説明

撮像装置及び撮像装置の状態量伝達方法

【課題】手振れを加速度センサーと撮像センサーの出力を利用して検知し、カメラのファインダを通じ撮影者に警告表示を行う技術が知られているが、表示や警告を目視する必要があるため、ユーザが被写体を十分に視認することができず、シャッターチャンスを逃すなどの弊害が生じていた。
【解決手段】センサー部310で検出された各種状態量をCPU300へ送る。一方、CPU300は送られてきた各種状態量の大きさ及び方向に基づいて、ユーザが認識可能なかたちの振動に触覚伝播部110を用いて変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像装置の状態量伝達方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1には、容積対重量比率を一般的なデジタルスチルカメラ(DSC)より十分に大きくし、撮影者に視覚から受ける印象よりも重く感じさせることで、腕の筋肉を緊張させた状態でカメラを保持させ、手ぶれを抑制する技術が記載されている。
【0003】
また、下記の特許文献2には、加速度センサーと撮像センサーの出力を利用して撮影者の手振れを検地し、必要に応じてカメラのファインダ内やその近傍、カメラ前面において、撮影者や被撮影者に警告を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−76951号公報
【特許文献2】特許第3868268明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術は、容積対重量比率に制約を設けたため、カメラデザインに制約が生じるとともに、より一層の軽量化を図ることが困難になる問題がある。また、手への緊張作用についても、重力方向以外の方向や回転軸の手振れに対しては効果が無いという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載された技術では、撮影者に対して単なる警告が出されるだけであり、撮影者に対してリアルタイムに、直感的に手振れ方向や大きさを認識させることができず、手振れを十分に抑制できるものではない。
【0007】
また、手振れ以外の撮像装置の情報量についても、ユーザが状態量を取得しようとすると表示や警告を目視する必要がある。このため、ユーザが被写体を十分に視認することができず、シャッターチャンスを逃すなどの弊害が生じていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、簡素な構成で撮像装置の各種状態量をユーザに伝達することが可能な、新規かつ改良された撮像装置及び撮像装置の状態量伝達方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、撮像装置において取得される大きさと方向を含む状態量を取得する状態量取得部と、ユーザが保持する位置に設けられ、複数の振動部を有する触覚伝播部と、前記状態量取得部が取得した状態量の大きさ及び方向に基づいて、前記触覚伝播部の各振動部を駆動する制御部と、を備える、撮像装置が提供される。
【0010】
また、前記状態量は、手振れ、露光、絞り値、シャッター速度に関するいずれかの状態量である。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、手振れの大きさ及び方向に関する状態量を取得するステップと、取得した前記状態量の大きさ及び方向に基づいて、ユーザが保持する位置に設けられた複数の振動部を有する触覚伝播部の各振動部を振動させるステップと、を備える、撮像装置の状態量伝達方法。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、簡素な構成で撮像装置の各種状態量をユーザに伝達することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置の外観を示す模式図である。
【図2】触覚伝播部のアクチュエータの配置を示す模式図である。
【図3】個々のアクチュエータの構造の一例と、その駆動波形を示す模式図である。
【図4】ユーザの右手に触覚伝播部によって情報が伝達される様子を示す模式図である。
【図5】撮像装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】手振れを検出してユーザに伝達する場合の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る撮像装置100の外観を示す模式図である。撮像装置100は、例えば一眼レフタイプの装置であり、撮像素子に被写体像を結像するためのレンズ光学系を備えたレンズ鏡筒102を備えている。レンズ鏡筒102には、絞り値を設定するための絞りリング104が設けられている。また、レンズ鏡筒102には、フォーカスを合わせるためのフォーカスリング等も設けられている。
【0016】
また、撮像装置100の本体には、シャッター速度を設定するためのシャッターダイヤル106が設けられている。また、撮像装置100の本体には、ユーザの右手のグリップの位置に触覚伝播部110が設けられている。触覚伝播部110は、複数のアクチュエータを有して構成され、アクチュエータの振動を通じてユーザに対して情報を伝達する部材である。
【0017】
図2は、本実施形態では、触覚伝播部110は9個のアクチュエータを有して構成されている。図2では、9個のアクチュエータを“1”〜“9”の数字で示しており、この数字の位置に各アクチュエータが配置されている。
【0018】
図3は、個々のアクチュエータの構造の一例と、その駆動波形を示す模式図である。図3に示すように、アクチュエータは形状記憶合金からなる導線200によって構成することができ、一例としてその直径Φは0.05mm、長さLは3mmである。
【0019】
そして、形状記憶合金による導線200には、図3に示す波形によるPWM電流が導線200に供給される。PWM電流が導線200に流れると、導線200が振動する。導線200は樹脂、ゴム製などのカバーで被覆されている。ユーザが撮像装置100の本体のグリップを握った状態で導線を振動させると、ユーザの手が振動を感知する。
【0020】
本実施形態では、導線200が各アクチュエータの位置に対応して設けられている。そして、各アクチュエータの導線200は、所定の時間差をもって振動される。これにより、各アクチュエータによる振動を所定の方向に伝えることができ、ユーザに対して所定の情報を伝達することができる。
【0021】
図4は、ユーザの右手に触覚伝播部110によって情報が伝達される様子を示す模式図である。図4の例では、ユーザの人指し指が1,2,3のアクチュエータの上に位置している。そして、図4に示す1,2,3の波形によるPWM電流を1,2,3の各アクチュエータに印加することによって、1,2,3のアクチュエータが時間差を持って振動する。図4に示すように、“1”のアクチュエータが最初に振動し、次に“2”のアクチュエータ、“3”のアクチュエータの順で3つのアクチュエータが順次に振動する。
【0022】
これにより、ユーザの人指し指には、先端から付け根に向かって振動が伝わることになり、ユーザは所定の情報を認識することができる。ここで、触覚伝播部110によってユーザに伝達される情報としては、様々な情報を用いることができる。例えば、手振れに関する情報を伝達する場合は、撮影者が撮像装置100を保持している最中に手振れを起こすと、撮像装置100が内蔵しているジャイロセンサーにより、現在起こっている手振れの方向と大きさを検出する。そして、その手振れに対応した微小振動の強弱と移動量を触覚伝播部100の表面から撮影者の手のひらや指先へ伝えることができる。例えば、図4において、撮像装置100が左から右へ移動する方向(矢印A1方向)の手振れが生じている場合、アクチュエータの振動方向(矢印A2方向)を手振れの方向に合わせて、図4に示すように1,2,3のアクチュエータを順次に振動させる。また、アクチュエータの振動の振幅は、手振れ量に応じて大きくする。これにより、ユーザは、アクチュエータの振動の大きさにより手振れの量と方向を認識することができるため、撮影者がその手振れ方向への撮像装置100の保持をしっかりと固定するように意識することで、手振れを確実に抑制することができる。
【0023】
また、手振れの他にも、撮像装置100に関係する各種情報を触覚伝播部110からユーザへ伝達することができる。例えば、適正な露光量に対してシャッター速度が速い場合、遅い場合など、予め振動の伝播する方向を決めておくことで、ユーザに対してシャッター速度の調整量を伝達することができる。例えば、図4の方向に1,2,3のアクチュエータを順次に振動させた場合はシャッター速度を速くする旨を伝達することとし、逆の方向に振せた場合はシャッター速度を遅くする旨をユーザに伝達することと予め決めておくことで、振動の方向を検知したユーザは、シャッターダイヤル106を操作することで、シャッター速度を適正な値に設定することができる。絞り値の設定についても同様である。
【0024】
また、適正露出にするためには絞りリング104を所定方向に回転させる必要がある場合、絞りリング104の回転方向をアクチュエータの振動方向によってユーザに指示することもできる。例えば、適正露出にするために絞りリング104を矢印A3方向に回転させる必要がある場合、アクチュエータを矢印A2方向に順次振動させることで、ユーザに回転方向を伝達することができる。この場合においても、振動の大きさにより操作量を伝達することができる。このように、触覚伝播部110により操作部材の操作方向、操作量を伝達することも可能である。
【0025】
また、触覚伝播部110は、絞りリング104、シャッターダイヤル106などの操作部材による現在の設定値をユーザに伝えることもできる。例えば、図4の方向(矢印A2方向)に1,2,3のアクチュエータを順次に振動させた場合は、絞りリングの矢印A3方向への回転量の残りが少ないことをユーザに伝えることができる。更に、予め特定のアクチュエータが振動した場合の絞り値、シャッター速度を決めておくことで、ユーザは、絞りリング104、シャッターダイヤル106の設定、またはファインダー内の表示を認識することなく、現在の絞り値、シャッター速度を認識することができる。
【0026】
以上のような手法によれば、ユーザは、ファインダー内の表示、または液晶パネルなどの表示画面を確認することなく、触覚伝播部110の振動から直接的に情報を取得することができる。特に撮影中は、ユーザは被写体に着目しているため、ファインダー内、または液晶パネル等に表示される情報を十分に見ることができない場合がある。本実施形態では、ユーザは触覚伝播部110の振動から情報を取得できるため、ユーザは被写体に集中することができ、シャッターチャンスを逃すことなく所望の画像を取得することが可能である。
【0027】
次に、本実施形態の撮像装置100の構成について説明する。図5は、撮像装置100の構成を示す機能ブロック図である。図5に示すように、撮像装置100は、CPU300、センサー部310、表示部320、手振れ補正用アクチュエータ330、触覚伝播部110を有して構成される。センサー部310は、ジャイロセンサ312、AEセンサ(撮像センサ)314、位置センサ316を含む。
【0028】
センサー部310は、撮像装置100の各センサーで検出された状態量をCPU300に送る。CPU300は、センサー部310から送られた状態量に基づいて、触覚伝播部110の各アクチュエータの駆動量(振動の振幅)と駆動順を算出し、これに基づいて各アクチュエータにPWM電流を流し、各アクチュエータを振動させる。
【0029】
以下、センサー部310で検出される各種状態量と、これに基づく触覚伝播部110の制御について説明する。ジャイロセンサ312は、撮像装置100の手振れを検出するセンサであり、手振れ量と方向を検出してCPU300へ送る。CPU300は、手振れ量と方向に基づいて触覚伝播部110の各アクチュエータを振動させる。
【0030】
撮像センサ314には、光学レンズによりその撮像面に被写体像が結像され、光電変換により被写体の画像データが取得される。撮像センサ314は、各画素の輝度情報を含む画像データをCPU300に送り、CPU300は輝度情報に基づいてシャッター速度、絞り値などのAE値を決定する。そして、CPU300は、決定したシャッター速度、絞り値をユーザに伝達するため、触覚伝播部110の各アクチュエータを振動させる。
【0031】
位置センサ316は、絞りリング104、シャッターダイヤル106などの操作部材の位置を検出するセンサである。位置センサ316で検出された各操作部材の位置情報は、CPU300に送られる。CPU300は、位置情報に基づいて触覚伝播部110の各アクチュエータを振動させる。
【0032】
表示部320は液晶表示パネル等から構成され、撮像センサ314で検出した画像データに基づいて被写体像を表示する。また、手振れ補正用アクチュエータ330は、手振れ補正のために光学レンズを駆動するアクチュエータである。手振れ補正用アクチュエータ330は、手振れ量と方向に基づいて駆動される。
【0033】
図6は、手振れを検出してユーザに伝達する場合の処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS10では、ジャイロセンサ312により撮像装置100の手振れ量と方向が検出される。次のステップS12において、CPU300は、ジャイロセンサ312で検出された手振れ量と手振れ方向に基づいて、触覚伝播部110の各アクチュエータの駆動量、駆動順を算出する。次のステップS14では、ステップS12で決定された各アクチュエータの駆動量、駆動順に基づいて、各アクチュエータを駆動する。
【0034】
以上説明したように本実施形態によれば、ユーザは触覚伝播部110の振動から撮像装置100の各種情報を取得できる。従って、ユーザは被写体に集中することができ、シャッターチャンスを逃すことなく所望の画像を取得することが可能となる。
【0035】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0036】
100 撮像装置
110 触覚伝播部
310 センサー部
300 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置において取得される大きさと方向を含む状態量を取得する状態量取得部と、
ユーザが保持する位置に設けられ、複数の振動部を有する触覚伝播部と、
前記状態量取得部が取得した状態量の大きさ及び方向に基づいて、前記触覚伝播部の各振動部を駆動する制御部と、
を備えることを特徴とする、撮像装置。
【請求項2】
前記状態量は、手振れ、露光、絞り値、シャッター速度に関するいずれかの状態量であることを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
手振れの大きさ及び方向に関する状態量を取得するステップと、
取得した前記状態量の大きさ及び方向に基づいて、ユーザが保持する位置に設けられた複数の振動部を有する触覚伝播部の各振動部を振動させるステップと、
を備える、撮像装置の状態量伝達方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−133684(P2011−133684A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293473(P2009−293473)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】