説明

撮像装置

【課題】シャッターチャンスを逃さずに、写り込みの影響を軽減する撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、撮像素子を備える。フォーカシングレンズを備える。撮像素子で撮像して得られた画像信号に画像処理を施す画像処理部を備える。画像処理部は、合焦制御において、フォーカシングレンズを光軸方向に移動させながら、画像信号から得られる輝度信号に基づくコントラスト検出値を生成する。合焦制御においてフォーカシングレンズが近距離合焦領域を移動する間に、画像上にコントラスト検出値が大きく変化しない領域がある場合に、画像処理において、領域を除外した切り出しを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指などの写り込みが発生した場合に、写り込みの影響を少なくする画像処理を行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、指などの不要被写体の写り込みが発生しているか否かを判断し、かかる場合に警告を行う撮像装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−95501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、警告後に指の位置を変更したり、構図を変えたりする間に、シャッターチャンスを逃すおそれがある。
【0005】
したがって本発明の目的は、シャッターチャンスを逃さずに、写り込みの影響を軽減する撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る撮像装置は、撮像素子と、フォーカシングレンズと、撮像素子で撮像して得られた画像信号に画像処理を施す画像処理部とを備え、画像処理部は、合焦制御において、フォーカシングレンズを光軸方向に移動させながら、画像信号から得られる輝度信号に基づくコントラスト検出値を生成し、合焦制御においてフォーカシングレンズが近距離合焦領域を移動する間に、画像上にコントラスト検出値が大きく変化しない領域がある場合に、画像処理において、かかる領域を除外した切り出し、かかる領域の上への飾り付け、及びかかる領域の画像のぼかしの少なくとも1つの処理を行う。
【0007】
画像上にコントラスト検出値が大きく変化しない領域があり、且つかかる領域の色相が肌色である場合には、使用者の指などがレンズの前にあって写り込みが発生していると判断できる。画像上にコントラスト検出値が大きく変化しない領域があり、且つかかる領域の色相が黒から茶色の間の色である場合には、使用者以外の人の頭などが撮像装置の前方に居て写り込みが発生していると判断できる。このため、写り込みが発生している場合に、かかる写り込み発生領域を除外する切り出しにより、写り込みが無い領域だけを静止画像として得ることが可能になる。また、写り込み発生領域の上に飾り付けを付加することにより、写り込み発生領域を感じさせない静止画像を得ることが可能になる。なお、切り出しも、飾り付け付加も、撮影後の画像処理の過程で行われるため、レリーズタイムラグに影響することはない。このため、シャッターチャンスを逃さずに、写り込みの影響を軽減することが可能になる。
【0008】
好ましくは、画像処理部は、コントラスト検出値に基づいて領域の色相を特定し、領域の色相が特定の色である場合に、かかる処理を行う。
【0009】
さらに好ましくは、領域の有無の判断は、レリーズボタンの半押し後で且つ全押し前に行われ、かかる処理は、レリーズボタンの全押し後の撮像で得られる画像信号に対する画像処理において行われる。
【0010】
さらに好ましくは、画像処理部は、画像信号のうち、画像の周辺領域におけるものから、コントラスト検出値を生成し、画像の周辺領域上にコントラスト検出値が大きく変化しない領域がある場合に、画像処理において、かかる処理を行う。
【0011】
この場合、写り込み発生領域の特定のために使用するサーチ領域を限定出来るため、処理時間を短くすることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、シャッターチャンスを逃さずに、写り込みの影響を軽減する撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における撮像装置の構成図である。
【図2】写り込み発生領域を含むスルー画像を表示する表示部を示す図である。
【図3】写り込み発生領域を除外してい切り出した静止画像を表示する表示部を示す図である。
【図4】写り込み領域の切り出し処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】共有のAFサーチ領域と、写り込みサーチ領域を示す図である。
【図6】別々のAFサーチ領域と、写り込みサーチ領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する。本実施形態における撮像装置10は、撮像素子11、フォーカシングレンズ12、画像処理部13、レリーズボタン14、表示部15、記録媒体16、及びカメラ制御部17を有するデジタルカメラである(図1参照)。
【0015】
被写体からの反射光は、フォーカシングレンズ12を含むレンズを介して入射し、撮像素子11で撮像される。画像処理部13は、撮像で得られた画像信号に所定の画像処理を施して画像データを生成し、画像データに対応する画像を表示部15に表示する。かかる動作を1フレームごとに行うことにより、スルー画像が表示部15に表示される(ライブビュー表示)。カメラ制御部17は、画像処理部13など撮像装置10の各部の制御を行う。
【0016】
レリーズボタン14が半押しされた場合、画像処理部13は、撮像で得られた画像信号から得られる輝度信号に基づいて、露光条件(絞り値や露光時間など)の算出、及び合焦制御を行う。合焦制御では、画像処理部13は、フォーカシングレンズ12をレンズの光軸方向に移動させながら、輝度信号に基づくコントラスト検出値(AF評価値)を順次生成し、コントラスト検出値が最大値を示す時に合焦したと判断し、フォーカシングレンズ12を合焦したと判断した位置(合焦位置)で停止させる。
【0017】
画像処理部13は、合焦制御において、フォーカシングレンズ12が近距離合焦領域(撮像装置10から近い物体に合焦する場合のフォーカシングレンズ12の位置)を移動する間に、画像上にコントラスト検出値が大きく変化しない領域(コントラスト検出値の変化量が所定の閾値以下である領域)があるか否かを判断する。また、画像処理部13は、コントラスト検出値に基づいて、色相を特定し、画面上のコントラスト検出値が大きく変化しない領域の色相が、特定の色(肌色、または黒から茶色の間の色)であるか否かを判断する。
【0018】
画像上にコントラスト検出値が大きく変化しない領域があり、且つかかる領域の色相が肌色である場合には、画像処理部13は、使用者の指などがレンズの前にあって写り込みが発生していると判断する。画像上にコントラスト検出値が大きく変化しない領域があり、且つかかる領域の色相が黒から茶色の間の色である場合には、画像処理部13は、使用者以外の人の頭などが撮像装置10の前方に居て写り込みが発生していると判断する。
【0019】
レンズの前に置かれた使用者の指などの写り込みだけを考慮する場合には、撮像装置10からの距離がゼロから数センチメートルまでの間が、近距離合焦領域として設定される。一方、使用者以外の人の頭などの写り込みも考慮する場合には、撮像装置10からの距離がゼロから数メートルまでの距離が、近距離合焦領域として設定される。
【0020】
レリーズボタン14が全押しされた場合、画像処理部13は、半押し時に決定した絞り値などの露光条件やフォーカシングレンズ12の合焦位置で、撮像を行い、撮像で得られた画像信号に所定の画像処理を施して画像データを生成し、該画像データに基づく静止画像を表示部15に表示し、該画像データを含む画像ファイルを記録媒体16に記録する。
【0021】
上述の写り込みが発生していると判断された場合、撮像装置10が切り出し撮影モードに設定され、画像処理部13は、レリーズボタン14の全押しに対応した撮像で得られた画像から、かかる写り込みが発生している領域(図2の斜線部分参照)を除外した切り出し(図2の点線参照)を行って、切り出した領域の画像データに基づく静止画像を表示部15に表示し(図3参照)、該画像データを含む画像ファイルを記録媒体16に記録する。なお、切り出しは、画面中央部が中心になるような切り出し(ズームアップ)であってもよい。
【0022】
すなわち、コントラスト検出値が大きく変化しない領域の有無の判断、及びかかる領域の色相が特定の色であるか否かの判断は、レリーズボタン14の半押し後であって全押しされるまでに行われ、かかる領域以外の部分の切り出しは、レリーズボタン14の全押し後の撮像で得られる画像信号に対する画像処理において行われる。
【0023】
次に、写り込み領域の切り出し処理の手順について図4のフローチャートを用いて説明する。撮像装置10の電源がオン状態にされると、ステップS11で、カメラ制御部17は、レリーズボタン14が半押しされたか否かを判断する。半押しされていない場合は、ステップS11が繰り返され、半押しされた場合は、ステップS12に進められる。
【0024】
ステップS12で、画像処理部13は、露光条件の算出、及び合焦制御を行う。合焦制御で、画像処理部13は、フォーカシングレンズ12をレンズの光軸方向に移動させながら、輝度信号に基づくコントラスト検出値を順次生成し、コントラスト検出値に基づいて、色相を特定する。
【0025】
ステップS13で、画像処理部13は、合焦制御において、フォーカシングレンズ12が近距離合焦領域を移動する間に、画像上にコントラスト検出値が大きく変化しない領域があるか否かを判断する。かかる領域が存在する場合は、ステップS14に進められ、存在しない場合は、ステップS16に進められる。
【0026】
ステップS14で、画像処理部13は、コントラスト検出値に基づいて、色相を特定し、画面上のコントラスト検出値が大きく変化しない領域の色相が、特定の色(肌色、または黒から茶色の間の色)であるか否かを判断する。かかる領域の色相が、特定の色である場合には、ステップS15に進められ、特定の色でない場合は、ステップS16に進められる。
【0027】
ステップS15で、画像処理部13は、撮像装置10の撮影モードを切り出し撮影モードに設定する。ステップS16で、画像処理部13は、撮像装置10の撮影モードを通常の撮影モード(切り出し撮影モード以外の撮影モード)に設定する。
【0028】
ステップS17で、カメラ制御部17は、レリーズボタン14が全押しされたか否かを判断する。全押しされていない場合は、ステップS17が繰り返され、全押しされた場合は、ステップS18に進められる。
【0029】
ステップS18で、画像処理部13は、半押し時に決定した絞り値などの露光条件やフォーカシングレンズ12の合焦位置で、撮像を行い、撮像で得られた画像信号に所定の画像処理を施して画像データを生成し、該画像データに基づく静止画像を表示部15に表示し、該画像データを含む画像ファイルを記録媒体16に記録する。撮像装置10が切り出し撮影モードに設定されている場合は、画像処理部13は、レリーズボタン14の全押しに対応した撮像で得られた画像から、かかる写り込みが発生している領域を除外した切り出し(図2の点線参照)を行って、切り出した領域の画像データに基づく静止画像を表示部15に表示し(図3参照)、該画像データを含む画像ファイルを記録媒体16に記録する。
【0030】
これにより、写り込みが発生している場合に、かかる写り込み発生領域を除外する切り出しにより、写り込みが無い領域だけを静止画像として得ることが可能になる。なお、かかる切り出しに代えて、画像処理部13が写り込み発生領域の上にハートのマークなどの特定の飾り付け(フレーム)を付加した画像データに基づく静止画像を表示部15に表示し、該画像データを含む画像ファイルを記録媒体16に記録する形態であってもよい。この場合、写り込み発生領域の上に飾り付けを付加することにより、写り込み発生領域を感じさせない静止画像を得ることが可能になる。また、特定の飾り付けに代えて、かかる写り込み発生領域の画像に、画像処理部13における画像処理でぼかしを加える形態であってもよい。
【0031】
なお、切り出しも、飾り付け付加も、ぼかし付加も、撮影後の画像処理の過程で行われるため、レリーズタイムラグに影響することはない。このため、シャッターチャンスを逃さずに、写り込みの影響を軽減することが可能になる。また、かかる切り出し、飾り付け付加、及びぼかし付加は、いずれか1つの処理だけ行う形態でもよいが、かかる領域の画像にぼかしを加えた上に、飾り付けを付加する組み合わせであってもよい。
【0032】
本実施形態では、図5に示すように、合焦制御を行うためのサーチ領域で得られるコントラスト検出値の総てを使って、写り込み発生領域の特定を行う形態を説明したが、合焦制御のために重要なサーチ領域(画面の中央領域)と、写り込み発生領域の有無を判断するために重要なサーチ領域(画面の周辺領域)とが異なるため、図6に示すように、合焦制御を行うためのサーチ領域とは別に、写り込み発生領域の特定を行うためのサーチ領域を設けて、別々に行う形態であってもよい。この場合、写り込み発生領域の特定のために使用するサーチ領域を限定出来るため、処理時間を短くすることが可能になる。
【0033】
また、切り出し撮影モードか、通常撮影モードかの判断は、レリーズボタン14の半押し後に行われ、レリーズボタン14が全押しされるまで、ステップS15又はステップS16で決定されたモードが切り替わらない形態を説明した。この場合、ステップS15で切り出し撮影モードに設定された後であってステップS17のレリーズボタン14が全押しされるまでの間に、写り込みが発生した状態が解除されても、通常撮影モードに切り替えられない。また、ステップS16で通常撮影モードに設定された後であってステップS17のレリーズボタン14が全押しされるまでの間に、写り込みが発生しても、切り出し撮影モードに切り替えられない。このため、ステップS12〜S16の手順が、レリーズボタン14が全押しされるまでの間に、一定時間(例えば1ms)ごとに繰り返し行って、適切なモードの切り替えを行う形態であってもよい。
【0034】
また、レリーズボタン14の半押し動作に連動せず、撮像装置10の電源がオン状態にされた後は、レリーズボタン14が全押しされるまでの間、一定時間ごとにステップS12〜S16の動作を繰り返し行う形態であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 撮像装置
11 撮像素子
12 フォーカシングレンズ
13 画像処理部
14 レリーズボタン
15 表示部
16 記録媒体
17 カメラ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
フォーカシングレンズと、
前記撮像素子で撮像して得られた画像信号に画像処理を施す画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、合焦制御において、前記フォーカシングレンズを光軸方向に移動させながら、前記画像信号から得られる輝度信号に基づくコントラスト検出値を生成し、前記合焦制御において前記フォーカシングレンズが近距離合焦領域を移動する間に、画像上に前記コントラスト検出値が大きく変化しない領域がある場合に、前記画像処理において、前記領域を除外した切り出し、前記領域の上への飾り付け、及び前記領域の画像のぼかしの少なくとも1つの処理を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記コントラスト検出値に基づいて前記領域の色相を特定し、前記領域の色相が特定の色である場合に、前記処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記領域の有無の判断は、レリーズボタンの半押し後で且つ全押し前に行われ、
前記処理は、前記レリーズボタンの全押し後の撮像で得られる画像信号に対する前記画像処理において行われることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記画像信号のうち、画像の周辺領域におけるものから、前記コントラスト検出値を生成し、前記画像の周辺領域上に前記コントラスト検出値が大きく変化しない領域がある場合に、前記画像処理において、前記処理を行うことを特徴とする請求項1〜3に記載の撮像装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−77606(P2011−77606A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224147(P2009−224147)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】