撮像装置
【課題】可動部や複雑な装置構成を必要とせずに、また、複雑な処理や像の取扱を必要とせずに、オートフォーカス機能を実現する撮像装置を提供する。
【解決手段】複数のレンズがアレイ配列されてなるレンズアレイと、複数のレンズのそれぞれにより結像される被写体の縮小像(個眼像)の集合である複眼像を撮像する撮像素子を備え、前記レンズアレイを構成する複数のレンズは、各々異なる曲率半径と略等しいバックフォーカスを有するようにする。そして、撮像素子で撮像された複眼像を複数の個眼像に分離し、各個眼像の中から最も焦点の合った個眼像を選択して合焦画像として出力するか、あるいは、各個眼像から、対応する画素ごとに最も焦点の合った画素を選択し、これら画素を合成して合焦画像として出力する演算器を更に備える。
【解決手段】複数のレンズがアレイ配列されてなるレンズアレイと、複数のレンズのそれぞれにより結像される被写体の縮小像(個眼像)の集合である複眼像を撮像する撮像素子を備え、前記レンズアレイを構成する複数のレンズは、各々異なる曲率半径と略等しいバックフォーカスを有するようにする。そして、撮像素子で撮像された複眼像を複数の個眼像に分離し、各個眼像の中から最も焦点の合った個眼像を選択して合焦画像として出力するか、あるいは、各個眼像から、対応する画素ごとに最も焦点の合った画素を選択し、これら画素を合成して合焦画像として出力する演算器を更に備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイと撮像素子からなる撮像装置に係り、詳しくは、薄型、小型で可動部を有さずにオートフォーカス機能を実現する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置は、携帯機器、車載機器、医療機器や産業機器等における情報取得手段として有用であり、その薄型、小型化は場所を選ばない装置の設置を可能とするために、非常に重要である。また正確な情報取得のためには、焦点の合った画像を得ることが必須である。あらゆる被写体距離で焦点の合った画像を得るには、レンズを所定の被写体距離にフォーカスさせる必要があり、特に被写体距離が短い接写の場合には、被写界深度が浅く、被写体距離の変化による画質変動が大きくなるため、フォーカス機能の必要性はより高くなる。
【0003】
あらゆる被写体距離にフォーカスさせる従来技術としては、例えば特許文献1に示されるような被写体距離に応じてレンズ群の配置を変化させるオートフォーカス技術がある。しかし、オートフォーカス機能を持たせるためには、複数枚のレンズを用い、かつそれらの位置を相互に変化させる必要があるため、装置が大型化、複雑化し、かつコストも増大するという問題がある。
【0004】
また、特許文献2や特許文献3に示されるように、電圧によりレンズの曲率半径を変化させる液体レンズ(エレクトロウェッティングレンズ)や液晶レンズを用いる方法もあるが、それらのレンズは消費電力が大きく、また流動体であってかつ可動であるため、耐久性、耐環境性に劣るという問題がある。
【0005】
さらに他の従来技術としては、特許文献4に示されるように、合焦距離の異なる複数のレンズセットからなるレンズアレイを用い、取得される複眼像の中から所定位置の画素を選択して取り出して、それらの画素から単一像を再構成することにより複数の被写体距離に焦点のあった画像を得る方法がある。しかし、ここでは、レンズアレイの各レンズのバックフォーカスを規定しないため、それぞれのレンズの撮像距離、並びに光学倍率が異なり、各々のレンズで得られる像の大きさが変わってくる。そのため、取得した複眼像から焦点の合った個眼像や画素を抽出する処理や焦点の合った像の取得後の取り扱いが複雑になるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、可動部や複雑な装置構成を必要とせず、また耐久性、耐環境性に優れ、複雑な処理や像の取り扱いを要さないで、異なる任意の被写体距離に対してフォーカスの合った画像を取得することができる、薄型、小型で低コストの撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、被写体に対向する位置に設けられた、複数のレンズがアレイ配列されてなるレンズアレイと、前記レンズアレイの像面側に設けられた、前記複数のレンズのそれぞれにより略結像される前記被写体の縮小像(個眼像)の集合である複眼像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子により撮像された複眼像を処理する演算器とからなる撮像装置において、前記レンズアレイを構成する複数のレンズが、各々異なる曲率半径と略等しいバックフォーカスを有し、前記演算器は、前記レンズアレイの複数のレンズを通して前記撮像素子により撮像される複眼像から所定の合焦画像を選択抽出することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の撮像装置において、レンズアレイを構成する複数のレンズは略等しいレンズサグからなり、該レンズアレイを構成する複数のレンズの有効径を略等しくするために、該レンズアレイの一方の面に、各レンズに対向して略等しい円形の開口部を設けた開口アレイを更に有することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2記載の撮像装置において、レンズアレイの一部に突起部を設け、該突起部を介して開口アレイとレンズアレイを接着して、前記開口アレイのレンズ光軸方向の位置を規定していることを特徴する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置において、演算器は、複眼像を複数の個眼像に分離する画像キャプチャ手段と、前記複数の個眼像から所定の合焦画像を選択抽出する合焦画像選択抽出手段とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、複数の個眼像の中から最も焦点の合った個眼像を選択して合焦画像とすることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、各個眼像について画素の輝度の最高値と最低値を検出して、その差(輝度差)が最大となる個眼像を選択して合焦画像とすることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項4記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、複数の個眼像から、対応する画素ごとに最も焦点の合った画素を抽出し、これら画素を合成して合焦画像とすることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、各個眼像の中で、共通する視域をもつ画素の輝度が極値となる画素を抽出し、該画素を合成して合焦画像とすることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、各個眼像の当該画素の輝度変化の近似曲線を求め、該近似曲線の極値となる値を合焦の画素輝度とすることを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項8または9記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、各個眼像間の視差を検出し、該視差に基づいて対応する画素の位置を補正した後、極値検出を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明は、請求項10記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、各個眼像について仮の極値検出を行って合焦に近い複数の個眼像を検出し、該複数の個眼像を用いて視差検出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の撮像装置によれば、可動部や複雑な装置構成を必要とせずに、また、複雑な処理や像の取扱を必要とせずに、異なる任意の被写体距離に対して焦点の合った画像を取得することが可能になる。
なお、本発明の撮像装置特有の種々の作用効果は、後述の実施形態の説明で更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の撮像装置の一実施形態の全体構成図である。
【図2】図1のレンズアレイ面を示す図である。
【図3】本発明の撮像装置のレイアウト図である。
【図4】レンズアレイを構成する一部のレンズセット(レンズ)のレンズパラメータを比較する図である。
【図5】図1の撮像装置のレンズアレイを構成する各レンズセットのスルーフォーカスMTF特性を示す図である。
【図6】レンズの曲率半径を変化させたときのレンズサグの変化及びレンズの有効径の変化を説明する図である。
【図7】図1の撮像装置のレンズアレイを通して取得される複眼像の一例を示す図である。
【図8】合焦画像を選択抽出する実施例1の処理フローチャートである。
【図9】合焦画像を選択抽出する実施例2の個眼像を変えたときの対応点画素での画素輝度の変化を説明する図である。
【図10】合焦画像を選択抽出する実施例2の処理フローチャートである。
【図11】合焦画像を選択抽出する実施例3の処理フローチャートである。
【図12】合焦画像を選択抽出する実施例4の処理フローチャートである。
【図13】本発明の撮像装置の別の実施形態の全体構成図である。
【図14】図13のレンズアレイ面を示す図である。
【図15】図13の撮像装置のレンズアレイを構成する各レンズセットのスルーフォーカスMTF特性を示す図である。
【図16】図13の撮像装置のレンズアレイを通して取得される複眼像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1、図2に、本発明の撮像装置の一実施形態の全体構成図を示す。図1は、矢印方向に被写体があるものとし、被写体を撮像する撮像ユニットの構成の断面模式図、及び、撮像された複眼像より合焦画像を選択抽出する演算器を示したものである。図2は、図1における撮像ユニットを被写体方向から観察したときの模式図であり、図1と図2で共通する部品には共通する番号が付されている。
【0022】
図1において、1はレンズアレイである。レンズアレイ1は被写体側の面と像面側の面の二面からなり、面内に複数のレンズがアレイ状に配列されている。図1では、被写体側、像側の両方の面にレンズ面が設けられた両面レンズアレイが示されている。1aは被写体側の面に設けられたレンズ、1bは像側の面に設けられたレンズであり、1aと1bがセット(以下、レンズセット)になって被写体の像を像面上で結像させる。図2に示すように、本実施形態では、レンズアレイ1は6つのレンズアレイセット111,121,131,141,151,161から構成されている。
【0023】
2は、レンズアレイ1における隣接するレンズセット間での光線のクロストーク(混線)を防止するための遮光用の隔壁(以下、遮光壁)であり、金属や樹脂等の撮像光線に対して不透明な材料からなる。遮光壁2は、図2に示したように、レンズアレイ1の各レンズセットに対応して矩形の孔があけられており、孔と孔の間の壁が混線防止のための隔壁として作用する。遮光壁2は、レンズアレイ1の像側の面の平面部に接着されている。3は、板状部材に、各レンズセットに対応して略等しい直径の円形の孔(開口部)3aを設けた開口アレイであり、レンズの絞りとして作用する。開口アレイ3は、レンズアレイ1の被写体側の面の平面部の4隅に設けられた突起部1cを介してレンズアレイ1に接着されている。4は、レンズアレイ1における各レンズセット11〜161により撮影される被写体の像を撮像するCMOSセンサなどの撮像素子であり、基板5の上に実装されている。図1の例では、エイリアジング防止のための光学的ローパスフィルタやセンサ保護用のカバーガラスを設けていないが、必要に応じて設けても良い。6は筐体であり、レンズアレイ1の被写体側の面と接着して、レンズアレイ1を、遮光壁2、開口アレイ3も含めて保持し、さらに基板5を接着して固定している。
【0024】
10は、撮像素子4で撮像される画像(複眼像)を入力して合焦画像を選択抽出するための演算器であり、画像キャプチャ部11と合焦画像選択抽出部12からなる。
【0025】
図3に、本撮像装置のレイアウト図を示す。図3(a)は、基板20上に、光学系21とイメージセンサ(CMOSセンサ)22からなる撮像ユニット23、及び、コントローラ24とメモリ25からなる処理ユニット26が形成されていることを示している。図3(b)は、撮像ユニット23と処理ユニット26を分解して示したものである。ここで、撮像ユニット23は、図1、図2に示した構成を有する。処理ユニット26のコントローラ24に図1の演算器10が含まれる。メモリ25は画像データや処理途中の種々のデータ等を保持するためのものである。なお、図3の基板20は、図1の基板5と同じものである。基板20の全体の大きさは、例えば20mm×15mm程度である。
【0026】
図1、図2に戻り、まず、レンズアレイ1の作用について説明する。レンズアレイ1を構成する各レンズセット111〜161は、レンズ面が異なる曲率半径を有しており、相互に異なる被写体距離に焦点を合わせるように曲率半径が設定されている。
【0027】
ここで、レンズアレイを構成するすべてのレンズアレイ(レンズ)が略等しい焦点距離、あるいはバックフォーカスを有し,かつ各レンズでフォーカスする被写体距離が異なる作用について説明する。
【0028】
図4はレンズアレイを構成する一つのレンズによる結像を支配するレンズパラメータの一部を示したもので、図4の左側が被写体側、右側が像側である。レンズは被写体側の面と像側の面の二つの曲面から構成されている。Fはレンズの焦点距離であり、BFは像側レンズ面から像面までの距離、すなわちバックフォーカスで、Bは像側主平面から像面までの距離、すなわち像距離である。また、図4では、レンズアレイを構成する各レンズで、略等しい焦点距離及びバックフォーカスを有し、フォーカスする被写体距離が異なる2種類のものが、(a)と(b)に分けて示してある。
レンズの近軸結像式は次式で表される。Fは焦点距離、Aは被写体距離、Bは像距離である。
【0029】
【数1】
【0030】
図4(a)のレンズ11が、同(b)のレンズ12に対して、より遠方の被写体にフォーカスするようにするには(すなわち、A1>A2)、Fはレンズ11とレンズ12で等しいため,B1<B2となるように各レンズ面の曲率半径を設計する。すなわち、レンズ11の主平面位置が、レンズ12の主平面位置より被写体側にくるようにレンズの曲率半径を決めることにより、各レンズが略等しい焦点距離、あるいはバックフォーカスを有し、かつ各レンズでフォーカスする被写体距離が異なるという作用を得ることができる。
【0031】
図5に、レンズアレイ1を構成する各レンズセット111〜161によるスルーフォーカスMTFの例を示す。aからfは各レンズセット111〜161に対応するスルーフォーカスMTFを表しており、各レンズセット111〜161で焦点の合う被写体距離が異なるため、MTFがピークとなる被写体距離もそれぞれ異なっている。被写体距離が数mmオーダーで短くなると被写界深度は非常に浅くなり(図5ではa)、わずかの焦点ずれで大きくMTF(コントラスト)が低下し、像がぼける。被写体距離が遠くなるにつれ被写界深度は深くなっていき、fでは一定距離以上は無限遠まで像がぼけない。
【0032】
図5のように、被写体距離に伴い、一定のコントラストレベルでスルーフォーカスMTFが交差するようにレンズアレイの各レンズを設計し、被写体距離に応じて適したMTFを有するレンズによる個眼像や画素を選択することにより、数mmオーダーの至近距離から無限遠方まで、被写体に焦点を合わせることができる。
【0033】
このような、曲率半径の設定に加えて、各レンズセット111〜161のバックフォーカスは、全てのレンズセットで略等しくなるように設計されている。バックフォーカスは、像側のレンズ1bの頂点から像面までの距離を表わしている。全てのレンズセットでバックフォーカスを等しくすることにより、各レンズセットによる光学倍率は被写体距離のみによっておよそ規定されるため、各レンズセットによる像の合焦(ボケ)のレベルは相互で異なっても像のサイズは一定となる。したがって、後述するように取得した複眼像の中から焦点の合った個眼像のみを選択抽出したり、焦点の合った画素のみを抽出して合焦画像を合成したりする際に、各レンズセットによる像サイズの相違を考慮しないですむ。また取得後の像を用いてなんらかの情報認識をする場合においても像サイズの相違の考慮は不要となる。
【0034】
図6(a)から(c)に、レンズのバックフォーカスを略一定にしたままレンズの曲率を変えたときのレンズサグとレンズ有効径の変化の様子を示す。図6(a)の状態からレンズ1a面、1b面の曲率を変えた場合、レンズの有効径を不変とした場合は、図6(b)のようにレンズのサグを変える必要が生じる。するとレンズ間にサグの相違に基づく高低差を設ける等、レンズアレイの形状が複雑になる。一方で、レンズのサグを不変とした場合は、図6(c)に示したようにレンズの有効径を変える必要が生じる。すると各レンズでレンズの有効径に起因する光学特性、たとえばレンズのカットオフ周波数や明るさが変わるため、画像と取得後にそれらの条件を合わせる調整が必要となり、取り扱いが複雑になる。
【0035】
図1、図2の構成では、レンズのサグを一定にしたまま曲率半径を変え、略等しい径の開口部3aを有する開口アレイ3をレンズアレイ1の被写体側に設けることにより、各レンズの有効径が略一定となるようにしている。それにより、レンズアレイ1の各レンズの有効径を略一定にできるため、レンズ有効径の相違に起因した不具合が排除される。なお、各レンズの曲率半径が異なるため、レンズアレイ1の各レンズと開口アレイ3とは、レンズによっては接触する位置が異なってくるが、図1に示すように、レンズアレイ1の平面部に設けた突起部1cを介して、レンズアレイ1と開口アレイ3を接触させることにより、開口アレイ3が傾いてレンズアレイ1と接触される等の不具合を取り除いている。
【0036】
図2のように、操作ユニットを被写体方向から観察すると、各レンズセット111〜161において実線で示された円は開口部(有効径)3aを表し、その直径は一定である。破線で示された円は、無効領域(有効径外のレンズ部)も含めた被写体側のレンズ1aの直径を表し、点線で示された円は、撮像側のレンズ1bの直径を表す。各レンズで曲率半径が異なり、かつレンズのサグが一定になるようにしているため、破線、点線で示された円の直径はレンズごとで相違している。
【0037】
次に、図1、図2の撮像装置により取得される画像について説明する。本実施形態では、撮像素子4(CMOSセンサ)による像は、図7に示したような複眼像8になる。図7のI1からI6は、レンズアレイ1の各レンズセット111〜161に対応する個眼像であり、レンズセット数が6であるため、複眼像8の個眼像数も6である。図7で各個眼像の周辺で黒くなっている領域は、遮光壁2により影となっている領域である。各レンズセット111〜161でバックフォーカスは略等しく、それぞれのレンズセットで撮像距離及び光学倍率は略等しくなるため、各個眼像I1〜I6における像のサイズは一定である。一方で、各レンズセットで焦点の合う被写体距離は、レンズの曲率半径により異なるため、個眼像の合焦状態は相互で異なっている。図7の場合、個眼像I5で像の焦点が合っていることを示している。
【0038】
次に、図1の演算器10の動作について説明する。撮像素子4で取得された図7のような複眼像8は、画像キャプチャ部11でキャプチャされ、I1〜I6の個眼像データ(以下、単に個眼像)に分けられて、合焦画像選択抽出部12に転送される。合焦画像選択抽出部12は、個眼像I1〜I6を入力して画像処理し、所定の合焦画像を選択抽出して出力する。これには、個眼像I1〜I6の中から最も焦点の合った個眼像を選択して合焦画像とする方法や、個眼像I1〜I6から、対応する画素ごとに最も焦点の合った画素を抽出し、これら画素を合成して合焦画像として出力する方法などが考えられる。
【0039】
以下に、複数の個眼像から合焦画像を取得する方法のいくつかの具体的実施例について詳述する。
<実施例1>
これは、複数の個眼像の中で画素の輝度差が最大となる個眼像を合焦画像とするものである。焦点が合うと像のコントラストが最大となるため、個眼像内で最も高い輝度を有する画素と最も低い輝度を有する画素で輝度の差が最大となる。これを利用して、各個眼像を構成する画素の輝度値の最高値と最低値を検出して、その輝度差が最も大きい個眼像を選択抽出して合焦画像とする。図7においては、個画像I5が合焦画像として選択抽出される。
【0040】
図8に、実施例1の処理フローチャートを示す。画像キャプチャ部11は、撮像素子4で取得された図7に示すような複眼像8をキャプチャし、I1〜I6の個眼像に分離する(ステップ201)。分離された各個眼像I1〜I6は、合焦画像選択抽出部12に送られる。合焦画像選択抽出部12は、個眼像I1〜I6の中で最も焦点の合ったものを画像処理により選択抽出する。具体的には、まず、一つの個眼像を選択し(ステップ202)、該個眼像を構成する全画素の中の輝度値の最高値と最低値を検出し(ステップ203)、その差(輝度差)を計算する(ステップ204)。以下、ステップ202〜204を各個眼像について繰り返す(ステップ205)。そして、各個眼像の輝度差を比較して(ステップ206)、最大輝度差を有する個眼像(図7ではI5)を、最も焦点の合った個眼像として選択抽出し、合焦画像とする(ステップ207)。
【0041】
本実施例によれば、複数の個眼像から最も焦点の合った個眼像を選択して合焦画像とすることで、簡易な処理で合焦画像を取得することができる。
【0042】
<実施例2>
これは、各個眼像の中で、共通する視域を持つ画素の輝度が極値(極大値あるいは極小値)となる画素を抽出し、当該画素を合成して合焦画像とするものである。
【0043】
各個眼像で同一の被写体を撮像する画素(対応点)があるため、個眼像を変えながら対応点の画素輝度を抽出すると、その画素における被写体の合焦状態に応じて輝度値が変化する。例えば、図7の9で示した画素(被写体の目の部分)について、個眼像I1からI6の輝度を抽出する。焦点が合うと、暗い部分はより暗く、明るい部分はより明るくなる。したがって、各個眼像の輝度変化の極値(暗い被写体のときは極小値、明るい被写体のときは極大値)となる輝度を取り出せば、最も合焦に近い輝度を検出することができる。この処理を、各個眼像を構成する全画素について繰返し、各個眼像の中の輝度画素が極値を示す画素を抽出して合成することにより、合焦画像を取得することができる。
【0044】
図9に、図7の9で示した画素(対応点)における各個眼像I1〜I6の輝度変化の例を示す。この例では、I5が極大値を示し、画素9では、I5を採用すればよいことが分かる。なお、図9における離散的な6つの輝度値から極値となる輝度値を採用して合焦の画素輝度としてもよいが、図9の変化の近似曲線を求め、近似曲線の極値となる値を合焦の画素輝度とすれば、より精度よく合焦画像を取得できる。
【0045】
図10に、実施例2の処理フローチャートを示す。画像キャプチャ部11は、撮像素子4で取得された図7に示すような複眼像8をキャプチャし、I1〜I6の各個眼像に分離する(ステップ301)。分離された各個眼像I1〜I6は、合焦画像選択抽出部12に送られる。
【0046】
合焦画像選択抽出部12では、まず、各個眼像I1〜I6における一つの対応点(画素)を選択する(ステップ302)。次に、各個眼像I1〜I6について、選択した対応点の画素輝度を抽出し(ステップ303)、その輝度変化の極値(極大値あるいは極小値)を検出する(ステップ304)。以下、ステップ302〜304を各対応点(画素)について繰り返す(ステップ305)。そして、全画素について、検出された極値に対応する個眼像の画素を合成し(ステップ306)、合焦画像とする(ステップ307)。
【0047】
本実施例によれば、複数の個眼像から、対応する画素ごとに最も焦点の合った画素を抽出し、これら画素を合成して合焦画像とすることで、より正確に合焦画像を抽出することができる。
【0048】
<実施例3>
これは、実施例2を発展させたものである。各レンズにより被写体を観察する方向が、レンズアレイにおけるレンズピッチに応じて変わるため、各個眼像は視差を有し、また被写体距離によって視差は変化する。被写体が遠方にあると、視差は小さくなるため無視しても影響は小さい。しかし、被写体が近いと、生じる視差が大きくなるため、極値検出において異なる画素を参照することになり正確に輝度の極値を求められなくなる。したがって、その場合は視差を考慮して対応点を補正しながら極値検出処理を実行することが望ましい。すなわち、個眼像間での被写体の視差を、例えば個眼像内の微小領域ごとに相互相関演算により検出し、各個眼像で対応点の位置を検知したのち、当該位置を補正しながら極値検出を行う。視差検出においては2つの個眼像、例えばI5とI6の微小領域の対応点探索により、対応位置とその位置での視差を求める。レンズピッチは設計上一定であるため、一組の個眼像間(例えばI5とI6)での視差を求めれば、他の個眼像(例えばI1からI4)の対応位置とその位置での視差は算出でき、視差から対応点の位置を算出できる。そのようにして各個眼像において対応点の画素を求めてから、前述の輝度の極値を求めると、より正確な合焦画像を取得することができる。
【0049】
図11に、実施例3の処理フローチャートを示す。画像キャプチャ部11は、撮像素子4で取得された図7に示すような複眼像8をキャプチャし、I1〜I6の各個眼像に分離す(ステップ401)。分離された各個眼像I1〜I6は合焦画像選択抽出部12に送られる。
【0050】
合焦画像選択抽出部12では、まず、任意の二つの個眼像(例えばI5とI6)を選択する(ステップ402)。次に、該選択した二つの個眼像の間で対応点を探索する(ステップ403)。具体的には、例えば、I5から小領域を切り出し、それに対応する領域を探索するため、I6から小領域を切り出し、I5の小領域の位置を基準に、I6の小領域を所定の範囲内で移動させて、それぞれの位置でSAD(輝度差の総和)やSSD(輝度差の2乗和)の最小値を与える位置を探索することで、対応位置とその位置での視差を求める。そして、これを画素単位に繰り返す。視差計算法は周知・公知であるので省略する。なお、SADやSSDを演算するために用いるデータは輝度ではなく、輝度を微分した値を用いることも可能である。次に、この一組の個眼像間(例えばI5とI6)での視差を基に、他の個眼像(例えばI1〜I4)の対応位置とその位置での視差を算出し、該視差から対応点の位置を算出する(ステップ404)。具体的には、視差だけずれた位置が対応点となる。その後の処理(ステップ405〜410)は、図10と同様であるので省略する。
【0051】
本実施例によれば、各個眼像間での視差を検出して、各個眼像における対応点の画素を求めてから、輝度の極値を求めることで、更に正確に合焦画像を抽出することができる。
【0052】
<実施例4>
これは、実施例3を更に発展させたものである。視差検出による対応点探索においては、できるだけ距離の離れた二つの個眼像を用いると、より正確に対応点を求められる。一方で、合焦状態に近い二つの個眼像を用いる方が視差検出の正確性が増す。そこで、本実施例では、実施例3のように任意の二つの個眼像を選択する代わりに、まず、合焦状態に近い二つの個眼像を検出し、この検出された二つの個眼像について視差検出による対応点探索を行った後、あらためて極値検出を実行して合焦画像を得る。ここで、合焦状態に近い個眼像の検出には、実施例2の極値検出を利用して極値を多く含む二つの個眼像を選択し、合焦状態に近い個眼像とする。
【0053】
図12に、実施例4の処理フローチャートを示す。画像キャプチャ部11は、撮像素子4で取得された図7に示すような複眼像8をキャプチャし、I1〜I6の各個眼像に分離する(ステップ501)。分離された各個眼像I1〜I6は合焦画像選択抽出部12に送られる。
【0054】
合焦画像選択抽出部12では、まず、各個眼像I1〜I6の各画素での仮の極値検出を実行する(ステップ502,503)。すなわち、視差検出による補正前の仮の各対応点について極値を検出する。極値検出は、図10のステップ302〜305と同様である。次に、各個眼像の極値の発生頻度を表わすヒストグラムを生成し(ステップ504)、極値の発生頻度が多い二つの個眼像、すなわち、極値を多く含む二つの個眼像を選択する(ステップ505)。その後の処理のうち、ステップ506,507は、図11のステップ403,404と同様であり、ステップ508〜513は図11のステップ405〜410(図10のステップ302〜307)と同様であるので、説明を省略する。
【0055】
本実施例によれば、視差検出による対応点探索において、合焦状態に近い二つの個眼像を利用することで、正確性を増すことができる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、もちろん、本発明は、これまで説明したものに限定されるものではない。例えば、図1、図2では、レンズアレイは各々異なる曲率半径と略等しいバックフォーカスを有する6つのレンズセットで構成されるとしたが、レンズセットの数は6つに限られるものではない。
【0057】
図13、図14に、本発明の撮像装置の他の実施形態の全体構成図を示す。これは、レンズアレイを簡単に2つのレンズセットで構成したものである。図13、図14において、図1、図2と共通する部品には共通する番号が付されている。
【0058】
図1、図2と同様に、レンズアレイ1を構成する2つのレンズセット171,181は、各々レンズ面が異なる曲率半径を有しており、相互に異なる被写体距離に焦点を合わせるように曲率半径が設定されている。図15に、2つのレンズセット171,181のスルーフォーカスMTFの例を示す。ここで、aはレンズセット171に対応するスルーフォーカスMTF、bはレンズセット171に対応するスルーフォーカスMTFを表わしており、レンズセット171,181で焦点の合う被写体距離が異なるため、MTFがピークとなる被写体距離がそれぞれ異なっている。図15のように、被写体距離に伴い、所定のコントラストレベルでスルーフォーカスMTFが交差するようにレンズセット171,181を設計し、被写体距離に応じて適したMTFを有するレンズによる個眼像や画素を選択することにより、近距離から無限遠方まで、被写体に焦点を合わせることができる。
【0059】
また、ここでも、2つのレンズセット171,181のバックフォーカスは略等しくなるように設計されている。それにより、レンズセット171,181による光学倍率は被写体距離のみによっておよそ規定されるため、レンズセット171,181による像の合焦(ボケ)のレベルは相互で異なっても像のサイズは一定となる。
【0060】
図16に、図13、図14の撮像ユニットにより取得される画像の例を示す。ここでは、複眼像8は、I1とI2の2つの個眼像からなり、I1はレンズセット171に対応する個眼像、I2はレンズセット181に対応する個眼像である。レンズセット171,181でバックフォーカスは略等しく、それぞれのレンズセットで撮像距離及び光学倍率は略等しくなるため、各個眼像I1,I2における像のサイズは一定である。一方、レンズセット171,181で焦点の合う被写体距離は、レンズの曲率半径により異なるため、個眼像の合焦状態は相互で異なっている。図16の場合、個眼像I2で像の焦点が合っていることを示している。
【0061】
演算器10の動作は、図1,図2の実施形態の場合と基本的に同様であるが、個眼像が2つだけであるため、特に図9の実施例1に適している。処理は、個眼像が2つだけであるため、極めて簡単である。
【符号の説明】
【0062】
1 レンズアレイ
1a,1b レンズセット
2 遮光壁
3 開口アレイ
3a 開口部
4 撮像素子
5 基板
6 筐体
10 演算器
11 画像キャプチャ部
12 合焦画像選択抽出部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2005−165058号公報
【特許文献2】特開2006−251613号公報
【特許文献3】特開2008−521043号公報
【特許文献4】特開2007−158825号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイと撮像素子からなる撮像装置に係り、詳しくは、薄型、小型で可動部を有さずにオートフォーカス機能を実現する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置は、携帯機器、車載機器、医療機器や産業機器等における情報取得手段として有用であり、その薄型、小型化は場所を選ばない装置の設置を可能とするために、非常に重要である。また正確な情報取得のためには、焦点の合った画像を得ることが必須である。あらゆる被写体距離で焦点の合った画像を得るには、レンズを所定の被写体距離にフォーカスさせる必要があり、特に被写体距離が短い接写の場合には、被写界深度が浅く、被写体距離の変化による画質変動が大きくなるため、フォーカス機能の必要性はより高くなる。
【0003】
あらゆる被写体距離にフォーカスさせる従来技術としては、例えば特許文献1に示されるような被写体距離に応じてレンズ群の配置を変化させるオートフォーカス技術がある。しかし、オートフォーカス機能を持たせるためには、複数枚のレンズを用い、かつそれらの位置を相互に変化させる必要があるため、装置が大型化、複雑化し、かつコストも増大するという問題がある。
【0004】
また、特許文献2や特許文献3に示されるように、電圧によりレンズの曲率半径を変化させる液体レンズ(エレクトロウェッティングレンズ)や液晶レンズを用いる方法もあるが、それらのレンズは消費電力が大きく、また流動体であってかつ可動であるため、耐久性、耐環境性に劣るという問題がある。
【0005】
さらに他の従来技術としては、特許文献4に示されるように、合焦距離の異なる複数のレンズセットからなるレンズアレイを用い、取得される複眼像の中から所定位置の画素を選択して取り出して、それらの画素から単一像を再構成することにより複数の被写体距離に焦点のあった画像を得る方法がある。しかし、ここでは、レンズアレイの各レンズのバックフォーカスを規定しないため、それぞれのレンズの撮像距離、並びに光学倍率が異なり、各々のレンズで得られる像の大きさが変わってくる。そのため、取得した複眼像から焦点の合った個眼像や画素を抽出する処理や焦点の合った像の取得後の取り扱いが複雑になるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、可動部や複雑な装置構成を必要とせず、また耐久性、耐環境性に優れ、複雑な処理や像の取り扱いを要さないで、異なる任意の被写体距離に対してフォーカスの合った画像を取得することができる、薄型、小型で低コストの撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、被写体に対向する位置に設けられた、複数のレンズがアレイ配列されてなるレンズアレイと、前記レンズアレイの像面側に設けられた、前記複数のレンズのそれぞれにより略結像される前記被写体の縮小像(個眼像)の集合である複眼像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子により撮像された複眼像を処理する演算器とからなる撮像装置において、前記レンズアレイを構成する複数のレンズが、各々異なる曲率半径と略等しいバックフォーカスを有し、前記演算器は、前記レンズアレイの複数のレンズを通して前記撮像素子により撮像される複眼像から所定の合焦画像を選択抽出することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の撮像装置において、レンズアレイを構成する複数のレンズは略等しいレンズサグからなり、該レンズアレイを構成する複数のレンズの有効径を略等しくするために、該レンズアレイの一方の面に、各レンズに対向して略等しい円形の開口部を設けた開口アレイを更に有することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2記載の撮像装置において、レンズアレイの一部に突起部を設け、該突起部を介して開口アレイとレンズアレイを接着して、前記開口アレイのレンズ光軸方向の位置を規定していることを特徴する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置において、演算器は、複眼像を複数の個眼像に分離する画像キャプチャ手段と、前記複数の個眼像から所定の合焦画像を選択抽出する合焦画像選択抽出手段とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、複数の個眼像の中から最も焦点の合った個眼像を選択して合焦画像とすることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、各個眼像について画素の輝度の最高値と最低値を検出して、その差(輝度差)が最大となる個眼像を選択して合焦画像とすることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項4記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、複数の個眼像から、対応する画素ごとに最も焦点の合った画素を抽出し、これら画素を合成して合焦画像とすることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、各個眼像の中で、共通する視域をもつ画素の輝度が極値となる画素を抽出し、該画素を合成して合焦画像とすることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、各個眼像の当該画素の輝度変化の近似曲線を求め、該近似曲線の極値となる値を合焦の画素輝度とすることを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項8または9記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、各個眼像間の視差を検出し、該視差に基づいて対応する画素の位置を補正した後、極値検出を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明は、請求項10記載の撮像装置において、合焦画像選択抽出手段は、各個眼像について仮の極値検出を行って合焦に近い複数の個眼像を検出し、該複数の個眼像を用いて視差検出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の撮像装置によれば、可動部や複雑な装置構成を必要とせずに、また、複雑な処理や像の取扱を必要とせずに、異なる任意の被写体距離に対して焦点の合った画像を取得することが可能になる。
なお、本発明の撮像装置特有の種々の作用効果は、後述の実施形態の説明で更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の撮像装置の一実施形態の全体構成図である。
【図2】図1のレンズアレイ面を示す図である。
【図3】本発明の撮像装置のレイアウト図である。
【図4】レンズアレイを構成する一部のレンズセット(レンズ)のレンズパラメータを比較する図である。
【図5】図1の撮像装置のレンズアレイを構成する各レンズセットのスルーフォーカスMTF特性を示す図である。
【図6】レンズの曲率半径を変化させたときのレンズサグの変化及びレンズの有効径の変化を説明する図である。
【図7】図1の撮像装置のレンズアレイを通して取得される複眼像の一例を示す図である。
【図8】合焦画像を選択抽出する実施例1の処理フローチャートである。
【図9】合焦画像を選択抽出する実施例2の個眼像を変えたときの対応点画素での画素輝度の変化を説明する図である。
【図10】合焦画像を選択抽出する実施例2の処理フローチャートである。
【図11】合焦画像を選択抽出する実施例3の処理フローチャートである。
【図12】合焦画像を選択抽出する実施例4の処理フローチャートである。
【図13】本発明の撮像装置の別の実施形態の全体構成図である。
【図14】図13のレンズアレイ面を示す図である。
【図15】図13の撮像装置のレンズアレイを構成する各レンズセットのスルーフォーカスMTF特性を示す図である。
【図16】図13の撮像装置のレンズアレイを通して取得される複眼像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1、図2に、本発明の撮像装置の一実施形態の全体構成図を示す。図1は、矢印方向に被写体があるものとし、被写体を撮像する撮像ユニットの構成の断面模式図、及び、撮像された複眼像より合焦画像を選択抽出する演算器を示したものである。図2は、図1における撮像ユニットを被写体方向から観察したときの模式図であり、図1と図2で共通する部品には共通する番号が付されている。
【0022】
図1において、1はレンズアレイである。レンズアレイ1は被写体側の面と像面側の面の二面からなり、面内に複数のレンズがアレイ状に配列されている。図1では、被写体側、像側の両方の面にレンズ面が設けられた両面レンズアレイが示されている。1aは被写体側の面に設けられたレンズ、1bは像側の面に設けられたレンズであり、1aと1bがセット(以下、レンズセット)になって被写体の像を像面上で結像させる。図2に示すように、本実施形態では、レンズアレイ1は6つのレンズアレイセット111,121,131,141,151,161から構成されている。
【0023】
2は、レンズアレイ1における隣接するレンズセット間での光線のクロストーク(混線)を防止するための遮光用の隔壁(以下、遮光壁)であり、金属や樹脂等の撮像光線に対して不透明な材料からなる。遮光壁2は、図2に示したように、レンズアレイ1の各レンズセットに対応して矩形の孔があけられており、孔と孔の間の壁が混線防止のための隔壁として作用する。遮光壁2は、レンズアレイ1の像側の面の平面部に接着されている。3は、板状部材に、各レンズセットに対応して略等しい直径の円形の孔(開口部)3aを設けた開口アレイであり、レンズの絞りとして作用する。開口アレイ3は、レンズアレイ1の被写体側の面の平面部の4隅に設けられた突起部1cを介してレンズアレイ1に接着されている。4は、レンズアレイ1における各レンズセット11〜161により撮影される被写体の像を撮像するCMOSセンサなどの撮像素子であり、基板5の上に実装されている。図1の例では、エイリアジング防止のための光学的ローパスフィルタやセンサ保護用のカバーガラスを設けていないが、必要に応じて設けても良い。6は筐体であり、レンズアレイ1の被写体側の面と接着して、レンズアレイ1を、遮光壁2、開口アレイ3も含めて保持し、さらに基板5を接着して固定している。
【0024】
10は、撮像素子4で撮像される画像(複眼像)を入力して合焦画像を選択抽出するための演算器であり、画像キャプチャ部11と合焦画像選択抽出部12からなる。
【0025】
図3に、本撮像装置のレイアウト図を示す。図3(a)は、基板20上に、光学系21とイメージセンサ(CMOSセンサ)22からなる撮像ユニット23、及び、コントローラ24とメモリ25からなる処理ユニット26が形成されていることを示している。図3(b)は、撮像ユニット23と処理ユニット26を分解して示したものである。ここで、撮像ユニット23は、図1、図2に示した構成を有する。処理ユニット26のコントローラ24に図1の演算器10が含まれる。メモリ25は画像データや処理途中の種々のデータ等を保持するためのものである。なお、図3の基板20は、図1の基板5と同じものである。基板20の全体の大きさは、例えば20mm×15mm程度である。
【0026】
図1、図2に戻り、まず、レンズアレイ1の作用について説明する。レンズアレイ1を構成する各レンズセット111〜161は、レンズ面が異なる曲率半径を有しており、相互に異なる被写体距離に焦点を合わせるように曲率半径が設定されている。
【0027】
ここで、レンズアレイを構成するすべてのレンズアレイ(レンズ)が略等しい焦点距離、あるいはバックフォーカスを有し,かつ各レンズでフォーカスする被写体距離が異なる作用について説明する。
【0028】
図4はレンズアレイを構成する一つのレンズによる結像を支配するレンズパラメータの一部を示したもので、図4の左側が被写体側、右側が像側である。レンズは被写体側の面と像側の面の二つの曲面から構成されている。Fはレンズの焦点距離であり、BFは像側レンズ面から像面までの距離、すなわちバックフォーカスで、Bは像側主平面から像面までの距離、すなわち像距離である。また、図4では、レンズアレイを構成する各レンズで、略等しい焦点距離及びバックフォーカスを有し、フォーカスする被写体距離が異なる2種類のものが、(a)と(b)に分けて示してある。
レンズの近軸結像式は次式で表される。Fは焦点距離、Aは被写体距離、Bは像距離である。
【0029】
【数1】
【0030】
図4(a)のレンズ11が、同(b)のレンズ12に対して、より遠方の被写体にフォーカスするようにするには(すなわち、A1>A2)、Fはレンズ11とレンズ12で等しいため,B1<B2となるように各レンズ面の曲率半径を設計する。すなわち、レンズ11の主平面位置が、レンズ12の主平面位置より被写体側にくるようにレンズの曲率半径を決めることにより、各レンズが略等しい焦点距離、あるいはバックフォーカスを有し、かつ各レンズでフォーカスする被写体距離が異なるという作用を得ることができる。
【0031】
図5に、レンズアレイ1を構成する各レンズセット111〜161によるスルーフォーカスMTFの例を示す。aからfは各レンズセット111〜161に対応するスルーフォーカスMTFを表しており、各レンズセット111〜161で焦点の合う被写体距離が異なるため、MTFがピークとなる被写体距離もそれぞれ異なっている。被写体距離が数mmオーダーで短くなると被写界深度は非常に浅くなり(図5ではa)、わずかの焦点ずれで大きくMTF(コントラスト)が低下し、像がぼける。被写体距離が遠くなるにつれ被写界深度は深くなっていき、fでは一定距離以上は無限遠まで像がぼけない。
【0032】
図5のように、被写体距離に伴い、一定のコントラストレベルでスルーフォーカスMTFが交差するようにレンズアレイの各レンズを設計し、被写体距離に応じて適したMTFを有するレンズによる個眼像や画素を選択することにより、数mmオーダーの至近距離から無限遠方まで、被写体に焦点を合わせることができる。
【0033】
このような、曲率半径の設定に加えて、各レンズセット111〜161のバックフォーカスは、全てのレンズセットで略等しくなるように設計されている。バックフォーカスは、像側のレンズ1bの頂点から像面までの距離を表わしている。全てのレンズセットでバックフォーカスを等しくすることにより、各レンズセットによる光学倍率は被写体距離のみによっておよそ規定されるため、各レンズセットによる像の合焦(ボケ)のレベルは相互で異なっても像のサイズは一定となる。したがって、後述するように取得した複眼像の中から焦点の合った個眼像のみを選択抽出したり、焦点の合った画素のみを抽出して合焦画像を合成したりする際に、各レンズセットによる像サイズの相違を考慮しないですむ。また取得後の像を用いてなんらかの情報認識をする場合においても像サイズの相違の考慮は不要となる。
【0034】
図6(a)から(c)に、レンズのバックフォーカスを略一定にしたままレンズの曲率を変えたときのレンズサグとレンズ有効径の変化の様子を示す。図6(a)の状態からレンズ1a面、1b面の曲率を変えた場合、レンズの有効径を不変とした場合は、図6(b)のようにレンズのサグを変える必要が生じる。するとレンズ間にサグの相違に基づく高低差を設ける等、レンズアレイの形状が複雑になる。一方で、レンズのサグを不変とした場合は、図6(c)に示したようにレンズの有効径を変える必要が生じる。すると各レンズでレンズの有効径に起因する光学特性、たとえばレンズのカットオフ周波数や明るさが変わるため、画像と取得後にそれらの条件を合わせる調整が必要となり、取り扱いが複雑になる。
【0035】
図1、図2の構成では、レンズのサグを一定にしたまま曲率半径を変え、略等しい径の開口部3aを有する開口アレイ3をレンズアレイ1の被写体側に設けることにより、各レンズの有効径が略一定となるようにしている。それにより、レンズアレイ1の各レンズの有効径を略一定にできるため、レンズ有効径の相違に起因した不具合が排除される。なお、各レンズの曲率半径が異なるため、レンズアレイ1の各レンズと開口アレイ3とは、レンズによっては接触する位置が異なってくるが、図1に示すように、レンズアレイ1の平面部に設けた突起部1cを介して、レンズアレイ1と開口アレイ3を接触させることにより、開口アレイ3が傾いてレンズアレイ1と接触される等の不具合を取り除いている。
【0036】
図2のように、操作ユニットを被写体方向から観察すると、各レンズセット111〜161において実線で示された円は開口部(有効径)3aを表し、その直径は一定である。破線で示された円は、無効領域(有効径外のレンズ部)も含めた被写体側のレンズ1aの直径を表し、点線で示された円は、撮像側のレンズ1bの直径を表す。各レンズで曲率半径が異なり、かつレンズのサグが一定になるようにしているため、破線、点線で示された円の直径はレンズごとで相違している。
【0037】
次に、図1、図2の撮像装置により取得される画像について説明する。本実施形態では、撮像素子4(CMOSセンサ)による像は、図7に示したような複眼像8になる。図7のI1からI6は、レンズアレイ1の各レンズセット111〜161に対応する個眼像であり、レンズセット数が6であるため、複眼像8の個眼像数も6である。図7で各個眼像の周辺で黒くなっている領域は、遮光壁2により影となっている領域である。各レンズセット111〜161でバックフォーカスは略等しく、それぞれのレンズセットで撮像距離及び光学倍率は略等しくなるため、各個眼像I1〜I6における像のサイズは一定である。一方で、各レンズセットで焦点の合う被写体距離は、レンズの曲率半径により異なるため、個眼像の合焦状態は相互で異なっている。図7の場合、個眼像I5で像の焦点が合っていることを示している。
【0038】
次に、図1の演算器10の動作について説明する。撮像素子4で取得された図7のような複眼像8は、画像キャプチャ部11でキャプチャされ、I1〜I6の個眼像データ(以下、単に個眼像)に分けられて、合焦画像選択抽出部12に転送される。合焦画像選択抽出部12は、個眼像I1〜I6を入力して画像処理し、所定の合焦画像を選択抽出して出力する。これには、個眼像I1〜I6の中から最も焦点の合った個眼像を選択して合焦画像とする方法や、個眼像I1〜I6から、対応する画素ごとに最も焦点の合った画素を抽出し、これら画素を合成して合焦画像として出力する方法などが考えられる。
【0039】
以下に、複数の個眼像から合焦画像を取得する方法のいくつかの具体的実施例について詳述する。
<実施例1>
これは、複数の個眼像の中で画素の輝度差が最大となる個眼像を合焦画像とするものである。焦点が合うと像のコントラストが最大となるため、個眼像内で最も高い輝度を有する画素と最も低い輝度を有する画素で輝度の差が最大となる。これを利用して、各個眼像を構成する画素の輝度値の最高値と最低値を検出して、その輝度差が最も大きい個眼像を選択抽出して合焦画像とする。図7においては、個画像I5が合焦画像として選択抽出される。
【0040】
図8に、実施例1の処理フローチャートを示す。画像キャプチャ部11は、撮像素子4で取得された図7に示すような複眼像8をキャプチャし、I1〜I6の個眼像に分離する(ステップ201)。分離された各個眼像I1〜I6は、合焦画像選択抽出部12に送られる。合焦画像選択抽出部12は、個眼像I1〜I6の中で最も焦点の合ったものを画像処理により選択抽出する。具体的には、まず、一つの個眼像を選択し(ステップ202)、該個眼像を構成する全画素の中の輝度値の最高値と最低値を検出し(ステップ203)、その差(輝度差)を計算する(ステップ204)。以下、ステップ202〜204を各個眼像について繰り返す(ステップ205)。そして、各個眼像の輝度差を比較して(ステップ206)、最大輝度差を有する個眼像(図7ではI5)を、最も焦点の合った個眼像として選択抽出し、合焦画像とする(ステップ207)。
【0041】
本実施例によれば、複数の個眼像から最も焦点の合った個眼像を選択して合焦画像とすることで、簡易な処理で合焦画像を取得することができる。
【0042】
<実施例2>
これは、各個眼像の中で、共通する視域を持つ画素の輝度が極値(極大値あるいは極小値)となる画素を抽出し、当該画素を合成して合焦画像とするものである。
【0043】
各個眼像で同一の被写体を撮像する画素(対応点)があるため、個眼像を変えながら対応点の画素輝度を抽出すると、その画素における被写体の合焦状態に応じて輝度値が変化する。例えば、図7の9で示した画素(被写体の目の部分)について、個眼像I1からI6の輝度を抽出する。焦点が合うと、暗い部分はより暗く、明るい部分はより明るくなる。したがって、各個眼像の輝度変化の極値(暗い被写体のときは極小値、明るい被写体のときは極大値)となる輝度を取り出せば、最も合焦に近い輝度を検出することができる。この処理を、各個眼像を構成する全画素について繰返し、各個眼像の中の輝度画素が極値を示す画素を抽出して合成することにより、合焦画像を取得することができる。
【0044】
図9に、図7の9で示した画素(対応点)における各個眼像I1〜I6の輝度変化の例を示す。この例では、I5が極大値を示し、画素9では、I5を採用すればよいことが分かる。なお、図9における離散的な6つの輝度値から極値となる輝度値を採用して合焦の画素輝度としてもよいが、図9の変化の近似曲線を求め、近似曲線の極値となる値を合焦の画素輝度とすれば、より精度よく合焦画像を取得できる。
【0045】
図10に、実施例2の処理フローチャートを示す。画像キャプチャ部11は、撮像素子4で取得された図7に示すような複眼像8をキャプチャし、I1〜I6の各個眼像に分離する(ステップ301)。分離された各個眼像I1〜I6は、合焦画像選択抽出部12に送られる。
【0046】
合焦画像選択抽出部12では、まず、各個眼像I1〜I6における一つの対応点(画素)を選択する(ステップ302)。次に、各個眼像I1〜I6について、選択した対応点の画素輝度を抽出し(ステップ303)、その輝度変化の極値(極大値あるいは極小値)を検出する(ステップ304)。以下、ステップ302〜304を各対応点(画素)について繰り返す(ステップ305)。そして、全画素について、検出された極値に対応する個眼像の画素を合成し(ステップ306)、合焦画像とする(ステップ307)。
【0047】
本実施例によれば、複数の個眼像から、対応する画素ごとに最も焦点の合った画素を抽出し、これら画素を合成して合焦画像とすることで、より正確に合焦画像を抽出することができる。
【0048】
<実施例3>
これは、実施例2を発展させたものである。各レンズにより被写体を観察する方向が、レンズアレイにおけるレンズピッチに応じて変わるため、各個眼像は視差を有し、また被写体距離によって視差は変化する。被写体が遠方にあると、視差は小さくなるため無視しても影響は小さい。しかし、被写体が近いと、生じる視差が大きくなるため、極値検出において異なる画素を参照することになり正確に輝度の極値を求められなくなる。したがって、その場合は視差を考慮して対応点を補正しながら極値検出処理を実行することが望ましい。すなわち、個眼像間での被写体の視差を、例えば個眼像内の微小領域ごとに相互相関演算により検出し、各個眼像で対応点の位置を検知したのち、当該位置を補正しながら極値検出を行う。視差検出においては2つの個眼像、例えばI5とI6の微小領域の対応点探索により、対応位置とその位置での視差を求める。レンズピッチは設計上一定であるため、一組の個眼像間(例えばI5とI6)での視差を求めれば、他の個眼像(例えばI1からI4)の対応位置とその位置での視差は算出でき、視差から対応点の位置を算出できる。そのようにして各個眼像において対応点の画素を求めてから、前述の輝度の極値を求めると、より正確な合焦画像を取得することができる。
【0049】
図11に、実施例3の処理フローチャートを示す。画像キャプチャ部11は、撮像素子4で取得された図7に示すような複眼像8をキャプチャし、I1〜I6の各個眼像に分離す(ステップ401)。分離された各個眼像I1〜I6は合焦画像選択抽出部12に送られる。
【0050】
合焦画像選択抽出部12では、まず、任意の二つの個眼像(例えばI5とI6)を選択する(ステップ402)。次に、該選択した二つの個眼像の間で対応点を探索する(ステップ403)。具体的には、例えば、I5から小領域を切り出し、それに対応する領域を探索するため、I6から小領域を切り出し、I5の小領域の位置を基準に、I6の小領域を所定の範囲内で移動させて、それぞれの位置でSAD(輝度差の総和)やSSD(輝度差の2乗和)の最小値を与える位置を探索することで、対応位置とその位置での視差を求める。そして、これを画素単位に繰り返す。視差計算法は周知・公知であるので省略する。なお、SADやSSDを演算するために用いるデータは輝度ではなく、輝度を微分した値を用いることも可能である。次に、この一組の個眼像間(例えばI5とI6)での視差を基に、他の個眼像(例えばI1〜I4)の対応位置とその位置での視差を算出し、該視差から対応点の位置を算出する(ステップ404)。具体的には、視差だけずれた位置が対応点となる。その後の処理(ステップ405〜410)は、図10と同様であるので省略する。
【0051】
本実施例によれば、各個眼像間での視差を検出して、各個眼像における対応点の画素を求めてから、輝度の極値を求めることで、更に正確に合焦画像を抽出することができる。
【0052】
<実施例4>
これは、実施例3を更に発展させたものである。視差検出による対応点探索においては、できるだけ距離の離れた二つの個眼像を用いると、より正確に対応点を求められる。一方で、合焦状態に近い二つの個眼像を用いる方が視差検出の正確性が増す。そこで、本実施例では、実施例3のように任意の二つの個眼像を選択する代わりに、まず、合焦状態に近い二つの個眼像を検出し、この検出された二つの個眼像について視差検出による対応点探索を行った後、あらためて極値検出を実行して合焦画像を得る。ここで、合焦状態に近い個眼像の検出には、実施例2の極値検出を利用して極値を多く含む二つの個眼像を選択し、合焦状態に近い個眼像とする。
【0053】
図12に、実施例4の処理フローチャートを示す。画像キャプチャ部11は、撮像素子4で取得された図7に示すような複眼像8をキャプチャし、I1〜I6の各個眼像に分離する(ステップ501)。分離された各個眼像I1〜I6は合焦画像選択抽出部12に送られる。
【0054】
合焦画像選択抽出部12では、まず、各個眼像I1〜I6の各画素での仮の極値検出を実行する(ステップ502,503)。すなわち、視差検出による補正前の仮の各対応点について極値を検出する。極値検出は、図10のステップ302〜305と同様である。次に、各個眼像の極値の発生頻度を表わすヒストグラムを生成し(ステップ504)、極値の発生頻度が多い二つの個眼像、すなわち、極値を多く含む二つの個眼像を選択する(ステップ505)。その後の処理のうち、ステップ506,507は、図11のステップ403,404と同様であり、ステップ508〜513は図11のステップ405〜410(図10のステップ302〜307)と同様であるので、説明を省略する。
【0055】
本実施例によれば、視差検出による対応点探索において、合焦状態に近い二つの個眼像を利用することで、正確性を増すことができる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、もちろん、本発明は、これまで説明したものに限定されるものではない。例えば、図1、図2では、レンズアレイは各々異なる曲率半径と略等しいバックフォーカスを有する6つのレンズセットで構成されるとしたが、レンズセットの数は6つに限られるものではない。
【0057】
図13、図14に、本発明の撮像装置の他の実施形態の全体構成図を示す。これは、レンズアレイを簡単に2つのレンズセットで構成したものである。図13、図14において、図1、図2と共通する部品には共通する番号が付されている。
【0058】
図1、図2と同様に、レンズアレイ1を構成する2つのレンズセット171,181は、各々レンズ面が異なる曲率半径を有しており、相互に異なる被写体距離に焦点を合わせるように曲率半径が設定されている。図15に、2つのレンズセット171,181のスルーフォーカスMTFの例を示す。ここで、aはレンズセット171に対応するスルーフォーカスMTF、bはレンズセット171に対応するスルーフォーカスMTFを表わしており、レンズセット171,181で焦点の合う被写体距離が異なるため、MTFがピークとなる被写体距離がそれぞれ異なっている。図15のように、被写体距離に伴い、所定のコントラストレベルでスルーフォーカスMTFが交差するようにレンズセット171,181を設計し、被写体距離に応じて適したMTFを有するレンズによる個眼像や画素を選択することにより、近距離から無限遠方まで、被写体に焦点を合わせることができる。
【0059】
また、ここでも、2つのレンズセット171,181のバックフォーカスは略等しくなるように設計されている。それにより、レンズセット171,181による光学倍率は被写体距離のみによっておよそ規定されるため、レンズセット171,181による像の合焦(ボケ)のレベルは相互で異なっても像のサイズは一定となる。
【0060】
図16に、図13、図14の撮像ユニットにより取得される画像の例を示す。ここでは、複眼像8は、I1とI2の2つの個眼像からなり、I1はレンズセット171に対応する個眼像、I2はレンズセット181に対応する個眼像である。レンズセット171,181でバックフォーカスは略等しく、それぞれのレンズセットで撮像距離及び光学倍率は略等しくなるため、各個眼像I1,I2における像のサイズは一定である。一方、レンズセット171,181で焦点の合う被写体距離は、レンズの曲率半径により異なるため、個眼像の合焦状態は相互で異なっている。図16の場合、個眼像I2で像の焦点が合っていることを示している。
【0061】
演算器10の動作は、図1,図2の実施形態の場合と基本的に同様であるが、個眼像が2つだけであるため、特に図9の実施例1に適している。処理は、個眼像が2つだけであるため、極めて簡単である。
【符号の説明】
【0062】
1 レンズアレイ
1a,1b レンズセット
2 遮光壁
3 開口アレイ
3a 開口部
4 撮像素子
5 基板
6 筐体
10 演算器
11 画像キャプチャ部
12 合焦画像選択抽出部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2005−165058号公報
【特許文献2】特開2006−251613号公報
【特許文献3】特開2008−521043号公報
【特許文献4】特開2007−158825号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に対向する位置に設けられた、複数のレンズがアレイ配列されてなるレンズアレイと、前記レンズアレイの像面側に設けられた、前記複数のレンズのそれぞれにより略結像される前記被写体の縮小像(個眼像)の集合である複眼像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子により撮像された複眼像を処理する演算器とからなる撮像装置において、
前記レンズアレイを構成する複数のレンズが、各々異なる曲率半径と略等しいバックフォーカスを有し、
前記演算器は、前記レンズアレイの複数のレンズを通して前記撮像素子により撮像される複眼像から所定の合焦画像を選択抽出する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
レンズアレイを構成する複数のレンズは略等しいレンズサグからなり、該レンズアレイを構成する複数のレンズの有効径を略等しくするために、該レンズアレイの一方の面に、各レンズに対向して略等しい円形の開口部を設けた開口アレイを更に有する、
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
レンズアレイの一部に突起部を設け、該突起部を介して開口アレイとレンズアレイを接着して、前記開口アレイのレンズ光軸方向の位置を規定している、
ことを特徴する請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
演算器は、複眼像を複数の個眼像に分離する画像キャプチャ手段と、前記複数の個眼像から所定の合焦画像を選択抽出する合焦画像選択抽出手段とを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
合焦画像選択抽出手段は、複数の個眼像の中から最も焦点の合った個眼像を選択して合焦画像とする、
ことを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
合焦画像選択抽出手段は、各個眼像について画素の輝度の最高値と最低値を検出して、その差(輝度差)が最大となる個眼像を選択して合焦画像とする、
ことを特徴とする請求項5記載の撮像装置。
【請求項7】
合焦画像選択抽出手段は、複数の個眼像から、対応する画素ごとに最も焦点の合った画素を抽出し、これら画素を合成して合焦画像とする、
ことを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項8】
合焦画像選択抽出手段は、各個眼像の中で、共通する視域をもつ画素の輝度が極値となる画素を抽出し、該画素を合成して合焦画像とする、
ことを特徴とする請求項7記載の撮像装置。
【請求項9】
合焦画像選択抽出手段は、各個眼像の当該画素の輝度変化の近似曲線を求め、該近似曲線の極値となる値を合焦の画素輝度とする、
ことを特徴とする請求項8記載の撮像装置。
【請求項10】
合焦画像選択抽出手段は、各個眼像間の視差を検出し、該視差に基づいて対応する画素の位置を補正した後、極値検出を行う、
ことを特徴とする請求項8または9記載の撮像装置。
【請求項11】
合焦画像選択抽出手段は、各個眼像について仮の極値検出を行って合焦に近い複数の個眼像を検出し、該複数の個眼像を用いて視差検出を行う、
ことを特徴とする請求項10記載の撮像装置。
【請求項1】
被写体に対向する位置に設けられた、複数のレンズがアレイ配列されてなるレンズアレイと、前記レンズアレイの像面側に設けられた、前記複数のレンズのそれぞれにより略結像される前記被写体の縮小像(個眼像)の集合である複眼像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子により撮像された複眼像を処理する演算器とからなる撮像装置において、
前記レンズアレイを構成する複数のレンズが、各々異なる曲率半径と略等しいバックフォーカスを有し、
前記演算器は、前記レンズアレイの複数のレンズを通して前記撮像素子により撮像される複眼像から所定の合焦画像を選択抽出する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
レンズアレイを構成する複数のレンズは略等しいレンズサグからなり、該レンズアレイを構成する複数のレンズの有効径を略等しくするために、該レンズアレイの一方の面に、各レンズに対向して略等しい円形の開口部を設けた開口アレイを更に有する、
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
レンズアレイの一部に突起部を設け、該突起部を介して開口アレイとレンズアレイを接着して、前記開口アレイのレンズ光軸方向の位置を規定している、
ことを特徴する請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
演算器は、複眼像を複数の個眼像に分離する画像キャプチャ手段と、前記複数の個眼像から所定の合焦画像を選択抽出する合焦画像選択抽出手段とを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
合焦画像選択抽出手段は、複数の個眼像の中から最も焦点の合った個眼像を選択して合焦画像とする、
ことを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
合焦画像選択抽出手段は、各個眼像について画素の輝度の最高値と最低値を検出して、その差(輝度差)が最大となる個眼像を選択して合焦画像とする、
ことを特徴とする請求項5記載の撮像装置。
【請求項7】
合焦画像選択抽出手段は、複数の個眼像から、対応する画素ごとに最も焦点の合った画素を抽出し、これら画素を合成して合焦画像とする、
ことを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項8】
合焦画像選択抽出手段は、各個眼像の中で、共通する視域をもつ画素の輝度が極値となる画素を抽出し、該画素を合成して合焦画像とする、
ことを特徴とする請求項7記載の撮像装置。
【請求項9】
合焦画像選択抽出手段は、各個眼像の当該画素の輝度変化の近似曲線を求め、該近似曲線の極値となる値を合焦の画素輝度とする、
ことを特徴とする請求項8記載の撮像装置。
【請求項10】
合焦画像選択抽出手段は、各個眼像間の視差を検出し、該視差に基づいて対応する画素の位置を補正した後、極値検出を行う、
ことを特徴とする請求項8または9記載の撮像装置。
【請求項11】
合焦画像選択抽出手段は、各個眼像について仮の極値検出を行って合焦に近い複数の個眼像を検出し、該複数の個眼像を用いて視差検出を行う、
ことを特徴とする請求項10記載の撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−118235(P2011−118235A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276732(P2009−276732)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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