説明

撮像装置及び撮像方法

【課題】動画撮影モードから静止画撮影モードに切り替えて、静止画撮影を行うときのレリーズタイムラグが短い撮像装置を提供する。
【解決手段】静止画撮影トリガボタン311を押すことにより動画撮影モードから静止画撮影モードに切り替え、静止画撮影を行うときに、レリーズタイムラグの主な原因である、露出制御とオートフォーカス制御のうちフォーカス制御を、動画用プログラム線図から静止画用プログラム線図に切り替えた直後から開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子の駆動方法を変更したときのオートフォーカスの制御タイミングを変更する撮像装置及び撮像方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在ビデオカメラにおいて、動画撮影と静止画撮影の両方が撮影できるのもが多く、動画撮影モードと静止画撮影モードがメカスイッチ等を介して切り替えられている製品が多い。すなわち、動画撮影を行いたいときはメカスイッチを動画撮影モードにしておき動画撮影開始トリガボタンを押し、静止画撮影を行いたいときは静止画撮影モードに切り替えて静止画撮影トリガボタンを押すこととなる。しかし、ストレスフリーを考慮するとメカスイッチ等を介さなくても、動画又は静止画が撮影できることが望ましい。
【0003】
そこで、最近採用されている切替方法は次のようなものである。通常は、動画撮影モードで動作させておき、静止画撮影トリガボタンが押されれば、静止画撮影モードに切り替えて、静止画撮影を行う。静止画撮影が行われた後は、暫く操作が何もなされなければ再び動画撮影モードに戻る。このような場合、従来は、静止画撮影を行う際に、露出制御が決定してからオートフォーカス動作をさせていた。これは、露出制御において絞りが動作され、絞りの開口径変化により被写界深度が変化することを考えると、自然な順序である。そして、露出制御、オートフォーカス制御を正確に行うことができる技術である。この技術については、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2001−281530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、露出制御を行ってからオートフォーカス制御を行うため、レリーズタイムラグTlgは、露出制御時間をTex、オートフォーカス時間をTfo、メカシャッタ閉鎖時間をTclとすると、以下の式(1)で求まる。
Tlg=Tex+Tfo+Tcl・・・式(1)
撮像素子から出力された映像をもとに露出制御やフォーカス制御を行うと、フィードバック制御となるため、おおよそ、露出制御時間Texは0.5秒、オートフォーカス時間Tfoは0.5秒と時間がかかる。また、メカシャッタ閉鎖時間Tclは0.005秒であるため、露出制御時間Texとオートフォーカス時間TfoがレリーズタイムラグTlgに対して支配的である。そしてそのレリーズタイムラグにより、シャッターチャンスを逃す一因となっている。
【0005】
本発明の課題は、動画撮影モードから静止画撮影モードに切り替えて、静止画撮影を行うときのレリーズタイムラグが短い撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面としての撮像装置は、レンズから入射した光を電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子を駆動方法が異なる第1のモード及び第2のモードで駆動させる撮像素子駆動手段と、前記撮像素子から出力された電気信号から測光値を取得する測光値取得手段と、前記測光値取得手段が取得する測光値に応じて、前記第1のモードで使用する第1のプログラム線図、および前記第2のモードで使用する第2のプログラム線図とにしたがい取得する被写体像の輝度レベルを適正輝度レベルに制御する露出制御手段と、前記撮像素子から出力された電気信号に基づいて被写体の焦点を合わせるフォーカス手段と、を備え、プログラム線図を前記第1のプログラム線図から第2のプログラム線図に切り替える場合に、前記第2のプログラム線図にしたがった適正露出になるよりも前に、前記フォーカス手段によるフォーカス動作が開始すること、を特徴とする。
【0007】
本発明の第2の側面としての撮像方法は、撮像素子によりレンズから入射した光を電気信号に変換する撮像工程と、撮像素子を駆動方法が異なる第1のモード及び第2のモードで駆動させる撮像素子駆動工程と、前記撮像素子により出力された電気信号から測光値を取得する測光値取得工程と、前記測光値取得工程において取得する測光値に応じて、前記第1のモードで使用する第1のプログラム線図、および前記第2のモードで使用する第2のプログラム線図とにしたがい取得する被写体像の輝度レベルを適正輝度レベルに制御する露出制御工程と、前記撮像素子から出力された電気信号に基づいて被写体の焦点を合わせるフォーカス工程と、を備え、プログラム線図を前記第1のプログラム線図から第2のプログラム線図に切り替える場合に、前記第2のプログラム線図にしたがった適正露出になるよりも前に、前記フォーカス工程によるフォーカス動作が開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、動画撮影モードから静止画撮影モードに切り替え、静止画撮影を行うときに、フォーカス制御の開始タイミングを早くすることにより、レリーズタイムラグを減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。なお、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。また、以下の説明では、具体的な数値、構成、動作等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
【0010】
(実施形態)
図1は、本発明による撮像装置の実施形態の構成を示すブロック図である。結像用レンズ110は、後述のフォーカスレンズ111とともに撮影光学系を形成し、被写体像を撮像素子200上に結像させる。フォーカスレンズ111は、光軸方向に移動することにより被写体像を撮像素子200上に合焦させる。フォーカス駆動モータ160は、フォーカスレンズ111を光軸方向に駆動させる駆動力を発生する。フォーカス機構駆動装置170は、フォーカス駆動モータ160を駆動する。絞り機構120は、入射光量を制御することにより露出を変化させる。絞り駆動モータ130は、絞り機構120を駆動する駆動力を発生する。絞り機構駆動装置140は、絞り駆動モータ130を駆動することにより、露出を変化させる複数の露出変更手段のひとつである。絞り位置検出装置150は絞り機構120の位置を検出する。
【0011】
撮像素子200は、入射した光を電気信号に変換する光電変換を行う。撮像素子駆動装置210は、撮像素子200を制御し光電変換された信号を読み出す。また、撮像素子駆動装置210は、撮像素子200からの電荷の読み出しを加算して読み出すのか非加算で読み出すのか間引いて読み出すのかを制御する。さらに、撮像素子駆動装置210は、信号の蓄積時間を制御して、いわゆる電子シャッタとしての制御を行い、露出を変化させる複数の露出変更手段のひとつとして機能する。サンプルホールド装置220は、撮像素子200で光電変換された信号をサンプリングする。ゲイン装置230は、その信号を電気的に増幅させるAGC(自動ゲイン調整)を行う。これは、撮影においては感度が変化することに相当する。よって、ゲイン装置230は、露出を変化させる複数の露出変更手段のひとつである。
【0012】
アナログ−デジタル変換器(以下、A/D変換器と称す)240は、ゲイン装置230の出力であるアナログ信号をデジタル信号に変換する。信号処理装置(以下DSPと称す)250は、ガンマ補正後、色分離、色差マトリクス等の処理を施した後に、同期信号を加え標準テレビジョン信号を生成したりする制御機能を有している。測光値取得装置251は、A/D変換器240から出力されるデータを受けて各画素の測光値を得る。合焦信号取得装置252は、A/D変換器240から出力されるデータを受けて合焦信号を取得する。メモリ260は、DSP250で処理された画像を記憶する。記憶媒体270は、動画や静止画を記録する。液晶パネル280は、画像を表示する。
【0013】
マイクロコンピュータ300aは、DSP250に処理命令を出す。マイクロコンピュータ300aには、評価値算出装置301、露出制御装置302a、撮像素子駆動方法切替装置303、フォーカス機構制御装置304aが含まれている。評価値算出装置301は、測光値取得装置251から出力された輝度値から、撮影された映像が適正な露出状態であるかどうかを判定するための測光値を算出する。露出制御装置302aは、評価値算出装置の出力結果を受けて、どの露出変更手段(露出制御パラメータ:絞り、AGC、電子シャッタ)をどれだけ動作させるかあらかじめ設定されているプログラム線図(図2、図3参照)を元に算出する。どの露出変更手段(露出制御パラメータ:絞り、AGC、電子シャッタ)をどれだけ動作させるかは、評価値算出装置の出力結果を受けて、適正な被写体像の輝度レベルにするために行われる。そして、露出制御装置302aは、各駆動装置に対して命令を出す。撮像素子駆動方法切替装置303は、撮像素子駆動装置に対して撮像素子200の駆動を加算/非加算/間引きのどのモードで動作させるか、及び、16:9の画角なのか4:3の画角なのかの命令を出力する。フォーカス機構制御装置304aは、合焦信号取得装置252により取得された合焦信号を基にフォーカス機構駆動装置170を制御する。動画撮影トリガボタン310は、動画撮影を開始するときに操作される。静止画撮影トリガボタン311は、静止画撮影を開始するときに操作される。
【0014】
本実施形態の撮像装置では、まず撮像素子200が動画撮影モード(第1のモード)で駆動されている。このとき撮像素子駆動方法切替装置303の命令は、アスペクト比16:9の加算読み出しである。ここで動画撮影トリガボタン310が押されれば、撮像素子200の駆動方法は変更せずにDSP250に読み出されてきている信号が記憶媒体270に記憶される。再び動画撮影トリガボタン310が押されれば記録を終了する。この動画撮影モードで記憶媒体270に記録されていない状態で、静止画撮影トリガボタン311が押された場合、撮像素子駆動方法切替装置303は、撮像素子200の駆動方法をアスペクト比4:3の間引き読み出しに切り替える。その切り替えと同時にプログラム線図の切り替えも行う。
【0015】
プログラム線図の切り替えは、露出制御装置302aが実行する。プログラム線図は動画用の第1のプログラム線図と、静止画用の第2のプログラム線図との2種類存在している。動画は、基本1/60秒のシャッタスピードで撮影することに対して、静止画は、手ブレや被写体ブレを極力無くすために1/120秒などの高速シャッタで撮影されるからである。
【0016】
図2は、動画用の第1のプログラム線図である。横軸が被写体の明るさで左側が明るい被写体、右側が暗い被写体である。また、縦軸は、露出制御の各パラメータの制御値となり、上側に制御するほど映し出される映像が明るくなり、下側に制御するほど映し出される映像は暗くなる。各パラメータの制御順序として、被写体の明るさが明るい方からシャッタ:1/500秒〜1/60秒、絞り:F11〜F2.0、AGC:0dB〜18dBと制御している。
【0017】
図3は、静止画用の第2のプログラム線図である。第2のプログラム線図では、被写体の明るさが明るい方からシャッタ:1/500秒〜1/120秒、絞り:F11〜F2.0、AGC:0dB〜18dB、そして再びシャッタ:1/120秒〜1/60秒と制御している。
【0018】
ここで現在の被写体の明るさがEv14(図2、図3のAの明るさ)で露出が適正であったとすると、絞り:F11、シャッタ:1/60秒、AGC:0dBで制御していることとなる。この状態で、静止画撮影モードに切り換えられた場合、図3の静止画プログラム線図上のEv14のところに制御を移行させる。すなわち、絞り:F8.0、シャッタ:1/120秒、AGC:0dBの制御に移行させる。このように、プログラム腺図の切り替えは、動画と静止画で同じEV値に相当する絞り値、シャッタ値、AGC値に移行するように制御されている。したがって、この切り替えを行う際に、測光値取得装置251から出力される測光値を使う必要はない。
【0019】
プログラム線図の切り替え後、測光値取得装置251から出力される測光値があらかじめ設定されている目標値になっているかどうかを判断する。そして、測光値が目標値と異なっているなら、静止画のプログラム線図上をトレースするように、AEの各パラメータを測光値が目標値になるまで動作させる。このように、プログラム線図の切り替え後に露出制御をやり直す理由は2つある。1つ目は、アスペクト比が16:9から4:3に変わるので撮影範囲が変化し、被写体の適性明るさも変化するという理由である。2つ目は、動画と静止画で測光値取得装置251から出力される測光値が異なるという理由である。目標値だけ変化するならあらかじめ目標値の変化分を考慮してプログラム線図を遷移させればよい。しかし、アスペクト比の変化により撮影範囲が変化してしまうため、測光してみるまでどのような測光値になり、どのくらい目標値と離れているかが分からない。よって、動画から静止画に切り換えた後、適正露出にするためには、測光をしなおすことが必要となる。
【0020】
後述する比較例では、露出制御装置302により線図を切り替えた直後、測光値取得装置251から出力される測光値に基づいて露出制御を行う。これに対して本実施形態では、露出制御装置302aにより線図を切り替えた直後、まずフォーカス機構制御装置304aに対してオートフォーカス動作を開始するよう命令を出す。これは、動画撮影用プログラム線図から静止画撮影用プログラム線図に切り替えるとき、被写体のEV値に合わせた切り替えを行っているため、静止画撮影用プログラム線図に切り替わった直後でも適正露出に近い状態になっているので可能な命令である。もし、プログラム線図の切り替えが被写体の明るさにあっていなければ、露出を適正にするために絞り値が大きく変わり、被写界深度も大きく変わってしまうのでオートフォーカス動作に支障をきたす。したがってプログラム線図の動画用から静止画用への切り替えが正確にできることが重要である。
【0021】
フォーカス機構制御装置304aがオートフォーカス動作開始命令を受け取ったらオートフォーカス動作を開始させる。この動作は、被写体のコントラスト最大となる位置が、どこの焦点位置にあるのかを、おおよその位置として探す予備的な仮のオートフォーカス動作であり、この時点で合焦してもオートフォーカス終了とはしない。それは後にも説明するが、オートフォーカス動作と同時に露出制御動作も行われ、被写界深度が変化する可能性があるからである。すなわち、予備的な仮オートフォーカス動作となる。なお、本実施形態のオートフォーカス動作とは、撮像素子200から出力された映像のコントラストをもとに最大のコントラストになるようにフォーカスレンズを動作させる、いわゆるテレビAFのことである。
【0022】
この仮オートフォーカス動作の開始と同時に、撮像素子200から読み出された信号をもとに生成された測光値取得装置251の出力を評価値算出装置301が受け、露出の評価値を算出する。その算出結果が目標値よりも大きければ図3の静止画用のプログラム線図上を左側に向かってトレースするように露出の各パラメータを動作させる。目標値よりも小さければ図3の静止画用のプログラム線図上を右側に向かってトレースするように露出の各パラメータを動作させる。
【0023】
ここで、プログラム線図を被写体の明るさに対して正確に切り替えても、なお露出の評価値が目標値とは異なってしまう理由は以下の通りである。その理由の一つ目は、動画撮影モードと静止画撮影モードとの撮影範囲の変化である。図4は、動画撮影モードと静止画撮影モードとの撮影範囲の違いを示す図である。動画ではアスペクト比16:9であり静止画はアスペクト比4:3であるので、静止画撮影モードに切り替わった後、動画撮影モードに対して上下は映っていなかったものが映り、左右は映っていたいものが映らなくなるという被写体の変化が生じるのである。二つ目の理由は、露出制御により評価値が変化するが、その評価値の目標値の違いがある。これら二つの違いを吸収するためにプログラム線図を切り替えてから露出評価値を取得し、プログラム線図に沿って露出を変化させる。
【0024】
このように、静止画撮影用に露出を適正にしたら、露出制御装置302aから絞り機構駆動装置140と撮像素子駆動装置210とゲイン装置230とに動作を固定するよう命令を出し、露出をロックさせる。その後、露出制御装置302aからフォーカス機構制御装置304aに対して、合焦を完了させてもいいようにオートフォーカス合焦許可を出し、フォーカス機構制御装置304aは最終的な合焦位置をサーチする。そして合焦したら、静止画を撮像装置に取り込むための動作を実行する。
【0025】
以上、述べてきたように、静止画撮影トリガボタン311を押すことにより動画撮影モードから静止画撮影モードに切り替え、静止画撮影を行うときに、オートフォーカス制御の開始タイミングを早くする。これにより、レリーズタイムラグの主な原因である、露出制御とオートフォーカス制御のうちオートフォーカス制御の開始タイミングが早くなることとなり、以下のようなレリーズタイムラグとなる。まず露出制御時間Tex‘は、プログラム線図を切り替え終了までの時間Tex1と、その後の露出を適正にしてロックする時間Tex2の合計であり、この時間は、後述する比較例の露出制御時間と同じである。したがって、露出制御時間Tex‘は、以下の式(2)となる。
Tex=Tex‘=Tex1+Tex2 ・・・式(2)
【0026】
また、オートフォーカスにかかる時間Tfo‘は、仮オートフォーカス動作をTfo1とし、合焦させるオートフォーカス動作をTfo2とすると、以下の式(3)となる。
Tfo=Tfo‘=Tfo1+Tfo2 ・・・式(3)
したがって、静止画撮影トリガボタン311を押してから静止画が撮影されるための時間Tlg‘は、以下の式(4)となり、レリーズタイムラグが減少する。
Tlg>Tlg‘=Tex1+Tfo2+Tcl ・・・式(4)
【0027】
次に、本実施形態の撮像装置の動作を説明する。図5は、本実施形態の撮像装置の動作を示すフローチャートである。ステップ(以下、Sとする)101では、静止画撮影トリガボタン311が半押し又は全押しされたかどうかを判断する。半押し又は全押しされたらS102に進む。半押し又は全押しされていなかったらS101を繰り返して待つ。S102では、撮像素子200の駆動を動画撮影モードから静止画撮影モードに切り替え、アスペクト比を16:9から4:3に切り替え、S103に進む。S103では、露出の目標値を動画用の値から静止画用の値に変更し、S104に進む。S104では、動画用のプログラム線図から静止画用のプログラム線図に切り替え、S105に進む。S105では、S104で切り替えられたプログラム線図上の各パラメータである、絞り、シャッタ、AGCが目標とする値に到達したかどうかを判定し、それぞれ目標とする値に達していたら、プログラム線図の切り替え処理を終了してS106に進む。プログラム線図上の各パラメータがまだ目標とする値に到達していなければ、プログラム線図の切り替え処理を続行する。
【0028】
S106では、露出制御装置302aがプログラム線図の遷移の終了と同時に仮のオートフォーカス制御の開始許可を意味する仮AFサーチ開始フラグを立てて、S107に進む。S107では、S106で立てられたフラグをトリガにして、おおよその合焦位置をサーチするための仮オートフォーカスサーチを開始し、S108に進む。S108では、遷移した先のプログラム線図上の各パラメータを動作させないように固定しておき、撮像素子200から出力される映像から露出の測光値を取得し、評価値計算を行ってからS109に進む。S109では、S108で取得した評価値とあらかじめ設定されている評価値の目標値とを比較し、評価値と評価値の目標値が同じ値になるように、露出制御の各パラメータをプログラム線図上で動作させ、S110に進む。S110では、S109で動作させた結果の露出の評価値が目標値に達しているかどうかを判定し、目標値に達していなかったらS109に戻り、露出制御をやり直す。また、目標値に達しているならば、S111に進む。
【0029】
S111では、露出制御の各パラメータが動かないようにロックし、S112に進む。S112では、オートフォーカス制御の開始許可を意味するAFサーチ開始フラグを立てて、S113に進む。S113では、被写体にピントを合わせるためのオートフォーカス動作を開始させる。
【0030】
このように、オートフォーカスの動作を従来(後述する比較例も含む)よりも早い段階で行うことにより、レリーズタイムラグを少なくすることができるが、ひとつだけ改善が必要な場合がある。それは、被写体輝度が低い場合、合焦信号取得装置252で取得するフォーカス用の評価値信号が小さい場合である。通常、このような場合、フォーカス制御の補助として、フォーカス制御しているときだけ照射装置320(例えばLEDライト)により被写体を照らすのが一般的に用いられている手法である。このLEDライトを点灯させるとき当然ではあるが、フォーカス制御と同時またはフォーカス制御が始まる前までに点灯させなければならない。
【0031】
しかし、上述した本実施形態の動作では、露出制御とオートフォーカス制御が平行して行われるため、オートフォーカス用にLEDライトを点灯させて被写体を照らしてしまうと、露出制御が間違って行われてしまう。したがって、静止画撮影トリガボタン311が押されて、動画撮影モードから静止画撮影モードに遷移し、露出制御装置302aによりプログラム線図が切り替えられたら、露出制御装置から被写体のEV値を取得する。そのEV値を基に被写体が暗いと判断されたら、オートフォーカス制御用にLEDライトを使用するため、露出制御が終了するまでオートフォーカス制御は行わない。すなわち、従来及び後述する比較例と同じタイミングでオートフォーカス動作を行うこととなる。
【0032】
図6は、AF補助光の発光を考慮したときの動作を示すフローャートである。S201では、静止画撮影トリガボタン311が半押し又は全押しされたかどうかを判断する。半押し又は全押しされたらS202に進む。半押し又は全押しされていなかったらS201を繰り返して待つ。S202では、撮像素子200の駆動を動画撮影モードから静止画撮影モードに切り替え、アスペクト比を16:9から4:3に切り替え、S203に進む。S203では、露出の目標値を動画用の値から静止画用の値に変更し、S204に進む。S204では、動画用のプログラム線図から静止画用のプログラム線図に切り替え、S205に進む。S205では、S204で切り替えられたプログラム線図上の各パラメータである、絞り、シャッタ、AGCが目標とする値に到達したかどうかを判定し、それぞれ目標とする値に達していたら、プログラム線図切り替え処理を終了してS206に進む。プログラム線図上の各パラメータがまだ目標とする値に到達していなければ、S204に戻りプログラム線図切り替え処理を続行する。
【0033】
S206では、被写体の明るさを示すEV値を取得し、S207に進む。S207では、S206で取得した被写体Ev値を基にAF補助光が必要かどうかの照射判定を行い、必要であればS208に進み、必要でなければS214に進む。S214では、露出制御装置302aがプログラム線図の遷移の終了と同時に仮のオートフォーカス制御の開始許可を意味する仮AFサーチ開始フラグを立てて、S215に進む。S215では、S214で立てられたフラグをトリガにおおよその合焦位置をサーチするための仮オートフォーカスサーチを開始し、S208に進む。S208では、遷移した先のプログラム線図上の各パラメータを動作させないように固定しておき、撮像素子200から出力される映像から露出の測光値を取得し、評価値計算を行ってからS209に進む。S209では、S208で取得した評価値とあらかじめ設定されている評価値の目標値とを比較し、評価値と評価値の目標値が同じ値になるように、露出制御の各パラメータをプログラム線図上で動作させ、S210に進む。
【0034】
S210では、S209で動作させた結果の露出の評価値が目標値に達しているかどうかを判定し、目標値に達していなかったらS209に戻り、露出制御をやり直す。また、目標値に達しているならば、S211に進む。S211では、露出制御の各パラメータが動かないようにロックし、S112に進む。S212では、オートフォーカス制御の開始許可を意味するAFサーチ開始フラグを立てて、S213に進む。S213では、被写体にピントを合わせるためのオートフォーカス動作を開始させる。
【0035】
(比較例)
ここで、上記本実施形態の動作の特徴をより明確にするために、本実施形態に近い構成を有した撮像装置を想定し、これを従来と同様にして動画撮影モードから静止画撮影モードへと切り替える場合を説明する。図7は、比較例の撮像装置の構成を示すブロック図である。この比較例は、上述した実施形態のマイクロコンピュータ300aと動作が異なるマイクロコンピュータ300bとした点と、照射装置320が省略されている点が、実施形態と異なるものである。よって、前述した実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。マイクロコンピュータ300bは、露出制御装置302b及びフォーカス機構制御装置304bを備えている。露出制御装置302bは、実施形態における露出制御装置302aに対応するブロックであり、フォーカス機構制御装置304bは、実施形態におけるフォーカス機構制御装置304aに対応するブロックである。
【0036】
比較例では、露出制御装置302b及びフォーカス機構制御装置304bの動作が実施形態の場合と異なる。以下、その異なる動作を説明する。比較例の撮像装置では、まず撮像素子200が動画撮影モード(第1のモード)で駆動されている。このとき撮像素子駆動方法切替装置303の命令は、アスペクト比16:9の加算読み出しである。ここで動画撮影トリガボタン310が押されれば、撮像素子200の駆動方法は変更せずにDSP250に読み出されてきている信号が記憶媒体270に記憶される。再び動画撮影トリガボタン310が押されれば記録を終了する。この動画撮影モードで記憶媒体270に記録されていない状態で、静止画撮影トリガボタン311が押された場合、撮像素子駆動方法切替装置303は、撮像素子200の駆動方法をアスペクト比4:3の間引き読み出しに切り替える。その切り替えと同時にプログラム線図の切り替えも行う。ここまでの動作は、上記実施形態と同じである。
【0037】
そして、測光値取得装置251から出力される測光値が目標値と同じになり、露出が適正と判断されたら、露出をロックする。そして、合焦信号取得装置252で取得された合焦信号を基に、マイクロコンピュータ300bに内蔵されているフォーカス機構制御装置304bからフォーカス機構駆動装置170にフォーカス動作を行うよう命令が出される。これに対応してフォーカス駆動モータ160を駆動させ、フォーカスレンズを動作させ、オートフォーカスサーチを開始する。
【0038】
図8は、比較例の動作を示すフローチャートである。まず、S301では、静止画撮影トリガボタン311が半押し又は全押しされたかどうかを判断する。半押し又は全押しされたらS302に進む。半押し又は全押しされていなかったらS301を繰り返して待つ。S302では、撮像素子200の駆動を動画撮影モードから静止画撮影モードに切り替え、アスペクト比を16:9から4:3に切り替え、S303に進む。S303では、露出の目標値を動画用の値から静止画用の値に変更し、S304に進む。S304では、動画用のプログラム線図から静止画用のプログラム線図に切り替え、S305に進む。S305では、S304で切り替えられたプログラム線図上の各パラメータである、絞り、シャッタ、AGCが目標とする値に到達したかどうかを判定し、それぞれ目標とする値に達していたら、プログラム線図の切り替え処理を終了してS306に進む。プログラム線図上の各パラメータがまだ目標とする値に到達していなければ、プログラム線図の切り替え処理を続行する。
【0039】
S306では、遷移した先のプログラム線図上の各パラメータを動作させないように固定しておき、撮像素子200から出力される映像から露出の測光値を取得し、評価値計算を行ってからS307に進む。S307では、S306で取得した評価値とあらかじめ設定されている評価値の目標値とを比較し、評価値と評価値の目標値が同じ値になるように、露出制御の各パラメータをプログラム線図上で動作させ、S308に進む。S308では、S307で動作させた結果の露出の評価値が目標値に達しているかどうかを判定し、目標値に達していなかったらS307に戻り、露出制御をやり直す。また、目標値に達しているならば、S309に進む。S309では、露出制御の各パラメータが動かないようにロックし、S310に進む。S310では、オートフォーカス制御の開始許可を意味するAFサーチ開始フラグを立てて、S311に進む。S311では、被写体にピントを合わせるためのオートフォーカス動作を開始させる。上述した従来例では、レリーズタイムラグTlgは、先に示した式(1)となってしまい、本実施形態の場合のレリーズタイムラグTlg‘よりも長くなっている。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、静止画撮影トリガボタン311を押すことにより動画撮影モードから静止画撮影モードに切り替え、静止画撮影を行うときに、フォーカス制御の開始タイミングを早くする。よって、レリーズタイムラグを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による撮像装置の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】動画用の第1のプログラム線図である。
【図3】静止画用の第2のプログラム線図である。
【図4】動画撮影モードと静止画撮影モードとの撮影範囲の違いを示す図である。
【図5】本実施形態の撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】AF補助光の発光を考慮したときの動作を示すフローャートである。
【図7】比較例の撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図8】比較例の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
111 フォーカスレンズ
120 絞り機構
130 絞り機構駆動モータ
140 絞り機構駆動装置
170 フォーカス機構駆動装置
200 撮像素子
210 撮像素子駆動装置
230 ゲイン装置
251 測光値取得装置
252 合焦信号取得装置
300a 本実施形態のマイクロコンピュータ
300b 比較例のマイクロコンピュータ
301 評価値算出装置
302a 本実施形態の露出制御装置
302b 比較例の露出制御装置
303 撮像素子駆動方法切替装置
304a 本発明のフォーカス機構制御装置
304b 比較例のフォーカス機構制御装置
310 動画撮影用トリガボタン
311 静止画撮影用トリガボタン
320 照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズから入射した光を電気信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子を駆動方法が異なる第1のモード及び第2のモードで駆動させる撮像素子駆動手段と、
前記撮像素子から出力された電気信号から測光値を取得する測光値取得手段と、
前記測光値取得手段が取得する測光値に応じて、前記第1のモードで使用する第1のプログラム線図、および前記第2のモードで使用する第2のプログラム線図とにしたがい取得する被写体像の輝度レベルを適正な輝度レベルに制御する露出制御手段と、
前記撮像素子から出力された電気信号に基づいて被写体の焦点を合わせるフォーカス手段と、
を備え、
プログラム線図を前記第1のプログラム線図から第2のプログラム線図に切り替える場合に、前記第2のプログラム線図にしたがった適正露出になるよりも前に、前記フォーカス手段によるフォーカス動作が開始すること、
を特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記フォーカス動作は、最終的に被写体に焦点を合わせるフォーカス動作よりも先に行われる予備的なフォーカス動作であること、
を特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
被写体を照らす照射手段と、
前記照射手段により被写体を照らすかどうかを判定する照射判定手段と、
を備え、
前記第1のモードから前記第2のモードに切り替えられたとき、前記照射判定手段が被写体を照射すると判定した場合は、前記露出制御手段が用いるプログラム線図を前記第1のプログラム線図から第2のプログラム線図に切り替えた後、前記露出制御手段が前記測光値取得手段が取得する測光値に応じて、露出を変化させる露出変更手段を前記第2のプログラム線図にしたがい制御するよりも後に、前記フォーカス手段が動作を開始すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1のモードは、動画を撮影するモードであり、
前記第2のモードは、静止画を撮影するモードであること、
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記露出変更手段は、絞り、シャッタ、ゲインのうちの少なくとも2つを含むこと、
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
撮像素子によりレンズから入射した光を電気信号に変換する撮像工程と、
撮像素子を駆動方法が異なる第1のモード及び第2のモードで駆動させる撮像素子駆動工程と、
前記撮像素子により出力された電気信号から測光値を取得する測光値取得工程と、
前記測光値取得工程において取得する測光値に応じて、前記第1のモードで使用する第1のプログラム線図、および前記第2のモードで使用する第2のプログラム線図とにしたがい取得する被写体像の輝度レベルを適正な輝度レベルに制御する露出制御工程と、
前記撮像素子から出力された電気信号に基づいて被写体の焦点を合わせるフォーカス工程と、
を備え、
プログラム線図を前記第1のプログラム線図から第2のプログラム線図に切り替える場合に、前記第2のプログラム線図にしたがった適正露出になるよりも前に、前記フォーカス工程によるフォーカス動作が開始すること、
を特徴とする撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−157931(P2010−157931A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335480(P2008−335480)
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】