラインに書き込む(図18(c))。
【0059】
また図19は、第4象限における歪み補正処理を示す図である。補正タイプがたる歪みの場合の第4象限では、Type4のラインバッファ制御を用いる。即ち、読み出し基準ラインを最下段に持ち、左側のビットから順に右側へビットを読み出す。図19(a)は、これから処理を行う短冊の領域をラインバッファ31に書き込んだことを示す図であり、読み出し基準位置である座標A6上を通る逆算座標カーブの歪み補正を行う。ここではType4のラインバッファ制御であるので、演算部32は、ラインバッファ31の左側から逆算座標カーブの存在する座標A6、B6、C6、D6、E6、F6、G6、H5、I5、J5、K5、及びL4の画素を読み出して1つのラインのデータとし(図19(b))、補正済み短冊領域の該当するラインに書き込む(図19(c))。
【0060】
全ての短冊が終了し、最後の短冊であった場合(ステップS818)は、歪み補正が終了する。
【0061】
図20(a)及び(b)はType1のラインバッファ制御のイメージを、図20(c)及び(d)はType2のラインバッファ制御のイメージを示した図である。このように、象限によって読み出し基準ラインを最上段又は最下段のどちらかに設定することにより、図5に示した従来の技術よりラインバッファのライン数が半減したことがわかる。
【0062】
本実施の形態では、短冊毎の歪み補正処理は、左側の短冊から処理を行ったが、右側の短冊から処理を行ってもよい。また短冊内の処理においては、ラインバッファ31を上から下へ1段ずつ下げて処理を行ったが、ラインバッファ31を下から上へ1段ずつ上げて処理を行ってもよい。
【0063】
<第2の実施の形態>
本発明に係る第2の実施の形態のデジタルカメラ1の、垂直方向の光学歪み補正について、図21〜図24を用いて説明する。
【0064】
レンズに起因する光学歪みはズームのステップ(倍率)により異なり、一般に広角側では歪みが大きく、望遠側では歪みが小さい。歪み補正を実現する際、歪みが大きい場合は垂直方向に多数バッファリングする必要があり、歪みが小さい場合はバッファ内の全てのラインを参照することはない。本発明に係る第2の実施の形態のデジタルカメラ1は、歪み補正のパラメータ(補正量)に応じて、2つのラインバッファを垂直に接続する構成にするか又は水平に接続する構成にするかを判断して切り替えることにより、効率よく垂直方向の光学歪み補正を行う。
【0065】
まず、第2の実施の形態の垂直方向の光学歪み補正部27について説明する。図21は、垂直方向光学歪み補正部27の内部構成を示すブロック図である。第1の実施の形態とは、ラインバッファ31が、第1のラインバッファ31a及び第2のラインバッファ31bの2つから構成されているところが異っている。なお、この2つのラインバッファは異なるメモリであってもよいし、同一のメモリ内における異なるメモリ領域であってもよい。
【0066】
次に、垂直方向の光学歪み補正の方法について説明する。図22は、第2の実施の形態のデジタルカメラ1の、垂直方向の光学歪み補正の流れを示すフローチャートである。尚、図8に示した第1の実施の形態のフローチャートと共通の部分には同一の番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0067】
第1の実施の形態と同様に、最初に光学歪み補正のパラメータ設定を行う(ステップS801)。このパラメータは、撮影時の撮像レンズのズームステップ毎に決められる。光学歪み補正のパラメータには、たる歪みであるか糸巻き歪みであるかの補正タイプと、その補正量が含まれている。次に設定された補正量に基づいて、ラインバッファの構成を、TypeαまたはTypeβのいずれかから選択する(ステップS221)。
【0068】
ここで、図23を用いてラインバッファ31のTypeαとTypeβの構成及び選択方法について説明する。なお、図23に点線で示した逆算座標カーブは一例を示したものである。
【0069】
図23(a)はバッファ構成のTypeαを示した図であり、第1のラインバッファ31aと第2のラインバッファ31bを垂直に接続した構成になっている。逆算座標カーブの変化率が大きいとき、即ち補正量が大きいときはこのTypeαの構成を選択する。前述したように、予め用意されたライン数以上の補正は不可能であるため、歪みが大きいときは垂直に構成して補正量を増やす必要がある。
【0070】
また図23(b)はバッファ構成のTypeβを示した図であり、第1のラインバッファ31aと第2のラインバッファ31bを水平に接続した構成になっている。逆算座標カーブの変化率が小さいとき、即ち補正量が小さいときはこのTypeβの構成を選択する。この構成にすると補正できる量は小さくなるが、短冊幅が広がり、不要なラインが減少するために処理速度が向上する。
【0071】
次に図24を用いて、ラインバッファ31の構成の、TypeαとTypeβの切り換えの制御について説明する。図24に示すように、第1のラインバッファ31a及び第2のラインバッファ31bは、セレクト用の入力端子であるCS端子、書き込みイネーブル用の入力端子であるWE端子を備え、また7bitのアドレスバス及び8bitのデータバスが接続されている。
【0072】
図24(a)はTypeαの構成のときの制御を示す図である。第1のラインバッファ31aと第2のラインバッファ31bのそれぞれについて、CS端子にはセレクト信号CS0及びCS1、WE端子にはイネーブル信号WE0及びWE1、アドレス端子にはアドレスバスADR0及びADR1、データ端子にはデータバスDAT0及びDAT1が接続され、それぞれを独立して制御することが可能である。このようにして、2つのラインバッファを垂直に構成して制御することが可能となる。
【0073】
図24(b)はTypeβの構成のときの制御を示す図である。セレクト信号CS0、イネーブル信号WE0、アドレスバスADR0、及びデータバスDAT0を用いて、第1のラインバッファ31aと第2のラインバッファ31bの2つのラインバッファを制御する。またアドレスバスの8bit目(ADR0[7]信号)を用いて第1のラインバッファ31aと第2のラインバッファ31bの選択を行う。
【0074】
CS0信号をHレベルにすると、ADR0[7]信号及びインバータ45によるその反転信号のH/Lレベルに応じて、第1のアンドゲート41又は第3のアンドゲート43のどちらか一方がHレベルになる。これらのアンドゲートの出力はそれぞれ第1のラインバッファ31aと第2のラインバッファ31bのCS端子に入力されており、Hレベルが入力されたラインバッファが選択される。アドレスバスとデータバスが共通となっているが、CS端子の入力がHレベルのラインバッファのみの読み出しが行われる。また書き込み時においても、WE0信号をHレベルにすると、ADR0[7]信号のH/Lレベルに応じて、第2のアンドゲート42又は第4のアンドゲート44のどちらか一方がHレベルになり、WE端子の入力がHレベルのラインバッファのみの書き込みが行われる。
【0075】
TypeαとTypeβの切り換えは、レジスタの設定を変更することによってCS端子、WE端子、アドレス端子、及びデータ端子の入力信号を切り替えることにより可能となっている。このように制御回路を切り換えることにより、DMAコントローラ30及び演算部32は、2つのラインバッファを垂直に構成しても水平に構成しても、1つのラインバッファのように扱うことが可能となる。
【0076】
図22のステップS221において、ラインバッファ構成についてのTypeαまたはTypeβの選択が終わると、ここからのフローは第1の実施の形態と同様である。
【0077】
このように、歪み補正の補正量が小さい場合には、2つのラインバッファを水平方向に構成し、短冊幅を大きくすることで処理速度の向上を実現することができる。また歪み補正の補正量が大きい場合には、2つのラインバッファを垂直方向に構成し、補正量幅を増やすことで、必要な補正をすることが可能となる。
【0078】
本実施の形態においては、2つのラインバッファを、垂直方向に接続する構成、又は水平方向に接続する構成の2通りについて切り替えたが、その他に1つのラインバッファのみを使用する構成を含め、3通りについて切り替えてもよい。
【0079】
また本実施の形態では、2つのラインバッファを用いて垂直に接続、又は水平に接続を切り替えたが、3つ以上のラインバッファを用いて垂直に接続、又は水平に接続してもよい。また4つのラインバッファを用いて、補正量によって縦横比の構成を1×4、2×2、4×1のように切り換えてもよい。
【0080】
<第3の実施の形態>
本発明に係る第3の実施の形態のデジタルカメラ1の、垂直方向の光学歪み補正について、図25〜26を用いて説明する。本発明に係る第3の実施の形態のデジタルカメラ1は、処理を行う短冊の、画像の中心(原点)を通る垂直軸(Y軸)からの距離に応じて、2つのラインバッファを垂直に接続する構成にするか又は水平に接続する構成にするかを判断して切り替えることにより、効率よく垂直方向の光学歪み補正を行う。
【0081】
図25は、デジタルカメラ1の垂直方向の光学歪み補正の流れを示すフローチャートである。尚、図8に示した第1の実施の形態のフローチャートと共通の部分には同一の番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0082】
第1の実施の形態と同様に、最初に光学歪み補正のパラメータ設定を行う(ステップS801)。次に、処理を行う短冊がどの位置に属するかを判定し(ステップS251)、ラインバッファの構成を決定する(ステップS252、ステップS253)。本実施の形態のデジタルカメラ1は、第2の実施の形態のデジタルカメラと同様に、ラインバッファ31aとラインバッファ31bを備え、2つのラインバッファを垂直に接続する構成のTypeαと、水平に接続する構成のTypeβの2種類の切り換え制御が可能となっている。
【0083】
ここで、出力短冊の先頭座標とラインバッファの構成について、図26を用いて説明する。図26(a)はたる歪みの画像を、図26(b)は糸巻き歪みの画像を示した図であり、ともに撮影した画像を実線で、撮像された被写体の歪みの大きさを点線で示している。画像中央から距離を増すごとに垂直方向の歪み量は大きくなり、この傾向はたる歪み、糸巻き歪みのどちらの歪みにも共通している。第2の実施の形態で説明したとおり、2つのラインバッファを備えた場合、歪みが大きいときは垂直に接続して補正量を増やす必要があり、歪みが小さいときは水平に接続した方が処理速度が向上するため有利である。図26(c)は、垂直方向の光学歪み補正を行う場合の、2つのバッファ構成の割り当てを示した図である。前述したように、画面中央近傍では歪みが小さいため水平に接続する構成のTypeβを、画面端では歪みが大きいため垂直に接続する構成のTypeαを採用する。本実施の形態では、中心からx以内は歪みが少ないと判断しTypeβを、x以上は歪みが多いと判断してTypeαを採用する。なおこの距離xについては、撮影レンズのズーム倍率により値が異なってくる。
【0084】
このように、処理を行う短冊のY軸からの距離を判断して、ラインバッファの構成を切り替えた後、第1の実施の形態と同様に歪み補正処理を行う。なお、この短冊とY軸からの距離の判断については短冊毎に行う必要があるため、ステップS819において次の短冊へ移行する場合には、ステップS251に戻って、次の短冊のY軸からの距離を判断する。
【0085】
このように、処理を行う短冊のY軸からの距離を判断して、2つのラインバッファを垂直に接続するか又は水平に接続するかを切り替えることにより、効率のよい垂直方向の光学歪み補正を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、従来の光学歪み補正の流れを示す図である。
【図2】図2は、たる歪みの補正について示す図である。
【図3】図3は、糸巻き歪みの補正について示す図である。
【図4】図4は、短冊処理について示した図である。
【図5】図5は、出力ラインについて各画素から逆算したカーブと、必要となるラインバッファの量について示した図である。
【図6】図6は、本発明に係る第1の実施の形態のデジタルカメラ1の内部構成の一例を示すブロック図である。
【図7】図7は、垂直方向光学歪み補正部27の内部構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、第1の実施の形態の垂直方向の光学歪み補正の流れを示すフローチャートである。
【図9】図9は、撮影画像を4つの象限に分割したことを示す図である。
【図10】図10は、ラインバッファ31の読み出しの制御における4つのタイプを示す図である。
【図11】図11は、たる歪み、糸巻き歪みの各象限におけるラインバッファ31の読み出し制御のタイプの割り当てを示す図である。
【図12】図12は、補正タイプがたる歪み、出力座標象限が第2象限のときの補正処理を示した図である。
【図13】図13は、ラインバッファ31の制御を示す図である。
【図14】図14は、ラインバッファ31のType1の制御における歪み補正を示す図である。
【図15】図15は、ラインバッファ31がX軸をまたいでいることを示す図である。
【図16】図16は、ラインバッファ31の制御を示す図である。
【図17】図17は、ラインバッファ31のType2の制御における歪み補正を示す図である。
【図18】図18は、ラインバッファ31のType3の制御における歪み補正を示す図である。
【図19】図19は、ラインバッファ31のType4の制御における歪み補正を示す図である。
【図20】図20は、ラインバッファ31のType1とType2の処理のイメージを示した図である。
【図21】図21は、第2の実施の形態の垂直方向光学歪み補正部27の内部構成を示すブロック図である。
【図22】図22は、第2の実施の形態の垂直方向の光学歪み補正の流れを示すフローチャートである。
【図23】図23は、2つのラインバッファの垂直方向の接続、及び水平方向の接続を示す図である。
【図24】図24は、ラインバッファ31のTypeαとTypeβの切り換えの制御を示す図である。
【図25】図25は、第3の実施の形態の垂直方向の光学歪み補正の流れを示すフローチャートである。
【図26】図26は、画像のY軸からの距離と、ラインバッファ31のTypeαとTypeβの制御の割り当てを示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1…デジタルカメラ、10…撮像レンズ、15…画像信号処理部、16…BUS、19…CPU、20…メインメモリ、21…ROM、27…垂直方向光学歪み補正部、30…DMAコントローラ、31…ラインバッファ、31a…第1のラインバッファ、31b…第2のラインバッファ、32…演算部、41…第1のアンドゲート、42…第2のアンドゲート、43…第3のアンドゲート、44…第4のアンドゲート、45…インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズ及び撮像素子を介して取得した1フレームの画像データをメモリに保持し、前記フレームを縦長の複数本の短冊に分割して前記メモリから各短冊ごとに画像データを読み出し、前記短冊の横方向の画素数と同じ画素数を記憶する複数ライン分のラインバッファに書き込み、このラインバッファからの読み出しライン位置を制御することにより前記撮影レンズの垂直方向の光学歪みを補正する撮像装置において、
前記ラインバッファは、前記撮影レンズの垂直方向の光学歪みであって、前記短冊の幅内での生じる最大歪みに相当するライン数分のラインバッファであり、
前記ラインバッファを介して読み出される画像データが、前記フレームの第1象限から第4象限のうちの何れの象限内の画像データかを判別する判別手段と、
前記撮影レンズの光学歪みの特性と前記判別された象限とに基づいて前記ラインバッファから読み出しを開始する基準ラインを最上段のライン、又は最下段のラインのいずれかに設定するとともに、前記ラインバッファの読み出し方向を設定して、前記ラインバッファからの画像データの読み出しを制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記撮影レンズの光学歪みが樽歪みであり、かつ前記判別された象限が第1、第2象限の場合、及び前記撮影レンズの光学歪みが糸巻き歪みであり、かつ前記判別された象限が第3、第4象限の場合には、前記ラインバッファからの読み出しを開始する基準ラインを最上段のラインに設定して前記ラインバッファからの画像データの読み出しを制御し、前記撮影レンズの光学歪みが糸巻き歪みであり、かつ前記判別された象限が第1、第2象限の場合、及び前記撮影レンズの光学歪みが樽歪みであり、かつ前記判別された象限が第3、第4象限の場合には、前記ラインバッファからの読み出しを開始する基準ラインを最下段のラインに設定して前記ラインバッファからの画像データの読み出しを制御し、前記判別された象限が第1、第4象限の場合は前記ラインバッファの読み出し方向を右から左に設定して前記ラインバッファからの画像データの読み出しを制御し、前記判別された象限が第2、第3象限の場合は前記ラインバッファの読み出し方向を左から右に設定して前記ラインバッファからの画像データの読み出しを制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
撮影レンズ及び撮像素子を介して取得した1フレームの画像データをメモリに保持し、前記フレームを縦長の複数本の短冊に分割して前記メモリから各短冊ごとに画像データを読み出し、前記短冊の横方向の画素数と同じ画素数を記憶する複数ライン分のラインバッファに書き込み、このラインバッファからの読み出しライン位置を制御することにより前記撮影レンズの垂直方向の光学歪みを補正する撮像装置において、
前記ラインバッファは、1からnラインの第1のラインバッファと、n+1から2nラインの第2のラインバッファとからなり、
前記第1のラインバッファと第2のラインバッファとを水平方向に接続し、隣接する2つの短冊の画像データの光学歪みを同時に補正する第1の制御手段と、
前記第1のラインバッファと第2のラインバッファとを垂直方向に接続し、光学歪みの補正可能な範囲を2倍に拡大して光学歪み補正を行う第2の制御手段と、
前記第1の制御手段による制御と第2の制御手段による制御とを切り替える切替手段と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
画像データを取得したときの撮影レンズのズーム比から前記画像データの垂直方向の光学歪みの歪み量を算出する算出手段と、
前記歪み量と所定の閾値とを比較することにより、前記歪み量の大小を判定する判定手段と、を備え、
前記切替手段は、前記判定手段が前記歪み量を前記所定の閾値より小さいと判定したときは第1の制御手段に、前記判定手段が前記歪み量を前記所定の閾値より大きいと判定したときは第2の制御手段に、前記ラインバッファの制御を切り替えることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記フレームの原点を通る垂直軸と前記ラインバッファを介して読み出される画像データとの距離を測定する手段と、
前記距離と所定の閾値とを比較することにより、前記距離の大小を判定する距離判定手段と、を備え、
前記切替手段は、前記距離判定手段が前記距離を前記所定の閾値より小さいと判定したときは第1の制御手段に、前記距離判定手段が前記距離を前記所定の閾値より大きいと判定したときは第2の制御手段に、前記ラインバッファの制御を切り替えることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
撮影レンズ及び撮像素子を介して取得した1フレームの画像データをメモリに保持し、前記フレームを縦長の複数本の短冊に分割して前記メモリから各短冊ごとに画像データを読み出し、前記短冊の横方向の画素数と同じ画素数を記憶する複数ライン分のラインバッファに書き込み、このラインバッファからの読み出しライン位置を制御することにより前記撮影レンズの垂直方向の光学歪みを補正する画像処理方法において、
前記ラインバッファは、前記撮影レンズの垂直方向の光学歪みであって、前記短冊の幅内での生じる最大歪みに相当するライン数分のラインバッファであり、
前記ラインバッファを介して読み出される画像データが、前記フレームの第1象限から第4象限のうちの何れの象限内の画像データかを判別する判別工程と、
前記撮影レンズの光学歪みの特性と前記判別された象限とに基づいて前記ラインバッファから読み出しを開始する基準ラインを最上段のライン、又は最下段のラインのいずれかに設定するとともに、前記ラインバッファの読み出し方向を設定して、前記ラインバッファからの画像データの読み出しを制御する制御工程と、
を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
撮影レンズ及び撮像素子を介して取得した1フレームの画像データをメモリに保持し、前記フレームを縦長の複数本の短冊に分割して前記メモリから各短冊ごとに画像データを読み出し、前記短冊の横方向の画素数と同じ画素数を記憶する複数ライン分のラインバッファに書き込み、このラインバッファからの読み出しライン位置を制御することにより前記撮影レンズの垂直方向の光学歪みを補正する画像処理方法において、
前記ラインバッファは、1からnラインの第1のラインバッファと、n+1から2nラインの第2のラインバッファとからなり、
前記第1のラインバッファと第2のラインバッファとを水平方向に接続し、隣接する2つの短冊の画像データの光学歪みを同時に補正する第1の制御工程と、
前記第1のラインバッファと第2のラインバッファとを垂直方向に接続し、光学歪みの補正可能な範囲を2倍に拡大して光学歪み補正を行う第2の制御工程と、
前記第1の制御手段による制御と第2の制御手段による制御とを切り替える切替工程と、
を備えたことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2008−236544(P2008−236544A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75249(P2007−75249)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】