説明

操作装置

【課題】運転者が要求する車両の走行状態を、違和感無く得ることができる操作装置を提供すること。
【解決手段】アクセルペダル21が接続される作動部材40等の操作機構35の操作範囲を、操作範囲規制機構50によって車両1の走行環境に応じて基準操作範囲から変更可能に設けている。これにより、現在の走行状態における基準操作範囲で制御することができる制御量の範囲外の制御量で走行制御を行う場合に、アクセルペダル21の操作位置を基準操作範囲外にすることにより、基準操作範囲で制御することができる制御量の範囲外の制御量で走行制御を行うことができる。従って、操作機構35の操作量と走行制御の制御量との関係の一貫性を維持しつつ、運転者が要求する車両1の走行状態を得ることができる。この結果、運転者が要求する車両1の走行状態を、違和感無く得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作装置に関するものである。特に、この発明は、主に動力源の出力を制御する操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両を走行させる際の走行状態は、通常、アルセルペダルなどの操作装置を操作し、動力源として車両に搭載されるエンジンの出力を調節しながら走行をする。さらに、近年の車両では、エンジンから出力された動力を変速して駆動輪に伝達する変速機として、自動変速機を備えているものが多いが、このような自動変速機の変速は、エンジンの回転数やアクセルペダルの操作状態に基づいて変速する。このように、自動変速機を変速させた場合、変速比によって加速をする際の加速度のみならず、減速をする際の減速度、つまり、エンジンブレーキの大きさも変速比により変化するが、自動変速機の変速比は、エンジンの回転数やアクセルペダルの操作状態に基づいて制御する。このため、エンジンブレーキも、エンジンの回転数やアクセルペダルの操作状態に基づいて変化する。
【0003】
しかし、車両の走行時に運転者が期待するエンジンブレーキは、アクセルペダルの操作状態等により一定ではなく、車両の走行環境や運転状態により変化する。このため、従来の操作装置では、エンジンの回転数やアクセルペダルの操作状態以外の条件も用いてエンジンブレーキの大きさを設定しているものがある。例えば、特許文献1に記載の無段変速機の変速制御装置では、車両の走行環境や運転状態または道路状態に応じて、アクセルペダルを解放した時の無段変速機の変速比を変化させることにより、エンジンブレーキの大きさを変化させている。これにより、エンジンブレーキの大きさを、運転者の期待に応じて設定することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−230322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アクセルペダルの操作量が同じ場合に走行環境等に応じてエンジンブレーキの大きさが変化した場合、車両の走行自体は走行環境等に適した走行になるが、アクセルペダルの操作量とエンジンブレーキの大きさとの関係に一貫性が無くなるため、運転者は違和感を覚える場合がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、運転者が要求する車両の走行状態を、違和感無く得ることができる操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る操作装置は、操作範囲内で操作可能に設けられると共に操作位置に応じて車両の走行制御を可能に設けられており、且つ、基準となる前記操作範囲である基準操作範囲の一端に位置する前記操作位置は、前記車両の走行時の駆動力を発生する動力源をアイドル状態に制御する際の前記操作位置であるアイドル位置となっている操作機構と、走行環境に応じて前記操作範囲を前記基準操作範囲から変更可能な操作範囲規制手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明では、操作機構の操作範囲を、操作範囲規制手段によって走行環境に応じて基準操作範囲から変更可能にしている。これにより、現在の走行状態における基準操作範囲で制御することができる制御量の範囲外の制御量で走行制御を行う場合に、走行環境に応じて操作機構の操作範囲を基準操作範囲から変更することにより、操作位置が基準操作範囲内の場合に制御することができる制御量の範囲外の制御量で走行制御を行うことができる。つまり、操作位置を基準操作範囲外にした場合、基準操作範囲で制御することができる制御量の範囲外の制御量で走行制御を行うことができ、操作機構の操作量と走行制御の制御量との関係の一貫性を維持しつつ、運転者が要求する車両の走行状態を得ることができる。この結果、運転者が要求する車両の走行状態を、違和感無く得ることができる。
【0009】
また、この発明に係る操作装置は、上記発明において、前記操作範囲規制手段は、前記操作範囲を前記基準操作範囲から変更する場合には、前記基準操作範囲に対して前記アイドル位置を越えた位置に追加する前記操作範囲である拡大操作範囲を追加することにより、前記アイドル位置を越えて前記操作範囲を拡大することを特徴とする。
【0010】
この発明では、操作範囲を基準操作範囲から変更する場合に、拡大操作範囲を追加してアイドル位置を越えて操作範囲を拡大することにより、操作位置を拡大操作範囲に位置させた場合に、アイドル位置における制御量以外の制御量で走行制御をすることができる。この結果、より確実に運転者が要求する車両の走行状態を、違和感無く得ることができる。
【0011】
また、この発明に係る操作装置は、上記発明において、前記操作機構は、前記操作位置が前記拡大操作範囲に位置している場合には、前記アイドル位置における前記車両の前記走行制御と比較して低速側に制御することを特徴とする。
【0012】
この発明では、操作位置が拡大操作範囲に位置している場合には、アイドル位置における車両の走行制御と比較して低速側に制御しているので、操作機構の操作量と走行制御の制御量との関係の一貫性を維持することができる。つまり、基準操作範囲におけるアイドル位置とは、車両の走行時には車両の走行制御を、減速するなど低速側に制御する操作位置であるが、拡大操作範囲は、基準操作範囲に対して、このアイドル位置を越えた位置に追加される操作範囲となっている。このため、操作位置を、この拡大操作範囲に位置させた場合にはアイドル位置における車両の走行制御と比較して低速側に制御することにより、操作機構の操作量と走行制御の制御量との関係の一貫性を、より確実に維持することができる。この結果、運転者が要求する車両の走行状態を、より確実に違和感無く得ることができる。
【0013】
また、この発明に係る操作装置は、上記発明において、さらに、前記操作機構の前記操作位置が前記拡大操作範囲に位置していることを前記車両の運転者に伝達する拡大操作範囲伝達手段を備えていることを特徴とする。
【0014】
この発明では、操作機構の操作位置が拡大操作範囲に位置していることを運転者に伝達する拡大操作範囲伝達手段を備えているので、操作機構の操作位置が拡大操作範囲に位置していることを運転者に認識させることができる。この結果、操作範囲が基準操作範囲から変更したことを運転者に認識させることができ、車両を走行させる際の安全性の向上を図ることができる。
【0015】
また、この発明に係る操作装置は、上記発明において、さらに、前記操作範囲規制手段が前記操作範囲を前記基準操作範囲から変更する状態の場合に、前記操作範囲は前記基準操作範囲から変更する状態であることを前記車両の運転者に通知する操作範囲変更通知手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
この発明では、操作範囲は基準操作範囲から変更する状態であることを運転者に通知する操作範囲変更通知手段を備えているので、現在は操作範囲が変更された状態であることを運転者に認識させることができる。この結果、操作機構を操作することにより車両を走行させる際の安全性の向上を図ることができる。
【0017】
また、この発明に係る操作装置は、上記発明において、さらに、前記操作範囲規制手段が前記操作範囲を前記基準操作範囲から変更しない状態で前記操作位置が前記基準操作範囲外にある場合に、前記操作位置が前記基準操作範囲外にあることを前記車両の運転者に通知する操作位置操作範囲外通知手段を備えていることを特徴とする。
【0018】
この発明では、操作範囲は基準操作範囲から変更しない状態で、且つ、操作位置が基準操作範囲外にある場合に、操作位置が基準操作範囲外にあることを運転者に通知する操作位置操作範囲外通知手段を備えているので、操作位置を現在の操作位置から基準操作範囲内に変化させた場合には、操作機構の操作範囲は基準操作範囲で維持されることを運転者に認識させることができる。この結果、操作機構を操作することにより車両を走行させる際の安全性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る操作装置は、運転者が要求する車両の走行状態を、違和感無く得ることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明に係る操作装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1に係る操作装置が設けられた車両の概略図である。なお、以下の説明では、車両1の通常の走行時における進行方向を前方とし、進行方向の反対方向を後方として説明する。実施例1に係る操作装置2を備える車両1は、進行方向における前側部分に、車両1の走行時の駆動力を発生する動力源であるエンジン10が設けられている。このエンジン10が発生した動力は、自動変速機15及びドライブシャフト16を介して、車両1が有する車輪5のうち駆動輪として設けられる前輪6へ伝達される。これにより、車両1は走行可能になっている。
【0022】
なお、この実施例1では、動力源として用いられるエンジン10はガソリンを燃料とするレシプロ式の火花点火式エンジンであるが、エンジン10はこれに限定されるものではない。エンジン10は、例えば、LPG(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス)やアルコールを燃料とする火花点火式エンジンであってもよいし、いわゆるロータリー式の火花点火式エンジンであってもよいし、ディーゼル機関であってもよい。エンジン10は、車両1の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)100によってエンジン回転数やトルク(出力)が制御される。
【0023】
また、この車両1は、エンジン10が車両1の進行方向における前側部分に搭載され、前輪6が駆動輪として設けられた、いわゆるFF(Front engine Front drive)の駆動形式となっているが、駆動形式はFF以外でもよい。例えば、エンジン10が車両1の進行方向における前側部分に搭載され、後輪7が駆動輪として設けられた、いわゆるFR(Front engine Rear drive)の駆動形式となっていてもよい。実施例1に係る操作装置2は、動力源の動力が駆動輪へ伝達される車両1であれば、駆動形式に関わらず適用できる。
【0024】
前輪6は、このように駆動輪として設けられていると共に、車両1の操舵輪としても設けられ、駆動輪と操舵輪とを兼ねている。操舵輪としても設けられる前輪6は、車両1の運転席に配設されるハンドル20によって操舵可能に設けられている。
【0025】
また、各車輪5の近傍には、油圧によって作動するホイールシリンダ82と、このホイールシリンダ82と組みになって設けられると共に車輪5の回転時には車輪5と一体となって回転するブレーキディスク83とが設けられている。さらに、車両1には、ホイールシリンダ82と油圧経路85によって接続され、ブレーキ操作時に、ホイールシリンダ82に作用させる油圧を制御するブレーキ油圧制御装置81が設けられている。また、これらのブレーキ油圧制御装置81、ホイールシリンダ82、ブレーキディスク83、油圧経路85は、走行中における車両1の制動が可能な車両制動手段であるブレーキユニット80として設けられている。
【0026】
また、車両1には、車両1の運転席に運転者が座った状態における運転者の足元付近に、エンジン10の出力を調整する際に操作するアクセルペダル21と、走行中の車両1を制動する際に操作するブレーキペダル22とが併設されている。このうち、アクセルペダル21は、アクセルペダル21の開度を検出可能なアクセル開度検出手段であるアクセルポジションセンサ61(図2参照)を備えるアクセル操作装置30に設けられている。また、ブレーキペダル22の近傍には、ブレーキペダル22のストロークを検出可能なブレーキストローク検出手段であるブレーキストロークセンサ70が設けられている。
【0027】
また、運転席の近傍には、自動変速機15のシフトレンジを切り替えるセレクターレバー75が設けられている。このシフトレンジとは、車両1を前進させるレンジであるD(ドライブ)レンジや、車両1を後進させるR(リバース)レンジ、エンジン10の回転が駆動輪である前輪6に伝達されない状態にするN(ニュートラル)レンジ、さらに、車両1を前進させる場合における自動変速機15のギア段を1速に固定するレンジや、1速と2速のみを使用可能な状態にするレンジなど、自動変速機15の基本的な変速状態を選択するレンジとなっている。また、セレクターレバー75の近傍には、選択した走行レンジに応じて切り替えられるスイッチであるポジションスイッチ76が設けられている。
【0028】
さらに、運転席の近傍には、車両1の走行時における走行モードを切り替えるモードスイッチ77が設けられている。このモードスイッチ77は、エンジン10の出力が大きくなる走行モードであるパワーモードや、反対にエンジン10の出力が小さくなる走行モードであるスノーモードなどの走行モードの切り替えが可能になっている。
【0029】
これらのように設けられるエンジン10、自動変速機15、アクセル操作装置30、ブレーキストロークセンサ70、ポジションスイッチ76、モードスイッチ77、ブレーキ油圧制御装置81は、ECU100に接続されており、ECU100によって制御可能に設けられている。
【0030】
図2は、図1に示すアクセル操作装置の断面詳細図である。アクセル操作装置30は、アクセル操作を行った際に作動する作動部材40を有しており、作動部材40は、アクセル操作装置30における筐体となるアクセルユニットケース31に、回動軸60を中心として回動可能に取り付けられている。この回動軸60には、アクセルユニットケース31に対する作動部材40の回動角度の変化を検出可能なアクセルポジションセンサ61が設けられており、アクセルポジションセンサ61は、ECU100に接続されている。
【0031】
また、作動部材40は、アクセルポジションセンサ61が設けられている位置から2方向に向かって形成されており、このうち一方はアクセルペダル21が接続される部分であるアクセルペダル接続部41となっている。また、作動部材40における他方は、アクセル操作を行う際における各種の力が作用し、アクセル操作を行った際に各種の動作を行う部分である動作部42になっている。
【0032】
これらのアクセルペダル接続部41と動作部42とは、アクセルペダル接続部41は回動軸60に対して略下方に設けられており、動作部42は回動軸60に対して略上方に設けられている。アクセルユニットケース31は、下方が開口しており、作動部材40は、回動軸60に対して略上方に設けられている動作部42がアクセルユニットケース31の内側に配設されている。また、アクセルペダル接続部41は、アクセルユニットケース31における下方に開口した部分からアクセルユニットケース31の外部に突出して設けられている。このように、アクセルユニットケース31の外部に突出して設けられるアクセルペダル接続部41は、回動軸60から見た場合に、回動軸60よりも下方で、且つ、アクセル操作装置30を備える車両1の前後方向における後方に向かって形成されている。
【0033】
アクセルユニットケース31の内側に配設される動作部42は、車両1の前後方向における前方側に、略前方に突出して形成された2つの突出部43が設けられている。この2つの突出部43は、動作部42の形成方向、或いは上下方向において並んで形成されており、2つの突出部43間で前後方向における高さが異なっている。詳しくは、動作部42の形成方向に沿って並んで設けられる2つの突出部43のうち、回動軸60に近い方の突出部43である第1突出部44の方が、回動軸60から離れている方の突出部43である第2突出部45よりも高さが高くなっている。換言すると、上下方向に並んで設けられる第1突出部44と第2突出部45とのうち、相対的に下方に位置する第1突出部44の方が、上方に位置する第2突出部45よりも前後方向における高さが高くなっている。このため、第1突出部44と第2突出部45との前後方向における前方側の端部は、第2突出部45の端部よりも、第1突出部44の端部の方が、前方側に位置している。さらに、第2突出部45は、動作部における上端、即ち、動作部42において回動軸60から離れている側の端部に設けられている。
【0034】
また、動作部42は、端部の形状、即ち、上下方向における上端側の形状が、前後方向に突出して形成されている。この動作部の端部には、前方に突出した第2突出部45が設けられているため、動作部42の端部は、略前後方向に突出して形成されている。このように、略前後方向に突出して形成された端部の端面、つまり、上方側の面は、摺動面46となっており、この摺動面46は、回動軸60が中心となった略円周面の形状で形成されている。また、摺動面46には、当該摺動面46から略V字状の形状で凹んで形成された凹部47が形成されている。この凹部47は、摺動面46上に、回動軸60の軸線方向に沿って形成されている。
【0035】
また、アクセルユニットケース31内における動作部42の摺動面46の近傍には、板ばね32が設けられている。この板ばね32はアクセルユニットケース31内における摺動面46の近傍に取り付けられており、摺動面46の方向に向かって略V字状の形状で凸となって屈曲した形状で形成されている。このように、摺動面46の方向に向かって凸となった形状で形成された板ばね32は、摺動面46に接触する状態でアクセルユニットケース31内に取り付けられている。
【0036】
また、アクセルユニットケース31内には、作動部材40の一部として設けられる動作部42に対して付勢力を付与する付勢手段であるリターンスプリング63が設けられている。このリターンスプリング63は、弾性部材である圧縮ばねにより形成されており、アクセルユニットケース31内におけるアクセルユニットケース31と動作部42との間に配設されると共に、双方に接して設けられている。このようにアクセルユニットケース31と動作部42とに接して設けられるリターンスプリング63は、動作部42に対して、アクセル操作装置30を備える車両1の前後方向における後方から前方に向けた付勢力を付与している。
【0037】
また、アクセルユニットケース31における回動軸60の下方付近には、アクセルペダル接続部41に対向して設けられたストッパー33が配設されている。このストッパー33は、樹脂材料や、ゴムなどの弾性材料など、衝撃を緩衝することができる材料により形成されている。
【0038】
さらに、アクセル操作装置30には、作動部材40の回動範囲を規制することによりアクセルペダル21の操作範囲を規制すると共に、作動部材40の回動範囲、即ちアクセルペダル21の操作範囲を変更可能な操作範囲規制機構50が備えられている。この操作範囲規制機構50は、動作部42の突出部43と当接する操作範囲変更カム51と、操作範囲変更カム51を移動させることができる操作範囲変更アクチュエータ54と、操作範囲変更カム51に付勢力を付与する操作範囲変更カムスプリング56とを備えている。
【0039】
このうち操作範囲変更カム51は、アクセルユニットケース31内に配設されており、アクセルユニットケース31内において動作部42から見た場合にリターンスプリング63が設けられている側の反対側に設けられている。即ち、操作範囲変更カム51は、アクセルユニットケース31内において車両1の前後方向における動作部42の前方に配設されている。このように配設される操作範囲変更カム51は、動作部42に対向している側の面の前後方向における高さが変化して形成されている。
【0040】
詳しくは、操作範囲変更カム51は、動作部42に対向する面のうち、上下方向において下方側に位置する面は、上方側に位置する面よりも前後方向における高さが低くなっており、このように上下方向において下方側に位置すると共に前後方向における高さが低くなった部分は逃げ部53となっている。これに対し、操作範囲変更カム51における作動部材40の動作部42に対向する面のうち、上下方向において上方側に位置し、且つ、前後方向における高さが相対的に高くなった面を有する部分は当接部52となっている。つまり、当接部52と逃げ部53とでは、前後方向における動作部42との距離が、逃げ部53よりも当接部52の方が近くなっている。このように形成される当接部52と逃げ部53との前後方向における高さの差は、作動部材40の動作部42に形成される第1突出部44と第2突出部45との前後方向における高さの差よりも大きくなっている。
【0041】
また、操作範囲変更アクチュエータ54は、アクセルユニットケース31の外部に取り付けられており、アクセルユニットケース31における操作範囲変更カム51の下方付近に配設されている。この操作範囲変更アクチュエータ54には、棒状の形状で形成された連結ロッド55が接続されており、連結ロッド55における操作範囲変更アクチュエータ54側の端部の反対側に位置する端部は、操作範囲変更カム51が接続されている。即ち、操作範囲変更アクチュエータ54と操作範囲変更カム51とは、連結ロッド55により連結されており、換言すると、操作範囲変更アクチュエータ54と操作範囲変更カム51とは、連結ロッド55を介して連結されている。
【0042】
この操作範囲変更アクチュエータ54は、内部にソレノイド(図示省略)が設けられており、電磁力によって連結ロッド55を、当該連結ロッド55が形成されている方向、即ち上下方向に移動可能に設けられている。このため、操作範囲変更アクチュエータ54は、連結ロッド55を移動させることを介して、操作範囲変更カム51を、上下方向に移動可能に設けられている。
【0043】
このように、操作範囲変更カム51を移動させることができる操作範囲変更アクチュエータ54は、当該操作範囲変更アクチュエータ54を制御可能な操作範囲制御装置58に接続されている。この操作範囲制御装置58は、ECU100に接続されており、ECU100からの指令に基づいて操作範囲変更アクチュエータ54を制御する。
【0044】
また、操作範囲変更カムスプリング56は、弾性部材である圧縮ばねにより形成されており、アクセルユニットケース31内におけるアクセルユニットケース31と操作範囲変更カム51との間に配設されると共に、双方に接して設けられている。このようにアクセルユニットケース31と操作範囲変更カム51とに接して設けられる操作範囲変更カムスプリング56は、操作範囲変更カム51に対して、下側方向の付勢力を付与している。
【0045】
図3は、図1に示す車両のメーターパネルの概略図である。また、車両1の運転席には、運転者が車両1の運転中に運転状態を認識するために用いるメーターパネル90が備えられている。このメーターパネル90には、現在の車両1の車速を表示するスピードメーター91や、エンジン10の現在の回転数を表示するタコメーター92等の計器類が設けられており、さらに、操作範囲拡大インジケータ95と基準操作範囲外インジケータ96とが設けられている。このように計器類が設けられるメーターパネル90は、ECU100に接続されている。
【0046】
図4は、図1に示すECUの説明図である。ECU100には、処理部101、記憶部120及び入出力部121が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、ECU100に接続されているエンジン10、自動変速機15、操作範囲制御装置58、アクセルポジションセンサ61、ブレーキストロークセンサ70、ポジションスイッチ76、モードスイッチ77、ブレーキ油圧制御装置81、メーターパネル90は、入出力部121に接続されており、入出力部121は、これらの装置類等との間で信号の入出力を行う。また、記憶部120には、エンジン10等を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部120は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、或いはこれらの組み合わせにより構成することができる。
【0047】
また、処理部101は、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、少なくとも、エンジン10の運転状態を制御可能な動力源制御手段であるエンジン制御部102と、ブレーキ油圧制御装置81を制御することにより、ホイールシリンダ82の作動状態を制御可能な制動力制御手段であるブレーキ制御部103と、自動変速機15の変速制御が可能な変速制御手段である変速制御部104と、を有している。
【0048】
また、処理部101は、アクセルポジションセンサ61での検出結果よりアクセル開度を取得可能なアクセル開度取得手段であるアクセル開度取得部105と、ブレーキストロークセンサ70での検出結果よりブレーキペダル22のストローク量を取得可能な制動操作取得手段であるブレーキストローク量取得部106と、セレクターレバー75で走行レンジを選択することにより切り替えられるポジションスイッチ76からの信号であるシフト信号を取得可能な走行レンジ取得手段であるシフト信号取得部107と、シフト信号取得部107で取得したシフト信号より、選択された走行レンジを判定可能な走行レンジ判定手段である走行レンジ判定部108と、走行モードを切り替え可能なモードスイッチ77からの信号である走行モード信号を取得可能な走行モード信号取得手段である走行モード信号取得部109と、走行モード信号取得部109で取得した走行モード信号より、選択された走行モードを判定可能な走行モード判定手段である走行モード判定部110と、を有している。
【0049】
また、処理部101は、車両1の走行環境に基づいてアクセルペダル21の操作範囲を拡大するか否かの判定を行う操作範囲判定手段である操作範囲判定部111と、操作範囲規制機構50を制御することにより、アクセルペダル21の操作範囲を制御する操作範囲制御手段である操作範囲制御部112と、運転者に各種情報を通知するインジケータを制御するインジケータ制御部113と、アクセル開度取得部105で取得したアクセル開度に基づいて目標となる駆動力及び目標となる減速力を算出する駆動力・減速力導出手段である駆動力・減速力算出部114と、アクセル開度取得部105で取得したアクセル開度より、アクセルペダル21の操作位置は基準操作範囲外であるか否かを判定する基準操作範囲外判定手段である基準操作範囲外判定部115と、を有している。
【0050】
ECU100によって制御される各装置の制御は、例えば、アクセルポジションセンサ61等による検出結果に基づいて、処理部101が上記コンピュータプログラムを当該処理部101に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じてエンジン10等を作動させることにより制御する。その際に処理部101は、適宜記憶部120へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このようにエンジン10を制御する場合には、上記コンピュータプログラムの代わりに、ECU100とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
【0051】
この実施例1に係る操作装置2は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の走行時には、エンジン10を運転させてエンジン10の動力を駆動輪である前輪6に伝達することにより走行する。つまり、車両1の走行中は、エンジン10が有するクランクシャフト(図示省略)の回転が自動変速機15に伝達され、自動変速機15で車両1の走行状態に適した変速比で変速される。自動変速機15で変速された回転は、ドライブシャフト16を介して前輪6に伝達される。これにより、駆動輪である前輪6は回転し、車両1は走行する。
【0052】
また、エンジン10の回転が前輪6に伝達されることにより走行をする車両1の車速は、アクセルペダル21を足で操作し、エンジン10の回転数や出力を調整することにより調整する。アクセルペダル21を操作した場合には、アクセルペダル21のストローク量、即ちアクセル開度が、アクセル操作装置30に設けられるアクセルポジションセンサ61によって検出される。アクセルポジションセンサ61による検出結果は、ECU100の処理部101が有するアクセル開度取得部105に伝達されてアクセル開度取得部105で取得し、さらに、取得したアクセル開度が、ECU100の処理部101が有するエンジン制御部102に伝達される。エンジン制御部102は、アクセル開度取得部105で取得したアクセルポジションセンサ61やその他のセンサによる検出結果に基づいて、エンジン10を制御する。
【0053】
また、車両1の走行中に減速する場合には、ブレーキペダル22を踏むことによって制動する。このように、ブレーキペダル22を踏んで操作する場合には、ブレーキペダル22のストローク量が、ブレーキペダル22の近傍に設けられるブレーキストロークセンサ70によって検出される。ブレーキストロークセンサ70による検出結果は、ECU100の処理部101が有するブレーキストローク量取得部106で取得する。
【0054】
ブレーキストローク量取得部106で取得したブレーキペダル22のストローク量は、ECU100の処理部101が有するブレーキ制御部103に伝達され、ブレーキ制御部103は、ブレーキストローク量取得部106から伝達されたストローク量に応じた制御信号をブレーキ油圧制御装置81に対して送信する。これにより、ブレーキ制御部103は、ブレーキストローク量取得部106で取得したブレーキペダル22のストローク量に応じた油圧を、ブレーキ油圧制御装置81で発生させる。
【0055】
ブレーキ油圧制御装置81で発生させた油圧は、ブレーキ油圧制御装置81とホイールシリンダ82との間に設けられる油圧経路85を介してホイールシリンダ82に伝達され、ホイールシリンダ82はこの油圧によって作動する。ホイールシリンダ82が作動した場合には、ホイールシリンダ82は、当該ホイールシリンダ82と組みになって設けられ、且つ、車輪5の回転時に一体となって回転するブレーキディスク83の回転速度を低下させる。これにより、車輪5の回転速度も低下し、車両1の速度が低下する。従って、足でブレーキペダル22を操作することにより、ホイールシリンダ82にはブレーキディスク83の回転速度を低下させる力であるブレーキ力が発生し、ブレーキディスク83の回転速度の低下を介して車輪5の回転速度を低下させ、走行中の車両1を制動することができる。
【0056】
また、車両1の走行中における自動変速機15の走行レンジの選択は、セレクターレバー75を操作することにより行う。セレクターレバー75を操作した場合には、セレクターレバー75で走行レンジを選択することにより切り替えられるポジションスイッチ76からの信号であるシフト信号が、ECU100に伝達される。このシフト信号は、ECU100の処理部101が有するシフト信号取得部107で、選択された走行レンジの状態として取得する。
【0057】
シフト信号取得部107で取得したシフト信号は、ECU100の処理部101が有する走行レンジ判定部108に伝達される。走行レンジ判定部108では、シフト信号取得部107から伝達されたシフト信号より、セレクターレバー75によって選択されている走行レンジを判定する。走行レンジ判定部108で走行レンジを判定した場合には、この走行レンジに応じてECU100の処理部101が有する変速制御部104で、車両1の運転時における運転状態に基づいて自動変速機15の変速制御を行う。
【0058】
また、車両1の走行中における走行モードの選択は、モードスイッチ77を操作することにより行う。このモードスイッチ77は、現在のモードスイッチ77の状態が、選択された走行モードとしてECU100の処理部101が有する走行モード信号取得部109に伝達可能に設けられている。このため、モードスイッチ77を操作した場合、モードスイッチ77を操作することにより切り替え可能な走行モードの信号である走行モード信号が、走行モード信号取得部109に伝達され、走行モード信号取得部109で取得する。
【0059】
走行モード信号取得部109で取得した走行モード信号は、ECU100の処理部101が有する走行モード判定部110に伝達される。走行モード判定部110では、走行モード信号取得部109から伝達された走行モード信号より、モードスイッチ77によって選択されている走行モードを判定する。走行モード判定部110で走行モードを判定した場合には、この走行モードに応じてECU100の処理部101が有するエンジン制御部102で、アクセル開度に対するエンジン10の出力を調節し、変速制御部104での自動変速機15の変速制御を調節する。
【0060】
次に、アクセルペダル21の操作時におけるアクセル操作装置30の動作について説明する。アクセルペダル21を操作せず、解放した状態の場合、作動部材40は、動作部42に付与されるリターンスプリング63の付勢力により、動作部42が操作範囲変更カム51に近付く方向に回動した状態になる。ここで、車両1の走行環境が通常の走行環境の場合、つまり、セレクターレバー75で選択する自動変速機15のシフトレンジが、例えば1速以外の場合や、モードスイッチ77で切り替える走行モードがスノーモード以外の場合には、操作範囲変更カム51を備える操作範囲規制機構50は、アクセルペダル21の操作範囲を拡大しない状態に作動する。
【0061】
また、このようにアクセルペダル21の操作範囲を拡大するか否かの判定は、ECU100の処理部101が有する操作範囲判定部111により行う。操作範囲判定部111は、シフト信号取得部107で取得したシフト信号や、走行モード信号取得部109で取得した走行モード等により、現在の走行環境はアクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境であるか否かを判定する。ECU100の処理部101が有する操作範囲制御部112は、操作範囲判定部111での判定に基づいて操作範囲規制機構50に対して制御信号を送信し、操作範囲規制機構50を作動させる。
【0062】
操作範囲判定部111での判定により、車両1の走行環境はアクセルペダル21の操作範囲を拡大しない走行環境、即ち、車両1の走行環境は、通常の操作範囲の走行環境であると判定した場合、操作範囲制御部112は、操作範囲規制機構50の操作範囲変更カム51を、下方に位置した状態にする。具体的には、操作範囲制御部112から操作範囲制御装置58に対して、操作範囲変更アクチュエータ54を作動させる制御信号を送信し、操作範囲制御装置58によって操作範囲変更アクチュエータ54を作動させる。この場合、操作範囲変更アクチュエータ54は、連結ロッド55を引き込む方向に作動する。これにより、連結ロッド55に接続された操作範囲変更カム51は、下方に移動する。このように、アクセルペダル21の操作範囲を通常の操作範囲にする場合には、操作範囲変更カム51の移動範囲において、操作範囲変更カム51を下方に位置させた状態にする。
【0063】
操作範囲変更カム51の移動範囲において操作範囲変更カム51が下方に位置した場合、操作範囲変更カム51が有する当接部52も操作範囲変更カム51の移動範囲における下方に位置することになる。また、アクセルペダル21を解放した状態の場合、作動部材40は動作部42に付与されるリターンスプリング63の付勢力により、動作部42が操作範囲変更カム51に近付く方向に回動した状態になる。
【0064】
このように、作動部材40が回動することにより、動作部42は操作範囲変更カム51に近付くが、動作部42には車両1の前後方向における前方側、即ち、操作範囲変更カム51が位置している側に第1突出部44と第2突出部45とが設けられている。これらの第1突出部44と第2突出部45とでは、第2突出部45よりも第1突出部44の方が前後方向における高さが高くなっており、第2突出部45の前方側の端部よりも第1突出部44の前方側の端部の方が、前方に位置している。つまり、第2突出部45と操作範囲変更カム51との距離よりも、第1突出部44と操作範囲変更カム51との距離の方が近くなっている。
【0065】
これらのように、操作範囲変更カム51との距離が近くなっている第1突出部44は、第2突出部45よりも回動軸60に近い位置に設けられ、第2突出部45よりも下方に配設されているが、操作範囲変更カム51の移動範囲において操作範囲変更カム51が下方に位置した場合には、当接部52も操作範囲変更カム51の移動範囲における下方に位置する状態になる。このため、リターンスプリング63の付勢力により、動作部42が操作範囲変更カム51に近付く方向に作動部材40が回動した場合には、第1突出部44が操作範囲変更カム51の当接部52に当接する。これにより、作動部材40は、リターンスプリング63が付勢力を付与することによって回動する方向には回動をしなくなる。
【0066】
このように、操作範囲変更カム51を下方に位置させた状態で、アクセルペダル21を解放状態にした際に、作動部材40の第1突出部44が操作範囲変更カム51の当接部52に当接した場合には、この状態におけるアクセルペダル21のストロークは0になる。また、アクセルペダル21の操作範囲における操作位置のうち、このように操作範囲変更カム51を下方に位置させた状態で作動部材40の第1突出部44が操作範囲変更カム51の当接部52に当接した場合における操作位置は、エンジン10をアイドル状態に制御する際の操作位置であるアイドル位置となっている。このため、作動部材40の回動角度、即ちアクセルペダル21の操作位置が、このアイドル位置であることをアクセルポジションセンサ61で検出し、ECU100の処理部101が有するアクセル開度取得部105で取得した場合には、エンジン制御部102は、アクセルペダル21の操作位置がアイドル位置であることに応じた制御をする。具体的には、車両1の停止時には、エンジン10をアイドル運転させ、車両1の走行時には、エンジン10に設けられるスロットルバルブ(図示省略)の開度をアイドリング時と同じ開度にすることにより、エンジン10から駆動輪に対して減速方向の駆動力を作用させる。
【0067】
また、運転者がアクセルペダル21を操作する場合には、アクセルペダル21に対して踏力を付与することにより操作するが、アクセルペダル21に対して付与する踏力の方向は、車両1の前後方向における略後方から前方に向けた方向になる。このように踏力を付与するアクセルペダル21は、作動部材40のアクセルペダル接続部41に接続されているが、作動部材40は、回動軸60を中心に回動可能に設けられており、また、作動部材40には、リターンスプリング63により、動作部42が略後方から前方に向かう方向の付勢力が付与されている。このリターンスプリング63の付勢力は、回動軸60を中心として略回転対称の位置関係となっているアクセルペダル接続部41に対しては、略前方から後方に向かう方向の付勢力となっているため、運転者がアクセルペダル21に対して付与する踏力が、リターンスプリング63の付勢力に打ち勝った場合には、作動部材40は、アクセルペダル接続部41が略後方から前方に向かう方向に回動する。これにより、アクセルペダル21はストロークが大きくなる。
【0068】
この方向に作動部材40が回動し、アクセルペダル21のストロークが大きくなった場合、動作部42は、リターンスプリング63を縮めながら略前方から後方に移動する。これにより、第1突出部44は、操作範囲変更カム51の当接部52から離れる。また、このように作動部材40が回動をする場合には、アクセルユニットケース31に設けられる板ばね32が摺動面46に摺動しながら回動する。
【0069】
このように、アクセルペダル21を操作することにより作動部材40が回動した場合、アクセルポジションセンサ61は、作動部材40の回動角度をアクセルペダル21の操作位置として検出し、ECU100の処理部101が有するアクセル開度取得部105に伝達する。アクセルペダル21の操作位置が伝達されたアクセル開度取得部105は、伝達された操作位置をアクセル開度として取得する。エンジン制御部102は、アクセル開度取得部105で取得したアクセル開度に応じてスロットルバルブの開度や燃料インジェクタ(図示省略)からの燃料噴射量を制御することにより、エンジン10の回転数やトルクが、アクセル開度に応じた回転数やトルクになるように制御する。これにより、エンジン10から駆動輪に対して、アクセル開度に応じた駆動力を作用させる。
【0070】
このように、アクセルペダル21に踏力を付与することによりアクセル操作を行う場合において、アクセルペダル21に対して作動部材40が回動し続ける方向の踏力を付与し続けた場合、作動部材40のアクセルペダル接続部41は、アクセルユニットケース31に設けられたストッパー33に当接する。これにより、作動部材40は回動が停止し、アクセルペダル21は、それ以上踏み込むことができなくなる。つまり、アクセルペダル21のストロークが最大になる。
【0071】
アクセル開度取得部105は、この場合にアクセルポジションセンサ61で検出したアクセルペダル21の操作位置をアクセル開度として取得し、エンジン制御部102は、アクセル開度取得部105で取得したアクセル開度に応じてスロットルバルブの開度や燃料インジェクタからの燃料噴射量を制御するが、アクセルペダル接続部41がストッパー33に当接した場合におけるアクセル開度は、アクセル開度が全開の状態のアクセル開度となっている。このため、エンジン制御部102は、スロットルバルブの開度や燃料噴射量を、アクセル開度が全開の場合におけるスロットルバルブの開度や燃料噴射量にする。
【0072】
エンジン10の出力は、このようにアクセルペダル21を操作し、ストロークを変化させることにより制御するが、アクセルペダル21の操作範囲を拡大しない状態の操作範囲は、基準となる操作範囲である基準操作範囲になっている。つまり、基準操作範囲は、操作範囲変更カム51が下方に位置している場合における作動部材40の回動範囲となっており、アイドル位置は、この基準操作範囲の一端に位置する操作位置になっている。
【0073】
アクセル操作装置30が備えるこれらのアクセルペダル21、作動部材40、リターンスプリング63、操作範囲変更カム51、回動軸60、アクセルポジションセンサ61、ストッパー33は、このように操作範囲内で操作可能に設けられると共に、操作位置に応じて車両1の走行制御を可能な操作機構35を構成している。
【0074】
図5は、アクセルペダルの操作範囲を拡大した場合における説明図である。車両1の走行環境が通常の走行環境の場合には、上述したように操作範囲規制機構50を作動させ、操作範囲変更カム51を当該操作範囲変更カム51の移動範囲における下方に位置させることにより、アクセルペダル21の操作範囲を基準操作範囲にする。これに対し、車両1の走行環境が通常の走行環境以外の所定の走行環境である場合には、操作範囲規制機構50を作動させることにより、アクセルペダル21の操作範囲が拡大した状態にする。例えば、セレクターレバー75で選択する自動変速機15のシフトレンジが1速である場合や、モードスイッチ77で切り替える走行モードがスノーモードの場合には、操作範囲変更カム51を備える操作範囲規制機構50は、アクセルペダル21の操作範囲が拡大した状態に作動する。
【0075】
つまり、ECU100の処理部101が有する操作範囲判定部111による判定で、現在の走行環境はアクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境であると判定した場合には、ECU100の処理部101が有する操作範囲制御部112は操作範囲規制機構50に対して制御信号を送信し、アクセルペダル21の操作範囲を拡大するように操作範囲規制機構50を作動させる。アクセルペダル21の操作範囲を拡大する場合には、操作範囲制御部112は、操作範囲規制機構50の操作範囲変更カム51を、操作範囲変更カム51の移動範囲における上方に位置した状態にさせる。
【0076】
具体的には、操作範囲制御部112から操作範囲制御装置58に対して、操作範囲変更アクチュエータ54を作動させる制御信号を送信し、操作範囲制御装置58によって操作範囲変更アクチュエータ54を作動させる。この場合、操作範囲変更アクチュエータ54が連結ロッド55を押し出す方向、即ち、連結ロッド55を上方に伸ばす方向に、操作範囲変更アクチュエータ54を作動させる。これにより、連結ロッド55に接続された操作範囲変更カム51は、上方に移動する。このように、アクセルペダル21の操作範囲を拡大する場合には、操作範囲変更カム51の移動範囲において、操作範囲変更カム51を上方に位置させた状態にする。
【0077】
操作範囲変更カム51の移動範囲において操作範囲変更カム51が上方に位置した場合、操作範囲変更カム51が有する当接部52及び逃げ部53も操作範囲変更カム51の移動範囲における上方に位置することになる。また、アクセルペダル21を解放した状態の場合、作動部材40は動作部42に付与されるリターンスプリング63の付勢力により、動作部42が操作範囲変更カム51に近付く方向に回動した状態になる。
【0078】
このように、作動部材40が回動することにより、動作部42は操作範囲変更カム51に近付くが、動作部42には、操作範囲変更カム51が位置している側に第1突出部44と第2突出部45とが設けられており、第1突出部44は第2突出部45よりも下方に位置している。このため、動作部42が操作範囲変更カム51に近付く方向に作動部材40が回動した場合には、第1突出部44は逃げ部53付近に位置する状態になり、第1突出部44よりも上方に位置している第2突出部45と、操作範囲変更カム51において逃げ部53よりも上方に位置している当接部52とが当接する。これにより、作動部材40は、リターンスプリング63が付勢力を付与することによって回動する方向には回動をしなくなる。
【0079】
ここで、第1突出部44と第2突出部45とでは、第2突出部45よりも第1突出部44の方が、前後方向における高さが高くなっている。このため、第1突出部44と操作範囲変更カム51の当接部52とが当接した状態(図2参照)と、第2突出部45と操作範囲変更カム51の当接部52とが当接した状態(図5参照)とを比較すると、第1突出部44と当接部52とが当接した状態よりも第2突出部45と当接部52とが当接した状態の方が、より動作部42全体が操作範囲変更カム51に近付いた状態になる。
【0080】
つまり、第1突出部44と当接部52とが当接した状態よりも第2突出部45と当接部52とが当接した状態の方が、動作部42が操作範囲変更カム51の方向、即ち前方に傾斜する方向に、回動軸60を中心として作動部材40が回動した状態になる。このため、作動部材40において回動軸60を中心として動作部42と略回転対称の位置関係となっているアクセルペダル接続部41は、作動部材40の回動により、第1突出部44と当接部52とが当接した状態よりも第2突出部45と当接部52とが当接した状態の方が、後方に位置する状態、或いは、後方で且つ上方に位置する状態になる。
【0081】
このため、操作範囲変更カム51の移動範囲において操作範囲変更カム51を上方に位置させた状態でアクセルペダル21を解放した場合には、操作範囲変更カム51を下方に位置させた状態でアクセルペダル21を解放した場合と比較して、アクセルペダル21の操作位置は、基準操作範囲に対してアイドル位置側で、アイドル位置を越えた操作位置になる。アクセルペダル21の操作範囲において、アイドル位置から、操作範囲変更カム51を上方に位置させた状態で動作部42の第2突出部45が操作範囲変更カム51の当接部52に当接した状態の操作位置までの操作範囲は、操作範囲を基準操作範囲に対して拡大する拡大操作範囲となっている。このように、アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲となる場合におけるアクセルペダル21のストロークは、0の位置よりも通常のストローク方向の反対方向のストロークである逆ストロークの状態になる。
【0082】
また、アクセルペダル21に踏力を付与し、大きく踏み込んだ際における作動部材40は、操作範囲変更カム51を上方に位置させた状態においても、操作範囲変更カム51を下方に位置させた状態と同様に、アクセルペダル接続部41が、アクセルユニットケース31に設けられたストッパー33に当接することにより回動が停止する。このため、アクセルペダル21のストロークを大きくする方向、即ちアクセル開度を大きくする方向におけるアクセルペダル21の操作位置は、操作範囲規制機構50の状態を変化させた場合でも変化しない。従って、操作範囲規制機構50は、アクセルペダル21の操作範囲を拡大する状態に作動する場合には、基準操作範囲に対してアイドル位置を超えた位置に追加する操作範囲である拡大操作範囲を追加することにより、アイドル位置を超えて操作範囲を拡大する。これにより、操作範囲規制機構50は操作範囲を基準操作範囲から変更する。このように、操作範囲規制機構50は、車両1の走行環境に応じて操作範囲を基準操作範囲から変更可能な操作範囲規制手段として設けられている。
【0083】
アクセルペダル21の操作範囲が拡大し、操作位置が拡大操作範囲に位置している場合でも、操作位置が基準操作範囲に位置している場合と同様に、操作位置をアクセルポジションセンサ61で検出し、検出結果をECU100の処理部101が有するアクセル開度取得部105で取得する。ここで、操作範囲判定部111で、アクセルペダル21の操作範囲を拡大すると判定し、アクセル開度取得部105で取得した操作位置が拡大操作範囲に位置している場合、つまり逆ストローク中である場合には、アイドル位置における車両1の走行制御と比較して低速側に制御する。
【0084】
例えば、車両1が所定の速度以上で走行している場合には、ブレーキ制御部103によってブレーキ油圧制御装置81を制御することにより、ブレーキユニット80による制動力を発生させる。この場合、制動力は、操作位置が拡大操作範囲におけるアイドル位置側の端部の反対側に位置する端部に向かうに従って、即ち、逆ストロークが大きくなるに従って、制動力が大きくなるように制御する。このように、車両1の走行中にアクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に位置した場合に制動力を発生させることにより、操作位置がアイドル位置の場合における減速力よりも大きくなるため、車両1の走行制御は、操作位置がアイドル位置の場合における車両1の走行制御よりも低速側の制御になる。
【0085】
また、車両1が、エンジン10のアイドル運転時に自動変速機15のトルクコンバータ(図示省略)によってエンジン10のトルクが駆動輪側に伝達され、極低速で走行をする現象であるクリープ走行をする場合には、ブレーキ制御部103によってブレーキ油圧制御装置81を制御し、制動力を発生させる。これにより、クリープ走行時の車速を、操作位置がアイドル位置の場合における車速よりも遅くする。このように、クリープ走行時にアクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に位置した場合に制動力を発生させることにより、操作位置がアイドル位置の場合におけるクリープ走行時の車速よりも遅くなるため、車両1の走行制御は、操作位置がアイドル位置の場合における車両1の走行制御よりも低速側の制御になる。
【0086】
また、アクセルペダル21の操作時には、作動部材40の摺動面46とアクセルユニットケース31に設けられた板ばね32とが摺動しながら作動部材40は回動するが、アクセルペダル21の操作範囲が拡大した状態でアクセルペダル21を操作し、操作位置が拡大操作範囲内で変化する場合には、摺動面46に形成された凹部47が、板ばね32が配設されている部分を通過する場合がある。
【0087】
これらの凹部47と板ばね32とは、凹部47は略V字状の形状で凹んで形成されており、板ばね32は略V字状の形状で摺動面46の方向に向かって凸となって屈曲した形状で形成されているので、凹部47が板ばね32を通過する際には、通過時に凹部47内に板ばね32の屈曲部分が一時的に入り込み、すぐに抜け出る。
【0088】
この場合、凹部47内に板ばね32が入り、抜け出る時に作動部材40に対して作用する力が、振動として作動部材40からアクセルペダル21に伝達され、アクセルペダル21から運転者に伝達される。即ち、凹部47が板ばね32を通過する際には、いわゆるクリック感がアクセルペダル21から運転者に伝達される。これにより、アクセルペダル21の操作位置は、拡大操作範囲に位置していることが運転者に伝達される。このように、作動部材40の摺動面46に形成された凹部47とアクセルユニットケース31に設けられた板ばね32とは、アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に位置していることを車両1の運転者に伝達する拡大操作範囲伝達手段として設けられている。
【0089】
なお、摺動面46の凹部47と板ばね32とを配設する位置は、アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲において出来るだけアイドル位置寄りの部分に位置した際に、凹部47に板ばね32が入り込む位置関係となっているのが望ましい。つまり、基準操作範囲に位置している操作位置がアイドル位置の方向に移動し、拡大操作範囲に入った直後に凹部47が板ばね32を通過する位置関係となっているのが望ましい。このような位置関係にすることにより、アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に入った直後に、クリック感が運転者に伝達され、運転者は操作位置が拡大操作範囲に入ったことを認識できる。
【0090】
また、操作範囲判定部111が、アクセルペダル21の操作範囲を拡大する判定をした場合、ECU100の処理部101が有するインジケータ制御部113は、メーターパネル90に設けられている操作範囲拡大インジケータ95を点灯させる。アクセルペダル21の操作範囲を拡大する際に、このように操作範囲拡大インジケータ95を点灯させることにより、操作範囲を基準操作範囲から変更し、操作範囲を拡大する状態であることを運転者に対して通知することができる。つまり、操作範囲拡大インジケータ95は、操作範囲規制機構50が操作範囲を基準操作範囲から変更する状態の場合に、操作範囲は基準操作範囲から変更する状態であることを車両1の運転者に通知する操作範囲変更通知手段として設けられている。
【0091】
また、操作範囲判定部111がアクセルペダル21の操作範囲を拡大する判定をすることによりアクセルペダル21の操作範囲が拡大操作範囲に位置した状態で、操作範囲判定部111が再び操作範囲の判定をし、アクセルペダル21の操作範囲を拡大しない判定をした場合には、ECU100の処理部101が有するインジケータ制御部113は、メーターパネル90に設けられている基準操作範囲外インジケータ96を点灯させる。
【0092】
アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に位置した状態で、アクセルペダル21の操作範囲を基準操作範囲にする際に、このように基準操作範囲外インジケータ96を点灯させることにより、現在のアクセルペダル21の操作範囲は基準操作範囲となっている状態であるにも関わらずアクセルペダル21の操作位置は拡大操作範囲に位置しており、操作位置が基準操作範囲外に位置していることを運転者に対して通知することができる。つまり、基準操作範囲外インジケータ96は、操作範囲規制機構50が操作範囲を基準操作範囲から変更しない状態で操作位置が基準操作範囲外にある場合に、操作位置が基準操作範囲外にあることを車両1の運転者に通知する操作位置操作範囲外通知手段として設けられている。
【0093】
図6は、アクセルペダルのストロークに対する駆動力及び減速力の関係を示す説明図である。車両1の走行中にアクセルペダル21のストロークを調節した場合、ストロークが大きくなるに従って駆動力は大きくなり、ストロークが小さくなるに従って駆動力は小さくなる。また、アクセルペダル21のストロークが、現在の車速を維持するために必要な駆動力を発生させるストロークよりも小さくなった場合、車両1にはエンジンブレーキが作用し、エンジンブレーキによる減速力が作用する。
【0094】
エンジンブレーキによる減速力は、アクセルペダル21のストロークが0の場合が最大になるが、車両1の走行環境が、アクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境の場合には、アクセルペダル21はストロークが0の状態から、さらに戻る方向、即ち、逆ストロークが可能になる。この場合、ブレーキ油圧制御装置81を作動させることにより制動力が発生するため、減速力は、アクセルペダル21のストロークが0の場合における減速力よりも大きくなる。また、このようにアクセルペダル21のストロークに応じて変化する駆動力及び減速力は、図6に示すように、逆ストロークの範囲も含めて、アクセルペダル21のストロークに応じて駆動力及び減速力が、略比例の関係になって変化する。即ち、アクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境の場合における駆動力及び減速力は、逆ストロークも含めたアクセルペダル21のストロークに応じて直線的に変化し、アクセルペダル21のストロークと、駆動力及び減速力との一貫性が維持される。
【0095】
図7は、実施例1に係る操作装置の処理手順を示すフロー図である。次に、実施例1に係る操作装置2の制御方法、即ち、当該操作装置2の処理手順について説明する。実施例1に係る操作装置2の処理手順では、まず、車両1の走行環境は、アクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境であるか否かを判定する(ステップST101)。この判定は、ECU100の処理部101が有する操作範囲判定部111で行う。操作範囲判定部111で、アクセルペダル21の操作範囲を拡大するか否かの判定をする場合には、ECU100の処理部101が有する走行レンジ判定部108で判定する自動変速機15のシフトレンジや、走行モード判定部110で判定する走行モード等より、現在の車両1の走行環境はアクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境であるか否かを判定する。即ち、走行レンジ判定部108で、選択されたシフトレンジは1速であると判定している場合や、走行モード判定部110で、選択された走行モードはスノーモードであると判定している場合は、操作範囲判定部111は、現在の車両1の走行環境は通常の走行環境ではなく、アクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境であると判定する。
【0096】
操作範囲判定部111での判定(ステップST101)により、車両1の走行環境はアクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境であると判定した場合には、次に、操作範囲拡大インジケータ95を点灯する(ステップST102)。この点灯は、ECU100の処理部101が有するインジケータ制御部113で、メーターパネル90に設けられる操作範囲拡大インジケータ95を制御することにより、点灯させる。
【0097】
次に、操作範囲拡大制御を行う(ステップST103)。この制御は、ECU100の処理部101が有する操作範囲制御部112で行う。操作範囲制御部112は、操作範囲規制機構50を制御することにより、操作範囲の拡大制御を行う。具体的には、操作範囲制御部112から、操作範囲規制機構50が有する操作範囲制御装置58に対して制御信号を送信し、操作範囲制御装置58によって操作範囲変更アクチュエータ54を作動させ、連結ロッド55を介して操作範囲変更アクチュエータ54に接続された操作範囲変更カム51を、当該操作範囲変更カム51の移動範囲における上方に移動させる。これにより、アクセルペダル21の操作範囲は、基準操作範囲に拡大操作範囲が追加され、操作範囲が拡大する。
【0098】
次に、目標駆動力と目標減速力とを算出する(ステップST104)。この算出は、ECU100の処理部101が有する駆動力・減速力算出部114で行う。アクセルペダル21を操作した場合には、アクセルポジションセンサ61でアクセル開度を検出し、検出したアクセル開度をECU100の処理部101が有するアクセル開度取得部105で取得する。駆動力・減速力算出部114は、アクセル開度取得部105で取得したアクセル開度に応じて、目標となる駆動力や目標となる制動力を算出する。具体的には、図6に示すようなアクセルペダル21のストロークと駆動力及び減速力との関係を示すマップが予め作成され、予めECU100の記憶部120に記憶されている。駆動力・減速力算出部114は、アクセル開度取得部105で取得したアクセル開度を用いてこのマップを参照することにより、目標駆動力と目標減速力とを算出する。
【0099】
次に、駆動力と減速力と実現する手段を制御する(ステップST105)。この制御は、目標駆動力と目標減速力を算出したエンジン制御部102とブレーキ制御部103で行う。このうち、エンジン制御部102は、駆動力を実現する手段としてエンジン10を制御し、駆動力・減速力算出部114で算出した目標駆動力や目標減速力をエンジン10に発生させる。また、ブレーキ制御部103は、減速力を実現する手段としてブレーキユニット80を制御し、駆動力・減速力算出部114で算出した目標減速力を発生させる。
【0100】
具体的には、駆動力・減速力算出部114で算出した目標駆動力が正となっている場合には、ブレーキ制御部103はブレーキユニット80に対して制動力を発生させずに、エンジン制御部102でエンジン10を制御することにより、目標駆動力に応じた出力をエンジン10に発生させる。また、駆動力・減速力算出部114で算出した目標駆動力が負になっている場合、つまり目標減速力が正になっている場合には、目標減速力の大きさに応じて、或いはアクセルペダル21のストロークに応じて、エンジン10の制御とブレーキユニット80の制御とを使い分ける。
【0101】
例えば、目標減速力が、エンジンブレーキによる減速力で補える範囲の場合、或いは、アクセルペダル21のストロークが0よりも大きく、アクセルペダル21の操作範囲が基準操作範囲内に位置している場合には、ブレーキ制御部103はブレーキユニット80に対して制動力を発生させずに、エンジン制御部102でエンジン10を制御し、目標減速力に応じたエンジンブレーキをエンジン10に発生させる。これに対し、目標減速力が、エンジンブレーキによる減速力で補える範囲を超えている場合、或いは、アクセルペダル21のストロークが逆ストロークになっており、アクセルペダル21の操作範囲が拡大操作範囲内に位置している場合には、エンジン制御部102は、エンジン10を制御してエンジンブレーキを最大の状態にし、ブレーキ制御部103は、ブレーキユニット80を制御することにより、エンジンブレーキと合わせて目標減速力を得ることのできる制動力をブレーキユニット80に発生させる。このように、アクセルペダル21のストロークに応じた駆動力や減速力の制御を行った後は、この処理手順から抜け出る。
【0102】
これらに対し、操作範囲判定部111での判定(ステップST101)により、車両1の走行環境はアクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境ではないと判定した場合には、次に、操作範囲拡大インジケータ95を消灯する(ステップST106)。この消灯は、ECU100の処理部101が有するインジケータ制御部113で、メーターパネル90に設けられる操作範囲拡大インジケータ95を制御することにより、消灯させる。
【0103】
次に、アクセルペダル21の操作位置は基準操作範囲外であるか否かを判定する(ステップST107)。この判定は、ECU100の処理部101が有する基準操作範囲外判定部115で行う。基準操作範囲外判定部115は、アクセル開度取得部105で取得したアクセル開度より、アクセルペダル21の操作位置が基準操作範囲外であるか否かを判定する。即ち、基準操作範囲外判定部115は、車両1の走行環境はアクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境ではない場合に、アクセルペダル21の操作位置が基準操作範囲外に位置しているか否かを判定する。
【0104】
基準操作範囲外判定部115での判定(ステップST107)により、アクセルペダル21の操作位置は基準操作範囲外であると判定した場合には、次に、基準操作範囲外インジケータ96を点灯する(ステップST108)。この点灯は、ECU100の処理部101が有するインジケータ制御部113で、メーターパネル90に設けられる基準操作範囲外インジケータ96を制御することにより、点灯させる。
【0105】
これに対し、基準操作範囲外判定部115での判定(ステップST107)により、アクセルペダル21の操作位置は基準操作範囲外ではないと判定した場合には、次に、基準操作範囲外インジケータ96を消灯する(ステップST109)。この消灯は、インジケータ制御部113で、メーターパネル90に設けられる基準操作範囲外インジケータ96を制御することにより、消灯させる。
【0106】
インジケータ制御部113で基準操作範囲外インジケータ96を制御することにより、基準操作範囲外インジケータ96を点灯(ステップST108)または消灯(ステップST109)した後は、次に、基準操作範囲制御を行う(ステップST110)。この制御は、ECU100の処理部101が有する操作範囲制御部112で行う。操作範囲制御部112は、操作範囲規制機構50を制御することにより、操作範囲を基準操作範囲にする制御を行う。具体的には、操作範囲制御部112から、操作範囲規制機構50が有する操作範囲制御装置58に対して制御信号を送信し、操作範囲制御装置58によって操作範囲変更アクチュエータ54を作動させ、連結ロッド55を介して操作範囲変更アクチュエータ54に接続された操作範囲変更カム51を、当該操作範囲変更カム51の移動範囲における下方に移動させる。これにより、アクセルペダル21の操作範囲は基準操作範囲になる。
【0107】
操作範囲制御部112によって、アクセルペダル21の操作範囲を基準操作範囲にする制御を行った後は、操作範囲の拡大制御を行った場合(ステップST103)と同様に、ECU100の処理部101が有する駆動力・減速力算出部114で、アクセル開度取得部105で取得したアクセル開度とECU100の記憶部120に記憶されたマップとを用いて、目標駆動力と目標減速力とを算出する(ステップST104)。
【0108】
目標駆動力と目標減速力とを算出した後は、駆動力と減速力と実現する手段を制御する(ステップST105)が、アクセルペダル21の操作範囲を基準操作範囲にした場合は、この制御は、エンジン制御部102のみで行う。つまり、エンジン制御部102でエンジン10を制御することにより、エンジン10に対して目標駆動力に応じた出力を発生させ、目標減速力に応じたエンジンブレーキを発生させる。このように駆動力や減速力の制御を行った後は、この処理手順から抜け出る。
【0109】
以上の操作装置2は、作動部材40等の操作機構35の操作範囲を、操作範囲規制機構50によって車両1の走行環境に応じて基準操作範囲から変更可能に設けている。これにより、エンジン10の制御やブレーキユニット80の制御など車両1の走行制御を行う場合の制御の大きさである制御量を、現在の走行状態における基準操作範囲で制御することができる制御量の範囲外の制御量にして走行制御を行う場合に、走行環境に応じて操作機構35の操作範囲を基準操作範囲から変更することにより、アクセルペダル21の操作位置が基準操作範囲内の場合に制御することができる制御量の範囲外の制御量で走行制御を行うことができる。つまり、アクセルペダル21の操作位置を基準操作範囲外にした場合、基準操作範囲で制御することができる制御量の範囲外の制御量で走行制御を行うことができ、操作機構35の操作量と走行制御の制御量との関係の一貫性を維持しつつ、運転者が要求する車両1の走行状態を得ることができる。この結果、運転者が要求する車両1の走行状態を、違和感無く得ることができる。
【0110】
また、操作範囲を基準操作範囲から変更する場合に、拡大操作範囲を追加してアイドル位置を越えて操作範囲を拡大することにより、アクセルペダル21の操作位置を拡大操作範囲に位置させた場合に、アイドル位置における制御量以外の制御量で走行制御をすることができる。この結果、より確実に運転者が要求する車両1の走行状態を、違和感無く得ることができる。
【0111】
また、操作範囲を基準操作範囲から変更する手段として、アクセルペダル21が接続される作動部材40に高さが異なる2つの突出部43を設け、突出部43が当接する操作範囲変更カム51に、突出部43と当接する当接部52と、突出部43と当接しないように設けられた逃げ部53とを形成する。これにより、操作範囲を基準操作範囲にする場合と拡大させる場合とで操作範囲変更カム51の当接部52に当接する突出部43が変化するように操作範囲変更カム51を移動させることにより、より確実に作動部材40の回動範囲を変化させることができ、操作範囲を変更することができる。この結果、より確実に運転者が要求する車両1の走行状態を、違和感無く得ることができる。
【0112】
また、アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に位置している場合には、アイドル位置における車両1の走行制御と比較して低速側に制御しているので、操作機構35の操作量と走行制御の制御量との関係の一貫性を維持することができる。つまり、基準操作範囲におけるアイドル位置とは、車両1の走行時には車両1の走行制御を、減速するなど低速側に制御する操作位置であるが、拡大操作範囲は、基準操作範囲に対して、このアイドル位置を越えた位置に追加される操作範囲となっている。このため、アクセルペダル21の操作位置を、この拡大操作範囲に位置させた場合にはアイドル位置における車両1の走行制御と比較して低速側に制御することにより、操作機構35の操作量と走行制御の制御量との関係の一貫性を、より確実に維持することができる。この結果、運転者が要求する車両1の走行状態を、より確実に違和感無く得ることができる。
【0113】
また、操作機構35の操作位置、即ち、アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に位置していることを運転者に伝達する拡大操作範囲伝達手段として、作動部材40の摺動面46に形成された凹部47と、アクセルユニットケース31に設けられた板ばね32とを備えているので、操作機構35の操作位置が拡大操作範囲に位置していることを運転者に認識させることができる。この結果、操作範囲が基準操作範囲から変更したことを運転者に認識させることができ、車両1を走行させる際の安全性の向上を図ることができる。
【0114】
また、操作範囲は基準操作範囲から変更する状態であることを運転者に通知する操作範囲拡大インジケータ95を備えているので、現在は操作範囲が変更された状態であることを運転者に認識させることができる。この結果、操作機構35を操作することにより車両1を走行させる際の安全性の向上を図ることができる。
【0115】
また、操作範囲は基準操作範囲から変更しない状態で、且つ、操作位置が基準操作範囲外にある場合に、操作位置が基準操作範囲外にあることを運転者に通知する基準操作範囲外インジケータ96を備えているので、操作位置を現在の操作位置から基準操作範囲内に変化させた場合には、操作機構35の操作範囲は基準操作範囲で維持されることを運転者に認識させることができる。この結果、操作機構35を操作することにより車両1を走行させる際の安全性の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0116】
実施例2に係る操作装置130は、実施例1に係る操作装置2と略同様の構成であるが、走行環境に応じて操作範囲を基準操作範囲から変更可能な操作範囲規制手段として、反力用モータ155が用いられている点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。図8は、実施例2に係る操作装置が有するアクセル操作装置の概略図である。実施例2に係る操作装置130が有するアクセル操作装置140は、実施例1に係る操作装置2が有するアクセル操作装置30と同様に、アクセルペダル21が接続されるアクセルペダル接続部151と動作部152とを有すると共にアクセルペダル21を操作した場合に作動する作動部材150を有しており、作動部材150は、アクセル操作装置140における筐体となるアクセルユニットケース141に、回動軸60を中心として回動可能に取り付けられている。この回動軸60には、アクセルユニットケース141に対する作動部材150の回動角度の変化を検出可能なアクセルポジションセンサ61が設けられており、アクセルポジションセンサ61は、ECU100に接続されている。
【0117】
また、アクセルユニットケース141内には、動作部152に対して、アクセル操作装置140を備える車両1(図1参照)の前後方向における後方から前方に向けた付勢力を付与するリターンスプリング63が設けられている。また、アクセルユニットケース141における回動軸60の下方付近には、アクセルペダル接続部151に対向して設けられたストッパー33が配設されている。
【0118】
さらに、実施例2に係る操作装置130では、走行環境に応じて操作範囲を基準操作範囲から変更可能な操作範囲規制手段として、反力用モータ155が設けられている。この反力用モータ155は、アクセルポジションセンサ61と同様に、作動部材150が回動する際の軸である回動軸60に設けられており、作動部材150に対して回動方向の力の付与が可能になっている。アクセル操作装置140が備えるこれらのアクセルペダル21、作動部材150、リターンスプリング63、回動軸60、アクセルポジションセンサ61、ストッパー33、反力用モータ155は、このように操作範囲内で操作可能に設けられると共に、操作位置に応じて車両1の走行制御を可能な操作機構145を構成している。
【0119】
また、反力用モータ155は、作動部材150に対して回転方向の力を付与することにより、操作機構145の操作位置が拡大操作範囲に位置していることを車両1の運転者に伝達する拡大操作範囲伝達手段としても設けられている。このように設けられる反力用モータ155は、反力用モータ制御装置156に接続されており、反力用モータ制御装置156はECU100に接続されている。この反力用モータ制御装置156は、ECU100からの制御信号に基づいて反力用モータ155を制御可能に設けられている。
【0120】
この実施例2に係る操作装置130は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。操作装置130が備えられる車両1の走行制御を行う場合には、アクセルペダル21を操作することにより行う。アクセルペダル21を操作した場合は、アクセルペダル21が接続されるアクセル操作装置140の作動部材150が回動し、アクセル開度をアクセルポジションセンサ61で検出する。アクセルポジションセンサ61の検出結果は、ECU100の処理部101(図4参照)が有するアクセル開度取得部105(図4参照)で取得し、取得したアクセル開度に応じてエンジン制御部102(図4参照)がエンジン10(図1参照)を制御することにより、エンジン10はアクセル開度に応じた出力や回転数で運転する。
【0121】
また、アクセルペダル21を操作する際における操作範囲は、車両1の走行環境により変化するが、この操作範囲は、反力用モータ155の反力により規制する。即ち、アクセル操作装置140の動作について説明すると、アクセルペダル21を大きく踏み込んだ際には、アクセルペダル21は作動部材150が回動軸60を中心として、アクセルペダル接続部151がストッパー33に向かう方向に回動し、アクセルペダル接続部151がストッパー33に当接することにより回動は停止する。この状態が、アクセル開度が最も大きい状態、即ちアクセルペダル21のストロークが最も大きい状態になる。
【0122】
アクセルペダル21を大きく踏み込んだ際は、このように作動部材150がストッパー33に当接することによって停止するのに対し、アクセルペダル21を解放した場合には、反力用モータ155による回動方向の力により停止する。つまり、作動部材150は、動作部152が略後方から略前方に向かう方向の付勢力がリターンスプリング63から付与されており、この付勢力によって、作動部材150はアクセルペダル21が略前方から略後方に向かう方向に回動をするが、アクセルペダル21を解放した場合における作動部材150は、反力用モータ155が作動部材150に付与する反力により停止する。
【0123】
この反力用モータ155が作動部材150に付与する反力は、作動部材150がリターンスプリング63から付与される付勢力によって回動する方向の反対方向に作用する力となっている。アクセルペダル21を解放した場合には、この反力用モータ155の反力によって作動部材150の回動は停止するが、反力用モータ155が作動部材150の回動方向における位置において作動部材150に反力を付与する位置は、車両1の走行環境により異なっている。このように、作動部材150に反力を付与する反力用モータ155は、反力用モータ制御装置156によって制御可能に設けられており、反力用モータ制御装置156は、ECU100の処理部101が有する操作範囲制御部112からの制御信号に応じて反力用モータ155を制御する。このように、反力用モータ制御装置156を介して反力用モータ155を制御する操作範囲制御部112は、ECU100の処理部101が有する操作範囲判定部111での判定結果に応じて、反力用モータ155の制御を変化させる。
【0124】
具体的には、操作範囲判定部111が、現在の走行環境はアクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境ではないと判定した場合には、反力用モータ制御装置156はアクセル開度取得部105で取得するアクセル開度が所定の開度の場合に、反力用モータ155に反力を発生させる。反力用モータ155は、リターンスプリング63の付勢力と釣り合う大きさの反力を発生するため、反力用モータ155が反力を発生した場合には、作動部材150は回動が停止する。この位置は、アクセルペダル21のストロークが0となる位置であり、この場合における操作位置は、エンジン10をアイドル状態に制御する際の操作位置であるアイドル位置となっている。アクセルペダル21の操作範囲のうち、作動部材150がストッパー33に当接した状態の操作位置からアイドル位置までの操作範囲は、基準操作範囲となっている。
【0125】
これに対し、操作範囲判定部111が、現在の走行環境はアクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境であると判定した場合には、アクセルペダル21の操作位置が、作動部材150がストッパー33に当接した場合における操作位置からアイドル位置の方向に移動する方向に作動部材150が回動した際に、アイドル位置を越えてから反力用モータ155に反力を発生させる。この場合における反力用モータ155が反力を発生する位置から、アイドル位置までのアクセルペダル21の操作範囲は、拡大操作範囲となっている。
【0126】
このように、操作範囲判定部111が、現在の走行環境はアクセルペダル21の操作範囲を拡大する走行環境であると判定した場合には、反力用モータ155は、基準操作範囲に対してアイドル位置を越えた位置に追加する操作範囲である拡大操作範囲を追加することにより、アイドル位置を越えて操作範囲を拡大する。また、アクセルペダル21の操作位置が、この拡大操作範囲に位置している場合におけるアクセルペダル21のストロークは、通常、アクセルペダル21を操作する場合における操作方向の反対方向になっているため、逆ストロークになっている。
【0127】
また、アクセル操作装置140は、アクセルペダル21の操作位置が、この拡大操作範囲に位置している場合には、実施例1に係る操作装置2と同様に、例えば、ECU100の処理部101が有するブレーキ制御部103(図4参照)でブレーキ油圧制御装置81(図1参照)を作動させてブレーキユニット80(図1参照)に制動力を発生させることなどにより、アイドル位置における車両1の走行制御と比較して低速側に制御する。
【0128】
図9は、アクセルペダルのストロークに対する反力用モータの反力とリターンスプリングの付勢力についての説明図である。アクセル操作装置140が有するリターンスプリング63は、圧縮ばねにより形成されているため、リターンスプリング63が作動部材150に付与する付勢力171は、リターンスプリング63が縮むに従って大きくなる。このため、リターンスプリング63の付勢力171は、アクセルペダル21のストロークが大きくなるに従って大きくなる。
【0129】
また、反力用モータ制御装置156は、アクセルペダル21のストロークが所定より大きい場合には反力用モータ155を作動させないため、操作範囲を拡大せず、操作範囲を基準操作範囲にする際における反力用モータ155の反力である操作範囲通常時反力172と、操作範囲を拡大する際における反力用モータ155の反力である操作範囲拡大時反力173とは、共に0になる。アクセルペダル21のストロークが小さくなった場合には、反力用モータ制御装置156は車両1の走行環境に応じて反力用モータ155を作動させるが、操作範囲を基準操作範囲にする際における反力である操作範囲通常時反力172は、アクセルペダル21のストロークが小さくなった場合における所定の位置で大きくなる。
【0130】
ここで、作動部材150に作用するリターンスプリング63の付勢力171と、反力用モータ155の反力とは、互いに反対方向に作用する力であるため、作動部材150は、双方の力が同じ大きさなった場合に回動方向の力が釣り合い、回動が停止する。このため、アクセルペダル21を解放した場合には、アクセルペダル21のストロークが小さくなることにより大きくなった操作範囲通常時反力172と、リターンスプリング63の付勢力とが同じ大きさになった場合に、作動部材150は回動が停止する。このように、回動が停止した場合におけるアクセルペダル21の操作位置が、アイドル位置となっている。換言すると、操作範囲制御部112からの制御信号に応じて反力用モータ155を制御する反力用モータ制御装置156は、アクセルペダル21の解放時には操作位置がアイドル位置で停止するように、反力用モータ155を作動させる。
【0131】
また、反力用モータ制御装置156は、アクセルペダル21の操作範囲を拡大する場合には、操作範囲を拡大しない場合と比較して、アクセルペダル21のストロークが、より小さくなった場合に反力用モータ155の反力を大きくする。このため、操作範囲拡大時反力173は、操作範囲通常時反力172と比較して、アクセルペダル21のストロークが、より小さくなった場合に大きくなる。このように大きくなった操作範囲拡大時反力173と、リターンスプリング63の付勢力171と同じ大きさになった場合に、作動部材150は回動が停止する。このように、回動が停止した場合におけるアクセルペダル21の操作位置から、アイドル位置までの操作範囲が、拡大操作範囲となっている。
【0132】
また、操作範囲拡大時反力173は、拡大操作範囲におけるアイドル位置寄りの部分で大きさが変化する。このように、反力用モータ155の反力が変化した場合、反力の変化は作動部材150には振動として伝達され、この振動は、さらにアクセルペダル21から運転者に伝達される。即ち、反力用モータ155の反力の変化は、いわゆるクリック感としてアクセルペダル21から運転者に伝達される。これにより、アクセルペダル21の操作位置は、拡大操作範囲に位置していることが運転者に伝達される。このように、反力用モータ155は、アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に位置していることを車両1の運転者に伝達する拡大操作範囲伝達手段も兼ねている。
【0133】
以上の操作装置130は、作動部材150等の操作機構145の操作範囲を、反力用モータ155の反力によって車両1の走行環境に応じて基準操作範囲から変更可能に設けている。これにより、走行環境に応じて操作範囲を変更する場合に、反力用モータ155で発生する反力の位置、即ち、作動部材150の回動方向における反力の発生位置を変更することにより、容易に操作範囲を変更することができる。これにより、アクセルペダル21の操作位置を基準操作範囲外にすることを可能にすると共に、操作位置を基準操作範囲外にした場合には基準操作範囲で制御することができる制御量の範囲外の制御量で走行制御を行うことを、容易に実現することができる。この結果、容易に操作機構145の操作量と走行制御の制御量との関係の一貫性を維持しつつ運転者が要求する車両1の走行状態を得ることができ、運転者が要求する車両1の走行状態を、違和感無く得ることができる。
【0134】
なお、実施例1に係る操作装置2では、作動部材40の突出部43と操作範囲規制機構50の操作範囲変更カム51とを当接させることにより操作範囲を規制すると共に、操作範囲変更カム51を移動させることにより操作範囲を変更しており、実施例2に係る操作装置130では、反力用モータ155の反力を制御することにより操作範囲の規制と操作範囲の変更とを行っているが、操作範囲の規制と操作範囲の変更とは、これら以外の手法を用いてもよい。操作範囲を変更する手法に関わらず、車両1の走行制御を行う際の操作範囲を変更可能にし、変更した操作範囲に応じて走行制御を行うことにより、運転者が要求する車両1の走行状態を、違和感無く得ることができる。
【0135】
また、上述した操作装置2、130では、アクセルペダル21の操作範囲を拡大するか否かの基準として用いる車両1の走行環境に、セレクターレバー75で選択する自動変速機15の走行レンジや、モードスイッチ77で切り替える車両1の走行モードを用いているが、操作範囲を拡大するか否かの基準として用いる操作環境は、これら以外のものでもよい。例えば、車両1に搭載されるカーナビゲーションシステムより、車両1の進行方向の道路状況を取得し、車両1の進行方向の道路にカーブが多かったり、急カーブがあったりする場合には、車両1の走行環境は、操作範囲を拡大する走行環境であると判定してもよい。このように、操作範囲を拡大するか否かの判定に用いる走行環境は、車両1の減速力の要求が大きい状況であるか否かを判定できる走行環境であれば、上述した操作装置2、130で用いる走行環境以外のものを用いてもよい。
【0136】
また、上述した操作装置2、130では、アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に位置した場合には、ブレーキ油圧制御装置81を制御し、ブレーキユニット80に制動力を発生させることにより減速力を大きくしているが、操作位置が拡大操作範囲に位置した場合の制御は、ブレーキユニット80に制動力を発生させる以外の制御を行ってもよい。例えば、アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に位置した場合には自動変速機15が1速以外の場合にはシフトダウンをしたり、エンジン10のスロットルバルブの開度をアイドル運転時の開度よりも小さくしたりしてもよい。また、車両1が動力源としてエンジン10の他に電気で作動するモータ(図示省略)を備え、駆動力としてモータの出力も用いる、いわゆるハイブリッド車の場合には、アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に位置した場合には、減速時の回生量を増加してもよい。つまり、ハイブリッド車の中には、減速時には車両の走行時における慣性力を電気に変化することにより行う制動である回生制動を行う車両があるが、このようなハイブリッド車において、アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に位置した場合には、回生制動により発電する電気の量を増加させ、この回生制動によって減速力を増加させてもよい。これらのように、アクセルペダル21の操作位置が拡大操作範囲に位置した場合における制御は、操作位置がアイドル位置における車両の走行制御と比較して、走行制御を低速側にする制御であれば、その制御方法は問わない。
【0137】
また、上述した操作装置2、130では、操作範囲が拡大した状態になった場合には、操作範囲拡大インジケータ95を点灯させ、操作範囲が拡大していない状態の場合にアクセルペダルの操作位置が拡大操作範囲に位置している場合には基準操作範囲外インジケータ96を点灯させることにより、これらの状態であることを運転者に通知しているが、通知手段はこれら以外のものを用いてもよい。例えば、これらの通知を1つのインジケータで色を変えることにより行ってもよく、また、点灯と消灯との他に点滅を用いて通知してもよい。または、他の情報の表示に用いる液晶表示等に表示することにより通知してもよい。
【0138】
図10は、変形例に係る操作装置のアクセルペダルのストロークに対する駆動力及び減速力の関係を示す説明図である。また、上述した操作装置2、130では、アクセルペダル21を操作することにより制御可能な駆動力及び減速力が、逆ストロークの範囲も含めてアクセルペダル21のストロークに対して略比例の関係になって変化するが、駆動力及び減速力は、必ずしもアクセルペダル21のストロークに対して略比例の関係になっていなくてもよい。例えば、図10に示すように、アクセルペダル21のストロークに対する駆動力及び減速力の変化の割合を複数設定し、車両1の走行状態に応じて選択して制御を行ってもよい。即ち、アクセルペダル21のストロークに対する駆動力及び減速力を略比例の関係にする制御のマップで示される第1制御量175の他に、アクセルペダル21のストロークが小さくなるに従って、減速力がより大きくなる制御のマップで示される第2制御量176を設定し、車両1の走行時において大きな減速力を要求される走行環境では、この第2制御量176によってエンジン10やブレーキユニット80を制御してもよい。
【0139】
このように、アクセルペダル21のストロークに対する駆動力及び減速力の変化の割合を複数設定する場合でも、それぞれの制御において、逆ストロークも含めたアクセルペダル21のストロークに応じて駆動力及び減速力が直線的に変化していればよい。これにより、アクセルペダル21のストロークと、駆動力及び減速力との関係の一貫性を維持しつつ、より確実に運転者が要求する車両1の走行状態を得ることができる。この結果、より確実に運転者が要求する車両1の走行状態を、違和感無く得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
以上のように、本発明に係る操作装置は、アクセルペダルの操作をセンサにより検出する操作装置に有用であり、特に、車両の走行環境に応じて走行制御の状態を変化させる場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の実施例1に係る操作装置が設けられた車両の概略図である。
【図2】図1に示すアクセル操作装置の断面詳細図である。
【図3】図1に示す車両のメーターパネルの概略図である。
【図4】図1に示すECUの説明図である。
【図5】アクセルペダルの操作範囲を拡大した場合における説明図である。
【図6】アクセルペダルのストロークに対する駆動力及び減速力の関係を示す説明図である。
【図7】実施例1に係る操作装置の処理手順を示すフロー図である。
【図8】実施例2に係る操作装置が有するアクセル操作装置の概略図である。
【図9】アクセルペダルのストロークに対する反力用モータの反力とリターンスプリングの付勢力についての説明図である。
【図10】変形例に係る操作装置のアクセルペダルのストロークに対する駆動力及び減速力の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0142】
1 車両
2、130 操作装置
5 車輪
10 エンジン
15 自動変速機
21 アクセルペダル
22 ブレーキペダル
30、140 アクセル操作装置
31、141 アクセルユニットケース
32 板ばね
35、145 操作機構
40、150 作動部材
41、151 アクセルペダル接続部
42、152 動作部
43 突出部
44 第1突出部
45 第2突出部
46 摺動面
47 凹部
50 操作範囲規制機構
51 操作範囲変更カム
52 当接部
53 逃げ部
54 操作範囲変更アクチュエータ
58 操作範囲制御装置
60 回動軸
61 アクセルポジションセンサ
63 リターンスプリング
75 セレクターレバー
76 ポジションスイッチ
77 モードスイッチ
80 ブレーキユニット
81 ブレーキ油圧制御装置
95 操作範囲拡大インジケータ
96 基準操作範囲外インジケータ
100 ECU
101 処理部
102 エンジン制御部
103 ブレーキ制御部
104 変速制御部
105 アクセル開度取得部
106 ブレーキストローク量取得部
107 シフト信号取得部
108 走行レンジ判定部
109 走行モード信号取得部
110 走行モード判定部
111 操作範囲判定部
112 操作範囲制御部
113 インジケータ制御部
114 駆動力・減速力算出部
115 基準操作範囲外判定部
155 反力用モータ
156 反力用モータ制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作範囲内で操作可能に設けられると共に操作位置に応じて車両の走行制御を可能に設けられており、且つ、基準となる前記操作範囲である基準操作範囲の一端に位置する前記操作位置は、前記車両の走行時の駆動力を発生する動力源をアイドル状態に制御する際の前記操作位置であるアイドル位置となっている操作機構と、
走行環境に応じて前記操作範囲を前記基準操作範囲から変更可能な操作範囲規制手段と、
を備えることを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記操作範囲規制手段は、前記操作範囲を前記基準操作範囲から変更する場合には、前記基準操作範囲に対して前記アイドル位置を越えた位置に追加する前記操作範囲である拡大操作範囲を追加することにより、前記アイドル位置を越えて前記操作範囲を拡大することを特徴とする請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記操作機構は、前記操作位置が前記拡大操作範囲に位置している場合には、前記アイドル位置における前記車両の前記走行制御と比較して低速側に制御することを特徴とする請求項2に記載の操作装置。
【請求項4】
さらに、前記操作機構の前記操作位置が前記拡大操作範囲に位置していることを前記車両の運転者に伝達する拡大操作範囲伝達手段を備えていることを特徴とする請求項2または3に記載の操作装置。
【請求項5】
さらに、前記操作範囲規制手段が前記操作範囲を前記基準操作範囲から変更する状態の場合に、前記操作範囲は前記基準操作範囲から変更する状態であることを前記車両の運転者に通知する操作範囲変更通知手段を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の操作装置。
【請求項6】
さらに、前記操作範囲規制手段が前記操作範囲を前記基準操作範囲から変更しない状態で前記操作位置が前記基準操作範囲外にある場合に、前記操作位置が前記基準操作範囲外にあることを前記車両の運転者に通知する操作位置操作範囲外通知手段を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−39579(P2010−39579A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198910(P2008−198910)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】