説明

撮像装置

【課題】一部の画素を焦点検出用画素とした撮像素子において、焦点検出用画素の信号のノイズを低減し焦点検出精度を向上させる。
【解決手段】被写体像を結像させる撮影レンズの全瞳領域を通過する光を受光する撮像用画素群と、撮像用画素群の間に離散的に配置され、撮影レンズの一部の瞳領域を通過する光を受光する焦点検出用画素群と、を有する撮像素子と、撮像素子から得られる像信号に基づいて被写体のエッジの方向を検出する検出部と、検出部により検出されたエッジの方向に基づいて、焦点検出用画素群のそれぞれの画素から得られる像信号の位相をずらして加算平均する加算平均部と、加算平均部により加算平均された像信号を用いて撮影レンズのデフォーカス量を算出する演算部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関し、特に焦点状態を検出可能な撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮影レンズの焦点状態を検出する方式の一つとして、固体撮像素子の一部の画素にマイクロレンズが形成された2次元のセンサを用いて瞳分割方式の焦点検出を行う撮像装置が知られている。この撮像装置は、固体撮像素子を構成する多数の画素のうち、一部の画素が撮影レンズの焦点状態検出用画素として構成されている。焦点状態検出用画素は撮影レンズの瞳領域のうち、一部の領域を通過した光を受光し、互いに異なる瞳領域を通過した光を受光する画素を対として、複数の画素対により生成される像信号の位相差により撮影レンズの焦点状態を検出する。この構成は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−003122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術では、撮像用画素の一部を焦点検出用の画素としており、通常の画素に比べて受光する光量が少ないためノイズの影響が大きく、焦点検出の精度が悪くなりやすいという問題がある。
【0005】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、一部の画素を焦点検出用画素とした撮像素子において、焦点検出用画素の信号のノイズを低減し焦点検出精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わる撮像装置は、被写体像を結像させる撮影レンズの全瞳領域を通過する光を受光する撮像用画素群と、該撮像用画素群の間に離散的に配置され、前記撮影レンズの一部の瞳領域を通過する光を受光する焦点検出用画素群と、を有する撮像素子と、前記撮像素子から得られる像信号に基づいて被写体のエッジの方向を検出する検出手段と、前記検出手段により検出されたエッジの方向に基づいて、前記焦点検出用画素群のそれぞれの画素から得られる像信号の位相をずらして加算平均する加算平均手段と、前記加算平均手段により加算平均された像信号を用いて前記撮影レンズのデフォーカス量を算出する演算手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
一部の画素を焦点検出用画素とした撮像素子において、焦点検出用画素の信号のノイズを低減し焦点検出精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係わる撮像装置であるところのカメラの構成図。
【図2】一実施形態におけるCMOS型固体撮像素子であるイメージセンサの一部平面図。
【図3】図2のイメージセンサの一部平面図に示したA−A’面の断面図、及び焦点検出を行う画素の瞳領域での受光分布図。
【図4】焦点検出信号の生成を説明するための図。
【図5】高コントラストな被写体の例を示す図。
【図6】低コントラストな被写体の例を示す図。
【図7】一実施形態における焦点検出フロー図。
【図8】被写体と像信号の関係を示す模式図。
【図9】被写体のエッジの方向が斜めの場合の加算平均結果を示す図。
【図10】ノイズを含む焦点検出用像信号の加算平均処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係わる撮像装置であるところのカメラの構成図である。図1において10はイメージセンサ(固体撮像素子)で、デジタルスチルカメラ1に装着された撮影レンズ5の予定結像面に配置されている。デジタルスチルカメラ1は、カメラ全体を制御するカメラCPU20、イメージセンサ10を駆動制御する制御手段であるところのイメージセンサ制御回路21、イメージセンサ10にて撮像した画像信号を画像処理する画像処理回路24を備えている。また、イメージセンサ10にて撮像された画像を記録するメモリ回路22、画像処理回路24にて画像処理された画像をカメラ外部に出力するためのインターフェース回路23も備えている。またメモリ回路22は、イメージセンサ10の受光分布も記憶できるようになっている。
【0011】
カメラCPU20は、撮影レンズ5の焦点状態を算出する焦点検出演算部と、撮影された画像のコントラストを検出するコントラスト検出部と、被写体のエッジを検出するエッジ検出部と、像信号を加算平均する加算平均部と、撮影条件に応じて設定される推定ノイズ量記憶部とを兼ねている。
【0012】
被写体像を結像させる撮影レンズ5はカメラ本体1に対して着脱可能で、便宜上2枚のレンズ5a、5bで図示されているが、実際は多数枚のレンズで構成されている。撮影レンズ5は、カメラ本体1のカメラCPU20から送られてくる焦点調節情報を電気接点26を介してレンズCPU50にて受信し、その焦点調節情報に基づいて撮影レンズ駆動機構51によって合焦状態に調節される。また53は撮影レンズ5の瞳近傍に配設された絞り装置で、絞り駆動機構52によって所定の絞り値に絞り込まれるようになっている。
【0013】
図2は本実施形態のCMOS型固体撮像素子であるイメージセンサの一部平面図である。図2において、131は垂直方向に走査する電極であり、132は水平方向に走査する電極である。電極131と電極132はレイヤー構造になっており、本実施形態では、電極132は電極131より上の層に形成されている。電極131及び132で区切られた領域が1画素を示しており、1画素中に書かれた「R」、「G」、「B」の文字は各画素のカラーフィルタの色相を表している。「R」の文字の書かれた画素は赤の成分の光を透過し、「G」の文字の書かれた画素は緑の成分の光を透過し、「B」の文字の書かれた画素は青の成分の光を透過する。また、「R」、「G」、「B」の文字が書かれた各画素(撮像用画素群)は、撮影レンズ5の全瞳領域を通過した光を受光するように構成されている。
【0014】
カラーフィルタの配列がベイヤ配列の場合、1つの絵素は、「R」、「B」画素と2つの「G」画素の計4画素から構成される。しかし、本実施形態の撮像装置を構成するイメージセンサは「R」あるいは「B」であるべき画素の一部に離散的に、撮影レンズ5の一部の瞳領域を受光する焦点検出用画素(焦点検出用画素群)が割り当てられている。図中、PA11、PB11、PA21、PB21は撮影レンズ5の焦点状態を検出するための画素で、電極131にてx方向の開口が制限されている。
【0015】
図3(a)は、図2のイメージセンサ10の一部平面図に示したA−A’面の断面図である。図3(a)の右側の画素は、撮影レンズ5の全瞳領域を通過した光を受光可能な標準画素(撮像用画素)を示し、図中左側の画素は、撮影レンズ5の一部の瞳領域からの光束を受光可能な焦点検出用画素を示している。
【0016】
イメージセンサ10は、シリコン基板110の内部に光電変換部111が形成されている。光電変換部111で発生した信号電荷は、不図示のフローティングディフュージョン部、第1の電極131及び第2の電極132(不図示)を介して外部に出力される。光電変換部111と電極131との間には層間絶縁膜121が形成され、電極131とその上に形成される不図示の電極132との間には層間絶縁膜122が形成されている。電極132の光入射側には層間絶縁膜123が形成され、さらにパッシべーション膜140、平坦化層150が形成されている。平坦化層150の光入射側には、標準画素にはカラーフィルタ層151、焦点検出用画素には透明フィルタ層154が形成され、さらに光入射側に、平坦化層152及びマイクロレンズ153が形成されている。ここで、マイクロレンズ153のパワーは、撮影レンズ5の瞳と光電変換部111が略共役になるように設定されている。また、イメージセンサ10の中央に位置する画素ではマイクロレンズ153は画素の中心に配設され、周辺に位置する画素では、撮影レンズ5の光軸側に偏位して配設される。
【0017】
撮影レンズ5を透過した被写体光はイメージセンサ10近傍に集光される。さらにイメージセンサ10の各画素に到達した光は、マイクロレンズ153で屈折され光電変換部111に集光される。通常の撮像に使う図中右側の標準画素では、入射する光を遮光しないように第1の電極131及び第2の電極132が配設されている。
【0018】
一方、図中左側の撮影レンズ5の焦点検出を行う焦点検出用画素では、電極131の一部が光電変換部111を覆うように構成されている。その結果図中左側の焦点検出用画素では、撮影レンズ5の瞳の一部を透過する光束を受光可能となっている。また、電極131が入射光束の一部を遮光していることに起因して光電変換部111の出力が小さくなることを防ぐために、焦点検出用画素のカラーフィルタ層154は光を吸収しない透過率の高い透明な樹脂で形成されている。
【0019】
図3(b)は、イメージセンサ10の中央に位置する焦点検出を行う画素の瞳領域での受光分布を示す図である。図中円内の斜線部は撮影レンズの射出瞳を示し、白抜きされた領域Sα、領域SβはそれぞれPA11、PB11の受光可能な領域を示している。このように、本実施形態のイメージセンサ10の一部に配設される焦点検出用の画素は、マイクロレンズ153の位置と電極131の開口中心の相対位置を異ならせることによって、撮影レンズ5を通過した光の受光分布を異ならせるように構成している。
【0020】
図4は焦点検出用像信号の生成を説明するための図である。イメージセンサ10の一部であるLine1は測距の対象となる被写体の測距領域を示しており、Line2はLine1に隣接する測距領域を示している。第1の焦点検出用像信号は撮影レンズの一部の瞳領域を受光する第1の画素群(図中PA11〜PA14)から生成され、同様に第2の焦点検出用像信号は前記第1の画素群とは異なる瞳領域を受光する第2の画素群(図中PB11〜PB14)から生成される。そして、第1の焦点検出用像信号と第2の焦点検出用像信号の対をLine1の焦点検出用像信号とする。同様に、第3の焦点検出用像信号は撮影レンズの一部の瞳領域を受光する第1の画素群(図中PA21〜PA24)から生成され、第4の焦点検出用像信号は前記第1の画素群とは異なる瞳領域を受光する第2の画素群(図中PB21〜PB24)から生成される。説明を分かりやすくするため、焦点検出用像信号は4画素をもって形成するように説明したが、実際には相関演算に十分足る画素数(例えば100画素)をもって焦点検出用像信号を生成する。
【0021】
焦点検出演算手段であるカメラCPU20は、上記方法で生成された第1の焦点検出用像信号及び第2の焦点検出用像信号に基づいて周知の相関演算を行うことにより、撮影レンズ5の焦点状態を検出する。さらにカメラCPU20は焦点検出結果に基づいて撮影レンズ駆動機構51に焦点調節情報を送って、撮影レンズ5の焦点調節を行う。
【0022】
図5および図6を用いて、被写体と焦点検出用像信号について説明する。図6は高コントラストな被写体の例を示す。図5(a)に示すような高コントラストなチャートを被写体の例とすると、合焦位置近傍では、焦点検出用像信号は図5(b)に示すような信号となる。図5(b)中、実線は第1の焦点検出用像信号を示し、点線は第2の焦点検出用像信号を示す。6bMaxは焦点検出用像信号の最大値を示し、6bMinは焦点検出用像信号の最小値を示す。
【0023】
一方、デフォーカス時には焦点検出用像信号は図5(c)に示すような信号となる。図5(c)中、実線は第1の焦点検出用像信号を示し、点線は第2の焦点検出用像信号を示す。6cMaxは焦点検出用像信号の最大値を示し、6cMinは焦点検出用像信号の最小値を示す。デフォーカス時には、第1の焦点検出用像信号と第2の焦点検出用像信号は像がボケるため、最大値6cMaxは合焦位置近傍時の最大値6bMaxよりも小さくなる。また、第1の焦点検出用像信号と第2の焦点検出用像信号には位相ズレが生じる。焦点状態はこの位相のズレ量から検出するが、位相のズレ量は、周知の相関演算などを用いて、像を左右方向にシフトさせた場合に、もっとも相関度が高いシフト量から求めている。図5(b)および図5(c)に示すように像にノイズが含まれると、相関度を求めるときに誤差が生じてしまう。しかし、図5(b)および図5(c)に示すような高コントラストの被写体の場合、ノイズに比べて像信号全体のコントラスト(6bMax−6bMinや6cMax−6cMin)が十分大きい。そのため、相関度算出時のノイズの影響は小さく、実用上十分に位相のズレ量を検出することができる。
【0024】
図6は低コントラストな被写体の例を示す。図6(a)に示すような低コントラストなチャートを被写体の例とすると、合焦位置近傍では、焦点検出用像信号は図6(b)に示すような信号となる。図6(b)中、実線は第1の焦点検出用像信号を示し、点線は第2の焦点検出用像信号を示す。7bMaxは焦点検出用像信号の最大値を示し、7bMinは焦点検出用像信号の最小値を示す。図6で示した被写体と図5で示した被写体を比較したとき、像全体のコントラストは、(6bMax−6bMin)>(7bMax−7bMin)という関係になる。ただし、合焦位置近傍においては、図6で示した低コントラストな被写体の像信号全体のコントラスト(7bMax−7bMin)はノイズに比べて比較的大きいため、相関度算出時のノイズの影響は小さく、実用上十分に位相のズレ量を検出することができる。一方、デフォーカス時には焦点検出用像信号は図6(c)に示すような信号となる。7cMaxは焦点検出用像信号の最大値を示し、7cMinは焦点検出用像信号の最小値を示す。図5で説明した高コントラストの被写体の場合と同様に、デフォーカス時には、第1の焦点検出用像信号と第2の焦点検出用像信号はボケることで像信号の最大値7cMaxは合焦位置近傍の時の最大値7bMaxよりも小さくなる。よって、像信号全体のコントラスト(7cMax−7cMin)は合焦位置近傍でのコントラスト(7bMax−7bMin)よりもさらに低下する。したがって、ノイズの影響が大きくなり、位相ズレの算出に誤差が生じてしまう。
【0025】
CMOSイメージセンサの画素信号に重畳されるノイズは、2種類に大別できる。1つは、時間的および空間的に(すなわち二次元の出力画面内で)ランダムに発生するランダムノイズである。また、もう1つは、出力画面の同じところに縦縞、横縞または画面ムラなどの固定パターンとして発生する固定パターンノイズである。ランダムノイズは、画面全体にスリガラスを通したときのようなムラ状のノイズとして現れ、主に、光ショットノイズや熱雑音など、画素のダイオード内や増幅箇所、その他の増幅箇所などで生じ、環境温度などで容易に変化する。一方、固定パターンノイズは、画素のMOSトランジスタのしきい値電圧の違い、その他の回路(たとえば、垂直信号線ごとに設けたCDS回路のキャパシタ)あるいは配線などで、電気特性上のアンバランスに起因して生じるものが多い。
【0026】
上記2種類のノイズのうち、固定パターンノイズはパターンが固定であるため、補正量をあらかじめ記憶しておくことによって、ノイズを低減することができる。一方、ランダムノイズはランダムに発生するために、あらかじめ補正量を記憶しておくことができない。よって、ランダムノイズを低減させるためには、信号を加算平均してノイズの影響を低減することが有効である。よって、本実施形態では、固定パターンノイズを低減させるために、あらかじめ記憶しておいたノイズパターンを元に補正を行い、ランダムノイズを低減させるために、焦点検出用像信号を加算平均して影響を軽減する。なお、本実施形態はランダムノイズを低減することを主目的とするため、本実施形態における説明では、全て固定パターンノイズ除去後の像信号の処理について説明する。
【0027】
図7は、本実施形態におけるデフォーカス量算出フロー図を示している。カメラ本体1のレリーズスイッチが押されイメージセンサ10での露光動作が開始されると、イメージセンサ10の各画素の光電変換部111に撮影レンズ5を透過した光束が入射する。そして、光束量に応じて光電変換部111で電気信号に変化され、焦点検出のフローが開始される。
【0028】
ステップS1では、焦点検出用像信号を取得する。図4を用いて説明したようにして、第1の焦点検出用像信号と第2の焦点検出用像信号を取得する。焦点検出用像信号の取得が完了すると、ステップS2へ進む。ステップS2では、ステップS1で取得された焦点検出用像信号に基づき、相関演算が行われ、デフォーカス量が算出される。
【0029】
ステップS3では、ステップS2で算出されたデフォーカス量があらかじめ設定された閾値と比較される。デフォーカス量の絶対値が閾値以下である場合には、以下のステップで処理する焦点検出用像信号の加算平均処理は不要であるため、本フローを終了し、ステップS2で算出した値をデフォーカス量として出力する。デフォーカス量の絶対値が閾値より大きい場合には、ステップS4へと進む。ステップS4では、カメラCPU20により、被写体の像信号のコントラスト評価値が算出される。コントラスト評価値算出が完了すると、ステップS5へと進む。
【0030】
ステップS5では、ステップS4で算出されたコントラスト評価値と、カメラCPU20により読み出される推定ノイズ量との比に対して、あらかじめ設定された閾値が比較される。ここで読み出される推定ノイズ量は、露光時間を長く設定したとき、及びISO感度(撮影感度)を高く設定したときにノイズが大きくなることを考慮して、露光時間とISO感度の組み合わせに基づいて設定されている。コントラスト評価値を推定ノイズ量で割った値が閾値以上の場合には、以下のステップで処理する焦点検出用像信号の加算平均処理は不要であるため、本フローを終了し、ステップS2で算出した値をデフォーカス量として出力する。コントラスト評価値を推定ノイズ量で割った値が閾値未満の場合には、ステップS6へと進む。
【0031】
ステップS6では、像信号に基づいてカメラCPU20が被写体のエッジ方向を検出する。エッジ方向の検出は次のステップS7での像信号の加算方向を決定するためのものである。
【0032】
図8を用いてエッジ方向の検出方法を説明する。図8は被写体と焦点検出用像信号の関係を示す模式図であり、図8(a)、図8(b)は被写体を、図8(c)、図8(d)はそれぞれ図8(a)、図8(b)の被写体に対応した焦点検出用像信号を示している。説明を分かりやすくするため、被写体には単純なバーチャートを用い、焦点検出用像信号は相関演算で用いられる像信号の片像(図4における第1の焦点検出用像信号と第3の焦点検出用像信号)のみを用いて説明する。図8(a)は縦方向にエッジの方向があるバーチャートを示しており、図8(b)は右下がり方向にエッジの方向があるバーチャートを示している。図8(a)および図8(b)に示すLine1およびLine2は図4で示した焦点検出用画素が並ぶ列を示している。また、X1とX2はLine1における輝度が変わる座標(つまりエッジの座標)を、X3とX4はLine2における輝度が変わる座標(つまりエッジの座標)をそれぞれ示している。
【0033】
図8(c)は図8(a)の縦方向のバーチャートを撮像したとき取得される焦点検出用像信号を示し、上に示す信号はLine1から取得される焦点検出用像信号、下に示す信号はLine2から取得される焦点検出用像信号を示している。図8(d)は図8(b)の右下がり方向のバーチャートを撮像したときの焦点検出用像信号を示し、上に示す信号はLine1から取得される焦点検出用像信号、下に示す信号はLine2から取得される焦点検出用像信号を示している。図8(c)に示すように、被写体のエッジの方向が縦方向の場合、Line1の焦点検出用像信号とLine2の焦点検出用像信号は同じ位相である(つまり、座標X1=座標X3、座標X2=座標X4となる)。一方、図8(d)に示すように、被写体のエッジの方向が斜めの場合、Line1の焦点検出用像信号とLine2の焦点検出用像信号は位相がずれる。この位相のズレ量(座標X3と座標X1の差分)の算出が完了(つまり、エッジ検出完了)すると、ステップS7へと進む。
【0034】
ステップS7では、エッジ検出結果に基づいて、加算平均する焦点検出用像信号の位相を調整し、像信号加算平均処理が行われる。被写体のエッジの方向が縦方向の場合には、図8で説明したようにLine1の焦点検出用像信号とLine2の焦点検出用像信号は同位相であるため、位相をずらさず加算平均することによって、ノイズを低減した焦点検出用像信号を得ることができる。一方、被写体のエッジの方向が斜めの場合には、図8で説明したようにLine1の焦点検出用像信号とLine2の焦点検出用像信号の位相がずれている。図9は被写体のエッジの方向が斜めの場合の加算平均結果を示す図である。
【0035】
図9(a)は位相をずらさず加算平均したときを示しており、上からLine1の焦点検出用像信号、Line2の焦点検出用像信号、Line1の焦点検出用像信号とLine2の焦点検出用像信号を位相をずらさず加算平均した焦点検出用像信号を示している。図9(a)に示すように、エッジの方向が斜めの場合、位相がずれた座標においては、Line1の焦点検出用像信号とLine2の焦点検出用像信号で輝度が異なるため、像がボケてしまう。図9(b)は位相をずらして加算平均したときを示しており、上からLine1の焦点検出用像信号、Line2の焦点検出用像信号、Line1の焦点検出用像信号とLine2の焦点検出用像信号を位相をずらして加算平均した焦点検出用像信号を示している。Line2の焦点検出用像信号を示す図9(b)中の灰色の実線は位相をずらす前の像信号を示しており、黒色の実線は位相をずらした後の像信号を示している。位相をずらす量ΔxはステップS6で算出されたエッジ方向検出結果に基づき算出される。位相をずらして加算平均することによって、エッジをぼかさずにノイズを除去した焦点検出用像信号を得ることができる。
【0036】
図10はノイズを含む焦点検出用像信号の加算平均処理を説明するための図である。説明を分かりやすくするために焦点検出用像信号は相関演算で用いられる像信号の片像のみを示している。図10(a)はLine1の焦点検出用像信号、図10(b)はLine2の焦点検出用像信号であり、図10(c)は図10(a)の像信号と図10(b)の像信号の加算平均処理後の焦点検出用像信号である。図10に示すように、明らかに加算平均した焦点検出用像信号は加算平均前の焦点検出用像信号に比べてノイズが小さくなっていることがわかる。
【0037】
像信号加算平均処理が完了すると、ステップS8へと進む。ステップS8では、ステップS7で加算平均された後の焦点検出用像信号に基づき、周知の相関演算が行われ、デフォーカス量が算出される。加算平均後の焦点検出用像信号はエッジがボケていないので、信頼性の高い相関演算が可能となる。デフォーカス量算出が完了すると、本フローは終了する。
【0038】
以上のような構成によれば、ノイズを低減し焦点検出精度を向上することを可能にした撮像装置を提供することができる。
【0039】
なお、ノイズを低減する方法として、Line1の焦点検出用像信号とLine2の焦点検出用像信号のそれぞれについて相関演算を行い、デフォーカス量を算出した後に、それぞれ算出されたデフォーカス量を平均してノイズを除去する方法も考えられる。しかし、Line1とLine2の焦点検出用像信号それぞれについて相関演算すると、被写体のコントラストに対してノイズの量が多い場合には、測距不能となってしまう場合が多くなる。一方、相関演算前に焦点検出用像信号を加算平均すれば、測距不能となりにくいという効果がある。よって、相関演算前に焦点検出用像信号のノイズを低減することによって、検出限界を向上させることが可能となる。
【0040】
本実施形態では、被写体のコントラストと推定ノイズ量の比に応じて像信号の加算平均処理を行うかどうかを判断したが、常に像信号の加算平均処理を行っても良い。また、本実施形態では、デフォーカス量に応じて像信号の加算平均処理を行うかどうかを判断したが、デフォーカス量によらず像信号の加算平均処理を行っても良い。
【0041】
さらに、本実施形態で説明したエッジ方向の検出方法以外の方法(例えば、像信号の輝度レベルの変化量の2乗の総和を評価量とし、読み出す像信号の角度を変えてその評価量の変化からエッジ方向を検出するなど)によってエッジ方向を検出しても構わない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を結像させる撮影レンズの全瞳領域を通過する光を受光する撮像用画素群と、該撮像用画素群の間に離散的に配置され、前記撮影レンズの一部の瞳領域を通過する光を受光する焦点検出用画素群と、を有する撮像素子と、
前記撮像素子から得られる像信号に基づいて被写体のエッジの方向を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたエッジの方向に基づいて、前記焦点検出用画素群のそれぞれの画素から得られる像信号の位相をずらして加算平均する加算平均手段と、
前記加算平均手段により加算平均された像信号を用いて前記撮影レンズのデフォーカス量を算出する演算手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像素子から得られる像信号に基づいて被写体像のコントラストを検出するコントラスト検出手段と、少なくとも前記撮像装置の露光時間及び撮影感度に基づいて、前記焦点検出用画素群で発生するノイズ量を推定する推定手段とをさらに備え、
前記加算平均手段は、前記コントラスト検出手段により検出されたコントラストの値と前記推定手段により推定されたノイズ量の比に基づいて、前記焦点検出用画素群のそれぞれの画素から得られる像信号を加算平均するか否かを決定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記加算平均手段は、前記演算手段により算出されたデフォーカス量に基づいて、前記焦点検出用画素群のそれぞれの画素から得られる像信号を加算平均するか否かを決定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−145559(P2011−145559A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7444(P2010−7444)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】