説明

操作感触付与型入力装置

【課題】切削加工の手間を不要とし、容易に製造することができる構造の操作感触付与型入力装置を提供する。
【解決手段】操作感触付与型入力装置は、操作部とともに回転する回転軸(14)及びアーマチュアロータ(22)を有するほか、摩擦抵抗を発生させる手段として電磁コイル(24)及びU字型積層コア(26)を有する。電磁コイル(24)はコイルボビン(28)の胴部(28a)に巻かれており、コア(26)の一方の極(26a)をコイルボビン(28)に形成された固定穴(28e)内に挿入した状態でコア(26)が固定されている。特にコア(26)は、そのU字型の溝内に電磁コイル(24)の束線を挟み込んだ状態で巻き方向の複数箇所に分散して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電子機器や車載電装品等の入力デバイスとして利用することができ、その際、操作者に力学的な操作感触を付与することができる操作感触付与型入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の操作感触付与型入力装置は、操作者によって与えられる操作力に対して抵抗力を発生させ、その大きさやタイミング、周期等を制御することで様々な態様の操作感触(例えばクリック感触、突き当たり感触等)を付与するものである。従来、抵抗力を発生させる手段としては、例えば電磁コイルを用いてアーマチュアをヨーク(ステータ)に吸着させるタイプの電磁ブレーキが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記の先行技術において、電磁ブレーキのヨークは電磁コイルを巻き付けて保持するとともに、その通電時には磁束を案内する磁気経路を構成する部材である。特に回転方向への抵抗力を発生させる場合、ヨークを例えば底板付の二重円筒形状として内筒と外筒との間に電磁コイルを収容するとともに、アーマチュアを円盤形状として、回転方向に対して理想的な制動力を発生できる構造を採用する手法が一般的である。またこのような手法は、単純に回転動力の伝達機構を構成する電磁クラッチ・ブレーキの先行技術においても広く採用されているところである(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−28510号公報(図1、図3)
【特許文献2】実開平3−52433号公報(第1図、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した先行技術(特許文献1,2)のようにヨークを二重の円筒形状とする場合、例えばソリッド(中実)な磁性金属を切削加工し、その内部を環状にくり抜く必要があるため、その分、加工の手間が膨大となり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、切削加工の手間を不要とし、容易に製造することができる構造の操作感触付与型入力装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の以下の解決手段を採用する。
解決手段1:本発明の操作感触付与型入力装置は、操作力に対して抵抗力を発生させる電磁手段を電磁コイル及びコアで構成するとともに、コアを電磁コイルの巻き方向で複数箇所に分散して配置したものである。より詳細には、本発明は、操作者により操作される操作部と、回転可能に支持されて操作部とともに回転する回転軸と、回転軸に取り付けられて回転軸と一体に回転する回転体と、回転体とともに回転し、かつ、回転軸に沿う方向への往復移動が可能な状態で回転体に取り付けられた磁性材料からなるロータ部材と、ロータ部材と対向する位置に配置されたステータ部材と、ロータ部材との間にステータ部材を介して配置された電磁コイル及びコアを有し、電磁コイルにより磁力を発生させて前記ロータ部材を前記ステータ部材に圧着させる電磁手段と、回転体の回転中心線の周りに電磁コイルを巻き付けて保持する胴部を有し、この胴部のロータ部材側の一端に天板部が連接されるとともに、その反対側の他端に底板部が連接されたコイルボビンと、電磁手段の電磁コイルによる磁力の発生状態を制御する制御手段とを備えた操作感触付与型入力装置である。
【0008】
その上で本発明の操作感触付与型入力装置では、上記のコアが個々にU字形状に形成された複数の磁性材料の板材を重ね合わせて断面がU字形状をなす溝型に構成されており、その溝内に磁性コイルの束線を挟み込んだ状態で巻き方向の複数箇所に分散して配置されているものである。このため、コアを配置した状態でみたとき、複数の板材は電磁コイルの巻き方向に沿って重ね合わせられていることになる。なおコアは、電磁コイルへの通電時に発生する磁束の周回方向に沿う断面がU字形状をなしており、束線の内側と外側にそれぞれ極(又は脚)を有するものである。
【0009】
本発明によれば、例えばプレス加工や切断加工等によって得られた板材を、複数枚重ね合わせて1ブロックごとのコアを製作することができるため、切削加工のような大掛かりな手間を必要としない。またコアは、その1つ1つがU字型の溝型ブロックであるため、これを電磁コイルの巻き方向で複数箇所に分散して配置することにより、全体として擬似的なヨークを構成することができる。このため本発明の操作感触付与型入力装置は、加工の手間が少なく製造が容易であり、そのコストを低く抑えることができる。
【0010】
解決手段2:また本発明では、コイルボビンの天板部をステータ部材として、ロータ部材を天板部に圧着させることができる。
【0011】
上記のようにコイルボビンは、その胴部に電磁コイルを巻き付けて保持するとともに、胴部の両端にそれぞれ天板部及び底板部を有することで、電磁コイルの脱落を確実に防止している。その上で、ロータ部材側の天板部をステータ部材として利用すれば、コイルボビンと別にステータ部材を設ける必要がなく、それだけ部品点数を削減することができる。
【0012】
解決手段3:またコイルボビンは、底板部に形成された開口から胴部内を回転中心線に沿って延びる固定穴を有していてもよい。この場合、コイルボビンは固定穴内に電磁コイルの内周側に位置するコアの一方の極(脚)を挿入させた状態でコアを固定することができる。
【0013】
このような構成であれば、コイルボビンを電磁コイルの保持だけでなく、コアの固定にも利用することができるため、コアの取り付けが容易になる。
【0014】
解決手段4:あるいはコイルボビンは、天板部のロータ部材と反対側に凹部が設けられている態様であってもよい。この凹部は、電磁コイルの外周側に位置するコアの他方の極の端部を天板部内の厚み方向に受け入れて保持することができる。
【0015】
このような態様であれば、束線の外側でコアの極(脚)を保持することかでき、さらにコアの固定を確実なものとすることができる。また、凹部の深さ分だけ極の先端をロータ部材に近接させることができるので、その分、コアとロータ部材との間のギャップを縮小し、コアを介してロータ部材に磁力を有効に作用させることができる。
【0016】
解決手段5:またコイルボビンは、天板部から底板部にかけて胴部内を貫通して延びる貫通孔を有してもよい。この貫通孔は、回転軸が挿入された状態で回転軸を回転可能に支持することができる。
【0017】
このような態様であれば、コイルボビンを回転軸の軸受として利用することができるため、別途に軸受を設ける必要がなくなり、より簡素な構造を実現することができる。
【0018】
解決手段6:コイルボビンに貫通孔が設けられている場合、回転軸は、貫通孔内に挿入される部位のうち、少なくとも貫通孔の両端近傍でそれぞれ内周面に接する範囲を避けた位置に形成されて他の位置よりも外径が縮小された小径部位を有していることが好ましい。
【0019】
上記の構成であれば、貫通孔内では両端近傍の内周面だけが回転軸(小径部位以外)に接する軸受として機能するので、回転軸の摩擦抵抗を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の操作感触付与型入力装置は、切削加工等の大掛かりな手間を要することなく、容易な加工作業で製造することができる。これにより、製造に要する工数を削減して製造効率を向上するとともに、製造コストを低く抑えて良質な製品を短期間で豊富に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態の操作感触付与型入力装置の全体的な構成を示す概略図である。
【図2】回転部材とアーマチュアロータとの連結関係を示す平面図(図1中のII−II断面を含む)である。
【図3】コイルボビン及びU字型積層コアをそれぞれ単独で示した分解斜視図である。
【図4】電磁コイルが巻き付けられた状態のコイルボビン及びU字型積層コアをそれぞれ単独で示した分解斜視図である。
【図5】電磁コイルを巻き付けた状態のコイルボビンにU字型積層コアを固定した半製品状態を示す斜視図である。
【図6】コイルボビンにU字型積層コアを固定した半製品状態を示す底面図である。
【図7】U字型積層コアが配置されていない位置におけるコイルボビンの縦断面図(図6中のVII−VII線に沿う断面)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の操作感触付与型入力装置は、例えば、各種の電子機器(コンピュータ機器、オーディオ機器、ビデオ機器)をはじめ、カーナビゲーション装置等の車載電装品用の入力デバイス(ユーザインタフェース)として利用することができる。
【0023】
図1は、一実施形態の操作感触付与型入力装置10の全体的な構成を示す概略図である。図1中、操作感触付与型入力装置10の機械的な構成は、その大部分が縦断面により示されている。また図1中、操作感触付与型入力装置10の電気的な構成はブロック要素として示されている。
【0024】
〔操作部〕
操作感触付与型入力装置10は操作部12を備えており、この操作部12は、例えば回転式のつまみ形状(ダイヤル形状)をなしている。操作者は操作部12をつまんだ状態で回転操作することができ、このとき操作部12は図中に一点鎖線で示される回転軸線CLの回りに回転する。
【0025】
操作部12は、例えば回転軸14の一端に連結されている。この回転軸14は上記の回転軸線CLに沿って操作部12から一方向(図1中の下方向)に延びており、回転軸14は操作部12とともに回転軸線CLの回りに回転する。
【0026】
なお回転軸14には、その軸方向の途中に弾性部材15が介挿して設けられている。このため回転軸14は、弾性部材15を挟んで軸方向に第1パーツ14aと第2パーツ14bとに分割された構造を有している。なお、弾性部材15と第1パーツ14a、第2パーツ14bとは、それぞれの接合部で強固に接合されている。また弾性部材15には、例えば材料としてゴムを使用することができる。
【0027】
〔回転状態の検出〕
回転軸14(第1パーツ14a)の外周には、被検出体であるコード板16が取り付けられている。このコード板16は回転軸14を中心とした薄板の円盤形状をなしており、その周方向には一定ピッチで図示しないスリットが形成されている。またコード板16の外周部には、回転方向の原点位置を基点として周方向に図示しないインデックス(遮光部)が形成されている。
【0028】
回転軸14の近傍位置には、検出部として例えば光学式のエンコーダ18が設置されている。このエンコーダ18は、例えば2条の検出光を用いて互いに異なる位置でコード板16のスリットを透過させることができる。操作部12が回転操作されると、これに伴って回転軸14とともにコード板16が回転し、エンコーダ18から互いに位相差を持った回転角信号(A相及びB相のエンコーダパルス)が出力される。なおエンコーダ18は、アナログ式のエンコーダ(例えば磁気センサ型)でもよい。
【0029】
〔回転部材(回転体)〕
また回転軸14には、例えば第2パーツ14bの軸方向でみた中央付近に回転部材20が取り付けられている。回転部材20は、例えば円盤形状の本体部20aを有しており、この本体部20aは回転軸14(第2パーツ14b)を中心としてラジアル方向に拡がっている。本体部20aの中央位置には貫通孔20bが形成されており、この貫通孔20bは本体部20aを厚み方向に貫通して形成されている。そして回転部材20は、貫通孔20bの内部に回転軸14(第2パーツ14b)を挿通させた状態で回転軸14に固定されている。このため回転部材20は、操作部12が操作されると回転軸14とともに回転軸線CLの回りに回転する。
【0030】
〔アーマチュアロータ(ロータ部材)〕
また回転軸14には、回転軸線CLに沿う方向でみて回転部材20に隣接する位置にアーマチュアロータ22が取り付けられている。このアーマチュアロータ22もまた、例えば円盤形状の本体部22aを有するとともに、その中央位置には挿通孔22bが形成されている。アーマチュアロータ22の挿通孔22bもまた本体部22aを厚み方向に貫通しているが、その内径は回転軸14の外径よりもわずかに大きい。このためアーマチュアロータ22は回転軸14(第2パーツ14b)に対して固定されておらず、回転軸14や回転部材20に対しては回転軸線CLの回りに相対回転が可能な状態で支持されている。
【0031】
またアーマチュアロータ22は、挿通孔22b内に回転軸14(第2パーツ14b)を挿通させた状態で、回転中心線CLに沿う方向へ往復移動可能である。なお回転軸14の外周面と挿通孔22bの内周面との間には、例えば回転軸14に沿ってスライド自在な軸受(図示していない)が設けられていてもよい。またアーマチュアロータ22は、その全体が磁性材料(例えば鉄)で構成されている。
【0032】
また操作感触付与型入力装置10は、電磁コイル24及びU字型積層コア26を備えている。このうち電磁コイル24は、例えば回転軸14(回転中心線CL)を中心としてその周囲に巻かれている。またU字型積層コア26は、電磁コイル24の巻き方向(周方向)に分散して複数箇所に配置されており、この例では、回転軸14を中心として点対称に2つのU字型積層コア26が設けられている。
【0033】
U字型積層コア26は、個々にU字形状(コ字形状)に形成された複数の板材(例えば電磁鋼板)を厚み方向に重ね合わせたブロックで構成されており、全体としてその断面は、図1に示されるようにU字形状をなす溝型となっている。またU字型積層コア26は、電磁コイル24の束線24aをU字溝内に挟み込むようにして配置されており、束線24aの内周側と外周側にそれぞれ極26a,26bを有している。これら極26a,26bの基端部は、互いに連結部26cを介して連結されている。
【0034】
〔コイルボビン〕
また操作感触付与型入力装置10は、コイルボビン28を備えており、上記の電磁コイル24及びU字型積層コア26はいずれもコイルボビン28によって保持(固定)されている。
【0035】
コイルボビン28は主に胴部28a、天板部28b及び底板部28cで構成されており、このうち胴部28aの外面に電磁コイル24が巻かれている。胴部28aは、電磁コイル24の巻き領域内で回転中心線CLに沿う方向に延びている。また胴部28aには、アーマチュアロータ22側の一端に天板部28bが一体に連接されており、反対側の他端に底板部28cが一体に連接されている。
【0036】
天板部28bは、回転軸14(回転中心線CL)を中心としてラジアル方向に拡がった円盤形状をなしており、その外面(図1では上面)がアーマチュアロータ22に対向して配置されている。本実施形態では、天板部28bをアーマチュアロータ22に対向するステータ部材として利用することにより、電磁コイル24への通電時に天板部28bに対してアーマチュアロータ22を圧着させて摩擦抵抗を発生させることができる。
【0037】
コイルボビン28の底板部28cもまた、回転軸14からラジアル方向に拡がっているが、U字型積層コア26との干渉を避けるため、その外形は円盤状ではなく、変則的な形状をなしている。なお、底板部28cの外形については別の図面を参照しつつさらに後述する。
【0038】
〔貫通孔〕
コイルボビン28には、天板部28bから底板部28cにかけて胴部28a内を貫通して延びる貫通孔28dが形成されており、回転軸14(第2パーツ14b)はこの貫通孔28d内に挿入されている。貫通孔28dの内径は回転軸14の最大外径より小さく、貫通孔28d内では、その内面と回転軸14の外面との間にクリアランス(例えば0.1mm以下)が確保されている。このため回転軸14は、貫通孔28dに挿入された状態で回転中心線CLの周りに回転可能に支持されている。
【0039】
〔固定穴〕
またコイルボビン28には、U字型積層コア26を保持(固定)するための固定穴28eが形成されている。固定穴28eは、底板部28cの外面(この例では下面)の開口から胴部28a内を回転中心線CLに沿って縦方向に延び、天板部28bの厚み内部でその奧端(終端)が閉塞されている。また固定穴28eは、2つのU字型積層コア26に対応して回転軸14を挟んで両側対称に設けられている。
【0040】
U字型積層コア26は、いずれも束線24aの内側に位置する極26aを固定穴28e内に挿入させた状態でコイルボビン28に固定されている。なお上記のように、固定穴28eの奥端(終端)が天板部28bの厚み内に達していることから、固定穴28eの位置で天板部28bは、固定穴28eに食い込まれた分だけ肉厚が削がれている。
【0041】
また底板部28cには、U字型積層コア26を固定した状態で連結部26cを厚み方向に受け入れるための切欠28gが形成されている。このため切欠28gの位置で底板部28cは、連結部26cの厚み分だけ肉厚を削がれた状態にある。
【0042】
〔凹部〕
さらにコイルボビン28には、天板部28bのアーマチュアロータ22と反対側に凹部28fが形成されている。この凹部28fは、各U字型積層コア26の束線24aより外側に位置する極26bの先端部に対応する位置に設けられており、それぞれ対応する極26bの先端部を天板部28bの厚み方向に受け入れた状態で保持している。このため天板部28bは、凹部28fの位置ではその深さ分だけ肉厚が削がれている。
【0043】
〔小径部位〕
回転軸14(第2パーツ14b)には、コイルボビン28の貫通孔28d内に挿入される部位が段付き形状をなしている。具体的には、貫通孔28dの両端部を避けた中央の位置で回転軸14がある程度の長さにわたって外周部分が段付き状に削り取られており、そこに小径部位14cが形成されている。
【0044】
回転軸14は、貫通孔28d内の両端部ではその内周面にすきま嵌めの状態で接しているが、小径部位14cでは完全に貫通孔28dの内周面から離隔している。このため回転軸14は、小径部位14cを貫通孔28dの内周面に接触させることなく回転するとともに、小径部位14c以外では貫通孔28dの内周面に接した状態で回転する。これにより、貫通孔28dを同一径のストレート形状に加工しても、これを相対的に回転軸14の軸受として活用することができるため、コイルボビン28に複雑な加工(中抜き加工等)を施したり、別途軸受を埋め込んだりする必要がない。また、貫通孔28d内で回転軸14とコイルボビン28との摩擦を最小限に減らすることで、その滑らかな回転を実現することができる。
【0045】
本実施形態では、上記のアーマチュアロータ22、コイルボビン28、電磁コイル24及びU字型積層コア26によって電磁ブレーキが構成されている。このような電磁ブレーキは、電磁コイル24への通電により磁力を発生させることで、アーマチュアロータ22をスラスト方向に吸着し、コイルボビン28の天板部28bに圧着させて摩擦抵抗を発生させることができる。またこのとき、各U字型積層コア26は電磁コイル24の束線24aの周囲で磁気経路を形成し、その内部にて磁束を案内するので、発生した磁力を効率的に利用することができる。
【0046】
またU字型積層コア26の2つの極26a,26bは、上記のように固定穴28eや凹部28fにより天板部28bの肉厚を部分的に減じた状態でアーマチュアロータ22に対向して配置されている。このため、アーマチュアロータ22と極26a,26bとの間のギャップをなるべく小さくし、より効率的に磁力を作用させることができる。
【0047】
なおここでは図示していないが、回転部材20やアーマチュアロータ22及びコイルボビン28を含む電磁ブレーキは、例えば別の装置本体や、操作感触付与型入力装置10を収容する筐体に固定されている。このため操作部12が回転操作されても、それによってコイルボビン28等が連れ回りすることはない。
【0048】
また操作感触付与型入力装置10は制御部30を備えており、この制御部30にはエンコーダ18及び電磁ブレーキ(主に電磁コイル24)が接続されている。制御部30は、例えばエンコーダ18から入力される検出パルスに基づいて操作部12(回転軸14)の回転に関する位置(座標)や回転方向を算出し、図示しない記憶部に予め記憶されたフォースカーブに基づいて電磁ブレーキにより発生させる摩擦抵抗の大きさ(駆動電圧又は駆動電流)を制御する機能を有する。
【0049】
電磁ブレーキの駆動により発生する摩擦抵抗は、アーマチュアロータ22を介して回転部材20に伝達されるので、これによって操作部12に回転抵抗を付与することができる。このため本実施形態では、アーマチュアロータ22と回転部材20との間で相互に回転が伝達される構造を採用している。
【0050】
すなわちアーマチュアロータ22には、その表面(図1では上面)から突出する2つの連結突起22cが設けられている。これら連結突起22cは、いずれもアーマチュアロータ22(本体部22a)の表面から回転部材20に向けて延びている。一方、回転部材20には、2つの連結突起22cにそれぞれ対応する位置に連結孔20cが形成されている。これら連結孔20cは本体部20aをその厚み方向に貫通して延びており、それぞれ内部に連結突起22cが挿通されている。また各連結突起22cは連結孔20c内に挿通された状態で、回転部材20(本体部20a)の表面(図1では上面)からある程度突出するだけの全長を有している。
【0051】
図2は、回転部材20とアーマチュアロータ22との連結関係を示す平面図(図1中のII−II断面を含む)である。図2に示されているように、2本の連結突起22cは回転部材20の各連結孔20c内に挿通された状態にあり、この状態で回転部材20とアーマチュアロータ22との相対回転は規制されている。このため、電磁ブレーキによってアーマチュアロータ22を引き付けると、アーマチュアロータ22を介して回転部材20に回転方向への摩擦抵抗が付与された状態となる。ただし、上記のように連結突起22cは連結孔20c内で軸方向への移動は規制されていないため、回転軸14全体に軸方向への力が及ぶことはない。
【0052】
上記の弾性部材15は、操作部12に回転抵抗が付与された状態で操作部12が操作されると、その回転方向にねじり変形(弾性変形)を生じる。ただし弾性部材15には、付与される回転抵抗が最大の状態で操作部12が操作されたとしても、そのときのトルクに対して充分な剛性を有する材料を用いるため、そこで弾性部材15が降伏したり、破断したりすることはない。したがって弾性部材15は、通常の弾性範囲内で変形しつつ、操作部12が受ける操作力を第1パーツ14aから第2パーツ14b及び回転部材20に伝達することができる。これにより、操作者がある程度の操作力を操作部12に加えると、電磁ブレーキに対してアーマチュアロータ22をスリップさせながら操作部12を引き続き回転させることができる。
【0053】
一方で弾性部材15は、上記のように弾性変形を生じた状態で操作者が操作部12から手を離したり、操作力を緩めたりすると、それまでの変形状態から復帰することができる。この復帰に伴い、弾性部材15は第1パーツ14aとともに操作部12及びコード板16をそれまでと逆方向へ僅かに回転させる。したがって、回転抵抗が付与された状態で操作部12が操作力を受けなくなると、操作部12の回転角度はそれまでの回転方向と逆方向へ僅かに変化する。なお、このときの回転方向の変化から、制御部30は操作部12に対する操作力が加わらなくなったことを検知することができる。
【0054】
次に図3は、コイルボビン28及びU字型積層コア26をそれぞれ単独で示した分解斜視図である。また図4は、電磁コイル24が巻き付けられた状態のコイルボビン28及びU字型積層コア26をそれぞれ単独で示した分解斜視図である。以下、コイルボビン28及びU字型積層コア26についてさらに詳しく説明する。
【0055】
U字型積層コア26は、上記のように個々にU字形状をなす複数の板材(個別の参照符号なし)を厚み方向に積層させた構造を有する。このような板材は、磁性材料鋼板(電磁鋼板)をプレス加工したものであり、互いの積層には接着剤を用いることができる。このためU字型積層コア26は、プレス加工と接着という比較的容易な作業工程だけで製作することができるため、切削加工等と比較して工数を削減し、その製造コストを低く抑えることができる。
【0056】
またコイルボビン28は、例えば樹脂射出成型等の一般的な加工法を用いて製作することができる。このときコイルボビン28には、上記の胴部28a、天板部28b及び底板部28cが一体に形成される他、合わせて固定穴28eや貫通孔28d、凹部28fもまた一体に形成される(図3参照。)。
【0057】
そして、例えば巻線機等を用いて胴部28aの周りに線材を巻き付けることで、コイルボビン28に電磁コイル24を形成することができる(図4参照。)。ここでは図示していないが、出来上がった電磁コイル24の外周面は例えば絶縁フィルム等で被覆されることが好ましい。またコイルボビン28の底板部28c又は天板部28bに例えば2本のリードピンを埋め込んでおくことにより、電磁コイル24の両端(巻始めと巻終わり)をリードピンに絡げて半田付けすることとしてもよい。
【0058】
また図3、図4に示されているように、天板部28bはおおよそ円盤形状をなしているが、底板部28cはU字型積層コア26との干渉を避けるため円盤形状ではなく、その外縁には円弧形状の部分と直線形状の部分とがそれぞれ一対ずつ混在した形状をなしている。このうち、一対の直線形状の部分にそれぞれ対応して固定穴28eが形成されている。また上記の切欠28gは、固定穴28eの一端(始端)の開口に連なった状態で底板部28cの外縁にまで達している。なお、ここでは胴部28aを略角柱形状としているが、胴部28aは略円柱形状であってもよい。
【0059】
図5は、電磁コイル24を巻き付けた状態のコイルボビン28にU字型積層コア26を固定した半製品状態を示す斜視図である。図5にはコイルボビン28に回転軸14(第2パーツ14b)及びアーマチュアロータ22を組み付けた状態も示されている。
【0060】
上記のように、各固定穴28e内にU字型積層コア26の内側の極26aが挿入されると、底板部28cの外縁のうち、一対の直線形状の部分が電磁コイル24の束線24aとともに各U字型積層コア26の溝内に収容された状態となる。この状態で各U字型積層コア26は、コイルボビン28により保持(固定)される。また、束線24aより外側のU字型積層コア26の極26bは、先端部分が凹部28f内に受け入れられる。なお連結部26cは、そのほぼ全体が切欠28g内で底板部28cの厚み内に受け入れられるため、U字型積層コア26をコイルボビン28に固定した状態で、底板部28cの外面(底面)とU字型積層コア26の下面とが一致する(いわゆる面一になる。)。
【0061】
図6は、コイルボビン28にU字型積層コア26を固定した半製品状態を示す底面図である。上記のように、本実施形態ではU字型積層コア26は回転軸14を挟んで反対側に分散して2組が配置されているが、U字型積層コア26の配置は3組以上であってもよい。例えば、回転軸14の周囲に等間隔(中心角で120°ずつ)をおいて3組のU字型積層コア26を配置してもよいし、あるいは4組のU字型積層コア26を配置してもよい。これらの場合、コイルボビン28にはU字型積層コア26の組数に応じて固定穴28eや凹部28f、切欠28gが形成されるとともに、底板部28cの形状も変更される。
【0062】
図7は、U字型積層コア26が配置されていない位置におけるコイルボビン28の縦断面図(図6中のVII−VII線に沿う断面)である。すなわち図7は、図1に示される断面に対して90°異なる位置での断面形状を示したものである。
【0063】
図7に示されているように、コイルボビン28の天板部28b及び底板部28cは、U字型積層コア26が配置されていない位置では全ての肉厚を有している。これにより、天板部28bの曲げ剛性を高めてアーマチュアロータ22の圧着による負荷を確実に受け止め、電磁ブレーキのステータ部材としての性能を向上することに寄与する。また底板部28cは、充分な肉厚を確保することで剛性を高め、例えば図示しない筐体等への固定を確実なものにすることができる。
【0064】
また胴部28aについては、U字型積層コア26が配置されていない位置に固定穴28eは形成されていない。これにより胴部28aの剛性を確保して貫通孔28dの屈曲変形を抑え、回転軸14の滑らかな回転を維持することができる。
【0065】
以上のように本実施形態の操作感触付与型入力装置10は、円筒形のヨークのような金属材料の切削加工を必要とせず、簡素な加工手法で容易に製造することができる。
【0066】
また、電磁コイル24を保持するコイルボビン28(天板部28b)を電磁ブレーキのステータ部材として利用することにより、別途のステータ部材を設けることなく、部品点数を削減して構造を簡素化し、全体の小型軽量化を実現している。また、合わせてU字型積層コア26を分散して配置することにより、さらに軽量化を促進することができる。
【0067】
本発明は上述した実施形態に制約されることなく、その他にも種々に変形して実施可能である。例えば、一実施形態では回転軸14の第1パーツ14aと第2パーツ14bの間に弾性部材15を配置しているが、回転軸14を単一の部材としてもよい。この場合、回転部材20とアーマチュアロータ22との間に別の弾性部材(例えば樹脂、板ばね)を介在させることで、回転部材20に回転力(操作力)が加わると弾性部材がある程度の量だけ変形した後、その変形が規制された状態で回転部材20とアーマチュアロータ22とが一体に回転し、回転部材20が回転力を受けなくなると、弾性部材が変形状態から復帰して逆方向へ回転する構造を採用してもよい。
【0068】
また、各部の具体的な変形が可能な点については、既に実施形態の中で述べた通りである。その他、図示とともに示した各種部材の形状や配置はいずれも好ましい例であり、本発明の実施に際してこれらを適宜変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0069】
10 操作感触付与型入力装置
12 操作部
14 回転軸
16 コード板
18 エンコーダ
20 回転部材
22 アーマチュアロータ
24 電磁コイル
24a 束線
26 U字型積層コア
26a,26b 極
26c 連結部
28 コイルボビン
28a 胴部
28b 天板部
28c 底板部
28d 貫通孔
28e 固定穴
28f 凹部
28g 切欠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者により操作される操作部と、
回転可能に支持されて前記操作部とともに回転する回転軸と、
前記回転軸に取り付けられて前記回転軸と一体に回転する回転体と、
前記回転体とともに回転し、かつ、前記回転軸に沿う方向への往復移動が可能な状態で前記回転体に取り付けられた磁性材料からなるロータ部材と、
前記ロータ部材と対向する位置に配置されたステータ部材と、
前記ロータ部材との間に前記ステータ部材を介して配置された電磁コイル及びコアを有し、前記電磁コイルにより磁力を発生させて前記ロータ部材を前記ステータ部材に圧着させる電磁手段と、
前記回転体の回転中心線の周りに前記電磁コイルを巻き付けて保持する胴部を有し、この胴部の前記ロータ部材側の一端に天板部が連接されるとともに、その反対側の他端に底板部が連接されたコイルボビンと、
前記電磁手段の前記電磁コイルによる磁力の発生状態を制御する制御手段とを備えた操作感触付与型入力装置であって、
前記コアは、
個々にU字形状に形成された複数の磁性材料の板材を重ね合わせて断面がU字形状をなす溝型に構成され、その溝内に前記磁性コイルの束線を挟み込んだ状態で巻き方向の複数箇所に分散して配置されていることを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の操作感触付与型入力装置において、
前記コイルボビンの天板部を前記ステータ部材として、前記ロータ部材を前記天板部に圧着させることを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の操作感触付与型入力装置において、
前記コイルボビンは、
前記底板部に形成された開口から前記胴部内を前記回転中心線に沿って延びる固定穴を有しており、この固定穴内に前記電磁コイルの内周側に位置する前記コアの一方の極を挿入させた状態で前記コアを固定することを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の操作感触付与型入力装置において、
前記コイルボビンは、
前記天板部の前記ロータ部材と反対側に設けられ、前記電磁コイルの外周側に位置する前記コアの他方の極の端部を前記天板部内の厚み方向に受け入れて保持する凹部を有することを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の操作感触付与型入力装置において、
前記コイルボビンは、
前記天板部から前記底板部にかけて前記胴部内を貫通して延び、前記回転軸が挿入された状態で前記回転軸を回転可能に支持する貫通孔を有することを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項6】
請求項5に記載の操作感触付与型入力装置において、
前記回転軸は、
前記貫通孔内に挿入される部位のうち、少なくとも前記貫通孔の両端近傍でそれぞれ内周面に接する範囲を避けた位置に形成され、他の位置よりも外径が縮小された小径部位を有することを特徴とする操作感触付与型入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−282397(P2010−282397A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134878(P2009−134878)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】