説明

操作軸の接続部材、およびこの接続部材を備えた遠隔操作装置

【課題】操作レバーの抉り力の伝達を防止でき、バックラッシを生じることのない操作軸の接続部材、およびこの接続部材を備えた遠隔操作装置を提供すること。
【解決手段】操作レバーの駆動軸とポテンショメータの回転軸を略同軸に接続する接続部材40は、樹脂により一体成形され、駆動軸の溝部に対してスライド可能に嵌入する4本の脚部44、および2本のスリット41を有する略円筒形の本体42を有する。本体42を駆動軸の穴に緩挿して4本の脚部44を駆動軸の端部に形成した溝部に嵌入し、本体42の内側にポテンショメータの回転軸を挿通する。これにより、操作レバーの駆動軸に対してポテンショメータの回転軸を軸方向と交差する全ての方向に関して僅かに移動可能とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操作軸の接続部材、およびこの接続部材を備えた遠隔操作装置に係り、特に、操作系の変位量を電気信号に変換して出力するポテンショメータを操作軸に接続するための接続部材、およびこの接続部材を用いて操作レバーの操作軸をポテンショメータに同軸に接続した遠隔操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、操作レバーやフットペダルなどの操作系を有する遠隔操作装置として、操作系の変位量を電気信号に変換して出力するポテンショメータを備えた電子リモコンが普及されつつある。この種の遠隔操作装置として、例えば、自動車のアクセルペダルの揺動変位を回動プレートの回転変位に変換して、この回動プレートと同軸に取り付けたポテンショメータによってその変位量を電気信号に変換してエンジンへ出力する装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この装置では、ポテンショメータを回動プレートと同軸に取り付けることで省スペース化を図ることができ装置の小型化に寄与することができる反面、回動プレートを回動する際の抉り力がポテンショメータに伝達されてしまう不具合を生じる。このように、操作系の抉り力がポテンショメータに伝達されてしまうと、最悪の場合、ポテンショメータが壊れてしまう。
【0004】
ポテンショメータに伝達される抉り力を弱めるため、ギアを介して操作系とポテンショメータを接続する方法も考えられるが、その分、装置が大型化するとともに、ギアを接続することでバックラッシが生じる新たな問題が発生する。バックラッシが生じてしまうと、操作系の変位をポテンショメータに正確に伝えられなくなり、装置の信頼性が低下する。
【特許文献1】特開2001−123876号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、抉り力の伝達を防止できバックラッシを生じることのない操作軸の接続部材、およびこの接続部材を備えた遠隔操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の操作軸の接続部材は、回転する操作軸と回転される被操作軸を略同軸に接続する部材であって、上記操作軸および被操作軸のうち一方の軸に対して回転不能に接続されるとともに、上記一方の軸に対して軸方向と交差する第1の方向への移動を許容される接続部と、上記操作軸および被操作軸のうち他方の軸を回転不能に受け入れるとともに、弾性変形することで上記他方の軸の軸方向と交差する方向への移動を許容する軸受け部と、を有する。
【0007】
また、本発明の遠隔操作装置は、人が操作する操作子と、この操作子の変位を回動変位として伝える操作軸と、この操作軸の回転が伝達されて回転される被操作軸を有し、この被操作軸の回転位置に関する情報を上記操作軸の回転位置に関する情報として電気信号に変換して出力する変換器と、上記操作軸と被操作軸を略同軸に接続する接続部材と、を有し、上記接続部材は、上記操作軸および被操作軸のうち一方の軸に対して回転不能に接続されるとともに、上記一方の軸に対して軸方向と交差する第1の方向への移動を許容される接続部と、上記操作軸および被操作軸のうち他方の軸を回転不能に受け入れるとともに、弾性変形することで上記他方の軸の軸方向と交差する方向への移動を許容する軸受け部と、を有する。
【0008】
上記発明によると、操作軸と被操作軸を略同軸に接続した接続部材の接続部が一方の軸の第1の方向への移動を許容するとともに軸受け部が他方の軸の移動を許容する構成を有するため、操作軸と被操作軸の間に心ズレを生じた場合であっても、両者の間に発生する不所望な応力を吸収でき、操作軸の抉り力が被操作軸に伝達されることを防止でき、両者の間にバックラッシを生じることも無い。
【発明の効果】
【0009】
この発明の操作軸の接続部材、およびこの接続部材を備えた遠隔操作装置は、上記のような構成および作用を有しているので、抉り力の伝達を防止できバックラッシを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1には、この発明の実施の形態に係る遠隔操作装置1(以下、単にリモコン1と称する)および船外機2を備えたボート10の模式図を示してある。ここでは、1台の船外機2に1台のリモコン1を接続した例を図示してあるが、船外機2およびリモコン1の数は船の種類に応じて任意に変更可能である。
【0011】
ボート10のスターン(後部)には船外機2が取り付けられており、デッキの操縦席3には船外機2を遠隔操作するためのリモコン1が取り付けられている。リモコン1は、運転者が操作する操作レバー4(操作子)、および操作レバー4の駆動軸に接続されたポテンショメータ5を有する。ポテンショメータ5は、操作レバー4の駆動軸の回転角度を電気信号に変換して出力する本発明の変換器として機能する。
【0012】
船外機2は、ハーネス6を介してリモコン1のポテンショメータ5に接続された電子制御ユニット7(以下、単にECU7と称する)を有する。このECU7には、スロットルモータ8、およびシフトアクチュエーター9が接続されている。スロットルモータ8は、ECU7からの制御信号に基づいて、スクリューSの回転速度をコントロールするための図示しないスロットルレバーを駆動する。シフトアクチュエーター9は、ECU7からの制御信号に基づいて、スクリューSの回転方向を切り換える。
【0013】
すなわち、リモコン1の操作レバー4を図示のニュートラル位置からバウ側(進行方向T側)に回動するとその角度情報がポテンショメータ5からECU7に出力され、ECU7がシフトアクチュエーター9を制御してスクリューSの回転方向を前進方向に切り換える。この状態からさらに操作レバー4をバウ側に回動すると、ポテンショメータ5からの角度情報に基づいてECU7がスロットルモータ8を制御し、スクリューSを操作レバー4の角度に応じた速度で回転する。
【0014】
逆に、操作レバー4を図示のニュートラル位置からスターン側(後進方向)、すなわち図中矢印Tと逆方向に回動するとその角度情報がポテンショメータ5からECU7に出力され、ECU7がシフトアクチュエーター9を制御してスクリューSの回転方向を後進方向に切り換える。この状態からさらに操作レバー4をスターン側に倒すと、ポテンショメータ5からの角度情報に基づいてECU7がスロットルモータ8を制御し、スクリューSを操作レバー4の角度に応じた速度で回転する。
【0015】
図2には、上述したリモコン1の外観斜視図を示してある。本実施の形態のリモコン1は、単一の本体に対して2本の操作レバー4、4を備えている。すなわち、このリモコン1は、図示しない2台の船外機2をそれぞれ独立して操作すべく、上述したポテンショメータ5も2機搭載している。つまり、このリモコン1は、2本の操作レバー4の形状が僅かに異なる以外、概ね左右対称をなす2組の同じ構成を備えている。よって、以下の説明では、片側の構成を代表して説明し、左右対称となる同じ構成については同一符号を付してその詳細な説明を省略する場合もある。
【0016】
図3に分解斜視図を示すように、リモコン1は、2本の操作レバー4の他に、各操作レバー4の駆動軸11(操作軸)をそれぞれ独立して回転可能に取り付けた金属製のハウジング12、ハウジング12にネジ止めされた樹脂製のボトムカバー13、および2本の駆動軸11の端部を外部に露出するようにボトムカバー13と協働してハウジング12を覆う樹脂製のアッパーカバー14を有する。
【0017】
船の進行方向(図中矢印T方向)に対して左側の操作レバー4には、チルトスイッチ4aが取り付けられている。このチルトスイッチ4aは、船外機2のスクリューSが水中に沈む深さを変更すべく船外機2を傾斜させるためのスイッチであり、駆動軸11から離れる方向にスライドさせるとスクリューSの深さが浅くなり、駆動軸11に近付く方向にスライドさせるとスクリューSの深さが深くなるようになっている。
【0018】
ハウジング12は、例えば図6に示すように、リモコン1を船体に固定するための固定ネジ15を装着するための複数のネジ装着穴16を有する。ネジ装着穴16は、ハウジング12が船体表面に面接する底面に対して略直交する側面に形成され、概ね固定ネジ15を軸中心に沿って2分割した形状を有する。つまり、固定ネジ15をその軸方向と交差する方向に移動してネジ装着穴16に装着すると、固定ネジ15の形状と略一致するネジ装着穴16の形状によって、固定ネジ15がその回転を規制される。
【0019】
このネジ装着穴16を利用してハウジング12(すなわちリモコン1)を船体に固定する場合、まず初めに、図2に示すようにリモコン1を組み立てた状態で、全ての固定ネジ15をハウジング12のネジ装着穴16に装着する。この際、固定ネジ15は、ハウジング12の側面とボトムカバー13との間の隙間を通してネジ装着穴16に装着できる。
【0020】
この後、複数本の固定ネジ15の位置に合わせて予め船体に形成しておいた取り付け孔(図示せず)に対して対応する固定ネジ15をそれぞれ挿通してリモコン1を船体に取り付ける。この状態でリモコン1は船体に完全に固定されていないが、各固定ネジ15はネジ装着穴16の形状によって回転を規制され、且つ船体に設けた取り付け孔によってネジ装着穴16からの脱落が防止されている。つまり、この状態で手を離しても固定ネジ15が脱落することはなく、リモコン1も仮固定された状態となる。
【0021】
この状態で、船体の裏側から取り付け孔を介して突出した固定ネジ15に図示しないナットを螺合して締め付ける。この際にも、ネジ装着穴16の形状によって固定ネジ15が軸方向に押し込まれてしまう不具合を防止でき、ナットの取り付け動作を容易にできる。これにより、リモコン1が船体に完全に固定される。以上のように、固定ネジ15の形状に合ったネジ装着穴16を採用することで、リモコン1を手で押えることなくナットで締結できるため、リモコン1の取り付け作業を1人でできる。特に、ナットの締め付けのため船体の裏側にアクセスするための入口とリモコン1の取り付け位置が離れている場合、このようなリモコン1の取り付け構造が有効となる。
【0022】
図4には、リモコン1を駆動軸11の中心で切断した断面図を示してある。駆動軸11は、ハウジング12の孔12aに嵌め込まれた略円環状のブッシュ17を挿通するようにハウジング12に対して回転可能に取り付けられている。そして、ハウジング12の孔12aの外側(すなわち操作レバー4側)で駆動軸11にワッシャー18を取り付け、さらに外側に図示しないC型止輪を固設して、駆動軸11が軸方向に脱落することを防止している。
【0023】
このように駆動軸11をハウジング12に取り付けた状態で、駆動軸11に一体に形成された駆動軸11より大径の回転体20がハウジング12内側の略円形の凹部22内に回転可能に収容配置される。つまり、回転体20を一体に備えた駆動軸11をハウジング12に取り付ける際には、ハウジング12の内側から駆動軸11の先端をブッシュ17に挿通し回転体20を凹部22に収容配置する。その後、ワッシャー18およびC型止輪を駆動軸11に装着して駆動軸11(回転体20)の脱落を防止する。
【0024】
凹部22を塞ぐ位置、すなわちハウジング12の裏面側には、樹脂製の蓋体19が配置されている。蓋体19は、駆動軸11を上述したようにハウジング12に装着した後、ハウジング12の裏面側にネジ止め固定される。
【0025】
蓋体19のハウジング12から離間した側(裏面側)には、上述したポテンショメータ5が固設されている。このポテンショメータ5を備えた蓋体19をハウジング12に取り付けることで、蓋体19を介してハウジング12側に突出したポテンショメータ5の回転軸5a(被操作軸)が樹脂製の接続部材40を介して駆動軸11に連結されるようになっている。つまり、ポテンショメータ5の回転軸5aは蓋体19を貫通して延びており、ポテンショメータ5は、駆動軸11と略同軸に配置されている。接続部材40の詳細については後述する。
【0026】
図5には、蓋体19を取り付ける前の状態のハウジング12をその裏面側から見た図を示してある。これによると、回転体20は、駆動軸11の全周に設けられておらず、本実施の形態では概ね片側半分にだけ設けられており、駆動軸11を中心とした略扇形状に形成されている。また、この回転体20の駆動軸11から離間した略円弧状の外周には、軸方向に傾斜したテーパー面20aが形成されている。本実施の形態では、このテーパー面20aは、ハウジング12の内側(すなわちポテンショメータ5側)から外側(紙面奥側)に向けて駆動軸11から離れる放射方向に傾斜している。
【0027】
なお、テーパー面20aを有する回転体20の外周は、後述する操作レバー4の制動力を全ての回転位置で均一にする場合には、駆動軸11を中心とした円弧とすれば良いが、操作レバー4の制動力をその回転位置に応じて変化させたい場合には、外周の曲率に変化を持たせることもできる。
【0028】
回転体20のテーパー面20aに対向する位置には、テーパー面20aに当接する制動面24aを有する樹脂製のブレーキシュー24が配置されている。ブレーキシュー24は、その制動面24aが回転体20のテーパー面20aに接触する姿勢で、ハウジング12の略円形の凹部22に連続した略矩形の凹部23内に収容配置されている。
【0029】
ブレーキシュー24の制動面24aは、回転体20のテーパー面20aの形状に合わせて傾斜しているとともに回転体20の外周の曲率に合わせて湾曲している。このため、ブレーキシュー24の制動面24aは、略全面で回転体20のテーパー面20aに面接し、制動力を十分に伝えることができるようになっている。
【0030】
図6には、駆動軸11に操作レバー4を取り付けた状態のハウジング12を外側から見た概観図を示してある。これによると、ハウジング12の外側で上述したブレーキシュー24に対向する位置には、制動面24aのテーパー面20aに対する押圧力を調節して操作レバーの制動力を調節するための調節機構25が設けられている。
【0031】
調節機構25は、図4にも断面図を示すように、駆動軸11と略平行にハウジング12を貫通して延びてブレーキシュー24に螺合した調節ネジ26、この調節ネジ26の締め具合に応じて駆動軸11方向に伸縮して制動面24aをテーパー面20aに押圧する押圧力を変化させる押圧バネ27、およびこの押圧バネ27の伸縮を規制するためのスペーサー28を有する。
【0032】
押圧バネ27は、略円筒形の樹脂製のスペーサー28の内側(外側でも良い)に収容配置され、押圧バネ27のさらに内側に調節ネジ26が挿通される。この調節機構25をハウジング12に取り付ける場合には、スペーサー28および押圧バネ27を装着した状態の調節ネジ26をハウジング12の外側からネジ孔29に挿通し、ハウジング12の内側にある凹部23内に配置されたブレーキシュー24に螺合する。つまり、押圧バネ27は、調節ネジ26の脱落防止のためのテンションを与えるとともにブレーキシュー24を凹部22の底に向けて付勢するよう機能する。
【0033】
この状態で、調節機構25の調節ネジ26を回転させて締め具合を調節すると、凹部23内に収容されたブレーキシュー24が駆動軸11と略平行な方向に移動され、制動面24aのテーパー面20aに対する押圧力が調節される。つまり、調節機構25によってブレーキシュー24を軸方向に付勢する力は、ブレーキシュー24の制動面24aおよび回転体20のテーパー面20aが軸方向に対して傾斜していることから、制動面24aをテーパー面20aに押圧する方向のベクトル成分を含むことになり、調節ネジ26を調節することで制動面24aとテーパー面20aとの間の押圧力を調節できることになる。
【0034】
ところで、上記のように制動力の調節機構25を備えた駆動軸11には、ハウジング12の外側から操作レバー4が取り付けられる。駆動軸11に操作レバー4を取り付ける場合、外周面上に凸凹を有する駆動軸11を操作レバー4の対応する凸凹を有する取り付け穴4bに嵌入し、操作レバー4の外側からネジ31によって固定する。このように、駆動軸11の外周面および操作レバー4の取り付け穴4bに凸凹を設けることで、両者間における回転方向の滑りを防止でき、操作レバー4の操作によって駆動軸11を確実に回転させることができる。
【0035】
また、上述した調節機構25の調節ネジ26は、ハウジング12の外側を包囲するようにボトムカバー13およびアッパーカバー14を取り付けた状態(図2に示す状態)でカバー13、14の接続部分に脱着可能に取り付けられたグロメット32(図3)を取り外すことでアクセス可能となっている。つまり、本実施の形態によると、操作レバー4の制動力をリモコン1の本体の外側から調節することができる。
【0036】
特に、本発明によると、制動力を付与する駆動軸11に一体に設けた回転体20にテーパー面20aを設け、このテーパー面20aにブレーキシュー24の制動面24aを押圧せしめる構成を採用したため、駆動軸11と略平行に延びた調節ネジ26に対してハウジング12の外側から駆動軸と平行な方向からアクセスして締め具合を調節することができ、制動力の調節のためにリモコン1を取り外したりカバーを取り外したりする必要がなく、操作レバー4の制動力の調節を容易にできる。
【0037】
図5に戻って、駆動軸11を挟んで回転体20の反対側には、クリックストップ機構34が設けられている。このクリックストップ機構34は、操作レバー4をその回動の途中で3つのポジションに係止するよう機能する。具体的には、このクリップストップ機構34は、操作レバー4をニュートラルポジションとこのニュートラルポジションを挟んだ2つのポジションにそれぞれ係止する。
【0038】
すなわち、このクリップストップ機構34は、回転体20に対して駆動軸11から離れる方向に一体に延びた細長い収容部35を有し、この収容部35内にディテントスプリング36を収容配置して、このディテントスプリング36の先端(すなわち凹部22の側壁22aに対向する端部)に樹脂製のローラガイド37を介してローラ38を回転可能に設けた構造を有する。なお、このクリップストップ機構34を収容配置した凹部22の側壁22aには、ローラ38を受け入れる3つの小さな凹部39が形成されている。
【0039】
例えば、操作レバー4をニュートラル位置に回動すると、クリックストップ機構34のローラ38がディテントスプリング36によって凹部22の側壁22aに向けて押圧され、中央の凹部39に嵌め込まれる。この状態から操作レバー4を一方向に回動させるとローラ38が隣の凹部39に嵌め込まれ、逆方向に回動させるとローラ38が逆隣の凹部39に嵌め込まれる。ニュートラル位置の前後の位置決めをする凹部39、39は、それぞれスクリューSの回転方向を切り換えてスロットルを開け始める操作レバー4の回動位置を規定している。
【0040】
以下、操作レバー4の駆動軸11とポテンショメータ5の回転軸5aを略同軸に接続する上述した接続部材40について、図5および図7を参照して詳細に説明する。なお、図7には、接続部材40の外観斜視図を示してある。
【0041】
接続部材40は、軸方向に延びた2本のスリット41を有する略円筒形の本体42と弾性変形可能な4本の脚部44を有し、樹脂材料による一体成形により形成されている。この接続部材40を一体成形する場合、図示しない成形型を接続部材40の軸方向に離型することができる。
【0042】
4本の脚部44は、それぞれ本体42の軸方向一端42aから軸方向と交差する方向で且つ軸心から離れる方向(第1の方向)に一体に延設されており、その先端に係止部43をそれぞれ有する。本実施の形態では、4本の脚部44のうち2本は本体42の一端から略同じ方向に延出し、残り2本が略逆方向に延出している。これら係止部43を有する4本の脚部44は、本発明の接続部として機能する。
【0043】
また、2本のスリット41は、上述した脚部44の延出方向(第1の方向)に対して傾斜した方向に並んだ位置に形成され、本体42の一端42aから他端42bに向けて途中まで延びている。さらに、本体42の内周壁42cは、ここでは図示しないポテンショメータ5の回転軸5aの断面形状と略同じ断面形状に形成され、ポテンショメータ5の回転軸5aを回転不能に受け入れる。本実施の形態では、本体42の内周壁42cが軸方向に延びた互いに略平行に対向する2つのカット面を有し、略同じ断面形状の回転軸5aを回転不能に受け入れるようになっている。これら2本のスリット41および回転軸5aを回転不能に受け入れる内周壁42cを有する本体42は、本発明の軸受け部として機能する。
【0044】
これに対し、駆動軸11の蓋体19(ポテンショメータ5)に対向した端部には、図5に示すように、接続部材40の4本の脚部44の係止部43をスライド可能に嵌入するための溝部11aが形成されている。また、溝部11aの底、すなわち駆動軸11の中心には、接続部材40の本体42を受け入れる略円筒状の有底の穴46(図4参照)が形成されている。穴46は、接続部材40の本体42の直径より僅かに大きな直径を有し、本体42を緩挿するようになっている。溝部11aは、駆動軸11と交差する一定方向(第1の方向)に延設されており、係止部43に当接してスライドさせる上記一定方向に延びた対向する2つの壁部を有する。
【0045】
上記構造の接続部材40を用いて操作レバー4の駆動軸11とポテンショメータ5の回転軸5aを接続する場合、まず、接続部材40を駆動軸11に装着する。この場合、接続部材40の本体42をその他端42b側から駆動軸11の穴46に緩く挿通し、接続部材40の4本の脚部44を内側に僅かに撓ませて4つの係止部43が駆動軸11の溝部11aの壁部に内側から当接するように溝部11a内に嵌入する。この状態で、4本の脚部44が僅かに内側に弾性変形した状態となり、4つの係止部43が溝部11aの内側の壁を押圧してクランプ力を生じ、接続部材40が駆動軸11から脱落することが防止される。
【0046】
また、この状態で、接続部材40の本体42が駆動軸11の穴46に対して軸方向と交差する全ての方向に移動可能となっているため、4つの係止部43が溝部11aに対して僅かにスライド可能となっており、接続部材40が溝部11aに沿って第1の方向にスライド可能となっている。反面、接続部材40の4つの係止部43が駆動軸11の溝部11aに嵌入されているため、接続部材40の駆動軸11に対する回転が禁止されている。
【0047】
次に、上記のように、接続部材40を駆動軸11に装着した後、ポテンショメータ5の回転軸5aを接続部材40の内側に挿入する。この挿入動作は、上述したように、ハウジング12の裏面を蓋体19で閉じる動作と同時に実施される。このとき、ポテンショメータ5の回転軸5aを接続部材40の本体42内に挿入することで、本体42が弾性変形して2つのスリット41が僅かに開き、回転軸5aに対するクランプ力を生じる。また、上述したように、本体42の内周壁42cが回転軸5aと略同じ断面形状を有することから、回転軸5aが接続部材40に対して回転不能に受け入れられることになる。
【0048】
さらに、本体42に形成した2本のスリット41により、本体42が弾性変形可能となっていることから、接続部材40に回転軸5aを挿通した状態で、接続部材40に対する回転軸5aの軸方向と交差する方向への僅かな移動も許容される。特に、本実施の形態のように、接続部材40の駆動軸11に対する上述したスライド方向(第1の方向)に対して傾斜した方向に並んだ位置に2本のスリット41を形成したことにより、第1の方向とは異なる方向(第2の方向)への回転軸5aの移動が許容される。
【0049】
すなわち、本実施の形態のように、接続部材40を駆動軸11に対して第1の方向にスライド自在に装着するとともに回転軸5aを接続部材40に対して第1の方向と異なる第2の方向に移動可能に接続することで、操作レバー4の駆動軸11に対してポテンショメータ5の回転軸5aを軸方向と交差する全ての方向に関して僅かに移動可能とすることができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態の接続部材40を用いてポテンショメータ5の回転軸5aと操作レバー4の駆動軸11を略同軸に接続することで、駆動軸11と回転軸5aの軸心がズレていても確実に回転を伝えることができ、操作レバー4の抉り力がポテンショメータ5の回転軸5aに伝達されることを防止でき、両者の間でバックラッシを生じることもない。これにより、操作レバー4の回転位置をポテンショメータ5で正確に出力でき、信頼性を高めることができる。
【0051】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0052】
例えば、上述した実施の形態では、2本の操作レバー4を有するリモコン1に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、1本の操作レバーを有するリモコンに本発明を適用しても良い。
【0053】
また、上述した実施の形態では、接続部材40を樹脂材料の一体成形により形成した場合について説明したが、これに限らず、複数のパーツを組み合わせて接続部材40を構成しても良い。
【0054】
また、上述した実施の形態では、操作レバー4の駆動軸11に溝部11aを設けて接続部材40の4本の脚部44を嵌入し且つポテンショメータ5の回転軸5aを接続部材40の本体42に挿入した場合について説明したが、これに限らず、駆動軸11側の構成と回転軸5a側の構成を逆にしても良い。
【0055】
さらに、上述した実施の形態では、船外機2のリモコン1に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば、エンジンを駆動するフットペダル付の遠隔操作装置(リモコン)50に本発明を適用しても良い。以下、本発明をリモコン50に適用した例について説明する。
【0056】
図8には、この発明の他の実施の形態に係るリモコン50の構造を概略的に示してある。このリモコン50は、この発明の操作子として機能するフットペダル52、フットペダル52の直線的な変位を回転変位に変換するラックアンドピニオン機構54、およびラックアンドピニオン機構54によって回転変位に変換されたフットペダル52の変位量を電気信号に変換して出力する図中破線で示すポテンショメータ56(変換器)を有する。
【0057】
図9にも部分的に拡大して示すように、ラックアンドピニオン機構54は、フットペダル52の変位を伝えるシャフト53に取り付けられたラック55、およびこのラック55に歯合したピニオン57を有する。ピニオン57の回転軸57a(操作軸)には、上述した接続部材40を介してポテンショメータ56の回転軸(被操作軸)が同軸に接続されている。
【0058】
フットペダル52を図8に実線で示す位置から破線で示す位置まで変位させると、フットペダル52の回転軸52aから離間した位置に接続したシャフト53がバネ58の付勢力に抗して図中下方に押し込まれ、ラックアンドピニオン機構54のピニオン57が図中時計回り方向に回転する。そして、この回転がこの発明の接続部材40を介してポテンショメータ56に伝達され、ピニオン57の回転位置に関する情報、すなわちフットペダル52の変位量が電気信号に変換されて出力される。
【0059】
この場合においても、上述した実施の形態と同様に接続部材40が機能してピニオン軸とポテンショメータ回転軸との軸心のズレを吸収でき、フットペダル52の変位を伝えるラック55による抉り力がピニオン57を介してポテンショメータ56に伝達されることを防止でき、バックラッシを生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、この発明の実施の形態に係るリモコンを備えたボートを示す模式図。
【図2】図2は、図1のボートに取り付けられたリモコンを示す外観斜視図。
【図3】図3は、図2のリモコンの分解斜視図。
【図4】図4は、図2のリモコンを駆動軸に沿って切断した断面図。
【図5】図5は、駆動軸を回転可能に取り付けたハウジングを内側から見た図。
【図6】図6は、ハウジングから突出した駆動軸に操作レバーを取り付けた状態を示す外観図。
【図7】図7は、図2のリモコンに組み込まれた接続部材の外観斜視図。
【図8】図8は、他の実施の形態のリモコンを示す概略図。
【図9】図9は、図8の構成の部分拡大図。
【符号の説明】
【0061】
1…リモコン、2…船外機、4…操作レバー、5…ポテンショメータ、5a…回転軸、7…ECU、10…ボート、11…駆動軸、11a…溝部、12…ハウジング、13…ボトムカバー、14…アッパーカバー、19…蓋体、40…接続部材、41…スリット、42…本体、42c…内周壁、43…係止部、44…脚部、46…穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する操作軸と回転される被操作軸を略同軸に接続する接続部材であって、
上記操作軸および被操作軸のうち一方の軸(実施例では操作軸)に対して回転不能に接続されるとともに、上記一方の軸に対して軸方向と交差する第1の方向への移動を許容される接続部と、
上記操作軸および被操作軸のうち他方の軸(実施例では被操作軸)を回転不能に受け入れるとともに、弾性変形することで上記他方の軸の軸方向と交差する方向への移動を許容する軸受け部と、
を有することを特徴とする接続部材。
【請求項2】
上記接続部は、軸方向と交差する方向で軸心から離れる方向に延びた弾性変形可能な複数本の脚部を有し、上記一方の軸の端部に上記第1の方向に延びて形成された溝部内に、上記複数本の脚部を弾性変形することでスライド可能に嵌入されることを特徴とする請求項1に記載の接続部材。
【請求項3】
上記軸受け部は、上記他方の軸の断面と略同じ断面の内周壁を有する略円筒体に軸方向に延びたスリットを設けて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接続部材。
【請求項4】
上記スリットは、上記他方の軸の上記第1の方向と異なる第2の方向への移動を許容できるように、上記第1の方向に対して傾斜した位置に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の接続部材。
【請求項5】
樹脂により一体成形されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の接続部材。
【請求項6】
図7に記載した形状を有することを特徴とする請求項1に記載の接続部材。
【請求項7】
人が操作する操作子と、
この操作子の変位を回動変位として伝える操作軸と、
この操作軸の回転が伝達されて回転される被操作軸を有し、この被操作軸の回転位置に関する情報を上記操作軸の回転位置に関する情報として電気信号に変換して出力する変換器と、
上記操作軸と被操作軸を略同軸に接続する接続部材と、を有し、
上記接続部材は、
上記操作軸および被操作軸のうち一方の軸(実施例では操作軸)に対して回転不能に接続されるとともに、上記一方の軸に対して軸方向と交差する第1の方向への移動を許容される接続部と、
上記操作軸および被操作軸のうち他方の軸(実施例では被操作軸)を回転不能に受け入れるとともに、弾性変形することで上記他方の軸の軸方向と交差する方向への移動を許容する軸受け部と、
を有することを特徴とする遠隔操作装置。
【請求項8】
上記接続部は、軸方向と交差する方向で軸心から離れる方向に延びた弾性変形可能な複数本の脚部を有し、上記一方の軸の端部に上記第1の方向に延びて形成された溝部内に、上記複数本の脚部を弾性変形することでスライド可能に嵌入されることを特徴とする請求項7に記載の遠隔操作装置。
【請求項9】
上記軸受け部は、上記他方の軸の断面と略同じ断面の内周壁を有する略円筒体に軸方向に延びたスリットを設けて形成されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の遠隔操作装置。
【請求項10】
上記スリットは、上記他方の軸の上記第1の方向と異なる第2の方向への移動を許容できるように、上記第1の方向に対して傾斜した位置に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の遠隔操作装置。
【請求項11】
上記接続部材は、樹脂により一体成形されていることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の遠隔操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−303506(P2007−303506A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130520(P2006−130520)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000227607)日発テレフレックスモース株式会社 (10)
【Fターム(参考)】