説明

撮像装置の露出制御方法

【課題】露出調節手段として、絞り開口にNDフィルタを出没させて露出調節を行う手段と、少なくとも1つのその他の露出調節のための手段とを併用した撮像装置において、その撮像装置を動画撮影モードで使用する際に、NDフィルタの半掛かり状態に起因する解像性能劣化の発生を可及的に低減する。
【解決手段】被写体の明るさが第1レベルLV1を超え第2レベルLV2未満の領域にあるときに、NDフィルタ30を駆動する第1露出調節手段をNDフィルタ半掛かり状態にしてNDフィルタ開度を制御するのと並行して、絞り羽根26a、26bを駆動する第2露出調節手段を制御するようにし、その際に、被写体の明るさが明るくなるほど第1露出調節手段による露出低減量を拡大する一方で第2露出調節手段による露出低減量を縮小するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビデオカメラやデジタルスチルカメラなどのように、固体撮像素子を用いた撮像装置の露出制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラやデジタルスチルカメラなどの、固体撮像素子を用いた撮像装置には、露出調節手段として、撮影レンズの絞り開口の開口面積を調節する手段、固体撮像素子の電子シャッタ速度を調節する手段、固体撮像素子から得られる画像信号のアンプゲインを調節する手段などが装備されている。これら露出調節手段はいずれも、画質を著しく劣化させることなく露出調節を行うことのできる露出範囲に限界がある。特に、電子シャッタ速度の調節や、画像信号のアンプゲインの調節によって露出調節を行える範囲は、固体撮像素子が小型化するほど、またその画素数が増大するほど、狭くなる。また、絞り開口の開口面積を調節する可変絞り機構では、非常に明るい被写体に対応するために絞り開口を絞って行くと、開口面積がある大きさまで減少したときに、回折による解像性能の低下によって、画質が急速に劣化しはじめる。
【0003】
そのため、固体撮像素子を用いた撮像装置のうちには、上述した種類の露出調節手段に加えて更に、撮影レンズの絞り開口にNDフィルタ(ニュートラル・デンシティ・フィルタ)を出没させることによって露出量を調節するようにした露出調節手段を併用したものがある。特に、可変絞り機構を用いた露出調節手段と、NDフィルタを用いた露出調節手段とを併用した撮像装置が、下記の特許文献1及び2をはじめとする、多くの特許文献に開示されている。
【特許文献1】特開平11−84459号公報
【特許文献2】特開平5−292392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、絞り開口にNDフィルタを出没させる方式の露出調節手段を用いた場合には、NDフィルタが絞り開口を部分的に閉じた状態(NDフィルタの半掛かり状態)になったときに、絞り開口を通過する光束の一部がNDフィルタを透過し、残りが単に空気中を透過するようになる。フィルタ素材の屈折率は一般に1.5前後あり、かつ有限な厚みを有する。そのため、NDフィルタを透過する光線と、NDフィルタを通過せずに単に空気中だけを通過する光線とでは、おのずと結像する点に差異が生じ、それによって解像性能の劣化が引き起こされる。同時に、半掛かり状態になったときには、光路中にNDフィルタの端縁(エッジ)が存在しているため、そのエッジでの回折現象によっても、解像性能の劣化が引き起こされる。
【0005】
このような、NDフィルタの半掛かり状態に起因する解像性能の劣化という問題を解決する方法の1つに、特開2005−45648号公報に提案されている方法がある。同公報には、固体撮像素子を用いた撮像装置が開示されており、この撮像装置は、動画撮影モードとすることでビデオカメラとして使用することもでき、また、静止画撮影モードとすることでデジタルスチルカメラとして使用することもできるものである。そして、静止画撮影モードにおいては、被写体の明るさが所定レベル未満であるときには、NDフィルタを全開状態(絞り開口にNDフィルタが全く掛からない状態)に維持し、被写体の明るさがその所定レベル以上であるときには、NDフィルタを全閉状態(絞り開口の全域にNDフィルタが掛かった状態)に維持するようにして、NDフィルタの半掛かり状態を排除するようにしている。そして、NDフィルタを全開状態と全閉状態との間で状態遷移させる際に発生する露出変化量を、例えば絞り開口の開口面積を調節する可変絞り機構などのような別の露出調節手段を制御して発生させる露出変化量で、相殺するようにしている。同公報の記載によれば、この方法は、静止画撮影モードにのみ適用されるものであり、動画撮影モードには適用されない。その理由は、動画の撮影中に、連続する画像フレームの間の非常に短い時間のうちに、NDフィルタを全開状態と全閉状態との間でジャンプさせて状態遷移させるように駆動することは実際上不可能であり、一方、ある画像フレームを記録している最中にNDフィルタの状態遷移を発生させると、その瞬間に、甚だしい画質の劣化を招来してしまうからである。
【0006】
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、露出調節手段として、絞り開口にNDフィルタを出没させて露出調節を行う手段と、少なくとも1つのその他の露出調節のための手段とを併用した撮像装置において、その撮像装置を動画撮影モードで使用する際に、NDフィルタの半掛かり状態に起因する解像性能劣化の発生を可及的に低減することのできる、撮像装置の露出制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明に係る撮像装置の露出制御方法は、絞り開口を有する撮影レンズと、固体撮像素子と、複数の露出調節手段と、被写体の明るさを判定する手段と、被写体の明るさに応じて前記複数の露出調節手段を制御して目標露出値を得る露出制御手段とを備え、前記複数の露出調節手段が、前記絞り開口にNDフィルタを出没させることで露出量を調節する第1露出調節手段を含んでいると共に、前記絞り開口の開口面積を調節することで露出量を調節する露出調節手段と、前記固体撮像素子の電子シャッタ速度を調節することで露出量を調節する露出調節手段と、前記固体撮像素子から得られる画像信号のアンプゲインを制御することで露出量を制御する露出調節手段とのうちの少なくとも1つから成る第2露出調節手段を含んでいる撮像装置の露出制御方法において、前記第1露出調節手段を、前記絞り開口に前記NDフィルタが全く掛からない状態であるNDフィルタ全開状態と、前記絞り開口に部分的に前記NDフィルタが掛かった状態であるNDフィルタ半掛かり状態と、前記絞り開口の全域に前記NDフィルタが掛かった状態であるNDフィルタ全閉状態とに制御可能に構成すると共に、前記NDフィルタ半掛かり状態において前記絞り開口に対する前記NDフィルタの掛かり量であるNDフィルタ開度を連続的または段階的に制御可能であるように構成し、被写体の明るさが第1レベル未満の領域にあるときには、前記第1露出調節手段をNDフィルタ全開状態に維持し、前記第2露出調節手段を制御することによって、被写体の明るさに応じた露出制御を行い、被写体の明るさが前記第1レベルを超え第2レベル未満の領域にあるときには、前記第1露出調節手段をNDフィルタ半掛かり状態にしてNDフィルタ開度を制御するのと並行して、前記第2露出調節手段を制御するようにし、その際に、被写体の明るさが明るくなるほど前記第1露出調節手段による露出低減量を拡大する一方で前記第2露出調節手段による露出低減量を縮小することにより、被写体の明るさに応じた露出制御を行い、被写体の明るさが前記第2レベルを超える領域にあるときには、前記第1露出調節手段をNDフィルタ全閉状態に維持し、前記第2露出調節手段を制御することによって、被写体の明るさに応じた露出制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る露出制御方法によれば、絞り開口にNDフィルタを出没させて露出量を調節する第1露出調節手段のNDフィルタ開度の制御と並行して、第2露出調節手段による露出制御を行うことにより、撮像装置が対応すべき被写体の明るさの全領域のうち、NDフィルタを半掛かり状態にして露出制御を行わねばならない領域の幅が狭められている。その結果、NDフィルタの半掛かり状態に起因する解像性能の劣化の発生を可及的に低減することが可能となっている。更に、この露出制御方法によれば、NDフィルタを全開状態と全閉状態との間でジャンプさせて状態遷移させる必要がないため、被写体の明るさの変化に対応して露出制御を滑らかに行うことができ、それによって、動画撮影モードに好適に適用し得るものとなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態に係る露出制御方法を実施することのできる撮像装置の具体的な構成例を示したブロック図、図2は図1の撮像装置の絞り羽根の形状及び動作を示した図、図3は図1の撮像装置に保持されているマップデータのデータ内容をグラフの形で示した図である。
【0010】
図1に示した撮像装置10は、撮影レンズ12と、固体撮像素子であるCCD14と、画像データの記録媒体16とを備えている。撮像装置10は、ユーザが選択することのできる動画撮影モードと静止画撮影モードとを備えており、そのため、動画を撮影するビデオカメラとして使用することもでき、また、静止画を撮影するデジタルスチルカメラしても使用することのできる撮像装置となっている。
【0011】
撮像装置10は更に、CCD14の出力信号を増幅する増幅器18と、増幅器18の出力信号を処理して記録媒体16に記録可能な形態の画像データ信号を発生する信号処理部20と、増幅器18の出力信号を処理して被写体の明るさを表す信号(以下、光量信号という)を発生する光量検出部22と、それらに対して様々な制御を行うマイクロコンピュータ24とを備えている。更に、マイクロコンピュータ24には、ユーザが動画撮影モードと静止画撮影モードとを切換えるために操作する動画/静止画切替スイッチ36が接続されている。この切替スイッチは、機械的スイッチとしてもよく、また、マイクロコンピュータ24がメニュー画面上に提供するソフトスイッチとしてもよい。
【0012】
撮影レンズ12は、絞り開口12aを有しており、この絞り開口12aは、撮影レンズ12の光路中に出没可能に配設された一対の絞り羽根26a、26bによって画成されている。絞り羽根26a、26bは、絞り羽根駆動部28によって略々連続的に駆動されるようにしてあり、それによって、絞り開口12aの開口面積が略々連続的に調節可能となっている。尚、略々連続的な駆動ないし調節とは、完全に連続的な駆動ないし調節の他、ステップ駆動ないしステップ調節であっても、そのステップ量が十分に小さいために連続的な駆動ないし調節と見なせるものを含むものである。また、絞り羽根駆動部28による絞り羽根26a、26bの駆動は、マイクロコンピュータ24によって制御されている。
【0013】
図2は絞り羽根26a、26bの形状及び動作を示した図である。図2(A)は絞り羽根26aないし26bを正面から見た形状を示している。図2(B)は絞り羽根26a、26bが最大絞り位置にあるところを示しており、撮影レンズの光路12bが完全に開放されている。図2(C)は、絞り羽根26a、26bが、回折による解像性能の劣化が発生しはじめる位置まで絞られたところを示しており、絞り開口12aの開口面積が減少して、光路12bのかなりの部分が閉塞されている。図2(D)は、絞り羽根26a、26bが最小絞り位置まで絞られたところを示しており、絞り開口12aの開口面積が非常に小さくなっている。
【0014】
撮影レンズ12には、NDフィルタ30が装備されており、このNDフィルタ30は、NDフィルタ駆動部32によって駆動されて絞り開口12aに出没するようにしてある。図示例のNDフィルタ駆動部32は、絞り開口12aにNDフィルタ30が全く掛からない状態であるNDフィルタ全開状態と、絞り開口12aの全域にNDフィルタ30が掛かった状態であるNDフィルタ全閉状態との間で、NDフィルタ30を連続的または段階的に(即ち、略々連続的に)駆動することができるように構成されており、このNDフィルタ駆動部32によるNDフィルタ30の駆動も、マイクロコンピュータ24によって制御されている。
【0015】
以上の構成において、NDフィルタ30及びNDフィルタ駆動部32は、撮像装置10の第1露出調節手段を構成しており、また、絞り羽根26a、26b及び絞り羽根駆動部28は、撮像装置10の第2露出調節手段を構成している。また特に、第1露出調節手段は、上の説明から明らかなように、NDフィルタ全開状態と、NDフィルタ全閉状態と、絞り開口12aに部分的にNDフィルタ30が掛かった状態であるNDフィルタ半掛かり状態とに制御可能に構成したものであると共に、NDフィルタ半掛かり状態においては、絞り開口12aに対するNDフィルタ30の掛かり量であるNDフィルタ開度を、連続的または段階的に制御可能であるように構成したものである。そして、マイクロコンピュータ24は、本発明の露出制御方法に従ってこれら第1露出調節手段及び第2露出調節手段を制御することによって、撮像装置10の露出制御を実行し、その露出制御について以下に詳細に説明する。
【0016】
撮像装置10の目標露出値は、被写体の明るさに応じて決まるものであり、それゆえマイクロコンピュータ24は、被写体の明るさに対応して、第1露出調節手段及び第2露出調節手段の制御を実行する。その露出制御においては、絞り開口12aの開口面積のうちNDフィルタ30によって覆われる部分の割合を多くするほど、第1露出調節手段による露出変化量(露出低減量)が大きくなり、また、絞り羽根26a、26bを絞って開口面積を小さくするほど、第2露出調節手段による露出変化量(露出低減量)が大きくなる。そして、NDフィルタ30の位置によって決まる第1露出調節手段の露出変化量と、絞りばね26a、26bの位置によって決まる第2露出調節手段の露出変化量との合計が、撮像装置10の全体としての露出変化量になる。マイクロコンピュータ24には、目標露出値を実現するために第1露出調節手段の露出変化量と第2露出調節手段の露出変化量とを夫々いかなる値に制御すべきかを定義したマップデータが保持されており、マイクロコンピュータ24は、そのマップに従って、第1露出調節手段及び第2露出調節手段を制御する。
【0017】
図3に、そのマップのデータ内容をグラフの形で示した。この図3のグラフにおいて、横軸は光量信号によって表される被写体の明るさを示しており、右へ行くほど被写体は明るく、この横軸の目盛は対数目盛としてある。一方、縦軸は露出変化量を示しており、この縦軸の目盛も対数目盛としてある。図3の上段は第1露出調節手段に発生させる露出変化量のデータを示したグラフであり、中段は第2露出調節手段に発生させる露出変化量のデータを示したグラフである。これら2つのグラフがマップのデータ内容を表している。図3の下段は第1露出調節手段及び第2露出調節手段の合計露出変化量を示したグラフであり、これは説明のために付加したものであって、マップのデータそれ自体を示したものではない。第1露出調節手段の露出変化量については、NDフィルタ全開状態を基準としており、NDフィルタ30が絞り開口12aへ突出するに従って、その露出変化量(露出低減量)が大きくなり、NDフィルタ全閉状態に至って露出変化量は最大値ΔEaとなる(露出は最小になる)。第2露出調節手段の露出変化量については、絞り羽根26a、26bが最大絞り位置(図2(B))にある状態を基準としており、絞り羽根が絞られるに従って、その露出変化量(露出低減量)が大きくなり、最小絞り位置(図2(D))に至って露出変化量は最大値ΔEcとなる(露出は最小になる)。
【0018】
図3から明らかなように、このマップのデータに従って露出制御を実行したならば、被写体の明るさが第1レベルLV1未満の領域にあるときには、第1露出調節手段をNDフィルタ全開状態に維持し、且つ、被写体の明るさが明るくなるほど略々連続的に絞り羽根26a、26bを絞るように第2露出調節手段を制御することによって、被写体の明るさに応じた露出制御を行うことになる。また、被写体の明るさが第1レベルLV1を超え第2レベル未満LV2の領域にあるときには、第1露出調節手段をNDフィルタ半掛かり状態にしてNDフィルタ開度を制御するのと並行して、第2露出調節手段を制御することになり、その際に、被写体の明るさが明るくなるほど第1露出調節手段による露出低減量を拡大し(即ち、NDフィルタ開度を制御してNDフィルタの掛かり量を多くし)、且つ、第2露出調節手段による露出低減量を縮小することによって、被写体の明るさに応じた露出制御を行うことになる。更に、被写体の明るさが前記第2レベルを超える領域にあるときには、第1露出調節手段をNDフィルタ全閉状態に維持し、且つ、被写体の明るさが明るくなるほど略々連続的に絞り羽根26a、26bを絞るように第2露出調節手段を制御することによって、被写体の明るさに応じた露出制御を行うことになる。そして、NDフィルタ30の全開状態と全閉状態とでは露出にΔEaの差があり、絞り羽根26a、26bの最大絞り状態と最小絞り状態とでは露出にΔEcの差があるため、合計露出変化量の最大幅は、ΔEa+ΔEcとなる。図3に示したマップデータでは、この合計露出変化量が、両対数グラフにおける1本の直線となるようにしてある。
【0019】
以上の露出制御方法では、第2露出調節手段によって発生させる露出低下量を、通常とは逆方向に制御しており、即ち、通常は被写体の明るさが明るくなるほど露出低下量を拡大するように制御するのに対して、ここでは、写体の明るさが明るくなるほど第2露出調節手段による露出低下量を縮小するように制御している。そして、これによって、撮像装置が対応すべき被写体の明るさの全領域のうち、NDフィルタを半掛かり状態にして露出制御を行わねばならない領域の幅を狭めており、その結果、NDフィルタの半掛かり状態に起因する解像性能の劣化の発生を可及的に低減することが可能となっている。更に、この露出制御方法によれば、絞り羽根26a、26bないしNDフィルタ30の制御は、撮像装置が対応すべき被写体の明るさレベルの全領域において連続的または段階的な制御として実行され、従って、NDフィルタ30を全開状態と全閉状態との間でジャンプさせて状態遷移させる必要がないため、被写体の明るさの変化に対応して露出制御を滑らかに行うことができ、このことによって、この露出制御方法は、動画撮影モードに好適に適用し得るものとなっている。
【0020】
尚、動画撮影時には、露出制御を略々連続的に滑らかに行うことが強く求められる一方で、解像度に関する要求性能は静止画撮影の場合と比べて緩やかである。これとは逆に、静止画撮影時には、解像度に関する要求性能は高いものの、露出固定後に画像記録が行われるため、露出制御の滑らかさはそれほど重要視されない。そこで、以上に説明した図3のマップデータとは別に、静止画撮影モードに用いるためのマップデータとして、特開2005−45648号公報に開示されているような、NDフィルタの半掛かり状態を排除したマップデータを用意しておき、動画撮影時と静止画撮影時とで、それらマップを使い分けるようにするのもよい。また、その場合には更に、静止画の撮影に際して、被写体のフレーミングを決めるためのモニタリングモードと、実際に撮影を実行する撮影モードとでそれらマップを使い分けて、それほど高い解像度を必要としないモニタリングモードでは図3のマップデータを使用して滑らかな露出制御を行うようにし、一方、撮影モードではNDフィルタの半掛かり状態を排除したマップデータを使用して高い解像度が得られるようにするのもよい。
【0021】
更に、以上に説明した実施の形態においては、第2露出調節手段は、絞り羽根26a、26bを絞ることで露出調節を行うようにした露出調節手段であったが、第2露出調節手段を、これ以外の構成のものとすることも可能である。例えば、CCD14の電子シャッタ速度をマイクロコンピュータ24が制御して露出調節を行うようにすることも可能であり、また、増幅器18のアンプゲインをマイクロコンピュータ24が制御して露出調節を行うようにすることも可能であり、これらの手段はいずれも、第2露出調節手段として利用し得るものである。更に、それら露出調節手段を幾つか組合せて利用するようにしてもよく、従って、本発明に用いる第2露出調節手段は、絞り開口の開口面積を調節することで露出量を調節する露出調節手段と、固体撮像素子の電子シャッタ速度を調節することで露出量を調節する露出調節手段と、固体撮像素子から得られる画像信号のアンプゲインを制御することで露出量を制御する露出調節手段とのうちの少なくとも1つから成るものとすることができる。
【0022】
ただし、絞り羽根を絞ることで露出調節を行うようにした露出調節手段は、絞り開口の開口面積を小さく絞ったときに、回折による解像性能の劣化が発生するという性質を有するものであり、NDフィルタを使用することで、この回折による解像性能の劣化を好適に防止することができるため、本発明に係る露出制御方法は、第2露出調節手段が、絞り開口の開口面積を調節する絞り羽根と、かかる絞り羽根を駆動する絞り羽根駆動部とを含むものである場合に、特に大きな利点をもたらすものとなり得る。また更に、以上に説明した撮像装置に、ユーザが被写体の明るさに関する第1レベルLV1及び第2レベルLV2を設定するために操作するスイッチ手段と、このスイッチ手段が操作されることに応答して第1レベルLV1及び第2レベルLV2を設定するレベル設定手段とを設けて、そのスイッチ手段の操作に応じて第1レベルLV1及び第2レベルLV2を変更するようにするのもよい。これによって、NDフィルタの半掛かり状態が発生する被写体の明るさレベルの領域を、図3の横軸方向へ移動させることが可能となるため、ユーザが、被写体が明るいときにはその領域を暗い方へ移動させ、逆に被写体が暗いときにはその領域を明るい方へ移動させることによって、NDフィルタの半掛かり状態が発生する頻度を更に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る露出制御方法を実施することのできる撮像装置の具体的な構成例を示したブロック図である。
【図2】図1の撮像装置の絞り羽根の形状及び動作を示した図である。
【図3】図1の撮像装置に保持されているマップデータのデータ内容をグラフの形で示した図である。
【符号の説明】
【0024】
10……撮像装置、12……撮影レンズ、12a……絞り開口、14……CCD、24……マイクロコンピュータ、26a、26b……絞り羽根、30……NDフィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り開口を有する撮影レンズと、固体撮像素子と、複数の露出調節手段と、被写体の明るさを判定する手段と、被写体の明るさに応じて前記複数の露出調節手段を制御して目標露出値を得る露出制御手段とを備え、前記複数の露出調節手段が、前記絞り開口にNDフィルタを出没させることで露出量を調節する第1露出調節手段を含んでいると共に、前記絞り開口の開口面積を調節することで露出量を調節する露出調節手段と、前記固体撮像素子の電子シャッタ速度を調節することで露出量を調節する露出調節手段と、前記固体撮像素子から得られる画像信号のアンプゲインを制御することで露出量を制御する露出調節手段とのうちの少なくとも1つから成る第2露出調節手段を含んでいる撮像装置の露出制御方法において、
前記第1露出調節手段を、前記絞り開口に前記NDフィルタが全く掛からない状態であるNDフィルタ全開状態と、前記絞り開口に部分的に前記NDフィルタが掛かった状態であるNDフィルタ半掛かり状態と、前記絞り開口の全域に前記NDフィルタが掛かった状態であるNDフィルタ全閉状態とに制御可能に構成すると共に、前記NDフィルタ半掛かり状態において前記絞り開口に対する前記NDフィルタの掛かり量であるNDフィルタ開度を連続的または段階的に制御可能であるように構成し、
被写体の明るさが第1レベル未満の領域にあるときには、前記第1露出調節手段をNDフィルタ全開状態に維持し、前記第2露出調節手段を制御することによって、被写体の明るさに応じた露出制御を行い、
被写体の明るさが前記第1レベルを超え第2レベル未満の領域にあるときには、前記第1露出調節手段をNDフィルタ半掛かり状態にしてNDフィルタ開度を制御するのと並行して、前記第2露出調節手段を制御するようにし、その際に、被写体の明るさが明るくなるほど前記第1露出調節手段による露出低減量を拡大する一方で前記第2露出調節手段による露出低減量を縮小することにより、被写体の明るさに応じた露出制御を行い、
被写体の明るさが前記第2レベルを超える領域にあるときには、前記第1露出調節手段をNDフィルタ全閉状態に維持し、前記第2露出調節手段を制御することによって、被写体の明るさに応じた露出制御を行う、
ことを特徴とする露出制御方法。
【請求項2】
前記第2露出調節手段が、前記絞り開口の開口面積を調節する絞り羽根と、該絞り羽根を駆動する絞り羽根駆動部とを含むことを特徴とする請求項1記載の露出制御方法。
【請求項3】
前記撮像装置に、ユーザが前記第1レベル及び前記第2レベルを設定するために操作するスイッチ手段と、前記スイッチ手段が操作されることに応答して前記第1レベル及び前記第2レベルを設定するレベル設定手段とを設け、
前記スイッチ手段の操作に応じて前記第1レベル及び前記第2レベルを変更する、
ことを特徴とする請求項1記載の露出制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−25432(P2007−25432A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209670(P2005−209670)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】