説明

操作装置及び画像記録装置

【課題】本体に回動可能に設けられた操作パネル体を所望の回動角度に維持するチルト機構において、1アクションで操作パネル体を姿勢変化させることができ、かつ、押圧操作によっても操作パネル体が倒伏し難い手段を提供する。
【解決手段】操作部13は、本体20に回動可能に設けられ、その回動により本体20に対して倒伏した第1姿勢と本体20に対して起立した第2姿勢とに姿勢変化するタッチパネル体15と、タッチパネル体15を所望の回動角度に維持するチルト機構とを具備する。チルト機構において、凹溝26に爪部38が第1位置61及び第2位置62において圧接して係合する。IV−IV断面において、仮想直線63と仮想直線44とがなす角度θ1と、仮想直線64と仮想直線45とがなす角度θ2とが、0°<θ1<θ2<90°の関係にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体に回動可能に設けられた操作パネル体と、その操作パネル体を所望の回動角度に維持するチルト機構とを具備する操作装置、及びその操作装置を備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタやスキャナ、コピー機、電話機、ファクシミリ機等において、操作ボタンなどを有する操作パネルやタッチパネルを有する操作装置が設けられたものがある。この操作装置は、プリンタなどの大きさや、操作ボタンやタッチパネルの操作性を考慮すると、プリンタなどの上面に配置されていることが望ましい。
【0003】
操作パネルなどは、装置の上面側から操作される場合と、装置の正面側から操作される場合が想定される。したがって、操作パネルを装置上面側に向ければ装置正面側からの操作性が悪くなり、一方、操作パネルを装置正面側に向ければ装置上面側からの操作性が悪くなる。これを解消するために、操作パネルが起伏可能に装置本体に設けられて、操作パネルなどが装置上面側又は装置正面側の任意の方向を向くように姿勢変化できるものが提案されている。このような操作装置には、操作パネルなどを任意の姿勢に保持できるようにする機構、いわゆるチルト機構が備えられている。
【0004】
特許文献1には、表示ユニット2の所望の傾斜角度に保持するチルト機構部103における角度保持機構3が開示されている。この角度保持機構3は、ラック13とストッパー14との係止によって表示ユニット2を所望の傾斜角度に保持する。また、解除部17の解除ボタン21が押圧操作されると、ラック13とストッパー14との係止が解除され、表示ユニット2が回動可能となる。
【0005】
特許文献2には、携帯型電子機器5におけるヒンジ機構として、ラチェット18aと掛止部13aとの係合によって携帯型電子機器5を閉じる方向へ移動しないように任意の角度に保持する機構が開示されている。そして、携帯型電子機器5を90度まで移動させると、掛止部13aがラチェット18aの軌跡から外れて、閉じる方向へ携帯型電子機器5を移動させることが可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開平10−63192号公報
【特許文献2】特開平11−354941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に開示された機構によれば、一旦、所望の傾斜角度に表示ユニット2などが保持されると、その表示ユニット2などに操作による押圧力などが付与されても、表示ユニット2などが回動しない。しかし、その表示ユニット2などを倒伏させる際には、表示ユニット2などの傾斜角度を保持している係合機構を解除する操作が必要であり、係合の解除と表示ユニット2などの倒伏との2つの操作を使用者に強いることとになり、操作性がよいとは言い難い。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、本体に回動可能に設けられた操作パネル体を所望の回動角度に維持するチルト機構において、1アクションで操作パネル体を姿勢変化させることができ、かつ、押圧操作によっても操作パネル体が倒伏し難い手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明にかかる操作装置は、本体に回動可能に設けられ、その回動により当該本体に対して倒伏した第1姿勢と当該本体に対して起立した第2姿勢とに姿勢変化する操作パネル体と、上記操作パネル体を所望の回動角度に維持するチルト機構と、を具備する。上記チルト機構は、上記本体又は上記操作パネル体の一方に、上記操作パネル体の回動軸線の径方向へ凹むV字形状の凹溝が当該回動軸線の周方向へ並設され、上記本体又は上記操作パネル体の他方に、上記回動軸線の周方向の所定位置において上記凹溝と係脱可能なV字形状の爪部材と、当該爪部材を上記凹溝と係合する方向へ弾性付勢する付勢部材とが設けられてなる。上記爪部材は、上記付勢部材に弾性付勢されて、上記凹溝において第1姿勢側へ姿勢変化される際に接触圧が高まる第1位置、及び第2姿勢側へ姿勢変化される際に接触圧が高まる第2位置において凹溝と接触して係合する。そして、上記回動軸線と直交する断面視において、上記第1位置及び上記回動軸線を結ぶ第1仮想直線と上記凹溝における第1位置側の傾斜面に沿った第2仮想直線とがなす角度θ1と、上記第2位置及び上記回動軸線を結ぶ第3仮想直線と上記凹溝における第2位置側の傾斜面に沿った第4仮想直線とがなす角度θ2とが、0°<θ1<θ2<90°の関係にある。
【0010】
本発明における操作パネル体とは、操作ボタンやタッチパネルなどにより所定の操作が行われる操作領域を有する構造体である。この操作パネル体は、本体に回動自在に設けられて、本体に対して起伏する。操作パネル体を姿勢変化させることにより、任意の位置からの操作性を高めることができる。また、操作パネル体を第1姿勢とすると、操作装置の高さが低くなるので、装置の薄型化が実現される。
【0011】
操作パネル体は、チルト機構によって任意の回動位置に維持される。このチルト機構は、本体又は操作パネル体の一方に設けられた凹溝と、本体又は操作パネル体の他方に設けられた爪部材及び付勢部材とを主要な構成とする。凹溝は、操作パネル体の回動軸線の径方向へ凹むV字形状である。また、爪部材もV字形状である。ここで、V字形状とは、主として2つの斜面が所定の角度で交差することによって形成される凹形状であって、その凹形状を断面又は側面から視るとV字に近似するものをいう。ただし、2つの斜面は平面や曲面、或いはこれらの組み合わせてであってもよく、また、2つの斜面が交差する奥部又は頂点などにいわゆるR加工や丸め処理が行われていてもよい。凹溝は、回動軸線の周方向へ並設されている。各凹溝には、付勢部材により付勢された爪部材が係合しうる。この係合状態において、操作パネル体に回動力が付与されると、その回動力が凹溝を介して爪部材へ伝達され、爪部材が付勢部材の弾性付勢に抗して脱離方向へ退避する。そして、爪部材が当該凹溝から脱離すると、付勢部材の弾性付勢によって隣接する他の凹溝と係合する。これにより、凹溝1つ分だけ操作パネル体が回動される。この凹溝と爪部材の係脱の繰り返しにより、操作パネル体が任意の姿勢へ回動される。
【0012】
凹溝と爪部材とが係合した状態において、爪部材は凹溝における2箇所(第1位置、第2位置)と圧接する。第1位置は、凹溝において第1姿勢側へ姿勢変化される際に接触圧が高まる位置である。第2位置は、第2姿勢側へ姿勢変化される際に接触圧が高まる位置である。回動軸線と直交する断面視において、第1位置及び回動軸線を結ぶ第1仮想直線と凹溝における第1位置側の傾斜面に沿った第2仮想直線とがなす角度θ1と、第2位置及び回動軸線を結ぶ第3仮想直線と凹溝における第2位置側の傾斜面に沿った第4仮想直線とがなす角度θ2とは、0°<θ1<θ2<90°の関係にある。
【0013】
角度θ1、θ2に依存して、操作パネル体に付与された回動力が爪部材を脱離方向へ移動させる力となる比率が異なり、角度θ1、θ2が小さくなるほど、回動力に対して爪部材を脱離方向へ移動させる力が小さくなる。したがって、爪部材を付勢部材に抗して凹溝から脱離させて、操作パネル体を第1姿勢側へ姿勢変化させるために必要な回動力(F1)は、同様にして操作パネル体を第2姿勢側へ姿勢変化させるために必要な回動力(F2)より大きくなる。したがって、第2姿勢側へは容易に回動可能であり、第1姿勢側へはより大きな回動力を要するチルト機構が実現される。
【0014】
(2) 上記断面視において、上記凹溝及び上記爪部材は、各々のV字形状の頂点と上記回動軸線とを結ぶ各直線に対してそれぞれ非線対称な面を有する形状であってもよい。
【0015】
これにより、凹溝の深さを十分に確保しつつ、θ1とθ2とを任意の角度に設計することが容易となる。
【0016】
(3) 上記操作パネル体として、その回動方向へ押圧されるタッチパネルを有するものがあげられる。
【0017】
本発明におけるタッチパネルとは、表示領域に指などが接触されると、接触された表示領域の特定箇所における物理変化量を検知して、所定の入力信号に変換するものであり、その物理変化量を検知する方式として、抵抗膜方式、光学式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式などがあげられる。
【0018】
(4) 本発明にかかる画像記録装置は、上記操作装置を上面に備えたものである。
【0019】
画像記録装置とは、例えば記録用紙などに文字や画像を印刷する装置であり所謂プリンタである。また、画像記録装置は、プリンタ以外の機能を有する所謂複合機であってもよい。前述された操作装置が画像記録装置の上面に設けられることにより、画像記録装置の薄型化が実現される。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明にかかる操作装置によれば、操作パネル体が姿勢変化できるので、操作装置の薄型化が実現される。また、チルト機構によって、操作パネル体を任意の姿勢とし、かつその姿勢を維持できる。さらに、このチルト機構によれば、操作パネル体を起立させる方向(第2姿勢側)へ回動させるに必要な力に対して、倒伏させる方向(第1姿勢側)へ回動させるに必要な力が大きくなるので、起立させることが容易であり、かつ操作中に倒伏し難い操作パネル体が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0022】
[図面の説明]
図1は、本発明の実施の形態に係る複合機10の外観構成を示す斜視図である。タッチパネル体15を第2姿勢とした状態における複合機10の外観構成を示す斜視図である。図3は、タッチパネル体15と本体20との連結構造を示す斜視図である。図4は、図3におけるIV−IV断面を示す断面図である。図5は、第2姿勢におけるIV−IV断面を示す断面図である。図6は、板バネ33の支持構造を示す平面図である。図7は、図5における凹溝26と爪部38との係合部分を示す部分拡大図である。図8は、IV−IV断面における凹溝26と爪部38との係合部分を示す部分拡大図である。なお、IV−IV断面が、本発明における回動軸線と直交する断面視に相当し、回動軸線25と直交する面である。
【0023】
[複合機10の全体構成]
図1に示されるように、複合機10は、下部にプリンタ部11を、上部にスキャナ部12を備えたものであり、プリント機能、スキャン機能、コピー機能及びファクシミリ機能を有する。複合機10におけるプリンタ部11が、本発明にかかる画像記録装置に相当する。したがって、本発明にかかる画像記録装置は、例えばプリント機能のみを有するプリンタとして実現されてもよい。
【0024】
複合機10は、主にコンピュータやデジタルカメラなどの外部情報機器と接続されて、その外部情報機器から送信された印刷データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録する。また、複合機10は、メモリカード等の各種記憶媒体が装填可能であり、その記憶媒体に格納された画像データなどを読み出して、記録用紙に画像を記録し得る。
【0025】
複合機10の正面側の上面には、操作部13が設けられている。操作部13は、本体20に、各種操作キー14及びタッチパネル体15が設けられてなる。操作キー14は、本体20の表面に設けられて、ほぼ上方へ突出している。したがって、使用者は、操作部13の上方から各種操作キー14を操作しうる。タッチパネル体15は、後述される第1姿勢において本体20の上面と同一面をなすように倒伏しており、タッチパネル体15の操作領域16は、ほぼ上方を向いている。使用者は、操作部13を用いて、所望の指令を入力する。複合機10は、所定の入力を受けて所定の動作を行う。複合機10は、操作部13へ入力された指令のほか、コンピュータに接続されて、そのコンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指令によっても動作する。この操作部13が、本発明にかかる操作装置に相当する。また、タッチパネル体15が、本発明における操作パネル体に相当する。
【0026】
なお、本実施形態では、本発明にかかる操作装置が複合機10の操作部13として実現されているが、本操作装置の実施態様は複合機10に限定されず、プリンタやスキャナ、コピー機、電話機、ファクシミリ機、コンピュータなどにおいて実現可能である。
【0027】
複合機10の正面側には開口17が形成されている。開口17を通じて装置内部に図示しない給紙トレイ及び排紙トレイが配置されて、プリンタ部11により画像記録される記録用紙が保持される。プリンタ部11による記録用紙への記録は、例えば、インクジェット方式やレーザ方式、サーマル方式などの公知の手法が採用されうる。なお、図1及び図2では、給紙トレイ及び排紙トレイが外された状態の複合機10が示されている。スキャナ部12は、FBS(Flatbed Scanner)に自動原稿搬送機構(ADF:Auto Document Feeder、以下「ADF」という。)18が設けられてなる。FBSは、例えばCIS(Contact Image Sensor)などのイメージスキャナが、原稿が載置されるプラテンに対して移動可能に構成されてなる。なお、プリンタ部11及びスキャナ部12の内部構成は、公知の構成が任意に採用されうるので、ここでは詳細な説明が省略される。
【0028】
[操作部13]
以下に複合機10の操作部13が詳細に説明される。図1に示されるように、操作部13は、複合機10の正面側において上面の一部をなしており、複合機10の幅とほぼ同幅の横長形状である。操作部13の本体20は複合機10のケーシングと一体に形成されており、本体20の上面に各種操作キー14及びタッチパネル体15が設けられている。
【0029】
タッチパネル体15は、平面視が横長矩形であり、その縦寸法が操作部13の奥行き寸法より若干小さい。図1に示されるように、タッチパネル体15は、操作領域16を含む表面と本体20の上面とが同一面となるように、本体20に対して倒伏する。このタッチパネル体15の姿勢が、本明細書において第1姿勢と称される。一方、図2に示されるように、タッチパネル体15は、本体20に対して起立するように回動可能である。この図2に示されるタッチパネル体15の姿勢が、本明細書において第2姿勢と称される。タッチパネル体15は、後述されるチルト機構により第1姿勢と第2姿勢との間で回動されるとともに、ラッチ部材27と板バネ33とが係合する任意の姿勢に維持されうる(図5参照)。したがって、複合機10の使用者は、タッチパネル体15の操作性や視認性が最もよい任意の姿勢にタッチパネル体15を姿勢変化しうる。
【0030】
図4に示されるように、タッチパネル体15は、タッチパネル体15の筐体となる上カバー21及び下カバー22と、タッチパネルモジュール23(以下、「TPモジュール23」とも称される。)と、上カバー21の中央の開口を覆う透明カバー24とを備えてなる。透明カバー24を通じてTPモジュール23が上カバー21から露出される領域が操作領域16に相当する。
【0031】
下カバー22は、タッチパネル体15の裏面と周側面とを構成する平面視が略矩形の皿形状のものである。各図には詳細に現れていないが、下カバー22の装置正面側の両側には軸受けが形成されており、本体20側に略水平方向に設けられた一対の軸がそれぞれ嵌め込まれる。この軸受けと軸とによって形成されるタッチパネル体15の回動軸線が、図3に回動軸線25として示されている。タッチパネル体15は、この回動軸線25を中心として、本体20に回動自在に支持されている。また、各図には現れていないが、下カバー22には貫通孔が形成されており、この貫通孔を通じて、TPモジュール23と複合機10の制御基板とを電気的に接続するためのフラットケーブル26が、タッチパネル体15から導出されている。
【0032】
上カバー21は、平面視が下カバー22の平面視と略同等の矩形のものであり、タッチパネル体15の表面と周側面とを構成する。下カバー22と上カバー21とが組み付けられることにより、TPモジュール23を収容可能な内部空間を有する略直方体の筐体が形成される。上カバー21の表面には、TPモジュール23の画面に対応した開口が形成されている。この開口により、上カバー21と下カバー22とで形成される筐体の内部空間に収容されたTPモジュール23の画面が露出される。
【0033】
透明カバー24は、平面視が上カバー21の開口より若干大きな矩形のシートである。透明カバー24は透光性を有する柔軟な素材からなる。使用者は、透明カバー24を通じてTPモジュール23の表示を視認することができ、さらに、TPモジュール23の所定箇所に押圧力を付与することができる。このTPモジュール23は、指などによって所定箇所が押圧されると、その所定箇所における物理変化量を検知して、所定の入力信号に変換するものであり、その物理変化量を検知する方式として、抵抗膜方式、光学式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式などが公知である。このようなTPモジュール23の構造は公知であるので、ここでは詳細な説明が省略される。
【0034】
下カバー22には、防護カバー39が設けられている。防護カバー39は、下カバー22と略同幅の平板形状である。防護カバー39は、その一端側が下カバー22に回動自在に連結され、他端側が本体20にスライド自在に連結されている。防護カバー39は、タッチパネル体15の回動に伴って起伏し、フラットケーブル26や後述されるチルト機構を覆う。
【0035】
[チルト機構]
以下にタッチパネル体15を所望の回動角度に維持しうるチルト機構が詳述される。このチルト機構は、主としてラッチ部材27及び板バネ33から構成される。
【0036】
図4及び図5に示されるように、下カバー22には、ラッチ部材27が設けられている。ラッチ部材27は、タッチパネル体15の裏面側、つまり操作領域16の反対側であって、装置正面側において下カバー22に固定されている。したがって、ラッチ部材27は、タッチパネル体15とともに回動する。ラッチ部材27は、タッチパネル体15の回動軸線25を中心とした円弧形状のベース28と、ベース28の外周面において回動軸線25の径方向へ凹む複数の凹溝29とを有する。凹溝29は略V字形状であり、この凹溝29が回動軸線25の周方向へ放射状に連続して並ぶようにベース28に形成されている。本実施形態では、5つの凹溝29がベース28に形成されているが、凹溝29の数はタッチパネル体15の段階的な起伏姿勢の数により適宜変更され得る。
【0037】
凹溝29は、ベース28の外周面すべてに形成されておらず、ベース28の外周面のうち装置奥側には円周面30が設けられている。この円周面30は、装置奥側へ向かって、隣接する凹溝29との境界より回動軸25に近接する方向へ傾斜している。後述されるように、円周面30には、タッチパネル体15が凹部31に収容された第1姿勢において、板バネ33の爪部38が当接する。
【0038】
図8(a)に示されるように、IV−IV断面視において、1つの凹溝29の略V字形状をなす2つの傾斜面40,41は、仮想線42に対して非線対称な面である。なお、5つの凹溝29は回動軸線25に対する配置が異なる他は同形状なので、ここでは、1つの凹溝29について詳細に説明される。仮想線42は、略V字形状の凹溝29の頂点43と回動軸線25(図3参照)とを結ぶ直線である。ここで、傾斜面40に沿った仮想線44及び傾斜面41に沿った仮想線45を描くと、仮想線42と仮想線44とがなす角度A1と、仮想線42と仮想線45とをなす角度A2とに間には、A1<A2の関係が成立する。そして、A1とA2とが同一でないので、2つの傾斜面40,41は、仮想線42に対して非線対称である。
【0039】
図4及び図5に示されるように、本体20には、第1姿勢のタッチパネル体15が収容される凹部31が形成されている。凹部31は、本体20の上面から凹陥された空間であり、タッチパネル体15の主に裏面側に沿った形状をなしている。また、凹部31においてラッチ部材27に対応する領域32は、さらに1段深く凹陥されている。この凹部31に第1姿勢のタッチパネル体15が完全に収容されて、タッチパネル体15の背面が凹部31に当接した状態において、タッチパネル体15における操作領域16を含む表面が本体20の上面とほぼ同一面をなす。
【0040】
図6に示されるように、凹部31の領域32には、板バネ33が設けられている。領域32には、上方へ突出する一対のピン34,35が設けられている。一対のピン34,35は、装置の奥行き方向(図6における上下方向)に離れており、このピン34,35の離間距離は、板バネ33の長手方向の寸法に対応して設定されている。このピン34,35に板バネ33が係止されて、板バネ33が、その長手方向を装置奧行き方向として領域32に固定されている。板バネ33の長手方向両端には、切り欠き36と孔37とがそれぞれ形成されている。切り欠き36にピン34が係合され、かつ孔37にピン35が挿通されることによって、板バネ33が領域32の所定位置に固定される。この板バネ33は、板バネ33を領域32の底面に沿った2次元方向(図6におけるほぼ上下方向及びほぼ左右方向)に固定されている。また、板バネ33は、この固定状態において後述される爪部38がラッチ部材27と接離する方向(図6における紙面とほぼ垂直な方向)へ弾性変形可能である。このような板バネ33の固定位置は、ラッチ部材27の各凹溝29との関係によって設定されている。
【0041】
板バネ33の長手方向の中央は、上方へ略V字形状に曲折されて爪部38を形成している。前述されたように領域32に固定された板バネ33は、回動軸線25の周方向の所定位置において、その爪部38をラッチ部材27へ圧接する。そして、ラッチ部材27がタッチパネル体15とともに回動すると、爪部38がラッチ部材27の凹溝29と係脱しうる。爪部38がラッチ部材27と接触した状態において、板バネ33は、爪部38をラッチ部材27側へ弾性付勢している。この爪部38が、本発明における爪部材に相当し、板バネ33が本発明における付勢部材に相当する。なお、本実施形態では、本発明における爪部材及び付勢部材は、1つの板バネ33により一体に形成されているが、これらは必ずしも一体に形成される必要はなく、例えば別部品として形成された爪部材が板バネによりラッチ部材27へ付勢される構成が採用されてもよい。
【0042】
図8(b)に示されるように、IV−IV断面視において、爪部38の略V字形状をなす2つの傾斜面50,51は、仮想線52に対して非線対称な面である。仮想線52は、略V字形状の爪部38の頂点53と回動軸線25(図3参照)とを結ぶ直線である。ここで、傾斜面50に沿った仮想線54及び傾斜面51に沿った仮想線55を描くと、仮想線52と仮想線54とがなす角度B1と、仮想線52と仮想線55とをなす角度B2とに間には、B1<B2の関係が成立する。そして、B1とB2とが同一でないので、2つの傾斜面50,51は、仮想線52に対して非線対称である。
【0043】
図7に示されるように、爪部38は、板バネ33に弾性付勢されて、凹溝26の第1位置61及び第2位置62において接触して係合しうる。なお、各凹溝26は、回動軸線25に対する配置が異なる他は同形状なので、1つの凹溝26を例に爪部38の係合状態が説明される。
【0044】
第1位置61は、タッチパネル体15が第1姿勢側へ姿勢変化される際に接触圧が高まる位置である。タッチパネル体15の第1姿勢側への姿勢変化とは、IV−IV断面においてタッチパネル体15が時計回り方向へ回動することである。その際には、爪部38は、第1位置61が存在する凹溝26の傾斜面40(図8(a)参照)によって凹溝26から脱離する方向へ押しやられる。爪部38は板バネ33により凹溝26と係合する方向へ弾性付勢されているので、爪部38を凹溝26から脱離させるには、板バネ33の弾性付勢に抗して爪部38を移動させる必要がある。その際に、第1位置61における凹溝26と爪部38との接触圧が高まる。
【0045】
第2位置62は、タッチパネル体15が第2姿勢側へ姿勢変化される際に接触圧が高まる位置である。タッチパネル体15の第2姿勢側への姿勢変化とは、IV−IV断面においてタッチパネル体15が反時計回り方向への回動することである。その際には、爪部38は、第2位置62が存在する凹溝26の傾斜面41(図8(a)参照)によって凹溝26から脱離する方向へ押しやられる。爪部38は板バネ33により凹溝26と係合する方向へ弾性付勢されているので、爪部38を凹溝26から脱離させるには、板バネ33の弾性付勢に抗して爪部38を移動させる必要がある。その際に、第2位置62における凹溝26と爪部38との接触圧が高まる。
【0046】
ここで、IV−IV断面視において、凹溝26に爪部38が係合した状態における第1位置61及び回動軸線25(図3参照)を結ぶ仮想直線63と、凹溝26における第1位置61側の傾斜面40に沿った仮想直線44とがなす角度を角度θ1とする。また、第2位置62及び回動軸線25を結ぶ仮想直線64と凹溝26における第2位置62側の傾斜面41に沿った仮想直線45とがなす角度を角度θ2とする。この角度θ1とθ2とは、0°<θ1<θ2<90°の関係にある。なお、仮想直線63が本発明における第1仮想直線に相当し、仮想直線44が本発明における第2仮想直線に相当し、仮想直線64が本発明における第3仮想直線に相当し、仮想直線45が本発明における第4仮想直線に相当する。
【0047】
[タッチパネル体15の回動動作]
図4に示されるように、タッチパネル体15が第1姿勢の場合には、板バネ33の爪部38は、5つの凹溝29のいずれとも係合せず、ベース28の円周面30に圧接する。第1姿勢のタッチパネル体15を第2姿勢となる方向へ回動させるには、板バネ33を弾性変形させて、その爪部38を円周面30に沿って回動軸25の径方向外側へ移動させる必要がある。また、タッチパネル体15に作用する重力は、タッチパネル体15を第1姿勢へ回動させる方向へ働くので、第1姿勢のタッチパネル体15を第2姿勢となる方向へ回動させるには、この重力に抗する外力(回動力)をタッチパネル体15に付与する必要がある。要するに、このような板バネ33及び重力に抗する外力をタッチパネル体15に付与しなければ、タッチパネル体15は第1姿勢から回動されない。さらに、板バネ33の爪部38がベース28の円周面30と圧接するタッチパネル体15の回動領域においては、タッチパネル体15は任意の回動姿勢を採りうる。したがって、第1姿勢付近においては、前述された板バネ33及び重力によってタッチパネル体15が第1姿勢を維持するとともに、その操作領域16を含むタッチパネル体15の表面が本体20の上カバー21の上面と同一面となる。
【0048】
第1姿勢のタッチパネル体15が第2姿勢側へ回動されれば、タッチパネル体15に付与された回動力により、板バネ33が弾性変形して、爪部38が円周面30に沿って回動軸25の径方向外側へ移動する。爪部38が、円周面30と凹溝26との境界を越えると、爪部38が回動軸線25の径方向内側へ弾性復帰して凹溝26と係合する。この状態から、タッチパネル体15を第1姿勢側又は第2姿勢側のいずれへ回動させるにも、爪部38を凹溝26から脱離させる必要がある。そのためには、爪部38を板バネ33の弾性付勢に抗して、回動軸線25の径方向外側へ移動させる必要がある。したがって、タッチパネル体15に更に回動させる力が付与されない限り、タッチパネル体15は、凹溝26と爪部38とが係合した状態で、その回動角度に維持される。
【0049】
タッチパネル体15が更に回動されると、板バネ33が弾性変形して爪部38が回動軸線25の径方向外側へ移動する。そして、爪部38が凹溝26間の境界に到達すると、先に係合していた凹溝26から爪部38が脱離する。この脱離とほぼ同時に、爪部38は板バネ33の弾性付勢によって隣接する次の凹溝26に係合し始める。その過程において、爪部38が回動軸線25の径方向内側へ移動するが、この移動は板バネ33の弾性付勢を受けるので、凹溝26間の境界から次の凹溝26へ係合するまでのタッチパネル体15の回動は、爪部38を凹溝26から脱離される場合に比べてかなり小さな力でなしうる。そして、爪部38が次の凹溝26と係合すると、前述されたように、タッチパネル体15に更に回動させる力が付与されない限り、タッチパネル体15は、その回動角度に維持される。このような凹溝26と爪部38との係合により、周方向に段階的な回動位置でタッチパネル体15の姿勢が維持される。そして、段階的な回動位置を移動する際に、凹溝26と爪部38の係脱に伴って板バネ33の弾性変形と復元とが連続して行われ、タッチパネル体15の回動にクリック感が生じる。
【0050】
また、図7に示されるように、凹溝26と爪部38とが係合した状態において、爪部38は凹溝26における第1位置61及び第2位置62において圧接する。そして、前述されたように、角度θ1と角度θ2とは、0°<θ1<θ2<90°の関係にある。角度θ1、θ2に依存して、タッチパネル体15に付与された回動力が爪部38を回動軸線25の径方向外側(凹溝26から脱離する方向)へ移動させる力に変換される比率が異なる。すなわち、角度θ1、θ2が小さくなるほど、タッチパネル体15を回動させる力に対して爪部38を回動軸線25の径方向外側へ移動させる力が小さくなる。
【0051】
したがって、爪部38を板バネ38に抗して凹溝26から脱離させて、タッチパネル体15を第1姿勢側へ姿勢変化させるために必要な回動力F1は、同様にしてタッチパネル体15を第2姿勢側へ姿勢変化させるために必要な回動力F2より大きくなる(F1>F2)。これにより、タッチパネル体15は、第2姿勢側へは容易に回動可能であるが、第1姿勢側へはより大きな回動力を付与しないと回動しない。つまり、操作領域16に付与された押圧操作によって、タッチパネル体15を第1姿勢側へ回動させる力が加わっても、タッチパネル体15が容易に回動することがない。
【0052】
[本実施形態による作用効果]
このように、操作部13によれば、タッチパネル体15が姿勢変化できるので、装置の薄型化が実現される。また、本実施形態のように、操作部13が複合機10の上面に設けられることにより、複合機10の薄型化が実現される。
【0053】
また、チルト機構によって、タッチパネル体15を任意の姿勢とし、かつその姿勢を維持できる。さらに、このチルト機構によれば、タッチパネル体15を第2姿勢側へ回動させるに必要な力F2に対して、第1姿勢側へ回動させるに必要な力F1が大きくなるので、起立させることが容易であり、かつ操作領域16に対する操作中に倒伏し難いタッチパネル体15が実現される。
【0054】
また、IV−IV断面視において、凹溝26及び爪部38が、各々の略V字形状の頂点43,53と回動軸線25とを結ぶ各仮想直線42,52に対してそれぞれ非線対称な面を有する形状であることにより、凹溝26の深さを十分に確保しつつ、θ1とθ2とを任意の角度に設計することが容易となる。凹溝26の深さが確保されることにより、タッチパネル体15の回動に必要な力を大きくすることができ、また回動に伴うクリック感を増大させることができる。また、θ1とθ2とを任意の角度に設計できることにより、力F1,F2の比率を幅広く設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る複合機10の外観構成を示す斜視図である。
【図2】タッチパネル体15を第2姿勢とした状態における複合機10の外観構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、タッチパネル体15と本体20との連結構造を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3におけるIV−IV断面を示す断面図である。
【図5】図5は、第2姿勢におけるIV−IV断面を示す断面図である。
【図6】図6は、板バネ33の支持構造を示す平面図である。
【図7】図7は、図5における凹溝26と爪部38との係合部分を示す部分拡大図である。
【図8】図8は、IV−IV断面における凹溝26と爪部38との係合部分を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0056】
11・・・プリンタ部(画像記録装置)
13・・・操作部(操作装置)
15・・・タッチパネル体(操作パネル体)
20・・・本体
23・・・TPモジュール(タッチパネル)
25・・・回動軸線
26・・・凹溝
27・・・ラッチ部材(チルト機構)
33・・・板バネ(付勢部材、チルト機構)
38・・・爪部(爪部材)
40・・・傾斜面
41・・・傾斜面
42,52・・・仮想直線
44・・・仮想直線(第2仮想直線)
45・・・仮想直線(第4仮想直線)
61・・・第1位置
62・・・第2位置
63・・・仮想直線(第1仮想直線)
64・・・仮想直線(第3仮想直線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に回動可能に設けられ、その回動により当該本体に対して倒伏した第1姿勢と当該本体に対して起立した第2姿勢とに姿勢変化する操作パネル体と、
上記操作パネル体を所望の回動角度に維持するチルト機構と、を具備する操作装置であって、
上記チルト機構は、上記本体又は上記操作パネル体の一方に、上記操作パネル体の回動軸線の径方向へ凹むV字形状の凹溝が当該回動軸線の周方向へ並設され、上記本体又は上記操作パネル体の他方に、上記回動軸線の周方向の所定位置において上記凹溝と係脱可能なV字形状の爪部材と、当該爪部材を上記凹溝と係合する方向へ弾性付勢する付勢部材とが設けられてなり、
上記爪部材は、上記付勢部材に弾性付勢されて、上記凹溝において第1姿勢側へ姿勢変化される際に接触圧が高まる第1位置、及び第2姿勢側へ姿勢変化される際に接触圧が高まる第2位置において凹溝と接触して係合し、
上記回動軸線と直交する断面視において、上記第1位置及び上記回動軸線を結ぶ第1仮想直線と上記凹溝における第1位置側の傾斜面に沿った第2仮想直線とがなす角度θ1と、上記第2位置及び上記回動軸線を結ぶ第3仮想直線と上記凹溝における第2位置側の傾斜面に沿った第4仮想直線とがなす角度θ2とが、0°<θ1<θ2<90°の関係にある操作装置。
【請求項2】
上記断面視において、上記凹溝及び上記爪部材は、各々のV字形状の頂点と上記回動軸線とを結ぶ各直線に対してそれぞれ非線対称な面を有する形状である請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
上記操作パネル体は、その回動方向へ押圧されるタッチパネルを有する請求項1又は2に記載の操作装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の操作装置を上面に備えた画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−105557(P2009−105557A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274067(P2007−274067)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】