操作子、操作方法及びプログラム
【課題】スティック自体に設定された軸に対する移動方向に応じて発光色を変化させる操作子を提供する。
【解決手段】スティック型操作子21は、X軸、Y軸、Z軸の3軸のそれぞれの方向に生じる加速度値を取得する加速度センサ61と、スティック型操作子21に取り付けられ、加速度センサ61が取得したX軸、Y軸、Z軸それぞれの加速度値に応じて発光するLED64と、LED64の発光を制御するCPU63と、を備える。CPU63は、加速度センサ61が取得した加速度値が、スティック型操作子21のX軸、Y軸、Z軸の3軸のうち少なくとも1軸において0とみなせる値ではない場合に、0とみなせる値以外の加速度値が取得された軸に対応する色でLED64を発光させる。
【解決手段】スティック型操作子21は、X軸、Y軸、Z軸の3軸のそれぞれの方向に生じる加速度値を取得する加速度センサ61と、スティック型操作子21に取り付けられ、加速度センサ61が取得したX軸、Y軸、Z軸それぞれの加速度値に応じて発光するLED64と、LED64の発光を制御するCPU63と、を備える。CPU63は、加速度センサ61が取得した加速度値が、スティック型操作子21のX軸、Y軸、Z軸の3軸のうち少なくとも1軸において0とみなせる値ではない場合に、0とみなせる値以外の加速度値が取得された軸に対応する色でLED64を発光させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏者の振る方向に応じて発光色を変化させる操作子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加速度センサと発光体を組み込んだ表示装置であって、地球の重力方向に対する僅かな位置変化や重力方向を基準とした往復運動等の物理量変化に対応して発光体の発光色を切り替えて、物理量の変化を色変化として認識させるスティック状の表示装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−133365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたスティック状の表示装置では、重力方向に対する傾きによって発光色が変化するだけであり、正しい打撃が行われているか判別するのが難しかった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、スティック自体に設定された軸に対する移動方向に応じて発光色を変化させる操作子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の操作子は、
スティック状の保持部材と、
前記保持部材の長手方向の軸を含めた互いに直交する3軸のそれぞれの方向に生じる加速度を取得する加速度センサと、
前記保持部材に取り付けられた発光体と、
前記加速度センサが取得した前記3軸それぞれの前記加速度に応じて前記発光体の発光を制御する発光制御手段と、を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザが操作子自体に設定された軸に対して操作子を振る方向に応じて発光体の発光色が変化することにより、ユーザが操作子のスウィングの方向を直感的に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る電子楽器の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスティック型操作子21の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るスティック型操作子21の外観の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るスティック型操作子21の詳細構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る加速度用発光色テーブルを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るCPU63からLED64Rに対して駆動データを送信する際の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るスティック型操作子21のストロークの例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るスティック型操作子21のストロークの例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る角速度用発光色テーブルを示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係るスティック型操作子21において実行される処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係る発光制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る電子楽器の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る電子楽器10は、演奏者が手に持って振るための、長手方向に延びるスティック型操作子21と、楽音を発生するための発音部22と、を備えている。発音部22は、CPU(Central Processing Unit)31、インタフェース(I/F)32、ROM(Read Only Memory)33、RAM(Random Access Memory)34、バス35、表示部36、入力部37およびサウンドシステム38を有し、これらがバス35を介して接続されている。スティック型操作子21は、図2において後述するように、加速度センサ61、角速度センサ62、CPU63、LED64および赤外線通信装置65等を有する。
【0011】
CPU31は、電子楽器10全体の制御を実行する。例えばCPU31は、電子楽器の発音部22の制御、入力部37を構成するキースイッチ(図示せず)の操作の検出に基づく制御、I/F32を介して受信したスティック型操作子21からのデータ(例えばノートオンイベント)に基づく楽音の発生の制御など、種々の処理を実行する。
【0012】
I/F32は、ノートオンイベント等のスティック型操作子21からのデータを受け入れて、RAM34に格納するとともに、CPU31にデータの受け入れを通知する。I/F32には、赤外線通信装置51が設けられており、発音部22は、スティック型操作子21が発した赤外線を、I/F32の赤外線通信装置51が受信することで、スティック型操作子21からのデータを受信することができる。なお、データの通信は赤外線通信に限らず、任意の方法(無線通信等)でよい。
【0013】
ROM33は、種々の処理プログラムを格納する。例えば、電子楽器10全体の制御、特に、電子楽器の発音部22の制御、入力部37を構成するキースイッチ(図示せず)の操作の検出、I/F32を介して受信したノートオンイベントに基づく楽音の発生など、各種機能を発揮するための種々の処理プログラムがROM33に格納されている。また、ROM33は、種々の音色の波形データ、例えば、フルート、サックス、トランペットなどの管楽器、ピアノなどの鍵盤楽器、ギターなどの弦楽器、バスドラム、ハイハット、スネア、シンバル、タムなど打楽器の波形データを格納する波形データエリアを含む。
【0014】
RAM34は、ROM33から読み出されたプログラムや、処理の過程で生じたデータやパラメータ等の各種データを記憶する。処理の過程で生じたデータには、入力部37のスイッチの操作状態、I/F32を介して受信したセンサ値等、楽音の発音状態(発音フラグ)などが含まれる。
【0015】
表示部36は、例えば、液晶表示装置で構成され、選択された音色や音量などを画像として表示することができる。また、入力部37は、各種スイッチ(図示せず)を有する。
【0016】
サウンドシステム38は、音源部41、オーディオ回路42およびスピーカ43を備える。音源部41は、CPU31からの指示にしたがって、ROM33の波形データエリアから波形データを読み出して、楽音データを生成して出力する。オーディオ回路42は、音源部41から出力された楽音データをアナログ信号に変換し、変換されたアナログ信号を増幅してスピーカ43に出力する。これによりスピーカ43から楽音が出力される。
【0017】
図2は、本実施形態に係るスティック型操作子21の構成を示すブロック図である。図2に示すように、スティック型操作子21は、加速度センサ61、角速度センサ62、CPU63、LED64、赤外線通信装置65、ROM66、RAM67、インタフェース(I/F)68および入力部69を有する。
【0018】
加速度センサ61は、例えば、静電容量型或いはピエゾ抵抗素子型の3軸センサであり、後述するX、Y、Zの3つの軸方向のそれぞれに生じた加速度を示す加速度値をそれぞれ出力することができる。また、加速度センサ61は、スティック型操作子21の演奏者が保持する根元側と反対側である先端側に設けられている。
【0019】
角速度センサ62は、例えば、ジャイロスコープを備えたセンサであり、後述するX、Y、Zの3つの軸まわりのそれぞれに生じた角速度を示す角速度値をそれぞれ出力することができる。また、角速度センサ62は、スティック型操作子21の演奏者が保持する根元側と反対側である先端側に設けられている。なお、角速度センサ62の位置は、先端側に限定されず、根元側に配置されていてもよい。
【0020】
CPU63は、スティック型操作子21全体の制御を実行する。例えばCPU63は、加速度センサ61が出力した加速度値および角速度センサ62が出力した角速度値を取得する。すると、CPU63は、当該加速度値および当該角速度値に基づいてLED64R、LED64GおよびLED64Bの発光を制御する。また、CPU63は、当該加速度値に基づいた楽音の発音タイミングを検出し、当該加速度値にしたがった音量を決定し、ノートオンイベントを生成する。そしてCPU63は、I/F68および赤外線通信装置65を介したノートオンイベントの送信制御を実行する。
【0021】
LED64は、赤色のLED64R、緑色のLED64G、及び青色のLED64Bを有する。LED64R,64G,64Bは、CPU63からの駆動の制御によって、発光する。なお、LED64R,64G,64Bの駆動の制御は、CPU63から後述する駆動回路71(図6参照)を介して送信される駆動データにしたがって実行される。
【0022】
赤外線通信装置65は、スティック型操作子21の根元側端部に設けられており、後述するI/F68を介して赤外線を発音部22側の赤外線通信装置51へ送信することで、スティック型操作子21から発音部22へデータを送信する。
【0023】
ROM66は、種々の処理プログラムを格納する。例えば、スティック型操作子21の加速度センサ61が出力した加速度値および角速度センサ62が出力した角速度値の取得、当該加速度値および角速度値に基づいたLED64R,64G,64Bの発光制御、当該加速度値に基づいた楽音の発音タイミングの検出、当該加速度値にしたがった音量の決定、ノートオンイベントの生成、I/F68および赤外線通信装置65を介したノートオンイベントの送信制御など、各種機能を発揮するための種々の処理プログラムがROM66に格納されている。RAM67は、加速度値および角速度値等、処理において取得され或いは生成された値や後述するテーブルといった各種データを格納する。
【0024】
I/F68は、CPU63からの指示にしたがって赤外線通信装置65にデータを出力する。また、入力部69は、スイッチ(図示せず)を有する。
【0025】
図3は、本実施形態に係るスティック型操作子21の外観の構成を示す斜視図である。
図3において、Y軸は、スティック型操作子21の長手方向の軸と一致する軸である。X軸は、加速度センサ61が配置された基板(図示せず)と平行で、かつ、Y軸と直交する軸である。また、Z軸は、X軸およびY軸とそれぞれ直交する軸である。本実施形態に係る加速度センサ61は、X軸、Y軸およびZ軸のそれぞれの成分の加速度値を取得することができる。
【0026】
図3において、X軸まわりの回転角311は、演奏者がスティック型操作子21を持ったときに、演奏者からみた左右軸まわりの回転角であるため、ピッチ角と称する。ピッチ角は、スティック型操作子21が、どの程度X−Y平面に対して傾けられたのかを示す角速度312である。ピッチ角は、演奏者が、スティック型操作子21の例えば根元側の部位300を手に持って、上下方向に振ることにより変化する。
【0027】
また、図3において、Y軸まわりの回転角321は、演奏者がスティック型操作子21を持ったとき、演奏者からみた前後軸まわりの回転角であるため、ロール角と称する。ロール角は、スティック型操作子21が、どの程度Y軸まわりに回転したかを示す角度322である。ロール角は、演奏者が、スティック型操作子21の例えば根元側の部位300を手に持って、手首を軸にして左右に回転させることにより変化する。
【0028】
また、図3において、Z軸まわりの回転角331は、演奏者がスティック型操作子21を持ったとき、演奏者からみた上下軸まわりの回転角であるため、ヨー角と称する。ヨー角は、スティック型操作子21が、どの程度Y−Z平面に対して傾けられたのかを示す角度332である。ヨー角は、演奏者が、スティック型操作子21の例えば根元側の部位300を手に持って、手首を軸にして左右方向に振ることにより変化する。
【0029】
図4は、本実施形態に係るスティック型操作子21の詳細構成を示すブロック図である。なお、図4では、図2で説明した構成の一部について詳細に説明する。
CPU63は、加速度センサ61がX軸方向の加速度を検出した場合には、当該X軸方向の加速度の大きさに応じた輝度でLED64Rを発光させるための駆動データを生成して、LED64Rに送信する。また、CPU63は、加速度センサ61がY軸方向の加速度を検出した場合には、当該Y軸方向の加速度の大きさに応じた輝度でLED64Gを発光させるための駆動データを生成して、LED64Gに送信する。また、CPU63は、加速度センサ61がZ軸方向の加速度を検出した場合には、当該Z軸方向の加速度の大きさに応じた輝度でLED64Bを発光させるための駆動データを生成して、LED64Bに送信する。
【0030】
また、スティック型操作子21が静止状態の場合に、LED64R,64G,64Bが消灯するようにするため、加速度センサ61は、重力加速度の検出を行わないように設定されている。
【0031】
ここで、加速度に基づいた発光色の決定方法について説明する。CPU63は、ROM66に格納された加速度用発光色テーブル(図5)を参照して発光色を決定する。
図5は、本実施形態に係る加速度用発光色テーブルを示す図である。図5によれば、X軸が赤色に、Y軸が緑色に、Z軸が青色に対応しており、CPU63は、加速度用発光色テーブルを参照することで、各軸方向に生じた加速度に対応するLED64を選択して、駆動データをLED64に送信する。
なお、X軸およびY軸に加速度が生じた場合の発光色は、赤色および緑色の合成色であるイエロー色であり、Y軸およびZ軸に加速度が生じた場合の発光色は、緑色および青色の合成色であるシアン色であり、X軸およびZ軸に加速度が生じた場合の発光色は、赤色および青色の合成色であるマゼンダ色である。また、X軸、Y軸およびZ軸に加速度が生じた場合の発光色は、赤色、緑色および青色の合成色である白色である。
【0032】
ここで、図6を参照して、CPU63が、LED64R,64G,64Bに対して駆動データを送信する際の構成について説明する。
図6は、CPU63からLED64Rに対して駆動データを送信する際の構成を示す図である。なお、LED64G,64Bについては、LED64Rと同様なので図示を省略している。
【0033】
CPU63は、駆動回路71を介して、駆動データであるPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)波形70を出力して、LED64Rに送信する。LED64Rは、抵抗72を介して接地されている。
CPU63は、加速度センサ61が取得した加速度の大きさに応じたDUTY比でPWM波形70を出力する。ここで、CPU63は、加速度の大きさが所定値α以上の場合には、PWM波形70のDUTY比を100%として出力する。また、CPU63は、加速度の大きさが0とみなせる値(以下、単に「0」と記述する)の場合には、PWM波形70のDUTY比を0%として出力する。また、CPU63は、加速度の大きさが0より大きく所定値α未満の場合には、加速度の大きさが大きいほどDUTY比が大きくなるように出力する。
駆動回路71は、PWM波形70のDUTY比が100%である場合、LED64R,64G,64Bが最大輝度で発光するように構成され、0%である場合、LED64R,64G,64Bが発光しないように構成されている。また、DUTY比が0%より大きく100%未満の場合、DUTY比が大きくなればなるほど、LED64R,64G,64Bの輝度が大きくなるように構成されている。
【0034】
したがって、例えば、図7に示すように、スティック型操作子21がY軸方向のみにストロークされている場合、すなわち、演奏者側から見て上下方向(Z軸方向)および左右方向(X軸方向)にぶれていない場合、LED64Gのみが発光する。また、Y軸方向の加速度が大きいほどLED64Gの輝度が大きくなる。
【0035】
また、例えば、図8に示すように、スティック型操作子21のY軸方向のストロークにZ軸方向のストロークが加わった場合、すなわち、演奏者側から見て左右方向(X軸方向)にぶれていない場合、LED64G,64Bが発光する。この場合、LED64は、緑色と青色の合成色であるシアン色で発光する。この際、Y軸方向の加速度の大きさがZ軸方向の加速度の大きさより大きい場合、緑色の輝度が青色の輝度より大きくなるので、シアン色であっても、緑色の割合が多くなる。
したがって、2以上の軸方向に加速度が生じた場合、赤色、緑色または青色のいずれかの合成色となるが、各軸の加速度の大きさに応じて、合成色の色合いは変化する。
【0036】
ところで、スティック型操作子21のX軸、Y軸およびZ軸の3軸全てに生じる加速度が0の場合(等速運動の場合)、CPU63は、加速度に基づくPWM波形を3軸全てについて0%で出力するため、LED64R,64G,64Bはいずれも発光しなくなってしまう。
そこで、この場合、CPU63は、角速度センサ62が検出した角速度の大きさに応じて、LED64を発光させる制御を行う。
【0037】
ここで、図4を再び参照して、角速度センサ62に基づく発光色について説明する。
CPU63は、角速度センサ62がX軸まわりの角速度を検出した場合には、当該X軸まわりの角速度の大きさに応じた輝度でLED64GおよびLED64Bを発光させるための駆動データをLED64GおよびLED64Bに送信する。
ここで、このようにする理由について説明する。例えば、スティック型操作子21のY軸およびZ軸のみに加速度が生じる場合(この場合、X軸まわりのみの角速度が生じている)、図8で上述したように、LED64はシアン色で発光する。ところで、この状態で等速運動となった場合には、LED64が消灯してしまうが、スティック型操作子21は、X軸まわりの等角速度運動をしている。そこで、シアン色の発色を維持させるために、CPU63は、LED64GおよびLED64Bに駆動データを送信する。
同様に、CPU63は、角速度センサ62がY軸まわりの角速度を検出した場合には、当該Y軸まわりの角速度の大きさに応じた輝度でLED64RおよびLED64Bを発光させるための駆動データをLED64RおよびLED64Bに送信する。また、CPU63は、角速度センサ62がZ軸まわりの角速度を検出した場合には、当該Z軸まわりの角速度の大きさに応じた輝度でLED64RおよびLED64Gを発光させるための駆動データをLED64RおよびLED64Gに送信する。
【0038】
角速度の場合に、CPU63が、LED64R,64G,64Bに対して駆動データを送信する際の構成については、加速度の場合に上述した図6についての説明と同様である。
具体的には、CPU63は、角速度センサ62が取得した角速度の大きさに応じたDUTY比でPWM波形70を出力する。ここで、CPU63は、角速度の大きさが所定値β以上の場合には、PWM波形70のDUTY比を100%として出力する。また、CPU63は、角速度の大きさが0の場合には、PWM波形70のDUTY比を0%として出力する。また、CPU63は、角速度の大きさが0より大きく所定値β未満の場合には、角速度の大きさが大きいほどDUTY比が大きくなるように出力する。
【0039】
ここで、角速度に基づいた発光色の決定方法について説明する。CPU63は、ROM66に格納された角速度用発光色テーブル(図9)を参照して発光色を決定する。
図9は、本実施形態に係る角速度用発光色テーブルを示す図である。図9によれば、X軸が、緑色および青色の合成色であるシアン色に、Y軸が、赤色および青色の合成色であるマゼンダ色に、Z軸が、赤色および緑色の合成色であるイエロー色に対応しており、CPU63は、角速度用発光色テーブルを参照することで、各軸方向に生じた角速度に対応するLED64を選択して、駆動データをLED64に送信する。
【0040】
以下、本実施形態に係るスティック型操作子21のCPU63が実行する処理について説明する。
【0041】
図10は、本実施形態に係るスティック型操作子21において実行される処理を示すフローチャートである。
ステップS101において、スティック型操作子21のCPU63は、RAM67のデータのクリアなどを含むイニシャライズ処理を実行する。
ステップS102において、CPU63は、スイッチ処理を行う。スイッチ処理においては、CPU63は、例えば、以下の処理を実行する。CPU63は、入力部69のスイッチ操作にしたがって、発音すべき楽音の音色の設定などを実行する。CPU63は、指定された音色の情報をRAM67に格納する。
【0042】
ステップS103において、CPU63は、加速度センサ61から加速度値を取得してRAM67に格納する。上述したように、本実施形態においては、加速度センサ61は、3軸センサであり、CPU63は、X軸、Y軸、Z軸の成分の各加速度値を取得し、RAM67に格納する。
ステップS104において、CPU63は、角速度センサ62から角速度値を取得してRAM67に格納する。上述したように、本実施形態においては、角速度センサ62は、3軸センサであり、CPU63は、X軸、Y軸、Z軸まわりの各角速度値を取得し、RAM67に格納する。
ステップS105において、CPU63は、発光制御処理を実行する。発光制御処理については、図11を参照して後述する。
CPU63は、発光制御処理が終了すると、ステップS102に処理を移し、それ以降の処理を繰り返し実行する。
【0043】
図11は、本実施形態に係る発光制御処理を示すフローチャートである。
ステップS201において、CPU63は、RAM67に格納された加速度値を読み出して、X軸、Y軸、Z軸の3軸全てにおいて加速度値が0であるか否かを判断する。この判断がNOの場合、CPU63は、処理をステップS202に移し、YESの場合、CPU63は、処理をステップS203に移す。
ステップS202において、CPU63は、読み出されたX軸、Y軸、Z軸の3軸成分それぞれの加速度値の大きさに応じたDUTY比でPWM波形を出力する。
具体的には、上述したように、CPU63は、当該加速度値の大きさが所定値α以上の場合には、PWM波形のDUTY比を100%として出力する。また、CPU63は、当該加速度値の大きさが0の場合には、PWM波形のDUTY比を0%として出力する。また、CPU63は、当該加速度値の大きさが0より大きく所定値α未満の場合には、加速度値の大きさが大きいほどDUTY比が大きくなるように出力する。
【0044】
ステップS203において、CPU63は、読み出されたX軸、Y軸、Z軸の3軸成分それぞれの角速度値の大きさに応じたDUTY比でPWM波形を出力する。
具体的には、上述したように、CPU63は、角速度センサ62が取得した角速度の大きさに応じたDUTY比でPWM波形を出力する。ここで、CPU63は、角速度の大きさが所定値β以上の場合には、PWM波形のDUTY比を100%として出力する。また、CPU63は、角速度の大きさが0の場合には、PWM波形のDUTY比を0%として出力する。また、CPU63は、角速度の大きさが0より大きく所定値β未満の場合には、角速度の大きさが大きいほどDUTY比が大きくなるように出力する。
【0045】
本実施形態においては、CPU63は、加速度センサ61が取得した加速度値が、スティック型操作子21のX軸、Y軸、Z軸の3軸のうち少なくとも1軸において0ではない場合に、0以外の加速度値が取得された軸に対応する色でLED64を発光させる。
したがって、例えば、スティック型操作子21がY軸方向のみにストロークされている場合、すなわち、演奏者側から見て上下方向(Z軸方向)および左右方向(X軸方向)にぶれていない場合には、LED64Gのみが発光するため、LED64が緑色で発光する。
また、スティック型操作子21のY軸方向のストロークにZ軸方向のストロークが加わった場合、すなわち、演奏者側から見て左右方向(X軸方向)にぶれていない場合、LED64G,64Bが発光するため、LED64が緑色および青色の合成色であるシアン色で発光する。
以上より、X軸、Y軸、Z軸の3軸に対してスティック型操作子21を振る方向に応じてLED64の発光色が変化するので、演奏者は、スティック型操作子21のスウィングの方向を直感的に把握できる。
また、ドラム演奏において安定したストロークを維持するためのトレーニング装置としても応用可能である。
さらにまた、ドラム演奏は、ライブハウス等の暗いステージ上で行われる場合もあるので、スティック型操作子21の軌跡を発光色で表現するといったパフォーマンス効果を発揮できる。
【0046】
また、本実施形態においては、CPU63は、加速度値の大きさに応じた輝度でLED64を発光させる。
したがって、演奏者は、スティック型操作子21のスウィングの方向のみならず、スウィングの強弱も直感的に把握できる。
【0047】
また、本実施形態においては、CPU63は、加速度センサ61が取得した加速度値がX軸、Y軸、Z軸の3軸全てで0である場合には、角速度センサ62が取得した角速度値が取得された軸に対応する色でLED64を発光させる。
例えば、スティック型操作子21が、Y軸方向およびZ軸方向のみにストロークされていてシアン色で発光している最中に等速運動となった場合、CPU63は、X軸まわりの等角速度運動であると判断して、シアン色の発光を維持させる。
したがって、等速運動となった場合でも、LED64の発光色を維持できる。
【0048】
また、本実施形態においては、CPU63は、角速度値の大きさに応じた輝度でLED64を発光させる。
したがって、演奏者は、スティック型操作子21のスウィングの方向のみならず、スウィングのスピードも直感的に把握できる。
【0049】
本実施形態では、スティック型操作子21を電子楽器(電子ドラム)のスティックとして説明したが、これに限られず、指揮者の指揮棒、野球のバット、剣道の竹刀、ゴルフのクラブ等に搭載することも可能である。これにより、スティック型操作子21をスウィングやショットのタイミング等の確認を目的とした製品に応用できる。
【0050】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0051】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
スティック状の保持部材と、
前記保持部材の長手方向の軸を含めた互いに直交する3軸のそれぞれの方向に生じる加速度を取得する加速度センサと、
前記保持部材に取り付けられた発光体と、
前記加速度センサが取得した前記3軸それぞれの前記加速度に応じて前記発光体の発光を制御する発光制御手段と、を備える、
ことを特徴とする操作子。
[付記2]
前記発光制御手段は、前記加速度の大きさに応じた輝度で前記発光体を発光させる、
ことを特徴とする付記1に記載の操作子。
[付記3]
前記3軸のそれぞれの軸周りに生じる角速度を取得する角速度センサをさらに備え、
前記発光制御手段は、前記角速度が取得された軸に対応する色で前記発光体を発光させる、
ことを特徴とする付記1または2に記載の操作子。
[付記4]
前記発光制御手段は、前記角速度の大きさに応じた輝度で前記発光体を発光させる、
ことを特徴とする付記3に記載の操作子。
【符号の説明】
【0052】
10・・・電子楽器、21・・・スティック型操作子、22・・・発音部、31・・・CPU、32・・・I/F、33・・・ROM、34・・・RAM、35・・・バス、36・・・表示部、37・・・入力部、38・・・サウンドシステム、41・・・音源部、42・・・オーディオ回路、43・・・スピーカ、51・・・赤外線通信装置、61・・・加速度センサ、62・・・角速度センサ、63・・・CPU、64・・・LED、65・・・赤外線通信装置、66・・・ROM、67・・・RAM、68・・・I/F、69・・・入力部、70・・・PWM波形、71・・・駆動回路、72・・・抵抗
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏者の振る方向に応じて発光色を変化させる操作子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加速度センサと発光体を組み込んだ表示装置であって、地球の重力方向に対する僅かな位置変化や重力方向を基準とした往復運動等の物理量変化に対応して発光体の発光色を切り替えて、物理量の変化を色変化として認識させるスティック状の表示装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−133365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたスティック状の表示装置では、重力方向に対する傾きによって発光色が変化するだけであり、正しい打撃が行われているか判別するのが難しかった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、スティック自体に設定された軸に対する移動方向に応じて発光色を変化させる操作子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の操作子は、
スティック状の保持部材と、
前記保持部材の長手方向の軸を含めた互いに直交する3軸のそれぞれの方向に生じる加速度を取得する加速度センサと、
前記保持部材に取り付けられた発光体と、
前記加速度センサが取得した前記3軸それぞれの前記加速度に応じて前記発光体の発光を制御する発光制御手段と、を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザが操作子自体に設定された軸に対して操作子を振る方向に応じて発光体の発光色が変化することにより、ユーザが操作子のスウィングの方向を直感的に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る電子楽器の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスティック型操作子21の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るスティック型操作子21の外観の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るスティック型操作子21の詳細構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る加速度用発光色テーブルを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るCPU63からLED64Rに対して駆動データを送信する際の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るスティック型操作子21のストロークの例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るスティック型操作子21のストロークの例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る角速度用発光色テーブルを示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係るスティック型操作子21において実行される処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係る発光制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る電子楽器の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る電子楽器10は、演奏者が手に持って振るための、長手方向に延びるスティック型操作子21と、楽音を発生するための発音部22と、を備えている。発音部22は、CPU(Central Processing Unit)31、インタフェース(I/F)32、ROM(Read Only Memory)33、RAM(Random Access Memory)34、バス35、表示部36、入力部37およびサウンドシステム38を有し、これらがバス35を介して接続されている。スティック型操作子21は、図2において後述するように、加速度センサ61、角速度センサ62、CPU63、LED64および赤外線通信装置65等を有する。
【0011】
CPU31は、電子楽器10全体の制御を実行する。例えばCPU31は、電子楽器の発音部22の制御、入力部37を構成するキースイッチ(図示せず)の操作の検出に基づく制御、I/F32を介して受信したスティック型操作子21からのデータ(例えばノートオンイベント)に基づく楽音の発生の制御など、種々の処理を実行する。
【0012】
I/F32は、ノートオンイベント等のスティック型操作子21からのデータを受け入れて、RAM34に格納するとともに、CPU31にデータの受け入れを通知する。I/F32には、赤外線通信装置51が設けられており、発音部22は、スティック型操作子21が発した赤外線を、I/F32の赤外線通信装置51が受信することで、スティック型操作子21からのデータを受信することができる。なお、データの通信は赤外線通信に限らず、任意の方法(無線通信等)でよい。
【0013】
ROM33は、種々の処理プログラムを格納する。例えば、電子楽器10全体の制御、特に、電子楽器の発音部22の制御、入力部37を構成するキースイッチ(図示せず)の操作の検出、I/F32を介して受信したノートオンイベントに基づく楽音の発生など、各種機能を発揮するための種々の処理プログラムがROM33に格納されている。また、ROM33は、種々の音色の波形データ、例えば、フルート、サックス、トランペットなどの管楽器、ピアノなどの鍵盤楽器、ギターなどの弦楽器、バスドラム、ハイハット、スネア、シンバル、タムなど打楽器の波形データを格納する波形データエリアを含む。
【0014】
RAM34は、ROM33から読み出されたプログラムや、処理の過程で生じたデータやパラメータ等の各種データを記憶する。処理の過程で生じたデータには、入力部37のスイッチの操作状態、I/F32を介して受信したセンサ値等、楽音の発音状態(発音フラグ)などが含まれる。
【0015】
表示部36は、例えば、液晶表示装置で構成され、選択された音色や音量などを画像として表示することができる。また、入力部37は、各種スイッチ(図示せず)を有する。
【0016】
サウンドシステム38は、音源部41、オーディオ回路42およびスピーカ43を備える。音源部41は、CPU31からの指示にしたがって、ROM33の波形データエリアから波形データを読み出して、楽音データを生成して出力する。オーディオ回路42は、音源部41から出力された楽音データをアナログ信号に変換し、変換されたアナログ信号を増幅してスピーカ43に出力する。これによりスピーカ43から楽音が出力される。
【0017】
図2は、本実施形態に係るスティック型操作子21の構成を示すブロック図である。図2に示すように、スティック型操作子21は、加速度センサ61、角速度センサ62、CPU63、LED64、赤外線通信装置65、ROM66、RAM67、インタフェース(I/F)68および入力部69を有する。
【0018】
加速度センサ61は、例えば、静電容量型或いはピエゾ抵抗素子型の3軸センサであり、後述するX、Y、Zの3つの軸方向のそれぞれに生じた加速度を示す加速度値をそれぞれ出力することができる。また、加速度センサ61は、スティック型操作子21の演奏者が保持する根元側と反対側である先端側に設けられている。
【0019】
角速度センサ62は、例えば、ジャイロスコープを備えたセンサであり、後述するX、Y、Zの3つの軸まわりのそれぞれに生じた角速度を示す角速度値をそれぞれ出力することができる。また、角速度センサ62は、スティック型操作子21の演奏者が保持する根元側と反対側である先端側に設けられている。なお、角速度センサ62の位置は、先端側に限定されず、根元側に配置されていてもよい。
【0020】
CPU63は、スティック型操作子21全体の制御を実行する。例えばCPU63は、加速度センサ61が出力した加速度値および角速度センサ62が出力した角速度値を取得する。すると、CPU63は、当該加速度値および当該角速度値に基づいてLED64R、LED64GおよびLED64Bの発光を制御する。また、CPU63は、当該加速度値に基づいた楽音の発音タイミングを検出し、当該加速度値にしたがった音量を決定し、ノートオンイベントを生成する。そしてCPU63は、I/F68および赤外線通信装置65を介したノートオンイベントの送信制御を実行する。
【0021】
LED64は、赤色のLED64R、緑色のLED64G、及び青色のLED64Bを有する。LED64R,64G,64Bは、CPU63からの駆動の制御によって、発光する。なお、LED64R,64G,64Bの駆動の制御は、CPU63から後述する駆動回路71(図6参照)を介して送信される駆動データにしたがって実行される。
【0022】
赤外線通信装置65は、スティック型操作子21の根元側端部に設けられており、後述するI/F68を介して赤外線を発音部22側の赤外線通信装置51へ送信することで、スティック型操作子21から発音部22へデータを送信する。
【0023】
ROM66は、種々の処理プログラムを格納する。例えば、スティック型操作子21の加速度センサ61が出力した加速度値および角速度センサ62が出力した角速度値の取得、当該加速度値および角速度値に基づいたLED64R,64G,64Bの発光制御、当該加速度値に基づいた楽音の発音タイミングの検出、当該加速度値にしたがった音量の決定、ノートオンイベントの生成、I/F68および赤外線通信装置65を介したノートオンイベントの送信制御など、各種機能を発揮するための種々の処理プログラムがROM66に格納されている。RAM67は、加速度値および角速度値等、処理において取得され或いは生成された値や後述するテーブルといった各種データを格納する。
【0024】
I/F68は、CPU63からの指示にしたがって赤外線通信装置65にデータを出力する。また、入力部69は、スイッチ(図示せず)を有する。
【0025】
図3は、本実施形態に係るスティック型操作子21の外観の構成を示す斜視図である。
図3において、Y軸は、スティック型操作子21の長手方向の軸と一致する軸である。X軸は、加速度センサ61が配置された基板(図示せず)と平行で、かつ、Y軸と直交する軸である。また、Z軸は、X軸およびY軸とそれぞれ直交する軸である。本実施形態に係る加速度センサ61は、X軸、Y軸およびZ軸のそれぞれの成分の加速度値を取得することができる。
【0026】
図3において、X軸まわりの回転角311は、演奏者がスティック型操作子21を持ったときに、演奏者からみた左右軸まわりの回転角であるため、ピッチ角と称する。ピッチ角は、スティック型操作子21が、どの程度X−Y平面に対して傾けられたのかを示す角速度312である。ピッチ角は、演奏者が、スティック型操作子21の例えば根元側の部位300を手に持って、上下方向に振ることにより変化する。
【0027】
また、図3において、Y軸まわりの回転角321は、演奏者がスティック型操作子21を持ったとき、演奏者からみた前後軸まわりの回転角であるため、ロール角と称する。ロール角は、スティック型操作子21が、どの程度Y軸まわりに回転したかを示す角度322である。ロール角は、演奏者が、スティック型操作子21の例えば根元側の部位300を手に持って、手首を軸にして左右に回転させることにより変化する。
【0028】
また、図3において、Z軸まわりの回転角331は、演奏者がスティック型操作子21を持ったとき、演奏者からみた上下軸まわりの回転角であるため、ヨー角と称する。ヨー角は、スティック型操作子21が、どの程度Y−Z平面に対して傾けられたのかを示す角度332である。ヨー角は、演奏者が、スティック型操作子21の例えば根元側の部位300を手に持って、手首を軸にして左右方向に振ることにより変化する。
【0029】
図4は、本実施形態に係るスティック型操作子21の詳細構成を示すブロック図である。なお、図4では、図2で説明した構成の一部について詳細に説明する。
CPU63は、加速度センサ61がX軸方向の加速度を検出した場合には、当該X軸方向の加速度の大きさに応じた輝度でLED64Rを発光させるための駆動データを生成して、LED64Rに送信する。また、CPU63は、加速度センサ61がY軸方向の加速度を検出した場合には、当該Y軸方向の加速度の大きさに応じた輝度でLED64Gを発光させるための駆動データを生成して、LED64Gに送信する。また、CPU63は、加速度センサ61がZ軸方向の加速度を検出した場合には、当該Z軸方向の加速度の大きさに応じた輝度でLED64Bを発光させるための駆動データを生成して、LED64Bに送信する。
【0030】
また、スティック型操作子21が静止状態の場合に、LED64R,64G,64Bが消灯するようにするため、加速度センサ61は、重力加速度の検出を行わないように設定されている。
【0031】
ここで、加速度に基づいた発光色の決定方法について説明する。CPU63は、ROM66に格納された加速度用発光色テーブル(図5)を参照して発光色を決定する。
図5は、本実施形態に係る加速度用発光色テーブルを示す図である。図5によれば、X軸が赤色に、Y軸が緑色に、Z軸が青色に対応しており、CPU63は、加速度用発光色テーブルを参照することで、各軸方向に生じた加速度に対応するLED64を選択して、駆動データをLED64に送信する。
なお、X軸およびY軸に加速度が生じた場合の発光色は、赤色および緑色の合成色であるイエロー色であり、Y軸およびZ軸に加速度が生じた場合の発光色は、緑色および青色の合成色であるシアン色であり、X軸およびZ軸に加速度が生じた場合の発光色は、赤色および青色の合成色であるマゼンダ色である。また、X軸、Y軸およびZ軸に加速度が生じた場合の発光色は、赤色、緑色および青色の合成色である白色である。
【0032】
ここで、図6を参照して、CPU63が、LED64R,64G,64Bに対して駆動データを送信する際の構成について説明する。
図6は、CPU63からLED64Rに対して駆動データを送信する際の構成を示す図である。なお、LED64G,64Bについては、LED64Rと同様なので図示を省略している。
【0033】
CPU63は、駆動回路71を介して、駆動データであるPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)波形70を出力して、LED64Rに送信する。LED64Rは、抵抗72を介して接地されている。
CPU63は、加速度センサ61が取得した加速度の大きさに応じたDUTY比でPWM波形70を出力する。ここで、CPU63は、加速度の大きさが所定値α以上の場合には、PWM波形70のDUTY比を100%として出力する。また、CPU63は、加速度の大きさが0とみなせる値(以下、単に「0」と記述する)の場合には、PWM波形70のDUTY比を0%として出力する。また、CPU63は、加速度の大きさが0より大きく所定値α未満の場合には、加速度の大きさが大きいほどDUTY比が大きくなるように出力する。
駆動回路71は、PWM波形70のDUTY比が100%である場合、LED64R,64G,64Bが最大輝度で発光するように構成され、0%である場合、LED64R,64G,64Bが発光しないように構成されている。また、DUTY比が0%より大きく100%未満の場合、DUTY比が大きくなればなるほど、LED64R,64G,64Bの輝度が大きくなるように構成されている。
【0034】
したがって、例えば、図7に示すように、スティック型操作子21がY軸方向のみにストロークされている場合、すなわち、演奏者側から見て上下方向(Z軸方向)および左右方向(X軸方向)にぶれていない場合、LED64Gのみが発光する。また、Y軸方向の加速度が大きいほどLED64Gの輝度が大きくなる。
【0035】
また、例えば、図8に示すように、スティック型操作子21のY軸方向のストロークにZ軸方向のストロークが加わった場合、すなわち、演奏者側から見て左右方向(X軸方向)にぶれていない場合、LED64G,64Bが発光する。この場合、LED64は、緑色と青色の合成色であるシアン色で発光する。この際、Y軸方向の加速度の大きさがZ軸方向の加速度の大きさより大きい場合、緑色の輝度が青色の輝度より大きくなるので、シアン色であっても、緑色の割合が多くなる。
したがって、2以上の軸方向に加速度が生じた場合、赤色、緑色または青色のいずれかの合成色となるが、各軸の加速度の大きさに応じて、合成色の色合いは変化する。
【0036】
ところで、スティック型操作子21のX軸、Y軸およびZ軸の3軸全てに生じる加速度が0の場合(等速運動の場合)、CPU63は、加速度に基づくPWM波形を3軸全てについて0%で出力するため、LED64R,64G,64Bはいずれも発光しなくなってしまう。
そこで、この場合、CPU63は、角速度センサ62が検出した角速度の大きさに応じて、LED64を発光させる制御を行う。
【0037】
ここで、図4を再び参照して、角速度センサ62に基づく発光色について説明する。
CPU63は、角速度センサ62がX軸まわりの角速度を検出した場合には、当該X軸まわりの角速度の大きさに応じた輝度でLED64GおよびLED64Bを発光させるための駆動データをLED64GおよびLED64Bに送信する。
ここで、このようにする理由について説明する。例えば、スティック型操作子21のY軸およびZ軸のみに加速度が生じる場合(この場合、X軸まわりのみの角速度が生じている)、図8で上述したように、LED64はシアン色で発光する。ところで、この状態で等速運動となった場合には、LED64が消灯してしまうが、スティック型操作子21は、X軸まわりの等角速度運動をしている。そこで、シアン色の発色を維持させるために、CPU63は、LED64GおよびLED64Bに駆動データを送信する。
同様に、CPU63は、角速度センサ62がY軸まわりの角速度を検出した場合には、当該Y軸まわりの角速度の大きさに応じた輝度でLED64RおよびLED64Bを発光させるための駆動データをLED64RおよびLED64Bに送信する。また、CPU63は、角速度センサ62がZ軸まわりの角速度を検出した場合には、当該Z軸まわりの角速度の大きさに応じた輝度でLED64RおよびLED64Gを発光させるための駆動データをLED64RおよびLED64Gに送信する。
【0038】
角速度の場合に、CPU63が、LED64R,64G,64Bに対して駆動データを送信する際の構成については、加速度の場合に上述した図6についての説明と同様である。
具体的には、CPU63は、角速度センサ62が取得した角速度の大きさに応じたDUTY比でPWM波形70を出力する。ここで、CPU63は、角速度の大きさが所定値β以上の場合には、PWM波形70のDUTY比を100%として出力する。また、CPU63は、角速度の大きさが0の場合には、PWM波形70のDUTY比を0%として出力する。また、CPU63は、角速度の大きさが0より大きく所定値β未満の場合には、角速度の大きさが大きいほどDUTY比が大きくなるように出力する。
【0039】
ここで、角速度に基づいた発光色の決定方法について説明する。CPU63は、ROM66に格納された角速度用発光色テーブル(図9)を参照して発光色を決定する。
図9は、本実施形態に係る角速度用発光色テーブルを示す図である。図9によれば、X軸が、緑色および青色の合成色であるシアン色に、Y軸が、赤色および青色の合成色であるマゼンダ色に、Z軸が、赤色および緑色の合成色であるイエロー色に対応しており、CPU63は、角速度用発光色テーブルを参照することで、各軸方向に生じた角速度に対応するLED64を選択して、駆動データをLED64に送信する。
【0040】
以下、本実施形態に係るスティック型操作子21のCPU63が実行する処理について説明する。
【0041】
図10は、本実施形態に係るスティック型操作子21において実行される処理を示すフローチャートである。
ステップS101において、スティック型操作子21のCPU63は、RAM67のデータのクリアなどを含むイニシャライズ処理を実行する。
ステップS102において、CPU63は、スイッチ処理を行う。スイッチ処理においては、CPU63は、例えば、以下の処理を実行する。CPU63は、入力部69のスイッチ操作にしたがって、発音すべき楽音の音色の設定などを実行する。CPU63は、指定された音色の情報をRAM67に格納する。
【0042】
ステップS103において、CPU63は、加速度センサ61から加速度値を取得してRAM67に格納する。上述したように、本実施形態においては、加速度センサ61は、3軸センサであり、CPU63は、X軸、Y軸、Z軸の成分の各加速度値を取得し、RAM67に格納する。
ステップS104において、CPU63は、角速度センサ62から角速度値を取得してRAM67に格納する。上述したように、本実施形態においては、角速度センサ62は、3軸センサであり、CPU63は、X軸、Y軸、Z軸まわりの各角速度値を取得し、RAM67に格納する。
ステップS105において、CPU63は、発光制御処理を実行する。発光制御処理については、図11を参照して後述する。
CPU63は、発光制御処理が終了すると、ステップS102に処理を移し、それ以降の処理を繰り返し実行する。
【0043】
図11は、本実施形態に係る発光制御処理を示すフローチャートである。
ステップS201において、CPU63は、RAM67に格納された加速度値を読み出して、X軸、Y軸、Z軸の3軸全てにおいて加速度値が0であるか否かを判断する。この判断がNOの場合、CPU63は、処理をステップS202に移し、YESの場合、CPU63は、処理をステップS203に移す。
ステップS202において、CPU63は、読み出されたX軸、Y軸、Z軸の3軸成分それぞれの加速度値の大きさに応じたDUTY比でPWM波形を出力する。
具体的には、上述したように、CPU63は、当該加速度値の大きさが所定値α以上の場合には、PWM波形のDUTY比を100%として出力する。また、CPU63は、当該加速度値の大きさが0の場合には、PWM波形のDUTY比を0%として出力する。また、CPU63は、当該加速度値の大きさが0より大きく所定値α未満の場合には、加速度値の大きさが大きいほどDUTY比が大きくなるように出力する。
【0044】
ステップS203において、CPU63は、読み出されたX軸、Y軸、Z軸の3軸成分それぞれの角速度値の大きさに応じたDUTY比でPWM波形を出力する。
具体的には、上述したように、CPU63は、角速度センサ62が取得した角速度の大きさに応じたDUTY比でPWM波形を出力する。ここで、CPU63は、角速度の大きさが所定値β以上の場合には、PWM波形のDUTY比を100%として出力する。また、CPU63は、角速度の大きさが0の場合には、PWM波形のDUTY比を0%として出力する。また、CPU63は、角速度の大きさが0より大きく所定値β未満の場合には、角速度の大きさが大きいほどDUTY比が大きくなるように出力する。
【0045】
本実施形態においては、CPU63は、加速度センサ61が取得した加速度値が、スティック型操作子21のX軸、Y軸、Z軸の3軸のうち少なくとも1軸において0ではない場合に、0以外の加速度値が取得された軸に対応する色でLED64を発光させる。
したがって、例えば、スティック型操作子21がY軸方向のみにストロークされている場合、すなわち、演奏者側から見て上下方向(Z軸方向)および左右方向(X軸方向)にぶれていない場合には、LED64Gのみが発光するため、LED64が緑色で発光する。
また、スティック型操作子21のY軸方向のストロークにZ軸方向のストロークが加わった場合、すなわち、演奏者側から見て左右方向(X軸方向)にぶれていない場合、LED64G,64Bが発光するため、LED64が緑色および青色の合成色であるシアン色で発光する。
以上より、X軸、Y軸、Z軸の3軸に対してスティック型操作子21を振る方向に応じてLED64の発光色が変化するので、演奏者は、スティック型操作子21のスウィングの方向を直感的に把握できる。
また、ドラム演奏において安定したストロークを維持するためのトレーニング装置としても応用可能である。
さらにまた、ドラム演奏は、ライブハウス等の暗いステージ上で行われる場合もあるので、スティック型操作子21の軌跡を発光色で表現するといったパフォーマンス効果を発揮できる。
【0046】
また、本実施形態においては、CPU63は、加速度値の大きさに応じた輝度でLED64を発光させる。
したがって、演奏者は、スティック型操作子21のスウィングの方向のみならず、スウィングの強弱も直感的に把握できる。
【0047】
また、本実施形態においては、CPU63は、加速度センサ61が取得した加速度値がX軸、Y軸、Z軸の3軸全てで0である場合には、角速度センサ62が取得した角速度値が取得された軸に対応する色でLED64を発光させる。
例えば、スティック型操作子21が、Y軸方向およびZ軸方向のみにストロークされていてシアン色で発光している最中に等速運動となった場合、CPU63は、X軸まわりの等角速度運動であると判断して、シアン色の発光を維持させる。
したがって、等速運動となった場合でも、LED64の発光色を維持できる。
【0048】
また、本実施形態においては、CPU63は、角速度値の大きさに応じた輝度でLED64を発光させる。
したがって、演奏者は、スティック型操作子21のスウィングの方向のみならず、スウィングのスピードも直感的に把握できる。
【0049】
本実施形態では、スティック型操作子21を電子楽器(電子ドラム)のスティックとして説明したが、これに限られず、指揮者の指揮棒、野球のバット、剣道の竹刀、ゴルフのクラブ等に搭載することも可能である。これにより、スティック型操作子21をスウィングやショットのタイミング等の確認を目的とした製品に応用できる。
【0050】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0051】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
スティック状の保持部材と、
前記保持部材の長手方向の軸を含めた互いに直交する3軸のそれぞれの方向に生じる加速度を取得する加速度センサと、
前記保持部材に取り付けられた発光体と、
前記加速度センサが取得した前記3軸それぞれの前記加速度に応じて前記発光体の発光を制御する発光制御手段と、を備える、
ことを特徴とする操作子。
[付記2]
前記発光制御手段は、前記加速度の大きさに応じた輝度で前記発光体を発光させる、
ことを特徴とする付記1に記載の操作子。
[付記3]
前記3軸のそれぞれの軸周りに生じる角速度を取得する角速度センサをさらに備え、
前記発光制御手段は、前記角速度が取得された軸に対応する色で前記発光体を発光させる、
ことを特徴とする付記1または2に記載の操作子。
[付記4]
前記発光制御手段は、前記角速度の大きさに応じた輝度で前記発光体を発光させる、
ことを特徴とする付記3に記載の操作子。
【符号の説明】
【0052】
10・・・電子楽器、21・・・スティック型操作子、22・・・発音部、31・・・CPU、32・・・I/F、33・・・ROM、34・・・RAM、35・・・バス、36・・・表示部、37・・・入力部、38・・・サウンドシステム、41・・・音源部、42・・・オーディオ回路、43・・・スピーカ、51・・・赤外線通信装置、61・・・加速度センサ、62・・・角速度センサ、63・・・CPU、64・・・LED、65・・・赤外線通信装置、66・・・ROM、67・・・RAM、68・・・I/F、69・・・入力部、70・・・PWM波形、71・・・駆動回路、72・・・抵抗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スティック状の保持部材と、
前記保持部材の長手方向の軸を含めた互いに直交する3軸のそれぞれの方向に生じる加速度を取得する加速度センサと、
前記保持部材に取り付けられた発光体と、
前記加速度センサが取得した前記3軸それぞれの前記加速度に応じて前記発光体の発光を制御する発光制御手段と、を備える、
ことを特徴とする操作子。
【請求項2】
前記発光制御手段は、前記加速度の大きさに応じた輝度で前記発光体を発光させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の操作子。
【請求項3】
前記3軸のそれぞれの軸周りに生じる角速度を取得する角速度センサをさらに備え、
前記発光制御手段は、前記角速度が取得された軸に対応する色で前記発光体を発光させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の操作子。
【請求項4】
前記発光制御手段は、前記角速度の大きさに応じた輝度で前記発光体を発光させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の操作子。
【請求項1】
スティック状の保持部材と、
前記保持部材の長手方向の軸を含めた互いに直交する3軸のそれぞれの方向に生じる加速度を取得する加速度センサと、
前記保持部材に取り付けられた発光体と、
前記加速度センサが取得した前記3軸それぞれの前記加速度に応じて前記発光体の発光を制御する発光制御手段と、を備える、
ことを特徴とする操作子。
【請求項2】
前記発光制御手段は、前記加速度の大きさに応じた輝度で前記発光体を発光させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の操作子。
【請求項3】
前記3軸のそれぞれの軸周りに生じる角速度を取得する角速度センサをさらに備え、
前記発光制御手段は、前記角速度が取得された軸に対応する色で前記発光体を発光させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の操作子。
【請求項4】
前記発光制御手段は、前記角速度の大きさに応じた輝度で前記発光体を発光させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の操作子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−40991(P2013−40991A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176106(P2011−176106)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]