説明

撮影装置および遠隔作業支援システム

【課題】本発明は、頭部装着式のカメラにおいて、頭部の高速移動や揺れの場合でもあっても、このカメラによって撮影された映像によって映像酔い等の気分が悪くなることを低減し得る撮影装置および遠隔作業支援システムを提供する。
【解決手段】本発明の撮影装置1は、頭部に装着する装着ユニット10と、被写体を撮影する撮影ユニット20と、前記頭部の角速度を検出する角速度センサユニット30と、角速度センサユニット30で検出された前記頭部の角速度に基づいて、撮影ユニット20の撮影方向の変化を検出し、この検出した撮影ユニット20の撮影方向の変化が所定の第1時間内において所定の方向に沿う往復移動の場合に、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像を表示する場合における被写体の映像の切り換えを制限する映像表示制御部63とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着されるカメラによって撮影された映像を表示装置に表示する撮影装置およびこの撮影装置を用いた遠隔作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
頭部に装着される頭部装着式のカメラは、装着者の体験映像を得ることができることから、例えば、前記装着者の体験映像を指示者に送信して指示者から適宜な指示を受信する遠隔作業支援システムや、前記装着者の体験映像を記録しておき適時にこの記録しておいた体験映像を提示することで過去の体験を前記装着者に想起させる日常生活支援システム等に活用されている。また、頭部装着式のカメラは、体験映像を得るために装着者の手を煩わせることがないため、装着者は、手を自由に使える利点もある。
【0003】
このような頭部装着式のカメラは、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。この特許文献1に開示の撮像装置は、撮影者の頭部に装着し得るように構成されたものであり、画像データを生成するための撮像手段と、上記撮影者の頭部に装着し得るように構成されたものであり、被写体を観察するときの上記撮影者の動きに関連する生体情報であって、かつ上記画像データを編集処理する際に用いる生体情報、を検出するための生体情報検出手段と、上記画像データを、該画像データが生成されたタイム情報に関連付けて記録するための画像データ記録手段と、上記生体情報を、上記画像データが生成されたタイム情報に関連付けて記録するための生体情報記録手段とを具備している。上記生体情報検出手段は、上記生体情報として撮影者の頭部の角速度を検出するための角速度検出手段を含み、上記編集処理は、記録された画像データの、カッティングと、ぶれ補正と、記録時間の引き延ばしと、電子ズーミングとの内の少なくとも1つである。上記カッティングは、ぶれ補正等を行うことができない場合に、このぶれ補正等を行うことができない特定の画像に対して行われる。このような構成によって、特許文献1に開示の撮像装置では、撮影者の意思を反映した編集処理を撮影後に行うことができる。
【0004】
また、特許文献2に開示の頭部装着式映像表示装置は、映像を表示する表示ユニットと、当該頭部装着式映像表示装置から作業対象物までの距離を検出する距離検出部と、前記表示ユニットに表示させる、作業対象物の参照映像の表示サイズを調整する表示制御部とを備え、前記参照映像には、前記作業対象物の現実の大きさに対する該参照映像の縮尺比情報が添付され、前記表示制御部は、前記距離検出部で検出された距離と前記参照映像に添付されている縮尺比情報とに基づいて、前記表示ユニットに表示させる前記参照映像の表示サイズを調整するものである。このような構成によって、特許文献2に開示の頭部装着式映像表示装置は、作業者や指示者へ負担を課することなく、作業に適切なサイズの参照画像を表示することができる。そして、特許文献2には、この頭部装着式映像表示装置を用いた遠隔作業支援システムも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−252732号公報
【特許文献2】特開2008−123257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、頭部装着式のカメラでは、頭部の動きに伴ってカメラの撮影方向が動くため、頭部が例えば高速に移動したり揺れたりすると、カメラによって撮影された映像も流れたり揺れたりする。このため、このカメラによって撮影された映像を見る観察者は、この撮影映像の揺れにより、映像酔い等の気分が悪くなってしまうことがある。特に、頭部装着式のカメラを頭部に装着した装着者が、肯定や否定を頭部の往復運動による頷き動作で示す場合に、このような事態が顕著に起こり得る。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、頭部装着式のカメラにおいて、頭部が高速に移動したり揺れたりした場合でもあっても、このカメラによって撮影された映像によって映像酔い等の気分が悪くなることを低減することができる撮影装置およびこの撮影装置を用いた遠隔作業支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる撮影装置は、頭部に装着する装着部と、被写体を撮影する撮影部とを備える頭部装着式撮影部と、前記撮影部の撮影方向の変化を検出する撮影方向検出部と、前記撮影方向検出部で検出された前記撮影部の撮影方向の変化が、所定の第1時間内において所定の方向に沿う往復移動の場合に、前記撮影部によって撮影された被写体の映像を表示する場合における前記被写体の映像の切り換えを制限する映像表示制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成の撮影装置では、頭部に装着される頭部装着式撮影部の撮影部における撮影方向の変化が撮影方向検出部によって検出され、その検出された撮影方向の変化が所定の第1時間内において所定の方向に沿う往復移動の場合に、撮影部によって撮影された被写体の映像の切り換えが制限される。この被写体の映像の切り換えが制限されることによって、被写体の映像が例えばコマ落としや略静止画等のように表示され、あるいは例えば非表示とされ、映像酔い等の気分が悪くなることを低減することができる。
【0010】
また、他の一撮影装置では、上述の撮影装置において、好ましくは、前記往復移動は、前記撮影方向検出部で検出された前記撮影部の撮影方向が前記所定の方向に沿って略180度異なる方向へ2回以上変化することである。
【0011】
この構成によれば、撮影方向が前記所定の方向に沿って略180度異なる方向へ2回以上変化した場合に往復移動と判定する簡易な判定条件としているので、撮影方向検出部や映像表示制御部を比較的簡単な装置や処理で実現することが可能である。
【0012】
また、他の一撮影装置では、これら上述の撮影装置において、好ましくは、前記所定の第1時間は、0.3秒〜3秒であることである。
【0013】
一例では、頭部が0.3秒〜3秒程度の間に往復移動した場合に、その頭部に装着されたカメラによって撮影された映像を見た観察者は、映像酔い等の気分が悪くなりやすい。上記構成によれば、このような映像酔い等の気分の悪くなりやすい時間帯のうちのいずれかの時間に第1時間を設定しているので、このような事態を効果的に抑制または防止することが可能となる。
【0014】
また、他の一撮影装置では、これら上述の撮影装置において、好ましくは、前記映像表示制御部は、所定の第2時間の間、前記被写体の映像におけるフレームを更新しないことによって、前記被写体の映像の切り換えを制限することである。
【0015】
この構成によれば、被写体の映像におけるフレームを更新しないので被写体の映像が略静止画となり、被写体の映像におけるフレームを更新しないという比較的簡易な手法によって、映像酔い等の気分の悪くなることを低減または防止することができる。
【0016】
また、他の一撮影装置では、これら上述の撮影装置において、好ましくは、前記映像表示制御部は、所定の第2時間の間、前記被写体の映像を表示しないことによって、前記被写体の映像の切り換えを制限することである。
【0017】
この構成によれば、被写体の映像を表示しないので被写体の映像が消え、被写体の映像を表示しないという比較的簡易な手法によって、映像酔い等の気分の悪くなることを低減または防止することができる。
【0018】
また、他の一撮影装置では、これら上述の撮影装置において、好ましくは、前記所定の第2時間は、前記第1時間よりも長く、かつ、1秒〜5秒であることである。
【0019】
この構成によれば、第2時間中、前記被写体の映像の切り換えを制限することで、映像酔い等の気分の悪くなることを低減または防止することができるとともに、第2時間の経過後に、前記被写体の映像の切り換えの制限を解除し、元に復帰することができる。
【0020】
また、他の一撮影装置では、これら上述の撮影装置において、好ましくは、前記所定の方向は、鉛直方向であることである。
【0021】
この構成によれば、装着者の頭部における鉛直方向の往復移動による映像酔い等の気分の悪くなることに対処することができる。特に、装着者の歩行の場合や、装着者が肯定を頭部の鉛直方向における往復運動によって示す場合に対処することができる。
【0022】
また、他の一撮影装置では、これら上述の撮影装置において、好ましくは、前記所定の方向は、水平方向であることである。
【0023】
この構成によれば、装着者の頭部における水平方向の往復移動による映像酔い等の気分の悪くなることに対処することができる。特に、装着者が否定を頭部の水平方向における往復運動によって示す場合に対処することができる。
【0024】
また、他の一撮影装置では、これら上述の撮影装置において、好ましくは、前記撮影方向検出部は、水平センサを備えることである。
【0025】
この構成によれば、撮影方向の鉛直方向における往復移動を検出するために水平センサを用いるので、比較的簡単な構造で安価に、撮影方向における鉛直方向に沿った往復移動を検出することができる。
【0026】
また、他の一撮影装置では、これら上述の撮影装置において、好ましくは、前記撮影方向検出部は、角速度センサを備えることである。
【0027】
この構成によれば、撮影方向における所定の方向に沿った往復移動を検出するために角速度センサを用いるので、比較的コンパクトで正確に、撮影方向における所定の方向に沿った往復移動を検出することができる。
【0028】
また、他の一撮影装置では、これら上述の撮影装置において、好ましくは、前記撮影方向検出部は、前記撮影部によって撮影された被写体の映像のうちの2枚の画像間における対応点を対応点探索処理によって抽出することで、前記撮影部の撮影方向を検出する対応点探索部を備えることである。
【0029】
この構成によれば、対応点探索処理の画像処理で撮影方向の変化を検出するので、別途にセンサ部品を必要せず、センサレスでソフトウェアによって撮影方向検出部を構成することが可能となる。
【0030】
また、他の一撮影装置では、これら上述の撮影装置において、好ましくは、前記頭部装着式撮影部の撮影部は、前記被写体の光学像を電気的な信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子の受光面上に前記被写体の光学像を形成する光学系とを備え、前記撮像素子は、CMOS型イメージセンサであることである。
【0031】
CMOS型イメージセンサは、各画素の画像信号を順次に走査することによって得ている。このため、頭部が高速に移動したり揺れたりした場合では、映像が歪みやすく、これにより、映像酔い等の気分が悪くなることが、一層、発生しやすい。上記構成によれば、撮影部の撮影方向の変化が撮影方向検出部で検出され、その検出された撮影部の撮影方向の挙動に基づいて表示部に表示される被写体の映像の切り換えが制限されるので、撮影部の撮像素子がCMOS型イメージセンサであっても、この撮影部によって撮影された映像により、映像酔い等の気分が悪くなることを低減することができる。
【0032】
また、他の一撮影装置では、これら上述の撮影装置において、好ましくは、前記頭部装着式撮影部の撮影部によって撮影された被写体の映像を表示する表示部をさらに備えることである。
【0033】
この構成によれば、前記頭部装着式撮影部の撮影部によって撮影された被写体の映像を表示する表示部をさらに備えた撮影装置を提供することができる。
【0034】
また、他の一態様では、上述の撮影装置において、好ましくは、前記表示部は、前記頭部装着式撮影部に備えられていることである。
【0035】
この構成によれば、撮影部の撮影方向が撮影方向検出部で検出され、その検出された撮影部の撮影方向に基づいて表示部に表示される被写体の映像の切り換えが制限されるので、表示部が頭部装着式撮影部に備えられている場合であっても、装着者は、この撮影部によって撮影された映像により、映像酔い等の気分が悪くなることを低減することができ、その場で即座に撮影している領域を確認することができる。
【0036】
また、他の一態様では、これら上述の撮影装置において、好ましくは、音を音信号に変換する音入力部と、音信号を音に変換する音出力と、通信信号を送受信する通信部と、前記通信部の送受信を制御する通信制御部とをさらに備え、前記通信制御部は、前記音入力部によって変換された音信号を前記通信部に送信させるとともに、音を出力させるべく、前記通信部によって受信された音信号を前記音出力部へ出力することである。
【0037】
この構成によれば、装着者は、例えば遠隔作業支援システム等の外部システムと、音声によってコミュニケーションを図ることができる。特に、コミュニケーションによって生じる装着者の動作に対処することができる。
【0038】
そして、本発明の他の一態様にかかる遠隔作業支援システムは、撮影装置と、通信網を介して前記撮影装置と通信可能に接続される遠隔作業支援装置とを備える遠隔作業支援システムであって、前記撮影装置は、これら上述のいずれかに記載の撮影装置であり、前記遠隔作業支援装置は、前記通信網を介して受信され、前記頭部装着式撮影部の撮影部によって撮影された被写体の映像を表示する第2表示部と、指示者の指示を受け付けて該指示を前記通信網を介して前記撮影装置へ送信する指示受付部とを備えることを特徴とする。
【0039】
このような構成の遠隔作業支援システムは、これら上述のいずれかの撮影装置を備えるので、撮影装置のユーザ(装着者、作業者)の頭部が高速に移動したり揺れたりした場合でもあっても、映像の切り換えの制限によって、遠隔作業支援装置のユーザ(指示者)は、この撮影部によって撮影された映像により、映像酔い等の気分が悪くなることを低減することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明にかかる撮影装置および遠隔作業支援システムは、頭部装着式のカメラにおいて、頭部が高速に移動したり揺れたりした場合でもあっても、このカメラによって撮影された映像によって映像酔い等の気分が悪くなることを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態にかかる遠隔作業支援システムの構成を示す図である。
【図2】実施形態にかかる遠隔作業支援システムにおける撮影装置の構成を示す外観斜視図である。
【図3】実施形態にかかる遠隔作業支援システムの撮影装置における表示ユニットの側断面図である。
【図4】実施形態にかかる遠隔作業支援システムにおける撮影装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】本実施形態の遠隔作業支援システムにおける撮影装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】撮影方向の往復移動が第1態様である場合における、本実施形態の遠隔作業支援システムにおける撮影装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図7】撮影方向の往復移動が第2態様である場合における、本実施形態の遠隔作業支援システムにおける撮影装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図8】撮影方向の往復移動が第3態様である場合における、本実施形態の遠隔作業支援システムにおける撮影装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図9】実施形態にかかる遠隔作業支援システムにおける撮影装置の他の電気的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。
【0043】
図1は、実施形態にかかる遠隔作業支援システムの構成を示す図である。図2は、実施形態にかかる遠隔作業支援システムにおける撮影装置の構成を示す外観斜視図である。図3は、実施形態にかかる遠隔作業支援システムの撮影装置における表示ユニットの側断面図である。図4は、実施形態にかかる遠隔作業支援システムにおける撮影装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【0044】
実施形態にかかる遠隔作業支援システムは、作業者における所定の方向の被写体を撮影し、この撮影した被写体の映像を前記作業者とは離れた別の場所に居る指示者が観察することができるように表示し、この被写体の映像を参照した前記指示者の指示を前記作業者に提供するシステムである。このような遠隔作業支援システムSは、例えば、図1ないし図4に示すように、作業者Wに使用され、作業者Wにおける所定の方向、例えば作業者Wの視線方向の例えば作業対象物等の被写体を撮影し、この撮影した被写体の映像を送信する撮影装置1と、ネットワーク(通信網)NTを介してこの撮影装置1によって撮影された被写体の映像を受信し、指示者Aが見ることができるようにこの受信した被写体の映像を表示し、この被写体の映像を参照した指示者Aの指示を受け付け、この受け付けた指示者Aの指示を撮影装置1から出力させるべく、この受け付けた指示者Aの指示をネットワークNTを介して撮影装置1へ送信する遠隔支援装置5とを備えて構成されている。
【0045】
遠隔支援装置5は、撮影装置1から離れた場所に設けられ、撮影装置1と互いにデータを交換することができるように、ネットワークNTを介して通信可能に撮影装置1と接続され、例えば、図1に示すように、メインサーバコンピュータ装置(以下、「メインサーバPC」と略記する。)6と、支援記録サーバコンピュータ装置(以下、「支援記録サーバPC」と略記する。)7と、コンテンツサーバコンピュータ装置(以下、「コンテンツサーバPC」と略記する。)8とを備えて構成される。
【0046】
ネットワークNTは、例えば、電話網、ディジタル通信網および無線通信網等の通信網であり、所定の通信プロトコルを用いてデータが伝送される。本実施形態では、ネットワークNTは、例えば公衆電話網(固定電話網)、ISDN等のディジタル通信網および移動体電話網(携帯電話網)等の公衆ネットワークNTaと、例えばイーサネット(登録商標)等のローカル・エリア・ネットワーク(LAN;プライベートネットワーク)NTbとを備えて構成される。公衆ネットワークNTaは、例えば、通信プロトコルにFTP(File Transfer Protocol)やTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等のインターネットプロトコルが用いられてインターネットを構成し、プライベートネットワークNTbは、例えば、前記インターネットプロトコルが用いられてイントラネットを構成する。撮影装置1は、公衆ネットワークNTaと通信可能に接続され、遠隔支援装置5のメインサーバPC6、支援記録サーバPC7およびコンテンツサーバPC7の各サーバPCは、互いにデータを交換することができるように、プライベートネットワークNTbと通信可能に接続され、そして、公衆ネットワークNTaとプライベートネットワークNTbとは、通信可能に接続されている。
【0047】
メインサーバPC6は、ネットワークNTを介して撮影装置1から受信した被写体の映像を表示するとともに、この被写体の映像を参照した指示者Aの指示を受け付け、この受け付けた指示者Aの指示をネットワークNTを介して撮影装置1へ送信するサーバコンピュータであり、例えば、メインサーバPC6の全体制御を司るコンピュータ161と、指示者Aの指示を受け付け、入力するための例えばキーボード162aやマウス162b等の入力装置162と、例えば映像を表示するディスプレイ163a等の出力装置163とを備えて構成される。
【0048】
なお、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0049】
このコンピュータ161は、ネットワークNT(プライベートネットワークNTb)と通信可能に接続するための、撮影装置1における後述のネットワークインタフェース部68と同様の通信インタフェース回路(ネットワークカード)を備えており、撮影装置1からネットワークNTを介して受信した被写体の映像をディスプレイ163aに表示するとともに、キーボード162aやマウス162bから受け付けた(入力された)指示者Aの指示をネットワークNTを介して撮影装置1へ送信する制御を行う。この指示者Aの指示は、撮影装置1にネットワークNTを介して受信され、撮影装置1における後述の表示ユニット40に表示される。
【0050】
支援記録サーバPC7は、撮影装置1と遠隔支援装置5との間でやり取りされた支援データを記憶して記録し、クライアント装置の要求に従ってこの要求に対応する支援データをクライアント装置に提供するサーバコンピュータである。支援記憶サーバPC7は、コンピュータ161の制御に従って、あるいは、プライベートネットワークNTbを伝送する通信信号を監視(モニタ)することによって独自に、撮影映像装置1による被写体の映像を日付や時刻等の日時情報と対応付けて支援データとして記録するとともに遠隔支援装置5による作業者Aの指示を日付や時刻等の日時情報と対応付けて支援データとして記録する。このように支援記録サーバPC7は、遠隔作業支援システムSの履歴として支援データを保存し、記録する。
【0051】
そして、本実施形態の遠隔作業支援システムSは、映像だけでなく、例えば音声等の音も撮影装置1と遠隔支援装置5との間で互いに交換することができるように構成されており、撮影装置1には、後述するように、音入出力ユニット50としてイヤホン51L、51Rとマイクロホン52とを備えており、メインサーバPC6には、入力装置162としてマイクロホン162cをさらに備え、出力装置163としてスピーカ163bをさらに備えている。そして、コンピュータ161は、撮影装置1からネットワークNTを介して受信した音声等の音(マイクロホン52で集音した音)をスピーカ163bから出力するとともに、マイクロホン162cから受け付けた(入力された)指示者Aの指示(音声指示)をネットワークNTを介して撮影装置1へ送信する制御を行う。この指示者Aの音声指示は、撮影装置1にネットワークNTを介して受信され、撮影装置1における前記イヤホン51L、51Rから出力される。また、支援記録サーバPC7は、コンピュータ161の制御に従って、あるいは、独自に、撮影装置1による前記音を日時情報と対応付けて支援データとして記録するとともに遠隔支援装置5による作業者Aの音声指示を日時情報と対応付けて支援データとして記録する。
【0052】
そして、本実施形態における遠隔作業支援システムSでは、指示者Aの指示には、作業者Wが遠隔支援装置5へ直接入力した例えばテキストデータや音声指示等のデータだけでなく、例えば作業対象物を表す参照映像や、作業手順を示す作業マニュアルや、製品の取り扱い方を示す取り扱い説明書等の、作業者Wが作業を行う際にその作業の支援となる映像や音声等の支援コンテンツ(支援情報)も含まれる。コンテンツサーバPC8は、この支援コンテンツを格納し、クライアント装置の要求に従ってこの要求に対応する支援コンテンツをクライアント装置に提供するサーバコンピュータである。メインサーバPC6のコンピュータ161は、キーボード162aやマウス162bから指示者Aの支援コンテンツを選択する指示(コンテンツ選択指示)を受け付け、このコンテンツ選択指示に対応する支援コンテンツをネットワークNTを介して撮影装置1へ送信するようにコンテンツサーバPC8を制御する。コンテンツサーバPC8は、コンピュータ161の制御に従って、コンテンツ選択指示に対応する支援コンテンツをネットワークNTを介して撮影装置1へ送信し、撮影装置1に支援コンテンツを提供する。
【0053】
このような遠隔支援装置5と組み合わせて好適に使用される撮影装置1は、作業者Wの頭部に装着され、作業者W(装着者)の視線方向に略沿った被写体を撮影し、この撮影した被写体の映像をネットワークNTを介して遠隔支援装置5へ送信する頭部装着式の撮影装置(カメラ)であり、例えば、図2ないし図4に示すように、装着ユニット10と、撮影ユニット20と、角速度センサユニット30と、表示ユニット40と、音入出力ユニット50と、制御ユニット60とを備えて構成される。
【0054】
装着ユニット10は、作業者Wの頭部に装着するための装置であり、本実施形態では、視力矯正用のメガネを模した構造で構成されている。すなわち、本実施形態の装着ユニット10は、左右一対のテンプル11L、11Rと、ブリッジ12と、左右一対の鼻パッド13L、13Rと、左右一対の透明部材14L、14Rとを備えて構成されている。
【0055】
テンプル11L、11Rは、例えば弾性素材等から構成される長尺棒状の部材であり、その一方端部には装着者(ここでは作業者W)の耳に掛けられる耳掛け部分を有し、その他方端部には回動部11La、11Raを介して透明部材14L、14Rに固定されて保持する保持部分を有しており、作業者Wの耳や側頭部に掛け止められ、作業者Wの頭部への保持および装着位置を調整するためのものである。テンプル11L、11Rと透明部材14L、14Rとの固定には、例えば接着剤による接着やねじによるねじ留め等の固定手段が用いられる。また、撮影装置1は、回動部11La、11Raによる回動により、テンプル11L、11Rを互いに回転方向の異なる矢印P、Q方向へ回動させて、テンプル11L、11Rを透明部材14L、14Rに沿わせることによって、不使用時にコンパクトに折り畳めるようになっている。
【0056】
ブリッジ12は、左右一対の透明部材14L、14Rを互いに連結するための短尺棒状の部材であり、テンプル11L、11Rの固定手段と同様の手段によって、その両端で透明部材14L、14Rに固定される。左右一対の透明部材14L、14Rは、このブリッジ12によって一定の間隔を空けた相対位置関係で保持される。
【0057】
鼻パッド13L、13Rは、装着ユニット10の装着者(ここでは作業者W)に対する顔面への保持を行うための部材であり、各脚部を介してブリッジ12に接続されている。
【0058】
透明部材14L、14Rは、例えばポリカーボネートやポリメチルメタクリレート等の樹脂やガラス等の可視光線に対し透明な素材等から構成され、視力矯正用のメガネレンズの外形形状のような、角を丸く縁取りした長方形状の板状部材である。もちろん、透明部材14L、14Rは、撮影装置1の本来の機能の観点において視力矯正用の調整度数を備える必要はないが、視力矯正用の調整度数を備えていても良い。透明部材14L、14Rの一方には、本実施形態では、右眼に対応する透明部材14Rに表示ユニット40の接眼光学系41を嵌め込むための略U字形状の切り欠き部14Rsが形成されている。
【0059】
これらテンプル11L、11R、ブリッジ12および鼻パッド13L、13Rによっていわゆるメガネフレームが構成され、このメガネフレームが装着者に対し掛け止められ、透明部材14L、14Rが装着者の眼に対し所定の状態(所定の距離、所定の位置)で装着される。
【0060】
なお、本実施形態では、装着ユニット10は、テンプル11L、11Rおよびブリッジ12によって透明部材14L、14Rを固定、保持するように構成されたが、左右一対のリムを備え、この各リムを介して透明部材14L、14Rを固定、保持するように構成されてもよい。この各リムは、例えば内溝を持った環状または半環状の部材であり、この環または半環に透明部材14L、14Rの外周部分を嵌め込むことによって透明部材14L、14Rを固定、保持するものである。
【0061】
撮影ユニット20は、例えば作業物体や装着者(ここでは作業者W)の周囲の外界情景等の被写体を撮影する装置であり、装着者(作業者W)に装着され前記装着者が前方略水平方向を見た場合に、その光軸が装着者の視線方向に略一致するように、装着ユニット10に対し固定的に保持される。これによって撮影ユニット20は、装着者の前方視野内を撮影することが可能となる。本実施形態では、撮影ユニット20は、表示ユニット本体45の一方端部に外付けされており、表示ユニット本体45が接眼光学系41を介して装着ユニット10の透明部材14Rに固定的に取り付けられることによって、装着ユニット10に対し固定的に保持される。このように撮影ユニット20は、本実施形態では、装着者(ここでは作業者W)の視野内撮影カメラとして機能し、また装着ユニット10に保持されるので、撮影装置1がコンパクトに構成され、また作業者Wは、ハンズフリーとなって、両手を使った作業が可能となる。なお、撮影ユニット20を装着ユニット10に前記光軸と前記視線方向に略一致するように固定的に保持する機構は、撮影ユニット20が脱着可能な構造であってもよい。このように構成することによって撮影ユニット20を適宜に変えることができる。
【0062】
撮影ユニット20は、例えば、図4に示すように、撮影光学系21と、撮像素子22と、アナログフロントエンド23と、映像制御部24とを備えて構成される。
【0063】
撮影光学系21は、被写体の光学像(光像)を撮像素子22の受光面に結像するための光学系である。撮影光学系21は、単焦点光学系であってもよく、またズーミングすべくズーム機能を備えた変倍光学系であってもよい。また撮影光学系21は、オートフォーカス(AF)機能を備えて構成されてよい。
【0064】
撮像素子22は、この撮影光学系21によって受光面上に形成された被写体の光学像における光量に応じてR(赤)、G(緑)、B(青)の各成分の画像信号に光電変換してアナログフロントエンド23へ出力する装置である。撮像素子22には、例えば、CCD型カラーイメージセンサやCMOS型カラーイメージセンサ等が用いられる。本実施形態では、CMOS型カラーイメージセンサが用いられ、このCMOS型カラーイメージセンサは、例えば、R(赤)光、G(緑)光、B(青)光の各光に対応した各色透過フィルタをピクセル単位(画素単位)で市松模様に配置されたカラーエリア撮影センサであって、撮影光学系21により結像された被写体光像を、R(赤)光、G(緑)光、B(青)光の各成分の画像信号(各画素単位で受光された画素信号の信号列から成る信号)に光電変換するものである。CMOS型イメージセンサは、2次元配列された複数の画素から所定の順序に従って順番に各画素信号を読み出すように構成される。より具体的には、例えば、m行n列の画素でCMOS型イメージセンサが構成されている場合に、1行1列の画素から1行n列まで各列の画素信号が行方向に沿って順次に読み出され、1行n列まで読み出すと、次行の画像信号を読み出すべく次行の1列目に戻り、同様に、次行の1列からn列まで各列の画素信号が行方向に沿って順次に読み出され、そして、このような画素信号の読み出しがm行n列まで実行される。このため、CMOS型イメージセンサでは、最初の画素の読み出し時刻と、最後の画素の読み出し時刻とには、所定時間の差が生じている。
【0065】
アナログフロントエンド23は、所定の基準クロックに基づいて撮像素子22の駆動を制御し、撮像素子22で得られた画像信号に周知のアナログ信号処理を施した後にディジタル映像信号に変換し、映像制御部24へ出力する回路である。
【0066】
映像制御部24は、アナログフロントエンド23から入力された映像信号に、例えば黒レベル補正処理、画素補間処理、ホワイトバランス調整処理、ガンマ(γ)補正処理、シェーディング補正処理等の、周知の画像処理を施す回路である。映像制御部24は、アナログフロントエンド23から入力された映像信号を、CMOS型カラーイメージセンサにおける画像信号の読み出しクロックに同期して、制御ユニット60内の画像メモリ61に書き込む。すなわち、映像信号は、アナログフロントエンド23から一旦画像メモリ61に書き込まれ、所定の各画像処理が施される際に、画像メモリ61から映像制御部24に読み込まれ、各画像処理が施される。そして、これら各画像処理の施された映像信号は、再度、画像メモリ61に書き込まれ、記憶(格納)される。
【0067】
角速度センサユニット30は、装着ユニット10に対し固定的に保持されている撮影ユニット20の撮影方向を検出するために、装着者(ここでは作業者W)の頭部の角速度を検出し、検出結果を制御ユニット60へ出力する装置である。角速度センサユニット30は、本実施形態では、例えば、装着者(作業者W)の頭部における鉛直方向の角速度を検出する回路である鉛直方向角速度センサ部31と、装着者(作業者W)の頭部における水平方向の角速度を検出する回路である水平方向角速度センサ部32とを備えて構成される。より具体的には、角速度センサユニット30は、2軸の角速度を検出することができる2軸圧電振動ジャイロセンサを備えて構成され、装着ユニット10に固定的に取り付けられる表示ユニット本体45内に内蔵されている。ここで、角速度センサユニット30で検出された角速度を積分することによって頭部の方向を算出することも可能である。このように本実施形態では、撮影方向における所定の方向に沿った往復移動を検出するためのセンサとして、加速度センサが用いられているので、比較的コンパクトで正確に、撮影方向における所定の方向に沿った往復移動を検出するためのセンサを構成することが可能となる。
【0068】
表示ユニット40は、所定の画像(映像)を表示する装置であり、遠隔支援装置5からネットワークNTを介して送信されてきた指示者Aの指示を表示するものである。前記指示者Aの指示には、上述したように、指示者Aが遠隔支援装置5へ直接入力した例えばテキストデータ等のデータだけでなく、作業者Wが作業を行う際にその作業の支援となる映像や音声等のコンテンツサーバPC8による支援コンテンツも含まれる。そして、本実施形態では、表示ユニット40は、撮影ユニット20の電子ファインダの機能を兼ねており、撮影ユニット20によって撮影された映像も表示することができるようにされている。撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像が別体の表示装置に表示される場合には、作業者Wは、撮影ユニット20によって撮影されている領域(被写体)を見るために前記表示装置の方に向かなければならないが、これによって撮影ユニット20の撮影者である作業者Wは、撮影ユニット20によって撮影されている領域(被写体)を見るために、その頭部の方向を変える必要がなく、視線をそらせる必要もなく、作業者W自信が撮影ユニット20によって撮影している領域(被写体)を正確に認識することができる。
【0069】
表示ユニット40は、装着ユニット10に取り付けられることなく別体で構成されてもよいが、作業者Wの視界内に指示者Aの指示を表示し、作業者Wが指示者Aの指示を参照しながら作業を行うことができるように、本実施形態では、装着ユニット10に、しかも一方の透明部材14Rに取り付けられている。このような表示ユニット40は、例えば、図2ないし図4に示すように、接眼光学系41と、映像生成部42と、照明光学系43と、光源部44と、これら映像生成部42、照明光学系43および光源部44を収容するとともに接眼光学系41に取り付けられる筐体である表示ユニット本体45とを備えて構成される。表示ユニット本体45には、上述したように、その一方端に撮影ユニット20が外付けされており、角速度センサユニット30が内蔵され、そして、底面から外部に接眼光学系41が延びている。さらに、表示ユニット本体45の他方端から、ケーブル46が延び、撮影ユニット20、角速度センサユニット30、表示ユニット40および音入出力ユニット50と制御ユニット60とは、相互にデータを交換することができるようにこのケーブル46によって電気的に接続されている。
【0070】
光源部44は、所定波長の光を発光する装置であり、例えば、所定波長色を含む白色発光ダイオード(以下、「白色LED」と略記する)から成る点光源である。
【0071】
照明光学系43は、光源部44の発光光が入射され、この入射された発光光から映像生成部42を照明する照明光を生成する装置であり、例えば、本実施形態では、方向により拡散度が異なり、前記入射された発光光を一方向に拡散する一方向拡散板43aと、一方向拡散板43aで拡散された光を集光する集光レンズ43bとを備えて構成される。より具体的には、例えば、本実施形態では、一方向拡散板43aは、光源部44から入射された発光光を図3の紙面に垂直な方向に約40度で拡散するとともに図3の紙面に平行な方向に約0.2度で拡散する。
【0072】
映像生成部42は、照明光学系43の照明光が入射され、各画素において、この照明光をRGBごとにVRAM64の映像信号に応じて強度変調することによって映像を生成する装置であり、例えば、透過型LCD装置(透過型液晶表示装置)を備えて構成される。
【0073】
接眼光学系41は、映像生成部42で生成された映像を装着者(作業者W)の眼に導くための装置であり、例えば、光学プリズム41aと、反射部41bとを備えて構成される。
【0074】
光学プリズム41aは、例えばガラスや透明樹脂等の可視光に対して透明な材料より成る部材であって、互いに対向する一対の主面が略平行となるように形成された平行平板である。光学プリズム41aの上端部(上面部)は、上面が映像生成部42で生成された映像光の入射面であり、映像光の大部分を内部に採光することができるように、肉厚部411が形成されている。この肉厚部411は、上方に向かってより肉厚となるように前面側(接眼面と反対側)が突き出るくさび形状に形成される。そして、光学プリズム41aの下端部(底面部)は、斜めにカットされた傾斜部412が形成されており、この傾斜部412に反射部41bが設けられている。光学プリズム41aは、その上端部から入射された映像光をその内部で複数回の反射を行わせ、前記映像光を反射部41bへ導光する。より具体的には、光学プリズム41aは、その上端部から入射された映像光を前記一対の主面で交互に全反射を繰り返し、前記映像光を反射部41bへ導光する。
【0075】
反射部41bは、光学プリズム41aによって導光された映像光を、光学プリズム41aの傾斜部412と協働して後面側(接眼面側)へ反射する光学素子であり、例えば、ハーフミラー、多層膜およびホログラム光学素子等である。本実施形態では、反射部41bは、ホログラムを生成するホログラム光学素子(HOE)であり、例えば、波長選択性および角度選択性がともに比較的高いことから、体積位相型の反射型ホログラム光学素子である。体積位相型のホログラム光学素子は、光学的に軸非対称ないわゆる自由曲面で構成されて正の光学的パワーを有する。この反射型ホログラム光学素子は、所定波長の映像光を回折するように構成されており、前記光源部44は、この反射型ホログラム光学素子の回折波長に応じた所定波長の光を発光するように構成される。より具体的には、本実施形態では、反射型ホログラム光学素子は、RGB(赤緑青)に対応した各波長465nm±10nm、520nm±10nmおよび635nm±10nmの映像光を回折するように製作され、これに応じて、光源部44は、中心波長465nm、520nmおよび635nmのRGB一体型の白色LEDを備えて構成される。この反射型ホログラム光学素子の感光材料として、例えば、フォトポリマ、銀塩材料、重クロム酸ゼラチン等を挙げることができ、特に、ドライプロセスで製造することができることから、フォトポリマが好ましい。
【0076】
そして、前記透明部材14Rの切り欠き部14Rsは、光学プリズム41aが隙間無く嵌め込まれるように、光学プリズム41aの形状に対応した形状とされており、透明部材14Rの切り欠き部14Rsに接眼光学系41が嵌め込まれた場合に、透明部材14Rと接眼光学系41とは1枚の板状に一体化され、傾斜部412に設けられた反射部41bは、光学プリズム41aと透明部材14Rとに挟まれて埋設する。このように透明部材14Rと光学プリズム41aとは、反射部41bを2つの透明材料に埋設した接合光学プリズムを構成している。このため、反射部41bが外気に触れることが無く、反射部41bがホログラム光学素子である場合に、ホログラムを安定にその性能を保つことが可能となる。
【0077】
光学プリズム41aによって導光された映像光は、反射部41bで反射し、より具体的には、本実施形態では、反射型ホログラム光学素子によって回折され、虚像として光学瞳Eに導かれる。装着者(作業者W)は、この光学瞳Eの映像光をその瞳に入射することで、映像を見ることができる。このように表示ユニット40では、VRAM64の映像信号による映像が映像生成部42の透過型LCD装置に表示され、この映像生成部42の透過型LCD装置によって得られた映像が、接眼光学系41によって装着者(作業者W)の眼球に直接投影され、あたかも該映像が空中に拡大投影されているかのような虚像の観察が可能になっている。
【0078】
また、透明部材14Rは、光学プリズム41aの傾斜部412での屈折をキャンセル(相殺)するので、装着者(作業者W)は、外界光を略歪むことなく見ることができる。また、体積位相型の反射型ホログラム光学素子は、上述のように、特定入射角の特定波長の光のみを回折するので、外界光にはほとんど影響せず、外界光は、透明部材14R、反射部41bの反射型ホログラム光学素子および光学プリズム41aを透過し、装着者(作業者W)は、略通常通り、外界を見ることができる。このように体積位相型の反射型ホログラム光学素子は、特定波長域の反射光とそれ以外の波長域の透過光とを合成するコンバイナ光学素子として機能している。このような構成によって表示ユニット40における外界光の可視光透過率を約85%以上に確保することが可能となり、外界光の透過率が高く、装着者(作業者W)がシースルーで外界を良好に見ることができ、装着者(作業者W)の作業性を向上することが可能となる。そして、本実施形態では、接眼光学系41は、右眼に対応する透明部材14Rに配設され、表示ユニット40に表示される映像を右眼で観察することができると同時に外界を右眼でも観察することができる(もちろん、左眼は、外界を観察することができる)。
【0079】
また、接眼光学系41は、本実施形態では、映像光を光学プリズム41aの内部で反射するとともに反射部41bの体積位相型の反射型ホログラム光学素子によって光学瞳Eに導くように構成されているので、透明部材14Rの厚みは、通常のメガネレンズと略同程度の厚み(例えば3mm程度)とすることができ、小型で軽量となる。そして、前記反射は、本実施形態では、全反射であるので、装着者(作業者W)は、透明部材14Rの一対の両主面を通して外界光の透過率を略落とすことなく、外界を見ることができる。
【0080】
音入出力ユニット50は、音を入出力するための回路であり、音を出力する左右一対のイヤホン51L、51Rと、音を集音するマイクロホン52とを備えて構成される。マイクロホン52は、装着ユニット10を作業者Wが装着した場合に、作業者Wの音声を集音すべく、装着ユニット10のテンプル11Lから延びる略L字状のアーム53の先端に取り付けられている。この音入力ユニット50のマイクロホン52によって作業者Wの音声が集音され、この音声の音声データが撮影装置1からネットワークNTを介して遠隔支援装置5へ送信され、遠隔支援装置5のメインサーバPC6におけるスピーカ163bからこの音声データの音声が出力される。一方、この遠隔支援装置5のメインサーバPC6におけるマイクロホン162cによって指示者Aの音声が集音され、この音声の音声データが遠隔支援装置5からネットワークNTを介して撮影装置1へ送信され、撮影装置1のイヤホン51L、51Rからこの音声データの音声が出力される。あるいは、コンテンツサーバPC8から音声の支援コンテンツがネットワークNTを介して撮影装置1へ送信され、撮影装置1のイヤホン51L、51Rからこの音声の支援コンテンツが出力される。なお、撮影装置1のイヤホン51L、51Rは、一方のみであっても良い。これによって本実施形態の遠隔作業支援システムSは、音声指示を作業者Wに与えることができ、また、例えば音声等の音も撮影装置1と遠隔支援装置5との間で互いに交換することができ、作業者Wと指示者Aとは、音声によってコミュニケーションを図ることができる。特に、音声によるコミュニケーションを図ると、指示者Aの音声指示により、作業者W(装着者)は、頷き動作を行い易いが、このような場合に本実施形態の遠隔作業支援システムSでは後述のように映像の切り換えを制限して映像での観察に制限を施すので、このような場合に本実施形態の遠隔作業支援システムSは、効果的である。
【0081】
制御ユニット60は、撮影装置1の全体制御を司る回路である。制御ユニット60は、撮影ユニット20、角速度センサユニット30および表示ユニット40のように装着ユニット10に取り付けられても良いが、撮影装置1における作業者Wの頭部に装着される部分の重量を軽減するために、本実施形態では、装着ユニット10に取り付けられることなく装着ユニット10とは別体に設けられており、上述したように、ケーブル46によって撮影ユニット20、角速度センサユニット30、表示ユニット40および音入出力ユニット50と電気的に接続されている。制御ユニット60は、例えば、図1、図2および図4に示すように、画像メモリ61と、制御部62と、VRAM64と、音入力処理部65と、音出力処理部66と、電源スイッチ67と、ネットワークIF部68とを備えて構成され、これら画像メモリ61、制御部62、VRAM64、音入力処理部65、音出力処理部66、電源スイッチ67およびネットワークIF部68は、略直方体形状の筐体69に収容されている。なお、電源スイッチ67は、その操作部分が筐体69の外部に臨むように筐体69内に配設され、ネットワークIF部68は、そのコネクタ部分が筐体69の外部に臨むように筐体69内に配設される。
【0082】
画像メモリ61は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性の記憶素子およびその周辺回路を備えて構成され、上述したように、撮影ユニット20における映像制御部24の作業領域として用いられる。
【0083】
VRAM64は、RAMおよびその周辺回路を備えて構成される、いわゆるビデオラム(Video RAM)であり、表示ユニット40における映像生成部42の画素数に対応した映像信号の記憶容量を少なくとも有し、映像生成部42で再生表示される映像を構成する映像信号をバッファするためのバッファメモリである。
【0084】
音入力処理部65は、音入出力ユニット50におけるマイクロホン52から入力されてきた音信号に対し、例えば、増幅やノイズカット等の所定の信号処理を行って制御部62へ出力する回路である。
【0085】
音出力処理部66は、制御部62から入力されてきた音信号に対し、例えば、増幅やノイズカット等の所定の信号処理を行って音入出力ユニット50におけるイヤホン51L、51Rへ出力する回路である。
【0086】
電源スイッチ67は、撮影装置1を稼動するために、撮影装置1を起動するスイッチ回路である。電源スイッチ67の投入(スイッチオン)により、例えば電池等の電源から、撮影装置1における電力を必要とする各部へ電力が供給される。
【0087】
ネットワークIF部68は、ネットワークNTを介して撮影装置1と遠隔支援装置5との間で通信を行うための通信インタフェース回路であり、制御部62から入力されてきたデータをネットワークNTの通信プロトコルに対応した通信信号に収容し、この収容した通信信号をネットワークNTへ送信するとともに、ネットワークNTから撮影装置1宛ての通信信号を受信し、この受信した通信信号に収容されているデータを取り出して制御部62で処理可能な形式に変換し、この変換したデータを制御部62へ出力するものである。
【0088】
制御部62は、撮影装置1の各部を当該機能に応じて制御する回路であり、例えば、撮影装置1の各部を当該機能に応じて制御するための制御プログラム等の各種の所定のプログラムや前記所定のプログラムの実行に必要なデータ等の各種の所定のデータ等を記憶する、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)、前記所定のプログラムを読み出して実行することによって所定の演算処理や制御処理を行うCPU(Central Processing Unit)、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる前記CPUのワーキングメモリとなるRAM、および、これらの周辺回路を備えたマイクロコンピュータ等によって構成される。なお、この制御部62は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の書き換え可能な不揮発性の記憶素子を備えても良い。制御部62は、機能的に、映像表示制御部63を備えている。
【0089】
映像表示制御部63は、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像を表示する場合に、本実施形態では、角速度センサユニット30で検出された撮影ユニット20の撮影方向の変化が所定の第1時間内において所定の方向に沿う往復移動の場合に、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像を表示する場合における前記被写体の映像の切り換えを制限するものであり、例えば、機能的に、撮影方向判定部631と、観察制限制御部632とを備えて構成される。映像表示制御部63は、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像を表示ユニット40に表示する場合には、表示ユニット40に表示すべき映像を制御し、また、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像を遠隔支援装置5に出力する場合には、遠隔支援装置5宛てに送信する通信信号に収容される映像を制御するものである。
【0090】
撮影方向判定部631は、角速度センサユニット30で検出された作業者W(装着者)の頭部の角速度に基づいて撮影ユニット20の撮影方向を検出し、この検出された撮影ユニット20の撮影方向が所定の第1時間内に所定の方向に沿って往復移動したか否かを判定し、その判定結果を観察制限制御部632へ通知するものである。
【0091】
観察制限制御部632は、撮影方向判定部631から通知された判定結果に応じて撮影ユニット20で生成される映像の切り換えを制限するものである。なお、制御部62は、この切り換えを制限した被写体の映像をネットワークIF部68からネットワークNTを介して遠隔支援装置5へ送信する。
【0092】
より具体的には、例えば、撮影方向判定部631は、角速度センサユニット30で検出された作業者Wの頭部の角速度に基づいて検出された撮影方向が前記所定の第1時間内に前記所定の方向に沿って略180度異なる方向へ2回以上変化したか否かを判定し、その判定結果を観察制限制御部632へ通知するものであり、観察制限制御部632は、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像を表示する場合において、前記判定結果に基づいて、角速度センサユニット30で検出された作業者Wの頭部の角速度に基づいて検出された撮影方向が前記所定の第1時間内に前記所定の方向に沿って略180度異なる方向へ2回以上変化した場合に、撮影ユニット20で生成される映像の切り換えを制限するものである。例えば、本実施形態では、観察制限制御部632は、被写体の映像におけるフレームを予め設定された所定のフレームに制限することで、撮影ユニット20で生成される映像の切り換えを制限する。前記判定における、撮影方向が前記所定の方向に沿って略180度異なる方向へ変化する回数は、頭部が高速に移動したり揺れたりした場合に頭部に装着されるカメラによって撮影された映像を観察者が見た場合に観察者が気分を悪くするか否かの観点から例えば統計等によって決定される回数であり、例えば、本実施形態では、2回である。このように撮影方向が前記所定の方向に沿って略180度異なる方向へ2回以上変化した場合に所定の方向に沿った往復移動があったと判定する簡易な判定条件としているので、角速度センサユニット30や映像表示制御部63等のこのための装置を比較的簡単な装置や処理で実現することが可能である。
【0093】
前記所定の第1時間(判定時間A)は、予め設定され、例えば、頭部が高速に移動したり揺れたりした場合に頭部に装着されるカメラによって撮影された映像を観察者が見た場合に観察者が気分を悪くするか否かの観点から例えば統計等によって決定される時間長である。一例では、頭部が約0.3秒〜3秒程度の間に往復移動した場合に、その頭部に装着されたカメラによって撮影された映像を見た観察者は、映像酔い等の気分が悪くなりやすい。約0.3秒を下回ると、前記観察者は、いわゆる手ぶれのような単なるブレと意識され、一方、約3秒を上回ると、前記観察者は、往復移動のサイクルが充分に長いので、映像酔い等の気分が悪くなりにくい。このため、前記所定の第1時間は、例えば、約0.3秒〜3秒のうちのいずれかの時間長に設定される。このような映像酔い等の気分の悪くなりやすい時間帯のうちのいずれかの時間に第1時間を設定しているので、このような事態を効果的に抑制または防止することが可能となる。
【0094】
観察制限制御部632による映像の切り換えの制限は、例えば、所定の第2時間の間、被写体の映像におけるフレームを更新しないことによって行われてよい。より具体的には、例えば、本実施形態では、観察制限制御部632は、前記第2時間の間、VRAM64の各データを更新せず、前記第2時間の開始時刻における被写体の映像におけるフレームの各データ値をそのまま維持するように、VRAM64を制御する。したがって、前記第2時間の開始時刻における被写体の映像におけるフレームがそのまま維持され、静止画のように表示ユニット40や遠隔支援装置5のディスプレイ163aに表示される。このように被写体の映像におけるフレームを更新しないので被写体の映像が、第2時間中、略静止画となり、被写体の映像におけるフレームを更新しないという比較的簡易な手法によって、映像酔い等の気分の悪くなることを低減または防止することができる。
【0095】
また例えば、観察制限制御部632による映像の切り換えの制限は、所定の第2時間の間、被写体の映像を表示しないことによって行われてよい。より具体的には、例えば、本実施形態では、観察制限制御部632は、前記第2時間の間、VRAM64の各データを予め設定された所定レベルのデータ値に書き換えるように、VRAM64を制御する。すなわち、第2時間中、表示ユニット40や遠隔支援装置5のディスプレイ163aには、例えば黒や白等の単色表示で、被写体が何も表示されない。このように被写体の映像を表示せずに被写体の映像を消し、被写体の映像を表示しないという比較的簡易な手法によって、映像酔い等の気分の悪くなることを低減または防止することができる。
【0096】
また例えば、観察制限制御部632による映像の切り換えの制限は、被写体の映像の信号を遠隔支援装置5に送信しないことや、被写体の映像の信号を表示ユニット40に出力しないことや、被写体の映像の信号をVRAM64に記録しないこと等であっても良い。
【0097】
前記所定の第2時間(観察制限時間B)は、予め設定され、例えば、映像酔い等の気分の悪くなることがないように、前記所定の第1時間(判定時間A)を超えるように決定される時間長であり、前記継続時間は、例えば統計等によって決定される。例えば、前記所定の第2時間は、前記第1時間よりも長く、かつ、1秒〜5秒のうちのいずれかの時間長に設定される。このように、第2時間中、被写体の映像の切り換えを制限することで、映像酔い等の気分の悪くなることを低減または防止することができるとともに、前記被写体の映像の切り換えを制限する第2時間を設けるので、第2時間の経過後に、被写体の映像の切り換えの制限を解除し、元に復帰することができる。前記所定の第2時間が1秒を下回ると、映像酔い等の気分の悪くなることを低減または防止することが難しく、好ましくない。一方、前記所定の第2時間が5秒を上回ると、表示ユニット40に表示される映像や遠隔支援装置5に表示される映像の即時性が損なわれ、指示者Aに作業者Wの映像が略リアルタイムに提供されなくなり、適切な指示を与えることが難しくなるので、好ましくない。
【0098】
また例えば、前記所定の方向は、鉛直方向であってよく、撮影方向判定部631は、鉛直方向角速度センサユニット31で検出された作業者W(装着者)の頭部における鉛直方向の角速度に基づいて撮影ユニット20の鉛直面内における撮影方向(鉛直方向での上方方向(+方向)または下方方向(−方向))を検出し、この検出された撮影ユニット20の撮影方向が所定の第1時間内に鉛直方向に沿って往復移動したか否かを判定し、その判定結果を観察制限制御部632へ通知するものであって、観察制限制御部632は、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像を表示する場合において、前記判定結果に基づいて、撮影ユニット20の撮影方向が所定の第1時間内に鉛直方向に沿って往復移動した場合に、前記被写体の映像の切り換えを制限するものである。このように構成することによって、装着者の頭部における鉛直方向の往復移動による映像酔い等の気分の悪くなることに対処することができる。特に、装着者の歩行の場合や、装着者が肯定を頭部の鉛直方向における往復運動によって示す場合に対処することができる。
【0099】
なお、鉛直方向角速度センサ部31は、本実施形態では、2軸圧電振動ジャイロセンサのうちの1軸を利用することで構成されたが、水平センサを備えて構成されてもよい。このように撮影方向の鉛直方向における往復移動を検出するためにセンサとして水平センサを用いることで、比較的簡単な構造で安価に、撮影方向における鉛直方向に沿った往復移動を検出することができる。
【0100】
また例えば、前記所定の方向は、水平方向であってよく、撮影方向判定部631は、水平方向角速度センサユニット32で検出された作業者W(装着者)の頭部における水平方向の角速度に基づいて撮影ユニット20の水平面内における撮影方向(水平方向での右方向(+方向)または左方向(−方向))を検出し、この検出された撮影ユニット20の撮影方向が所定の第1時間内に水平方向に沿って往復移動したか否かを判定し、その判定結果を観察制限制御部632へ通知するものであって、観察制限制御部632は、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像を表示する場合において、前記判定結果に基づいて、撮影ユニット20の撮影方向が所定の第1時間内に水平方向に沿って往復移動した場合に、前記被写体の映像の切り換えを制限するものである。このように構成することによって、装着者の頭部における水平方向の往復移動による映像酔い等の気分の悪くなることに対処することができる。特に、装着者が否定を頭部の水平方向における往復運動によって示す場合に対処することができる。
【0101】
本実施形態では、撮影装置1の装着ユニット10、撮影ユニット20、角速度センサユニット30および制御ユニット60における映像表示制御部63が、それぞれ、請求項の装着部、撮影部、撮影方向検出部および映像表示制御部の一例に相当し、そして、遠隔支援装置5のディスプレイ163aが表示部および第2表示部の一例に相当する。そして、撮影装置1の表示ユニット40が撮影ユニット20の電子ファインダとして機能していることから、本実施形態では、撮影装置1の表示ユニット40も表示部の一例に相当している。
【0102】
次に、本実施形態の動作について説明する。図5は、本実施形態の遠隔作業支援システムにおける撮影装置の動作を示すフローチャートである。図6は、撮影方向の往復移動が第1態様である場合における、本実施形態の遠隔作業支援システムにおける撮影装置の動作を説明するためのタイムチャートである。図7は、撮影方向の往復移動が第2態様である場合における、本実施形態の遠隔作業支援システムにおける撮影装置の動作を説明するためのタイムチャートである。図8は、撮影方向の往復移動が第3態様である場合における、本実施形態の遠隔作業支援システムにおける撮影装置の動作を説明するためのタイムチャートである。これら図6(A)、図7(A)および図8(A)は、撮影方向を示し、図6(B)、図7(B)および図8(B)は、遠隔支援装置5のディスプレイ163aや表示ユニット40に表示される表示映像の態様を示す。また、図6(A)、図7(A)および図8(A)における各矢印は、各サンプリング時刻における撮影ユニット20の各撮影方向の変化方向(移動方向)を示し、(+)は、前記所定の方向に沿った一方方向を示し、(−)は、(+)方向の180度異なる他方方向を示す。
【0103】
本実施形態の遠隔作業支援システムSにおける撮影装置1は、被写体の映像の切り換えを制限する制御に関し、図5に示すように動作している。すなわち、図5において、ステップS11では、撮影ユニット20の撮影方向の変化方向(移動方向)を検出すべく、角速度センサユニット30によって作業者W(装着者)の頭部の角速度が検出され、この検出結果が制御ユニット60へ出力され、制御ユニット60で記憶される。
【0104】
続いて、制御ユニット60において、この検出結果が角速度センサユニット30から入力されてくると、上述のように、制御部62の映像表示制御部63によって、この検出結果が記憶され、この検出結果が所定の条件を満たすか否かが判定される。例えば、上述したように、この検出結果に基づいて検出された撮影ユニット20の撮影方向の変化方向が前記所定の第1時間内に前記所定の方向に沿って略180度異なる方向へ2回以上変化したか否かが、判定される。より具体的には、本実施形態では、前記検出結果に基づいて検出された撮影ユニット20の撮影方向の変化方向が前記所定の第1時間内に鉛直方向や水平方向に沿って略180度異なる方向へ2回変化したか否かが、判定される。
【0105】
この判定において、本実施形態では、図5に示すように、まず、ステップS12では、映像表示制御部63の撮影方向判定部631によって、この検出結果が記憶され、この検出結果に基づいて検出された撮影ユニット20の撮影方向の変化方向が鉛直方向や水平方向に沿って略180度異なる方向へ変化したか否かが、判定される。この判定の結果、撮影ユニット20の撮影方向の変化方向が鉛直方向や水平方向に沿って略180度異なる方向へ変化した場合(Y)には、この今回の撮影方向の反転を判定した時刻が記憶され、ステップS13の処理が実行され、一方、撮影ユニット20の撮影方向の変化方向が鉛直方向や水平方向に沿って略180度異なる方向へ変化していない場合(N)には、ステップS14の処理が実行される。
【0106】
ここで、この撮影ユニット20の撮影方向の変化方向における略180度異なる方向への変化は、例えば、前回の検出結果に基づいて検出された前回の撮影ユニット20の撮影方向と今回の検出結果に基づいて検出された今回の撮影ユニット20の撮影方向とを比較することによって判断され、これらが略180度異なる方向である場合には、撮影方向判定部631によって、前回の検出と今回の検出との間に、撮影ユニット20の撮影方向の変化方向が略180度異なる方向へ1回変化したと判断され、一方、これらが略180度異なる方向ではない場合には、撮影方向判定部631によって、前回の検出と今回の検出との間に、撮影ユニット20の撮影方向の変化方向が略180度異なる方向への変化がないと判断される。
【0107】
ステップS14では、映像表示制御部63の観察制限制御部632によって、被写体の映像における切り換え制限が行われることなく、例えば15fps(毎秒15フレーム)や24fps(毎秒24フレーム)や30fps(毎秒30フレーム)等のデフォルトのフレームレートで被写体の映像を表示するべく、被写体の映像の信号(表示用映像信号)が撮影装置1から遠隔支援装置5へ送信される。遠隔支援装置5では、この表示用映像信号が受信されると、表示用映像信号による映像がディスプレイ163aに表示される。これによって指示者Aは、作業者W(装着者)の前方視野内の被写体を参照することができ、例えば、作業対象物を観察することができる。また、本実施形態では、この被写体の映像は、撮影装置1の表示ユニット40にも表示される。これによって作業者W(装着者)は、撮影ユニット20によって撮影されている領域を見ることができる。
【0108】
続いて、ステップS15では、本撮影放置1の稼動が終了であるか否かが判定され、この判定の結果、稼動が終了である場合(Y)には、処理を終了し、稼動が終了していない場合(N)には、処理をステップS11に戻す。
【0109】
一方、ステップS13では、映像表示制御部63の撮影方向判定部631によって、前記ステップS12で判定された撮影ユニット20の撮影方向の反転が前記所定の第1時間内(判定時間A内)であるか否かが、判定される。この判定の結果、撮影ユニット20の撮影方向の反転が前記所定の第1時間内である場合(Y)には、ステップS21の処理が実行され、一方、撮影ユニット20の撮影方向の反転が前記所定の第1時間内ではない場合(N)には、上述のステップS14の処理が実行される。
【0110】
ここで、この撮影ユニット20の撮影方向の反転が前記所定の第1時間内であるか否かの判定は、例えば、前回の撮影方向の反転を判定した時刻と今回の撮影方向の反転を判定した時刻とを比較することによって判断され、これら時刻の差が前記所定の第1時間内である場合には、撮影方向判定部631によって、撮影ユニット20の撮影方向の反転が前記所定の第1時間内であると判断され、一方、これら時刻の差が前記所定の第1時間内ではない場合には、撮影方向判定部631によって、撮影ユニット20の撮影方向の反転が前記所定の第1時間内ではないと判断される。なお、前回の撮影方向の反転を判定した時刻が記憶されていない場合には、撮影装置1の起動後における最初の反転であり、前記所定の第1時間内ではない場合と判断すればよい。
【0111】
続いて、ステップS21では、映像表示制御部63の観察制限制御部632によって、前記所定の第2時間(観察制限時間B)を計時するためのタイマ(例えばソフトウェアタイマ)が0にリセット(初期化)され、その後に、計時がスタート(開始)される。
【0112】
続いて、ステップS22では、観察制限制御部632によって、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像を表示する場合において、その被写体の映像の切り換えを制限すべく、映像の切り換えを制限した被写体の映像の信号(表示用映像信号)が撮影装置1から遠隔支援装置5へ送信される。例えば、上述したように、同じフレームの映像の信号や、被写体を表示しない予め設定された所定のフレームの映像の信号が送信される。遠隔支援装置5では、この表示用映像信号が受信されると、表示用映像信号による、映像の切り換えを制限した映像が、ディスプレイ163aに表示される。これによって指示者Aは、作業者Wの撮影装置1を介して例えば作業対象物を観察している場合に、作業者W(装着者)がその頭部を高速に移動させたり揺らしたりした場合でもあっても、この被写体の映像の切り換えが制限されることによって、前記指示者Aは、このカメラによって撮影された映像によって映像酔い等の気分が悪くなることが低減される。また、本実施形態では、この映像の切り換えを制限した被写体の映像は、撮影装置1の表示ユニット40にも表示される。これによって作業者W(装着者)は、その頭部を高速に移動させたり揺らしたりした場合でもあっても、この撮影された映像によって映像酔い等の気分が悪くなることが低減される。
【0113】
続いて、ステップS23において、ステップS11と同様に、撮影ユニット20の撮影方向の変化方向を検出すべく、角速度センサユニット30によって作業者W(装着者)の頭部の角速度が検出され、この検出結果が制御ユニット60へ出力され、制御ユニット60で記憶される。
【0114】
続いて、ステップS24では、ステップS12と同様に、映像表示制御部63の撮影方向判定部631によって、この検出結果が記憶され、この検出結果に基づいて検出された撮影ユニット20の撮影方向の変化方向が鉛直方向や水平方向に沿って略180度異なる方向へ変化したか否かが、判定される。この判定の結果、撮影ユニット20の撮影方向の変化方向が鉛直方向や水平方向に沿って略180度異なる方向へ変化した場合(Y)には、この今回の撮影方向の反転を判定した時刻が記憶され、ステップS25の処理が実行され、一方、撮影ユニット20の撮影方向の変化方向が鉛直方向や水平方向に沿って略180度異なる方向へ変化していない場合(N)には、ステップS26の処理が実行される。
【0115】
ステップS25では、ステップS13と同様に、映像表示制御部63の撮影方向判定部631によって、前記ステップS24で判定された撮影ユニット20の撮影方向の反転が前記所定の第1時間内(判定時間A内)であるか否かが、判定される。
【0116】
この判定の結果、撮影ユニット20の撮影方向の反転が前記所定の第1時間内である場合(Y)には、ステップS21の処理が実行される。したがって、この場合(Y)では、ステップS21以下の処理の実行によって、被写体の映像の切り換え制限(観察制限)が続行されるとともに、前記所定の第2時間(観察制限時間B)の計時が再スタートされる。
【0117】
一方、このステップS25における判定の結果、撮影ユニット20の撮影方向の反転が前記所定の第1時間内ではない場合(N)には、上述のステップS26の処理が実行される。
【0118】
ステップS26では、映像表示制御部63の観察制限制御部632によって、前記タイマがタイムアウトしているか否かが、判定される。すなわち、被写体の映像の切り換えを制限した時刻から前記所定の第2時間(観察制限時間B)が経過したか否かが、判定される。
【0119】
この判定の結果、タイマがタイムアウトしていない場合(N)では、ステップS22の処理が実行される。したがって、この場合(Y)では、ステップS22以下の処理の実行によって、被写体の映像の切り換え制限(観察制限)が続行される。
【0120】
一方、このステップS26における判定の結果、タイマがタイムアウトしている場合(Y)では、ステップS14の処理が実行される。したがって、この場合(Y)では、ステップS14以下の処理の実行によって、被写体の映像の切り換え制限(観察制限)が解除される。
【0121】
このように動作する遠隔作業支援システムSおよび撮影装置1では、例えば、図6(A)に示すように、撮影ユニット20の撮影方向が時刻t11で第1の反転(1)が起こり、続いて、時刻t12で第2の反転(2)が起こり、そして、時刻t13で第3の反転が起こる場合であって、第1の反転(1)から第2の反転(2)が起こる時間間隔T1(=t12−t11)および第2の反転(2)から第3の反転(3)が起こる時間間隔T2(=t13−t12)が前記所定の第1時間(判定時間A)よりも長い第1態様では、上述したステップS11、ステップS12、ステップS13、ステップS14およびステップS15の各処理が繰り返されることとなり、図6(B)に示すように、被写体の映像は、その切り換えに制限を受けず、指示者Aや作業者Wは、被写体の映像を観察し続けることになる。
【0122】
また例えば、このように動作する遠隔作業支援システムSおよび撮影装置1では、例えば、図7(A)に示すように、撮影ユニット20の撮影方向が時刻t21で第1の反転(1)が起こり、そして、時刻t22で第2の反転(2)が起こる場合であって、第1の反転(1)から第2の反転(2)が起こる時間間隔T1(=t22−t21)が前記所定の第1時間(判定時間A)よりも短い第2態様では、上述したステップS11、ステップS12、ステップS13、ステップS14およびステップS15の各処理が実行された後に、ステップS11、ステップS12およびステップS13の各処理が実行され、続いて、ステップS21ないしステップS26の各処理が実行され、そして、ステップS14およびステップS15の各処理が実行されることとなり、図7(B)に示すように、被写体の映像は、第2の反転(2)でその反転時刻t22から被写体の映像の切り換えに制限を受け、指示者Aや作業者Wは、前記反転時刻t22から観察制限時間Bが経過するまで、映像の切り換え制限された映像を観察することになり、前記反転時刻t22から観察制限時間Bが経過すると、映像の切り換え制限が解除され、被写体の映像が通常通りに復帰する。
【0123】
また例えば、このように動作する遠隔作業支援システムSおよび撮影装置1では、例えば、図8(A)に示すように、撮影ユニット20の撮影方向が時刻t31で第1の反転(1)が起こり、続いて、時刻t32で第2の反転(2)が起こり、そして、時刻t33で第3の反転が起こる場合であって、第1の反転(1)から第2の反転(2)が起こる時間間隔T1(=t32−t31)および第2の反転(2)から第3の反転(3)が起こる時間間隔T2(=t33−t32)が前記所定の第1時間(判定時間A)よりも短い第3態様では、上述したステップS11、ステップS12、ステップS13、ステップS14およびステップS15の各処理が実行された後に、ステップS11、ステップS12およびステップS13の各処理が実行され、続いて、ステップS21ないしステップS25の各処理が実行され、そして、再び、ステップS21ないしステップS25の各処理が実行された後に、ステップS26、ステップS14およびステップS15の各処理が実行されることとなり、被写体の映像は、第2の反転(2)でその反転時刻t22から被写体の映像の切り換えに制限を受け、前記反転時刻t32から観察制限時間Bが経過する前に、再び、第3の反転(3)でその反転時刻t33から被写体の映像の切り換えに制限を受け、前記反転時刻t32から前記反転時刻t33を超えて、さらに、前記反転時刻t33から観察制限時間Bが経過するまで、被写体の映像の切り換えに制限を受け続けることになる。このため、指示者Aや作業者Wは、前記反転時刻t32を起点に、前記反転時刻t33から観察制限時間Bが経過するまでの時間帯、映像の切り換え制限された映像を観察することになり、前記反転時刻t33から観察制限時間Bが経過すると、映像の切り換え制限が解除され、被写体の映像が通常通りに復帰する。
【0124】
このように本実施形態の遠隔作業支援システムSおよび撮影装置1では、撮影ユニット20の撮影方向の変化を検出するべく、頭部の角速度が角速度センサユニット30で検出され、その検出された撮影ユニット20の撮影方向の変化に基づいて遠隔支援装置5の出力装置163や撮影装置1の表示ユニット40に表示される被写体の映像の切り換えが制限される。このため、本実施形態の遠隔作業支援システムSおよび撮影装置1は、この被写体の映像の切り換えが制限されることによって、被写体の映像が例えばコマ落としや略静止画等のように表示され、あるいは例えば非表示とされ、映像酔い等の気分が悪くなることを低減することができる。
【0125】
また、本実施形態では、撮影ユニット20の撮像素子22に、CMOS型イメージセンサが用いられている。上述したように、CMOS型イメージセンサは、各画素の画像信号を順次に走査することによって得ている。このため、頭部が高速に移動したり揺れたりした場合では、映像が歪みやすく、これにより、映像酔い等の気分が悪くなることが、一層、発生しやすい。しかしながら、本実施形態では、上述したように、頭部の角速度が角速度センサユニット30で検出され、その検出された頭部の角速度に基づいて撮影ユニット20の撮影方向の変化が検出され、この検出された撮影ユニット20の撮影方向の変化に基づいて表示用の被写体の映像におけるその切り換えが制限されるので、撮影ユニット20の撮像素子22がCMOS型イメージセンサであっても、表示する場合に、この撮影ユニット20によって撮影された映像により、映像酔い等の気分が悪くなることを低減することができる。このように本実施形態の遠隔作業支援システムSおよび撮影装置1は、撮影ユニット20の撮像素子22がCMOS型イメージセンサである場合に、効果的である。
【0126】
また、本実施形態では、表示ユニット40は、撮影ユニット20の電子ファインダとして機能し、撮影ユニット20とともに装着ユニット10に取り付けられている。このような構成であっても、本実施形態では、頭部の角速度が角速度センサユニット30で検出され、その検出された頭部の角速度に基づいて撮影ユニット20の撮影方向の変化が検出され、この検出された撮影ユニット20の撮影方向に基づいて表示用の被写体の映像におけるその切り換えが制限されるので、作業者W(装着者)において、この撮影ユニット20によって撮影された映像により、映像酔い等の気分が悪くなることを低減することができる。また、本実施形態のように表示ユニット40が撮影ユニット20の電子ファインダとして機能し、表示ユニット40と撮影ユニット20とが一体的に構成されている場合に、効果的である。
【0127】
また、本実施形態では、表示ユニット40の接眼光学系41が装着ユニット10の透明部材14Rに取り付けられている。このような構成では、透明部材14Rが被写体の光像を所定の透過率で透過するとともに、表示ユニット40の接眼光学系41がこの透明部材14Rに設けられた表示ユニット40の接眼光学系41によって、被写体の映像を被写体の光像に重ねて表示することができる。このため、このような構成では、作業者W(装着者)の視界を損なうことが低減され、作業者Wは、作業者Wの視界にある外界と表示ユニット40の表示とを一緒に見ることができる。したがって、本実施形態の撮影装置1は、作業支援に効果的である。
【0128】
なお、本実施形態では、撮影装置1は、映像を表示することができるように表示ユニット40を備えているが、指示者Aの指示を音声のみで作業者Wに提供する場合には、表示ユニット40は、備えていなくてもよい。
【0129】
また、本実施形態では、角速度センサユニット30は、鉛直方向角速度センサ部31および水平方向角速度センサ部32を備え、映像表示制御部63は、角速度センサユニット30の出力に基づいて、撮影ユニット20の撮影方向が所定の第1時間内に鉛直方向に沿って往復移動した場合および撮影ユニット20の撮影方向が所定の第1時間内に水平方向に沿って往復移動した場合のうちの少なくとも一方の場合に、被写体の映像の切り換えを制限するものであったが、角速度センサユニット30は、鉛直方向角速度センサ部31のみを備え、映像表示制御部63は、角速度センサユニット30の出力に基づいて、撮影ユニット20の撮影方向が所定の第1時間内に鉛直方向に沿って往復移動した場合に、被写体の映像の切り換えを制限するものであってもよく、また、角速度センサユニット30は、水平方向角速度センサ部32のみを備え、映像表示制御部63は、角速度センサユニット30の出力に基づいて、撮影ユニット20の撮影方向が所定の第1時間内に水平方向に沿って往復移動した場合に、被写体の映像の切り換えを制限するものであってもよい。
【0130】
特に、角速度センサユニット30が鉛直方向角速度センサ部31のみを備える場合に、この鉛直方向角速度センサ部31として、水平センサを用いることで、比較的簡単な構造で安価に、撮影方向における鉛直方向に沿った往復移動を検出するためのセンサを構成することが可能となる。この水平センサは、振り子式のセンサであり、振り子(一方端に錘が吊り下げられるとともに周方向に変位可能に他方端が支持された線材)の傾きで鉛直面内における撮影方向を検出することができる。
【0131】
また、本実施形態では、図4に破線で示すように、撮影ユニット20によって撮影され、映像表示制御部63の映像表示制御63によって被写体の映像の切り換えを制限する前の前記被写体の映像と制限した区間情報を併せて記録する記録部70をさらに備えて構成されてもよい。記録部70は、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ等のメモリカード等を備えて構成される。本実施形態では、画像メモリ61には、被写体の映像の切り換えを制限する前の被写体の映像が記憶されているので、このような構成を容易に実現することが可能である。このように構成することによって、被写体の映像の切り換えを制限する前の被写体の映像が記録部70に記録されるので、頭部が高速に移動したり揺れたりした場合でもあっても、より正確な被写体の映像を記録することができる。また、切り換え制限した区間情報を併せて記録することで、後日、保存された映像を観察する際に、必要に応じて制限部分をスキップし、映像酔い等が発生することなく観察することも選択可能となる。
【0132】
さらに、この撮影装置1は、この切り換え制限後の被写体の映像だけでなく、この被写体の映像の切り換え制限前の被写体の映像をネットワークIF部68を用いて撮影装置1から遠隔支援装置5へ送信するように構成され、支援記録サーバPC7は、この切り換え制限前のこの被写体の映像を記憶して記録するように構成されてもよい。切り換え制限前の被写体の映像は、例えば、所定時間纏めて適宜なタイミングで送信される。このように構成することによって、被写体の映像の切り換えを制限する前の被写体の映像が支援記録サーバPC7に記録されるので、頭部が高速に移動したり揺れたりした場合でもあっても、より正確な被写体の映像を記録することができる。
【0133】
また、上述の実施形態では、撮影ユニット20の撮影方向の変化は、角速度センサユニット30で検出した装着者(作業者W)の頭部の角速度に基づいて検出されたが、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像のうちの2枚の画像間における対応点を対応点探索処理によって抽出することで、検出されてもよい。
【0134】
図9は、実施形態にかかる遠隔作業支援システムにおける撮影装置の他の電気的な構成を示すブロック図である。このような遠隔作業支援システムSにおける撮影装置1Aは、図9に示すように、図略の装着ユニット10と、撮影ユニット20と、表示ユニット40と、音入出力ユニット50と、制御ユニット60Aとを備えて構成される。これら装着ユニット10、撮影ユニット20、表示ユニット40および音入出力ユニット50は、図1ないし図8を用いて説明した上記実施形態の撮影装置1における装着ユニット10、撮影ユニット20、表示ユニット40および音入出力ユニット50と同様であるので、その説明を省略する。
【0135】
そして、制御ユニット60Aは、撮影装置1Aの全体制御を司る回路であり、画像メモリ61と、制御部62Aと、VRAM64と、音入力処理部65と、音出力処理部66と、電源スイッチ67と、ネットワークIF部68とを備えて構成される。これら画像メモリ61、VRAM64、音入力処理部65、音出力処理部66、電源スイッチ67およびネットワークIF部68は、図1ないし図8を用いて説明した上記実施形態の撮影装置1の制御ユニット60における画像メモリ61、VRAM64、音入力処理部65、音出力処理部66およびネットワークIF部68と同様であるので、その説明を省略する。
【0136】
制御部62Aは、撮影装置1Aの各部を当該機能に応じて制御する回路であり、例えば、マイクロコンピュータ等によって構成される。制御部62Aは、図1ないし図8を用いて説明した上記実施形態の撮影装置1における制御部62の機能に加え、さらに、機能的に、撮影方向検出部80を備えている。この撮影方向検出部80は、対応点探索部であって、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像のうちの2枚の画像間における対応点を対応点探索処理によって抽出することで、撮影ユニット20の撮影方向を検出するものである。
【0137】
この対応点探索処理による撮影ユニット20の撮影方向の検出では、撮影方向検出部80は、次のように動作する。まず、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像のうちの2枚の画像が抽出される。例えば、撮影ユニット20によって撮影された被写体の映像における今回のフレームにおける撮影ユニット20の撮影方向を検出する場合には、今回のフレームと、今回のフレームから予め設定された所定のフレームだけ時間的に遡った過去のフレームとが抽出される。例えば、フレームレートが24fpsである場合に、1秒間に、3回、撮影ユニット20の撮影方向を検出する場合では、今回のフレームと今回のフレームより8フレームだけ時間的に前のフレームとが取り出される。
【0138】
次に、今回のフレームにおける画像の中から予め設定された所定の特徴点が設定される。この所定の特徴点は、例えば、画像における予め設定された特定の位置(例えば画像の中央位置等)であっても良く、また例えば、画像の中から予め設定された特定の対象物であっても良い。前記特定の対象物は、例えば、前記特定の対象物の画像を予め記憶して登録しておき、パターンマッチングによって前記画像の中から検索される。また、この所定の特徴点は、1個であっても良く、また複数であってもよい。処理時間を短縮する観点からは、この所定の特徴点は、1個であることが好ましく、また、撮影ユニット20の撮影方向をより正確に検出する観点からは、この所定の特徴点は、複数であることが好ましい。また、この所定の特徴点は、複数の画素から構成されてよい。
【0139】
次に、今回のフレームの画像における前記所定の特徴点が過去のフレームの画像におけるいずれの位置に存在するかが、マッチング処理によって探索される。より具体的には、前記所定の特徴点を構成する画素の画素値と略一致する画素値を持つ画素が、過去のフレームの画像から探索され、過去のフレームにおいて、前記略一致する画素値を持つ画素の位置が、今回のフレームの画像における前記所定の特徴点に対応する過去のフレームの画像における位置とされる。
【0140】
そして、今回のフレームの画像における前記所定の特徴点の位置と、前記所定の特徴点に対応する過去のフレームの画像における画素の位置とから、撮影ユニット20の撮影方向が求められ、撮影ユニット20の撮影方向が検出される。
【0141】
このように構成することによって、遠隔作業支援システムSおよび撮影装置1Aは、対応点探索処理の画像処理で撮影ユニット20の撮影方向の変化を検出するので、例えば角速度センサユニット30のようなセンサ部品を、別途に必要せず、センサレスでソフトウェアによって撮影方向検出部を構成することが可能となる。
【0142】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0143】
S 遠隔作業支援システム
1、1A 撮影装置
5 遠隔支援装置
6 メインサーバコンピュータ装置
7 支援記録サーバコンピュータ装置
8 コンテンツサーバコンピュータ装置
10 装着ユニット
20 撮影ユニット
30 角速度センサユニット
31 鉛直方向角速度センサ部
32 水平方向角速度センサ部
40 表示ユニット
41 接眼光学系
41a 光学プリズム
41b 反射部
50 音入出力ユニット
60、60A 制御ユニット
63 映像表示制御部
631 撮影方向判定部
632 観察制限制御部
70 記録部
80 撮影方向検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に装着する装着部と、被写体を撮影する撮影部とを備える頭部装着式撮影部と、
前記撮影部の撮影方向の変化を検出する撮影方向検出部と、
前記撮影方向検出部で検出された前記撮影部の撮影方向の変化が、所定の第1時間内において所定の方向に沿う往復移動の場合に、前記撮影部によって撮影された被写体の映像を表示する場合における前記被写体の映像の切り換えを制限する映像表示制御部とを備えること
を特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記往復移動は、前記撮影方向検出部で検出された前記撮影部の撮影方向が前記所定の方向に沿って略180度異なる方向へ2回以上変化することであること
を特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
前記所定の第1時間は、0.3秒〜3秒であること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記映像表示制御部は、所定の第2時間の間、前記被写体の映像におけるフレームを更新しないことによって、前記被写体の映像の切り換えを制限すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記映像表示制御部は、所定の第2時間の間、前記被写体の映像を表示しないことによって、前記被写体の映像の切り換えを制限すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項6】
前記所定の第2時間は、前記第1時間よりも長く、かつ、1秒〜5秒であること
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項7】
前記所定の方向は、鉛直方向であること
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項8】
前記所定の方向は、水平方向であること
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項9】
前記撮影方向検出部は、水平センサを備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項10】
前記撮影方向検出部は、角速度センサを備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項11】
前記撮影方向検出部は、前記撮影部によって撮影された被写体の映像のうちの2枚の画像間における対応点を対応点探索処理によって抽出することで、前記撮影部の撮影方向を検出する対応点探索部を備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項12】
前記頭部装着式撮影部の撮影部は、前記被写体の光学像を電気的な信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子の受光面上に前記被写体の光学像を形成する光学系とを備え、
前記撮像素子は、CMOS型イメージセンサであること
を特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項13】
前記頭部装着式撮影部の撮影部によって撮影された被写体の映像を表示する表示部をさらに備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項12の何れか1項に記載の撮影装置。
【請求項14】
前記表示部は、前記頭部装着式撮影部に備えられていること
を特徴とする請求項13に記載の撮影装置。
【請求項15】
音を音信号に変換する音入力部と、音信号を音に変換する音出力と、通信信号を送受信する通信部と、前記通信部の送受信を制御する通信制御部とをさらに備え、
前記通信制御部は、前記音入力部によって変換された音信号を前記通信部に送信させるとともに、音を出力させるべく、前記通信部によって受信された音信号を前記音出力部へ出力すること
を特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項16】
撮影装置と、通信網を介して前記撮影装置と通信可能に接続される遠隔作業支援装置とを備える遠隔作業支援システムであって、
前記撮影装置は、請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の撮影装置であり、
前記遠隔作業支援装置は、前記通信網を介して受信され、前記頭部装着式撮影部の撮影部によって撮影された被写体の映像を表示する第2表示部と、指示者の指示を受け付けて該指示を前記通信網を介して前記撮影装置へ送信する指示受付部とを備えること
を特徴とする遠隔作業支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−109463(P2011−109463A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262968(P2009−262968)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】